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特許7368461優れた硬度及び衝撃靭性を有する耐摩耗鋼及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】優れた硬度及び衝撃靭性を有する耐摩耗鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20231017BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20231017BHJP
   C21D 8/02 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C22C38/00 301H
C22C38/58
C21D8/02 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021516760
(86)(22)【出願日】2019-09-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 KR2019012325
(87)【国際公開番号】W WO2020067686
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0115164
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユ,スン‐ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヨン‐ジン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ナム‐ヨン
【審査官】櫻井 雄介
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-505094(JP,A)
【文献】特開平11-158579(JP,A)
【文献】特開2018-048399(JP,A)
【文献】国際公開第2014/045552(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00
C22C 38/58
C21D 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、炭素(C):0.33~0.42%、シリコン(Si):0.1~0.7%、マンガン(Mn):0.6~1.6%、リン(P):0.05%以下(0は除く)、硫黄(S):0.02%以下(0は除く)、アルミニウム(Al):0.07%以下(0は除く)、ニッケル(Ni):0.55~5.0%、銅(Cu):0.01~1.5%、クロム(Cr):0.01~0.8%、モリブデン(Mo):0.01~0.8%、ホウ素(B):50ppm以下(0は除く)、コバルト(Co):0.02%以下(0は除く)を含み、さらに、チタン(Ti):0.02%以下(0は除く)、ニオブ(Nb):0.05%以下(0は除く)、バナジウム(V):0.05%以下(0は除く)、及びカルシウム(Ca):2~100ppmからなる群から選択された1種以上をさらに含み、残部Fe及びその他の不可避不純物からなり、
前記C及びNiは、下記関係式1の条件を満たし、
微細組織はマルテンサイト:95~99面積%及びベイナイト:1~5%を含み、
硬度が550~650HBであるとともに、-40℃の低温で衝撃吸収エネルギーが21J以上であることを特徴とする優れた硬度及び衝撃靭性を有する耐摩耗鋼。
[関係式1] [C]×[Ni]≧0.231
(し、前記HBはブリネル硬度計で測定された鋼の表面硬度を示し、
関係式1中、[C]、[Ni]は、それぞれC、Niの含有量(重量%)を示す。)
【請求項2】
前記耐摩耗鋼は、ヒ素(As):0.05%以下(0は除く)、スズ(Sn):0.0 5%以下(0は除く)及びタングステン(W):0.05%以下(0は除く)からなる群 から選択された1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の優れた硬度及び 衝撃靭性を有する耐摩耗鋼。
【請求項3】
前記耐摩耗鋼は、硬度(HB)及び衝撃吸収エネルギー(J)が下記関係式2を満たす ことを特徴とする請求項1に記載の優れた硬度及び衝撃靭性を有する耐摩耗鋼。 [関係式2] HB÷J≦31.0(但し、前記HBはブリネル硬度計で測定された鋼 の表面硬度、Jは-40℃での衝撃吸収エネルギー値を示す。)
【請求項4】
前記耐摩耗鋼は60mm以下の厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の優れた 硬度及び衝撃靭性を有する耐摩耗鋼。
【請求項5】
請求項1の耐摩耗鋼を製造するための方法であって、
重量%で、炭素(C):0.33~0.42%、シリコン(Si):0.1~0.7%、マンガン(Mn):0.6~1.6%、リン(P):0.05%以下(0は除く)、硫黄(S):0.02%以下(0は除く)、アルミニウム(Al):0.07%以下(0は除く)、ニッケル(Ni):0.55~5.0%、銅(Cu):0.01~1.5%、クロム(Cr):0.01~0.8%、モリブデン(Mo):0.01~0.8%、ホウ素(B):50ppm以下(0は除く)、コバルト(Co):0.02%以下(0は除く)を含み、さらに、チタン(Ti):0.02%以下(0は除く)、ニオブ(Nb):0.05%以下(0は除く)、バナジウム(V):0.05%以下(0は除く)及びカルシウム(Ca):2~100ppmからなる群から選択された1種以上をさらに含み、残部Fe及びその他の不可避不純物からなり、前記C及びNiは、下記関係式1の条件を満たす鋼スラブを1050~1250℃の温度範囲で加熱する段階、
前記加熱された鋼スラブを950~1050℃の温度範囲で粗圧延して粗圧延バーを得る段階、
前記粗圧延バーを850~950℃の温度範囲で仕上げ熱間圧延して熱延鋼板を得る段階、
前記熱延鋼板を常温まで空冷した後、860~950℃の温度範囲で在炉時間〔1.3t+10分~1.3t+60分(t:板厚さ)〕の間再加熱する段階、及び 前記再加熱された熱延鋼板を150℃以下まで水冷する段階を含むことを特徴とする優れた硬度及び衝撃靭性を有する耐摩耗鋼の製造方法。
[関係式1] [C]×[Ni]≧0.231
(但し、関係式1中、[C]、[Ni]は、それぞれC、Niの含有量(重量%)を示す。)
【請求項6】
請求項2の耐摩耗鋼を製造するための方法であって、
重量%で、炭素(C):0.33~0.42%、シリコン(Si):0.1~0.7%、マンガン(Mn):0.6~1.6%、リン(P):0.05%以下(0は除く)、硫黄(S):0.02%以下(0は除く)、アルミニウム(Al):0.07%以下(0は除く)、ニッケル(Ni):0.55~5.0%、銅(Cu):0.01~1.5%、クロム(Cr):0.01~0.8%、モリブデン(Mo):0.01~0.8%、ホウ素(B):50ppm以下(0は除く)、コバルト(Co):0.02%以下(0は除く)を含み、さらに、チタン(Ti):0.02%以下(0は除く)、ニオブ(Nb):0.05%以下(0は除く)、バナジウム(V):0.05%以下(0は除く)及びカルシウム(Ca):2~100ppmからなる群から選択された1種以上、
そして、ヒ素(As):0.05%以下(0は除く)、スズ(Sn):0.05%以下(0は除く)及びタングステン(W):0.05%以下(0は除く)からなる群から選択された1種以上をさらに含み、
残部がFe及びその他の不可避不純物からなり、前記C及びNiは、下記関係式1の条件を満たす鋼スラブを1050~1250℃の温度範囲で加熱する段階、
前記加熱された鋼スラブを950~1050℃の温度範囲で粗圧延して粗圧延バーを得る段階、
前記粗圧延バーを850~950℃の温度範囲で仕上げ熱間圧延して熱延鋼板を得る段階、
前記熱延鋼板を常温まで空冷した後、860~950℃の温度範囲で在炉時間〔1.3t+10分~1.3t+60分(t:板厚さ)〕の間再加熱する段階、及び
前記再加熱された熱延鋼板を150℃以下まで水冷する段階を含むことを特徴とする優れた硬度及び衝撃靭性を有する耐摩耗鋼の製造方法。
[関係式1] [C]×[Ni]≧0.231
(但し、前記関係式1中、[C]、[Ni]は、それぞれC、Niの含有量(重量%)を示す。)
【請求項7】
前記水冷時の冷却速度は10℃/s以上であることを特徴とする請求項5または6に記載の優れた硬度及び衝撃靭性を有する耐摩耗鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた硬度及び衝撃靭性を有する耐摩耗鋼及びその製造方法に係り、より詳しくは、建設機械などに使用することができる高硬度耐摩耗鋼及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設、土木、鉱業、セメント産業など多くの産業分野で使用される建設機械、産業機械の場合、作業時の摩擦による摩耗が激しく発生することから、耐摩耗特性を示す素材の適用が必要である。
一般的に、厚鋼板の耐摩耗性及び硬度は互いに関係があり、摩耗が懸念される厚鋼板では硬度を高める必要がある。より安定した耐摩耗性を確保するためには、厚鋼板の表面から板厚さの内部(t/2近傍、t=厚さ)にかけて均一な硬度を有すること(すなわち、厚鋼板の表面と内部で同程度の硬度を有すること)が要求される。
【0003】
通常、厚鋼板で高い硬度を得るためには、圧延した後にAc以上の温度で再加熱した後、焼入れする方法が広く行われている。一例として、特許文献1及び2では、C含有量を高め、CrとMoなどの硬化能向上元素を多量に添加することで表面硬度を増加させる方法を開示している。しかし、極厚物の鋼板の製造には、鋼板の中心の硬化能を確保するために、より多くの硬化能元素の添加が要求され、Cと硬化能合金を多量に添加することになり、製造コストが上昇し、溶接性及び低温靭性が低下するという問題がある。
このため、硬化能の確保のためには硬化能合金の添加が不可避な状況の中、高硬度を確保した上、耐摩耗性に優れ、高強度及び高衝撃靭性をも確保することができる方策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本公開特許第1996-041535号公報
【文献】日本公開特許第1986-166954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的とするところは、耐摩耗性に優れるとともに、高強度及び高衝撃靭性を有する高硬度耐摩耗鋼及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の優れた硬度及び衝撃靭性を有する耐摩耗鋼は、重量%で、炭素(C):0.33~0.42%、シリコン(Si):0.1~0.7%、マンガン(Mn):0.6~1.6%、リン(P):0.05%以下(0は除く)、硫黄(S):0.02%以下(0は除く)、アルミニウム(Al):0.07%以下(0は除く)、ニッケル(Ni):0.55~5.0%、銅(Cu):0.01~1.5%、クロム(Cr):0.01~0.8%、モリブデン(Mo):0.01~0.8%、ホウ素(B):50ppm以下(0は除く)、コバルト(Co):0.02%以下(0は除く)を含み、さらに、チタン(Ti):0.02%以下(0は除く)、ニオブ(Nb):0.05%以下(0は除く)、バナジウム(V):0.05%以下(0は除く)、及びカルシウム(Ca):2~100ppmからなる群から選択された1種以上をさらに含み、残部Fe及びその他の不可避不純物からなり、上記C及びNiは、下記関係式1の条件を満たし、微細組織はマルテンサイト:95面積%以上及びベイナイト:5%以下(0%を含む)を含むことを特徴とする。
[関係式1] [C]×[Ni]≧0.231
【0007】
本発明の優れた硬度及び衝撃靭性を有する耐摩耗鋼の製造方法は、重量%で、炭素(C):0.33~0.42%、シリコン(Si):0.1~0.7%、マンガン(Mn):0.6~1.6%、リン(P):0.05%以下(0は除く)、硫黄(S):0.02%以下(0は除く)、アルミニウム(Al):0.07%以下(0は除く)、ニッケル(Ni):0.55~5.0%、銅(Cu):0.01~1.5%、クロム(Cr):0.01~0.8%、モリブデン(Mo):0.01~0.8%、ホウ素(B):50ppm以下(0は除く)、コバルト(Co):0.02%以下(0は除く)を含み、さらに、チタン(Ti):0.02%以下(0は除く)、ニオブ(Nb):0.05%以下(0は除く)、バナジウム(V):0.05%以下(0は除く)とカルシウム(Ca):2~100ppmからなる群から選択された1種以上をさらに含み、残部Fe及びその他の不可避不純物からなり、上記C及びNiは、下記関係式1の条件を満たす鋼スラブを1050~1250℃の温度範囲で加熱する段階、上記再加熱された鋼スラブを950~1050℃の温度範囲で粗圧延して粗圧延バーを得る段階、上記粗圧延バーを850~950℃の温度範囲で仕上げ熱間圧延して熱延鋼板を得る段階、上記熱延鋼板を常温まで空冷した後、860~950℃の温度範囲で在炉時間1.3t+10分~1.3t+60分(t:板厚さ)の間再加熱する段階、及び上記再加熱された熱延鋼板を150℃以下まで水冷する段階を含むことを特徴とする。
[関係式1] [C]×[Ni]≧0.231
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、本発明の優れた硬度及び衝撃靭性を有する耐摩耗鋼の製造方法は、厚さ60mm以下でありながら、高硬度及び優れた低温靭性を有する耐摩耗鋼を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、本発明の合金組成について説明する。下記説明される合金組成の含有量は重量%である。
【0010】
炭素(C):0.33~0.42%
炭素(C)は、マルテンサイト組織を有する鋼で強度及び硬度を増加させることに効果的であり、硬化能向上のために有効な元素である。上述した効果を十分に確保するためには、0.33%以上添加することが好ましいが、もし、その含有量が0.42%を超えると、溶接性及び靭性を阻害する虞があり、焼戻しのような追加熱処理作業が不可避となる。したがって、本発明では、上記C含有量を0.33~0.42%に制御することが好ましい。上記C含有量の下限は、0.34%であることがより好ましく、0.35%であることがさらに好ましく、0.36%であることが最も好ましい。上記C含有量の上限は、0.40%であることがより好ましく、0.39%であることがさらに好ましく、0.38%であることが最も好ましい。
【0011】
シリコン(Si):0.1~0.7%
シリコン(Si)は、脱酸及び固溶強化による強度向上に有効な元素である。上記のような効果を有効に得るためには0.1%以上添加することが好ましいが、その含有量が0.7%を超えると、溶接性が劣化するため、好ましくない。したがって、本発明では、上記Si含有量を0.1~0.7%に制御することが好ましい。上記Si含有量の下限は、0.12%であることがより好ましく、0.15%であることがさらに好ましく、0.2%であることが最も好ましい。上記Si含有量の上限は、0.5%であることがより好ましく、0.45%であることがさらに好ましく、0.4%であることが最も好ましい。
【0012】
マンガン(Mn):0.6~1.6%
マンガン(Mn)は、フェライトの生成を抑制し、Ar温度を下げることで焼入れ性を効果的に上昇させて鋼の強度及び靭性を向上させる元素である。本発明では、厚物材の硬度を確保するためには、上記Mnを0.6%以上含有することが好ましいが、その含有量が1.6%を超えると、溶接性を低下させる虞がある。したがって、本発明では、上記Mn含有量を0.6~1.6%に制御することが好ましい。上記Mn含有量の下限は、0.65%であることがより好ましく、0.70%であることがさらに好ましく、0.75%であることが最も好ましい。上記Mn含有量の上限は、1.55%であることがより好ましく、1.50%であることがさらに好ましく、1.45%であることが最も好ましい。
【0013】
リン(P):0.05%以下(0は除く)
リン(P)は、鋼中に不可避に含有される元素であり、鋼の靭性を阻害する元素である。したがって、上記P含有量を可能な限り下げて0.05%以下に制御することが好ましい。但し、不可避に含有されることを考慮して0%は除く。上記P含有量は0.03%以下であることがより好ましく、0.02%以下であることがさらに好ましく、0.01%以下であることが最も好ましい。
【0014】
硫黄(S):0.02%以下(0は除く)
硫黄(S)は、鋼中にMnS介在物を形成して鋼の靭性を阻害する元素である。したがって、上記S含有量を可能な限り下げて0.02%以下に制御することが好ましい。但し、不可避に含有されることを考慮して0%は除く。上記S含有量は0.01%以下であることがより好ましく、0.005%以下であることがさらに好ましく、0.003%以下であることが最も好ましい。
【0015】
アルミニウム(Al):0.07%以下(0は除く)
アルミニウム(Al)は、鋼の脱酸剤として溶鋼中に酸素含有量を下げることに効果的な元素である。かかるAl含有量が0.07%を超えると、鋼の清浄性が阻害される虞があるため、好ましくない。したがって、本発明では、上記Al含有量を0.07%以下に制御することが好ましいが、製鋼工程時の負荷、製造コストの上昇等を考慮して0%は除く。上記Al含有量は0.05%以下であることがより好ましく、0.04%以下であることがさらに好ましく、0.03%以下であることが最も好ましい。
【0016】
ニッケル(Ni):0.55~5.0%
ニッケル(Ni)は、一般的に鋼の強度に加え、靭性を向上させることに有効な元素である。上述した効果のためにはNiを0.55%以上添加することが好ましいが、その含有量が5.0%を超えると、高価な元素のため製造コストを上昇させる原因となる。したがって、本発明では、上記Ni含有量を0.55~5.0%に制御することが好ましい。上記Ni含有量の下限は、0.6%であることがより好ましく、0.7%であることがさらに好ましく、0.8%であることが最も好ましい。上記Ni含有量の上限は、4.5%であることがより好ましく、4.0%であることがさらに好ましく、3.5%であることが最も好ましい。
【0017】
銅(Cu):0.01~1.5%
銅(Cu)は、Niと同様に、鋼の強度及び靭性を併せて向上させることができる元素である。上記効果を得るためには、Cuを0.01%以上添加することが好ましいが、Cu含有量が1.5%を超えると、表面に欠陥を発生させる可能性が大きくなるだけでなく、熱間加工性を阻害する虞がある。したがって、本発明では、上記Cu含有量を0.01~1.5%に制御することが好ましい。上記Cu含有量の下限は、0.05%であることがより好ましく、0.10%であることがさらに好ましく、0.15%であることが最も好ましい。上記Cu含有量の上限は、1.2%であることがより好ましく、1.0%であることがさらに好ましく、0.8%であることが最も好ましい。
【0018】
クロム(Cr):0.01~0.8%
クロム(Cr)は、焼入れの効果を向上させて鋼の強度を増加し、硬度の確保にも有利な元素である。上述した効果のためには、Crを0.01%以上添加することが好ましいが、一方、その含有量が0.8%を超えると、溶接性が劣位となり、製造コストを上昇させる原因となる。したがって、本発明では、上記Cr含有量を0.01~0.8%に制御することが好ましい。上記Cr含有量の下限は、0.1%であることがより好ましく、0.15%であることがさらに好ましく、0.2%であることが最も好ましい。上記Cr含有量の上限は、0.75%であることがより好ましく、0.70%であることがさらに好ましく、0.65%であることが最も好ましい。
【0019】
モリブデン(Mo):0.01~0.8%
モリブデン(Mo)は、鋼の焼入れ性を向上させ、特に厚物材の硬度向上に有効な元素である。上述した効果を十分に得るためには、Moを0.01%以上添加することが好ましいが、上記Moも高価な元素であって、その含有量が0.8%を超えると、製造コストが上昇するのみならず、溶接性が劣位になる虞がある。したがって、本発明では、上記Mo含有量を0.01~0.8%に制御することが好ましい。上記Mo含有量の下限は、0.1%であることがより好ましく、0.12%であることがさらに好ましく、0.15%であることが最も好ましい。上記Mo含有量の上限は、0.75%であることがより好ましく、0.72%であることがさらに好ましく、0.70%であることが最も好ましい。
【0020】
ホウ素(B):50ppm以下(0は除く)
ホウ素(B)は、少量の添加でも鋼の焼入れ性を有効に向上させ、強度を向上させることに有効な元素である。但し、その含有量が過度になると、却って鋼の靭性及び溶接性を阻害する虞があるため、その含有量を50ppm以下に制御することが好ましい。上記B含有量の下限は、2ppmであることがより好ましく、3ppmであることがさらに好ましく、5ppmであることが最も好ましい。上記B含有量の上限は、40ppmであることがより好ましく、35ppmであることがさらに好ましく、30ppmであることが最も好ましい。
【0021】
コバルト(Co):0.02%以下(0は除く)
コバルト(Co)は、鋼の焼入れ性を向上させることで、鋼の強度に加え、硬度確保に有利な元素である。但し、その含有量が0.02%を超えると、鋼の焼入れ性が低下する虞があり、高価な元素のため製造コストを上昇させる要因となる。したがって、本発明では、Coを0.02%以下添加することが好ましい。上記Co含有量の下限は、0.001%であることがより好ましく、0.002%以下であることがさらに好ましく、0.003%以下であることが最も好ましい。上記Co含有量の上限は、0.018%であることがより好ましく、0.015%であることがさらに好ましく、0.013%であることが最も好ましい。
【0022】
本発明の耐摩耗鋼は、上述した合金組成の以外にも、本発明が目標とする物性確保に有利な要素をさらに含むことができる。例えば、チタン(Ti):0.02%以下(0は除く)、ニオブ(Nb):0.05%以下(0は除く)、バナジウム(V):0.05%以下(0は除く)、及びカルシウム(Ca):2~100ppmからなる群から選択された1種以上をさらに含むことができる。
【0023】
チタン(Ti):0.02%以下(0は除く)
チタン(Ti)は、鋼の焼入れ性の向上に有効な元素であるBの効果を最大化する元素である。具体的に、上記Tiは窒素(N)と結合してTiN析出物を形成させてBNの形成を抑制することにより、固溶Bを増加させて焼入れ性向上を最大化することができる。但し、上記Ti含有量が0.02%を超えると、粗大なTiN析出物が形成されて鋼の靭性が劣位になる虞がある。したがって、本発明では、上記Tiを0.02%以下添加することが好ましい。上記Ti含有量の下限は、0.005%であることがより好ましく、0.007%であることがさらに好ましく、0.010%であることが最も好ましい。上記Ti含有量の上限は、0.019%であることがより好ましく、0.017%であることがさらに好ましく、0.015%であることが最も好ましい。
【0024】
ニオブ(Nb):0.05%以下(0は除く)
ニオブ(Nb)は、オーステナイトに固溶されてオーステナイトの硬化能を増大させ、Nb(C、N)などの炭窒化物を形成して鋼の強度向上及びオーステナイト結晶粒の成長を抑制することに有効である。但し、上記Nb含有量が0.05%を超えると、粗大な析出物が形成され、これは脆性破壊の起点となり靭性を阻害する虞がある。したがって、本発明では、上記Nbを0.05%以下添加することが好ましい。上記Nb含有量の下限は、0.002%であることがより好ましく、0.003%であることがさらに好ましく、0.005%であることが最も好ましい。上記Nb含有量の上限は、0.040%であることがより好ましく、0.035%であることがさらに好ましく、0.030%であることが最も好ましい。
【0025】
バナジウム(V):0.05%以下(0は除く)
バナジウム(V)は、熱間圧延後の再加熱時にVC炭化物を形成することで、オーステナイト結晶粒の成長を抑制し、鋼の焼入れ性を向上させ、強度及び靭性を確保することに有利な元素である。但し、上記Vは高価な元素であって、その含有量が0.05%を超えると、製造コストを上昇させる要因となる。したがって、本発明では、上記Vの添加時、その含有量を0.05%以下に制御することが好ましい。上記V含有量の下限は、0.002%であることがより好ましく、0.003%であることがさらに好ましく、0.005%であることが最も好ましい。上記V含有量の上限は、0.045%であることがより好ましく、0.042%であることがさらに好ましく、0.040%であることが最も好ましい。
【0026】
カルシウム(Ca):2~100ppm
カルシウム(Ca)は、Sとの結合性が良好であり、CaSを生成することで鋼材厚さの中心部に偏析されるMnSの生成を抑制する効果がある。また、上記Caの添加で生成されたCaSは多湿の外部環境下で腐食抵抗を高める効果がある。上述した効果のためには、上記Caを2ppm以上添加することが好ましいが、その含有量が100ppmを超えると、製鋼操業時にノズルの目詰まりなどを誘発する虞があるため、好ましくない。したがって、本発明では、上記Caの添加時、その含有量を2~100ppmに制御することが好ましい。上記Ca含有量の下限は、3ppmであることがより好ましく、4ppmであることがさらに好ましく、5ppmであることが最も好ましい。上記Ca含有量の上限は、80ppmであることがより好ましく、60ppmであることがさらに好ましく、40ppmであることが最も好ましい。
【0027】
これに加えて、本発明の耐摩耗鋼は、上述した合金元素の他に付加的にヒ素(As):0.05%以下(0は除く)、スズ(Sn):0.05%以下(0は除く)及びタングステン(W):0.05%以下(0は除く)からなる群から選択された1種以上をさらに含むことができる。
【0028】
上記Asは鋼の靭性向上に有効であり、上記Snは鋼の強度及び耐食性の向上に有効である。また、Wは、焼入れ性を増加させて強度の向上に加え、高温での硬度の向上に有効な元素である。但し、上記As、Sn、及びWの含有量がそれぞれ0.05%を超えると、製造コストが上昇するだけでなく、却って、鋼の物性を損なう虞がある。したがって、本発明では、上記As、Sn、及びWをさらに含む場合、その含有量虞ぞれ0.05%以下に制御することが好ましい。上記As、Sn、及びWの含有量の下限は、それぞれ0.001%であることがより好ましく、0.002%であることがさらに好ましく、0.003%であることが最も好ましい。上記As、Sn、及びWの含有量の上限は、それぞれ0.04%であることがより好ましく、0.03%であることがさらに好ましく、0.02%であることが最も好ましい。
【0029】
本発明の残りの成分は鉄(Fe)である。但し、通常の製造過程では、原料または周囲環境から意図されない不純物が不可避に混入することがあるため、これを排除することはできない。これら不純物は、通常の製造過程の技術者であれば誰でも分かるものであるため、そのすべての内容について本明細書では特に言及しない。
【0030】
一方、本発明の耐摩耗鋼は、上述した合金組成のうちC及びNiが下記関係式1を満たすことが好ましい。本発明では、超高硬度だけでなく、優れた低温靭性を確保することを特徴とするが、このためには下記関係式1を満たすことが好ましい。もし、下記関係式1を満たさない場合には、硬度及び低温靭性を全て優れたレベルに向上させることが難しくなる虞がある。したがって、[C]×[Ni]の値は、0.231以上であることが好ましい。上記[C]×[Ni]の値は、0.396以上であることがより好ましく、0.792以上であることがさらに好ましく、1以上であることが最も好ましい。一方、上記[C]×[Ni]の値は高いほど有利な効果を実現するため、本発明では上記[C]×[Ni]の値の上限については特に限定しない。
[関係式1] [C]×[Ni]≧0.231
【0031】
本発明の耐摩耗鋼の微細組織は、マルテンサイトを基地組織として含むことが好ましい。より具体的には、本発明の耐摩耗鋼は面積分率で95%以上(100%を含む)のマルテンサイトを含むことが好ましい。上記マルテンサイト分率が95%未満であると、目標レベルの強度及び硬度の確保が難しくなる虞がある。一方、本発明の耐摩耗鋼の微細組織は5面積%以下のベイナイトをさらに含むことができ、これにより、低温衝撃靭性をより向上させることができる。上記マルテンサイト分率は、96%以上であることがより好ましく、97%以上であることがさらに好ましい。上記ベイナイトの分率は、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
上記のとおり提供される本発明の耐摩耗鋼は、表面硬度の550~650HBを確保するとともに、-40℃の低温で21J以上の衝撃吸収エネルギーを有する効果がある。但し、上記HBはブリネル硬度計で測定された鋼の表面硬度を示す。
【0033】
また、本発明の耐摩耗鋼は硬度(HB)及び衝撃吸収エネルギー(J)が下記関係式2を満たすことが好ましい。本発明では、高硬度の他に低温靭性の特性を向上させることを特徴とするが、このためには下記関係式2を満たすことが好ましい。すなわち、表面硬度が高いだけで、衝撃靭性が劣位になって関係式2を満たさない場合、或いは衝撃靭性は優れているが、表面硬度が目標値に達することができず関係式2を満たさない場合には、最終的に目標とする高硬度及び低温靭性の特性を保証することができなくなる。
[関係式2] HB÷J≦31.0(但し、上記HBはブリネル硬度計で測定された鋼の表面硬度、Jは-40℃での衝撃吸収エネルギー値を示す。)
【0034】
以下、本発明の耐摩耗鋼の製造方法について詳細に説明する。
まず、鋼スラブを1050~1250℃の温度範囲で加熱する。上記スラブ加熱温度が1050℃未満であると、Nbなどの再固溶が十分でなくなり、一方、その温度が1250℃を超えると、オーステナイト結晶粒が粗大化して不均一な組織が形成される虞がある。したがって、本発明では、上記鋼スラブの加熱温度が1050~1250℃の範囲を有することが好ましい。上記鋼スラブの加熱温度の下限は、1060℃であることがより好ましく、1070℃であることがさらに好ましく、1080℃であることが最も好ましい。上記鋼スラブの加熱温度の上限は、1230℃であることがより好ましく、1200℃であることがさらに好ましく、1180℃であることが最も好ましい。
【0035】
上記再加熱された鋼スラブを950~1050℃の温度範囲で粗圧延して粗圧延バーを得る。上記粗圧延時にその温度が950℃未満であると、圧延荷重が増加して比較的に弱圧下されることにより、スラブの厚さ方向の中心まで変形が十分に伝達できず、空隙のような欠陥が除去されない虞がある。これに対し、その温度が1050℃を超えると、圧延と同時に再結晶が起きた後、粒子が成長するようになり、初期オーステナイト粒子が過度に粗大になる虞がある。したがって、本発明では、上記粗圧延の温度は950~1050℃であることが好ましい。上記粗圧延の温度の下限は、960℃であることがより好ましく、970℃であることがさらに好ましく、980℃であることが最も好ましい。上記粗圧延の温度の上限は、1040℃であることがより好ましく、1020℃であることがさらに好ましく、1000℃であることが最も好ましい。
【0036】
上記粗圧延バーを850~950℃の温度範囲で仕上げ熱間圧延して熱延鋼板を得る。上記仕上げ熱延圧延の温度が850℃未満であると、2相域圧延となり、微細組織中にフェライトが生成される虞があり、一方、その温度が950℃を超えると、最終組織の粒度が粗大となって低温靭性が劣位になる虞がある。したがって、本発明では、上記仕上げ熱間圧延温度は850~950℃であることが好ましい。上記仕上げ熱間圧延温度の下限は、860℃であることがより好ましく、870℃であることがさらに好ましく、880℃であることが最も好ましい。上記仕上げ熱間圧延温度の上限は、940℃であることがより好ましく、930℃であることがさらに好ましく、920℃であることが最も好ましい。
【0037】
以後、上記熱延鋼板を常温まで空冷した後、860~950℃の温度範囲で在炉時間1.3t+10分~1.3t+60分(t:板厚さ)の間再加熱する。上記再加熱は、フェライトとパーライトで構成された熱延鋼板をオーステナイト単相で逆変態させるためのものであり、上記再加熱温度が860℃未満であると、オーステナイト化が十分に行われず、粗大な軟質フェライトが混在することになることで、最終製品の硬度が低下する虞がある。これに対し、その温度が950℃を超えると、オーステナイト結晶粒が粗大となり、焼入れ性が大きくなる効果はあるが、鋼の低温靭性が劣位になる虞がある。したがって、本発明では、上記再加熱温度は860~950℃であることが好ましい。上記再加熱温度の下限は、870℃であることがより好ましく、880℃であることがさらに好ましく、890℃であることが最も好ましい。上記再加熱温度の上限は、940℃であることがより好ましく、930℃であることがさらに好ましく、920℃であることが最も好ましい。
【0038】
一方、上記再加熱時の在炉時間が1.3t+10分(t:板厚さ)未満であると、オーステナイト化が十分に起こらず、後続する急速冷却による相変態、すなわち、マルテンサイト組織を十分に得ることができなくなる。これに対し、上記再加熱時の在炉時間が1.3t+60分(t:板厚さ)を超えると、オーステナイト結晶粒が粗大となり、焼入れ性が大きくなる効果はあるが、それによって低温靭性が劣位になる虞がある。したがって、本発明では、上記再加熱時の在炉時間は1.3t+10分~1.3t+60分(t:板厚さ)であることが好ましい。上記再加熱時の在炉時間の下限は、1.3t+12分であることがより好ましく、1.3t+15分であることがさらに好ましく、1.3t+20分であることが最も好ましい。上記再加熱時の在炉時間の上限は、1.3t+50分であることがより好ましく、1.3t+45分であることがさらに好ましく、1.3t+40分であることが最も好ましい。
【0039】
以後、上記再加熱された熱延鋼板を板表層部(例えば、表面から1/8tまでの領域(t:板厚さ(mm))を基準に、150℃以下まで水冷する。上記水冷停止温度が150℃を超える場合には、冷却中にフェライト相が形成されるか、ベイナイト相が過度に形成される虞がある。したがって、上記水冷停止温度は150℃以下であることが好ましい。上記水冷停止温度は100℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることがさらに好ましく、40℃以下であることが最も好ましい。
【0040】
上記水冷速度は10℃/s以上であることが好ましい。上記冷却速度が10℃/s未満の場合には、冷却中にフェライト相が形成されるか、ベイナイト相が過度に形成される虞がある。上記水冷時の冷却速度は15℃/s以上であることがより好ましく、20℃/s以上であることがさらに好ましい。一方、本発明では、冷却速度が速いほど有利であるため、上記冷却速度の上限については、特に限定せず、通常の技術者であれば、設備の限界を考慮して適切に設定することができる。
【0041】
上記のような工程条件を経た本発明の熱延鋼板は、60mm以下の厚さを有する厚鋼板であることができ、より好ましくは8~50mm、さらに好ましくは12~40mmの厚さを有することができる。一方、本発明では、上記厚鋼板に対して焼戻し(tempering)工程を行わないことが好ましい。
【実施例
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示して、より詳細に説明するためのものにすぎず、本発明の権利範囲を限定するためのものではない点に留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項と、それから合理的に類推される事項によって決定されるものである。
【0043】
(実施例)
下記表1及び2の合金組成を有する鋼スラブを準備した後、上記鋼スラブに対して下記表3の条件で鋼スラブ加熱-粗圧延-熱間圧延-冷却(常温)-再加熱-水冷を行い、熱延鋼板を製造した。上記熱延鋼板に対して微細組織及び機械的物性を測定し、下記表4に示した。
【0044】
このとき、上記微細組織は、任意の大きさで試験片を切断して鏡面を製作した後、ナイタールエッチング液を用いて腐食させてから、光学顕微鏡及び電子走査顕微鏡を使用して、厚さの中心である1/2tの位置を観察した。
そして、硬度及び靭性は、それぞれブリネル硬度試験機(荷重3000kgf、10mmタングステン圧入口)及びシャルピー衝撃試験機を用いて測定した。このとき、表面硬度は板の表面を2mmミリング加工した後、3回測定したものの平均値を示した。また、シャルピー衝撃試験の結果は、1/4t位置で試験片を採取した後、-40℃で3回測定したものの平均値を示した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
上記表1~4から分かるように、本発明が提案する合金組成及び関係式1、そして製造条件を満たす発明例1~6の場合には、本発明の微細組織の分率を満たすことはもちろん、優れた硬度及び低温衝撃靭性を確保していることが分かる。
一方、本発明が提案する製造条件は満たすものの、合金組成または関係式1を満たさない比較例1~12の場合には、本発明が目標とする硬度及び低温衝撃靭性のレベルに達していないことが分かる。
【0050】
本発明が提案する合金組成及び関係式1は満たすものの、製造条件のうち再加熱温度を満たさない比較例13の場合には、本発明が提案する微細組織の種類及び分率を確保することができず、表面硬度も低い水準であることが分かる。
本発明が提案する合金組成及び関係式1は満たすものの、製造条件のうち冷却終了温度を満たさない比較例14の場合には、本発明が提案するマルテンサイト分率を確保することができず、残留オーステナイトが形成されており、これによって表面硬度が低い水準であることが分かる。
本発明が提案する合金組成及び関係式1は満たすものの、製造条件のうち冷却速度を満たさない比較例15の場合には、本発明が提案するマルテンサイト分率を確保することができず、これにより表面硬度が低い水準であることが分かる。