(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】埋め込み型眼圧センサの光学的探索のためのシステム、装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/16 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
A61B3/16
(21)【出願番号】P 2021567013
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 US2020032510
(87)【国際公開番号】W WO2020232015
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-11-09
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521491392
【氏名又は名称】トゥエンティ・トゥエンティ・セラピューティクス・エルエルシイ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】シンハ,スプリオ
(72)【発明者】
【氏名】アザール,ディミトリ
(72)【発明者】
【氏名】ルミャーンツェフ,オレグ
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0160561(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0254438(US,A1)
【文献】LEE Jeong Oen et al.,”Fabry-Perot Optical Sensor and Portable Detector for Monitoring High-Resolution Ocular Hemodynamics”,IEEE Photonics Technology Letters,2019年03月15日,Vol. 31、No. 6,pp. 423-426
【文献】HAN Samuel J. et al.,”Effect of optical aberrations on intraocular pressure measurements using a microscale optical implant in ex vivo rabbit eyes”,Journal of Biomedical Optics,2018年04月12日,Vol. 23、No. 4,pp. 047002-2 - 047002-9
【文献】LEE Jeong Oen et al.,”A microscale optical implant for continuous in vivo monitoring of intraocular pressure”,Microsystems & Nanoengineering,2017年12月18日,Vol. 3、Article 17057,pp. 1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目に埋め込み可能な圧力センサと、
外部装置と、
を備える、眼圧測定システムであって、
前記圧力センサは、前記目の眼圧に基づいて変動する深さを有する空洞を画定し、
前記外部装置は、
複数の光線を放射するように構成される一つの光源と、
少なくとも2つの光線から反射される光を受領し、前記少なくとも2つの光線から反射される光に基づいて出力を生成するように構成される分光計であって、前記出力は、前記空洞の深さに基づいて変動する分光計と、
前記出力を受領し、前記出力に基づいて、前記目の前記眼圧を推定するように構成されるプロセッサと、
を含み、
前記複数の光線は、前記圧力センサの膜の幅方向又は直径方向において所定間隔をなす、
眼圧測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記圧力センサは、
基板と、
前記基板に対向する膜と、
を備え、
前記深さは前記基板と前記膜との間の距離である、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記圧力センサは、
前記膜と前記基板との間に位置するスペーサ層と、
前記膜に取り付けられるベゼルと、
をさらに備え、
前記スペーサ層、前記基板および前記膜は結合して前記空洞を画定し、
前記ベゼルは、少なくとも前記2つの光線が前記空洞に当たるように開口を備える、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記圧力センサは、
前記空洞の一部を形成する基板と、
第1の中央開口を備え、前記空洞の第2の部分を形成するスペーサと、
前記スペーサに取り付けられ、前記空洞の第3の部分を形成する膜と、
前記第1の中央開口と位置合わせされる第2の中央開口を備えるベゼルと、
を備える、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、前記第1の中央開口は円形であり、第1の直径を有し、前記第2の中央開口は円形であり、前記第1の直径以下の第2の直径を有する、システム。
【請求項6】
前記ベゼルは基準マーカーを備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記空洞は円形の断面を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記プロセッサは、前記分光計と、前記圧力センサとの間の角度配列のずれを前記出力に基づいて修正するように構成される、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、前記プロセッサはさらに、前記分光計と前記圧力センサとの間の横方向の変位誤差を前記出力に基づいて修正するように構成される、システム。
【請求項10】
空洞を備え、目に埋め込まれた圧力センサを用いて、前記目の眼圧を測定するための方法であって、前記方法は、
光を光源から前記目に放射することであって、前記光源は、前記圧力センサの膜の幅方向または直径方向において所定間隔をなす複数の光線を放射するように構成され、少なくとも2つの重ならない光線が前記圧力センサに当たり、前記圧力センサから反射されるように構成されることと、
前記少なくとも2つの重ならない光線から反射されて分光計内に入る光を受領して、スペクトルを生成することであって、前記スペクトルは前記圧力センサの前記空洞の深さに基づいて変動することと、
前記スペクトルに基づいて出力をプロセッサに通信することであって、前記プロセッサは、前記出力を受領し、前記出力に基づいて、前記目の前記眼圧を推定するように構成されることと、
を備える、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記圧力センサは、
基板と、
前記基板に取り付けられ、第1の中央開口を備えるスペーサ層と、
前記スペーサ層に取り付けられる半反射素材を備えるカバーであって、前記カバーの一部は可撓性膜を形成するカバーと、
前記カバーに取り付けられ、第2の中央開口を備えるベゼルであって、前記第2の中央開口は前記可撓性膜の周辺を形成するベゼルと、
を備える、方法。
【請求項12】
前記ベゼルは基準マーカーを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記空洞は円形断面を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、前記プロセッサは、前記分光計と前記圧力センサとの間の角度配列のずれを前記出力に基づいて修正するように構成される、方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、前記プロセッサは、前記分光計と前記圧力センサとの間の変位誤差を前記出力に基づいて修正するように構成される、方法。
【請求項16】
目の眼圧によって変動する寸法を有する圧力センサであって、前記目に埋め込まれた圧力センサから眼圧を測定するための装置であって、前記装置は、
光線のアレイ
を生成するようにコヒーレント光を空間的に放射するように構成される光源であって
、少なくとも2つの隣接する光線が前記埋め込まれた圧力センサの膜の幅または直径未満の距離だけ離間されるように
、前記光線が大きさおよび間隔を
有する、光源と、
前記少なくとも2つの光線から反射される光を受領し、スペクトル出力を生成するように構成される分光計であって、前記スペクトル出力は、前記圧力センサの前記寸法に基づいて変動する分光計と、
前記スペクトル出力を受領し、前記スペクトル出力に基づいて、前記目の前記眼圧を推定するように構成されるプロセッサと、
を備える、装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置であって、前記埋め込まれた圧力センサは基準マーカーを含み、前記スペクトル出力は、前記基準マーカーからの1または複数の前記光線の反射に基づく、装置。
【請求項18】
請求項16に記載の装置であって、前記プロセッサはさらに、前記分光計および前記埋め込まれた圧力センサとの間の角度配列のずれを修正するように構成される、装置。
【請求項19】
請求項16に記載の装置であって、前記プロセッサはさらに、前記分光計と前記埋め込まれた圧力センサとの間の横方向の変位誤差を修正するように構成される、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載する主題は、人の目の眼圧(IOP)を測定するためのシステム、装置、および方法に関する。これらのシステム、装置、および方法は、具体的に、しかし非限定的に、目の疾患を治療するために有効である。目の疾患には緑内障を含むが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
眼圧(IOP)は、目の内部の液体の圧力を数値化する。IOPが慢性的に高くなる緑内障などの疾患に悩む人は多い。時間の経過とともに、高いIOPによって、目の視神経に損傷が起こり、失明につながることもありえる。現在、緑内障の治療は主に、IOPを低減するために、医薬品を目に定期的に投与することに関する。これらの薬は、たとえば、注射または目薬によって投与可能である。ただし、効果的な緑内障の治療には、処方計画に従うことと、患者のIOPを知ることが必要である。測定が最新であり、直近であればあるほど、測定は重要性を持ち、結果的に効果的な治療が得られる。特定の患者のIOPは、一日のうちの時間、運動、薬の服用の頻度、およびその他の要因によって顕著に異なりことがある。これは、どの測定も不確実性に影響を受けるため、患者の健康状態に対して確信を提供するためには経時的な複数の測定が必要となりえることを意味する。診療所で実施されるIOP測定は一般に、年に1回または2回のみしか実施されない。これらの希少な測定では、患者のIOPの変動を把握することは難しい。診療所での年に1回または半年に1回の測定は、前回の測定から時間が経過してしまうため、廃れるか、または時代遅れになることもある。自宅での頻繁な測定によって、低費用でより良い治療が受けられることになりえる。
【0003】
IOPは眼圧検査で測定されてもよいが、一般に用いられる眼圧検査の技術および装置は、多くの欠点を有する。接触眼圧検査は医療機関で行われ、感染リスクと負傷のリスクの両方を有する。治療にはまた、患者の目の麻酔が必要となることもあり、その結果として不便と不快が生じえる。非接触眼圧検査は、空気の軽い一吹き、または一噴射を患者の目に当てて、結果として生じる目の偏向を測定することに関与する。ただし、これには、速い加速のピストンポンプが必要であり、結果として、大きなソレノイド、高コイル力および高電力が必要となる。このため、コイル、ピストン、および電源を収容する比較的大きな装置が必要となる。したがって、このようなポンプは比較的重く高価である。非接触眼圧検査の費用、重さ、大きさ、および電力消費のために、非接触眼圧検査を家庭で用いることは非現実的である。さらに、非接触眼圧検査は、接触眼圧検査ほど正確でないことが多い。したがって、前述の問題およびその他の問題に対処するIOP測定ツールに対する長年にわたる必要性が存在する。
【0004】
本明細書の背景技術の部分に含まれる情報は、本明細書で引用する引用文献、およびその説明および論議も含めて、技術的な参照目的でのみ含まれ、本開示の範囲が拘束される主題としてみなされるものではない。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、人の目の測定眼圧(IOP)のシステム、装置、および方法が開示される。
【0006】
一実施形態によれば、眼圧測定システムが提示される。眼圧測定システムは、目の中の埋め込み型の圧力センサを含む。圧力センサは、目の眼圧に基づいて変動する深さを有する光空洞を画定する。眼圧測定システムはさらに、外部装置を含む。外部装置は、光源と、分光計と、プロセッサとを含む。光源は複数の光線を放射するように構成される。分光計は、少なくとも2つの光線から反射される光を受領し、少なくとも2つの光線から反射される光に基づいて出力を生成するように構成される。出力は、光空洞の深さに基づいて変動する。プロセッサは、出力を受領し、出力に基づいて、目の眼圧を推定するように構成される。
【0007】
別の実施形態によれば、光空洞を有し、目に埋め込まれた圧力センサを用いて目の眼圧を測定するための方法が提示される。本方法は、光を光源から目に放射することを含む。光源は、複数の光線を放射するように構成され、少なくとも2つの重ならない光線が圧力センサに当たり、圧力センサから反射されるように構成される。本方法はさらに、少なくとも2つの重ならない光線から反射して分光計に入る光を受領して、スペクトルを生成することを含む。スペクトルは圧力センサの光空洞の深さに基づいて変動する。本方法はさらに、スペクトルに基づいて、出力をプロセッサに通信することを含む。プロセッサは出力を受領し、出力に基づいて目の眼圧を推定するように構成される。
【0008】
別の実施形態では、目の眼圧によって変動する寸法を有し、目に埋め込まれた圧力センサから眼圧を測定するための装置が提示される。本装置は、光源と、分光計と、プロセッサとを含む。光源は光線のアレイの空間的コヒーレント光を放射するように構成される。光線は、任意の2つの隣接する光線が、埋め込まれた圧力センサの断面の寸法より短い距離だけ離間するような大きさおよび間隔を有する。分光計は、少なくとも2つの光線から反射される光を受領し、スペクトル出力を生成するように構成される。スペクトル出力は、圧力センサの寸法に基づいて変動する。プロセッサは、スペクトル出力を受領し、スペクトル出力に基づいて、目の眼圧を推定するように構成される。
【0009】
本概要は、以下の発明を実施するための形態でさらに説明する概念の選択を、簡潔な形で紹介するために提供される。本概要は、クレームされた主題の重要な特徴または基本的な特徴を特定することを目的とするものではなく、また、クレームされた主題の範囲を限定することを目的とするものでもない。IOP測定システムの特徴、詳細、実用性、および有利点のさらに広範な提示は、請求項で画定するように、以下に記載した本開示の様々な実施形態の説明において提供され、添付図で例示される。
【0010】
本開示の例示的な実施形態を、添付図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の少なくとも1つの実施形態による、実施例のIOP測定システムの断面図である。
【
図2】本開示の少なくとも1つの実施形態による、IOP測定システムの埋め込み型センサから反射される光の例示的な分光反応である。
【
図3】本開示の少なくとも1つの実施形態による、目、センサ、光源、および分光計を含む、実施例のIOP測定システムの断面図である。
【
図4】本開示の少なくとも1つの実施形態による、目、センサ、入射光線を含む、実施例のIOP測定システムの断面図である。
【
図5】本開示の少なくとも1つの実施形態による、実施例の埋め込み型圧力センサの断面図である。
【
図6】本開示の少なくとも1つの実施形態による、異なる光の波長に対する、空洞の厚さの関数として、隣接するスペクトルピーク間の間隔を表すグラフ表示である。
【
図7】本開示の少なくとも1つの実施形態による、異なる偏向の膜に対する、空洞の厚さの関数として、隣接するスペクトルピーク間の間隔を表すグラフ表示である。
【
図8】本開示の少なくとも1つの実施形態による、異なる膜の直径に対する、IOPの関数として、膜偏向を表すグラフ表示である。
【
図9】本開示の少なくとも1つの実施形態による、埋め込み型IOPセンサから反射される光線の線形アレイの図形表示である。
【
図10】実施例の実施形態において、異なる膜の間隔で、様々な膜偏向に対する様々なピーク移動を例示する。
【
図11】本開示の少なくとも1つの実施形態による、IOPを測定する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、目の内部に埋め込み可能な圧力センサの光学的探索のためのシステム、装置、および方法を記載する。光干渉は、埋め込み型センサから反射する、広帯域(たとえば、50nm以上の半値全幅帯域を有する光源)からの光、空間的コヒーレント光源(たとえば、スーパールミネッサントダイオードまたはSLD)からの光の1または複数の反射に用いられる。埋め込み型圧力センサは、剛性の基板と可撓性膜との間に形成される空洞(たとえば、低フィネス空洞)を備えていてもよい。可撓性膜の偏向は、空洞の深さ(つまり、基板と膜との間の距離)に影響を与え、IOPを示す。
【0013】
光源は、空間的コヒーレント光線のアレイ(たとえば、線形アレイ)を備え、目の角膜、硝子体液、および房水を透過してもよい広帯域光の(たとえば、回折限界に近い)小さな点を形成してもよい。一部の実施形態では、埋め込みは角膜内、または虹彩上にある。このような実施形態では、光は構造すべてを透過しえるものの、常に透過できない可能性もあり、意図した使用法ではないこともある。
【0014】
光源の出力は、目の解剖学的吸収構造(たとえば、虹彩または網膜)に入射する点が入射エネルギーによって損傷を受けないように選択されてもよい。一実施例では、システムは、点あたり約1~2マイクロワットの出力で、回折限界近くの点(たとえば、回折限界直径の150%未満の直径を有する点)を生成してもよいが、その他の出力が有利であると分かることもある。埋め込み型圧力センサに入射する点は、その後センサから反射され、目外部(たとえば、光源も含む携帯装置内)に位置する分光計によって捕獲されてもよい。分光計の測定値は下記のように、IOPを表す。
【0015】
一般に、空洞からの反射によって、視野角に基づいた基板と膜との間の距離の測定に異なる結果が生じる。たとえば、正面からの測定(法線から測定して0度の入射角度)は第1の距離をもたらし、45度の入射角度は、光線および空洞の配列によって、異なる距離が生じる。一般に、非法線で測定すると短い空洞が再現される。90度に近い入射角度は、一般に、光学的探索システムに反射を返さない。これは、目または測定装置の小さな動きによって、入射角度が変化し、したがって不正確な測定値が生じることもあるため、IOP測定システムの課題となる。
【0016】
ただし、本開示のシステムは、横方向の並列には比較的影響を受けないこともある。これは、光源から放射される光線間の間隔が、埋め込み型圧力センサ膜の幅または直径未満であってもよいためである。
【0017】
代替的に、または追加として、システムは、埋め込み型センサ上(たとえば、圧力に影響されない深さを有する中心空洞を囲む輪)に基準マーカーを提供してもよい。基準マーカーは分光計または別のセンサ(たとえば、カメラ)によって検出可能であり、それによって、基準から測定されたスペクトルを用いて、入射角度を算出することができる。基準マーカーは配列のずれに対して耐性を提供する。要約すれば、点または光線のアレイは横方向の配列のずれに対して耐性を提供し、1または複数の基準マーカーは角度配列のずれに対して耐性を提供する。
【0018】
図1は、本開示の少なくとも1つの実施形態による、実施例のIOP測定システムの断面図である。本実施形態において、システムは、目に埋め込まれた圧力センサ110と、外部装置150とを用いる。外部装置150は光源160と分光計170とを含む。センサ110は、隔膜または膜120と、基板130とを含む。隔膜または膜120と基板130とを合わせて、光空洞140が形成される。たとえば、
図1に示すように、基板130の表面の一部と膜120の表面の一部は、光空洞140を画定してもよい。一実施形態では、
図1に垂直な平面の空洞140は円形である。
【0019】
IOP測定システムは、低コヒーレンス干渉を用いて、眼圧の正確な測定値を得てもよい。広帯域を有する光は、2つの表面からの一次反射のみを考慮すればよいように、空洞140に入射してもよい。2つの表面とは、光源に最も近い基板130の表面と、光源に最も近い膜120の表面である。膜120は、圧力(たとえば、眼圧)の増加に比例して、予測通り可逆的に屈曲する。この屈曲によって、2つの表面120と130の中心(またはその他の対応点)間の距離が減少する。たとえば、膜120の表面上の点と基板130の表面上の点との間の距離は、圧力が増加すると減少し、圧力が減少すると増加する。膜120と基板130は剛性が異なるため、予測されるIOPの範囲では、基板はほとんど偏向しないか、まったく偏向しないが、膜は測定可能な偏向を示す。様々な実施形態において、基板130の剛性は膜の剛性の100倍または1000倍以上となる。動作中には、膜120はIOPに対して可撓性を示すが、基板は剛性を示す。
図1の実施形態では、まず基板130に光が入射し、反射されない光は膜120まで伝達される。別の実施形態では、まず膜120に光が入射し、反射されない光は基板130まで伝達される。このような実施形態では、センサは、
図1に示す配向から180度まで回転するように配向されてもよい。
【0020】
光ファイバーカップリングを用いる光学圧力センサが既知である。これは、光源および分光計がどちらも感圧隔膜に取り付けられていることを意味する。光源および十分なスペクトル分解能を有する分光計の大きさが、現実的な外科的埋め込みにとって大きすぎるため、この光学圧力センサは眼圧測定には現実的ではない。本開示は、自由空間を通じてセンサ110などの圧力センサを探索するためのシステムを記載する。したがって、光源および分光計は目の外部に位置する一方、圧力センサは埋め込み型であり、目内部に位置する。これによって、システムの大きさおよび出力制限が大幅に緩和される。
【0021】
図2は、本開示の少なくとも1つの実施形態による、IOP測定システムの埋め込み型センサから反射される光の例示的な分光反応200である。グラフは、IOPの異なる値に対する、例示的な低フィネスのファブリペロー干渉計からの干渉スペクトルを示す。グラフから分かるように、所定の光源、所定の空洞直径および深さ、所定の膜厚さまたは可撓性に対して、分光計によって検出されるピークの位置は、数学的方程式またはルックアップテーブルによる眼圧に予測通り関連される。
【0022】
図3は例示的なIOP測定システム300の断面図である。IOP測定システム300は、目360に埋め込まれたセンサ110と、外部装置350とを含む。外部装置350は、光線354のパターンを放射する光源352を含む。光線354は、ビームスプリッタ370と様々なその他の光学部品356(レンズ、コリメータなど)を通過し、次に目360内に埋め込まれたセンサ110に当たる。埋め込まれたセンサ110から反射される光は、光学部品356に戻って通過し、本開示の少なくとも1つの実施形態による分光計359に入る。図は、目内部のセンサ110を例示する。光源および分光計359は、目360に近接して保持されるが、目360の外部にある単一の装置350(たとえば、携帯型の棒)内に位置する。一実施形態では、センサ110は、虹彩の縁、または角膜の内面に取り付けられる。分光計359はプロセッサ380に結合される。プロセッサ380は、スペクトル測定などの出力を受領し、IOPを推定するように構成される。プロセッサ380は、任意の種類の既知の処理装置であってよく、たとえば、プログラムされた汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路、またはフィールドプログラマブルゲートアレイであってもよい。
【0023】
一実施形態では、外部装置350はまた、プロセッサ380に対する命令を保存するメモリ(不図示)を含む。メモリもまた、IOP測定値を保存してもよい。一実施形態では、外部装置350はまた、通信装置(不図示)を含む。通信装置は、任意の既知の技術を用いて、Bluetooth、ワイファイ(Wi-Fi)、または移動体通信などの片方向または双方向無線通信などの無線通信が可能である。通信装置を用いて、ソフトウェアを装置350にダウンロードしてもよく、および/または測定されたIOP値を、スマートフォンなどの別の装置に通信してもよい。一実施形態では、外部装置350はまた、測定されたIOP値を表示するためのディスプレイを含む。ディスプレイは、任意の既知のディスプレイであってもよく、たとえば発光ダイオード(有機LEDを含む)、または液晶ディスプレイ(LCD)であってもよい。このように、算出されたIOP値は、外部装置350に表示されてもよく、および/または別の装置(たとえば、スマートフォン)で表示するように通信されてもよい。
【0024】
この種類の光学感知の課題の1つは、センサと光源/分光計との間の相対的な(並進または回転)運動によって、測定が実質的に影響を受けないように、保証することである。したがって、システムは、運動が結果に影響を与える機会を最小限にするだけではなく、センサを適切に探索しているときを知る必要がありえる。センサが十分に探索されることを保証するために、一部の実施形態では、IOP測定システムは、複数の点をセンサが位置すると思われる目の表面に投影する。「点」とは、光線の断面を指す。複数の点の例には、線、点の線形アレイ、グリッド、または点の二次元(2D)アレイが含まれる。複数の点は、基準も配置できるように、センサの「能動」区域を超えて延在してもよく、それによって、分光計に特有の特徴を有する。一実施例では、センサから反射された光および投影線からの基準マーカーは、二次元センサ上に分散される。これらの基準も用いて、たとえば、傾斜誤差を校正してもよい。代替的に、膜が屈曲し、たわみ、または球体形に変形するという事実を用いて、システムは、基準がない場合にもこれらの形を位置決めの特徴とすることができる。一部の実施形態では、システムは、臨床的観点から最低レベルのIOPであっても、特徴の大きさおよび形状を識別し、膜の変位を判別するために十分な空間分解能を含む。たとえば、変位は基準変位および関連する圧力(たとえば、ゼロ圧力)に対して測定される。
【0025】
光源および分光計を患者のところまで運ぶ1つの方法は、携帯型装置(たとえば、棒)としてのシステムを有することであるが、この手法はモーションアーチファクトおよび一部の状況下でその他の不正確さが生じることもある。代替的に、光源および分光計はまた、目に対して比較的固定した位置に保持されるゴーグルまたは眼鏡に取り付けられてもよく、それによって、頭の移動によるモーションアーチファクトが顕著に減少する。
【0026】
図4は、少なくとも1つの実施形態による、目360に埋め込まれたセンサ110の断面図である。目360に入る入射光線も示される(たとえば、目360に入ってすぐに屈曲する線として描かれる)。目360は、角膜462と、虹彩463と、前房464と、水晶体465と、毛様体466と、硝子体467とを備える。
図4は、目の表示した部分に対する、圧力センサ110の実施例の配置を例示する。
【0027】
一部の実施形態では、目360内部の圧力センサ110の配置および固定は様々な基準によって選択される。第1に、センサ110が確実に配置され、目360内で時間が経過しても動かないことが確保されることが望ましいこともある。第2に、センサによって視覚が妨げられないことが望ましいため、センサは眼球の周辺部に配置されてもよい。センサが視界を曖昧にしない虹彩463後部の位置に配置されるとすると、埋め込み型圧力センサ110が光源352および分光計359に可視となるように、虹彩463の瞳孔が完全に開くことが望ましくなる。これは、患者にとって不便となることもあり、拡張反応が低い傾向にある高齢の患者にとっては問題となりえる。
【0028】
したがって、一部の実施形態では、目の隅の近くで虹彩の前に、圧力センサを配置することが好ましいこともある。圧力センサは、埋め込まれたセンサ110に、全内部反射のどの角度からも十分離れた角度で光が入るように配向される。つまり、目または埋め込み型圧力センサに入る光線が内部で反射され、したがって分光計で読み取れる眼球外部に逃れないような角度である。
図4は、埋め込み型圧力センサ110の1つの可能な配置を示す。一部の実施形態では、虹彩の収縮がセンサの機能に干渉しない領域にセンサを配置することが好ましい。
【0029】
一部の実施形態では、システムは、センサ110の正確な位置を見つけるために目360全体を線でスキャンしてもよい。代替的な実施形態では、バックグラウンドをさらに低減するために、目全体で点をスキャンしてもよい。別の実施形態では、埋め込み型圧力センサ110は、角膜462内に配置されてもよい。角膜の一般的な厚さは目の中心で約0.5mmに過ぎないものの、強膜境界に近づくと厚さは0.9mm近くまで増加する。したがって、厚さ0.3mm以下、直径1mm以下の埋め込み型装置110を角膜462内に配置することは合理的でありえる。このような手術は、低侵襲であり、埋め込みに対する光学アクセスが容易になりえる。さらに別の実施形態では、IOPの光学的および電気的読み出しの両方を統合してもよい。この事例では、可撓性膜は光学的読み出しに利用可能であり、可撓性膜はまた、ひずみゲージまたは容量性圧力読み出しと一緒に用いられてもよい。
【0030】
図5は、少なくとも1つの実施形態による、実施例の埋め込み型圧力センサ110の断面図である。
図5に示す一実施例では、埋め込み型圧力センサ110は、基板130と、基板130上に取り付けられるスペーサまたはスペーサ層530と、スペーサの上部に取り付けられるカバー520と、カバー520上に配置され、最上層を形成するベゼル540とを備える。基板130は、様々な厚さの透明または不透明な素材から作られていてもよい。一実施例では基板130はクオーツウエハであり、厚さは約0.15mmと0.35mmとの間である。一方、スペーサ530はウエハ接着クオーツであり、厚さは約3pmと100pmとの間である。カバー520は透明な層で、少なくとも部分的に反射素材(たとえば、クオーツ)であり、可撓性膜120として機能するように十分薄い。ベゼル540はシリコンまたはクオーツであり、厚さは約0.2mmであるがその他の厚さを用いてもよい。
【0031】
本実施例では、層は円形であり、スペーサ530は開口(円形開口など)を含み、それによって、空洞140が基板130、スペーサ530、およびカバー520との間に形成される。ベゼル540もまた開口(円形開口など)を有し、それによってカバーの一部が露出され、目の中の液体からの圧力(たとえば眼圧)に応じて屈曲可能な膜を形成する。一実施形態では、ベゼル540の開口はスペーサ530の開口よりも面積が小さく、ベゼル540の開口はスペーサ530の開口と十分に位置合わせされているため、ベゼル540の開口の断面積は、完全にスペーサ530の開口の断面積に重なる。
【0032】
装置の長期安定性を確保するために、空洞140内の気体が全く周囲に拡散しないことを確保することが望ましい。気密シーリングをしっかり実施することで、漏れは顕著に低減される。さらに、(主に小さな窒素および酸素分子を備える)空気の代わりに、大きな気体分子を備えるSF6またはC3F8などの不活性気体を用いてもよい。これらの大きい分子は、はるかにゆっくりと拡散しえる。分子量または大きさは、空洞140が完全に気密シーリングされている場合はセンサの寿命にはあまり関連はなく、空洞140のシーリングが良好でない場合はセンサの寿命に関連する。
【0033】
本手法の課題の1つは、光信号の良好な信号対雑音比(SNR)を得ることである。一部の実施形態では、目内部のバックグラウンド反射によってSNRが低減する。本開示では、複数の技術を用いてこの問題を緩和可能である。これらの技術は、単独で、または組み合わせて用いてもよい。第1に、一部の実施形態では、低コヒーレンス光源を用いて、互いから数百ミクロン以上離れた反射が、受領したスペクトル内の干渉縞に影響するコヒーレントアーチファクトを生成しないようにする。第2に、非常に厳しく焦点を合わせられた光線のアレイを用いてもよく、その結果として、光線の広がりによって、焦点のレイリー範囲内ではない領域で縞模様の視認が低減されてもよい。また、基板とその周辺の目の環境との屈折率の差が、基板と穴内の気体との屈折率の差よりも大幅に小さくなるように設計されてもよい。同様に、膜とその周辺の目の環境との屈折率の差が、基板と穴内の気体との屈折率の差よりも大幅に小さくなるように設計されてもよい。これによって、望ましくない接合面での反射の大きさが減少する。
【0034】
図6は、少なくとも1つの実施形態による、空洞の厚さの関数として、異なる光の波長に対する隣接するスペクトルピーク間の間隔を表示するグラフ表示600である。本グラフは、低費用の埋め込み型センサ、光源、および分光計の組み合わせに必要な動作空間を決定するために、システムの性能のシミュレーションから収集された。
【0035】
グラフは、空洞の深さ(スペーサの厚さまたは「間隔」と同一)および光源の中心波長の関数として、分光計で測定されたインターフェログラムでの隣接するピーク間の間隔を示す。異なる曲線はそれぞれ、異なる中心波長を表す。この結果から、2つの明確なスペクトルピークが獲得できるように約30nmの帯域を有する安価な光源が望ましい場合、特に、長い中心波長(たとえば、900nmの中心波長を有する近赤外線)を用いる場合は、数ミクロンの空洞の深さで十分であることが示唆される。一部の実施形態では、膜偏向したがってIOPを推定するために、1つのスペクトルピークのみが必要である。これらの事例では、本図で示すスペーサよりも薄いスペーサでさえ用いることができる。
図10は、実施例の実施形態において、異なる膜間隔の異なる偏向で、ピークが移動する様子を例示する。
【0036】
スペクトル全体は、膜偏向に関する情報を提供してもよい。これは、ピーク分離(広帯域光源に有用)またはピーク位置(狭帯域光源に有用)の両方を含む。一部の実施形態では、両方を一緒に用いてもよい。どちらを選択するかは、予測される偏向のダイナミックレンジによって変わる。単一のピークのみを獲得するように光源が狭い場合は、偏向が増加すると、隣接するピークは最終的に偏向のない事例のピークを置き換えるように近づく。2つの事例のスナップショットを撮った場合は、2つの事例を区別することは困難なこともある。ただし、ピークの幅もわずかに修正されるため、2つの事例は区別可能である。
【0037】
図7は、少なくとも1つの実施形態による、空洞の厚さの関数として、膜の異なる偏向に対する隣接するスペクトルピーク間の間隔を表示するグラフ表示700である。グラフは、間隔(つまり、スペーサの厚さまたは空洞の深さ)の関数として、ピークがどの程度移動するかを示す。本グラフは、IOPに駆動される約10nmの膜変位に対して、10pm未満の間隔を有する埋め込み型圧力センサが、約1nmを超えるスペクトルピーク間隔を実現するために必要であることを示す。100nm以上のスペクトルピーク間隔を実現するためには、10ミクロン未満の間隔または空洞の深さ、および1000nmつまり1μmの膜偏向を有することが必要であってもよい。この組み合わせは、以下に記載する理由により、必ずしも望ましいわけではない。
【0038】
図8は、少なくとも1つの実施形態による、IOPの関数として、異なる膜直径に対する隣接する膜偏向を表示するグラフ表示800である。グラフは、異なる直径で所定の膜厚さに対して、異なるIOP値でのSiO
2(クオーツ)膜に対して期待される変位を示す。グラフから分かるように、10nmの偏向は0.2mm以上の膜直径では容易に実現可能である。一方、500nmの偏向は0.3mm以上の膜直径でのみ実現可能となり、0.4mm以上の膜直径では0~15mmHgのIOP値でのみ実現可能となる。この大きさは、人の目に埋め込むには必ずしも望ましくない大きさの装置が必要となりえる。1mmHgの眼圧ごとに1nmの偏向という伝達関数の実施形態では、0.2mmの膜直径は2.5pm厚の膜に十分であり、0.2mmよりわずかに小さい膜直径(たとえば、約0.19mm)でも良好に動作する。同様に、中心での最大膜偏向が約500nmで、10nm/mmHgの感度の場合、約0.3mmの直径が十分でありえる。
【0039】
図9は、光線354の線形アレイによって照明される埋め込み型眼圧センサ110の上面図である。表示した光線のアレイの各点は、光線の1つの反射を表す。図示するように、センサ110は、膜120と、1または複数の基準マーカー920を含む。光線354は本開示の少なくとも1つの実施形態による埋め込み型IOPセンサ110から反射する。本実施例では、センサは集中光線354の線形、またはID、アレイによって照明される。線が膜120の中心からずれていても、膜120に当たる点の位置は、変調スペクトルを有する点の数から、および/または線形アレイの線に沿った基準マーカー920間の視距離から(また、代替的にまたは追加として、膜の中心の上に当たる点および膜の中心の下に当たる点から)判定可能である。基準マーカー920は、ベゼル上に位置する、たとえばリング状の基準であってもよい。
【0040】
効果的に反射分光分析を記録するために(
図2に示すように)約100nm帯域の広帯域光源を用いてもよい。たとえば、スーパールミネッサントダイオード(SLD)を光源として用いてもよい。これは、従来の広帯域光源(たとえばタングステン-ハロゲン電球)にくらべて、以下の複数の有利点がある。高空間コヒーレンス(たとえば、厳しい回折限界焦点に光を集中させる能力)、高効率かつ低消費電力、および約100pmまで補正された表面からの反射の干渉を観測するために十分な時間的コヒーレンスなどの有利点がある。
【0041】
このような光源はまた、照明光のパルスを発する能力を提供することができる。それによって、たとえば分光計カメラチップが露出する1ミリ秒の中の1マイクロ秒など、わずかな各スペクトルグラムの撮像時間の間のみセンサを照明することが可能となる。このような様式で、システムは、運動アーチファクトによって破損されていない反射光干渉の「スナップショット」を得ることができる。これによってまた、カメラチップの取得率の要件が緩和される(それによって、システムの費用および複雑性が対応して削減されてもよい)。
【0042】
提案したこの解決法には複数の有利点がある。第1に、埋め込まれた外科的装置は非常に簡潔である。本装置は電子機器(受動または能動)を有さない。したがって、埋め込みは非常に小型となり、高精度または高い信頼性を有する。第2に、複雑な読み出しシステムは携帯/ゴーグル装置に配置される。これによって、修理/アップグレードが容易に行えるようになる。さらに、システムは段階的な読み出しシステムを有し、(たとえば、±1~2mmHgの)適度な精度の読み出しが家庭で行え、(より高価な電子機器および/またはより時間のかかる測定を必要とする)高精度な読み出しを診療所で行うことができる。第3に、装置と通信する必要がなく、また外部無線または無線周波(RF)電力で装置に電力を供給する必要がない。
【0043】
光学的読み出しの課題の1つは、測定がセンサと光源/分光計との間の相対運動(並進または回転)によって影響を受けないことを確保することである。これは、システムが、運動が結果に影響を与える機会を最小限にするだけではなく、センサを適切に探索しているときを知る必要がありえることを意味する。たとえば、単一の焦点の光線で膜を探索するとき、膜偏向はその区域にわたって均一ではないため、中心からの焦点の逸脱(携帯による配列のずれ)によって測定誤差が生じる。携帯型測定の観点では、この限界が抑制となる。
【0044】
上記の限界を克服するために、本開示のIOP測定システムは、点のアレイ(線形またはIDアレイ)を目に埋め込まれたセンサに投射する。点のアレイはセンサの「能動」区域(膜)を超えて延在し、膜の断面に作ると、システム内部のプロセッサは、線の長さ/位置を判断し、(
図9に示すように)読み出し信号を圧力測定値に正確に変換することができる。膜の直径を超える点のアレイの長さが長くなると、(点のアレイに平行して)その寸法に追加の寸法公差が生じる。
【0045】
能動区域に当たる線の長さを決定するために、システムは、分光計上、およびセンサの周囲に位置する特性信号を有する基準を用いてもよい。センサからの反射光および投影線からの基準は、2Dセンサ上にわたって分光的に分散されてもよい。この手法によって、システムは、変調された反射スペクトルを有する点の位置を推定することができ、その結果として、膜偏向を生じる眼圧を適切に推定する。点の線形アレイは、点のアレイに垂直な方向で膜の直径に沿ってほぼ任意の地点で測定することができる。それによって、その寸法での寸法公差が増加する。また、基準を用いて、埋め込みの傾斜を補償してもよい。代替的に、システムは、変調スペクトルを有する点の数を用いて、前述のように基準を参照せず、スペクトル輪郭の非対称を用いずに、膜上の位置を判断してもよい。全体として、埋め込まれたセンサを点のアレイで探索することによって(単一の点とは対照的に)、(たとえば、横方向の面積の増加に基づいて)、携帯装置が配置され、眼圧測定を行うことができる容積がはるかに多くなる。
【0046】
代替的な実施形態では、システムは目全体にわたって線をスキャンし、センサの正確な位置を見つける。代替的な実施形態では、バックグラウンドをさらに減らすために、目全体にわたって点をスキャンしてもよい。
【0047】
図11は、一実施形態によるIOPを測定する方法1100を例示する。本方法1100は、
図1および3に開示する実施例のシステムなどのIOPを測定するシステムを利用する。本システムは、埋め込み型センサと、目の外部にある装置とを用いる。本装置は、光線のアレイを放射する光源を含む。本方法によれば、ステップ1110では、外部測定装置などの光源から複数の光線が放射される。一実施形態では、少なくとも2つの光線が、本開示に記載するセンサなどの埋め込まれたセンサに当たり、反射される。ステップ1120では、少なくとも2つの光線からの反射が受領される。反射は、光源を含む外部装置によって受領されてもよい。ステップ1130では、反射を処理して目の眼圧を推定する。
【0048】
したがって、IOP測定システムは、目に触れずに読み取り可能な埋め込み型圧力センサを提供することによって、位置合わせまたは配置誤差に比較的影響されず、広範な位置合わせおよび配置にわたって一貫した測定値をもたらす光源および分光計を用いて、当技術分野において長い間望まれてきたことを実現することが分かる。
【0049】
一般に、本開示に開示する方法、機器、および/またはシステムに関連するユーザデータの任意の生成、保存、処理、および/または交換は、ユーザデータの機密性および整合性を重要事項として扱うことに一致して、各種のプライバシー設定、セキュリティプロトコル、および広く行われているデータ規則に順守するように構成される。たとえば、本機器および/または本システムは、情報機密管理を実施して、多数の標準および/またはその他の契約を順守するモジュールを含んでいてもよい。一部の実施形態では、モジュールはプライバシー設定の選択をユーザから受領し、選択されたプライバシー設定を順守するために制御を実施する。別の実施形態では、モジュールは、機密と考えられるデータを特定し、当技術分野において適切、および周知である方法にしたがってデータを暗号化し、データを偽名化するために機密のコードと置き換えるなどの方法で、選択されたプライバシー設定およびデータ保全要件および規則を確実に順守する。
【0050】
前述の実施例および実施形態には、多数の変形が可能である。前述の仕様、実施例およびデータは、請求項で画定するIOP測定システムの例示的な実施形態の構造および使用の完全な説明を提供する。請求項に記載の主題の様々な実施形態をある程度詳細に記載し、また、1または複数の個別の実施形態を参照して記載してきたが、当業者は、請求項に記載の主題の精神および範囲から逸脱せずに、開示した実施形態に多数の修正を行いえるであろう。詳細な変化または構造に対する変更は、以下の請求項で画定する主題の基本的要素から逸脱せずに行われてもよい。