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特許7368484組成物並びに該組成物含有する飲食品組成物および調製乳
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  • 特許-組成物並びに該組成物含有する飲食品組成物および調製乳 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】組成物並びに該組成物含有する飲食品組成物および調製乳
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20231017BHJP
   A23C 9/00 20060101ALI20231017BHJP
   A23C 9/152 20060101ALI20231017BHJP
   A23C 9/13 20060101ALI20231017BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20231017BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20231017BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231017BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20231017BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALI20231017BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A23L33/135
A23C9/00
A23C9/152
A23C9/13
C12N1/20 A
A61K35/745
A61P1/00
A61K38/02
A61K31/7004
A61P43/00 105
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021548731
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2020033078
(87)【国際公開番号】W WO2021059894
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2019177888
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】ATCC  29521
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02429
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-01252
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02431
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02648
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02432
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02433
【微生物の受託番号】ATCC  15700
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02460
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-11175
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02622
【微生物の受託番号】ATCC  15697
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02623
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】和田 泰明
(72)【発明者】
【氏名】江原 達弥
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181066(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/117212(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/189200(WO,A1)
【文献】特表2014-513697(JP,A)
【文献】国際公開第2019/180965(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/100776(WO,A1)
【文献】IDOTA,T., et al.,Growth-promoting Effects of N-Acetylneuraminic Acid-containing Substances on Bifidobacteria,Biosci.Biotech.Biochem.,1994年,Vol.58,p.1720-1722
【文献】CICVAREK,J., et al.,Effect of Caseinomacropeptide Concentrate Addition on the Growth of Bifidobacteria,Czech J.Food Sci.,2010年,Vol.28,p.485-494
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/135
A23C 9/00
A61P 1/00
A61K 35/475
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物を含有する、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌の増殖促進用の組成物。
【請求項2】
前記ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌が、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(ATCC29521T)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02429)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-01252)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02431)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02648)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02432)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02433)、から選択される1以上の細菌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌を含有する請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌が、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(ATCC15700T)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(NITE BP-02460)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(FERM BP-11175)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(NITE BP-02622)、から選択される1以上の細菌である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌が、ビフィドバクテリウム・インファンティス(ATCC15697T)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(NITE BP-02623)、から選択される1以上の細菌である、請求項3または請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記資化産物は、前記資化産物を糖精製固相抽出カラムで精製後、得られた精製物を2-アミノベンザミドで誘導体化処理した後に質量分析装置に供した際、その質量電荷比が324または363の陰イオンとして検出される物質を含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物を含む、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌の増殖促進剤。
【請求項8】
さらに、炭水化物を含有する、請求項7に記載の増殖促進剤。
【請求項9】
前記ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌が、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(ATCC29521T)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02429)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-01252)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02431)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02648)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02432)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02433)、から選択される1以上の細菌である、請求項7または請求項8に記載の増殖促進剤。
【請求項10】
κ-カゼイングリコマクロペプチドを、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を用いて発酵させる発酵工程を含む、
2-アミノベンザミドで誘導体化処理した後に質量分析装置に供した際、その質量電荷比が324または363の陰イオンとして検出され、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌の増殖促進用の物質の製造方法。
【請求項11】
前記発酵工程では、濃度0.8%~12%のκ-カゼイングリコマクロペプチド溶液に、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌の培養液を0.5~5%添加して発酵させる、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項7から9のいずれか一項に記載の増殖促進剤を含有する飲食品組成物。
【請求項13】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項7から9のいずれか一項に記載の増殖促進剤を含有する調製乳。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、κ-カゼイングリコマクロペプチド(以下、「GMP」ともいう)の資化能が低いプロバイオティクスの増殖促進が可能な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビフィズス菌は、ヒトを含む哺乳類の腸管内常在菌であり、腸管内での病原性腸内細菌の増殖を阻害する作用があることが知られている。
一般に、健康な乳児の腸内フローラはビフィズス菌が優勢である。一方、加齢とともにビフィズス菌は徐々に減少し、大腸菌やクロストリジウム属細菌などの腐敗菌が増加することにより、宿主であるヒトの健康に悪影響を及ぼす。このため、健康状態を維持するためには、ビフィズス菌が優勢な腸内フローラを維持することが重要である。
【0003】
GMPはκ-カゼインを凝乳酵素キモシンにより処理することで切り出されるκ-カゼインのC末側(残基番号106-169)に相当するペプチドである。GMPは、O型糖鎖修飾を高度に受けており、糖鎖構造が、GMPの重量の約10%を占める。この糖鎖構造のうち、約50%がシアル酸である。
【0004】
GMPは、様々な生理活性が報告されており、その多くが糖鎖(特にシアル酸を有する糖鎖)を介したものであると考えられている。GMPが有する生理活性としては、例えば、抗菌活性、ビフィズス菌増殖作用、免疫調節機能、食欲調節機能が挙げられる。
【0005】
特許文献1には、GMPに、感染防御作用があることが開示されている。特許文献2には、GMPに、カルシウム吸収促進作用があることが開示されている。特許文献3には、GMPに、アッカーマンシア・ムシニフィラ増加促進作用があることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-284133号公報
【文献】特開平10-117728号公報
【文献】特開2019-43866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
細菌の中には、GMPに対する資化能がないまたは低い菌も存在するが、そのような菌であっても、善玉菌として利用可能な細菌は数多く存在する。そのため、GMPに対する資化能がないまたは低いプロバイオティクスであっても、GMPを利用して増殖することができれば、組成物として有用である。
【0008】
そこで、本技術では、GMPに対する資化能がないまたは低いプロバイオティクスを、GMPの資化産物を用いて増殖促進することを可能とする技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、まずは、各種ビフィズス菌について、GMPに対する資化能を調べた。後述する実施例に示すように、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌は、資化能が認められたが、その他の細菌については、GMPに対する資化能がないかまたは低いことが分かった。ところが、GMPを炭素源とする培地で、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を培養した後、その培地において、その他の細菌を培養すると、GMPに対する資化能がないまたは低い細菌であっても、増殖できる細菌があることを見出し、本技術を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本技術では、まず、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物を含有する組成物を提供する。
本技術に係る組成物において、前記ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌としては、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(ATCC29521T)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02429)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-01252)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02431)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02648)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02432)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02433)、から選択される1以上の細菌を用いることができる。
本技術に係る組成物には、さらに、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌を含有させることもできる。
本技術に係る組成物において、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌としては、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(ATCC15700T)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(NITE BP-02460)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(FERM BP-11175)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(NITE BP-02622)、から選択される1以上の細菌を用いることができる。
また、ビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌としては、ビフィドバクテリウム・インファンティス(ATCC15697T)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(NITE BP-02623)、から選択される1以上の細菌を用いることができる。
本技術に係る組成物において、前記資化産物には、糖精製固相抽出カラムで精製後、2-アミノベンザミドで誘導体化処理した後に質量分析装置に供した際、その質量電荷比が324または363の陰イオンとして検出される物質を含んでいてもよい。
【0011】
本技術では、次に、κ-カゼイングリコマクロペプチドからなる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤を提供する。
本技術に係るビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤には、さらに、炭水化物を含有させることができる。
本技術に係るビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤において、前記ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌としては、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(ATCC29521T)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02429)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-01252)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02431)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02648)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02432)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02433)、から選択される1以上の細菌を用いることができる。
【0012】
本技術では、また、2-アミノベンザミドで誘導体化処理した後に質量分析装置に供した際、その質量電荷比が324または363の陰イオンとして検出される物質を製造するために、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を使用することができる。
【0013】
本技術では、さらに、κ-カゼイングリコマクロペプチドを、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を用いて発酵させる発酵工程を含む、
2-アミノベンザミドで誘導体化処理した後に質量分析装置に供した際、その質量電荷比が324または363の陰イオンとして検出される物質の製造方法を提供する。
本技術に係る製造方法において、前記発酵工程では、濃度0.8%~12%のκ-カゼイングリコマクロペプチド溶液に、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌の培養液を0.5~5%添加して発酵させることができる。
【0014】
本技術に係る組成物、および、本技術に係るビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤は、飲食品組成物や調製乳に用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本技術によれば、GMPに対する資化能がないまたは低いプロバイオティクスを、GMPの資化産物を用いて増殖促進することが可能である。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実験例3において、トータルイオンクロマトグラム(TIC)を示す図面代用グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本技術を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本開示の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。なお、本明細書において、数値範囲を「下限~上限」で表現するものに関しては、上限は「以下」であっても「未満」であってもよく、下限は「以上」であっても「超」であってもよい。また、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
【0018】
1.組成物、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤
本技術に係る組成物は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるGMPの資化産物、を少なくとも含有する。また、本技術に係る組成物は、さらに、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌と、ビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌と、を含有することもできる。
【0019】
本技術に係る組成物において、前記資化産物は、前記資化産物を糖精製固相抽出カラムで精製後、得られた精製物を2-アミノベンザミドで誘導体化処理した後に質量分析装置に供した際、その質量電荷比が324または363の陰イオンとして検出される物質を含有することができる。
【0020】
本技術に係るビフィドバクテリウム属細菌増殖促進用組成物は、κ-カゼイングリコマクロペプチドを含み、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させることができる剤である。また、本技術に係るビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤は、さらに、炭水化物を含有することもできる。
【0021】
(1)ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌
本技術で用いることができるビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌としては、本技術の効果を損なわない限り、公知または未知のビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(ATCC29521T)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02429)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-01252)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02431)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02648)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02432)およびビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02433)を挙げることができる。
【0022】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム ATCC29521Tは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所:12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, United States of America)から入手することができる。
【0023】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02429)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02431)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02432)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02433)は、2017年2月21日に独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)にブダペスト条約に基づく国際寄託がなされている。
【0024】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-01252)は2012年2月23日に独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)にブダペスト条約に基づく国際寄託がなされている。
【0025】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02648)は2018年2月26日に独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託がなされている。
【0026】
なお、上記例示した菌株名で特定される菌株には、当該菌株名で所定の機関に寄託や登録がなされている株そのもの(以下、説明の便宜上、「寄託株」ともいう)に限られず、それと実質的に同等な株(以下、「派生株」または「誘導株」ともいう)も包含される。すなわち、例えば、「ビフィドバクテリウム・ビフィダムATCC29521T」には、ビフィドバクテリウム・ビフィダムATCC29521Tの寄託番号で上記寄託機関に寄託されている株そのものに限られず、それと実質的に同等な株も包含される。
上記寄託株と実質的に同等の株は、例えば、当該寄託株を親株とする派生株であってよい。派生株としては、寄託株から育種された株や寄託株から自然に生じた株が挙げられる。
【0027】
派生株は下記のような株が挙げられる。
(i)Randomly Amplified Polymorphic DNA法、Pulsed-field gel electrophoresis法により同一の菌株と判定される菌株(Probiotics in food/Health and nutritional properties and guidelines for evaluation 85 Page43に記載)
(ii)当該寄託菌株由来の遺伝子のみ保有し、外来由来の遺伝子を持たず、DNAの同一性が95%以上である菌株
(iii)当該菌株から育種された株若しくは、遺伝子工学的改変、突然変異又は自然突然変異を含む同一の形質を有する株
【0028】
これらのビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌は、GMPに対して資化能を有する。ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌は、GMPの代謝に際し、資化産物を産生する。産生された資化産物を、後述するビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌やビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌等のGMPの資化能がないまたは低いプロバイオティクスが利用することができ、GMPの資化能がないまたは低いプロバイオティクスを増殖させることができる。
【0029】
なお、本技術において、「GMPの資化能がないまたは低い」とは、プロバイオティクスであるビフィズス菌が一般的に資化するグルコースや乳糖等の糖類を炭素源として含む培地で培養した際と比べて、GMPを炭素源として含む培地で培養したときに、糖を資化する能力、代謝する能力、増殖する能力がないまたは低い菌を意味する。
例えば、GMPのみを炭素源として含む培地で、微生物の濁度や微生物の比増殖速度を確認することにより確認出来る。
【0030】
微生物の比増殖速度は単位時間あたりの細胞の増加として定義される。「GMPの資化能がないまたは低い」場合、GMPを炭素源とした培地における微生物の比増殖速度は、グルコースや乳糖を炭素源とする培地と比べて、通常80%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは10%以下に低下することを意味する。
【0031】
なお、GMPの資化能がないプロバイオティクス菌体とは、GMPを全く利用することができない、あるいは代謝経路を一部欠損している、代謝された糖を体内に取り込むトランスポーターが存在しない菌体を意味する。
【0032】
本技術において、GMPの資化に用いるビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌の量は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、特に、GMPの資化に用いるビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌の量を、GMPに対し、1×10~1×1012CFU/mLまたはgに設定することができる。
【0033】
本技術に係る組成物において、GMPの資化に用いるビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌は、GMPの資化後に、除去することも可能である。除去する場合の除去方法は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、例えば、フィルター除去および遠心分離等の除去方法を自由に選択して用いることができる。なお、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を除去せずに、本技術に係る組成物中に、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を含有したままでも、本技術の効果を奏することが可能である。
【0034】
(2)ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌
本技術で用いることができるビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌としては、本技術の効果を損なわない限り、公知または未知のビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。具体的に挙げるとすれば、例えば、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(ATCC15700T)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(NITE BP-02460)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(FERM BP-11175)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(NITE BP-02622)等を挙げることができる。
【0035】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ(ATCC15700T)は、ATCCアメリカ国立菌培養収集所(アメリカ合衆国ヴァージニア州20110-2209マナサス10801ユニバーシティブルバード)から入手可能である。
【0036】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ(NITE BP-02460)は、2017年4月24日に独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)にブダペスト条約に基づく国際寄託がなされている。
【0037】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ(FERM BP-11175)は、2009年8月25日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 〒305-8566 茨城県つくば市東1-1-1 中央第6(現IPOD 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター:日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)にブダペスト条約に基づく国際寄託がなされている。
【0038】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ(NITE BP-02622)は、2018年1月26日に独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)にブダペスト条約に基づく国際寄託がなされている。
【0039】
(3)ビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌
本技術で用いることができるビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌としては、本技術の効果を損なわない限り、公知または未知のビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。具体的に挙げるとすれば、例えば、ビフィドバクテリウム・インファンティス(ATCC15697T)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(NITE BP-02623)等を挙げることができる。
【0040】
ビフィドバクテリウム・インファンティス(ATCC15697T)は、ATCCアメリカ国立菌培養収集所(アメリカ合衆国ヴァージニア州20110-2209マナサス10801ユニバーシティブルバード)から入手可能である。
【0041】
ビフィドバクテリウム・インファンティス(NITE BP-02623)は、2018年1月26日に独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)にブダペスト条約に基づく国際寄託がなされている。
【0042】
(4)炭水化物
本技術で用いることができる炭水化物としては、本技術の効果を損なわない限り、公知または未知の炭水化物を1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。具体的に挙げるとすれば、グルコース、乳糖、デキストリン、スクロース、ガラクトオリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、フラクトオリゴ糖、フコシル化オリゴ糖、アセチル化オリゴ糖、シアリル化オリゴ糖等を挙げることができる。
【0043】
2.本技術に係る組成物の用途
本発明の組成物またはビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤をヒトに投与することにより、善玉菌に作用するプロバイオティクスの増殖促進効果が期待できる。即ちプロバイオティクスが腸内で増殖することにより、腸内細菌叢が改善される。腸内細菌叢が改善されることにより、腸内細菌叢に起因する疾患が改善または予防され、治療が可能になる。
腸内細菌叢に起因する疾患としては、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、過敏性大腸炎、大腸がん、糖尿病、および動脈硬化等が挙げられる。
さらに、本発明の組成物またはビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤を投与することにより、免疫機能が増進される。免疫機能が増進することにより、花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎等のアレルギーの予防または改善、治療が可能になる。
本技術に係る組成物またはビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤は、飲食品、調製乳、医薬品、医薬部外品又は飼料等に好適に用いることができる。
【0044】
なお、本実施形態の用途は、治療目的使用であっても、非治療目的使用であってもよい。
「非治療目的」とは、医療行為、すなわち、治療による人体への処置行為を含まない概念である。例えば、健康増進及び美容行為が挙げられる。
「改善」とは、疾患、症状または状態の好転;疾患、症状または状態の悪化防止、遅延;疾患または症状の進行の逆転、防止または遅延をいう。
「予防」とは、適用対象における疾患若しくは症状の発症の防止や遅延、または適用対象の疾患若しくは症状の危険性の低下をいう。
【0045】
組成物において、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌やビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌等のプロバイオティクスは、投与量単位につき約1×10~約1×1012CFU/gまたはmLで投与されることが好ましいが、これよりも高い数値でも許容される。組成物が成人のヒト(すなわち、16歳を超えるヒト)に投与される場合、プロバイオティクスは、好ましくは少なくとも1×10CFU/gまたはmL以上、より好ましくは少なくとも1×10CFU/gまたはmL以上で投与されることが好ましい。プロバイオティクス組成物が小児(すなわち、16歳未満のヒト)に投与される場合、プロバイオティクスは、好ましくは約1×10~約1×1011CFU/gまたはmL、より好ましくは約1×10~約1×10CFU/gまたはmLの範囲で投与されることが好ましい。なお、CFUはコロニー形成単位:colony forming unitを意味する。
【0046】
組成物において、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるGMPの資化産物は、投与量単位につき0.05~20.0質量%で投与されることが好ましいが、これよりも高い数値でも許容される。組成物が成人のヒトに投与される場合、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるGMPの資化産物は、好ましくは少なくとも0.05質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上で投与される。組成物が小児に投与される場合、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるGMPの資化産物は、0.05~20.0質量%の範囲で投与されることが好ましい。
【0047】
ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤において、GMPは、投与量単位につき0.05~20.0質量%で投与されることが好ましいが、これよりも高い数値でも許容される。ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤が成人のヒトに投与される場合、GMPは、好ましくは少なくとも0.05質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上で投与される。ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤が小児に投与される場合、GMPは、0.05~20.0質量%の範囲で投与されることが好ましい。
【0048】
本発明の投与対象は、乳幼児が好ましい。
乳幼児とは、乳児および幼児を含み、さらに詳細には、乳児、幼児および新生児を含み、さらに詳細には、乳児、幼児、新生児、未熟児、早産児および低出生体重児を含む。本発明において、乳幼児の種には、特に断りがない限り、ヒトが含まれる。乳児とは、乳児期にある子供を指し、乳児期とは母乳などの乳を主な栄養源としている時期を意味し、ヒトの場合、通常では1歳未満が乳児期にあたる。幼児とは、一般には就学前までの時期にある子供を指す。新生児とは、新生児期にある子供を指し、新生児期とは出生後の間もない時期を意味し、ヒトの場合、通常では出生後から4週間以内が新生児期にあたる。
【0049】
さらに本発明においては、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるGMPの資化産物に加えて、プレバイオティクスも併せて用いてもよい。プレバイオティクスとは、大腸内の特定の細菌の増殖および活性を選択的に変化させることより、宿主に有利な影響を与え、宿主の健康を改善する難消化性食品成分のことである。
プレバイオティクスは、本細菌またはその培養物とともに摂取させたときに本発明の効果をより発揮し得るものであれば特に制限されないが、例えば、ラクチュロース、ラフィノース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルオリゴ糖、コーヒー豆マンノオリゴ糖、グルコン酸、ポリデキストロースおよびイヌリンが挙げられ、ラクチュロース、ラフィノースおよびガラクトオリゴ糖が好ましく、ラクチュロース、ラフィノースおよびガラクトオリゴ糖がより好ましい。
【0050】
<飲食品>
本技術に係る組成物またはビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤は、公知の飲食品に添加して調製することもできる。飲食品の原料中に組成物を混合して新たな飲食品を製造することもできる。
【0051】
本技術に係る組成物またはビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤を含む飲食品は、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食等のほか、例えば、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料およびこれら以外の市販品が挙げられる。
【0052】
前記小麦粉製品としては、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉およびパン粉が挙げられる。
前記即席食品類としては、例えば、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品およびその他の即席食品が挙げられる。
前記農産加工品としては、例えば、農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類およびシリアル(穀物加工品)が挙げられる。
前記水産加工品としては、例えば、水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類およびつくだ煮類が挙げられる。
前記畜産加工品としては、例えば、畜産缶詰め・ペースト類および畜肉ハム・ソーセージが挙げられる。
前記乳・乳製品としては、例えば、発酵乳、加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製乳類、クリームおよびその他の乳製品が挙げられる。
前記油脂類としては、例えば、バター、マーガリン類および植物油が挙げられる。
前記基礎調味料としては、例えば、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類および食酢類が挙げられる。
前記複合調味料・食品類として、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類およびその他の複合調味料が挙げられる。
前記冷凍食品としては、例えば、素材冷凍食品、半調理冷凍食品および調理済冷凍食品が挙げられる。
前記菓子類としては、例えば、キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子およびその他の菓子が挙げられる。
前記飲料としては、例えば、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料およびその他の嗜好飲料が挙げられる。
上記以外の市販食品としては、例えば、ベビーフード、ふりかけおよびお茶漬けのりが挙げられる。
【0053】
本技術に係る飲食品中のビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるGMPの資化産物の含有量は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、特に、飲食品中のビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるGMPの資化産物の含有量を、飲食品の最終組成物に対し、0.05%~20.0%に設定することができる。
【0054】
本技術に係る飲食品中のビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌やビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌等のGMPの資化能がないまたは低いプロバイオティクスの含有量は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、特に、飲食品中のヒトミルクオリゴ糖の資化能が低いプロバイオティクスの含有量を、飲食品の最終組成物に対し、1×10~1×1012CFU/mLまたはgに設定することができる。
【0055】
〔機能性表示飲食品〕
また、本技術で定義される飲食品等は、特定の用途(特に保健の用途)や機能が表示された飲食品として提供・販売されることも可能である。
「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本技術の「表示」行為に該当する。
【0056】
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品または商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、またはこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0057】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0058】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、病者用食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品制度、機能性表示食品制度、これらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。より具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、機能性表示食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示等を挙げることができる。この中でも典型的な例としては、健康増進法施行規則(平成15年4月30日日本国厚生労働省令第86号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)、食品表示法(平成25年法律第70号)に定められた機能性表示食品としての表示およびこれらに類する表示である。
【0059】
〔調製乳〕
本技術に係る組成物またはビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤を含む飲食品は、特に調製乳であることが好ましい。調製乳としては、乳児用調製乳、フォローアップミルク、低出生体重児用調製乳、学童用調製乳、成人用調製乳、高齢者用調製乳、アレルギー用調製乳、乳糖不耐症用調製乳、先天代謝異常用調製乳等が挙げられる。特に乳児用調製乳、フォローアップミルク、低出生体重児用調製乳、学童用調製乳に用いられることが好ましい。乳幼児用調製乳とは、0~12か月の乳児を対象とする乳児用調製乳、6~9か月以降の乳児および年少幼児(3歳まで)を対象とするフォローアップミルク、出生時の体重が2500g未満の新生児(低出生体重児)を対象とする低出生体重児用調製乳、牛乳アレルギーや乳糖不耐症等の病的状態を有する児の治療に用いられる各種治療用ミルクなどを指す。さらに、該組成物を保健機能食品や病者用食品に適用することができる。保健機能食品制度は、内外の動向、従来からの特定保健用食品制度との整合性を踏まえて、通常の食品のみならず錠剤、カプセル等の形状をした食品を対象として設けられたもので、特定保健用食品(個別許可型)と栄養機能食品(規格基準型)の2種類の類型からなる。
【0060】
本技術の組成物を投与することにより、投与対象の腸内中にビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌が増殖する。また、本技術のビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤を投与することにより、投与対象の腸内中にビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌が増殖する。これらのプロバイオティクスが腸内で増殖することにより、免疫力が向上し、さらに腸内フローラが改善する。特に乳幼児においては、本発明の組成物またはビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤を投与することにより、腸内のビフィズス菌が有効に増加し、腸内環境が整う。さらにビフィズス菌とともに悪玉菌や日和見菌を取り入れることにより免疫力が獲得でき、出来上がった腸内細菌フローラ等の腸内環境はそのまま大人になっても引き継がれる。
【0061】
調製乳の製造方法は、本技術の効果を損なわない限り、公知の製造方法を1種または2種以上自由に組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、原料乳に本技術に係る組成物および各種添加物が混合され、均質化、殺菌、濃縮、乾燥、造粒、篩別等の工程を経て製造することができる。
【0062】
本技術の調製乳は、具体的には、例えば、以下の方法により製造できる。
【0063】
すなわち、本技術は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるGMPの資化産物と、必要に応じて、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌を含む菌体粉末と、を混合し、調製乳を得る、調製乳の製造方法を提供する。
具体的には、例えば、下記の工程Aおよび工程Bを含む、調製乳の製造方法を提供する:
工程A:GMPを含有する培地でビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を培養し、培養物を得る工程;
工程B:前記培養物と、乳成分と、必要に応じてビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌を混合し、調製乳を得る工程。
【0064】
また、本技術の食品組成物は、具体的には、例えば、乳幼児用サプリメントであってよい。乳幼児用サプリメントは、例えば、以下の方法により製造できる。
【0065】
すなわち、本技術は、例えば、下記工程C~工程Eを含む、サプリメントの製造方法を提供する:
工程C:GMPを含有する培地でビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を培養し、培養物を得る工程;
工程D:前記培養物と、乳成分と、賦形剤と、必要に応じてビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌を混合し、混合物を得る工程;
工程E:前記混合物を打錠等により製剤化する工程。
【0066】
上記いずれの製造方法においても、適宜、上記工程で言及した成分以外の成分を併用してよい。
【0067】
本技術に係る組成物の添加方法は、本技術の効果を損なわない限り、特に限定されないが、例えば、本技術に係る組成物を、上記のように混合時に液状で添加する他に、粉末化後に添加して粉体混合し、製造することができる。
【0068】
本技術に係る調製乳中のビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるGMPの資化産物またはGMPの含有量は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、特に、調製乳中のビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるGMPの資化産物またはGMPの含有量を、調製乳の最終組成物に対し、0.05%~20.0%に設定することができる。
【0069】
本技術に係る調製乳中のビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌やビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌等のGMPの資化能がないまたは低いプロバイオティクスの含有量は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、特に、調製乳中のヒトミルクオリゴ糖の資化能が低いプロバイオティクスの含有量を、調製乳の最終組成物に対し、1×10~1×1012CFU/mLまたはgに設定することができる。
【0070】
<医薬品、医薬部外品>
本技術に係る組成物またはビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤を、公知の医薬品または医薬部外品(以下、「医薬品等」ともいう)に添加してもよい。医薬品等の原料中に、本技術に係る組成物を混合して新たな医薬品等を製造することができる。
【0071】
医薬品等に本技術に係る組成物またはビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤を含む場合、該医薬品等は、経口投与や非経口投与などの投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。その剤形は特に限定されないが、経口投与の場合、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。非経口投与の場合、例えば、座剤、噴霧剤、吸入剤、軟膏剤、貼付剤、および注射剤に製剤化することができる。本技術では、経口投与の剤形に製剤化することが好ましい。
なお、製剤化は剤形に応じて、適宜、公知の方法により実施できる。
【0072】
製剤化に際しては、適宜製剤担体を配合する等して製剤化してもよい。また、本技術のペプチドのほか、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。更に、公知のまたは将来的に見出される疾患や症状の予防、改善および/または治療の効果を有する成分を、適宜目的に応じて併用することも可能である。
【0073】
前記製剤担体としては、剤形に応じて、各種有機または無機の担体を用いることができる。固形製剤の場合の担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、および矯味矯臭剤が挙げられる。
【0074】
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α-デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;および硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体が挙げられる。
【0075】
前記結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、およびマクロゴールが挙げられる。
【0076】
前記崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、および架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプンまたはセルロース誘導体が挙げられる。
【0077】
前記滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;およびデンプン誘導体が挙げられる。
【0078】
前記安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;およびソルビン酸が挙げられる。
【0079】
前記矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、および香料が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、例えば、水等の溶剤、および矯味矯臭剤が挙げられる。
【0080】
本技術に係る医薬品中のビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるGMPの資化産物またはGMPの含有量は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、特に、医薬品中のビフィドバクテリウム・ビフィダムに属するGMPの細菌による資化産物またはGMPの含有量を、医薬品の最終組成物に対し、0.05%~20.0%に設定することができる。
【0081】
本技術に係る医薬品中のビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌やビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌等のGMPの資化能がないまたは低いプロバイオティクスの含有量は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、特に、医薬品中のヒトミルクオリゴ糖の資化能が低いプロバイオティクスの含有量を、医薬品の最終組成物に対し、1×10~1×1012CFU/mLまたはgに設定することができる。
【0082】
<飼料>
本技術に係る組成物またはビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤を、公知の飼料に添加してもよい。飼料の原料中に組成物を混合して飼料を製造することができる。
【0083】
飼料に本技術に係る組成物またはビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤を含む場合、飼料の原料としては、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦等の穀類;ふすま、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;脱脂粉乳、ホエイ、魚粉、骨粉等の動物性飼料類;ビール酵母等の酵母類;リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;アミノ酸類;および糖類が挙げられる。また、前記飼料の形態としては、例えば、ペットフード等の愛玩動物用飼料、家畜飼料、および養魚飼料が挙げられる。
【0084】
本技術に係る飼料中のビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるGMPの資化産物またはGMPの含有量は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、特に、飼料中のGMPのビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌による資化産物またはGMPの含有量を、飼料の最終組成物に対し、0.05%~20.0%に設定することができる。
【0085】
本技術に係る飼料中のビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌やビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌等のGMPの資化能がないまたは低いプロバイオティクスの含有量は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、特に、飼料中のヒトミルクオリゴ糖の資化能が低いプロバイオティクスの含有量を、飼料の最終組成物に対し、1×10~1×1012CFU/mLまたはgに設定することができる。
【0086】
3.2-アミノベンザミドで誘導体化処理した後に質量分析装置に供した際、その質量電荷比が324または363の陰イオンとして検出される物質の製造方法
前述の通り、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物には、2-アミノベンザミドで誘導体化処理した後に質量分析装置に供した際、その質量電荷比が324または363の陰イオンとして検出される物質が含有される。即ち、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を用いてκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化することにより、2-アミノベンザミドで誘導体化処理した後に質量分析装置に供した際、その質量電荷比が324または363の陰イオンとして検出される物質を製造することができる。
【0087】
具体的には、κ-カゼイングリコマクロペプチドを、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を用いて発酵させる発酵工程を行うことで、2-アミノベンザミドで誘導体化処理した後に質量分析装置に供した際、その質量電荷比が324または363の陰イオンとして検出される物質を製造することができる。
【0088】
本技術に係る前記物質の製造方法の発酵工程において、具体的な手法は、本発明の効果を損なわない限り、一般的な手法を用いることができる。例えば、κ-カゼイングリコマクロペプチド溶液に、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌の培養液を添加して発酵させることができる。
【0089】
この際、κ-カゼイングリコマクロペプチド溶液の濃度も、本技術の効果を損なわない限り限定されないが、本技術では、特に、κ-カゼイングリコマクロペプチド溶液の濃度を、0.5~15%に設定することが好ましく、0.8%~12%に設定することがより好ましい。κ-カゼイングリコマクロペプチド溶液の濃度を、この範囲に設定することで、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌の生育阻害の発生を防止することができる。
【0090】
また、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌の培養液の添加量も、本技術の効果を損なわない限り限定されないが、本技術では、特に、0.5~5%添加することが好ましい。培養液の添加量をこの範囲とすることで、培養液の培地の持ち込みの影響を抑制することができる。
【0091】
なお、本技術は、以下の構成を採用することも可能である。
[1]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物を含有する組成物。
[2]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物を含有する組成物を含む飲食品組成物。
[3]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物を含有する組成物を含む調製乳。
[4]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物を含有する組成物を含む医薬品または医薬部外品組成物。
[5]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物を含有する組成物を含む飼料組成物。
[6]
組成物のための、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物の使用。
[7]
飲食品組成物のための、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物の使用。
[8]
調製乳のための、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物の使用。
[9]
医薬品または医薬部外品組成物のための、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物の使用。
[10]
飼料組成物のための、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物の使用。
[11]
組成物の製造のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物の使用。
[12]
飲食品組成物の製造のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物の使用。
[13]
調製乳の製造のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物の使用。
[14]
医薬品または医薬部外品組成物の製造のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物の使用。
[15]
飼料組成物の製造のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物の使用。
[16]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌と、
を含有する組成物。
[17]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌とを含有する組成物
を含有する飲食品組成物。
[18]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌とを含有する組成物、
を含有する調製乳。
[19]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌とを含有する組成物、
を含有する医薬品または医薬部外品組成物。
[20]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌とを含有する組成物、
を含有する飼料組成物。
[21]
組成物のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌と、
の使用。
[22]
飲食品組成物のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌と、
の使用。
[23]
調製乳のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌と、
の使用。
[24]
医薬品または医薬部外品組成物のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌と、
の使用。
[25]
飼料組成物のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌と、
の使用。
[26]
組成物の製造のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌と、
の使用。
[27]
飲食品組成物の製造のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌と、
の使用。
[28]
調製乳の製造のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌と、
の使用。
[29]
医薬品または医薬部外品組成物の製造のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌と、
の使用。
[30]
飼料組成物の製造のための、
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるκ-カゼイングリコマクロペプチドの資化産物と、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌と、
の使用。
[31]
[1]~[30]において、
前記資化産物には、糖精製固相抽出カラムで精製後、2-アミノベンザミドで誘導体化処理した後に質量分析装置に供した際、その質量電荷比が324または363の陰イオンとして検出される物質を含有する。
[32]
κ-カゼイングリコマクロペプチドを含む、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤。
[33]
κ-カゼイングリコマクロペプチドを含む、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤を含む調製乳。
[34]
κ-カゼイングリコマクロペプチドを含む、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤を含む医薬品または医薬部外品組成物。
[35]
κ-カゼイングリコマクロペプチドを含む、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤を含む飼料組成物。
[36]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤のための、
κ-カゼイングリコマクロペプチドの使用。
[37]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進用の飲食品組成物のための、
κ-カゼイングリコマクロペプチドの使用。
[38]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進用の調製乳のための、
κ-カゼイングリコマクロペプチドの使用。
[39]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進用の医薬品または医薬部外品組成物のための、
κ-カゼイングリコマクロペプチドの使用。
[40]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進用の飼料組成物のための、
κ-カゼイングリコマクロペプチドの使用。
[41]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤の製造のための、
κ-カゼイングリコマクロペプチドの使用。
[42]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進用の飲食品組成物の製造のための、
κ-カゼイングリコマクロペプチドの使用。
[43]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進用の調製乳の製造のための、
κ-カゼイングリコマクロペプチドの使用。
[44]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進用の医薬品または医薬部外品組成物の製造のための、
κ-カゼイングリコマクロペプチドの使用。
[45]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を、他のビフィドバクテリウム属細菌と比較して特異的に増殖させる、ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進用の飼料組成物の製造のための、
κ-カゼイングリコマクロペプチドの使用。
[46]
[32]から[45]において、
前記ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進剤、前記飲食品組成物、前記調製乳、医薬品、医薬部外品組成物、または飼料組成物は、さらに、炭水化物を含有する。
[47]
[1]~[45]において、
前記ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌が、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(ATCC29521T)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02429)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-01252)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02431)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02648)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02432)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02433)、から選択される1以上の細菌である。
[48]
[16]~[31]において、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌が、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(ATCC15700T)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(NITE BP-02460)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(FERM BP-11175)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(NITE BP-02622)、から選択される1以上の細菌である。
[49]
[16]~[32]において、
ビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌が、ビフィドバクテリウム・インファンティス(ATCC15697T)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(NITE BP-02623)、から選択される1以上の細菌である。
[50]
下記工程Aおよび工程Bを含む、調製乳の製造方法。
工程A:GMPを含有する培地でビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を培養し、培養物を得る工程;
工程B:前記培養物と、乳成分と、を混合し、調製乳を得る工程。
[51]
下記工程C~工程Eを含む、サプリメントの製造方法。
工程C:GMPを含有する培地でビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を培養し、培養物を得る工程;
工程D:前記培養物と、乳成分と、賦形剤と、を混合し、混合物を得る工程;
工程E:前記混合物を打錠等により製剤化する工程。
[52]
下記工程Fおよび工程Gを含む、調製乳の製造方法。
工程F:GMPを含有する培地でビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を培養し、培養物を得る工程;
工程G:前記培養物と、乳成分と、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌を混合し、調製乳を得る工程。
[53]
下記工程H~工程Jを含む、サプリメントの製造方法。
工程H:GMPを含有する培地でビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を培養し、培養物を得る工程;
工程I:前記培養物と、乳成分と、賦形剤と、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌および/またはビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌を混合し、混合物を得る工程;
工程J:前記混合物を打錠等により製剤化する工程。
[54]
[50]~[53]において、
前記乳成分が、乳タンパク質である。
[55]
[54]において、
前記乳タンパク質が、ホエイ、ホエイ加水分解物、カゼインからなる群より選択される少なくとも1つの成分である。
[56]
[50]~[55]において、
前記ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌が、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(ATCC29521T)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02429)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-01252)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02431)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02648)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02432)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02433)、から選択される1以上の細菌である。
[57]
[52]~[56]において、
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌が、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(ATCC15700T)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(NITE BP-02460)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(FERM BP-11175)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(NITE BP-02622)、から選択される1以上の細菌である。
[58]
[52]~[57]において、
ビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌が、ビフィドバクテリウム・インファンティス(ATCC15697T)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(NITE BP-02623)、から選択される1以上の細菌である。
[59]
2-アミノベンザミドで誘導体化処理した後に質量分析装置に供した際、その質量電荷比が324または363の陰イオンとして検出される物質を製造するための、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌の使用。
[60]
κ-カゼイングリコマクロペプチドを、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を用いて発酵させる発酵工程を含む、
2-アミノベンザミドで誘導体化処理した後に質量分析装置に供した際、その質量電荷比が324または363の陰イオンとして検出される物質の製造方法。
[61]
前記発酵工程では、濃度0.8%~12%のκ-カゼイングリコマクロペプチド溶液に、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌の培養液を0.5~5%添加して発酵させる、[60]に記載の製造方法。
【実施例
【0092】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0093】
[実験例1]
実験例1では、各種ビフィズス菌のGMPに対する資化能を調べた。
【0094】
<実験方法>
(1)糖溶液の調製
イオン交換水に、グルコース(ナカライテスク株式会社製)の濃度が1%となるように溶解した。また、イオン交換水に、GMP(シグマ・アルドリッチ社製)の濃度が10%となるように溶解した。その後、得られたグルコース溶液および得られたGMP溶液を、0.22μmフィルター(メルクミリポア社製)を用いて無菌濾過した。
【0095】
(2)各菌株の培養液の調製
Lactobacilli MRS培地(日本ベクトン・ディッキンソン社製)に、L-システイン塩酸塩(関東化学)を0.05%濃度となるよう添加した液体培地を無菌的に調製した(以下「MRS+Cys培地」とする)。下記表1に示すビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌、および、表2に示すビフィドバクテリウム・ビフィダム以外のビフィズス菌それぞれの株について、予めMRS+Cys培地で維持していた各菌株の培養液を、新たに作製したMRS+Cys培地に、接種量が3%となるよう接種し、37℃で嫌気的に16時間培養した。
【0096】
得られた各菌株の培養液を、新たに作製したMRS+Cys培地に、接種量が3%となるよう接種し、37℃で嫌気的に16時間培養した。得られた各菌株の培養液を以下の試験に用いた。
【0097】
(3)ビフィズス菌株の違いによるGMPに対する資化能の比較
MRS液体培地の組成をベースとし、糖源として(1)で調製したグルコースが0.1%となるよう添加した培地を作製し、それをMRS+Glc培地とした。さらにMRS+Glc培地に、糖源として(1)で調製したGMP濃度が0.8%となるよう添加した培地を作製し、それをMRS+Glc+GMP培地とした。これらの培地に(2)で調製した各菌株の培養液を接種量が1%となるよう接種した。37℃で嫌気的に24時間培地した後、OD600を測定した。
【0098】
各株によるGMPに対する資化能は、下記の数式(1)から算出される「増殖比率1」によって評価した。評価結果を、下記の表3に示す。
【0099】
【数1】
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
表3に示す通り、表1に示すビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌の増殖比率1は、全て1以上の値であったのに対し、表2に示すその他のビフィズス菌の増殖比率は、1より低い値を示した。即ち、表1に示すビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌は、GMPに対する資化能を有するのに対し、表2に示す他のビフィズス菌は、GMPに対する資化能を有さないことが分かった。
【0104】
[実験例2]
実験例2では、表2に示すその他のビフィズス菌による、GMPのビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌による資化産物の利用性について、調べた。
【0105】
<実験方法>
(1)糖溶液の調製
前記実験例1の方法に準拠し、10%GMP溶液を調製した。
【0106】
(2)各菌株の培養液の調製(前々培養・前培養)
前記実験例1の方法に準拠し、表1および表2に記載の各ビフィズス菌株の培養液を作製し、それらを以下の試験に用いた。
【0107】
(3)GMPのビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌による資化産物の利用性
GMP濃度が0.8%となるように、MRS+Cys培地に(1)で調製した10%GMP溶液を添加した培地を作製した(以下、「MRS+GMP培地1」とする)。この培地に(2)で調製した表1に記載の各菌株の培養液を接種量が1%となるよう接種し、37℃で嫌気的に24時間培養した。
【0108】
各培養液を遠心分離に供し、得られた培養上清を0.22μmフィルターに供して無菌濾過した。この無菌化された培養上清に、(2)で調製した表2に記載の各菌株の培養液を接種量が1%となるよう接種した。37℃で嫌気的に24時間培地した後、OD600を測定した。試験コントロールとして、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌を接種しなかったMRS+GMP培地1にも(2)で調製した表2に記載の各菌株の培養液を接種して37℃で嫌気的に24時間培養を行い、OD600を測定した。
【0109】
各株による、GMPのビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌による資化産物の利用性は、下記の数式(2)から算出される「増殖比率2」によって評価した。結果を下記の表4に示す。
【0110】
【数2】
【0111】
【表4】
【0112】
表4に示す通り、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌およびビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌は、全て、増殖比率2が1以上の値を示した。即ち、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌およびビフィドバクテリウム・インファンティスに属する細菌は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌によるGMPの資化産物を利用できると考えられた。また、その利用性は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌において、顕著に高かった。
【0113】
一方、ビフィドバクテリウム・ラクティスに属する細菌およびビフィドバクテリウム・ロンガムに属する細菌は、増殖比率2の値がほぼ1または1以下を示していた。即ち、ビフィドバクテリウム・ラクティスに属する細菌およびビフィドバクテリウム・ロンガムに属する細菌は、GMPのビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌による資化産物
の利用性が低いか、有していないものと考えられた。
【0114】
[実験例3]
実験例3では、GMPのビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌による資化産物を特定するための分析を行った。
【0115】
<実験方法>
(1)糖溶液の調製
前記実験例1の方法に準拠し、16%GMP溶液を調製した。
【0116】
(2)各菌株の培養液の調製
前記実験例1の方法に準拠し、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02648)株およびビフィドバクテリウム・ブレーベ(ATCC15700T)株の培養液を作製し、それらを以下の試験に用いた。
【0117】
(3)GMPのビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌による資化産物の調製
16%GMP溶液とMRS+Cys培地を1:3で混合した(以下、「MRS+GMP培地2」とする)。この培地に(2)で調製した前記表1に記載の各菌株の培養液を接種量が1%となるよう接種し、37℃で嫌気的に24時間培養した。得られた各培養液を遠心分離に供し、得られた培養上清を0.22μmフィルターに供して無菌濾過した。ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02648)株の培養液については、無菌濾過後にビフィドバクテリウム・ブレーベ(ATCC15700T)株を接種量が1%となるよう接種した後、37℃で嫌気的に24時間培養した。得られた培養液を遠心分離に供し、得られた培養上清を0.22μmフィルターに供して無菌濾過した。
【0118】
MRS+GMP培地2と、上記の培養上清について、フォルチ法によって脂質を除去した後、エタノール沈殿法によってたんぱく質を除去することにより、糖画分を濃縮した。即ち、無菌濾過した培地1mLをクロロホルム/メタノール(2/1)混合液4mLと混合した後、遠心分離に供した。2層に分かれた溶液の上層のみを回収した後、予め-30℃下で冷却していたエタノールを等量加えた。得られた混合液を-30℃下で1時間保存し、たんぱく質の沈殿を進行させた。その後、保存後の混合液を遠心分離に供した後、上清である糖画分のみを回収した。回収した糖画分は遠心濃縮器によって乾固させた後、超純水100μLで再溶解した。得られた糖溶液を糖精製固相抽出カラムGlycoBlot(住友ベークライト社製)に供し、付属のプロトコールに準拠して糖の精製と2-アミノベンザミド(2-AB)による糖の誘導体化処理を行った。
【0119】
(4)GMPのビフィドバクテリウム・ビフィダムに属する細菌による資化産物の液体グロマトグラフ-質量分析装置(LC-MS)分析
上記の手法によって得られた全試料量100μLのうち10μLを、下記の表5の条件のもと、LC-MS分析に供して資化産物の分子量の特定を行った。
【0120】
【表5】
【0121】
トータルイオンクロマトグラム(TIC)を、図1に示す。MRS+GMP2倍地においては、保持時間(RT)11分以降に顕著なピークが認められなかったのに対し(図1A)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02648)株の培養上清では、保持時間(RT)11~25分に複数のピークが確認された(図1B)。これらのピークはビフィドバクテリウム・ブレーベ(ATCC15700T)株の培養上清では確認されなかった。このビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02648)株の培養上清にビフィドバクテリウム・ブレーベ(ATCC15700T)株を摂取して培養したところ、保持時間(RT)12.6分のピークの一部は消失し、また保持時間(RT)21.4分のピークは減衰した(図1C)。それぞれの保持時間(RT)で検出されるイオンの質量電荷比は、保持時間(RT)12.6分で363(図1D)、保持時間(RT)21.4分で324(図1E)であった。
【0122】
図1に示す通り、保持時間(RT)21.4分と保持時間(RT)12.6分に確認されたピークは、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-02648)株によるGMPの資化産物であり、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(ATCC15700T)株の増殖を促進させるものに由来するピークであることが分かった。そして、2-ABによる誘導体化反応後にMSに供した際に質量電荷比が324または363で検出される陰イオンであった。
【0123】
[製造例]
下記に組成物、医薬品組成物、発酵乳および調製乳の製造例を示す。
【0124】
<製造例1>
ビフィドバクテリウム・ビフィダムを、MRS+GMP培地1:3mLに添加し、37℃で24時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥を行い、凍結乾燥粉末を得る。得られた凍結乾燥粉末と、ホエイタンパク質濃縮物(Whey protein concentrate;WPC)と、ラクチュロース、ラフィノースおよびガラクトオリゴ糖を均一に混合して組成物を得る。得られた組成物20gを200gの水に溶かし、組成物を得る。
【0125】
<製造例2>
ビフィドバクテリウム・ビフィダムを、MRS+GMP培地1:3mLに添加し、37℃で24時間嫌気培養後、ビフィドバクテリウム・ビフィダムをフィルター除去した培養上澄液を濃縮し、凍結乾燥を行い、凍結乾燥粉末を得る。この凍結乾燥粉末と、乳タンパク質濃縮物の乾燥粉末(MPC480、フォンテラ社製、タンパク質含量80質量%、カゼインタンパク質:ホエイタンパク質=約8:2)と、ラクチュロース、ラフィノースおよびガラクトオリゴ糖を均一に混合して組成物を得る。得られた組成物20gを200gの水に溶かし、組成物を得る。
【0126】
<製造例3>
ビフィドバクテリウム・ビフィダムを、MRS+GMP培地1:3mLに添加し、37℃で24時間嫌気培養後、ビフィドバクテリウム・ビフィダムをフィルター除去した培養上澄液を濃縮し、凍結乾燥を行い、凍結乾燥粉末を得る。次に、得られた凍結乾燥粉末と、ラクチュロース、ラフィノースおよびガラクトオリゴ糖、結晶セルロースを撹拌造粒機に投入し混合する。その後、精製水を加え造粒、造粒物を乾燥し、造粒物(医薬品組成物)を得る。
【0127】
<製造例4>
ビフィドバクテリウム・ブレーベおよび/またはビフィドバクテリウム・インファンティスを添加した発酵乳の製造法を下記に示す。
まず、乳原料、および必要に応じた水、その他の成分等を混合し、好ましくは均質化処理を行い、加熱殺菌処理する。均質化処理および加熱殺菌処理は常法により行うことができる。加熱殺菌された殺菌調乳液に乳酸菌スターターを添加(接種)し、所定の発酵温度に保持して発酵させ、発酵物を得る。発酵によりカードが形成される。
【0128】
乳酸菌スターターとしては、例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトコッカス・ラクチス、ストレプトコッカス・サーモフィラス等のヨーグルト製造に通常用いられている乳酸菌を用いることができる。pHが目標の値に達したら、形成されたカードを撹拌により破砕し、10℃以下に冷却して発酵物を得る。10℃以下に冷却することにより、乳酸菌の活性を低下させて酸の生成を抑制することができる。
【0129】
次いで、発酵工程で得られた発酵物を加熱処理して加熱処理後の発酵物を得る。発酵物を適度に加熱することにより、加熱処理後の発酵物中の乳酸菌による酸の生成を抑えることができる。これによって、その後の製造工程中および/またはビフィズス菌入り濃縮発酵乳の保存中のpHの低下を抑えることができ、その結果、ビフィズス菌の生残性を向上させることができる。
【0130】
一方、ビフィドバクテリウム・ビフィダムを、MRS+GMP培地1:3mLに添加し、37℃で24時間嫌気培養後、ビフィドバクテリウム・ビフィダムをフィルター除去した培養上澄液を得る。
【0131】
得られた培養上澄液を、前記加熱処理工程で得られた加熱後発酵物に、ビフィドバクテリウム・ブレーベおよび/またはビフィドバクテリウム・インファンティスと共に添加する。ビフィドバクテリウム・ブレーベおよび/またはビフィドバクテリウム・インファンティスの添加量は、加熱処理後の発酵物に対して1×10~1×1011CFU/mLが好ましく、1×10~1×1010CFU/mLがより好ましい。ビフィドバクテリウム・ブレーベおよび/またはビフィドバクテリウム・インファンティスが死菌の場合、CFU/mLは、個細胞/mLと置き換えることができる。
【0132】
加熱処理後の発酵物に培養上澄液、ビフィドバクテリウム・ブレーベおよび/またはビフィドバクテリウム・インファンティスを添加した後、濃縮を行う。濃縮工程は公知の濃縮方法を適宜用いて行うことができる。遠心分離法では、被濃縮物(ビフィズス菌およびプレバイオティクスが添加された加熱後発酵物)中のホエーが除去されて、固形分濃度が高められたビフィドバクテリウム・ブレーベおよび/またはビフィドバクテリウム・インファンティスの濃縮発酵乳が得られる。得られた発酵乳を摂取することにより、腸内フローラの改善が可能になる。
【0133】
<製造例5>
ビフィドバクテリウム・ブレーベおよび/またはビフィドバクテリウム・インファンティスを添加した調製乳の製造法を下記に示す。
ビフィドバクテリウム・ビフィダムを、MRS+GMP培地1:3mLに添加し、37℃で24時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥を行い、凍結乾燥粉末を得る。得られた凍結乾燥粉末500g、脱塩牛乳乳清蛋白質粉末(ミライ社製)10kg、牛乳カゼイン粉末(フォンテラ社製)6kg、乳糖(ミライ社製)48kg、ミネラル混合物(富田製薬社製)920g、ビタミン混合物(田辺製薬社製)32g、ラクチュロース(森永乳業社製)500g、ラフィノース(日本甜菜製糖社製)500g、ガラクトオリゴ糖液糖(ヤクルト薬品工業社製)900gを温水300kgに溶解し、さらに90℃で10分間加熱溶解し、調製脂肪(太陽油脂社製)28kgを添加して均質化する。その後、殺菌、濃縮の工程を行って噴霧乾燥し、調製乳約95kgを調製する。これに、澱粉に倍散したビフィドバクテリウム・ブレーベおよび/またはビフィドバクテリウム・インファンティスの菌体粉末100gを加えて、調製乳約95kgを調製する。得られた調製乳を水に溶解して、標準調乳濃度である総固形分濃度14%(w/V)の調乳液を得る。得られた調乳液中のビフィドバクテリウム・ブレーベおよび/またはビフィドバクテリウム・インファンティスの菌数として、2.7×10CFU/100mlを得ることができる。上述のようにして得られた調製乳を投与することにより、プロバイオティクスが腸内で増殖促進可能になる。
【0134】
上述の製造例1-5で製造された組成物、医薬品組成物、発酵乳または調製乳をヒトに投与することにより、GMPをプロバイオティクスが利用可能となり、腸内で増殖することにより、腸内フローラの改善につながる。
図1