(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】粘着テープの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/21 20180101AFI20231017BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231017BHJP
C09J 121/02 20060101ALI20231017BHJP
C09J 133/26 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C09J7/21
C09J7/38
C09J121/02
C09J133/26
(21)【出願番号】P 2021513619
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2020015459
(87)【国際公開番号】W WO2020209212
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2019073290
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃純
(72)【発明者】
【氏名】楯 洋亮
(72)【発明者】
【氏名】吉村 大輔
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-087173(JP,A)
【文献】特開平11-263944(JP,A)
【文献】特開2008-231171(JP,A)
【文献】国際公開第2013/069784(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/060210(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/088303(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/115167(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなる基材と、粘着層とを有する粘着テープの製造方法であって、
水系エマルジョンと、重量平均分子量が400万~3000万のポリカルボン酸系重合体とを含み、B型粘度計を用いて60rpmで測定した粘度が6000~20000mPa・s/23℃である粘着剤塗工液を、前記基材上にロール塗工にて塗工して前記粘着層を形成する工程を含む、粘着テープの製造方法。
【請求項2】
前記粘着剤塗工液を調製する工程をさらに含む、請求項1に記載の粘着テープの製造方法。
【請求項3】
前記粘着剤塗工液が水を含む、請求項1又は2に記載の粘着テープの製造方法。
【請求項4】
前記粘着層の厚みが15μm以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着テープの製造方法。
【請求項5】
前記ポリカルボン酸系重合体が、カルボキシ基を含有するモノマーの誘導体の重合体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の粘着テープの製造方法。
【請求項6】
前記カルボキシ基を含有するモノマーの誘導体が、アクリルアミドである、請求項5に記載の粘着テープの製造方法。
【請求項7】
前記不織布が、スパンボンド不織布である、請求項1から6のいずれか一項に記載の粘着テープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、多孔質体であることから消音性を有し、引張強度に代表される機械的強度に優れ、かつ安価であることから、粘着テープ用基材として広く用いられている。
粘着テープの製造方法としては、例えば、基材の表面に、粘着剤を含む塗工液を塗工して粘着層を形成する方法がある。前記塗工液としては、例えば、水や溶剤等の溶媒を含む塗工液、又は前記溶媒を含まない非溶媒系の塗工液等が知られている。しかしながら、不織布からなる基材上に、溶媒を含む塗工液を塗工して粘着層を形成する場合、不織布は多孔質体であることから、塗工液が浸透して基材の裏側から染み出る、「裏抜け」という現象が生じることがある。近年、環境意識への高まりを受けて、水を溶媒として含む水系塗工液への要望が高まりつつあるが、上述の裏抜けの問題から、水系塗工液の不織布上への直接塗布は難しいとされている。
【0003】
多孔質体の表面に水系塗工液を直接塗布して塗工層を形成する方法として、例えば、特許文献1には、特定の分子量を有するポリカルボン酸系共重合体を含む水溶液を、紙基材の表面にカーテン塗布にて塗工する工程を含む、印刷用塗工紙の製造方法が記載されている。しかしながら、前記製造方法は印刷用紙への塗工に用いられる方法であり、粘着テープの製造においては、塗工膜(すなわち、粘着層)の厚みを大きくする必要があるため、乾燥速度が遅くなり、塗工液の裏抜けが発生するという問題がある。
【0004】
不織布からなる基材上に粘着層を形成する方法としては、前述の裏抜けを防止する観点から、高粘度ホットメルトを用いて、剥離紙等の別のシート上に塗工液を一旦塗布し、その後基材上に転写する、転写塗布での塗工が一般的に行われている。しかしながら、剥離紙を用いた転写塗工は基材の不織布との密着性が低く(すなわち、保持力が低い)、再剥離性を要求される分野の粘着テープの製造には適さないという問題がある。また、ホットメルトで形成された粘着層は耐熱性が低いという問題もある。そのため、製造時に基材からの裏抜けを抑制でき、高い耐熱性及び再剥離性を有する粘着テープを提供できる、粘着テープの製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、不織布からなる基材に水系塗工液を直接塗布して粘着層を形成する、粘着テープの製造方法であって、製造時の裏抜けを防止でき、高い耐熱性及び再剥離性を有する粘着テープが得られる粘着テープの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対して、本願発明者らは鋭意検討した結果、水系エマルジョンと、特定の分子量を有するポリカルボン酸系重合体とを含み、かつ特定の粘度を有する粘着剤塗工液を用いて、ロール塗工にて不織布上に粘着層を形成する工程を有する製造方法にて、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1]不織布からなる基材と、粘着層とを有する粘着テープの製造方法であって、水系エマルジョンと、重量平均分子量が400万~3000万のポリカルボン酸系重合体とを含み、B型粘度計を用いて60rpmで測定した粘度が6000~20000mPa・s/23℃である粘着剤塗工液を、前記基材上にロール塗工にて塗工して前記粘着層を形成する工程を含む、粘着テープの製造方法。
[2]前記粘着剤塗工液を調製する工程をさらに含む、[1]に記載の粘着テープの製造方法。
[3]前記粘着剤塗工液が水を含む、[1]又は[2]に記載の粘着テープの製造方法。
[4]前記粘着層の厚みが15μm以上である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の粘着テープの製造方法。
[5]前記ポリカルボン酸系重合体が、カルボキシ基を含有するモノマーの誘導体の重合体である、[1]から[4]のいずれか一項に記載の粘着テープの製造方法。
[6]前記カルボキシ基を含有するモノマーの誘導体が、アクリルアミドである、[5]に記載の粘着テープの製造方法。
[7]前記不織布が、スパンボンド不織布である、[1]から[6]のいずれか一項に記載の粘着テープの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、不織布からなる基材に水系塗工液を直接塗布して粘着層を形成する、粘着テープの製造方法であって、製造時の裏抜けを防止でき、高い耐熱性及び再剥離性を有する粘着テープが得られる粘着テープの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
[粘着テープの製造方法]
本発明は、不織布からなる基材と、粘着層とを有する粘着テープの製造方法であって、水系エマルジョンと、重量平均分子量が400万~3000万のポリカルボン酸系重合体とを含み、B型粘度計を用いて60rpmで測定した粘度が6000~20000mPa・s/23℃である粘着剤塗工液を、前記基材上にロール塗工にて塗工して粘着層を形成する工程を含むことを特徴とする。
なお、本明細書において、「水系」とは、水中に油状成分が分散していることを意味する。また、「水系エマルジョン」には、適切に選択された粘着付与剤や可塑剤が均一に分散していてもよい。
【0010】
<粘着層>
本発明の粘着層は、水系エマルジョンと、重量平均分子量が400万~3000万のポリカルボン酸系重合体とを含み、B型粘度計を用いて60rpmで測定した粘度が6000~20000mPa・s/23℃である粘着剤塗工液を、前記基材上にロール塗工にて塗工して形成される。
【0011】
(粘着剤塗工液)
本発明において、粘着剤塗工液は、水系エマルジョンと、重量平均分子量が400万~3000万のポリカルボン酸系重合体とを含むものである。また、前記粘着剤塗工液のB型粘度計を用いて60rpmの条件で測定した粘度は、6000~20000mPa・s/23℃である。このような粘着剤塗工液を用いることで、塗工液が基材の裏側から染み出る、裏抜けの現象を防止することができる。また、前記粘着剤塗工液は耐熱性が高いため、本発明の製造方法で得られる粘着テープは高い耐熱性を有する。さらに、前記粘着剤塗工液は基材に対する保持力も高いため、得られる粘着テープは再剥離性も有している。
【0012】
(水系エマルジョン)
本発明の水系エマルジョンとは、分散媒である水中にゴム粒子が分散しているもの(いわゆる、ラテックス)、分散媒である水中に熱可塑性エラストマー粒子が分散しているもの、又は分散媒である水中にアクリル系ポリマーが分散しているものを意味している。すなわち、本発明の水系エマルジョンには、ラテックスも含まれる。
ラテックスは、天然ゴムラテックスであってもよく、合成ゴムラテックスであってもよい。また、ラテックス中の固形分は、例えば、50~99質量%が好ましく、60~90質量%がより好ましい。
このようなラテックスとしては、市販されているものを用いてもよく、例えば、天然ラテックスとしては、KUALA LUMPUR KEPONG BERHAD製の商品名「EXCELTEX-HLX LA-TZ」、(株)レジテックス製の商品名「TRH-70」等が挙げられる。また、合成ラテックスとしては、ムサシノケミカル(株)製の商品名「MG30」、日本ゼオン(株)製の商品名「Nipol(登録商標) LX430」等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、アクリル系ポリマーとしては、例えば、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸等のモノマーを任意の割合で重合したポリマーを使用することができる。
また、熱可塑性エラストマーのエマルジョンとしては、例えば、JSR(株)製の商品名「JSR DYNARON(登録商標)1321P」等が挙げられる。
本発明の1つの態様において、水系エマルジョンは、ラテックスであることが好ましく、天然ラテックスと合成ラテックスとの混合物であることがより好ましい。また、その配合比(天然ラテックス/合成ラテックス)は、3/7~7/3が好ましい。前記混合物を用いることで粘着層の強度と粘着力のバランスを得られやすくなる。
また、水系エマルジョンの粘度は、B型粘度計を用いて測定した値が、10~300mPa・s/23℃であることが好ましく、50~200mPa・s/23℃であることがより好ましい。
【0013】
本発明の1つの態様において、粘着剤塗工液中の水系エマルジョンの割合は、粘着剤塗工液の総質量に対して、5~70量%が好ましく、15~50質量%がより好ましい。粘着剤塗工液中の水系エマルジョンの割合が前記範囲内であれば、塗布時に表面の皮張りの問題がなく、かつ乾燥時間を適切な範囲に調整しやすくなる。
【0014】
(ポリカルボン酸系重合体)
本発明において、ポリカルボン酸系重合体とは、カルボキシ基を含有するモノマー(A)(以下、単に「モノマー(A)」と記載することもある)、又は前記モノマー(A)の誘導体(I)(以下、単に「誘導体(I)」と記載することもある)を重合して得られる重合体を意味する。また、本発明の1つの態様においては、ポリカルボン酸系重合体は、前記モノマー(A)及び前記誘導体(I)からなる群より選択される少なくとも1つを含むモノマー(X)を重合して得られる共重合体であってもよい。
モノマー(A)としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、及びメタクリル酸等が挙げられる。このうち、溶解性の観点から、前記モノマー(A)としては、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
また、誘導体(I)としては、例えば、前記モノマー(A)の、モノ又はジアルカリ土類金属塩、モノ又はジエステル、アミド、イミド、及び無水物等が挙げられる。このうち、水溶性付与の観点から、前記誘導体(I)としては、前記モノマー(A)のモノ又はジアルカリ土類金属、又は前記モノマー(A)のアミドが好ましく、前記モノマー(A)のアミドがより好ましい。
本発明の1つ態様において、ポリカルボン酸系重合体は、カルボキシ基を含有するモノマー(A)の誘導体(I)の重合体であることが好ましい。また、前記誘導体(I)としては、アクリル酸ナトリウム、又はアクリルアミドであることが特に好ましい。誘導体(I)の重合体であることにより、裏抜け防止の効果が得られやすくなる。
【0015】
本発明のポリカルボン酸系重合体の重量平均分子量は、400万~3000万であり、500万~2000万であることがより好ましい。ポリカルボン酸系重合体の重量平均分子量が前記範囲内であれば、裏抜け防止の効果が得られる。なお、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値のことを指す。具体的には、GPC測定を行い、以下の条件にて単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出する。
<測定条件>
機種:昭和電工株式会社製 商品名:「Shodex GPC-101」
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED-A
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
【0016】
本発明の1つの態様において、粘着剤塗工液中のポリカルボン酸系重合体の割合は、前記水系エマルジョンの合計量(100質量部)に対して、0.1~3質量部が好ましく、0.5~2質量部がより好ましい。
また、本発明の1つの態様においては、粘着剤塗工液中の前記ポリカルボン酸系重合体の割合は、粘着剤塗工液の総質量に対して、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
粘着剤塗工液中のポリカルボン酸系重合体の割合が前記範囲内であれば、裏抜け防止の効果が得られやすくなり、粘着強度が向上しやすい。
【0017】
(粘着付与剤)
本発明の1つの態様において、粘着剤塗工液中には、本発明の効果を損なわない範囲で、粘着付与剤が含まれていてもよい。粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体系や脂環式系共重合体等の石油系樹脂、クマロン-インデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂又はこれらの水添物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着付与剤としては、コスト、着色低の観点から、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂(C5~C9系石油樹脂、又はC5系石油樹脂)が好ましい。また、これら粘着付与剤は、エマルジョンであってもよい。
また、粘着剤塗工液中の粘着付与剤の割合は、粘着剤塗工液の総質量に対して、20~80質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましい。粘着付与剤の割合が前記範囲内であれば、粘着性付与の効果が得られやすくなる。
【0018】
(界面活性剤)
本発明の1つの態様において、粘着剤塗工液中には、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤が含まれていてもよい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。本発明においては、溶解性が高く、乾燥時の塗布不良(ハジキ等)が少ないことから、アニオン性界面活性剤であることが好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、カルボン酸系界面活性剤等が挙げられる。このうち、溶解性の観点から、スルホン酸系界面活性剤がより好ましい。
また、粘着剤塗工液中の界面活性剤の割合は、粘着力を低下させない観点から、粘着剤塗工液の総質量に対して、4質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0019】
(その他の添加剤)
本発明の粘着剤塗工液には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤が含まれていてもよい。その他の添加剤としては、例えば、増粘剤、軟化剤、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、滑剤、無機又は有機の充填剤、金属粉、顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
増粘剤としては、例えば、水溶性高分子増粘剤、会合型増粘剤等が挙げられる。このうち、粘着剤塗工液の粘度の安定性の観点から、水溶性高分子増粘剤が好ましい。また、粘着剤塗工液が増粘剤を含む場合、その配合量は、粘着剤塗工液の総質量に対して、0.1~4質量%が好ましい。
【0021】
粘着剤塗工液が前記のその他の添加剤を含む場合、その他の添加剤の合計の配合量は、粘着剤塗工液の総質量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.5~8質量%がより好ましい。
【0022】
(溶剤)
本発明の粘着剤塗工液は、水を含むことが好ましい。水は、粘着剤塗工液の粘度を調整するために配合される。従って、粘着剤塗工液中の水の割合は、粘着剤塗工液の粘度が、前述の範囲内となるように適宜調整される。水としては、純水が好ましい。
【0023】
本発明の粘着剤塗工液は、B型粘度計を用いて60rpmの条件で測定した粘度が、6000~20000mPa・s/23℃であり、8000~14000mPa・s/23℃であることが好ましい。粘着剤塗工液の粘度を前記範囲内とすることで、基材からの裏抜けを防止することができる。
粘着剤塗工液の23℃における粘度は、B型粘度計を用いて、60rpmの回転速度で測定される。また、B型粘度計としては、BROOKFIELD製のLV-3のローターを用いる。
【0024】
本発明の1つの態様においては、粘着層の厚みは、15μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。粘着層の厚みが15μm以上であれば、粘着テープとして十分な粘着力を発現しやすくなる。
【0025】
<基材>
本発明の基材は、不織布からなる。すなわち、「不織布からなる基材」とは、不織布を構成する繊維を織らずに組み合わせたシート状の基材のことを意味する。
前記不織布としては、例えば、スパンボンド法で作成された不織布、スパンレース法で作成された不織布、メルトブロー法で作成された不織布等を用いることができる。また、不織布は単層であってもよく、複数の層からなる積層不織布であってもよい。また積層不織布の場合、複数の方法で作成された不織布を積層させたものであってもよい。このうち、基材の強度の観点から、スパンボンド法で作成された不織布(スパンボンド不織布)を用いることが好ましい。スパンボンド不織布からなる基材を用いることで、被着体の保護性が高いテープが得られやすくなる。
【0026】
不織布の目付は、50~150g/m2であるものが好ましく、70~120g/m2であるものがより好ましい。また、その空隙率としては、30~90%が好ましい。
不織布を構成する繊維としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このうち、耐熱性、耐久性の観点から、ポリエステル繊維が好ましい。
不織布を構成する繊維の繊維径は、基材の強度の観点から、3~50μmが好ましく、4~30μmがより好ましい。不織布の繊維径が前記範囲内であれば、消音の効果が得られやすくなる。
【0027】
基材の厚みは、その取り扱いの観点から、200~700μmであることが好ましく、250~350μmであることがより好ましい。
【0028】
<製造工程>
本発明の粘着テープの製造方法は、前述の粘着剤塗工液を、前記基材上にロール塗工、好ましくはコンマリバース塗工にて塗工して粘着層を形成する工程(以下、「粘着層形成工程」と記載することもある)を含む。塗工条件としては、不織布からなる基材の一方の表面に、前記粘着剤塗工液を30m/sec、乾燥条件130℃で塗工することが好ましい。
粘着層形成工程において、粘着剤塗工液は、20~30℃に温調されたものを用いることが好ましい。
【0029】
また、前記粘着層形成工程は、前記粘着剤塗工液を、前記基材上にロール塗工にて塗工し、厚みが15μm以上の粘着層を形成する工程であることが好ましい。前記粘着層は、単層であってもよく、多層であってもよい。本発明の1つの態様においては、前記粘着層形成工程は、前記粘着剤塗工液を、前記基材上にロール塗工、好ましくはコンマリバース塗工にて塗工し、厚みが15μm以上の粘着層を単層で形成する工程であることがより好ましい。本発明の粘着剤塗工液は、前述の通り、水系エマルジョンと、特定の分子量を有するポリカルボン酸系重合体とを含み、かつ特定の粘度を有しているため、15μm以上の厚みを有する粘着層を1段階で形成しても、裏抜けが生じにくい。
【0030】
また、本発明の1つの態様においては、前記粘着層形成工程の前に、前記粘着剤塗工液を調製する工程を含んでいてもよい。
粘着剤塗工液を調製する工程(以下、「塗工液調製工程」と記載することもある)としては、例えば、前記水系エマルジョン及び前記ポリカルボン酸系重合体の他、粘着付与剤、界面活性剤、及びその他の添加剤等を適宜選択して配合して混合した後、純水を添加して、前述の粘度範囲内となるように粘着剤塗工液を調製する工程が挙げられる。また、各主成分の配合順序は任意である。
【0031】
<評価方法>
(基材からの裏抜け評価)
本発明の粘着テープの製造方法は、粘着層形成時の基材からの裏抜けを防止できる。
基材からの裏抜けの有無については、以下に示す手順に従って評価することができる。
作製した粘着テープを液体窒素中に1分間浸漬させて浸潤させる。その後、粘着テープを垂直にカットする。粘着テープの断面をレーザー顕微鏡で観察し、粘着剤が基材の背面まで浸潤していないかどうかを確認する。
【0032】
(耐熱性評価)
本発明の粘着テープの製造方法は、耐熱性の高い粘着剤塗工液を用いているため、本製造方法で得られる粘着テープは耐熱性にも優れている。
粘着テープの耐熱性は、例えば、以下に示す手順に従って評価することができる。
SAE J2192に従って粘着テープの電線結束品(試料)を作成する。1時間に8~20回のエア切替えが可能な熱風循環炉に試料20本を入れる。105℃で試料を3000時間暴露させる。試験手順については、SAE J2192の第7.3.3節、第7.3.4節を参照することができるが、500時間毎、1000時間毎に3000時間まで試料5本を取り出す作業は除く。3000時間経過後に40mmのマンドレルに電線結束品(試料)を巻きつけ、テープの剥れがないか確認する。
【0033】
(再剥離性評価)
本発明の粘着テープの製造方法により製造された粘着テープは、高い再剥離性を示す。粘着テープの再剥離性は、以下の通りの測定法で評価することができる。
作製した粘着テープをステンレス板(SUS304)に貼着した後、23℃、65%RHの条件下で24時間放置する。その後、ステンレス板から剥離し、下記式に従って再剥離性(%)を評価する。
再剥離性(%)=(粘着剤残りのない面積)/(貼り付けた全体の面積)×100
上記式において、再剥離性の値が高い(粘着剤残りのない面積が広い)ほど、再剥離性に優れる。
【0034】
(粘着力評価)
本発明の粘着テープの製造方法により得られる粘着テープの粘着力は、JIS Z0237に従って評価することができる。
【0035】
[用途]
前述の通り、本発明の粘着テープの製造方法によれば、不織布からなる基材に水系塗工液を直接塗布して粘着層を形成しても、基材からの裏抜けが生じない。また、耐熱性の高い粘着剤塗工液を用いて粘着層を形成しているため、本発明の製造方法により得られる粘着テープは、耐熱性が要求される分野、例えば、車のエンジンルーム等の粘着テープとして、好適に用いることができる。また、本発明の粘着剤塗工液は基材に対する保持力も高いため、得られる粘着テープは再剥離性も備えている。そのため、再剥離性が求められる分野、例えば、絶縁テープ等の粘着テープとしても、好適に用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
<粘着剤塗工液の調製>
水系エマルジョンとして、天然ラテックス(KUALA LUMPUR KEPONG BERHAD社製、商品名「EXCELTEX-HLX LA-TZ」)50質量部(固形分)、合成ラテックス(ムサシノケミカル(株)製、商品名「MG30」)50質量部(固形分)を用い、粘着付与剤として、テルペンフェノール樹脂エマルジョン(荒川化学工業(株)製、商品名「E-200」)30質量部(固形分)、石油樹脂エマルジョン(荒川化学工業(株)製、商品名「AP-1100-NT」)70質量部(固形分)をそれぞれ添加して混合し、エマルジョン混合物を調製した。前記エマルジョン混合物に、アニオン系界面活性剤(花王(株)製、商品名「ネオペレックス(登録商法)G-25」)2質量部(固形分)、水溶性高分子増粘剤(サンノプコ(株)製、商品名「シックナーSN-812」)0.2質量部(固形分)、ポリカルボン酸系重合体(ポリアクリルアミド)(ソマール(株)製、商品名「ソマレックス(登録商標)530」、重量平均分子量2000万)2質量部をそれぞれ添加し、純水で粘度を調整して粘着剤塗工液を得た。得られた粘着剤塗工液の粘度(B型粘度計、回転速度60rpm)は、12000mPa・s/23℃であった。粘着剤塗工液の組成を表1に示す。
【0038】
<粘着テープの作成>
目付けが80g/m2のスパンボンド不織布からなる基材上にコンマリバースコーターを用いて粘着剤塗工液を塗布し、130℃で乾燥を行った。結果、厚みが35μmとなるように前記粘着剤塗工液を塗工して、粘着層を形成することができた。得られた粘着テープの各種物性を以下の評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0039】
(裏抜け評価)
以下の評価方法に従って評価した。
作製した粘着テープを液体窒素中に1分間浸漬させて浸潤させた。その後、粘着テープを垂直にカットした。粘着テープの断面をレーザー顕微鏡で観察し、粘着剤が基材の背面まで浸潤していないかどうかを確認した。
【0040】
(耐熱性評価)
得られた粘着テープについて、以下の評価方法に従って耐熱性を評価した。
SAE J2192に従って粘着テープの電線結束品(試料)を作成した。1時間に8~20回のエア切替えが可能な熱風循環炉に試料20本を入れ、105℃で試料を3000時間暴露させた。試験手順については、SAE J2192の第7.3.3節、第7.3.4節を参照したが、500時間毎、1000時間毎に3000時間まで試料5本を取り出す作業は除いた。3000時間経過後に40mmのマンドレルに電線結束品(試料)を巻きつけ、テープの剥れがないか確認した。20試料について、以下の評価基準に従って評価した。なお、A評価を合格(耐熱性が高い)とした。
(評価基準)
A:全ての試料でテープに剥がれが生じていなかった。
B:試料の一部にテープ剥がれが生じていた
C:全ての試料でテープ剥がれが生じていた。
【0041】
(再剥離性評価)
作製した粘着テープをステンレス板(SUS304)に貼着した後、23℃、65%RHの条件下で24時間放置した。その後、ステンレス板から剥離し、下記式に従って再剥離性(%)を評価した。
再剥離性(%)=(粘着剤残りのない面積)/(貼り付けた全体の面積)×100
上記式において、再剥離性の値が高い(粘着剤残りのない面積が広い)ほど、再剥離性に優れるとして評価した。
【0042】
(粘着力評価)
得られた粘着テープの粘着力を、JIS Z0237に記載の方法に従って評価した。また、得られた粘着力について、以下の評価基準に従って評価した。なお、B評価以上を合格(粘着力に優れる)とした。
(評価基準)
A:粘着力が4N/20mm以上。
B:粘着力が1N/20mm以上4N/20mm未満。
C:粘着力が1N/20mm未満。
【0043】
[実施例2~4、及び比較例1~4]
不織布の種類、及び粘着剤塗工液の組成を表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様の方法にて、粘着テープを作成した。得られた各例の粘着テープについて、実施例1と同様の方法にて、裏抜け、耐熱性、再剥離性、及び粘着力を評価した。結果を表1に示す。
【0044】
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
水系エマルジョン1:天然ゴムラテックス(KUALA LUMPUR KEPONG BERHAD社製、商品名「EXCELTEX-HLX LA-TZ」、固形分50質量%)。
水系エマルジョン2:合成ゴムラテックス(ムサシノケミカル(株)製、商品名「MG30」、固形分50質量%)。
ポリカルボン酸系重合体1:ポリアクリルアミド(ソマール(株)製、商品名「ソマレックス(登録商標)530」、重量平均分子量2000万)。
ポリカルボン酸系重合体2:ポリアクリル酸ナトリウム(東亜合成(株)製、商品名「アロン(登録商標) A-20P」、重量平均分子量500万)。
ポリカルボン酸系重合体3:ポリアクリル酸(東亜合成(株)製、商品名「ジュリマー(登録商標)AC-10SHP」、重量平均分子量100万)。
粘着付与剤1:テルペンフェノール樹脂エマルジョン(荒川化学工業(株)製、商品名「E-200」、固形分50質量%)。
粘着付与剤2:石油樹脂エマルジョン(荒川化学工業(株)製、商品名「AP-1100-NT」、固形分50質量%)。
界面活性剤:アニオン系界面活性剤(花王(株)製、商品名「ネオペレックス G-25」)
増粘剤:水系高分子増粘剤(サンノプコ(株)製、商品名「シックナーSN-812」)。
スパンボンド不織布:ポリエステル繊維、目付け80g/m2。
スパンレース不織布:ポリエステル繊維、目付け80g/m2。
ステッチボンド不織布:ポリエステル繊維、目付け80g/m2、22F。
なお、ポリカルボン酸系重合体の重量平均分子量は、GPC測定を行い、以下の条件にて単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出した。
<測定条件>
機種:昭和電工株式会社製 商品名:「Shodex GPC-101」
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED-A
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
【0045】
【0046】
表1に示す通り、本発明の製造方法で得られた粘着テープは、塗工時の裏抜けが生じず、かつ耐熱性、再剥離性に優れていた。また、粘着テープとして使用するために十分な粘着力も有していた。一方、本発明の構成を満たさない製造方法にて製造した比較例1~4の粘着テープでは、塗工時に裏抜けが生じた。また、得られた粘着テープは、粘着力が低かった。以上の結果から、本発明の粘着テープの製造方法は、製造時の基材からの裏抜けを防止でき、かつ得られた粘着テープは、耐熱性及び再剥離性に優れることが確認された。