(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】誤差が減少した非侵襲的プロセス流体温度表示
(51)【国際特許分類】
G01K 13/02 20210101AFI20231017BHJP
G01K 1/143 20210101ALI20231017BHJP
【FI】
G01K13/02
G01K1/143
(21)【出願番号】P 2021517485
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(86)【国際出願番号】 RU2018000629
(87)【国際公開番号】W WO2020067915
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ルッド,ジェイソン・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】クリヴォノゴフ,アレクセイ・アレクサンドロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】クズネツォフ,ユリ・ニコラエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ガーリポフ,サイート・サイートヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】フォムチェンコ,セルゲイ・アンドレーヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】カッセン,アレン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン,カイル・エス
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/131546(WO,A2)
【文献】特開2008-232620(JP,A)
【文献】特開2017-50284(JP,A)
【文献】特開平9-113372(JP,A)
【文献】特開2001-296187(JP,A)
【文献】特開平11-125566(JP,A)
【文献】特開2008-64470(JP,A)
【文献】特開2001-159568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス流体温度推定システムであって、
前記プロセス流体温度推定システムをプロセス流体導管の外表面に取付けるように構成された取付けアセンブリ、
前記プロセス流体導管の外表面に接触して、接触領域と空隙とを有する境界面を形成するように構成された端部を有するセンサカプセルであって、前記センサカプセルは、その中に配置された表皮温度感応素子、及び、参照温度感応素子を有し、前記表皮温度感応素子、及び、前記参照温度感応素子は、前記センサカプセル内の機械加工された第1及び第2のボア内にそれぞれ配置されているセンサカプセル、
前記表皮温度感応素子の電気的特性を検出するように、且つ、プロセス流体導管表皮温度情報を提供するように構成された、前記センサカプセルに結合された測定回路、
前記測定回路に結合された制御器、
を備え、
前記制御器は、
前記測定回路から、前記プロセス流体導管表皮温度情報を取得し、
参照温度情報を取得し、
前記境界面の空隙に関連する熱流パラメータを取得し、
推定プロセス流体温度出力を生成するために、前記プロセス流体導管表皮温度情報、前記参照温度情報、及び前記熱流パラメータ、を用いた熱伝達計算を使用し、
前記表皮温度感応素子は、前記センサカプセル内の前記第1のボアの端部の近くに配置され、前記参照温度感応素子は、前記センサカプセル内の前記第2のボアの端部の近くに配置され、前記第1のボアの前記端部と前記センサカプセルの前記端部との間の距離が、前記第2のボアの前記端部と前記センサカプセルの前記端部との間の距離よりも小さい、
ように構成されている、
上記プロセス流体温度推定システム。
【請求項2】
前記センサカプセルは平坦な端部を有し、前記プロセス流体導管の外表面は湾曲しており、前記空隙は前記平坦な端部と前記プロセス流体導管の湾曲した外表面との間に配置されている、請求項1に記載のプロセス流体温度推定システム。
【請求項3】
前記参照温度情報は、前記制御器によって前記測定回路を用いて取得される、請求項1に記載のプロセス流体温度推定システム。
【請求項4】
前記参照温度情報は、前記プロセス流体温度推定システムの電子機器ハウジング内に配置された追加の温度感応素子に結合されている前記測定回路から得られる、請求項3に記載のプロセス流体温度推定システム。
【請求項5】
前記測定回路は、前記センサカプセル内の参照温度感応素子に結合されている、請求項3に記載のプロセス流体温度推定システム。
【請求項6】
前記参照温度感応素子、及び、前記表皮温度感応素子のそれぞれは、抵抗性温度感応デバイスである、請求項1に記載のプロセス流体温度推定システム。
【請求項7】
前記参照温度感応素子及び前記表皮温度感応素子の各々は、それぞれ互い違いのボア内のサーマルグリース、及び、エポキシの内の1つに配置されている、請求項1に記載のプロセス流体温度推定システム。
【請求項8】
前記制御器は、前記推定プロセス流体温度出力を生成するために、前記サーマルグリースに関連する第2の熱流パラメータを取得するように、且つ、前記
プロセス流体導管表皮温度情報、参照温度情報、及び、熱流パラメータを用いて前記熱
伝達計算を実行するように更に構成されている、請求項7に記載のプロセス流体温度推定システム。
【請求項9】
プロセス流体温度推定システムであって、
前記プロセス流体温度推定システムをプロセス流体導管の湾曲した外表面に取付けるように構成された取付けアセンブリ、
前記プロセス流体導管の前記湾曲した外表面に接触するように構成された湾曲端部を有するセンサカプセルであって、その中に配置された少なくとも1つの温度感応素子を有するセンサカプセル、
温度とともに変化する前記少なくとも1つの温度感応素子の電気的特性を検出し、少なくともプロセス流体導管表皮温度情報を提供するように構成された、前記センサカプセルに結合された測定回路、
前記測定回路に結合された制御器、
を備え、
前記制御器は、
前記測定回路から前記プロセス流体導管表皮温度情報を取得する、
参照温度情報を取得する、
推定プロセス流体温度出力を生成するために、前記プロセス流体導管表皮温度情報と参照温度情報とを用いた熱伝達計算を使用する、
ように構成され、
前記少なくとも1つの温度感応素子は、表皮温度感応素子、及び、参照温度感応素子
を含み、前記測定回路は、前記センサカプセル内の前記参照温度感応素子に結合され、
前記参照温度感応素子及び前記表皮温度感応素子は、前記センサカプセル内の機械加工された第1及び第2のボア内にそれぞれ配置され、
前記表皮温度感応素子は、前記センサカプセル内の前記第1のボアの端部の近くに配置され、前記参照温度感応素子は、前記センサカプセル内の前記第2のボアの端部の近くに配置され、前記第1のボアの前記端部と前記センサカプセルの前記端部との間の距離が、前記第2のボアの前記端部と前記センサカプセルの前記端部との間の距離よりも小さい、上記プロセス流体温度推定システム。
【請求項10】
前記参照温度情報は、前記測定回路を用いて前記制御器によって取得される、請求項9に記載のプロセス流体温度推定システム。
【請求項11】
前記制御器は、前記センサカプセルに関連する熱流パラメータを取得するように、且つ前記プロセス流体導管表皮温度情報、参照温度情報、及び熱流パラメータを用いて前記熱
伝達計算を実行するように、さら更に構成されている、請求項9に記載のプロセス流体温度推定システム。
【請求項12】
前記熱流パラメータは、前記センサカプセルの端部キャップに関連している、請求項11に記載のプロセス流体温度推定システム。
【請求項13】
前記熱流パラメータは、前記センサカプセル内に配置されたサーマルグリースに関連している、請求項11に記載のプロセス流体温度推定システム。
【請求項14】
湾曲面を有するプロセス流体導管に関する非侵襲的なプロセス流体温度推定値を提供する方法であって、
プロセス流体導管の曲率の指標を受け取ること、
センサカプセルを前記プロセス流体導管の前記湾曲した外表面に結合し、前記センサカプセルが表皮温度感応素子を含むこと、
前記表皮温度感応素子からプロセス流体導管表皮温度を取得すること、
前記プロセス流体導管表皮温度が得られた場所からの固定された熱インピーダンスを有する場所に配置された参照温度感応素子から参照温度を取得すること、
前記プロセス流体導管の外表面により発生する空隙に関連する熱流パラメータを取得すること、及び
前記プロセス流体導管の曲率によって引き起こされた誤差に対して少なくとも部分的に補償されるプロセス流体温度推定値を提供するために、前記プロセス流体導管表皮温度と前記参照温度と前記熱流パラメータとを用いた熱流計算を採用すること、
を包含している、
上記方法。
【請求項15】
前記プロセス流体導管曲率の指標を受信することは
、プロセス流体
温度推定システム内に前記プロセス流体導管曲率に関連する情報を保存することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プロセス流体導管曲率の指標を受け取ることは、前記プロセス流体導管の湾曲面の曲率に実質的に一致する湾曲端部を有するセンサカプセルを選択することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
プロセス流体温度推定システムであって、
前記プロセス流体温度推定システムをプロセス流体導管の湾曲した外表面に取付けるように構成された取付けアセンブリ、
前記プロセス流体導管の前記湾曲した外表面に接触するように構成された端部を有するセンサカプセルであって、前記センサカプセル内の第1のボアの端部の近くに配置される第1の温度感応素子、及び、前記センサカプセル内の第2のボアの端部の近くに配置された第2の温度感応素子を含み、前記第1のボアの前記端部と前記センサカプセルの前記端部との間の距離が、前記第2のボアの前記端部と前記センサカプセルの前記端部との間の距離よりも小さい、前記センサカプセル、
前記第1、及び、第2の温度感応素子に結合され、且つ、温度とともに変化し、少なくともプロセス流体導管表皮温度情報及び参照温度情報を提供する前記第1、及び、第2の温度感応素子の各々の電気的特性を検出するように構成された測定回路、
前記測定回路に結合された制御器、
を備え、
前記制御器は、
前記測定回路から前記プロセス流体導管表皮温度情報と参照温度情報を取得するように、且つ、
推定プロセス流体温度出力を生成するために、前記プロセス流体導管表皮温度情報と参照温度情報を用いた熱伝達計算を使用するように、
構成されている、
上記プロセス流体温度推定システム。
【請求項18】
前記センサカプセル内に配置された挿入体を更に備え、前記挿入体は、前記第1、及び、前記第2のボアを有している、請求項17に記載のプロセス流体温度推定システム。
【請求項19】
前記第1及び第2の温度感応素子を周囲状態から絶縁するために、前記挿入体は、前記センサカプセルの側壁から離れるように先細にテーパー加工されている壁を含む、請求項18に記載のプロセス流体温度推定システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多くの産業プロセスは、パイプ又は他の導管を通してプロセス流体を運ぶ。そのようなプロセス流体は、液体、気体、場合によっては伴なわれた固体を含みうる。これらプロセス流体の流れは、衛生的な食品及び飲料の製造、水処理、高純度医薬品製造、化学処理、炭化水素燃料産業(炭化水素の抽出及び処理を含む)、及び研磨性及び腐食性のスラリーを用いる水圧破砕技術を含むが、これらに限定されない様々な産業のいずれかに見出される。
【0002】
温度センサをサーモウェル内に配置することは一般的であり、次にサーモウェルは、導管の開口部を通してプロセス流体の流れに挿入される。しかし、このアプローチは、プロセス流体の温度が非常に高いか、腐食性が高いか、又はその両方でありうる場合に、常に実用的であるとは限らない。さらに、サーモウェルは通常、導管内にねじ付きポート又はその他の堅牢な機械的取付け具/シールを必要とし、ひいては規定された場所でのプロセス流体流れシステムに設計される必要がある。したがって、サーモウェルは、正確なプロセス流体温度を提供するのに有用であるが、いくつかの限界を有している。
【0003】
より最近では、プロセス流体温度は、プロセス流体導管(例えば、パイプ)の外部温度を測定すること、及び熱流計算を使用することによって推定されてきた。この外部アプローチは、導管に規定されるべきいかなる開口部やポートをも必要としないので、非侵襲的と見なされる。従って、そのような非侵襲的アプローチは、導管に沿って事実上任意の場所で展開されうる。
【0004】
最近の進歩が非侵襲的技術を使用するプロセス流体温度推定の精度を改善したので、誤差の新しい原因が特定された。これらの新しい誤差の原因に対処し訂正することは、非侵襲的なプロセス流体温度推定の精度を向上させるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
プロセス流体温度推定システムは、取付けアセンブリ、センサカプセル、測定回路、及び制御器を含む。上記取付けアセンブリは、上記プロセス流体温度推定システムをプロセス流体導管の外表面に取付けるように構成されている。上記センサカプセルは、上記プロセス流体導管の上記外表面に接触して、接触領域及び空隙を有する界面を形成するように構成された端部を有する。上記センサカプセルはまた、その中に配置された少なくとも1つの温度感応素子を有する。上記測定回路は、上記センサカプセルに結合され、温度とともに変化する上記少なくとも1つの温度感応素子の電気的特性を検出し、少なくともプロセス流体導管表皮温度情報を提供するように構成されている。上記制御器は、上記測定回路に結合されており、上記測定回路から上記プロセス流体導管表皮温度情報を取得し、且つ参照温度情報を取得するように構成されている。上記制御器は、推定プロセス流体温度出力を生成するために、上記境界の空隙に関連する熱流パラメータを取得するように、且つ上記プロセス流体導管表皮温度情報、参照温度情報、及び熱流パラメータを用いた熱伝達計算を使用するように構成されている。
【0006】
複数のボアがその中に配置されているセンサカプセルを有する、プロセス流体温度推定システムが、提供される。上記複数のボアは、一方のボアの端部が他方のボアの端部よりもセンサカプセルの感応端部により近くなるように構成されている。
【0007】
湾曲した端部を有するセンサカプセルを備えたプロセス流体温度推定システムはまた、湾曲した表面を有するプロセス流体導管に対して非侵襲的なプロセス流体温度推定値を提供する方法と共に提供される。
【0008】
本概要は、簡略化された形での概念の選択を紹介するために提供され、これらは、以下の「発明を実施するための形態」で更に説明される。本概要は、請求項の主要な特徴又は必須的な特徴を特定することを意図されておらず、請求項の範囲を決定する際の補助として用いられることも意図されていない。請求項は、「背景技術」に記載された不利な点のいずれか又は全てを解決する実装に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態が具体的に当てはまる、熱流測定システムの概略図である。
【
図2】本発明の実施形態が具体的に当てはまる、熱流測定システム内の回路のブロック図である。
【
図3A】或る直径を有するプロセス流体導管に対するセンサカプセルの境界の拡大図である。
【
図3B】
図3Aと異なる直径を有するプロセス流体導管に対するセンサカプセルの境界の拡大図である。
【
図3C】導管の形状によって誘発される誤差を、導管の直径の関数として示す図である。
【
図4】センサカプセル/導管の境界の様々な部分の熱抵抗を示す概略図である。
【
図5A】本発明の1実施形態による、改良されたセンサカプセルの一部分の概略図である。
【
図5B】カプセル充填材が施与された、
図5Aに示されたセンサカプセルの一部分の概略図である。
【
図6】本発明の1実施形態による、センサカプセルの部分の概略図である。
【
図7】本発明の別の実施形態による、センサカプセルの一部分の概略図である。
【
図8】本発明の別の実施形態による、センサカプセルの一部分の概略図である。
【
図9】本発明の別の実施形態による、センサカプセルの一部分の概略図である。
【
図10】本発明の実施形態による、非侵襲的にプロセス流体温度を推定する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載の実施形態は、一般的に、より高い精度を有する解決策を提供するために、非侵襲的プロセス流体温度推定における追加の誤差の原因の識別及び評価を活用する。誤差の2つの原因は識別されており、本明細書に記載された様々な実施形態は、一方又は両方の原因に対する解決策を提供することができる。
【0011】
誤差の第1の原因は、第1の温度測定点から第2の温度測定点までの熱流経路の変動性である。多くの場合、第2の温度測定点は、プロセス流体推定システム自体の電子機器ハウジング内に配置されているので、導管表面センサ(即ち、プロセス流体導管表皮温度を測定するセンサ)から参照温度センサ(例えば、電子機器ハウジング内にある)への熱流は、厳密に制御されねばならない。このことは、システムがプロセス流体導管の外表面から常に同じ間隔で取付けられる必要があることを意味する。この要件は、非侵襲的なプロセス流体温度推定の潜在的な用途(例えば、遠隔取付け、又は高温用途)を排除しうる。更に、プロセス流体導管から電子機器ハウジングへの主要な熱経路は、一般に、センサシースを通る。このことは、測定を周囲状態の変化の影響を非常に受けやすくし、ユーザがセンサの周囲に断熱材を取付けることを要求する。このことは、システムの精度を制限し、最終ユーザに追加のコストと労力を求める可能性がある。
【0012】
誤差の第2の原因は、湾曲したプロセス流体導管(例えば、パイプ)に接触するセンサカプセルの比較的平坦な端部によって引き起こされると一般に考えられている。平坦な表面と湾曲したプロセス流体導管との間のこの空隙は、プロセス流体導管の曲率に応じて変化する。理解できるように、広範囲の直径で使用可能な解決策を提供するために、この誤差の原因に対処することも重要である。
【0013】
図1は、本発明の実施形態が具体的に当てはまる、熱流測定システムの概略図である。システム200は一般に、導管又はパイプ100の周りを締付ける(/クランプする)ように構成されたパイプクランプ部分202を含む。パイプクランプ部分202は、パイプクランプ部分202がパイプ100に配置され且つ締付けられることを可能にするために、複数1つ以上のクランプ耳部204を有しうる。パイプクランプ部分202は、パイプクランプ部分202がパイプ上に配置されるために開かれ、次いでクランプ耳部204によって閉じられ且つ固定されうるように、クランプ耳部204の1つをヒンジ部分と置き換えることができる。
図1に示されたクランプは特に有用である一方、システム200をパイプ外面の周りに確実に設置するための何らかの適切な機械的配置も、本明細書に記載の実施形態に従って用いられうる。
【0014】
システム200は、ばね208によってパイプ100の外径116に対して押し付けられる熱流センサカプセル206を含む。「カプセル」という用語は、特定の構造又は形状を意味することを意図せず、従って、様々な形状、サイズ、及び構造に形成されうる。ばね208が示されているが、当業者は、様々な技術を用いて、センサカプセル206を導管100の外径116と接触させることができることを理解するであろう。センサカプセル206は、一般に、1以上の温度感知素子(例えば、抵抗温度デバイス(RTD)を含む。カプセル206内のセンサは、ハウジング210内の送信機回路に電気的に接続されており、この送信機回路は、センサカプセル206から複数1つ以上の温度測定値を取得し、センサカプセル206からの測定値及び参照温度(例えば、ハウジング210若しくはカプセル206のセンサの1つ内で測定された温度、又はそうでなければハウジング210内の回路に提供された温度)に基づいて、プロセス流体温度の推定値を計算するように構成されている。
【0015】
1例として、基本的な熱流計算は、以下のように簡略化することができる。
【数1】
【0016】
この式において、T
skinは、導管の外表面の測定された温度である。さらに、T
referenceは、固定熱インピーダンス(R
sensor)を持つ場所に対して、T
skin を測定する温度センサから取得された第2の温度である。R
pipe は、導管の熱インピーダンスであり、パイプ材料の情報、パイプ壁の厚み情報を得ることによって手動で取得されうる。追加又は代替として、R
pipe に関するパラメータは、較正中に決定され、後の使用のために保存されうる。従って、上記のような適切な熱流計算を用いて、ハウジング210内の回路は、プロセス流体温度(T
corrected)の推定値を計算し、そのようなプロセス流体温度に関する指標を適切なデバイス、及び/又は、制御室に伝達することができる。
図1に示された例において、そのような情報は、アンテナ212を介して無線で伝達されうる。
【0017】
図2は、本発明の実施形態が具体的に当てはまる、熱流測定システム200のハウジング210内の回路のブロック図である。システム200は、制御器222に結合された通信回路220を含む。通信回路220は、推定プロセス流体温度に関する情報を伝達することができる何らかの適切な回路でありうる。通信回路220は、熱流測定システム200が、プロセス通信ループ又はセグメントを介してプロセス流体温度出力を通信することを可能にする。プロセス通信ループプロトコルの適切な例には、4~20ミリアンペアプロトコル、Highway Addressable Remote Transducer(HART(商標))プロトコル、FOUNDATION(商標)フィールドバスプロトコル、及びWirelessHARTプロトコル(IEC 62591)が含まれる。
【0018】
熱流測定システム200はまた、矢印226によって示されるように、システム200のすべての構成要素に電力を供給する電力供給モジュール224を含む。熱流測定システムが有線プロセス通信ループ(例えば、HART(商標)又はFOUNDATION(商標)フィールドバスセグメント)に結合されている実施形態において、電力供給モジュール224は、システム200のさまざまな構成要素を操作するためにループ又はセグメントから受け取った電力を調整するための適切な回路を含みうる。したがって、そのような有線プロセス通信ループの実施形態において、電力供給モジュール224は、デバイス全体が、それが結合されているループによって電力を供給されることを可能にするために、適切な電力調整を提供しうる。別の実施形態において、無線プロセス通信が用いられる場合、電力供給モジュール224は、電源(例えば、バッテリ及び適切な調整回路)を含みうる。
【0019】
制御器222は、カプセル206内のセンサからの測定値及び追加の参照温度(例えば、ハウジング210内の端子温度、又はカプセル206内に置かれた第2の温度センサからの温度測定値)を用いて、熱流ベースのプロセス流体温度推定値を生成することができる任意の適切な構成を含む。参照温度は、いくつかの用途において、十分に制御されたプロセス又は周囲環境(例えば、システムが温度制御された施設内に配置されている)について既知又は推定されうる。1つの例において、制御器222はマイクロプロセッサである。制御器222は、通信回路220に通信可能に結合されている。
【0020】
測定回路228は、制御器222に結合され、複数1つ以上の温度センサ230から得られた測定値に関してデジタル表示を提供する。測定回路228は、複数1つ以上のアナログ-デジタル変換器、及び/又は、複数1つ以上のアナログ-デジタル変換器をセンサ230にインタフェースする適切なマルチプレックス回路を含むことができる。さらに、測定回路228は、用いられる様々なタイプの温度センサに対して妥当でありうる、適切な増幅回路、及び/又は、線形化回路を含むことができる。
【0021】
図3A及び3Bは夫々、異なるプロセス流体導管100、300に接触するときのセンサカプセル206の夫々の概略図である。異なる曲率によって引き起こされる空隙の変化を説明するために、2つのプロセス流体導管100及び300が示されている。センサカプセル206は、その中にRTD素子302を含んで示されている。センサカプセル206は、プロセス流体導管に接触する比較的平坦な下面304を有している。図示されたように、平坦面304が大径プロセス流体導管100と接触する場合、比較的小さな空隙306がプロセス流体導管100と平坦面304との間に形成される。しかし、
図3Bに示されるように、より小さな直径のプロセス流体導管300が使用される場合、プロセス流体導管のより高い曲率は、平坦面304とより小さな直径のプロセス流体導管300との間に大きな空隙308を作り出す。2つの境界の間の熱伝導性は、必要な補正の重要な部分を構成する小さな境界空隙を含む。補正された温度推定値は、以下に示す式によって提供される。
【数2】
【0022】
上記の式において、空隙の熱抵抗は、Rotherパラメータに含まれている。
【0023】
図3Cは、導管の形状によって誘発された誤差を、導管の直径の関数として示すチャートである。見てわかるように、直径が小さい場合、形状によって誘発される誤差が大幅に増加する可能性がある。本発明の1実施形態によれば、制御器122(
図2に示される)は、プロセス流体温度推定システムが用いられるパイプ直径の指標を備えている。次に、パイプ直径は、使用されている特定の導管の空隙の熱抵抗をモデル化する適切なパラメータを特定するために、誤差の写像若しくは補正曲線にアクセスするために用いられる。幅広い範囲の直径に適した既定値が設定(例えば、既定値のパイプ直径を2又は3インチに設定すること)されうる。しかし、最終ユーザは、注文時により小さいパイプ直径を指定することができ、そして、この補正曲線のために、指定されたパイプ直径を既に有しているシステムを取得できる。代わりに、パイプ直径は、通信回路220を用いるプロセス通信を介して制御器122へ通信されるか、又はユーザインターフェース(図示せず)を介して手動で入力される場合がある。このような補正曲線又は参照テーブルを用いて、非侵襲的なプロセス流体温度推定システムは、センサカプセルとプロセス流体導管の表面との間の形状の違いを自動的に補正することができる。
【0024】
パイプの直径が減少するにつれて、空隙は指数関数的に増加し、小直径の導管に対してより多くの補正を必要とする。補償曲線は、通常ユーザによって設定されるパイプの直径に基づいて熱抵抗パラメータ(Rother)を提供する。次に、上記の補正計算は、より正確な出力を得るように補正率を適切に調整する。制御器222に通信されうる、又はユーザインターフェースを介して入力されうる追加の設定オプションは、センサが選択された形状(例えば、パイプ、又は平面など)に対して垂直に取付けられているか否かを示すことができる。
【0025】
図4は、センサカプセル/プロセス流体導管の境界における様々な熱抵抗パラメータを示す概略図である。
図4に示された概略図は、
図3Aに示されたものに対して大幅に拡大されている。小さな境界空隙(R
air)も含まれている。これは小さいように見えるが、R
airは熱インピーダンスの最大の原因である。1例において、様々なパラメータについての値が以下の表1に示される。
【表1】
【0026】
上記のように、プロセス流体導管の直径に基づいて変更可能なRotherパラメータを提供することは、上記のプロセス流体温度推定計算の精度を大幅に改善する。更に、端部キャップ材料の変更(例えば、銀以外のものへ)が為される場合も、制御器222に提供される補償曲線の地図が選択された端部キャップの熱伝導率及び長さの指標を含む限り、依然として改善された精度が与えられうる。サーマルグリース(熱伝導グリース、放熱グリースとも呼ばれる)の長さと組成の変化についても同様である。更に、所与のRairパラメータに明示的に一致しない直径が使用される場合、本明細書に記載の実施形態は、2つの最も近いデータ点間を補間できることが明確に意図されている。
【0027】
非侵襲的技術を用いるプロセス流体温度推定における別の誤差の原因は、プロセス流体導管表皮温度測定点から参照温度測定点までの熱流の潜在的な変動性である。本明細書に記載の別の実施形態によれば、この熱流変動は、同じセンサカプセル内に配置され、熱流路に沿って互いに離間された2つの温度センサを提供することによって、実質的に最小化されるか又は少なくとも制御される。
【0028】
図5Aは、本発明の1実施形態による、互い違いのボア(bore:掘削された穴)のプロセス流体温度推定システムを採用する、改良されたセンサカプセルの概略図である。本明細書で使用される場合、「互い違いのボア」は、2つのボアがプロセス流体導管の外表面から異なる距離を有し、且つそれらはまた、少なくとも1つの他の次元(例えば、導管の軸に沿って、及び/又は、導管の軸に垂直な方向に)でオフセット(ずれ)を有していることを意味する。センサカプセル406は、複数の感応素子410及び412が取付けられている機械加工された先端部408を用いる。感応素子410及び412は、好ましくはRTDであり、測定回路228(
図2に示される)に結合されるべきセンサカプセル406の長さ分を貫いて走行するワイヤに接続されている。感応素子410、412は、機械的又は化学的(すなわち、接着)技術のいずれかを用いて、センサカプセル406内の所定の位置に保持される。次に、キャップはチューブに溶接され先端部をシールする。機械加工された先端部は、素子410と412との間に正確で一貫したセンサ間隔を提供する。これらの機械加工部品は、センサがそれらの中に底まで挿入されることを可能にすることによって、検査が比較的容易であり、アセンブリの一貫性を改善する。これにより、素子と表面との間隔が測定に直接影響する場合に、誤差が発生する可能性があるので、センサカプセル内の素子の取付けに一貫性がないという潜在的な問題が排除される。更に又は代わりに、より複雑な特徴(例えば、正方形の穴)の生成を容易にするために、センサカプセルの一部分は3D印刷されうる。
【0029】
先端部408に使用される材料は、著しく異なりうる。熱伝導率の高い材料(例えば、銅及び銀)が、熱伝達を改善するために用いられうるが、意図的に熱伝導率の低い材料を選択すると、素子410と412との間隔を大幅に小さくでき、ひいては全体的なコストを削減できる。先端部408はまた、電解腐食の懸念を排除するために、パイプ及びクランプの材料に合わせて変更されうる。センサカプセルの構成品の材料が変化すると、構成品のサイズと熱伝導率とは、プロセス流体の温度を正確に推定するために、参照テーブル又は補正曲線に保存されうる。従って、各材料は、異なる熱特性を持ち、プロセス流体の温度推定に影響を与え、そして、このような変動は計算のRotherパラメータに含まれうる。
【0030】
しかし、1例において、均質な材料の単一ブロックが、素子410、及び412を取り付けるために用いられ、ひいては、感応素子410と412との間の熱流の補正が容易に行なわれうる。例えば、感応素子410は表皮温度センサと見なされ得、感応素子412は参照温度センサと見なされうる。測定された温度の違いは、均質な材料のブロックを通る熱流の大きさとその熱伝導率に関連する。素子410及び412の配置の精度を高めることは、素子410及び412間の間隔の縮小を可能に、従って、センサカプセル406の全体的なサイズを縮小する。これは、素子410と412とに渡る熱勾配の線形性が改善され、且つ外部の影響による応答の影響を少なくすると考えられる。一例において、温度感応素子410及び412はRTDであることが好ましい。何故なら、そのようなデバイスは、他のタイプの温度感応素子(例えば、熱電対)よりも高い精度及び再現性を有すると一般に考えられているからである。
【0031】
図5Bは、エポキシ又は他の適切なカプセル化材(/充填材)414が施与されたセンサカプセル406の一部分を示す。エポキシ414は、温度感応素子410及び412がそれぞれのボア内に固定されたままであることを保証し、また、個々の温度感応素子のリード線が温度感応素子に取付けられる場所でひずみも緩和を提供するのに役立つ。従って、機械加工された先端部及び温度感応素子は、ワイヤを備えた金属カプセルに事前に組み込まれうる。これは、測定値の一貫性を維持しつつ、製造中に遅い段階でのカスタマイズによりセンサを最終的な長さに形成することを可能にする。
【0032】
図6は、複数の温度感応素子のための互い違いのボア、及び選択されたプロセス流体導管の曲率に適合するように湾曲した端部、を提供するセンサカプセルの一部分の概略図である。この意味で、
図6に示された実施形態は、誤差の両方の原因に対処するものと考えることができる。プロセス流体導管の曲率に適合する曲率を端部502に提供することにより、端部502とプロセス流体導管との間の空隙は最小化される。更に、機械加工技術を用いてボア504と506との間に互い違いを提供することは、温度センサ(例えば、素子410及び412)がその中に取り付けられるための信頼性の高い配置技術を提供する。表面502の曲率は、注文過程中に選択されなければならないので、
図6に示される実施形態は、全く新しいセンサカプセル500を要求せずにプロセス流体導管の直径を変更する最終ユーザにとって、特に受け入れ易いというわけではない。
【0033】
図7は、本発明の別の実施形態によるセンサカプセルの一部分の概略図である。センサカプセル600は、
図5A、
図5B、及び
図6に示された実施形態よりも平坦な表面606(即ち、高温端部)から更に離れて終端するボア602及び604を含む。表面606から更に離れてボア602及び604を終端することは、感応素子への高温の曝露を低減することが可能であり、このことは、より高温の用途について追加の利点を与えうる。
【0034】
図8は、本発明の別の実施形態によるセンサカプセルの別の部分を示している。具体的には、センサカプセル700は、ボア706、708内の感応素子のためにより多くのスペースを提供するために、管704よりも大きいか等しい直径である機械加工された先端部702を含む。先端部702は、溶接などの任意の適切な技術に従って管704に取り付けられる。
【0035】
図9は、本発明の別の実施形態によるセンサカプセル800の一部分の概略図である。センサカプセル800は、ボア804、806を含むように形成された挿入体802を含む。ボア804、806は、温度感応素子(例えば、素子410、412(
図5Aに示された))を受け入れるような寸法である。更に、挿入体802の壁は、周囲状態からのより良い絶縁を提供するように、管の側壁810から離れるように先細にされうる。
【0036】
図10は、本発明の1実施形態による、非侵襲的にプロセス流体温度を推定する方法の流れ図である。方法900はブロック902で始まり、そこでは最終ユーザが導管の曲率の指標を提供する。そのような指標は、ブロック904で示されるように、プロセス流体温度推定システムへの通信(例えば、プロセス通信、及び/又は、ユーザインターフェースとの相互作用)の形で提供されうる。代わりに、指標は、ブロック906に示されるように、プロセス流体温度システムの取得中に製造業者に提供されることができ、その結果、システムが最終ユーザに出荷されるとき、導管の曲率は既にシステムに入力されている。曲率はまた、ブロック908に示されるように、導管の曲率と適合する曲率を有するセンサカプセルを有するシステムを注文する最終ユーザによって設定されうる。
【0037】
ブロック910で、プロセス流体推定システムは、プロセス流体導管上にインストール(/設置)される。次に、ブロック912で、項Rotherが取得又は計算される。導管と適合する湾曲した端部を備えたセンサカプセルを持たない実施形態の場合、ブロック914に示されるように、Rotherパラメータは、プロセス流体導管の直径に基づいてRairによって影響を受ける値を有することに留意されたい。上記のように、Rotherパラメータは、選択された導管の湾曲に基づいて参照テーブルから取得されうる。更に、他の熱流変数(例えば、端部空隙の厚さ、及び/又は、材料)は、参照テーブルから取得されうる。更に、サーマルグリースの熱流情報も取得されうる。Rotherに影響を与えるこれらの他の要因は、参照符号916に図式的に示されている。
【0038】
次にブロック918で、システムは、プロセス流体導管表皮温度を取得する。ブロック920で、参照温度が測定される。参照温度は、システムの電子機器ハウジング内に配置された端子に結合された温度センサから取得されうるか、又は、センサカプセル内に配置されているが、既知の熱インピーダンスが表皮温度センサと参照温度センサとの間に存在するように配置された(例えば、
図5~
図9に示されるような)、追加の温度感応素子から取得されうる。
【0039】
ブロック922で、制御器122(
図2に示された)は、測定された表皮温度、参照温度、及びR
otherを用いて熱流計算を実行する。センサカプセルがプロセス流体導管の曲率と適合する湾曲端部を有している場合の実施形態において、R
otherパラメータは、R
airの値を含まない場合がある。しかし、そのような場合でも、R
otherは、他の熱流特性(例えば、湾曲したキャップを通る熱流、及び使用されている特定のサーマルグリースを通る熱流)をモデル化する場合がある。ブロック924においては、ブロック922で実行された熱流計算に基づくプロセス流体温度の推定値が出力として提供される。次に方法900は、別の表皮温度を得るために、ブロック918に戻ることによって繰り返される。
【0040】
上記のように、本発明のいくつかの実施形態は、非侵襲的プロセス流体温度推定システムにおける複数の誤差の原因に対する様々な解決策を提供するが示されてきた。実施形態は、上記の解決策の任意の組み合わせを含みうる。本発明は、好ましい実施形態を参照して説明されてきたが、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱しないで、形態及び詳細において変更が為されうることを認識するであろう。