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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】極薄鋼帯コイリング張力制御法
(51)【国際特許分類】
   B21C 47/00 20060101AFI20231017BHJP
   B21C 47/02 20060101ALI20231017BHJP
   B65H 23/198 20060101ALI20231017BHJP
   B21B 37/52 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B21C47/00 F
B21C47/00 Z
B21C47/02 E
B65H23/198
B21B37/52
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021564121
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 CN2021105359
(87)【国際公開番号】W WO2022198838
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】202110316202.7
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521469047
【氏名又は名称】山西太鋼不錆鋼精密帯鋼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100118382
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 央子
(72)【発明者】
【氏名】王天翔
(72)【発明者】
【氏名】胡尚挙
(72)【発明者】
【氏名】張国星
(72)【発明者】
【氏名】趙永順
(72)【発明者】
【氏名】張艶霞
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼雅麗
(72)【発明者】
【氏名】楊寒琳
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-290109(JP,A)
【文献】特開平07-148518(JP,A)
【文献】特開2010-162553(JP,A)
【文献】特開2016-074005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 47/00
B21B 37/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極薄鋼帯コイリング張力制御法であって、
圧延機セットを稼働する前に、デコイラーとコイラーとに静的張力を構築する段階1と、
圧延機セットを稼働した後、鋼帯の張力値を検出し、検出結果は、前記コイラーのモーターの出力トルク調節に使用される段階2と、および
極薄鋼帯圧延プロセスにおいて、前記コイラーに対してトルク補償を実行して、前記鋼帯の張力を一定にし、前記コイラーの負荷トルクMは、鋼帯の張力トルクM、慣性モーメントトルクM、鋼帯曲げトルクMw、伝送システム摩擦トルクMを含む段階3と、を含むことを特徴とする前記極薄鋼帯コイリング張力制御法。
【請求項2】
前記段階2において、圧延機セットが稼働を開始する場合、前記デコイラーと前記コイラーとが同時に時計回りに回転し、前記デコイラーの所定の速度値Vは、前記コイラーの所定の速度値Vよりも小さく、前記鋼帯の線速度は、Vであり、V-V=V×0.03であることを特徴とする請求項1に記載の極薄鋼帯コイリング張力制御法。
【請求項3】
前記段階2において、一つの設定張力値をプリセットし、前記設定された張力値と実際に測定された張力値とを比較して修正された張力値を得、前記修正された張力値は、前記コイラーの速度調節器の第1の制御信号として使用され、前記速度調節器は、前記第1の制御信号に従って、第2の制御信号を前記コイラーのトルク調節器に出力し、前記トルク調節器は、前記第2の制御信号に従って、前記コイラーのモーターの出力トルクを調節することを特徴とする請求項1に記載の極薄鋼帯コイリング張力制御法。
【請求項4】
前記段階3において、前記コイラーのモーターの出力トルクを制限し、前記コイラーのモーターの出力トルクは、トルク制限値を超えず、前記コイラーのモーターの回転速度を制限し、前記コイラーのモーターの回転速度は、回転速度の制限値を超えないことを特徴とする請求項1に記載の極薄鋼帯コイリング張力制御法。
【請求項5】
前記段階3において、前記鋼帯の張力トルクMは、次のとおりであり、
【数1】
F=Fset+Fcorr (4)
Fは、鋼帯の総張力であり、Dは、コイラー上の鋼帯の鋼コイル直径であり、iは、モーター減速機の減速比であり、ηは、機械効率であり、Fsetは、設定された張力値であり、Fcorrは、補正張力値であることを特徴とする請求項1に記載の極薄鋼帯コイリング張力制御法。
【請求項6】
前記段階3において、前記慣性モーメントトルクMは、次のとおりであり、
【数2】
【数3】
【数4】
GD は、コイラーの伝送システムの慣性モーメントであり、GD は、鋼帯の鋼コイルの慣性モーメントであり、GDmotor は、コイラーのモーターの慣性モーメントであり、GDgear は、モーターのギアボックスの慣性モーメントであり、GDcuppling は、トランスミッションチェーンの慣性モーメントであり、ρは、鋼の密度であり、wは、鋼帯の幅であり、 (dv/dt)は、鋼帯の線形加速度であり、gは、重力加速度であり、Dは、コイラー上のリールの直径であり、Dは、コイラー上の鋼帯の鋼コイル直径であることを特徴とする請求項1に記載の極薄鋼帯コイリング張力制御法。
【請求項7】
前記鋼帯の線形加速度(dv/dt)は、次のとおりであり、
【数5】
hは、鋼帯の厚さであり、vは、鋼帯の線速度であり、Dは、コイラー上の鋼帯の鋼コイル直径であることを特徴とする請求項6に記載の極薄鋼帯コイリング張力制御法。
【請求項8】
前記段階3において、前記鋼帯の曲げトルクMは、次のとおりであり、
【数6】
sは、鋼帯の降伏強度であり、wは、鋼帯の幅であり、hは、鋼帯の厚さであり、vは、鋼帯の線速度であり、Dは、コイラー上の鋼帯の鋼コイル直径であることを特徴とする請求項1に記載の極薄鋼帯コイリング張力制御法。
【請求項9】
前記段階3において、前記伝送システムの摩擦トルクMは、次のとおりであり、
【数7】
Pは、コイラーのリールベアリングに作用する支持反力、鋼コイルとリール自体との重量の偶力であり、μは、前記リールベアリングの磨擦係数であり、Kは、前記リールベアリングの直径であることを特徴とする請求項1に記載の極薄鋼帯コイリング張力制御法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼圧延の技術分野に属し、具体的には、極薄鋼帯コイリング張力制御法に関する。
【背景技術】
【0002】
極薄ステンレス鋼帯は、現在航空宇宙、医療用電子機器、通信用半導体、自動車部品などの分野で非常に高い付加価値を有する。0.05mm以下の極薄鋼帯の場合、製造プロセス中のプレート形状不良や、介在物サイズの大きさなどの問題により、張力制御が不当である場合、圧延プロセス中のストリッピングおよび帯の切れの問題が発生し易く、鋼帯の製品率が低下し、生産に大きな経済的損失が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の問題の全部または一部を解決するために、本発明の目的は、極薄鋼帯コイリング張力制御法を提供することにより、鋼帯のコイリングプロセス中にストリッピングおよび帯の切れが発生せず、完成した鋼コイルが崩壊しないことを保証し、生産企業により高い経済的利益をもたらすようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、
圧延機セットを稼働する前に、デコイラーとコイラーとに静的張力を構築する段階1と、
圧延機セットを稼働した後、鋼帯の張力値を検出し、検出結果は、前記コイラーのモーターの出力トルク調節に使用される段階2と、
極薄鋼帯圧延プロセスにおいて、前記コイラーに対してトルク補償を実行して、前記鋼帯の張力を一定にし、前記コイラーの負荷トルクMは、鋼帯の張力トルクM、慣性モーメントトルクM、鋼帯曲げトルクM、伝送システム摩擦トルクMを含む段階3と、を含む極薄鋼帯コイリング張力制御法を提供する。
【0005】
選択的に、前記段階1において、前記静的張力を構築する方法は、前記コイラーが鋼帯をしっかりと引っ張り、前記デコイラーが反時計回りに回転し、前記鋼帯の張力値が所定の値に達する場合、前記デコイラーは、静的ロックローター状態になることである。
【0006】
選択的に、前記段階2において、圧延機セットが稼働を開始する場合、前記デコイラーと前記コイラーとが同時に時計回りに回転し、前記デコイラーの所定の速度値VKは、前記コイラーの所定の速度値VJよりも小さく、前記鋼帯の線速度は、VGであり、V-V=V×0.03である。
【0007】
選択的に、前記段階2において、一つの設定張力値をプリセットし、前記設定された張力値と実際に測定された張力値とを比較して修正された張力値を得、前記修正された張力値は、前記コイラーの速度調節器の第1の制御信号として使用され、前記速度調節器は、前記第1の制御信号に従って、第2の制御信号を前記コイラーのトルク調節器に出力し、前記トルク調節器は、前記第2の制御信号に従って、前記コイラーのモーターの出力トルクを調節する。
【0008】
選択的に、前記段階3において、前記コイラーのモーターの出力トルクを制限し、前記コイラーのモーターの出力トルクは、トルク制限値を超えず、前記コイラーのモーターの回転速度を制限し、前記コイラーのモーターの回転速度は、回転速度の制限値を超えない。
選択的に、前記段階3において、前記鋼帯の張力トルクMは、次のとおりであり、
【0009】
【数1】
【0010】
F=Fset+Fcorr (4)
【0011】
Fは、鋼帯の総張力であり、Dは、コイラー上の鋼帯の鋼コイル直径であり、iは、モーター減速機の減速比であり、ηは、機械効率であり、Fsetは、設定された張力値であり、Fcorrは、補正張力値である。
選択的に、前記段階3において、前記伝送システムの慣性モーメントトルクMは、次のとおりであり、
【0012】
【数2】
【0013】
【数3】
【0014】
【数4】
【0015】
GD は、コイラーの伝送システムの慣性モーメントであり、GD は、鋼帯の鋼コイルの慣性モーメントであり、GDmotor は、コイラーのモーターの慣性モーメントであり、GDgear は、モーターのギアボックスの慣性モーメントであり、GDcuppling は、トランスミッションチェーンの慣性モーメントであり、ρは、鋼の密度であり、wは、鋼帯の幅であり、(dv/dt)は、鋼帯の線形加速度であり、gは、重力加速度であり、Dは、コイラー上のリールの直径であり、Dは、コイラー上の鋼帯の鋼コイル直径である。
選択的に、前記鋼帯の線形加速度(dv/dt)は、次のとおりであり、
【0016】
【数5】
【0017】
hは、鋼帯の厚さであり、vは、鋼帯の線速度であり、Dは、コイラー上の鋼帯の鋼コイル直径である。
選択的に、前記段階3において、前記鋼帯の曲げトルクMは、次のとおりであり、
【0018】
【数6】
【0019】
sは、鋼帯の降伏強度であり、wは、鋼帯の幅であり、hは、鋼帯の厚さであり、vは、鋼帯の線速度であり、Dは、コイラー上の鋼帯の鋼コイル直径である。
選択的に、前記段階3において、前記伝送システムの摩擦トルクMは、次のとおりであり、
【0020】
【数7】
【0021】
Pは、コイラーのリールベアリングに作用する支持反力、鋼コイルとリール自体との重量の偶力であり、μは、前記リールベアリングの磨擦係数であり、Kは、前記リールベアリングの直径である。
【発明の効果】
【0022】
上記の技術的解決策から、本発明によって提供される極薄鋼帯コイリング張力制御法は、次のような利点を有することが分かる。
本発明は、デコイラーとコイラーとの間の張力関係を構築し、直接張力制御を採用することにより、静的張力を構築する場合に張力がゆっくりと増加させ、鋼帯の加速および減速のプロセスにおいて、鋼帯の張力を一定に保つために、コイラーのモータートルクに対して追加の動的トルクおよび機械的損失トルクの補償を行い、張力制御が安定し、コイリングプロセス中にストリッピングおよび帯の切れが発生しないため、鋼コイルをきちんと巻くことができることを保証し、完成した鋼コイルが崩壊しない。本発明の張力制御法は、製品の性能要件を満たすだけでなく、生産効率も向上させて、生産企業により高い経済的利益をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例における圧延機セットの構造構成のブロック図である。
図2】本発明の実施例における張力制御の流れの模式図である。
図3】本発明の実施例における張力検出パラメーターの関係の模式図である。
図4】本発明の実施例において検出された張力を用いた出力トルク調節の流れの模式図である。
図5】本発明の実施例におけるトルク補償の流れの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的、構造および機能をよりよく理解するために、添付の図面を参照して、本発明の極薄鋼帯コイリング張力制御法をさらに詳細に説明する。
図1図2図3図5は、本発明の実施例を示し、図1は、本発明の実施例における圧延機セットの構造構成のブロック図であり、図1から、圧延機セットは、デコイラー、入口厚さゲージ、圧延機ロール、出口厚さゲージ、張力計ロール、コイラーを含むことが分かる。鋼帯は、デコイラーから、入口厚さゲージ、圧延機ロール、出口厚さゲージ、張力計ロールを通過して、コイラーに到達し、コイラーは、ベルトコイラーを使用して鋼帯のコイリングを完成する。上記の各デバイスの具体的構造は、先行技術を参照することができる。
【0025】
圧延プロセスにおいて、張力は、ステンレス鋼材料の変形抵抗を減少させて、製品をさらに薄くし、冷間圧延されたステンレス鋼の極薄鋼帯が圧延プロセス中に良好なプレート形状を維持できるようにするので、冷間圧延された極薄ステンレス鋼の極薄鋼帯の製造には非常に重要であり、コイリングプロセスにおける主な測定指標は、単位張力である。単位張力とは、次の式に示されるように、単位セクションの鋼帯の平均引張応力を指す。
【0026】
【数8】
【0027】
単位は、鋼帯が負担する単位張力であり、Tは、鋼帯が負担する総張力であり、Sは、鋼帯の面積である。
【0028】
単位張力が大きい場合、鋼帯を伸ばすことができて圧延を有利にするが、極薄鋼帯の場合には、大きいほど良いわけではなく、まず、鋼帯の降伏限界を超えることはできず、次に、過度の張力は、圧延プロセス中のストリッピングおよび帯の切れを引き起こし、張力の制御精度の要件も非常に高いため、張力制御の優劣も圧延効果を直接決定する。
【0029】
本発明の実施例は、
圧延機セットを稼働する前に、デコイラーとコイラーとに静的張力を構築する段階1と、
圧延機セットを稼働した後、鋼帯の張力値を検出し、検出結果は、コイラーのモーターの出力トルク調節に使用される段階2と、
極薄鋼帯圧延プロセスにおいて、コイラーに対してトルク補償を実行して、鋼帯の張力を一定にし、コイラーの負荷トルクMは、鋼帯の張力トルクM、伝送システムの慣性モーメントトルクM、鋼帯曲げトルクM、伝送システム摩擦トルクMを含む段階3を含む、極薄鋼帯コイリング張力制御法をさらに開示する。
=M+M+M+M(2)
【0030】
デコイラーとコイラーとに静的張力を構築することにより、静的張力は、圧延機セットが安定して稼働している時の鋼帯の張力よりも低く、鋼帯に一定の張力を事前に加えて張力を維持することができ、圧延機セットが稼働された後、鋼帯に突然張力が加わってストリッピングおよび帯の切れる現象を回避する。当該段階は、極薄鋼帯の圧延の重要な段階である。
【0031】
鋼帯の実際の張力値が圧延プロセスに必要な張力値に達しているかどうかを確認するために、圧延機セットを稼働した後、鋼帯の実際の張力値を検出する必要があり、鋼帯の実際の張力値に変化がある場合、圧延プロセスに必要な張力値に比べて増減現象が存在するので、鋼帯の張力値をプロセスで必要とする張力値に戻すために、コイラーのモーターの出力トルクを調節する必要がある。
鋼帯を巻く場合、コイラーの鋼帯のコイル径が変化するため、コイラーの加速および減速は、いずれも動的トルクを発生するため、コイリング張力の変化を引き起こすことがある。さらに、機械的摩擦損失による摩擦トルクもコイリング張力の変化を引き起こす。そのため、実際の稼働プロセスにおいて、補償トルクの方法を使用して、上記の張力損失値を補償して、コイリング張力の一定を保証する。コイラーの負荷トルクMも、コイラーが出力するのに必要な適切なトルクであり、負荷トルクMをリアルタイムで自動計算して、トルク補償を実現する。
【0032】
本実施例において、適切な鋼帯の厚さは、0.05mm以下であり、厚さは、0.02~0.05mmである。例えば、番号がSUS304である精密ステンレス鋼原料コイルで、厚さは、0.02mmであり、幅は、610mmであり、設定された張力値は、200N/mmであり、線速度は、300m/minである。
【0033】
段階1において、静的張力を構築する方法は、コイラーが鋼帯をしっかりと引っ張り、デコイラーが反時計回りに回転し、鋼帯の張力値が所定の値に達する場合、デコイラーは、静的ロックローター状態になることである。静的張力の所定の値は、制御システムにより、圧延機セットが安定して稼働する時の鋼帯張力のパーセンテージに従って与えられ、例えば、静的張力が15%である鋼帯の張力である。
【0034】
段階2において、圧延機セットが稼働を開始する場合、デコイラーとコイラーとが同時に時計回りに回転し、デコイラーの所定の速度値Vは、コイラーの所定の速度値Vよりも小さく、鋼帯の線速度は、Vであり、V-V=V×0.03である。
デコイラーにもモーターが設置され、デコイラーの速度は、そのモーターの回転速度によって決定される。コイラー速度がデコイラー速度よりも早いため、セットの速度増加プロセスは、実質的にコイラーがデコイラーを引きずって、回転を加速することである。この時、デコイラーのトルク方向は、回転速度の方向と逆であり、デコイラーは、実質的に逆ブレーキ状態で作動する。
【0035】
コイラーのモーターの出力トルクが圧延プロセスで必要なトルクに達するかどうかを確認するために、段階2において、一つの設定張力値をプリセットし、設定された張力値と実際に測定された張力値とを比較して修正された張力値を得、修正された張力値は、コイラーの速度調節器の第1の制御信号として使用され、速度調節器は、第1の制御信号に従って、第2の制御信号をコイラーのトルク調節器に出力し、トルク調節器は、第2の制御信号に従って、コイラーのモーターの出力トルクを調節する。設定された張力値は、圧延プロセスに必要な理論上の張力値であり、鋼帯が圧延中に当該張力値を維持できる場合、達する機械的性能パラメーターは、最適である。設定された張力値は、鋼帯のパラメーターに従って確認する必要があり、異なる材料、幅、厚さの鋼帯の場合、設定された張力値は、等しくない。
コイラー制御システムは、ダブルループ制御システムであり、トルクループと磁束ループは、内側ループであり、回転速度ループは、外側ループである。トルク調節器の場合、その入力は、回転速度調節器の出力であるため、第1の制御信号を速度調節器に送信することにより、トルク調節器を制御することができる。
【0036】
図3に示されるように、鋼帯は、張力計ロール上に一定の巻き付け角度を有するため、実際の張力は、張力計によって検出された値の一つである。実際の張力=検出された張力/(1-cosα)。鋼帯が稼働し始める場合、張力検出の巻き付け角度が小さく、コイラーの鋼コイル径が大きくなると、当該巻き付け角度は、徐々に大きくなる。コイル径は、鋼帯の線速度と角速度との関係から計算される。
圧延プロセスの安全のために、トルク補償後の鋼帯の過度の張力、および過度の圧延速度を避け、段階3において、コイラーのモーターの出力トルクを制限し、コイラーのモーターの出力トルクは、トルク制限値を超えず、コイラーのモーターの回転速度を制限し、コイラーのモーターの回転速度は、回転速度の制限値を超えない。
図5に示されるように、段階3において、鋼帯の張力トルクMは、次のとおりであり、
【0037】
【数9】
【0038】
F=Fset+Fcorr (4)
Fは、鋼帯の総張力であり、Dは、コイラー上の鋼帯の鋼コイル直径であり、iは、モーター減速機の減速比であり、ηは、機械効率であり、Fsetは、設定された張力値であり、Fcorrは、補正張力値である。
【0039】
慣性モーメントトルクは、固定慣性モーメントトルクと可変慣性モーメントトルクとを含み、伝送システムの慣性モーメントトルクは、固定慣性モーメントトルクであり、モーター、機械的機構、ギアボックスによって異なる。リール部分の慣性モーメントトルクは、固定慣性モーメントトルクと可変慣性モーメントトルクとであり、主にリール部分のフライホイールトルクと鋼コイルのフライホイールトルクとの二つの部分で構成され、可変慣性モーメントトルクは、鋼帯の厚さ、鋼帯の幅、鋼コイルの直径によって異なる。図5に示されるように、段階3において、慣性モーメントトルクMは、次のとおりであり、
【0040】
【数10】
【0041】
【数11】
【0042】
【数12】
【0043】
GD は、コイラーの伝送システムの慣性モーメントであり、GD は、鋼帯の鋼コイルの慣性モーメントであり、GDmotor は、コイラーのモーターの慣性モーメントであり、GDgear は、モーターのギアボックスの慣性モーメントであり、GDcuppling は、トランスミッションチェーンの慣性モーメントであり、ρは、鋼の密度であり、wは、鋼帯の幅であり、(dv/dt)は、鋼帯の線形加速度であり、gは、重力加速度であり、Dは、コイラー上のリールの直径であり、Dは、コイラー上の鋼帯の鋼コイル直径である。
図5に示されるように、鋼帯の線形加速度(dv/dt)は、次のとおりであり、
【0044】
【数13】
【0045】
hは、鋼帯の厚さであり、vは、鋼帯の線速度であり、Dは、コイラー上の鋼帯の鋼コイル直径である。
選択的に、段階3において、鋼帯の曲げトルクMは、次のとおりであり、
【0046】
【数14】
【0047】
sは、鋼帯の降伏強度であり、wは、鋼帯の幅であり、hは、鋼帯の厚さであり、vは、鋼帯の線速度であり、Dは、コイラー上の鋼帯の鋼コイル直径である。
コイラーの伝送部品の機械的摩擦損失は、静的摩擦トルクを発生させ、コイリング張力値の変化を引き起こし、この部分は静的張力損失値と呼ばれる。一般に摩擦係数は、一定であり、この値も比較的に安定している。図5に示されるように、段階3において、伝送システム摩擦トルクMは、次のとおりであり、
【0048】
【数15】
【0049】
Pは、コイラーのリールベアリングに作用する支持反力、鋼コイルとリール自体との重量の偶力であり、すべてのリールベアリングを計算する必要があり、μは、リールベアリングの磨擦係数であり、Kは、リールベアリングの直径である。
【0050】
本実施例の極薄鋼帯コイリング張力制御法は、実際の使用において以下の状況を有することができる。
制御システムがセットの稼働速度コマンドを与えた後、コイラーがデコイラーを引きずって回転を加速し、コイラーの回転速度は、ゼロから所定の速度まで徐々に変化するが、コイラーの回転速度が所定の速度に達した直後に低下せず、所定の速度を超え、コイラーの実際の戻り速度は、所定の速度より大きくして、速度調節器の出力が飽和制限値に達するようにし、この時、トルク制限を制御することにより、モーターのトルクを制御し、加速時およびスムーズな運転時のコイラーの一定張力、即ち、稼働時のセット全体の一定張力を確保することができる。セットの稼働速度が安定した後、コイラーの実際の戻り速度は、依然として所定の速度より大きく、速度調節器の出力は、飽和制限値を維持し、この時、コイラーの加速トルクは、ゼロであり、追加のトルク補償値も、ゼロであり、トルク制限を制御することにより、モーターのトルクを制御し、スムーズな運転時のデコイラーの一定張力、即ち、スムーズな運転時のセット全体の一定張力を確保することができる。
本実施例の極薄鋼帯コイリング張力制御法は、次のような利点を有する。
【0051】
本実施例は、デコイラーとコイラーとの間の張力関係を構築し、直接張力制御を採用することにより、静的張力を構築する場合に張力がゆっくりと増加させ、鋼帯の加速および減速のプロセスにおいて、鋼帯の張力を一定に保つために、コイラーのモータートルクに対して追加の動的トルクおよび機械的損失トルクの補償を行い、張力制御が安定し、コイリングプロセス中にストリッピングおよび帯の切れが発生しないため、鋼コイルをきちんと巻くことができることを保証し、完成した鋼コイルが崩壊しない。本実施例の張力制御法は、製品の性能要件を満たすだけでなく、生産効率も向上させて、生産企業により高い経済的利益をもたらす。
特に明記しない限り、本出願で使用される技術的用語または化学的用語は、当業者によって理解される通常の意味を有することに留意されたい。
【0052】
さらに、「第1の」、「第2の」等の用語は、目的の説明のみで使用され、相対的な重要性を示したり暗示したりするとか、もしくは示された技術的特徴の数を暗黙的に示したりするものとして理解することはできない。本発明の説明において、「複数」とは、特に明記しない限り、二つ以上を意味する。
【0053】
最後に、上記の各実施例は、本発明の技術的解決策を説明するためにのみ使用され、それらを制限するものではないことに留意されたい。前述の各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者は、前述の各実施例に記載された技術的解決策を修正するか、もしくは技術的特徴の一部または全部を同等に置き換えることができ、これらの修正または置き換えは、対応する技術的解決策の本質を本発明の各実施例の技術的解決策の範囲から逸脱するものではなく、それらは、すべて本発明の特許請求の範囲および明細書の範囲に含まれるべきであることを理解されたい。特に、構造上の矛盾がない限り、各実施例で言及された様々な技術的特徴は、任意の方法で組み合わせることができる。本発明は、本明細書に開示された特定の実施例に限定されず、特許請求の範囲に含まれるすべての技術的解決策を含む。
図1
図2
図3
図4
図5