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特許7368490ベースペースト及び歯科用付加型シリコーン印象材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】ベースペースト及び歯科用付加型シリコーン印象材
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/90 20200101AFI20231017BHJP
   A61K 6/60 20200101ALI20231017BHJP
【FI】
A61K6/90
A61K6/60
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021558169
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2020029043
(87)【国際公開番号】W WO2021100251
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2019208568
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】上之薗 佳也
(72)【発明者】
【氏名】大泉 智愛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲平
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 裕紀
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-070643(JP,A)
【文献】特開2004-182823(JP,A)
【文献】特開2003-081732(JP,A)
【文献】特開2009-203196(JP,A)
【文献】特開平04-293955(JP,A)
【文献】特公平06-037558(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/90
A61K 6/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用付加型シリコーン印象材に用いられるベースペーストであって、
方の末端がアルケニル基により封鎖されており、他方の末端が水素原子又はアルキル基により封鎖されており、且つピーク分子量が1000以下であるポリエーテルを含む、ベースペースト。
【請求項2】
前記ポリエーテルは、ポリエチレングリコールアリルエーテル及び/又はメトキシポリエチレングリコールアリルエーテルである、請求項に記載のベースペースト。
【請求項3】
請求項1に記載のベースペーストと、
キャタリストペーストを有する、歯科用付加型シリコーン印象材。
【請求項4】
歯科用付加型シリコーン印象材に用いられるベースペーストを製造する方法であって、
方の末端がアルケニル基により封鎖されており、他方の末端が水素原子又はアルキル基により封鎖されており、且つピーク分子量が1000以下であるポリエーテルを用いて、ベースペーストを製造する工程を含む、ベースペーストの製造方法。
【請求項5】
歯科用付加型シリコーン印象材を製造する方法であって、
請求項に記載のベースペーストの製造方法を用いて、ベースペーストを製造する工程と、
キャタリストペーストを製造する工程を含む、歯科用付加型シリコーン印象材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースペースト、歯科用付加型シリコーン印象材、ベースペーストの製造方法及び歯科用付加型シリコーン印象材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科分野において、印象を採得する際に、付加型シリコーン印象材が広く使用されている。
【0003】
付加型シリコーン印象材は、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒を含む(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-76999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、臨床上の使用感を考慮して、付加型シリコーン印象材の操作余裕時間を長くする場合がある。
【0006】
例えば、ベースペーストにジビニルテトラメチルジシロキサンを添加すると、付加型シリコーン印象材の操作余裕時間が長くなる。
【0007】
しかしながら、付加型シリコーン印象材の硬化遅延が発生するという問題があった。
【0008】
本発明の一態様は、歯科用付加型シリコーン印象材の操作余裕時間を長くしても、歯科用付加型シリコーン印象材の硬化遅延を抑制することが可能なベースペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、歯科用付加型シリコーン印象材に用いられるベースペーストであって、方の末端がアルケニル基により封鎖されており、他方の末端が水素原子又はアルキル基により封鎖されており、且つピーク分子量が1000以下であるポリエーテルを含む。
【0010】
本発明の他の一態様は、歯科用付加型シリコーン印象材に用いられるベースペーストを製造する方法であって、方の末端がアルケニル基により封鎖されており、他方の末端が水素原子又はアルキル基により封鎖されており、且つピーク分子量が1000以下であるポリエーテルを用いて、ベースペーストを製造する工程を含む。

【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、歯科用付加型シリコーン印象材の操作余裕時間を長くしても、歯科用付加型シリコーン印象材の硬化遅延を抑制することが可能なベースペーストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0013】
[歯科用付加型シリコーン印象材]
本実施形態の歯科用付加型シリコーン印象材は、ベースペーストと、キャタリストペーストを有する。
【0014】
即ち、本実施形態の歯科用付加型シリコーン印象材は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むベースペーストと、ヒドロシリル化触媒を含むキャタリストペーストを有する2ペースト型である。
【0015】
ベースペーストは、通常、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含み、各成分を混合することにより、製造される。
【0016】
キャタリストペーストは、通常、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒を含み、各成分を混合することにより、製造される。
【0017】
印象を採得する際には、例えば、ベースペーストと、キャタリストペーストを練和した練和物を、トレー又は口腔内に築盛した後、口腔内で硬化するまで放置する。
【0018】
[ベースペースト]
ベースペーストは、少なくとも一方の末端がアルケニル基により封鎖されており、ピーク分子量が1000以下であるポリエーテル(以下、ポリエーテルAという)を含むため、歯科用付加型シリコーン印象材の操作余裕時間を長くしても、歯科用付加型シリコーン印象材の硬化遅延が抑制される。
【0019】
[ポリエーテルA]
ポリエーテルAのピーク分子量は、1000以下であるが、600以下であることが好ましい。ポリエーテルAのピーク分子量が1000を超えると、歯科用付加型シリコーン印象材の操作余裕時間を長くした場合に、歯科用付加型シリコーン印象材の硬化遅延が発生する。
【0020】
なお、ポリエーテルAのピーク分子量は、例えば、液体クロマトグラフィーにより、測定される。
【0021】
ポリエーテルAの構成単位は、オキシアルキレン基であることが好ましい。
【0022】
オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0023】
ポリエーテルAの末端を封鎖するアルケニル基としては、例えば、アリル基、ビニル基等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0024】
ポリエーテルAは、両末端がアルケニル基により封鎖されていてもよいが、一方の末端がアルケニル基により封鎖されており、他方の末端が水素原子又はアルキル基により封鎖されていることが好ましい。これにより、歯科用付加型シリコーン印象材の操作余裕時間を長くしても、歯科用付加型シリコーン印象材の硬化遅延がさらに抑制される。
【0025】
ポリエーテルAの末端を封鎖するアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0026】
歯科用付加型シリコーン印象材中のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンの総量に対するポリエーテルAの質量比は、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがさらに好ましい。歯科用付加型シリコーン印象材中のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンの総量に対するポリエーテルAの質量比が0.01質量%以上であると、歯科用付加型シリコーン印象材の操作余裕時間を長くしても、歯科用付加型シリコーン印象材の硬化遅延がさらに抑制され、10質量%以下であると、歯科用付加型シリコーン印象材の操作余裕時間をさらに長くすることができる。
【0027】
なお、二種以上のポリエーテルAを併用してもよい。
【0028】
[アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン]
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化反応することが可能であれば、特に限定されない。
【0029】
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、平均組成式
SiO(4-a)/2
(式中、Rは、炭素数1~10、好ましくは1~8の置換又は無置換の1価の炭化水素基であり、aは1.95~2.05、好ましくは2.00~2.02であり、a個のRのうち、0.0001~20mol%、好ましくは0.001~10mol%、さらに好ましくは0.01~5mol%が炭素数2~8、好ましくは2~6のアルケニル基である。)
で表されることが好ましい。
【0030】
ここで、Rにおける1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基等が挙げられる。
【0031】
における置換基としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0032】
置換基により置換されているアルキル基としては、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0033】
なお、アルケニル基は、末端のケイ素原子に結合していてもよいし、末端以外のケイ素原子に結合していてもよいが、両末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0034】
アルケニル基以外のRは、メチル基又はフェニル基であることが好ましい。
【0035】
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、アルケニル基を2個以上有することが好ましい。
【0036】
ここで、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、Mユニットと、Dユニットを含むが、Tユニットをさらに含んでいてもよい。
【0037】
また、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、単独重合体及び共重合体のいずれであってもよい。
【0038】
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとしては、例えば、両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサン、両末端がメチルジビニルシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサン、両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン(80mol%)・メチルフェニルシロキサン(20mol%)共重合体、両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン(80mol%)・ジフェニルシロキサン(20mol%)共重合体、両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン(90mol%)・ジフェニルシロキサン(10mol%)共重合体、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0039】
なお、二種以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを併用してもよい。
【0040】
[オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応することが可能であれば、特に限定されない。
【0041】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、平均組成式
SiO(4-b-c)/2
(式中、Rは、炭素数1~10の置換又は無置換の1価の炭化水素基であり、bは0.7~2.1であり、cは0.001~1.0であり、b+cは0.8~3.0である。)
で表されることが好ましい。
【0042】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ヒドロシリル基を3個以上有することが好ましい。
【0043】
ここで、Rは、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンにおけるRと同様であるが、脂肪族不飽和結合を有さないことが好ましい。
【0044】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているメチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサン、両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基により封鎖されているメチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているメチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているメチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位を有する共重合体等が挙げられる。
【0045】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、環状、分岐状のいずれであってもよい。
【0046】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するケイ素原子の個数は、2~1,000個であることが好ましく、3~300個であることがより好ましく、4~100個であることがさらに好ましい。
【0047】
なお、二種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用してもよい。
【0048】
歯科用付加型シリコーン印象材中のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンのアルケニル基に対する、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基のモル比は、0.1~4.0であることが好ましい。
【0049】
[ヒドロシリル化触媒]
ヒドロシリル化触媒としては、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル化反応を促進させることが可能であれば、特に限定されないが、例えば、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属触媒が挙げられる。
【0050】
なお、二種以上のヒドロシリル化触媒を併用してもよい。
【0051】
[その他の成分]
本実施形態のベースペーストは、少なくとも一方の末端がアルケニル基により封鎖されており、ピーク分子量が1000を超え、10000以下であるポリエーテル(以下、ポリエーテルBという)、充填材、ノニオン性界面活性剤等をさらに含んでいてもよい。また、キャタリストペーストは、充填材等をさらに含んでいてもよい。
【0052】
ポリエーテルBは、ピーク分子量が異なる以外は、ポリエーテルAと同様である。
【0053】
充填材としては、例えば、煙霧質シリカ粒子、湿式系のシリカ粒子、結晶性シリカ粒子、カーボンブラック、ベンガラ粒子、酸化セリウム粒子、酸化チタン粒子、炭酸カルシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、チタン酸エステル粒子等が挙げられる。
【0054】
なお、二種以上の充填材を併用してもよい。
【0055】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、炭化フッ素系界面活性剤等が挙げられるが、シリコーン系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤が好ましい。
【0056】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、KF-351A、KF945、KF640、KF642、KF643、KF644(以上、信越化学工業製)等が挙げられる。
【0057】
炭化水素系界面活性剤の市販品としては、例えば、ナロアクティー CL40、CL50、CL70、CL90、サンノニック SS30、SS50、SS70、SS90(以上、三洋化成製)等が挙げられる。
【0058】
なお、二種以上のノニオン性界面活性剤を併用してもよい。
【実施例
【0059】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0060】
[実施例1~7、比較例1~4]
表1に示す組成[質量%]で、ポリエーテル、シリカ粒子、ビニルポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ノニオン性界面活性剤、ヒドロシリル化触媒、ジビニルテトラメチルジシロキサンを混合し、キャタリストペースト(以下、ペーストAという)及びベースペースト(以下、ペーストBという)を有する付加型シリコーン印象材を調製した。
【0061】
なお、表1における各成分の詳細は、以下の通りである。
【0062】
ポリエーテルA1:ユニオックスPKA-5003(平均分子量450のポリエチレングリコールアリルエーテル)(日油製)
ポリエーテルA2:ユニオックスPKA-5007(平均分子量400のメトキシポリエチレングリコールアリルエーテル)(日油製)
ポリエーテルA3:ユニオックスAA-800(平均分子量800のポリエチレングリコールジアリルエーテル)(日油製)
ポリエーテルB1:ユニセーフPKA-5015(平均分子量1600のブトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアリルエーテル,EO/POモル比:75/25)(日油製)
ポリエーテルB2:ユニセーフPKA-5016(平均分子量1600のブトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアリルエーテル,EO/POモル比:50/50)(日油製)
シリカ粒子:CRYSTALITE VX-S(龍森製)
ビニルポリシロキサン:25℃における粘度が10Pa・sである両末端がビニルジメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサン
オルガノハイドロジェンポリシロキサン:メチルハイドロジェンシロキシ基の含有量が40mol%である直鎖状メチルハイドロジェンポリシロキサン
ノニオン性界面活性剤1:ナロアクティーCL-40(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)(三洋化成製)
ノニオン性界面活性剤2:サンノニックSS-50(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)(三洋化成製)
ノニオン性界面活性剤3:KF-643(シリコーン系界面活性剤)(信越化学工業製)
ノニオン性界面活性剤4:KF-644(シリコーン系界面活性剤)(信越化学工業製)
ヒドロシリル化触媒:白金1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の0.4質量%シリコーンオイル溶液
[ポリエーテルのピーク分子量]
高速液体クロマトグラフShodex GPC-104(昭和電工製)及びカラムLF-604(昭和電工製)を用いて、以下の条件で、ポリエーテルのピーク分子量を測定した。
【0063】
溶媒:THF
カラム温度:40℃
流量:0.5mL/min.
ポンプ圧力:2.3MPa
検出:UV
なお、標準サンプルとしては、ポリエチレングリコール 200,300,400,600,1000,1540,2000(以上、富士フィルム和光純薬製)を用いた。
【0064】
ポリエーテルのピーク分子量の測定結果を以下に示す。
【0065】
ポリエーテルA1:520
ポリエーテルA2:480
ポリエーテルA3:870
ポリエーテルB1:1800
ポリエーテルB2:2000
次に、付加型シリコーン印象材の操作余裕時間、硬化時間、硬化体の引裂き強さを評価した。
【0066】
[操作余裕時間]
23℃の恒温室において、ペーストAとペーストBを質量比1:1で練和した後、スパチュラで練和物を触り、練和できなくなるまでの時間を測定し、操作余裕時間とした。
【0067】
[硬化時間]
23℃の恒温室において、ペーストAとペーストBを質量比1:1で練和し、内径24mm、高さ8mmの金属リングに練和物を注入した後、直径3mmの150gビッカー針を落下させ、練和物の表面からのビッカー針の針入が1mm以下になるまでの時間を測定し、硬化時間とした。
【0068】
[硬化体の引裂き強さ]
JIS T 6527に基づいて、ペーストAとペーストBを質量比1:1で練和した後、上記硬化時間で硬化させた硬化体の引裂き強さ試験を実施し、硬化体の引裂き強さを測定した。
【0069】
表1に、付加型シリコーン印象材の操作余裕時間、硬化時間、硬化体の引裂き強さの評価結果を示す。
【0070】
【表1】
表1から、実施例1~7の付加型シリコーン印象材は、操作余裕時間を長くしても、硬化遅延が抑制されることがわかる。
【0071】
これに対して、比較例1の付加型シリコーン印象材は、ポリエーテルAを含まないペーストBを有するため、操作余裕時間が短い。
【0072】
比較例2、3の付加型シリコーン印象材は、ポリエーテルAを含まず、ポリエーテルBを含むペーストBを有するため、操作余裕時間が短い。
【0073】
比較例4の付加型シリコーン印象材は、ポリエーテルAを含まず、ジビニルテトラメチルジシロキサンを含むペーストBを有するため、硬化遅延が発生する。
【0074】
本願は、日本特許庁に2019年11月19日に出願された基礎出願2019-208568号の優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。