(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】個人の事故データを分析するためのコンピュータ支援プロセス
(51)【国際特許分類】
G06T 7/20 20170101AFI20231017BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20231017BHJP
【FI】
G06T7/20 300Z
G16H50/20
(21)【出願番号】P 2020572549
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 CH2019000021
(87)【国際公開番号】W WO2020014795
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-16
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520417148
【氏名又は名称】ボーノ,カロリーネ
(73)【特許権者】
【識別番号】520417159
【氏名又は名称】ローテンビューラー,ルドルフ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ボーノ,カロリーネ
(72)【発明者】
【氏名】ローテンビューラー,ルドルフ
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-532810(JP,A)
【文献】特開2002-127857(JP,A)
【文献】特表2007-538297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/20
G16H 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1人又は複数の車両乗員の個人事故データを分析するためのコンピュータ支援方法であって、
前記個人事故データは、事故
の間の車両乗員のビデオシーケンスの少なくとも画像データを含み、
当該方法は、
前記画像データに基づいてパターンを認識する第1のステップ、及び
前記認識されたパターンを
複数の以前に保存されたパターンと比較する第2のステップ、
を含み、
前記認識されたパターンは、
前記事故
の間の
前記車両乗員の移動シーケンスを含み、
前記認識された
パターン及び/又は
前記以前に保存されたパターンは、
前記車両乗員の頭部及び/又は首及び/又は胸
部及び/又は
胴体及び/又は四肢の加速プロセスの時系列、及び/又は
前記車両乗員の頭及び/又は首及び/又は
胸部及び/又は胴
体及び/又は四肢の
変位の時系列を含むことを特徴し、
前記以前に保存されたパターン
はそれぞれ、医療診断データに割り当てられ、
当該方法は、
前記比較に基づいて、前記認識されたパターンが、前記複数の以前の保存されたパターンのうちの1つの以前の保存されたパターンに対応するとき、前記認識されたパターン
に対応する前記以前の保存されたパターンに割り当てられた医療診断データを出力する第3のステップをさらに含む、
コンピュータ支援方法。
【請求項2】
前記医療診断データは、少なくとも1つの医療診断及び/又は医療の長期的影響に関する情報を含む、請求項1に記載のコンピュータ支援方法。
【請求項3】
前記医療診断データは、前記車両乗員の負傷の可能性のある重症度を示す指標値を含む、請求項1又は2に記載のコンピュータ支援方法。
【請求項4】
前記個人事故データは、前記事故の直前及び/又は前記事故
の間の車両の物理的動作データをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンピュータ支援方法。
【請求項5】
機械学習を実装するためのアルゴリズムを使用して実行される、請求項1から4のいずれか一項に記載のコンピュータ支援方法。
【請求項6】
前記アルゴリズムは、事前に提供された一連の個人事故データを使用して、
以前に保存されたパターンとして保存された画像データからいくつかのパターンを識別するのに適している、請求項5に記載のコンピュータ支援方法。
【請求項7】
前記以前に保存されたパターンは、事故データベースに保存されている、請求項1から6のいずれかに記載のコンピュータ支援方法。
【請求項8】
1人又は複数の車両乗員の個人事故データのコンピュータ支援分析用の装置であって、
前記個人事故データは、少なくとも、事故
の間の車両乗員のビデオシーケンスの画像データを含み、当該装置は:
前記画像データに基づいてパターンを認識するための認識ユニット、
事故
の間の車両乗員の移動シーケンスを含む前記認識されたパターンを、
複数の以前に保存されたパターンと比較するための比較ユニット、
を含み、
前記認識された
パターン及び/又は前記以前に保存されたパターンは、
前記車両乗員の頭及び/又は首及び/又は胸部及び/又は胴体及び/又
は四肢の加速プロセスの時系列、及び/又は
前記車両乗員の頭部及び/又は首及び/又は
胸部及び/又は胴体及び/又は四肢の変位の時系列を含み、
前記以前に保存されたパターン
はそれぞれ、医療診断データ
に割り当てられ、当該装置はさらに、
前記比較に基づいて、前記認識されたパターンが、前記複数の以前の保存されたパターンのうちの1つの以前の保存されたパターンに対応するとき、前記認識されたパターン
に対応する前記以前の保存されたパターンに割り当てられた医療診断データ
を出力するための
出力ユニットを含
む、装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置と、事故
の間の車両乗員のビデオシーケンスの画像データを捕捉するための高速カメラと、前記高速カメラによって捕捉された画像データを記憶するためのデータメモリ、好ましくはリングメモリ、とを含む事故支援システム。
【請求項10】
車両の物理的動作データを取得するための動作データ取得ユニットをさらに含む、請求項9に記載の事故支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1人又は複数の車両乗員の個人事故データを分析するためのコンピュータ支援方法、ならびに1人又は複数の車両乗員の個人事故データのコンピュータ支援分析のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転手や他の車両の乗員は、交通事故の結果としてさまざまな怪我をする可能性がある。事故、特に後部衝突の場合、頸椎(固定トランクに対するヘッドの突然の予期しない動きのため)、頭自体、胸郭だけでなく、体幹や四肢も特に怪我をする傾向がある。シートベルトを握っているときの事故時の胴体(Rumpf)に対する頭のさまざまな横滑り運動は、例えば、数百ミリ秒の範囲の非常に短い時間内に起こる。結果として生じる損傷又は医学的症状はむち打ち症(頸椎の歪み又はむち打ち症症候群とも呼ばれる)と呼ばれ、靭帯の過度の伸展から脊椎骨折又は致命的な損傷までの重症度に及ぶ可能性がある。
【0003】
ただし、不利な衝撃角度により、シートベルトの保持機能が機能しなくなり、複数の外傷が無制限に発生する可能性があり、これは、グラフィカルに示すことができる。ただし、発生する傷害のほとんどは、従来の医療画像処理手順、例えばX線診断では描写が困難又は不可能であり、これにより、とりわけ、長期的な損傷による利益に対する医療診断及び保険金請求の証明がより困難になる可能性がある。
【0004】
一方、一部の怪我の場合、患者の可能な限り最良の回復を確実にし、少なくとも可能な後期後遺症を減らすことができるようにするため、治療がタイムリーで、特定の怪我に合わせて調整されることが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
米国特許第6 760 009 B1号では、乗客エリアの第1および第2の画像を生成するための一対のカメラを含む自動車制御システムが開示されている。距離プロセッサは、第1の画像と第2の画像との間で変位した物体の距離を決定し、距離分析によって、物体の動きおよびこの動きの速度を決定することができる。距離情報はまた、画像内の事前定義されたパターンを検出し、したがってオブジェクトを識別するために使用され得る。
【0006】
US 2016/001781 A1から、車両システムを制御するための方法が知られており、1つまたは複数の監視システムの監視情報を受信し、1つまたは複数の監視システムからの監視情報に基づいて複数の車両ステータスを決定する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の1人又は複数の乗員の個人事故データを分析するためのコンピュータ支援方法、請求項11に記載の1人又は複数の車両乗員の個人事故データのコンピュータ支援分析のための装置、及び請求項13に記載の事故支援システムによって達成される。デバイスはまた、以下又はサブクレームに記載された方法の特徴によって、又はその逆によってさらに開発することができ、又は以下又はサブクレームにあるデバイスの特徴を互いに使用して、さらなる開発を行うこともできる。
【0008】
本発明によるコンピュータ支援方法は、1人又は複数の車両乗員の個人事故データを分析するために使用され、個人事故データは、少なくとも事故中の車両乗員のビデオシーケンスの画像データを含む。 この方法は、画像データに基づいてパターンを認識する少なくとも第1のステップと、認識されたパターンをいくつかの以前に保存されたパターン、好ましくは複数の以前に保存されたパターンと一致させる少なくとも第2のステップを含む。
【0009】
この目的は、請求項1に記載の1人又は複数の乗員の個人事故データを分析するためのコンピュータ支援方法、請求項8に記載の1人又は複数の車両乗員の個人事故データのコンピュータ支援分析のための装置、及び請求項9に記載の事故支援システムによって達成される。デバイスはまた、以下又はサブクレームに記載された方法の特徴によって、又はその逆によってさらに開発することができ、又は以下又はサブクレームにあるデバイスの特徴を互いに使用して、さらなる開発を行うこともできる。
【0010】
「パターン(Muster)」又は「事故パターン」とは、ここでは、画像データから抽出され、車両の乗員に関する事故の経過を特徴付ける特徴を意味すると理解される。このような機能は、特に運動学的データである可能性がある。
【0011】
ここでのビデオシーケンスは、以下に説明するように、そこからパターンを認識できるようにするために、十分な数の画像、すなわち、十分な量の画像データを含むことが好ましい。この目的のために、ビデオシーケンスは、例えば、高速カメラによって提供することができ、高速カメラは、毎秒多数のフレーム(フレーム毎秒(frames per second)、略してfps)、例えば、少なくとも700fps又は少なくとも1000fpsを記録するように設計されている。事故プロセス中、及び場合によっては事故プロセス前及び/又は事故プロセス中の短い期間に、1人又は複数の車両乗員の一連の動き全体を記録するため、ビデオシーケンスは、好ましくは、十分に長い記録時間を含む。例えば、ビデオシーケンスは、10秒又は15秒の記録時間に対応できる。
【0012】
第2のステップで実行された比較の結果は、例えば、認識されたパターンが以前に保存されたパターンの1つに対応することである。ここで、以前に保存されたパターンは、特に以前の事故プロセスで記録された画像データに基づくことができる。この場合、つまり、パターンが一致すれば、以前の事故から決定された詳細情報を提供できる。したがって、例えば、以前の事故で発生した怪我などの経験値を使用することが可能である。パターンの認識とパターンの比較は自動的に行われるため、手動分析の場合よりも優れた結果を得ることができる。例えば、最初の救急隊員や主治医が、提供されたビデオシーケンスを視覚的にのみ分析し、コンピュータの支援を受けない場合などである。
【0013】
決定されたパターンは、例えば、長期的な損害などが原因で保険会社からの利益を請求された場合に、より良い証拠を提供するためにも使用できる。
【0014】
以前に保存されたパターンと決定されたパターンの一致は、100パーセント一致する必要はない。これは、例えば95%や90%など、以前に確立された信頼区間内での部分的な一致の場合もある。比較ユニットは、例えば、それぞれの場合に2つの以前に提供されたパターンに部分的に一致するパターンを認識し、これらの2つの以前に提供されたパターンに従って可能なデータ出力又は情報出力を提供するように設計することもできる。
【0015】
認識された及び/又は以前に保存されたパターンは、好ましくは、事故中の車両乗員の移動シーケンス、特に、頭及び/又は首及び/又は胸郭及び/又は体幹及び/又は車両乗員の四肢の加速プロセスの時系列、及び/又は頭及び/又は首及び/又は胴及び/又は胸郭及び/又は車両乗員の四肢のたわみの時系列、を含む。
【0016】
このような移動シーケンスは、ビデオシーケンスの個々の画像の時系列シーケンスによって与えられ、個々の画像が評価され、組み合わされて、対応する移動シーケンスが形成される。この一連の動きは、例えば、車両乗員の個々の又は複数の身体部分(頭、首、胸郭、胴体及び/又は四肢など)、又は個々の又は複数の身体部分の相互の相対的な動きに関連し得る。したがって、個々の画像は、例えば、それぞれの身体部分の対応する位置に関して評価することができる。
【0017】
本出願の文脈において、加速又は加速プロセスは、正の、すなわち速度の増加、及び負の、すなわち減速、加速又は加速プロセスの両方を意味すると理解される。
【0018】
事故関連の傷害は本質的に1つ又は複数のそのような運動シーケンスによって引き起こされるため、運動シーケンスに基づく、又はそれを含むそのようなパターンは、発生する傷害の優れた指標となり得る。したがって、画像データの自動評価、すなわち画像データからのパターンの認識は、例えば、最初の検査の前に、又はそれに関連して、起こり得る損傷の評価を取得することを可能にすることができる。このようにして、例えば、初期治療を可能な限り傷害に合わせて調整することができ、及び/又は傷害を見落とすリスクを低減することができ、及び/又は傷害又は異なる身体領域を、(予想される)傷害の重症度に応じて時間の観点から治療又は検査することができる。したがって、例えば、犠牲者に対してより良い医療(初期)ケアを提供することは一般的に可能である。
【0019】
医療診断データは、以前に保存されたパターンに割り当てられることが好ましく、この方法は、認識されたパターンに割り当てられた医療診断データを出力する第3のステップをさらに含む。より好ましくは、医学的診断データは、少なくとも1つの医学的診断及び/又は後期医学的結果に関する情報を含み、及び/又は医学的診断データは、車両乗員への傷害の可能な重症度の程度を示す指標値を含む。このような医療診断データを使用すると、例えば、車両の乗員に起こりうる怪我を簡単な方法で、特に事前に、つまり最初の検査の前に認識及び/又は評価することができる。例えば、傷害の重症度の値を示す指標値は、異なる身体部位及び/又は身体部分に提供することができ、負傷者への傷害の治療の時系列は、それぞれの指標値に基づいて確立することができる。この方法により、診断データを可能な限り迅速かつ迅速に提供できる。これは、生命を脅かす怪我の場合に非常に重要である。さらに、医療診断データは、従来の医療診断方法、特に、例えば、医療診断を容易及び/又は改善するために、例えば、X線検査などの医療画像化方法をサポートするために使用することができる。
【0020】
個人的な事故データは、好ましくは、事故の直前及び/又は事故中の、車両の物理的動作データ、例えば、その速度及び/又は加速度をさらに含む。これにより、例えば、パターンを認識するための画像データに加えて、これらを使用することが可能になる。
【0021】
本発明による方法は、好ましくは、機械学習を実施するためのアルゴリズムを使用して実行され、アルゴリズムは、さらに好ましくは、事前に格納されたパターンとして格納された画像データからいくつかのパターンを識別するために事前に提供された一連の個人事故データを使用するのに適している。
【0022】
機械学習とは、ここでは一般に、経験(つまり以前の事故)からの知識の生成(この場合、個人の事故データ、特に画像データから、場合によっては医療診断データに関連する特定のパターンの抽出)を意味すると理解される。原則として、アルゴリズムは例から、つまり以前の事故から学習するように、つまり適切なパターンを抽出し、未知の個人的な事故データ、特に画像データを評価するように設計されている。
【0023】
パターンを学習し、それを事前に提供されたパターンとして保存するために、アルゴリズムは、好ましくは、特に対応する医療診断データと併せて、過去の事故からの一連の個人事故データ(すなわち、複数の個人事故データ)、特に画像データを事前に提供される。この学習フェーズの後、特に、提供された個人的な事故データからパターンを認識し、これを、例えば、特定の傷害及び/又は傷害カテゴリに割り当てるため、アルゴリズムは上記の方法の少なくとも一部を実行できる。例えば、さまざまな負傷を負傷カテゴリにグループ化できる。
【0024】
機械学習を実装するためのそのようなアルゴリズムを使用すると、例えば、上記の方法を少なくとも部分的に自動的に実行することが可能である。特に、多数のデータ(過去の事故から事前に提供された個人的な事故データ)を提供することができ、それに基づいて以前に提供されたパターンが決定される。また、事故などが発生した場合でも、対応するパターンをすばやく簡単に特定できる。
【0025】
事前に保存されたパターンは、事故データベースに保存されることが好ましい。これにより、例えば、以前に保存されたパターンへのアクセスが可能になる。他方、そのようなデータベースは、例えば、追加の又は新たに決定されたパターンを保存することによって、及び/又はさらなる医療診断データを追加することによって、例えば、必要に応じてそれを更新及び/又は拡張することを可能にする。特に、機械学習を実装するための上記のアルゴリズムは、データベースに新しい認識されたパターンを格納するように設計できる。
【0026】
本発明による装置は、1人又は複数の車両乗員の個人事故データのコンピュータ支援分析に使用され、個人事故データは、少なくとも事故中の車両乗員のビデオシーケンスの画像データを含む。この装置は、画像データに基づいてパターンを認識するための認識ユニットと、認識されたパターンを以前に保存されたいくつかのパターンと比較するための比較ユニットとを備える。装置は、好ましくは、認識されたパターンに割り当てられた医療診断データを出力するための出力ユニットをさらに備える。したがって、例えば、そのような装置を用いたコンピュータ支援方法に関連して上記の効果を達成することが可能である。
【0027】
本発明による事故支援システムは、個人事故データのコンピュータ支援分析のための上記の装置と、事故中の車両乗員のビデオシーケンスの画像データをキャプチャするための高速カメラと、高速カメラによってキャプチャされた画像データを格納するためのデータメモリ、好ましくはリングメモリとを備える。事故支援システムは、好ましくは、車両の物理的動作データを取得するための動作データ取得ユニットをさらに備える。これにより、例えば、車両の乗員に起こりうる怪我に関する情報をより迅速に提供することが可能になる。
【0028】
本発明のさらなる特徴及び有用性は、添付の図面の助けを借りた例示的な実施形態の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、個人事故データを記録するためのシステムを備えた車両の概略図であり、個人事故データのコンピュータ支援分析のための装置に接続されている。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による、個人事故データのコンピュータ支援分析のための装置の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明による個人事故データを分析するための方法を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、車両乗員3を備えた車両1と、個人事故データを記録するための概略的に示された車載システム2を示し、これは、個人事故データのコンピュータ支援分析のための本発明による装置20にデータ接続を介して接続されている。
図1に例として示されている車両1は自動車(KFZ)であるが、例えば、実用車両として設計することもできる。
【0031】
個人事故データを捕捉するための車内システム2は、画像データを捕捉するための高速カメラ4として設計された少なくとも1つのカメラ、データ記憶のためのリングメモリとして設計されたデータメモリ(図示せず)、及びリングメモリに記憶されたデータを装置20に送信するための伝達ユニット(図示せず)を備える。システム2は、オプションとして、車両1の物理的動作データを取得するための動作データ取得ユニット(図示せず)も含む。
【0032】
システム2の高速カメラ4は、車両乗員3が配置されている車内の領域をキャプチャするのに適した方法で車両1に設計及び配置されている。つまり、車両乗員3の画像の形式でビデオシーケンスを記録する。高速カメラ4は、車両乗員3の全身を捕捉する必要はない。むしろ、体の上部、特に頭5、首、上半身及び/又は肩の領域をキャプチャするだけで十分である。カメラは、より遠位の身体領域も記録することが好ましい。
【0033】
高速カメラ4は、例えば少なくとも700fps、好ましくは少なくとも1000fpsの高い記録速度を有する。ビデオシーケンスの画像は、高速カメラ4によってデジタル画像データとしてキャプチャされる。
【0034】
高速カメラ4は、データケーブルなどのデータ接続を介してリングメモリに接続されている。リングメモリは、高速カメラ4によってキャプチャされた画像データ20をデジタル形式で格納するのに適している。あるいは、リングメモリは、高速カメラ4の内部メモリであってもよい。
【0035】
リングメモリは、所定のサイズ又は記憶容量を備えたデジタルメモリであり、データ、この場合はとりわけ高速カメラによってキャプチャされた画像データが連続的に保存される。リングバッファの最大サイズに達し、リングバッファがいっぱいになると、保存されている最も古い要素が上書きされ、データが環状カーブ(Schleife)(ループ(Loop)とも呼ばれる)に保存される。したがって、メモリのグラフィック表現はリング状になる。リングメモリは、例えば、適切なソフトウェアによって実装することができ、それによって、デジタルメモリ内のデータの格納及び読み出しがそれに応じて制御される。リングメモリのサイズ又はそのストレージ容量は、高速カメラによって記録された画像と、数秒の時間間隔、例えば10秒又は20秒の間に保存される車両の物理的な動作データを保存してから、再度上書きするのに十分であることが好ましい。
【0036】
オプションの動作データ取得ユニットは、動作データ取得ユニットによって取得された車両1の物理動作データをリングメモリに格納するために、データ接続、例えばデータケーブルを介してリングメモリにも接続されることが好ましい。運転データ取得ユニットは、例えば、速度センサとして、及び/又は位置センサとして、例えば、GPSとして、及び/又は車両1の瞬間速度又は位置又は加速度を運転データとして取得するための加速度センサとして設計することができる。
【0037】
リングメモリは、データケーブルなどのデータ接続を介してシステム2の伝送ユニットにも接続される。送信ユニットは、リングバッファに格納された画像データ及びオプションで動作データを個人事故データ10として、好ましくは暗号化された形式で、無線送信方法によって装置20に送信するのに適している。この目的のために、伝送ユニットはデータインターフェース(図示せず)を備える。
【0038】
システム2は、詳細に説明されていない追加のコンポーネント、例えばシステム2の個々のコンポーネントを制御するための制御ユニット、事故を検出するためのセンサ、車内を照らすための照明装置、データ及び/又はさらなるデータメモリを分析するための分析ユニットなど、を含めることもできる。
【0039】
システム2の動作中、高速カメラ4は、車両1が動いている間、車両乗員3を連続的に撮影する。つまり、車両乗員3から画像データをキャプチャし、リングメモリに送信する。オプションで、同時に、動作データ取得ユニットは、好ましくは連続的に、車両1の動作データを記録し、それらをリングメモリに送信する。事故が発生しない限り、リングメモリに保存されているデータは、特にリングメモリの記録容量に依存する特定の記録期間の後に新しいデータで上書きされる。
【0040】
事故が発生した場合、この継続的なデータストレージが中断されるため、リングメモリ内のデータが上書きされることはなくなる。したがって、データの保存が終了した後、事故が発生した期間の画像データとオプションで物理的な動作データがリングメモリにある。次に、これらは、個人事故データ10として、個人事故データを分析するために、送信ユニットから装置20に送信される。あるいは、個人的な事故データを別の外部機関に、例えば、救助管制センター及び/又は別の医療施設及び/又は車両外部のデータ保存装置に送信することができ、例えば、外部サーバー又はクラウドであり得、装置20で使用するためにこの外部の場所によって提供され得る。個人事故データ10の送信は、無線で、例えば、無線、特に移動無線、又はインターネットによって行われ、例えば、電子的に送信された緊急通報(いわゆるeCall)と一緒に行うことができる。個人事故データ10は、好ましくは、例えば、OpenPGPを使用して、暗号化された形式で送信される。ここで、個人事故データ10は、装置20又は外部位置によって生成された公開鍵を使用して送信ユニットによって暗号化され、装置20又は外部位置の対応する秘密(秘密)鍵を使用してのみ再び復号化することができる。
【0041】
あるいは、個人事故データのコンピュータ支援分析用の装置20は、第1の助手が彼と一緒に携帯し、データ接続、特にデータケーブルなどを介して伝送ユニットに接続できるモバイルデバイス(図には示されていない)に実装することができる。車載システム2と組み合わせたモバイルデバイスは、事故支援システムの一例である。これは、車両の乗員に起こりうる怪我を迅速に検出するために使用される。
【0042】
個人事故データのコンピュータ支援分析のために
図2に概略的に示されている装置20は、少なくとも1つの認識ユニット21、比較ユニット22、及び出力ユニット23を備える。個人事故データのコンピュータ支援分析のための装置20の動作は、
図3を参照して以下に説明される。
【0043】
個人事故データを分析するための本発明によるコンピュータ支援方法の第1のステップS1(
図3を参照)において、認識ユニット21は、個人事故データ10の画像データからパターンM(x)を認識する。任意選択で、画像データに加えて、認識ユニットは、車両1の物理的動作データを使用して、パターンM(x)を認識することができる。
【0044】
パターンMは、一般に、事故時の車両乗員3の1つ又は複数の移動シーケンスを表す。例えば、パターンは、車両乗員3の少なくとも1つの身体部分の加速又は加速の時間的シーケンスを含むことができる。代替的又は追加的に、パターンは、車両乗員3の少なくとも1つの身体部分の相対的及び/又は絶対的偏向の時系列を含むことができる。そのような身体部分は、特に、車両乗員3の頭5及び/又は首及び/又は胸郭及び/又は胴及び/又は四肢、例えば腕であり得る。特に、異なる身体部分の相対的なたわみ及び/又は加速度もまた、互いに関して、すなわち、例えば、車両乗員3の肩領域又は上半身に対する頭部5の相対的なたわみを考慮することができる。オプションで、パターンには、事故の直前及び/又は事故中の車両の物理的な動作データ、例えば加速度及び/又は速度を含めることもできる。
【0045】
続いて、第2のステップS2において、比較ユニット22は、認識ユニットによって認識されたパターンM(x)を、以前に記憶されたいくつかのパターンM(1)からM(n)と比較する。以前に格納されたパターンは、例えば、データベースに格納することができ、データベースは装置20の内部メモリであり、又は比較ユニット22は、装置の外部のデータベース(事故データベースとも呼ばれる)にアクセスする。比較の結果、認識されたパターンM(x)は以前に保存されたパターンM(1)からM(n)のいずれかに対応するか、又は認識されたパターンM(x)は以前に保存されたパターンのいずれにも対応しない。
【0046】
例えば、データベースには、M(1)からM(n)までのn個のパターンを含めることができる。ここで、nは1以上の自然数である(n≧1)。データベースは、好ましくは、いくつかのパターン、M(1)からM(n)、すなわち、複数のパターン、すなわち、n>1を含む。パターンM(1)からM(n)は、好ましくは異なるパターンである。
【0047】
医療診断データD(1)からD(p)は、データベース(又は医療診断データのセット)にも保存されることが好ましい。ここで、pも1以上の自然数(p≧1)である。医療診断データD(1)からD(p)の数pは、データベースに以前に保存されたパターンの数nに対応することが好ましい(つまり、p=n)。ここで、n個のパターンM(1)からM(n)のそれぞれには、正確に1セットの医療診断データD(1)からD(p)が割り当てらる。
【0048】
一連の医療診断データD(i)(1≦i≦p)は、少なくとも1つの医療診断及び/又は医療の長期的影響に関する情報を含む。医療診断データ、すなわち医療診断及び/又は医療の長期的影響に関する情報は、特にパターンM(i)が認識された別の乗員の以前の事故から得られた情報に関連しており、診断データD(i)が割り当てられる。
【0049】
医療診断データには、車両乗員の負傷の種類及び/又は重症度に関する情報が含まれている。事故直後に発見された怪我だけでなく、事故後、つまり事故から数日、数週間、さらには数ヶ月後に発生する障害(長期的な影響)も考慮に入れることができる。
【0050】
代替的又は追加的に、一連の医療診断データD(i)に損傷の重症度を割り当てることができる。この目的のために、傷害は、例えば、軽度、中度、重度、非常に重度、又は生命を脅かすものとして分類することができ(例えば、「軽い」、「中」、「難しい」、「非常に難しい」、「生命を脅かす」、又は1(簡単)から5(生命を脅かす)までのスケールで)、対応する指標値を医療診断データD(i)に保存することができる。
【0051】
ステップS2で、認識されたパターンM(x)を以前に保存されたパターンM(1)からM(n)と比較すると、認識されたパターンM(x)が以前に保存されたパターンの1つに対応することが示される、つまり、M(x)=M(j)、ここで1≦j≦nである場合、ステップS3(
図3を参照)の出力ユニット23(
図2を参照)は、このパターン及び/又はパターンM(j)自体に対応する診断データD(j)を出力する。
【0052】
以前に保存されたパターンと関連する医療診断データをデータベースに保存するには、次の手順を使用できる。: 例えば、個人的な事故データとそれらに割り当てられた医療診断データのペアがそれぞれの場合に提供される。個人の事故データ及び医療診断データは、例えば、以前の事故から決定されたデータであり得る。適切なパターンは、適切なアルゴリズムを使用して、おそらく車両の物理的動作データ及び/又は医療診断データと組み合わせて、画像データから認識される。アルゴリズムは、機械学習の方法に基づくことが好ましい。つまり、提供されたデータのみに基づいて、データから対応するパターンを独立して認識するのに適している。
【0053】
この方法で認識された各パターンは、データベース又は別のデータメモリに対応する医療診断データとともに以前に保存されたパターンとして保存される。
【0054】
ステップS2で認識されたパターンM(x)を以前に保存されたパターンM(1)からM(n)と比較すると、認識されたパターンM(x)が以前に保存されたパターンのいずれにも対応しないことが示される。出力ユニットは、対応する情報を、例えば、テキスト及び/又は光又は音響信号の形で出力するように設計されることが好ましい。あるいは、又はそれに加えて、出力ユニットは、認識されたパターンM(x)自体を出力することもできる
【0055】
オプションで、以前に保存されたパターンM(1)からM(n)のいずれにも対応しない、認識されたパターンM(x)もデータベースに保管できる(hinterlegt)、つまり、保存できる。そして対応する診断データが利用可能な場合、例えば、初期及び/又は後続の診断及び/又は晩期障害に関する情報が含まれる場合、これらを新しく保存されたパターンM(x)に割り当て、これに関連してデータベースに保存できる。
【0056】
請求項1
1人又は複数の車両乗員(3)の個人事故データ(10)を分析するためのコンピュータ支援方法であって、
ここで、前記個人事故データ(10)は、事故中の車両乗員(3)のビデオシーケンスの少なくとも画像データを含み、
ここで、当該方法は、
前記画像データに基づいてパターン(M(x))を認識する少なくとも1つの第1のステップ(S1)、及び
前記認識されたパターン(M(x))をいくつかの以前に保存されたパターン(M(1)…M(n))と比較する少なくとも1つの第2のステップ(S2)、
を含む、コンピュータ支援方法。
請求項2
認識されたパターンは、前記事故中の前記車両乗員(3)の移動シーケンスを含む、請求項1に記載のコンピュータ支援方法。
請求項3
認識された、及び/又は以前に保存されたパターンは、頭部(5)及び/又は首及び/又は胸郭及び/又は体幹及び/又は車両乗員の四肢(3)の加速プロセスの時系列、及び/又は頭(5)及び/又は首及び/又は胴及び/又は胸郭及び/又は車両乗員の四肢(3)のたわみの時系列を含む、請求項2に記載のコンピュータ支援方法。
請求項4
医療診断データ(D(1)...D(p))は、以前に保存されたパターン(M(1)...M(n))に割り当てられる、且つ、当該方法は、前記認識されたパターン(M(j))に割り当てられた医療診断データ(D(j))を出力する第3のステップ(S3)をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンピュータ支援方法。
請求項5
前記医療診断データ(D(1)...D(p))は、少なくとも1つの医療診断及び/又は医療の長期的影響に関する情報を含む、請求項4に記載のコンピュータ支援方法。
請求項6
前記医療診断データ(D(1)...D(p))は、前記車両乗員(3)の負傷の可能性のある重症度を示す指標値を含む、請求項4又は5に記載のコンピュータ支援方法。
請求項7
前記個人事故データ(10)は、前記事故直前及び/又は前記事故中の車両の物理的動作データをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のコンピュータ支援方法。
請求項8
機械学習を実装するためのアルゴリズムを使用して実行される、請求項1から7のいずれか一項に記載のコンピュータ支援方法。
請求項9
前記アルゴリズムは、事前に提供された一連の個人事故データ(10)を使用して、事前に保存されたパターン(M(1)...M(n))として保存された画像データからいくつかのパターンを識別するのに適している、請求項8に記載のコンピュータ支援方法。
請求項10
前記以前に保存されたパターン(M(1)...M(n))は、事故データベースに保存される、請求項1から9のいずれかに記載のコンピュータ支援方法。
請求項11
1人又は複数の車両乗員(3)の個人事故データ(10)のコンピュータ支援分析用装置であって、ここで、前記個人事故データ(10)は、少なくとも、事故中の車両乗員(3)のビデオシーケンスの画像データを含み、ここで、当該装置(20)は、以下:
前記画像データに基づいてパターン(M(x))を認識するための認識ユニット(21)、及び
前記認識されたパターン(M(x))を多数の以前に保存されたパターン(M(1)...M(n))と比較するための比較ユニット(22)、
を含む装置。
請求項12
認識されたパターン(M(j))に割り当てられた医療診断データ(D(j))を出力するための出力ユニット(23)をさらに含む、請求項11に記載の装置。
請求項13
請求項11又は12に記載の装置と、事故時の前記車両乗員(3)のビデオシーケンスの画像データを捕捉するための高速カメラと、前記高速カメラによって捕捉された画像データを記憶するためのデータメモリ、好ましくはリングメモリ、とを含む事故支援システム。
請求項14
車両(1)の物理的動作データを取得するための動作データ取得ユニットをさらに含む、請求項13に記載の事故支援システム。
【符号の説明】
【0057】
1 車両
2 車内システム
3 車両乗員
4 高速カメラ
5 頭
10 個人事故データ
20 装置