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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】表面実装ヒューズ
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/175 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
H01H85/175
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021093567
(22)【出願日】2021-06-03
(65)【公開番号】P2022140210
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】110108778
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】510101697
【氏名又は名称】功得電子工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Conquer Electoronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.26,Wucyuan 5th RD.,Wugu Dist.,New Taipei City,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】邱 鴻智
(72)【発明者】
【氏名】邱 柏碩
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0294126(US,A1)
【文献】特開2009-076330(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117578(WO,A1)
【文献】特開2004-152518(JP,A)
【文献】中国実用新案第211265400(CN,U)
【文献】国際公開第2018/159283(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0111240(US,A1)
【文献】特許第5737664(JP,B2)
【文献】国際公開第2015/174270(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3189207(JP,U)
【文献】米国特許第05604475(US,A)
【文献】特開平09-063455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00 - 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口及び非気密型内部空間を有するハウジングと、
互いに一体的に形成された溶断部と、二つの中間部と、二つの導電部とを有するヒューズエレメントであって、各前記中間部が、前記溶断部における一対の端部と、一対の前記導電部との間に接続され、前記溶断部及び二つの前記中間部が前記ハウジングの非気密型内部空間内に設置され、各前記導電部が、前記ハウジング外に延出するように前記ハウジングの開口に設置されているヒューズエレメントと、
前記ハウジングの開口に取り付けられている蓋と、
を備え、
前記ハウジングの開口は、長方形をなし、且つ、当該ハウジングの上面を構成する、対向する二つの第1縁部及び対向する二つの第2縁部を有し、
前記ハウジングの蓋は、直方体をなし、且つ、当該蓋の横方向の側面を構成する、対向する二つの第3縁部及び対向する二つの第4縁部を有し、
前記開口における二つの前記第1縁部の高さは、二つの前記第2縁部の高さよりも高く、
前記蓋の二つの前記第4縁部は、前記開口の二つの前記第2縁部のそれぞれに設置され、且つ前記蓋の外表面は前記開口の二つの第1縁部と面一となり、
前記ヒューズエレメントの二つの前記導電部は、前記開口の二つの前記第2縁部のそれぞれに設置され、且つ前記蓋における対応する第4縁部に向かって延出するとともに、前記蓋の外表面に沿うように前記蓋の外表面に向かって延出しており、
前記蓋の少なくとも一つの前記第3縁部と、前記開口における対応する前記第1縁部との間に隙間が形成されている表面実装ヒューズ。
【請求項2】
二つの前記中間部及び前記溶断部は、前記開口から離れるように湾曲した弧状に形成されている、請求項1に記載の表面実装ヒューズ。
【請求項3】
前記蓋に少なくとも一つの貫通孔が形成されている、請求項2に記載の表面実装ヒューズ。
【請求項4】
前記少なくとも一つの貫通孔は、前記蓋の縁部のうちの一つに形成されている、請求項3に記載の表面実装ヒューズ。
【請求項5】
前記蓋の二つの前記第3縁部のそれぞれと、前記開口における対応する前記第1縁部との間に隙間が形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の表面実装ヒューズ。
【請求項6】
前記ヒューズエレメントの前記溶断部は、
第1部と、
前記第1部の両端部から延出し、且つ一対の前記中間部にそれぞれ接続される二つの第2部とを有し、
二つの前記第2部のそれぞれに孔部が形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の表面実装ヒューズ。
【請求項7】
前記溶断部の第1部は一字状に形成されており、
二つの前記中間部の幅は、前記溶断部の第1部の幅より大きい、請求項6に記載の表面実装ヒューズ。
【請求項8】
前記ヒューズエレメントの前記溶断部は蛇腹状に湾曲している、請求項1から4のいずれか一項に記載の表面実装ヒューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装ヒューズに関し、特に表面実装技術を用いて設置される表面実装ヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒューズは、ヒューズエレメントを有しており、当該ヒューズが直列に接続された保護対象の回路に異常(例えば過電流)が発生した際にヒューズエレメントが過熱によって溶断されて保護対象の回路が遮断されることで、回路を保護する目的が果たされる。しかし、ヒューズエレメントが溶断した際、溶断箇所には極めて強い電場が存在する。電場の存在によって絶縁体である空気層が絶縁破壊されて電気アークが発生すると、回路を即時に遮断するというヒューズの本来の目的が達成できなくなる。この問題を解決するために、ヒューズエレメントを消弧材で被覆し、電気アークを吸収して消滅させることを可能にしたヒューズが従来より知られていた。
ところで、消弧材は熱伝導率が低い。そのため、従来のヒューズには、ヒューズの表面への熱の放出が難しく、ヒューズエレメントに熱が溜まりやすいという問題があった。更に、消弧材によってヒューズエレメントを内部に気密的に封止した従来のヒューズでは、外部の圧力が変化すると、気圧差によってヒューズエレメントに圧力がかかることがある。これら問題は、ヒューズエレメントの早期劣化の原因となる。劣化したヒューズエレメントは、印加された電流が定格電流に達していないにもかかわらず高温によって溶断してしまうことがあり、ヒューズの信頼性の低下につながりうる。したがって、改善が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、信頼性の高い表面実装ヒューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記発明の目的を達成するために提供される本発明に係る表面実装ヒューズは、
開口及び非気密型内部空間を有するハウジングと、
溶断部と、二つの中間部と、二つの導電部とを有するヒューズエレメントであって、各前記中間部が、前記溶断部における一対の端部と、一対の前記導電部との間に接続され、前記溶断部及び二つの前記中間部が前記ハウジングの非気密型内部空間内に設置され、各前記導電部が、前記ハウジング外に延出するように前記ハウジングの開口に設置されているヒューズエレメントと、
前記ハウジングの開口に取り付けられている蓋とを備えている点に特徴がある。
【発明の効果】
【0005】
以上のように、ハウジングの内部空間は非気密状態であり、溶断部は、熱伝導率の低い材料によって覆われることなく非気密状態の内部空間内に配置されている。これにより、溜まる熱によるヒューズエレメントの早期劣化を回避することができる。また、ハウジングの内部気圧と外気圧とが同一の大きさになることで、ハウジングの非気密状態である内部空間内に配置されている溶断部には、ハウジングの内外間の気圧差による圧力がかからなくなる。その結果、表面実装ヒューズの信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】本発明の第1実施形態に係る表面実装ヒューズの斜視図である。
図1B図1Aに示す表面実装ヒューズの側面透視図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る表面実装ヒューズの斜視図である。
図3図2に示す表面実装ヒューズの分解斜視図である。
図4A図2のA-A線に沿った断面図である。
図4B図2のB-B線に沿った断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る表面実装ヒューズの断面図である。
図6】本発明の第4実施形態に係る表面実装ヒューズの断面図である。
図7A】本発明の第5実施形態に係る表面実装ヒューズの断面図である。
図7B図7Aに示す表面実装ヒューズの平面図である。
図8】本発明における第2実施形態のヒューズエレメントの斜視図である。
図9】本発明の第6実施形態に係る表面実装ヒューズの斜視図である。
図10A】本発明における第3実施形態のヒューズエレメントの湾曲前の状態を示す平面図である。
図10B】本発明における第3実施形態のヒューズエレメントの湾曲後の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る表面実装ヒューズのいくつかの実施形態を詳細に説明する。
【0008】
図1A及び図1Bに示すように、本発明の第1実施形態に係る表面実装ヒューズ1aは、ハウジング10、ヒューズエレメント20及び蓋30を備える。
【0009】
図3に示すように、ハウジング10は開口11及び内部空間12を有する。本実施形態において、ハウジング10は、直方体をなしており、平面視で長方形をなす横板101と、横板101の四つの縁部から垂直的に延出する縦板102とを有する。これら縦板102は、内部空間12及び開口11を構成するように互いに接続されている。直方体であるハウジング10の開口11は、長方形をなしており、対向する二つの第1縁部111、及び対向する二つの第2縁部112を有する。ある実施形態(図1A参照)において、対向する二つの第1縁部111の高さは対向する二つの第2縁部112の高さよりも高い。ある実施形態において、第1縁部111が長縁部であって第2縁部112が短縁部であり、且つハウジング10がセラミック材料から構成されるが、本発明はこれに限定されない。
【0010】
ヒューズエレメント20は、互いに直交する長手方向と短手方向を有する、平面視形状が略矩形状である板体から構成されており、溶断部21、二つの中間部22、二つの導電部23を有する。図1B及び図3に示すように、ヒューズエレメント20は、ハウジング10の開口11に固定されている。本実施形態において、二つの導電部23は、ヒューズエレメント20の長手方向における両端部にそれぞれ設けられ、溶断部21は、長手方向における略中央部に設けられている。各中間部22は、溶断部21における一対の端部と、一対の導電部23との間に接続されている。溶断部21及び二つの中間部22は、ハウジング10の内部空間12内に配置されており、且つハウジング10の横板101に向かって下方へ湾曲されて弧状に形成されている。ヒューズエレメント20の二つの導電部23は、開口11における二つの第2縁部112のそれぞれに設置されている。また、図8に示すように、溶断部21は、第1部211と、当該第1部211から各中間部22に延出する二つの第2部212とを有する。第1部211は一字状に形成されており、且つ第1部211の短手方向における幅は、各第2部212の短手方向における幅よりも小さい。各第2部212に孔部24が形成されており、溶断部21が溶断すると、溶断箇所間の距離はこれら孔部24の存在により増加し、その結果、電気アークが発生する確率は低くなる。更に、図10Aに示すように、別実施形態において、ヒューズエレメント20は、定格電流が比較的小さい(例えば0.5アンペア~10アンペア)回路の保護に用いられるものとして、溶断部21が非直線状すなわち蛇腹状に湾曲した平板状の経路に形成されており、これにより、中間部22同士間の距離を広げることなく、溶断部21の全長を長くすることができる。ここで、溶断部21の短手方向における幅D1は、中間部22の短手方向における幅D2よりも大きい。そして、図1B及び図3に示す実施形態と同様に、ハウジング10の内部空間12内に設置される前に、ヒューズエレメント20の溶断部21及び二つの中間部22は、図10Bに示すように、横板101に向かって下方へ湾曲されて弧状に形成され、すなわち、溶断部21及び二つの中間部22は、開口11から離れるように湾曲されている。加えて、溶断部21の短手方向における両縁部も開口11から離れる方向に湾曲されている。これにより、溶断部21の短手方向における幅が小さくなるため、ハウジング10の内部空間12へのヒューズエレメント20の設置がより容易となる。
【0011】
蓋30は、ヒューズエレメント20の溶断部21をハウジング10の内部空間12内に封入するように、ハウジング10の開口11内に取り付けられている。本実施形態において、図1A図1B及び図4Bに示すように、本実施形態において、蓋30は、直方体をなしており、対向する二つの第3縁部31と、対向する二つの第4縁部3とを有する。二つの第4縁部32は、開口11の二つの第2縁部112のそれぞれに設置され、蓋30の外表面301は、開口11の対向する二つの第1縁部111と面一となる。ヒューズエレメント20の二つの導電部23は、開口11の対向する二つの第2縁部112のそれぞれに設置され、且つ蓋30における対応の第4縁部32及び外表面301に沿うように、これらに向かって湾曲されている。蓋30における対向する二つの第3縁部31と、開口11における対向する二つの第1縁部111との間には、内部空間12をハウジング10の外部と連通させる隙間G1が形成されており、これにより、内部空間12が非気密状態となる。ある実施形態において、蓋30はセラミック又はプラスチックから形成されている。
【0012】
図2、3、4A及び4Bに示す本発明の第2実施形態に係る表面実装ヒューズ1bは、図1Aに示す第1実施形態の表面実装ヒューズ1aと略同一の構成を有する。但し、本実施形態では、ハウジング10の開口11における対向する二つの第1縁部111と対向する二つの第2縁部112とは高さが同一である。ヒューズエレメント20の二つの導電部23は、ハウジング10の開口11における二つの第2縁部112のそれぞれに設置され、且つハウジング10における対応の縦板102の外側面に沿うように、縦板102の外側面に向かって湾曲されている。
【0013】
図5に示す本発明の第3実施形態に係る表面実装ヒューズ1cは、図4に示す第2実施形態と略同一の構成を有する。但し、本実施形態において、蓋30はハウジング10の開口11に気密的に取り付けられており、且つハウジング10には貫通孔103が形成されている。これにより、内部空間12は非気密状態となる。本実施形態において、貫通孔103は、ハウジング10における平面視で長方形の横板101に形成されているが、貫通孔103の位置はこれに限定されない。ハウジング10のいずれかの縦板102に貫通孔103を形成してもよい。
【0014】
図6に示す本発明の第4実施形態に係る表面実装ヒューズ1dは、図5に示す第3実施形態と略同一の構成を有する。本実施形態においても、蓋30はハウジング10の開口11に気密的に取り付けられている。但し、蓋30には、内部空間12と連通する貫通孔33が更に形成されている。これにより、内部空間12は非気密状態となる。
【0015】
図7A及7Bに示す本発明の第5実施形態に係る表面実装ヒューズ1eは、図2に示す第2実施形態と略同一の構成を有する。但し、本実施形態の表面実装ヒューズ1eにおいて、蓋30の対向する二つの第3縁部31の夫々には、内部空間12と連通する貫通孔33が形成されている。これにより、内部空間12はハウジング10の外部と連通することになる。
【0016】
図9に示す本発明の第6実施形態に係る表面実装ヒューズ1fは、図2に示す第2実施形態と略同一の構成を有する。本実施形態において、ハウジング10の開口11における対向する二つの第2縁部112の夫々に二つの係合溝113が形成されていると共に、これら第2縁部112に対応する、蓋30における対向する二つの第4縁部32に、締りばめ状態で開口11における係合溝113に嵌合される二つの係合部材321が延設されている。ある実施形態において、蓋30はから形成される。
【0017】
上述した実施形態は例示にすぎず、本発明を限定するものではない。本発明を上記実施形態により説明したが、本発明はこれら開示された実施形態に限定されず、当業者であれば、本発明の技術的思想を逸脱することなく、様々な変更および修飾を加えて均等物とすることができる。したがって、上記実施形態に変更、改変および修飾を加えた内容もまた、本発明の技術的思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0018】
1a、1b、1c、1d、1e、1f 表面実装ヒューズ
10 ハウジング
101 横板
102 縦板
103 貫通孔
11 開口
111 第1縁部
112 第2縁部
113 係合溝
12 内部空間
20 ヒューズエレメント
21 溶断部
211 第1部
212 第2部
22 中間部
23 導電部
24 孔部
30 蓋
301 外表面
31 第3縁部
32 第4縁部
321 係合部材
33 貫通孔
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B