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特許7368384流動層ボイラに適した同軸伝熱管の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】流動層ボイラに適した同軸伝熱管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 1/047 20060101AFI20231017BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20231017BHJP
   F28F 1/00 20060101ALI20231017BHJP
   B21D 53/06 20060101ALI20231017BHJP
   F22B 1/02 20060101ALI20231017BHJP
   F22B 37/04 20060101ALI20231017BHJP
   F22B 37/10 20060101ALI20231017BHJP
   F23C 10/10 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
F28D1/047 B
F28D7/16 D
F28F1/00 C
B21D53/06 Z
F22B1/02 C
F22B37/04
F22B37/10 L
F23C10/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020564606
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 FI2019050362
(87)【国際公開番号】W WO2019224423
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】20185465
(32)【優先日】2018-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】515183610
【氏名又は名称】バルメット テクノロジーズ オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】オヤンペラ,ユハ
(72)【発明者】
【氏名】ユリ‐ランタラ,ハッリ
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0258692(US,A1)
【文献】特開平08-226601(JP,A)
【文献】米国特許第01331429(US,A)
【文献】特公昭39-025480(JP,B1)
【文献】米国特許第03343250(US,A)
【文献】特開昭59-024519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0219814(US,A1)
【文献】国際公開第2018/083367(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 13/00
F28F 1/00 - 99/00
F23C 10/10
F22B 1/02
F22B 37/04
F22B 37/10
F23G 5/30
B21D 5/00 - 9/18
B21D 53/02 - 53/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸伝熱管を製造する方法であって、当該方法は、
内側伝熱管及び外側伝熱管を利用可能に配置するステップと、
前記内側伝熱管が少なくとも前記外側伝熱管を貫通して真っ直ぐな同軸伝熱管が形成されるように、前記内側伝熱管の少なくとも一部を前記外側伝熱管に挿入するステップと、
前記内側伝熱管と前記外側伝熱管との間に断熱材を配置するステップと、
100℃~400℃の温度で前記断熱材を硬化するステップと、
前記断熱材を硬化するステップの後に、第1の一次湾曲部を前記同軸伝熱管に形成するために前記真っ直ぐな同軸伝熱管を曲げるステップと、
前記真っ直ぐな同軸伝熱管を曲げるステップの前に、前記外側伝熱管の内面及び/又は前記内側伝熱管の外面に第1の突起を形成するステップを含み、
を含み、
前記断熱材を硬化するステップの後、前記断熱材の熱伝導率は、20℃の温度で1W/mK~10W/mKである、方法。
【請求項2】
前記外側伝熱管の外面に盲孔を打ち抜くことにより前記第1の突起を形成するステップを含、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、
前記真っ直ぐな同軸伝熱管を曲げるステップの前に、前記外側伝熱管の内面又は内側伝熱管の外面に第2の突起を形成するステップであって、該第2の突起は、前記第1の突起と該第2の突起との間の距離が100mm~2000mmになるように形成される、ステップ、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の突起と前記第2の突起との間の距離は300mmから1000mmである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記断熱材を硬化するステップの前に、前記断熱材が前記内側伝熱管と前記外側伝熱管との間に注入され、
前記断熱材を硬化するステップの後、
前記断熱材のヤング率は、20℃の温度で少なくとも1GPa又は少なくとも5GPaであり、
前記断熱材は、少なくとも1000℃まで耐熱性を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記盲孔は、前記外側伝熱管の、前記真っ直ぐな同軸伝熱管を曲げるステップの後でも真っ直ぐに保たれる部分のみに打ち抜かれる、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、
前記内側伝熱管及び前記外側伝熱管の温度が300℃未満になる温度で前記真っ直ぐな同軸伝熱管を曲げて前記同軸伝熱管に第1の一次湾曲部を形成すること、
を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の突起を用いることにより、前記内側伝熱管及び前記外側伝熱管を互いに対してセンタリングさせることを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換管の製造方法に関する。本発明は、流動層ボイラにとりわけ適した熱交換器のための伝熱管に関する。本発明は、循環流動層ボイラに適した熱交換器のための伝熱管に関する。本発明は、流動層熱交換器に関する。本発明は、循環流動層ボイラのループシール(loopseal)のための熱交換器に関する。本発明は粒子冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
保護された伝熱管が特許文献1及び特許文献2から知られている。保護された伝熱管を有する流動層熱交換器が特許文献3から知られている。流動層熱交換器は、流動層の床材料から熱を回収するためにボイラに、すなわち蒸気発生器に関連して配置され得る。一般に、そのような熱交換器では蒸気が過熱されるため、このような流動層熱交換器は流動層過熱器と呼ばれることがある。バブリング流動層ボイラでは、流動層熱交換器が炉の流動層に配置され得る。循環流動層ボイラでは、流動層熱交換器をループシールに配置され得る。このような場合、熱交換器は、ループシール熱交換器又はループシール過熱器と呼ばれることがある。
【0003】
前述の特許文献から、腐食環境にある熱交換器の伝熱管を保護することが知られている。従来技術の伝熱管は直線部分を含む。直線部分では、内側の伝熱管が外側の耐火物によって保護されている。しかしながら、管の曲げられている場合、管の湾曲部分には異なる保護が用いられる。例えば、特許文献3の図4では、湾曲部分は流動媒体から隔離された空間にそれらを配置することにより保護されている。このような構成では、熱交換器管内での流動層から熱交換媒体への伝熱は、管の湾曲部分を通して熱が伝達されないため最適ではない。湾曲部品にもシールドを提供するために複数の部品から形成されたシールドを用いることができる。しかしながら、そのようなシールドは、互いに取り付けなければならないいくつかの部品から形成される。そのような取り付け部品は製造プロセスを複雑にする。シールドが2つの部品から作られたことを示す証拠として、そのようなシールドは2つの長手継ぎ目を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第3351361号明細書
【文献】米国特許第5881802号明細書
【文献】米国特許第9371987号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの問題に対処するために、内側の伝熱管の湾曲部分は、外側管又は後続の外側管を一緒に溶接したものにより保護することを見出した。外側管(又は複数の外側管)は1つの管状材料のみでできている。これに対応して、外側管には長手継ぎ目がない。このような方法で保護される場合、外側伝熱管の湾曲部分は、管の外側の伝熱材料、とりわけ流動媒体と接触させて配置することもできる。これは熱交換器の伝熱を改善させることが分かった。
【0006】
そのような管、すなわち同軸管は、内側管を外側管内に配置し、これらの管を曲げることにより製造することができる。しかしながら、過熱器として適切に用いるためには、内側管と外側管との間の距離が適切でなければならない。管(すなわち、管によって形成される同軸管)を曲げる間においてもこの距離を制御するために、硬化可能な断熱材料を管の間に注入し、管を曲げる前に硬化させる。硬化されると、硬化された断熱材料は管を曲げる間も管の間の距離を適切な範囲で維持する。これに対応して、同軸管は、内側管と外側管との間に硬化した断熱材料を含む。
【0007】
一実施形態では、管を互いに対して中心に置くためにスペーサアレンジメント(spacer arrangement)が設けられる。これは、環境の腐食の観点から、外側管の表面の温度を適切な温度レベルに維持するのを助ける。スペーサアレンジメントは、外側管の内面に突起を有することが好ましい。
【0008】
本発明を独立請求項でより具体的に開示する。従属請求項及び以下の説明は実施形態を開示し、その一部は好ましい実施形態である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1a図1aは循環流動層ボイラの側面図を示す。
図1b図1bはバブリング流動層ボイラの側面図を示す。
図2a図2aは内側伝熱管及び外側伝熱管を含む第1の同軸伝熱管を示す。
図2b図2bは図2aの同軸伝熱管の内側伝熱管を示す。
図2c図2cは図2aの同軸伝熱管の外側伝熱管を示す。
図3a図3aは図2aの同軸伝熱管のIIIa-IIIa断面を示す。
図3b図3bは図2aの同軸伝熱管のIIIb-IIIb断面を示す。
図3c図3cは内側伝熱管と外側伝熱管との間のスペーサアレンジメントの一部を示す。
図3d図3dは内側伝熱管と外側伝熱管との間のスペーサアレンジメントの一部を示す。
図3e図3eは内側伝熱管と外側伝熱管との間のスペーサアレンジメントの一部を示す。
図4a図4aは、双方が内側伝熱管及び外側伝熱管を含む第1の同軸伝熱管及び第2の同軸伝熱管を示す。
図4b図4bは図4aの同軸伝熱管の内側伝熱管を示す。
図4c図4cは図4aの同軸伝熱管の外側伝熱管を示す。
図5a図5aは第1の同軸伝熱管、第2の同軸伝熱管及び第3の同軸伝熱管を示す。
図5b図5bは第1の同軸伝熱管、第2の同軸伝熱管、第3の同軸伝熱管、及び第4の同軸伝熱管を示す。
図5c図5cは同軸伝熱管を示しており、湾曲部分の曲率半径が一定でない。
図5d図5dは同軸伝熱管を示す。
図6a図6aは図4aの同軸伝熱管のVIa-VIa断面を示す。
図6b図6bは図4aの同軸伝熱管のVIb-VIb断面を示す。 実施形態の異なる図を示すために、3つの直交する方向Sx、Sy及びSzが図に示されている。使用において、方向Szは実質的に垂直であり且つ上方である。このように、方向Szは実質的に重力と逆である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1aは循環流動層ボイラ1の側面図を示す。循環流動層ボイラ1は、炉50と、煙道ガスから流動媒体を分離するための手段40でありサイクロン40と、ループシール5とを含む。ループシール5はサイクロン40から流動媒体を受け入れるように構成されている。図1aでは、煙道ガスチャネルを参照符号20で示す。煙道ガスは煙道ガス流路20を介して炉50から排出される。図1bはバブリング流動層ボイラ1の側面図を示す。バブリング流動層ボイラ1は炉50及び煙道ガス流路20を含む。
【0011】
一般に、流動層ボイラ1(バブリングまたは循環)は煙道ガス流路20内に煙道ガス熱交換器26、28を含む。煙道ガス熱交換器26、28は煙道ガスから熱を回収するように構成されている。一部の煙道ガス熱交換器は、煙道ガスから熱を回収することによって蒸気を過熱するように構成された過熱器26であってもよい。熱交換器の一部は、煙道ガスから熱を回収することにより水を加熱させる及び/又は沸騰させるように構成されたエコノマイザ28であってもよい。
【0012】
循環流動層ボイラ(図1a)では、流動媒体をガスから分離するために、流動媒体が炉50の上部からサイクロン40に運ばれる。サイクロン40から、流動媒体は通路60を通ってループシール5に落ちる。ループシール5では、流動媒体の層が形成される。流動媒体は、流動媒体をループシール5から炉50に運ぶように構成されたパイプライン15を介してループシール5から炉50に戻される。ループシール5では、ループシール5の壁51は、循環流動媒体の流動層が配置される容積Vを制限する。バブリング流動層ボイラ(図1b)では、流動媒体が炉50内で流動化される。そのため、炉50の壁51は、流動媒体の流動層が配置される容積Vを制限する。
【0013】
一般に、流動層ボイラ1は伝熱媒体のための配管を含む。使用の際、伝熱媒体は配管内を循環し、熱交換器、とりわけ煙道ガス熱交換器26、28及び流動層熱交換器10によって加熱される。配管は伝熱媒体の循環を形成する。循環では、同じ伝熱媒体が煙道ガス熱交換器26、28と流動層熱交換器10との間を流れ得る。通常、循環は、伝熱媒体が先ずエコノマイザ28で加熱され、その後に過熱器26で加熱されるように形成される。さらに、過熱器26の後に、伝熱媒体は流動層熱交換器10で加熱される。その後、伝熱媒体、例えば過熱蒸気は通常蒸気タービンに運ばれる。
【0014】
本発明は、とりわけ同軸伝熱管の構造及びそのような同軸管の製造方法に関する。使用の際、同軸伝熱管は熱交換器の一部として配置され得る。好ましい用途では、熱交換器は、例えば循環流動層ボイラのループシール5又はバブリング流動層ボイラの炉内に流動層内に配置される。一般に、熱交換器は、水及び/又は蒸気等の第1の伝熱媒体が流れるように構成された多数の管を含む。管の外側では、流動媒体等の第2の伝熱媒体が流れるように構成され、それにより管の壁を介して第2の伝熱媒体から第1の伝熱媒体に熱が伝達される。流動層に設置された場合に流動層熱交換器10を形成する熱交換器10は、ボイラの一部として又はボイラの予備部品として製造できる。加えて、同軸伝熱管100は熱交換器10の予備部品として又は熱交換器10の一部として製造できる。流動層熱交換器10は、いくつかの同軸伝熱管100を一緒に組み立てることによって製造できる。そのため、一実施形態は同軸伝熱管100に関する。加えて、一実施形態は熱交換器10に関する。加えて、一実施形態は流動層ボイラ1に関する。
【0015】
本説明では以下の用語を用いる。
【0016】
「伝熱管」とは管を意味する。伝熱管は、単一の実質的に均質な材料、例えば、スチール等の金属から作ることができる。実施可能であると考えられる場合、伝熱管は、「同軸伝熱管」と区別するために「普通の伝熱管」という場合がある。金属は一般に伝熱が良好であるため、普通の伝熱管はある種の金属で構成され得る。
【0017】
「同軸伝熱管」とは、外側伝熱管が内側伝熱管を半径方向に取り囲むように配置された管を意味する。同軸伝熱管は、互いに同軸の管(通常、2つのみの管)の配置である(図2a、図3a及び図3b参照)。
【0018】
「直線部」とは、伝熱管(素管、同軸管)のうちの管の製造業者から入手したものであって曲げられていないものをいう。一般的に、管の製造業者は剛性の直管を供給する。曲率半径に関して、直線部の中心線の曲率半径r図2b参照)は少なくとも1メートル(1m)である。直線部の曲率半径rは無限又は実質的に無限であり得る。
【0019】
「湾曲部」とは、伝熱管(素管又は同軸管)のうちの曲げられた部分をいう。曲率半径に関して、湾曲部の中心線の曲率半径rc(図2b又は図2c参照)は1メートル未満である。湾曲部の曲率半径rcは伝熱管(通常又は同軸)の直径の少なくとも3倍であることが好ましい。とりわけ、曲げられた同軸管の通常の管の曲率半径は、湾曲部分の中心線が曲率半径を定義するため同じである。
【0020】
図2aは、本発明の一実施形態に係る同軸伝熱管100、すなわち第1の同軸伝熱管100の側面図を示す。図2aに示すように、第1の同軸伝熱管100は、第1の一次直線部101と、第1の一次湾曲部102と、第1の二次直線部103と、第1の二次湾曲部104と、第1の三次直線部105と、さらなる(すなわち、三次)湾曲部106と、さらなる(すなわち、四次)直線部107とを含む。このような管100は熱交換器10の一部を形成し得る。図2aにおいて、第1の一次直線部101における管内の流体搬送媒体の流れの方向は、第1の二次直線部103における管内の流体搬送媒体の流れの方向と逆である。これは、第1の三次直線部105における管内の流体搬送媒体の流れの方向とも逆である。
【0021】
図2b及び図3aを参照して、第1の同軸伝熱伝熱管管100は第1の内側伝熱管110を含む。第1の内側伝熱管110は、第1の一次直線部111と、第1の一次湾曲部112と、第1の二次直線部113と、第1の二次湾曲部114と、第1の三次直線部115と、さらなる湾曲部116と、さらなる直線部117とを含む。
【0022】
図2c及び図3aを参照して、第1の同軸伝熱管100は第1の外側伝熱管120を含む。第1の外側伝熱管120は、第1の一次直線部121と、第1の一次湾曲部122と、第1の二次直線部123と、第1の二次湾曲部124と、第1の三好直線部125と、さらなるの湾曲部126と、さらなる直線部127とを含む。
【0023】
第1の外側伝熱管120は、第1の内側伝熱管110の少なくとも一部を半径方向に取り囲む。第1の外側伝熱管120は、全ての半径方向において第1の内側伝熱管110の少なくとも一部を半径方向に取り囲む。そのため、第1の内側伝熱管110の少なくとも一部は全ての半径方向で保護される。さらに、このような管100の製造方法に関連して詳細に説明するように、第1の外側伝熱管120は1つ又は複数の管(例えば、普通の管)から形成される。したがって、第1の外側伝熱管120は長手継ぎ目を含まない。長手継ぎ目とは、第1の外側伝熱管120の長手方向de120(すなわち、延在方向、図2c)に延びる継ぎ目のことをいう。これに対応して、長手継ぎ目は、長手方向に垂直な管120の接線方向において第1の外側伝熱管120の周囲に完全には延びていない。そのため、第1の外側伝熱管120の少なくとも第1の一次湾曲部121には長手継ぎ目がない(すなわち、含まない)。外側管120が管状部品を長手方向に溶接することによって作られる場合、外側管120は横方向継ぎ目又はいくつかの横方向継ぎ目を含み得る。しかしながら、これは製造の観点から好ましくない。そのため、一実施形態では、第1の外側伝熱管120は長手方向又は横方向のいずれにも継ぎ目を含んでいない。一実施形態では、第1の内側伝熱管110は継ぎ目を含んでいない。すなわち、第1の内側伝熱管110はシームレスである。
【0024】
使用の際、第1の外側伝熱管120は、少なくとも空間V内で第1の内側伝熱管110を半径方向に取り囲んでいる。しかしながら、図2cに示すように、空間Vの外では、内側伝熱管110は外側伝熱管120による保護を必要としない。
【0025】
図3aは、図2aのIIIa-IIIa断面を示す。図示のように、第1の外側伝熱管120、とりわけ第1の外側伝熱管120の第1の一次直線部121は、第1の内側伝熱管110の第1の一次直線部111の少なくとも一部を半径方向に取り囲む。図3bは図2aのIIIb-IIIb断面を示す。図示のように、第1の外側伝熱管120、とりわけ第1の外側伝熱管120の第1の一次湾曲部122は、第1の内側伝熱管110の第1の一次湾曲部112を半径方向に取り囲む。
【0026】
このような構成は、湾曲部112、212、114、214、116、216を流動層媒体からさらに保護する必要がないという技術的効果を有する。したがって、湾曲部においても流動層媒体からの熱を回収することができる。さらに、製造方法に関連して示すように、そのような同軸管は製造するのが比較的容易である。
【0027】
従来技術から知られているように、外側伝熱管120の外面の温度は、過度の腐食を避けるために適度に高いままであるべきである。したがって、内側伝熱管110の内面と外側伝熱管120の外面との間の熱抵抗は合理的なものであり、同軸伝熱管100にわたって実質的に一定であることが好ましい。すなわち、外側伝熱管120の内面と内側伝熱管110の外面との間の距離d(図3c参照)は、少なくともスペーサアレンジメント(131、132)の外で実質的に一定でなければならない。さらに、伝熱を制御するために、管110、120の間に断熱材530が配置される。しかしながら、実際には、屈曲部を形成するために同軸管を曲げることは、同軸管にわたって間隔が通常厳密には一定にならないという効果を有する。この間隔は、湾曲部の外側で幾分小さくなり得る。管110、120の間にある断熱材530の別の機能は、曲げの間に湾曲部においても距離dがさほど変化しないように管110、120を曲げるのを助けることである。
【0028】
一実施形態では、距離dは、直線部(101、103、105)及びスペーサアレンジメント(131、132)の外側で一定である。そのため、一実施形態において、距離dは、スペーサアレンジメント(131、132)が存在する場合にはそれを除いて、直線部内の観察点に関わらず同じである。距離dは、例えば0.3mm~5mm、例えば1mm~4mmであり、好ましくは1mm~2mmであり得る。直線部での距離dは、スペーサアレンジメントを除いて一定であってもよく、例えば0.5mm~5mm、例えば1mm~4mm、好ましくは1mm~2mmであり得る。同軸管100の管110、120は同軸であるため、距離dは同軸管の断面内で一定である。加えて、湾曲部102内においても、管の間の距離dは、例えば0.3mm~5mm、例えば1mm~4mm、好ましくは1mm~2mmであり得る。
【0029】
第1の内側伝熱管110は、適度な高温度及び高圧に耐えれなければならない。これを定量化するために、第1の内側伝熱管110は、500℃の温度で管110の内面と外面との間で100barの圧力差に耐えれなければならない。より好ましくは、第1の内側伝熱管110は、600℃の温度で管110の内面と外面との間で150barの圧力差に耐えれなければならない。これらの理由から、一実施形態では、第1の内側伝熱管110は鋼鉄、好ましくはフェライト鋼又はオーステナイト鋼を含む。一実施形態では、第1の内側伝熱管110の壁の厚さは少なくとも3mm、例えば3mm~10mmである。
【0030】
第1の外側伝熱管120は、そのような高圧に耐える必要はない。したがって、一実施形態では、第1の内側伝熱管110の壁の厚さは、第1の外側伝熱管120の壁の厚さよりも大きい。しかしながら、第1の外側伝熱管120は、管の間に断熱材530が存在するため、第1の内側伝熱管110よりも高い温度に耐える必要がある。したがって、一実施形態では、第1の外側伝熱管120は鋼鉄、好ましくはオーステナイト鋼を含む。さらに、使用中の管110、120の熱膨張により、第1の外側伝熱管120及び第1の内側伝熱管110は同じ材料で、例えばオーステナイト鋼で作られることが好ましい。
【0031】
図3a及び図3bを参照して、第1の内側伝熱管110と第1の外側伝熱管120との間には、固体の、例えば硬化された断熱材530が配置されている。断熱材530は、(i)第1の内側管110の第1の一次直線部111と第1の外側管120の第1の一次直線部121との間、(ii)第1の内側管110の第1の一次湾曲部112と第1の外側管120の第1の一次湾曲部122との間に配置されている。
【0032】
直線部及び湾曲部の双方に関して、断熱材530の熱伝導率は、同軸管100により熱を回収するために十分に高くなければならない。さらに、熱伝導率は、同軸管の外面の温度を使用の際に十分高く維持するために十分低くなければならない。断熱材530の熱伝導率は、20℃で1W/mK~10W/mKであることが好ましい。さらに、断熱材530は、高動作温度に耐えるために耐熱性がなければならない。したがって、一実施形態では、断熱材530は少なくとも1000℃まで耐熱性である。湾曲部に関して、断熱材530の機能は、同軸管100を曲げる間に機械的な支持体として作用することである。そのため、断熱材530は、硬化された場合に圧縮されないように適度に高いヤング率を有していなければならない。一実施形態では、同軸管100の断熱材530のヤング率は、20℃の温度で少なくとも1GPaである。一実施形態では、同軸管100の断熱材530のヤング率は、20℃の温度で少なくとも5GPaである。
【0033】
同軸伝熱管100は、外側管120が内側管110の少なくとも一部を半径方向に取り囲むように内側管110の少なくとも一部を外側管120に挿入することにより製造できる。さらに、内側管110は、少なくとも外管120を通っての外側管120の一端120aから外管120の他端120bまで延びている(図2a~図2c参照)。このように、直っ直ぐな同軸伝熱管が形成される。その後、管110、120の間に断熱材530が配置される。一実施形態では、断熱材530は硬化可能であり、硬化前に注入可能である。そのため、一実施形態では、断熱材530は管110、120の間に注入される。その後、断熱材530が上述したように機械的支持体として作用するのに十分に硬くなるように断熱材が硬化(例えば、乾燥)され得る。硬化は100℃~400℃の温度で行われ得る。最後に、真っ直ぐな同軸伝熱管の適切な位置が適切な曲率半径になるように曲げられる。直っ直ぐな同軸管は、管110、120の温度が300℃未満に、例えば200℃未満であるような温度で曲げられることが好ましい。直管が曲げられる温度は少なくとも-50℃、例えば、0℃~50℃、例えば実質的に室温であり得る。
【0034】
上記のように曲げられるため、内側管110及び外側管120(すなわち、普通館)は屈曲可能な材料、すなわち延性材料で作られるべきである。適切な材料は多くの金属、とりわけフェライト鋼又はオーステナイト鋼等の鋼鉄を含み得る。
【0035】
第1の同軸伝熱管100の外径d120に対する同軸伝熱管100の屈曲(すなわち、湾曲)部の曲率半径rの比r/d120は好ましくは少なくとも3であることが分かった。これは、管110、120の間の距離は曲げの間に実質的に一定で留まるという効果を有する。より好ましくは、比r/d120は少なくとも3.3、例えば少なくとも3.5であることがより好ましい。
【0036】
また、第1の内側伝熱管110の外径d110に対する同軸伝熱管100の屈曲(すなわち、湾曲)部の曲率半径rの比r/d110は、好ましくは少なくとも3であることが分かった。これは、内側伝熱管110の高圧に耐える能力が、同軸管100を曲げる間に実質的に変化しないという効果を有する。比r/d110は少なくとも3.3、例えば少なくとも3.5であることがより好ましい。内側伝熱管110を小さな(より小さな)曲率半径になるように曲げることは、曲げ後の同軸伝熱管100の熱処理が必要となり、このように製造プロセスが複雑になる。そのため、適度に大きな曲率半径を有することによって、よりシンプルな製造プロセスとなる。
【0037】
断熱材530は、外側伝熱管120の端部(120a、120b)から管110、120の間に供給されてもよい。加えて又は代替的に、外側伝熱管120にオリフィス135(図3a参照)を形成して、オリフィスを介して断熱材530を管110、120の間に注入してもよい。オリフィスは後に閉じられ得る。そのため、一実施形態では、第1の外側伝熱管120は、閉じられ得るオリフィス135を含み、オリフィス135を介して第1の内側伝熱管110と第1の外側伝熱管120との間に断熱材530が供給(例えば、注入)される。オリフィス135を介して注入することは、より高い注入圧力を使用することができるため、注入をより素早く行うことができるという有益な効果を有する。
【0038】
管110、120のセンタリングは、それらのいずれも当然ながら無限に(naturally infinitely)真っ直ぐではないので困難であり得ることが分かった。管110、120は、少なくとも1つのスペーサアレンジメント131を用いることにより、互いに対してセンタリングできることが分かった。スペーサアレンジメント131は、断熱材530とは異なる固体材料から作られる。そのため、曲げ前の管の間の距離dは、少なくとも1つのスペーサ要素(119、129)を含む第1のスペーサアレンジメント131によって実質的に一定にすることができるのが分かった。第1のスペーサアレンジメント131は、管100の直線部(101、111、121、103、113、123)の位置で、第1の外側伝熱管120の内面と第1の内側伝熱管110の外面との間の一定距離dを定義するように構成されている。実際に、第1のスペーサアレンジメント131は、内側管110と外側管120とが平行且つ同軸になるようにそれらを揃えるように構成されている。図3cを参照して、第1の外側伝熱管120の内面の突起129は、スペーサアレンジメントのスペーサ要素の1つとして機能し得る。一実施形態では、第1の外側伝熱管120の内面の突起129は、スペーサアレンジメントのスペーサ要素として(少なくともその一部として)機能する。
【0039】
加えて又は代替的に、第1の内側伝熱管110の外面上の突起119(図3c参照)は、スペーサアレンジメントのスペーサ要素のうちの1つとして機能し得る。そのような突起は、例えば、第1の内側伝熱管110の外面に溶接され得る。一実施形態では、第1の内側伝熱管110の外面上の突起119は、スペーサアレンジメントのスペーサ要素として(少なくともその一部として)機能する。しかしながら、内側伝熱管110は、高温で高圧に耐える必要があるため、第1の内側伝熱管110の外面には突起119がないことが好ましい。そのため、スペーサアレンジメント131は、第1の外側伝熱管120の内面上の突起129で構成されることが好ましい。
【0040】
図3cを参照して、第1のスペーサアレンジメント131は少なくとも3つの突起129を含む。第1のスペーサアレンジメント131は、最大で10個の突起129を含むことが好ましく、第1のスペーサアレンジメント131は、4~8個の突起129を含むことがより好ましい。突起129は、管100の同じ長手位置にある必要はない。突起は、第1のスペーサアレンジメント131の長さ内に配置されてもよく、第1のスペーサアレンジメント131の長さは、例えば最大で100mmであり得る。
【0041】
一実施形態では、第1の同軸伝熱管100は第2のスペーサアレンジメント132を含む。第2のスペーサアレンジメント132は、第1のスペーサアレンジメント131と組み合わされて、内側管110と外側管120とが平行且つ同軸にあるように整合させるように構成されている。第2のスペーサアレンジメントも断熱材530以外の固体材料から作られている。図2cを参照して、第1のスペーサアレンジメント131と第2のスペーサアレンジメント132との間の距離d131は、第1の同軸伝熱管100に沿って100mm~2000mmである。距離d131は、管110、120を互いに対してセンタリングするには大きすぎてはならない。さらに、距離d131は、管110、120の間に好適な断熱特性を有するには小さすぎてはならない。距離d131は300mm~1000mmであることが好ましい。
【0042】
外側伝熱管120の内面に突起129が形成され得る。例えば、外側伝熱管120の外面に盲孔128を打ち抜くことにより、外側伝熱管120が局部的に曲げられて、図3dに示すように外側伝熱管120の内面に突起129が形成される。そのような曲げは、少なくとも、外側伝熱管120が金属、例えば延性金属、例えばオーステナイト鋼等の鋼鉄を含む場合に生じる。一般に、この目的に適した金属は融点が少なくとも1000℃である。そのため、一実施形態では、外側伝熱管120はこれらの材料のうちの1つを含む。一実施形態では、第1の外側伝熱管120(及び任意で第2の外側伝熱管220も)はその外面に盲孔128を含む。とりわけ、図3d及び図2cを参照して、そのような盲孔128及び対応する突起129(すなわち、第1のスペーサアレンジメント131)は第1の外側伝熱管120の第1の端部120aと第1の外側伝熱管120の第2の端部120bとの間で、第1の外側伝熱管120が延びる方向de120に配置されている。第1のスペーサアレンジメント131(例えば、突起129に対応する盲孔128)は、第1の外側伝熱管120の両端120a、120bから、例えば少なくとも50mm又は少なくとも150mm離れて配置され得る。したがって、本方法の一実施形態は、突起129が外側管120の内面に形成されるように、外側伝熱管120の外面に盲孔128を打ち抜くことを含む。そのような突起129は第1のスペーサアレンジメント131を形成する。盲孔128は、(i)内側管110の少なくとも一部を外側管120内に配置した後で且つ(ii)管110、120の間に断熱材530を配置(例えば、注入)する前に打ち抜かれることが好ましい。内側管110を外側管120内に配置する前に、外側管120の突起129及び/又は内側管110の突起119を設けることが可能であり得る。
【0043】
スペーサアレンジメント131、132が管100のこのように曲げられた部分で用いられた場合、曲げの間に内側管110の機械的特性を容易に劣化させることが分かった。したがって、スペーサアレンジメント131、132は、同軸管100の湾曲部に配置されないことが好ましい。そのため、一実施形態では、中心軸の曲率半径が1m未満である同軸伝熱管100の湾曲部は、スペーサアレンジメント(131、132)を含まない。しかしながら、上述のように、断熱材530が管110、120の間の空間を定義し、断熱材530も曲線部内で用いられる。そのため、同軸伝熱管100の湾曲部は、断熱材530以外のスペーサアレンジメントを含まず、そのスペーサアレンジメント(131、132)は、第1の外側伝熱管120の内面と、第1の内側伝熱管110の外面との間の距離dを、少なくとも管100の直線部(101、103)で定義するように構成される。そのため、前記曲げの後も真っ直ぐに保たれる管100の部分のみに盲孔128が打ち抜かれ得る。これに対応して、一実施形態は、管100のスペーサアレンジメントがない部品のみを曲げることを含む。さらに、一実施形態では、第1の同軸伝熱管100は盲孔128を含むが、盲孔128は同軸管100の直線部のみに設けられる。
【0044】
熱交換器10、例えば流動層熱交換器10は第1の同軸伝熱管100を含む。さらに、好ましい用途では、流動層熱交換器10の少なくとも一部は、流動層が使用時に形成されるように構成された空間Vに配置される。一実施形態では、(i)第1の外側伝熱管120の第1の一次湾曲部122及び(ii)第1の外側伝熱管120の第1の一次直線部121の双方が、使用時に流動層の流動媒体と接触するように構成されている。
【0045】
内側管110と、内側管110と同軸の外側管120とを有する同軸伝熱管100は、例えば米国特許第9371987号に示されているように、いくつかの有益な効果を有する。同軸伝熱管の湾曲部のための別個の保護容器を持たないことは、内側伝熱管110への伝熱を改善する。
【0046】
図2bを参照して、上述の定義によれば、一実施形態では、第1の内側伝熱管110の第1の一次直線部111の中心線の曲率半径rは少なくとも1mである。加えて又はあるは、第1の内側伝熱管110の第1の一次湾曲部112の中心線の曲率半径rは1m未満である。図2aを参照して、上述の定義は、内側管110及び外側管120を含む第1の同軸伝熱管100にも該当し得る。
【0047】
図2bを参照して、一実施形態では、管100は、第1の同軸伝熱管100の少なくとも直線部が平面P内に延びるように曲げられている。一実施形態では、第1の一次直線部101及び第1の二次直線部103が平面P内に延びている。さらに、一実施形態では、第1の同軸伝熱管100は第1の三次直線部105を含み、第1の三次直線部105も平面P内に延びている。これは、図2a~図2cに示すように、内側管110及び外側管120及びそれらの部分111、113、115及び121、123、125の両方にも該当する。
【0048】
図2aを参照して、一実施形態では、熱交換器10(及び/又は流動層ボイラ1)は、第1の同軸伝熱管100と、第1の同軸伝熱管100、とりわけその内側伝熱管110に伝熱媒体を供給するように構成された分配タヘッダ510と、第1の同軸伝熱管100、とりわけその内側伝熱管110から伝熱媒体を回収するように構成された回収ヘッダ520とを含む。図2aに示すように、第1の同軸伝熱管100(とりわけ、その内側伝熱管110)は、分配ヘッダ510から回収ヘッダ520に延びている。図2cに示すように、外側管120は、分配ヘッダ510から回収ヘッダ520に延びている必要はない。
【0049】
直線部及び湾曲部を有する1つの同軸伝熱管100のみが用いられる場合、適度に小さな容積内に適度に大きな伝熱面を有するために、管100は、幾つかの位置で適度に小さな湾曲半径になるように曲げられなければならない。小さな曲率半径を有することで、直線部101、103は互いに近づく(図2a参照)。しかしながら、上記のように、製造上の理由から、湾曲部の曲率半径は小さすぎないことが好ましい。したがって、同軸管の2つの直線部、の間の距離は、例えば図2aの部分101、103の間の距離は実際にはかなり大きい。伝熱管の間の距離を減少させ、このようにして容積内の伝熱面を大きくするために、第1の同軸管の2つの部分の間に第2の同軸管の一部が残るような平面内で隣り合う少なくとも2つの同軸管を用いることができることが分かった。とりわけ、図4aを参照して、直線部103と101との間の距離が、適切な曲率半径のために合理的に大きい必要があっても、直線部201と101との間の距離を必要な限り小さくすることができる。このようにして、図4aの同軸管により得られる容積当たりの伝熱面は、図2aの同軸管の場合よりもはるかに大きい。
【0050】
また、隣り合って配置される同軸伝熱管の最適な数は、たとえ数が1つであったとしても(図2a)、少なくとも2つ、例えば2つ(図4a)、3つ(図5a)、4つ(図5b)、5つ(図示せず)又は6つ(図示せず)であることが分かった。
【0051】
図2a及び図4aに示すように、第1の一次湾曲部(第1の同軸管100及びその通常管110、120の102、112及び122)の第1の一次直線部(それぞれ101、111、121)は第1の二次直線部(それぞれ103、113、123)に接続する。そのため、第1の一次湾曲部(それぞれ、102、112、122)は、第1の一次直線部(それぞれ、101、111、121)と第1の二次直線部(それぞれ、103、113、123)との間で第1の(同軸又は通常)伝熱管(それぞれ、100、110、120)に沿って配置される。ここで、「沿って」という用語は、伝熱媒体が、第1の(同軸又は通常の)伝熱管(100、110及び120)に流れるように構成された方向を意味する。
図4a、図6a、図6bを参照して、一実施形態では、熱交換器10は、第2の内側伝熱管210及び第2の外側伝熱管220を有する第2の同軸伝熱管200をさらに含む。第2の同軸伝熱管200は、分配ヘッダ510から回収ヘッダ520に延びる。さらに、図6a及び図6bを参照して、第2の同軸伝熱管200は、
・第2の内管210の第2の一次直線部211及び第2の外側管220の第2の一次直線部221を有する第2の一次直線部201と、
・第2の内管210の第2の二次直線部213及び第2の外側管220の第2の二次直線部223を有する第2の二次直線部203と、
・第2の内側管210の第2の一次湾曲部212及び第2の外側管220の第2の一次湾曲部222を有する第2の一次湾曲部202と、
を含む。
【0052】
図4aに示すように、第2の一次湾曲部(第2の同軸管200及びその通常管210、220の202、212及び222)は、第2の一次直線部(それぞれ201、211、221)を第2の二次直線部(それぞれ203、213、223)に接続する。そのため、第2の一次湾曲部は、第2の一次直線部(それぞれ201、211、221)と第2の二次直線部(それぞれ203、213、223)との間で、第2の(同軸又は通常の)伝熱管(200、210、220)に沿って配置されている。ここで、「沿って」という用語は、伝熱媒体が、第2の(同軸又は通常の)伝熱管(200、210及び220)に流れるように構成された方向を意味する。
【0053】
湾曲部及び直線部の曲率半径を制限することは上記で定義した。これは、第1の同軸管100及び第2の同軸管200の双方に該当する。
【0054】
図4aを参照して、一実施形態では、第1の同軸伝熱管100と第2の同軸伝熱管200とは、第1の一次直線部101が第2の一次直線部201と第2の二次直線部203との間に配置されるように、互いに対して配置される。これは、図4A図4cに示すように、内側管(110、120)の直線部111、211及び213並びに外側管(120、220)の直線部121、221及び223にも当てはまる。上述したように、過度に屈曲された管(すなわち、曲率半径の小さい湾曲部)を用いることなく適度に小さい空間Vに同軸伝熱管の適度に高い伝熱面を設けることができるという技術的効果を有する。これにより、同軸管(100、200)の製造が簡略化される。
【0055】
上記で定義したように、「同軸伝熱管」という用語は、同軸に配置された管の配置をいう。したがって、この文脈では、異なる同軸伝熱管(100、200)は相互に同軸ではない。そのため、一実施形態では、第1の同軸伝熱管100のどの部分も、第2の同軸伝熱管200の部分と同軸でない。なお、2つの伝熱管の同様の配置は、その適用の伝熱管が同軸又は通常であるか関係なく、小さな容量で高い領域が必要な他の用途で用いることができる。
【0056】
分配ヘッダ510は、第1の同軸伝熱管100、とりわけ第1の内側管110と、第2の同軸伝熱管200、とりわけ第2の内側管210とに伝熱媒体を供給するように構成されている。同様に、回収ヘッダ520は、第1の同軸伝熱管100、とりわけ内側管110と、第2の同軸伝熱管200、とりわけ第2の内側管210とから伝熱媒体を回収するように構成されている。明らかなように、伝熱媒体は、同軸伝熱管100、200を通って分配ヘッダ510から回収ヘッダ520に流れる間に加熱される。
【0057】
図2aを参照して、一実施形態では、同一平面P内で分配ヘッダ510から回収ヘッダ520に延びる同軸伝熱管の数Ntubeは、第1の同軸管100しか存在しないため1つだけであり得る。しかしながら、図4aを参照して、一実施形態では、同一平面P内で分配ヘッダ510から回収ヘッダ520に延びる同軸伝熱管の数Ntubeは、第2の同軸管200も存在するため2つであり得る。図5aを参照して、熱交換器10は、同じ平面P内で分配ヘッダ510から回収ヘッダ520に延びる第3の同軸伝熱管300を含み得る。そのため、数Ntubeは3であり得る。図5bを参照して、熱交換器10は、同じ平面P内で分配ヘッダ510から回収ヘッダ520に延びる第4の同軸伝熱管400を含み得る。そのため、数Ntubeは4であり得る。図示されていないが、数Ntubeは5、6又は6より大きい。図5aを参照して、必要に応じて、同軸管100、200、300は、バインダ540により結合してもよい。バインダ540は、熱交換器10の機械的安定性を改善する。同じ平面P内に延びる同軸伝熱管の数Ntubeは少なくとも2つ又は少なくとも3つであることが好ましい。
【0058】
一実施形態では、流動層ボイラ1又はその流動層熱交換器10は、(i)分配ヘッダ510から回収ヘッダ520に延びるとともに、(ii)少なくとも一次直線部(101、201、301)と、二次直線部(103、203、303)と、該一次直線部を該二次直線部に接続する一次湾曲部(102、202、302)とを含むNtube個の同軸伝熱管(100、200、300、400)を含む。
【0059】
図5aを参照して、一実施形態では、数Ntubeは3である。そのような実施形態は、上述したように、第1の同軸伝熱管100及び第2の同軸伝熱管200を含む。さらに、係る実施形態では、流動層ボイラ1又はボイラ1の流動層に適した熱交換器10は、分配ヘッダ510から回収ヘッダ520に延びる第3の同軸伝熱管300を含む。第3の同軸伝熱管300は、第1の管100及び第2の管200について上述した部分を含む。一実施形態では、第3の同軸伝熱管300は、第1の同軸伝熱管100及び/又は第2の同軸伝熱管200に関連して上述したように、内側伝熱管及び外側伝熱管を含む。
【0060】
図5aを参照して、第3の同軸伝熱管300は、第3の一次直線部301及び第3の二次直線部303を含む。第2の同軸伝熱管200及び第3の同軸伝熱管300は、第2の一次直線部201が第3の一次直線部301と第3の二次直線部303との間に配置されるように互いに対して配置される。第1及び第2の同軸伝熱管(100、200)の相対配置に関して上述したことが該当する。上述したように、一実施形態では、第1の一次直線部101、第2の一次直線部201及び第2の二次直線部203とが平面P内に延びている。第3の同軸伝熱管が存在する場合、一実施形態では、第3の一次直線部301及び第3の二次直線部303も平面P内に延びている。
【0061】
図5bを参照して、一実施形態では、数Ntubeは4である。そのような実施形態は、上述したように、第1の同軸伝熱管100、第2の同軸伝熱管200及び第3の同軸伝熱管300を含む。さらに、その実施形態では、流動層ボイラ1又はボイラ1の流動層に適した熱交換器10は、分配ヘッダ510から回収ヘッダ520に延びる第4の同軸伝熱管400を含む。
【0062】
図4aを参照して、一実施形態では、同軸伝熱管100、200はより湾曲した部分を有する。これは、分配ヘッダ510と回収ヘッダ520との間の距離を適度に大きくしつつ、管100、200の直線部分を互い近づけることができるという効果を有する。管100、200の直線部を互いに近づけることにより伝熱領域が大きくなり、熱回収が改善される。管の直線部分は同じ平面P内に配置されることが好ましい。
【0063】
図示のように、湾曲部は、管内の伝熱媒体の伝搬方向が曲線部内で30~180度変化するような湾曲部であることが好ましい。例えば、図2a、図4aは、流れの方向を180度変化させる湾曲部102、202を示す。例えば、図5dは、流れの方向を90度変える湾曲部302と、流れの方向を90度変える別の湾曲部306を示す。同様に、直線部により互いに離れたより多くの湾曲部を用いることによって、180度の旋回を作ることができる。図5cを参照して、湾曲部の曲率半径は一定である必要はない。
【0064】
上述した流動層熱交換器10は、循環流動層ボイラのループシール5で用いられることが好ましい。そのため、一実施形態では、流動層ボイラ1は、流動媒体を煙道ガスから分離する手段40を含む。図1aを参照して、一実施形態では、流動層ボイラ1は、流動媒体を煙道ガスから分離するためのサイクロン40を含む。流動層ボイラは、流動媒体を煙道ガスから分離するための手段40(例えば、サイクロン)から流動媒体を受け取るように構成されたループシール5を含む。さらに、流動層熱交換器10の少なくとも一部はループシール5内に配置される。例えば、図2b及び図2cを参照して、分配ヘッダ510及び回収ヘッダ520はループシールの外側に配置され得る。しかしながら、同軸伝熱管(100、200)の少なくとも大半は、上述したようにループシールに配置されている。例えば、一実施形態では、流動層熱交換器10の長手方向に測った同軸伝熱管(100、200)の少なくとも90%は、上述したようにループシール5内に配置される。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b