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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】アブソリュートエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20231017BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G01D5/347 110B
G01D5/244 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021571283
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2021001529
(87)【国際公開番号】W WO2021145460
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/001526
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】赤間 俊一
(72)【発明者】
【氏名】福田 詩郎
(72)【発明者】
【氏名】村山 恭規
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-74411(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055752(WO,A1)
【文献】特開昭63-289417(JP,A)
【文献】特開2011-120444(JP,A)
【文献】特開2005-207864(JP,A)
【文献】国際公開第2014/207846(WO,A1)
【文献】特開平7-40269(JP,A)
【文献】特開2017-181235(JP,A)
【文献】特開2013-35530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/38
H02K 11/00-11/40
H02P 6/00-6/32
B25J 1/00-21/02
B60K 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の係合突起部を有する回転体と前記複数の係合突起部のうち一つの係合突起部に係合する係合ピンとを有するブレーキ機構と、
機械角360度の範囲内に周方向に等間隔に配置され、AB相信号を生成する複数のAB相信号被検出部と、
Z相信号の立ち上がりを生成するZ相信号立ち上がり被検出部及びZ相信号の立ち下がりを生成するZ相信号立ち下がり被検出部をそれぞれ有し、前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部とが周方向に交互に位置するように、機械角360度の範囲内に周方向に配置される複数のZ相信号被検出部と、
前記AB相信号と前記Z相信号とをコンピュータに出力可能な出力部と、
を有し、
計測対象部材の機械角360度以内の回転角度の取得に用いられるアブソリュートエンコーダであって、
前記AB相信号被検出部と前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部と前記回転体とは、一体に回転し、
前記回転体の係合突起部は、前記回転体の回転範囲を、複数の規制範囲に分割するように設けられていて、
前記複数のZ相信号被検出部は、
周方向に隣り合う前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との間に前記AB相信号被検出部が位置するように配置されるとともに、
前記複数の規制範囲のそれぞれに、前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部を少なくとも一組含むとともに、周方向に隣り合う前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との周方向の間隔、周方向に隣り合う前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち上がり被検出部との周方向の間隔、及び、周方向に隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との周方向の間隔のうち少なくとも一つの間隔が前記複数の規制範囲においてそれぞれ異なるように配置されている、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載のアブソリュートエンコーダにおいて、
前記複数のZ相信号被検出部における前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部は、
周方向に隣り合う前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部によって規定される周方向の角度範囲のうち前記係合突起部が位置する角度範囲における前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との周方向の間隔が、前記係合突起部が位置する他の角度範囲における間隔の少なくとも一つと同じになるように、配置されている、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアブソリュートエンコーダにおいて、
前記回転体は、
前記機械角360度の範囲内に、前記係合突起部を少なくとも2つ有する、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のアブソリュートエンコーダにおいて、
前記回転体は、
前記機械角360度の範囲内に、前記係合突起部を6つ有する、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のアブソリュートエンコーダにおいて、
前記Z相信号被検出部は、
前記複数の規制範囲のそれぞれにおいて、
前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との周方向の間隔が全て異なり、且つ前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との周方向の間隔における中央値と最も小さい間隔との差、及び前記中央値と最も大きい間隔との差が前記中央値の半分よりも小さいZ相信号被検出部と、
前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち上がり被検出部との間隔が全て異なり、且つ複数の前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち上がり被検出部との間隔における中央値と最も小さい間隔との差、及び前記中央値と最も大きい間隔との差が前記中央値の半分よりも小さいZ相信号被検出部と、
前記隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔が全て異なり、且つ複数の前記隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔における中央値と最も小さい間隔との差、及び前記中央値と最も大きい間隔との差が前記中央値の半分よりも小さいZ相信号被検出部と、のうち少なくとも一つのZ相信号被検出部を含む、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項6】
請求項5に記載のアブソリュートエンコーダにおいて、
前記Z相信号被検出部における前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部は、
前記複数の規制範囲のそれぞれにおいて、
前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔が全て異なる場合、複数の前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔における最も小さい間隔と最も大きい間隔との差が前記中央値の半分よりも小さくなるように配置され、
前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち上がり被検出部との間隔が全て異なる場合、複数の前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち上がり被検出部との間隔における最も小さい間隔と最も大きい間隔との差が前記中央値の半分よりも小さくなるように配置され、
前記隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔が全て異なる場合、複数の前記隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔における最も小さい間隔と最も大きい間隔との差が前記中央値の半分よりも小さくなるように配置される、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のアブソリュートエンコーダにおいて、
前記回転体と一体に回転する回転板を有し、
前記回転板は、前記複数のAB相信号被検出部、前記複数のZ相信号立ち上がり被検出部及び前記複数のZ相信号立ち下がり被検出部を有する、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項8】
請求項1から6に記載のアブソリュートエンコーダにおいて、
前記回転体は、前記複数のAB相信号被検出部、前記複数のZ相信号立ち上がり被検出部及び前記複数のZ相信号立ち下がり被検出部を有する、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項9】
請求項8に記載のアブソリュートエンコーダにおいて、
前記Z相信号被検出部が設けられた前記回転体の変形による前記Z相信号の異常を検出する異常検出部を備える、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項10】
請求項9に記載のアブソリュートエンコーダにおいて、
モータに設けられ、
前記異常検出部は、前記Z相信号の異常を前記モータの電気角に基づいて検出する、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のアブソリュートエンコーダにおいて、
前記AB相信号被検出部を検出するAB相信号検出部と、
前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部を検出するZ相信号検出部と、を有し、
前記AB相信号は、前記AB相信号被検出部が前記AB相信号検出部によって検出されることにより生成され、
前記Z相信号は、前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部が前記Z相信号検出部によって検出されることにより生成され、
複数の前記Z相信号における信号波形の立ち上がりから立ち下がりまでの間隔、隣り合う信号波形の立ち上がりから立ち上がりまでの間隔、隣り合う信号波形の立ち下がりから立ち下がりまでの間隔または隣り合う信号波形の立ち下がりから立ち上がりまでの間隔で生成される前記AB相信号の数から前記AB相信号のエラーを訂正するエラー訂正部を備える、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項12】
請求項11に記載のアブソリュートエンコーダにおいて、
前記ブレーキ機構によって前記回転体の回転の範囲が制限されている場合、前記回転体が回転可能な範囲内において時計回りと反時計回りとに複数回、回転している際に前記Z相信号検出部が前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部を検出する、
アブソリュートエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブソリュートエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
インクリメンタル信号を出力する光学式のA相信号とB相信号の合成信号を出力するAB相信号センサ及びアブソリュート信号を出力する磁気式のZ相信号センサの信号を処理することによって、例えばモータ等の回転軸の絶対回転角(機械角360度)を取得するエンコーダと、ブレーキ機構とを備えたモータシステムが提案されている。特許文献1に開示されているモータシステムは、前記モータの回転角を検出するための前記AB相信号センサの被検出部材である信号検出パターンと、1回転以内の回転角の絶対位置を検出するためのZ相信号センサの被検出部材である信号検出用の複数の永久磁石及び複数のホールセンサとを有する。
【0003】
前記AB相信号センサの信号検出パターンは、前記モータの回転軸に固定されたディスク上に設けられている。前記Z相信号センサの信号検出用の前記複数の永久磁石は、周方向長さが等しく、且つ、前記歯車型ブレーキホイールの周方向に並んで設けられている。さらに、前記Z相信号センサの信号検出用の前記複数のホールセンサは、前記永久磁石上に固定されている。前記Z相信号センサは、複数の磁気センサを有する。前記Z相信号センサでは、前記モータの回転軸が1回転する間の回転角は、前記永久磁石と前記ホールセンサとによって24の区間に分割されている。前記エンコーダは、同一回転方向における前記24の区間のうち1つの区間内のAB相信号のパルスと位相をカウントすることによって、前記モータの回転角を決定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-181235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、交流のブラシレスモータでは、電源投入後も回転角度を維持するために、前記ブラシレスモータの電気角に関する情報が必要である。上述のAB相信号センサ及びZ相信号センサを有するエンコーダ及びブレーキ機構を有するモータシステムは、電源の投入後にブレーキ機構によるロックが解除された際、前記モータの回転角度を保持するために前記モータの電気角に関する情報をコンピュータに出力することができる。前記モータシステムは、電源が投入された際に、前記エンコーダのZ相信号センサによって、前記永久磁石の磁極に関する情報と前記ホールセンサの信号を前記コンピュータに出力する。前記コンピュータは、前記モータの回転角を含む区間を算出する。前記コンピュータは、算出した前記区間から前記モータの粗い電気角を算出する。
【0006】
このように、特許文献1に開示されるエンコーダのZ相信号センサは、ブレーキ機構によって回転範囲が規制されている前記モータの電気角を算出するために、前記複数の永久磁石、前記複数の磁気センサ、前記複数のホールセンサ及び前記AB相信号センサのICチップとは異なる専用のICチップを必要とする。そのため、Z相信号センサの構造が複雑になる。さらに、前記エンコーダは、光学式の前記AB相信号センサの信号パターンが設けられた前記ディスクと、磁気式の前記Z相信号センサの永久磁石及び複数のホールセンサが設けられる前記歯車型ブレーキホイールとを必要とする。そのため、前記エンコーダの構造が複雑になる。そこで、ブレーキ機構によって計測対象部材の回転範囲が制限されていても、簡素な構造によって計測対象部材の回転角度を算出可能な信号を出力するアブソリュートエンコーダが望まれている。
【0007】
本発明は、ブレーキ機構によって計測対象部材の回転範囲が制限されていても、簡素な構造によって計測対象部材の回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成することができるアブソリュートエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ブレーキ機構によって計測対象部材の回転範囲が制限されていても、簡素な構造によって計測対象部材の回転角度を算出可能な信号を出力するアブソリュートエンコーダの構成について検討した。鋭意検討の結果、本発明者は、以下のような構成に想到した。
【0009】
本発明の一実施形態に係るアブソリュートエンコーダは、複数の係合突起部を有する回転体と前記複数の係合突起部のうち一つの係合突起部に係合する係合ピンとを有するブレーキ機構と、機械角360度以内に周方向に等間隔に配置され、AB相信号を生成する複数のAB相信号被検出部と、Z相信号の立ち上がりを生成するZ相信号立ち上がり被検出部及びZ相信号の立ち下がりを生成するZ相信号立ち下がり被検出部をそれぞれ有し、前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部とが周方向に交互に位置するように、機械角360度の範囲内に周方向に配置される複数のZ相信号被検出部と、前記AB相信号と前記Z相信号とをコンピュータに出力可能な出力部と、を有し、計測対象部材の機械角360度以内の回転角度の取得に用いられるアブソリュートエンコーダである。
【0010】
前記AB相信号被検出部と前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部と前記回転体とは、一体に回転する。前記回転体の係合突起部は、前記回転体の回転範囲を、複数の規制範囲に分割するように設けられてる。前記複数のZ相信号被検出部は、周方向に隣り合う前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との間に前記AB相信号被検出部が位置するように配置されるとともに、前記複数の規制範囲のそれぞれに、前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部を少なくとも一組含むとともに、周方向に隣り合う前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との間隔、周方向に隣り合う前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち上がり被検出部との間隔、及び、周方向に隣り合う前記Z相信号立ち下がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との間隔のうち少なくとも一つの間隔が前記複数の規制範囲においてそれぞれ異なるように配置されている。
【0011】
上述の構成により、前記ブレーキ機構によって前記アブソリュートエンコーダの回転範囲が制限されている場合、前記アブソリュートエンコーダは、前記回転範囲内において計測対象部材であるモータ等によって回転することにより、AB相信号及びZ相信号を生成する。前記アブソリュートエンコーダは、前記回転の範囲内において生成したAB相信号とZ相信号とを前記コンピュータに出力する。
【0012】
前記アブソリュートエンコーダは、前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との組み合わせによって定まる間隔が前記ブレーキ機構によって分割される複数の規制範囲のそれぞれで異なるように前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部とが配置されている。前記コンピュータは、予め記憶された前記複数の規制範囲毎の前記間隔から取得したZ相信号の前記間隔と前記間隔におけるAB相信号のパルス数とによって、前記規制範囲を特定するとともに、前記規制範囲内における機械角を特定する。これにより、前記ブレーキ機構によって計測対象部材の回転範囲が制限されていても、簡素な構造によって前記計測対象部材の機械角を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成することができる。
【0013】
他の観点によれば、本発明のアブソリュートエンコーダは、以下の構成を含むことが好ましい。前記複数のZ相信号被検出部における前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部は、周方向に隣り合う前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部によって規定される周方向の角度範囲のうち一つの前記係合突起部が位置する角度範囲における前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との周方向の間隔が、他の前記係合突起部が位置する他の角度範囲における間隔の少なくとも一つと同じになるように、配置されている。すなわち、前記複数のZ相信号被検出部における前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部は、周方向に隣り合う前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部の間に前記係合突起部が配置されるような角度範囲のうち、角度範囲の幅(前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ちがり被検出部の間隔)が他の角度範囲の幅と等しくなるような角度範囲が1つ以上あるように、配置されている。
【0014】
上述の構成により、前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との組み合わせによって規定される周方向の間隔が全て異なるように前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部を配置する必要がない。つまり、前記係合突起部の周方向両方に位置する前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との周方向の間隔は、他の前記係合突起部の周方向両方に位置する前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との周方向の間隔の少なくとも一つと同じになるように、配置してもよい。これにより、前記Z相信号被検出部によって生成される前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との組み合わせによって規定される周方向の間隔のばらつきを小さくできる。従って、機械角360度内の回転角度を取得する各処理の平準化が図られ、前記計測対象部材の回転角度を特定するコンピュータの処理のピーク負荷を低減することができる。一般にリアルタイム制御を実行するための前記コンピュータはピーク負荷時にもリアルタイム性を失わないような性能が要求される。よって、ピーク負荷を低減することでコンピュータの要求性能を簡素化できる。これにより、前記ブレーキ機構によって前記計測対象部材の回転範囲が制限されていても、簡素な構造によって前記計測対象部材の回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成することができる。
【0015】
他の観点によれば、本発明のアブソリュートエンコーダは、以下の構成を含むことが好ましい。前記回転体は、機械角360度内に前記係合突起部を少なくとも2つ有する。
【0016】
上述の構成により、前記ブレーキ機構によって計測対象部材の回転角度が前記少なくとも2つの前記係合突起部によって制限されている場合、前記計測対象部材は、機械角180度未満の回転角度に制限される。前記アブソリュートエンコーダは、前記アブソリュートエンコーダの電源がオフの場合に前記計測対象部材が回転されても、機械角180度未満の範囲において回転角度を特定するためのAB相信号とZ相信号とを前記コンピュータに出力する。前記コンピュータは、前記ブレーキ機構によって前記計測対象部材の回転角度が180度未満であることを前提とできるので、前記計測対象部材の回転角度を一義的に算出することができる。これにより、簡素な構造によって前記計測対象部材の回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成することができる。
【0017】
他の観点によれば、本発明のアブソリュートエンコーダは、以下の構成を含むことが好ましい。前記回転体は、機械角360度内に前記係合突起部を6つ有する。
【0018】
上述の構成により、前記ブレーキ機構によって計測対象部材の回転角度が6つの前記係合突起部によって制限されている場合、前記計測対象部材は、係合突起部のうち任意の2つの係合突起部が係合ピンに接触しない状態であっても機械角180度未満の回転角度に制限される。前記コンピュータは、前記ブレーキ機構によって前記計測対象部材の回転角度が180度未満であることを前提とできるので、前記計測対象部材の回転角度を一義的に算出することができる。これにより、簡素な構造によって前記計測対象部材の回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成することができる。
【0019】
他の観点によれば、本発明のアブソリュートエンコーダは、以下の構成を含むことが好ましい。前記Z相信号被検出部は、前記複数の規制範囲のそれぞれにおいて、前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔が全て異なり、且つ前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔における中央値と最も小さい間隔との差、及び前記中央値と最も大きい間隔との差が前記中央値の半分よりも小さいZ相信号被検出部と、前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち上がり被検出部との間隔が全て異なり、且つ前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち上がり被検出部との間隔における中央値と最も小さい間隔との差、及び前記中央値と最も大きい間隔との差が前記中央値の半分よりも小さいZ相信号被検出部と、前記隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔が全て異なり、且つ前記隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔における中央値と最も小さい間隔との差、及び前記中央値と最も大きい間隔との差が前記中央値の半分よりも小さいZ相信号被検出部と、のうち少なくとも一つのZ相信号被検出部を含む。
【0020】
上述の構成では、前記Z相信号被検出部は、前記ブレーキ機構の隣り合う前記係合突起部によって制限される前記回転体の回転角度の範囲の全てにおいて、前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との組み合わせによって規定される間隔のうち少なくとも一つの間隔が所定の範囲内のばらつきにおいて全て異なる。
【0021】
前記複数の規制範囲のそれぞれにおいて、前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔が全て異なる場合、前記コンピュータは、一つの前記Z相信号の立ち上がりと立ち下がりの両方において割り込み処理を発生させることで、前記アブソリュートエンコーダの1回転中における絶対位置の検出機会を増やすことができる。一方、前記複数の規制範囲のそれぞれにおいて、前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち上がり被検出部との間隔が全て異なる場合、または、前記隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔が全て異なる場合、前記コンピュータは、一つの前記Z相信号の立ち上がりもしくは立ち下がりの一方に割り込み処理を発生させることで計算負荷を抑えることができる。
【0022】
前記アブソリュートエンコーダは、隣り合う前記Z相信号の信号波形における任意の間隔において、機械角360度以内の間隔における中央値と一番小さい間隔との差及び前記中央値と一番大きい間隔との差が両方とも前記中央値の半分より小さくなるように構成されている。このため、前記アブソリュートエンコーダは、一定の回転速度において、前記中央値を基準として、所定のばらつきの範囲内に収まるように前記Z相信号を生成させる。つまり、前記アブソリュートエンコーダは、前記Z相信号を所定時間以上の時間間隔によって生成する。従って、前記アブソリュートエンコーダに接続される前記コンピュータは、前記Z相信号を取得する度に発生する絶対回転角を算出する割り込み処理の時間間隔が所定時間以上になり、機械角360度内の回転角度の位置を取得する各処理の平準化を図ることができる。
【0023】
これにより、前記コンピュータの処理のピーク負荷を低減して前記コンピュータのハードウェアリソースの設計自由度を向上させることができる。モータ制御のようなリアルタイム制御に供されるコンピュータはピーク負荷時にもリアルタイム性を失わないことが求められる。よって、前記アブソリュートエンコーダからの信号処理のピーク負荷の低減によって前記コンピュータの最大処理性能を抑制することができる。また、同じ処理性能のコンピュータである場合、前記アブソリュートエンコーダからの信号処理のピーク負荷が低減されれば、前記コンピュータが他の処理を実行することができる。
【0024】
上述の構造よって、前記アブソリュートエンコーダは、前記計測対象部材の回転角度を取得する処理を簡易にすることができる。これにより、前記ブレーキ機構によって前記計測対象部材の回転角度の範囲が制限されていても、簡素な構造によって前記計測対象部材の回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成することができる。
【0025】
他の観点によれば、本発明のアブソリュートエンコーダは、以下の構成を含むことが好ましい。前記Z相信号被検出部における前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部は、前記複数の規制範囲のそれぞれにおいて、前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔が全て異なる場合、前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔における最も小さい間隔と最も大きい間隔との差が前記中央値の半分よりも小さくなるように配置される。
【0026】
また、前記Z相信号被検出部における前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部は、前記複数の規制範囲のそれぞれにおいて、前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち上がり被検出部との間隔が全て異なる場合、前記隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち上がり被検出部との間隔における最も小さい間隔と最も大きい間隔との差が前記中央値の半分よりも小さくなるように配置される。
【0027】
また、前記Z相信号被検出部における前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部は、前記複数の規制範囲のそれぞれにおいて、前記隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔が全て異なる場合、前記隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔における最も小さい間隔と最も大きい間隔との差が前記中央値の半分よりも小さくなるように配置される。
【0028】
また、前記Z相信号被検出部における前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部は、前記ブレーキ機構の隣り合う前記係合部によって制限される前記回転体の回転角度の範囲の全てにおいて、複数の前記Z相信号において、隣り合う信号波形の立ち下がりから立ち上がりまでの間隔が全て異なる場合、隣り合う信号波形の立ち下がりから立ち上がりまでの間隔における最も小さい間隔と最も大きい間隔との差が前記中央値の半分よりも小さくなるように配置される。
【0029】
上述の構成では、前記アブソリュートエンコーダは、一定の回転速度において、前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部との組み合わせによって規定される間隔が前記中央値を基準として所定のばらつきの範囲内に収まるように前記Z相信号立ち上がり被検出部と前記Z相信号立ち下がり被検出部とが配置される。これにより、前記ブレーキ機構によって前記計測対象部材の回転可能な範囲が制限されていても、簡素な構造によって前記計測対象部材の回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成することができる。また、前記コンピュータの処理負荷を低減して前記コンピュータのハードウェアリソースの設計自由度を向上することができる。
【0030】
他の観点によれば、本発明のアブソリュートエンコーダは、以下の構成を含むことが好ましい。前記アブソリュートエンコーダは、前記回転体と一体に回転する回転板を有する。前記回転板は、前記ブレーキ機構と一体に回転するような一つ以上の回転板として構成される。すなわち前記回転板は、前記複数のAB相信号被検出部、前記複数のZ相信号立ち上がり被検出部及び前記複数のZ相信号立ち下がり被検出部を有する。
【0031】
前記AB相信号被検出部と前記Z相信号被検出部とは、共に前記回転板に設けられている。従って、前記AB相信号被検出部と前記Z相信号被検出部とは、位相が固定された状態において一体に前記計測対象部材または前記回転体に設けられる。これにより、前記ブレーキ機構によって前記計測対象部材の回転可能な範囲が制限されていても、簡素な構造によって前記計測対象部材の回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成することができる。
【0032】
他の観点によれば、本発明のアブソリュートエンコーダは、以下の構成を含むことが好ましい。前記ブレーキ機構として構成される回転体は、前記複数のAB相信号被検出部及び前記複数のZ相信号被検出部を有する。すなわち前記複数のAB相信号被検出部及び前記複数のZ相信号被検出部とブレーキ機構が同一の回転体として供される。
【0033】
上述の構成では、前記AB相信号被検出部と前記Z相信号被検出部とは、位相が固定された状態において一体に前記ブレーキ機構の前記回転体に設けられる。これにより、前記ブレーキ機構によって前記計測対象部材の回転可能な範囲が制限されていても、簡素な構造によって前記計測対象部材の回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成することができる。
【0034】
他の観点によれば、本発明のアブソリュートエンコーダは、以下の構成を含むことが好ましい。前記Z相信号被検出部が設けられた前記回転体の変形、前記Z相信号被検出部の劣化及び汚損等による前記Z相信号の異常を検出するためのハードウェアとして構成される異常検出部を備える。
【0035】
他の観点によれば、本発明のアブソリュートエンコーダは、以下の構成を含むことが好ましい。前記アブソリュートエンコーダは、モータに設けられる。前記異常検出部は、前記Z相信号の異常を前記モータの電気角に基づいて検出する。例えば、前記コンピュータは、前記アブソリュートエンコーダと一体に回転する前記モータのホール素子、前記ブレーキ機構の前記係合突起部で反応する近接センサにより、ソフトウェアによって前記アブソリュートエンコーダの異常を検出するよりも速やかに異常を検出することができる。よって、前記コンピュータの処理負荷を低減して前記コンピュータのハードウェアリソースの設計自由度を向上することができる。
【0036】
他の観点によれば、本発明のアブソリュートエンコーダは、前記AB相信号被検出部を検出するAB相信号検出部と、前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部を検出するZ相信号検出部と、を有する。前記AB相信号は、前記AB相信号被検出部が前記AB相信号検出部によって検出されることにより生成され、前記Z相信号は、前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部が前記Z相信号検出部によって検出されることにより生成される。この構成から、複数の前記Z相信号における信号波形の立ち上がりから立ち下がりまでの間隔、隣り合う信号波形の立ち上がりから立ち上がりまでの間隔、隣り合う信号波形の立ち下がりから立ち下がりまでの間隔または隣り合う前記信号波形の立ち下がりから立ち上がりまでの間隔において生成される前記AB相信号のパルス数から前記AB相信号のエラーを訂正するエラー訂正機能を実現できる。
【0037】
前記アブソリュートエンコーダは、前記AB相信号の一部が検出できないエラーが生じても、前記Z相信号被検出部における前記Z相信号立ち上がり被検出部から前記Z相信号立ち下がり被検出部までの角度範囲の差異を利用することにより、エラーが発生した前記AB相信号を容易に推測することができる。これにより、簡素な構造によって前記計測対象部材の回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成するとともに、前記コンピュータの処理負荷を低減してコンピュータのハードウェアリソースの設計自由度を向上することができる。
【0038】
他の観点によれば、本発明のアブソリュートエンコーダは、以下の構成を含むことが好ましい。前記アブソリュートエンコーダは、前記ブレーキ機構によって前記回転体の規制範囲が制限されている場合、前記回転体が回転可能な範囲内において時計回りと反時計回りとに複数回、往復回転している際に前記Z相信号検出部が前記Z相信号立ち上がり被検出部及び前記Z相信号立ち下がり被検出部を検出する制御装置を備える。
【0039】
上述の構成では、前記アブソリュートエンコーダは、前記規制範囲が制限されている前記回転体を時計回りと反時計回りに複数回、往復回転させている間に少なくとも一つのZ相信号とAB相信号とが生成される。前記コンピュータは、アブソリュートエンコーダから前記Z相信号における信号波形の立ち下がりから立ち上がりまでの組み合わせによる間隔における前記AB相信号のパルス数を確実に取得することができる。これにより、前記ブレーキ機構によって前記計測対象部材の回転可能な範囲が制限されていても、簡素な構造によって前記計測対象部材の回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成することができる。
【0040】
他の観点によれば、本発明のアブソリュートエンコーダは、以下の構成を含むことが好ましい。前記アブソリュートエンコーダは、電源がオフになる直前の機械角の値と決められた原点からの回転回数の値を不揮発性メモリに保存し、電源がオンになった直後に前記不揮発性メモリから保存したそれらの値を読み出す装置を備える。また前記アブソリュートエンコーダは、前記電源がオフの間、前記ブレーキ機構により回転を規制する機能を備える。
【0041】
上述の構成では、前記アブソリュートエンコーダは、前記電源がオフの間に回転体の回転が規制されることから、決められた原点からの回転回数を保持することができる。これにより、簡素な構造によって前記計測対象部材の回転角度と回転回数を算出可能なマルチターンアブソリュートエンコーダを構成することができる。
【0042】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施例のみを定義する目的で使用されるのであって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。
【0043】
本明細書で使用される「及び/または」は、一つまたは複数の関連して列挙された構成物のすべての組み合わせを含む。
【0044】
本明細書において、「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、記載された特徴、工程、要素、成分、及び/または、それらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/または、それらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0045】
本明細書において、「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」、及び/または、それらの等価物は、広義の意味で使用され、“直接的及び間接的な”取り付け、接続及び結合の両方を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的または間接的な接続または結合を含むことができる。
【0046】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0047】
一般的に使用される辞書に定義された用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0048】
本発明の説明においては、いくつもの技術および工程が開示されていると理解される。これらの各々は、個別の利益を有し、他に開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。
【0049】
したがって、明確にするために、本発明の説明では、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。しかしながら、本明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明の範囲内であることを理解して読まれるべきである。
【0050】
本明細書では、本発明に係るアブソリュートエンコーダの実施形態について説明する。
【0051】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。
【0052】
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0053】
[多関節ロボットアーム]
本明細書において、多関節ロボットアームとは、複数のリンクを連結する関節部を複数有するロボットアームを意味する。前記多関節ロボットアームは、垂直多関節ロボットアームを含む。具体的には、前記垂直多関節ロボットアームは、リンクが1自由度の回転関節で根元から先端まで直列に連結されたシリアルリンク機構のロボットアームである。前記垂直多関節ロボットアームは、複数の回転関節部を有する。
【0054】
[アブソリュートエンコーダ]
本明細書において、アブソリュートエンコーダとは、モータや回転軸における機械的な回転位置を決められた原点からの回転角度として検出し、コンピュータで処理が可能な信号に変換する装置である。前記アブソリュートエンコーダのうち、前記回転角度とともに、決められた原点からの回転回数を検出可能なものをマルチターンアブソリュートエンコーダと呼ぶ。前記アブソリュートエンコーダは一回転中の機械角を検出する。一方、前記マルチターンアブソリュートエンコーダは、主電源が切られたときに回転回数を保持する必要がある。前記マルチターンアブソリュートエンコーダには、主電源と別に電池などにより構成されるバックアップ電源により前記主電源がオフになっても前記バックアップ電源から供給される電力で被検出体の動作を監視するマルチターンアブソリュートエンコーダ、前記バックアップ電源を持たずに前記主電源がオフになっても回転運動で発電したエネルギーで被検出体の動作を監視するマルチターンアブソリュートエンコーダ、高減速比の減速機を介することで回転回数をアブソリュートエンコーダで算出するマルチターンアブソリュートエンコーダ、前記主電源が切られる直前の回転回数を不揮発性メモリに保持し、前記主電源がオフの間はは機械的に回転軸をロックしてしまうマルチターンアブソリュートエンコーダ、などがある。
【0055】
[AB相信号、Z相信号]
本明細書において、AB相信号とは、モータや回転軸の回転量に比例して生成されるパルス信号である。前記AB相信号は、A相信号検出部が出力するA相信号とB相信号検出部が出力するB相信号とを合成した信号である。Z相信号とは、原点を設定するために生成されるパルス信号である。
【0056】
[AB相信号被検出部]
本明細書において、前記AB相信号被検出部とは、前記AB相信号検出部が検出することができる印(例えばスリット、反射面、磁石等)である。前記AB相信号検出部は、前記AB相信号被検出部を検出する度にパルス信号であるAB相信号を生成する。前記AB相信号被検出部は、1トラックの印において異なる位置に設けられた前記A相信号検出部と前記B相信号検出部とによって検出される構成と、2トラックの印のうち、一方のトラックに設けられた前記A相信号検出部、他方のトラックに設けられた前記B相信号検出部よって検出される構成とを含む。
【0057】
[Z相信号立ち上がり被検出部、Z相信号立ち下がり被検出部]
本明細書において、Z相信号立ち上がり被検出部及びZ相信号立ち下がり被検出部は、前記Z相信号検出部が検出することができる印(例えばスリット、反射面、磁石等)である。前記Z相信号検出部は、前記Z相信号立ち上がり被検出部を検出するとZ相信号をオン状態にする。また、前記Z相信号検出部は、前記Z相信号立ち下がり被検出部を検出すると前記Z相信号をオフ状態にする。つまり、前記Z相信号検出部は、前記Z相信号立ち上がり被検出部を検出すると、前記Z相信号立ち下がり被検出部を検出するまで継続してZ相信号を生成する。
【0058】
[機械角、電気角]
本明細書において、機械角とは、回転板の回転角度である。前記機械角がゼロの場合、例えば、前記回転板のZ相信号被検出部は、Z相信号検出部の検出位置に位置付けられている。電気角とは、前記機械角からステータオフセット角とロータオフセット角とを除いた回転角度に、極対数を乗じた角度である。前記ステータオフセット角は、例えば前記回転体を軸線に沿って見た場合において、前記Z相信号検出部とステータのU相コイル中心とのずれ角である。前記ロータオフセット角は、例えば前記回転体を軸線に沿って見た場合において、アブソリュートエンコーダの原点である前記Z相信号被検出部を生成する印とN極磁石中心とのずれ角である。
【0059】
[AB相信号被検出部の間隔、隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔]
本明細書において、AB相信号被検出部の間隔とは、前記AB相信号検出部が前記AB相信号被検出部の印を検出した際の機械角から隣り合う前記AB相信号被検出部の印を検出した際の機械角までの回転角度を意味する。隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔とは、前記Z相信号検出部が前記Z相信号立ち上がり被検出部を検出した際の機械角から隣り合う前記Z相信号立ち下がり被検出部を検出した際の機械角までの回転角度を意味する。また、隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部とZ相信号立ち上がり被検出部との間隔とは、前記Z相信号検出部が前記Z相信号立ち上がり被検出部を検出した際の機械角から隣り合う前記Z相信号立ち上がり被検出部を検出した際の機械角までの回転角度を意味する。また、隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部とZ相信号立ち下がり被検出部との間隔とは、前記Z相信号検出部が前記Z相信号立ち下がり被検出部を検出した際の機械角から隣り合う前記Z相信号立ち下がり被検出部を検出した際の機械角までの回転角度を意味する。また、隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部とZ相信号立ち上がり被検出部との間隔とは、前記Z相信号検出部が前記Z相信号立ち下がり被検出部を検出した際の機械角から隣り合う前記Z相信号立ち上がり被検出部を検出した際の機械角までの回転角度を意味する。なお、間隔は、AB相信号検出部がAB相信号の立ち上がりを出力した瞬間、及びZ相信号検出部がZ相信号の立ち上がり及び立ち下がりを出力した瞬間を基準として規定される。
【0060】
[異常]
本明細書において、異常とは、正常でない状態であり、例えば、前記AB相信号被検出部又は前記Z相信号被検出部が前記回転体の回転速度に応じた時間間隔でAB相信号またはZ相信号を生成していない状態をいう。
【発明の効果】
【0061】
本発明の一実施形態によれば、前記ブレーキ機構によって前記計測対象部材の回転可能な範囲が制限されていても、簡素な構造によって前記計測対象部材の回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成するアブソリュートエンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本発明の実施形態1に係るアブソリュートエンコーダの全体構成図を示す。
図2】本発明の実施形態1に係るアブソリュートエンコーダの平面図を示す。
図3】本発明の実施形態1に係るブレーキ機構の平面図を示す。
図4】本発明の実施形態1に係るブレーキ機構の側面図を示す。
図5】本発明の実施形態1及び実施形態3に係るAB相信号被検出部とZ相信号被検出部と回転体との位置関係を表す平面図を示す。
図6】本発明の実施形態1に係るAB相信号の信号波形とZ相信号の信号波形を表す模式図を示す。
図7】本発明の実施形態1に係るZ相信号の間隔におけるAB相信号のパルス数の関係を表すグラフを示す。
図8】発明の実施形態1に係るブレーキ機構により回転範囲が制限されてる状態で回転角度を検出する際の作動状態を表す平面図を示す。
図9】本発明の実施形態1に係るブレーキ機構により回転範囲が制限されてる状態で検出するAB相信号とZ相信号との関係を表す模式図を示す。
図10】本発明の実施形態2に係る多関節ロボットアーム装置の模式図を示す。
図11】本発明の実施形態2に係る多関節ロボットアームに係る基端部側モータユニットの模式図を示す。
図12】本発明の実施形態2に係る多関節ロボットアーム装置の制御ブロック図を示す。
図13】本発明の実施形態3に係るAB相信号の信号波形とZ相信号の信号波形を表す模式図を示す。
図14】本発明の実施形態4に係るアブソリュートエンコーダによるエラー訂正の制御態様を表すフローチャートを示す。
図15】本発明の実施形態5に係るアクチュエータによるアブソリュートエンコーダの異常検知の制御態様を表すフローチャートを示す。
図16】本発明の実施形態6に係るAB相信号の信号波形とZ相信号の信号波形を表す模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下で、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分には同一の符号を付して、その同一部分の説明は繰り返さない。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0064】
[実施形態1]
<アブソリュートエンコーダの全体構成>
図1から図4を用いて本発明の実施形態1に係るアブソリュートエンコーダ1の全体構成について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係るアブソリュートエンコーダ1の全体構成を表す模式図である。図2は、本発明の実施形態1に係るアブソリュートエンコーダ1を表す平面図である。図3は、本発明の実施形態1に係るブレーキ機構8を表す平面図である。図4は、本発明の実施形態1に係るブレーキ機構8を表す側面図である。
【0065】
図1に示すように、アブソリュートエンコーダ1は、計測対象部材である回転軸において、決められた原点を基準とした場合の絶対的な回転角度に関する情報(本実施例においてAB相信号のパルス数)を検出し、その検出結果を出力するロータリーエンコーダである。アブソリュートエンコーダ1は、例えば、反射型の光学式アブソリュートエンコーダである。アブソリュートエンコーダ1は、計測対象部材の機械角360度以内の回転角度を検出するためのAB相信号と計測対象部材の機械角の原点を検出するためのZ相信号とを生成する。
【0066】
図1図2に示すように、アブソリュートエンコーダ1は、AB相信号を生成するためのAB相信号被検出部2と、Z相信号を生成するためのZ相信号被検出部3と、AB相信号被検出部2を検出するAB相信号検出部4と、Z相信号被検出部3を検出するZ相信号検出部5と、計測対象部材であるモータ27(図4参照)を制御している図示しないコンピュータにAB相信号及びZ相信号を出力可能な出力部6と、ブレーキ機構8とを備える。本実施形態において、AB相信号被検出部2及びZ相信号被検出部3は、モータ27の回転軸27a(図4参照)と一体に回転する回転板7上(図4参照)に設けられている。また、回転板7は、モータ27の回転軸27aが機械角360度回転することで360度回転する。すなわち、回転板7の回転角度とモータ27の回転軸27aの回転角度とは一致する。以下の実施形態において、モータ27の機械角を、単に機械角とする。
【0067】
AB相信号被検出部2は、AB相信号検出部4が検出可能な印である。AB相信号被検出部2は、A相信号被検出部とB相信号被検出部とを含む。本実施形態において、AB相信号被検出部2には、回転板7上に略矩形状の反射面と非反射面が交互に周方向に配置されている。AB相信号被検出部2は、AB相信号検出部4が出力した検出光を反射面によって反射し、非反射面では吸収する。複数のAB相信号被検出部2は、円環状且つ放射状に配置されている。また、複数のAB相信号被検出部2は、それぞれ周方向の幅が等しい。また、複数のAB相信号被検出部2は、隣り合うAB相信号被検出部2の位置に応じた機械角によって定まる角度範囲が等しくなるように並んでいる。すなわち、複数のAB相信号被検出部2は、隣り合うAB相信号被検出部2の周方向の間隔が等しくなるように並んでいる。このように、複数のAB相信号被検出部2は、周方向に等しい幅を有する複数の反射面が周方向に等間隔に並んだ円環状のAB相信号用コードホイールCW1を構成している。複数のAB相信号被検出部2によって構成されるAB相信号用コードホイールCW1は、反射面と非反射面とが周方向に交互に並んでいる。また、AB相信号用コードホイールCW1の中心は、回転板7の回転軸線Pと一致している。
【0068】
AB相信号検出部4は、例えば、LED発光素子等からなる図示しない投光素子とフォトダイオード等からなる図示しない受光素子とを含む。AB相信号検出部4は、例えば、モータ27の回転軸27aと連動して回転しない部分に支持されている。AB相信号検出部4は、AB相信号用コードホイールCW1に投光可能で且つAB相信号用コードホイールCW1によって反射された反射光を受光可能な位置に設けられている。投光素子の検出光は、AB相信号被検出部2である反射面上で反射する一方、非反射面では吸収される。AB相信号検出部4は、投光素子から出力された検出光が反射面上で反射して受光素子によって受光されている間、AB相信号を出力する。AB相信号検出部4は、投光素子から出力された検出光が非反射面によって吸収されて受光素子によって受光されていない間、AB相信号を出力しない。AB相信号検出部4は、A相信号を出力するA相信号検出部4aと、B相信号を出力するB相信号検出部4bとを含む。
【0069】
AB相信号被検出部2及びAB相信号検出部4によって生成されるA相信号とB相信号とは、それぞれ、信号波形の立ち上がりから立ち下がりまでの間隔である機械角の角度範囲が全て同じである。また、前記A相信号と前記B相信号において、隣り合う信号波形の立ち上がりから立ちがりまでの間隔は全て同じである。
【0070】
一方、A相信号を出力するA相信号検出部4aとB相信号を出力するB相信号検出部4bとは、AB相信号被検出部2に対する位置が異なる。このため、A相信号とB相信号とは、信号波形の位相がずれている。これにより、A相信号とB相信号とは、モータ27の回転軸27aの回転方向によって信号波形の位相差が異なる。よって、アブソリュートエンコーダ1は、モータ27の回転軸27aの回転方向を判別する情報としてA相信号に対するB相信号の位相差を出力することができる。AB相信号検出部4は、A相信号検出部4aが出力するA相信号とB相信号検出部4bが出力するB相信号とを合成したAB相信号を出力する。
【0071】
複数のAB相信号被検出部2における反射面の周方向の幅は、AB相信号検出部4がAB相信号を出力している間に回転するモータ27の機械角の角度範囲を規定している。また、複数のAB相信号被検出部2において周方向に隣り合う反射面の間隔は、AB相信号検出部4が次のAB相信号を出力するまでの間に回転するモータ27の機械角の角度範囲を規定している。AB相信号検出部4は、複数のAB相信号被検出部2における反射面の周方向の幅と周方向に隣り合う反射面の間隔とに応じたにAB相信号を出力する。このように、複数のAB相信号被検出部2及びAB相信号検出部4によってAB相信号を生成することができる。生成されるAB相信号は、それぞれ、同じ信号波形、且つ同じ信号の間隔である。
【0072】
Z相信号被検出部3は、Z相信号検出部5が検出可能な印である。本実施形態において、Z相信号被検出部3は、回転板7上に複数設けられた略矩形状の反射面である。複数のZ相信号被検出部3は、円環状に配置されている。また、複数のZ相信号被検出部3は、それぞれ周方向に等しい幅を有する反射面を含む様々な幅の反射面によって構成されている。また、複数のZ相信号被検出部3は、それぞれの機械角によって定まる角度範囲である周方向の間隔が異なるように周方向に配置されている。複数のZ相信号被検出部3における前記間隔の一部は等しくてもよい。このように、周方向に等しい幅を有する反射面を含む様々な幅の反射面が周方向に等しい間隔を含む様々な間隔に並ぶことにより、複数のZ相信号被検出部3によって円環状のZ相信号用コードホイールCW2が構成される。複数のZ相信号被検出部3によって構成されるZ相信号用コードホイールCW2は、反射面(図2の薄墨部分)と非反射面とが周方向に交互に並んでいる。また、Z相信号用コードホイールCW2の中心は、回転板7の回転軸線Pと一致する。つまり、複数のZ相信号被検出部3と複数のAB相信号被検出部2とは、回転板7上において同心円状に配置されている。これにより、複数のZ相信号被検出部3は、複数のAB相信号被検出部2に対して位相が固定されている。
【0073】
Z相信号検出部5は、例えば、LED発光素子等からなる投光素子とフォトダイオード等からなる受光素子とを含む。Z相信号検出部5は、モータ27の回転軸27aと連動して回転しない部分に支持されている。また、Z相信号検出部5は、Z相信号用コードホイールCW2に投光可能で且つZ相信号用コードホイールCW2によって反射された反射光を受光可能な位置に設けられている。投光素子の検出光は、Z相信号被検出部3である反射面上で反射する一方、非反射面では吸収される。Z相信号検出部5は、投光素子から出力された検出光が反射面上で反射して受光素子によって受光されている間、Z相信号を出力する。Z相信号検出部5は、投光素子から出力された検出光が非反射面によって吸収されて受光素子によって受光されていない間、Z相信号を出力しない。
【0074】
複数のZ相信号被検出部3は、Z相信号の立ち上がりを生成するZ相信号立ち上がり被検出部3aと、Z相信号の立ち下がりを生成するZ相信号立ち下がり被検出部3bとをそれぞれ有する。回転板7が回転板7の回転軸線P回りに回転している場合において、Z相信号立ち上がり被検出部3aは、反射面において、検出光が非反射面によって吸収されてZ相信号検出部5の受光素子によって受光されていない状態から、検出光が反射面上で反射して受光素子によって受光される状態に切り替わる部分である。つまり、Z相信号立ち上がり被検出部3aは、回転板7の回転軸線Pの軸線方向から見て、反射面において回転方向の前方に位置するエッジである。回転板7が回転板7の回転軸線P回りに回転している場合において、Z相信号立ち下がり被検出部3bは、反射面において、検出光が反射面上で反射してZ相信号検出部5の受光素子によって受光されている状態から、検出光が非反射面によって吸収されて受光素子によって受光されていない状態に切り替わる部分である。つまり、Z相信号立ち下がり被検出部3bは、回転板7の回転軸線Pの軸線方向から見て、反射面において回転方向の後方に位置するエッジである。図2には、回転板7が回転軸線Pの軸線方向からみて時計回りに回転する場合におけるZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとを示している。
【0075】
隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとの間隔は、Z相信号立ち上がり被検出部3aの位置に対応する機械角とZ相信号立ち下がり被検出部3bの位置に対応する機械角とによって規定される機械角の角度範囲である(図2のθ1参照)。隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部3aからZ相信号立ち下がり被検出部3bまでの周方向の間隔によって、Z相信号の立ち上がりから立ち下がりまでの機械角の角度範囲が規定される。また、隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部3bからZ相信号立ち上がり被検出部3aまでの周方向の間隔によって、Z相信号の立ち下がりから次のZ相信号の立ち上がりまでの機械角の角度範囲が規定される。よって、隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部3aからZ相信号立ち下がり被検出部3bまでの周方向の間隔は、反射面の周方向の幅を示している。また、隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部3bからZ相信号立ち上がり被検出部3aまでの周方向の間隔は、周方向に隣り合う反射面の間隔を示している。
【0076】
Z相信号検出部5は、Z相信号立ち上がり被検出部3aを検出するとZ相信号の出力を開始する。つまり、Z相信号検出部5は、投光素子から出力された検出光が反射面上で反射して受光素子に受光されるとZ相信号を出力する。Z相信号検出部5は、Z相信号立ち下がり被検出部3bを検出するとZ相信号の出力を停止する。つまり、Z相信号検出部5は、投光素子から出力された検出光が非反射面によって吸収され受光素子に受光されなくなるとZ相信号の出力を停止する。Z相信号検出部5は、反射面の周方向の幅と周方向に隣り合う反射面の間隔とに応じてZ相信号を出力する。このように、複数のZ相信号被検出部3及びZ相信号検出部5は、Z相信号を生成することができる。
【0077】
複数のZ相信号被検出部3は、周方向に隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとの間にAB相信号被検出部2が位置するように配置される。これにより、Z相信号検出部5がZ相信号立ち上がり被検出部3aを検出してZ相信号の立ち上がりを出力してから、Z相信号検出部5がZ相信号立ち下がり被検出部3bを検出してZ相信号の立ち下がりを出力するまでの間に、AB相信号被検出部2及びAB相信号検出部4によってAB相信号が生成される。つまり、アブソリュートエンコーダ1は、Z相信号が立ち上がってから立ち下がるまでの間に回転するモータ27の機械角の角度範囲に関する情報をAB相信号のパルス数で出力する。
【0078】
出力部6は、AB相信号被検出部2及びAB相信号検出部4が生成したAB相信号とZ相信号被検出部3及びZ相信号検出部5が生成したZ相信号とを、モータ27を制御しているコンピュータである駆動装置31(図12参照)に出力する。、駆動装置31は、モータ27の回転軸27aにおいて、決められた原点を基準とする機械角360度以内の回転角度に関する情報を取得することができる。また、駆動装置31は、Z相信号被検出部3が生成したZ相信号からモータ27の回転軸27aの機械角360度以内の原点に関する情報を取得することができる。
【0079】
(ブレーキ機構)
図3図4とに示すように、ブレーキ機構8は、モータ27に電流が供給されていない場合、又はモータ27がトルクを出力していない場合に、モータ27の回転軸27aの回転を制限する。ブレーキ機構8は、回転体9と、係合ピン10と、ソレノイド10aとを備える。
【0080】
回転体9は、モータ27の回転軸27aと一体で回転する。回転体9は、略円板状の部材である。回転体9は、回転軸27aに設けられている。回転体9は、その中心が回転軸27aの回転軸線Pと一致した状態において回転軸27aに接続されている。つまり、回転体9は、回転軸27aの回転軸線P回りに回転軸27aと一体に回転する。
【0081】
回転体9は、その外縁部に、径方向外方に向かって突出した少なくとも2つの係合突起部9aを有する。複数の係合突起部9aは、回転体9の周方向に等間隔に配置されている。本実施形態において、回転体9は、60度毎に周方向に6つの係合突起部9aを有する。これにより、回転体9は、6つの係合突起部9aにより周方向に第1セクションS1から第6セクションS6の順に分割されている。
【0082】
係合ピン10は、回転体9の回転を規制する部材である。係合ピン10は、モータ27のハウジング又はモータ27が有する減速機25(図11参照)のハウジング等、回転体9と連動して回転しない部分に支持されている。係合ピン10は、軸線が回転体9の回転軸線Pと平行になるように配置されている。また、係合ピン10は、軸線の軸線方向に移動可能に構成されている。
【0083】
係合ピン10の位置は、回転体9を回転軸線Pの軸線方向に対して直交する方向に見て、係合ピン10が係合突起部9aに重なる位置に位置する規制位置(二点鎖線図)と、係合ピン10が係合突起部9aに重ならない位置に位置する開放位置(実線図)とに切り替えられる。係合ピン10には、ばね等の弾性体10bによって規制位置に保持されるように係合ピンの軸線方向に力が加えられている。係合ピン10は、前記規制位置に位置する場合、周方向に隣り合う係合突起部9aによって分割される第1セクションS1から第6セクションS6のいずれか一つのセクション内に位置付けられる。回転体9において周方向に隣り合う係合突起部9aの間隔は、係合ピン10が規制位置に位置している状態において、係合ピン10が隣り合う係合突起部9aの間において周方向に相対移動可能な周方向の距離を有する。係合ピン10は、回転体9の回転により、セクションを構成する一方の係合突起部9aと周方向に隣り合う他方の係合突起部9aとのうちいずれかの係合突起部9aに係合する。
【0084】
ソレノイド10aは、係合ピン10を移動させるアクチュエータである。ソレノイド10aは、モータ27のハウジング又は減速機25のハウジング等、回転体9と連動して回転しない部分に支持されている。ソレノイド10aは、通電されたON状態において規制位置に保持されている係合ピン10を開放位置に移動させる。
【0085】
このように構成されるブレーキ機構8は、ソレノイド10aによって係合ピン10の位置を前記開放位置から前記規制位置に切り替えることで、回転軸27aと一体に回転する回転体9の回転範囲を規制する。ブレーキ機構8は、回転体9の回転範囲を、セクションを構成する一方の係合突起部9aに接触する位置から周方向に隣り合う他方の係合突起部9aに接触する位置までの角度範囲に制限する。つまり、ブレーキ機構8は、回転体9の回転範囲を、第1セクションS1から第6セクションS6のうちいずれか一つのセクションの角度範囲に規制する。各セクションの角度範囲である規制範囲は、係合ピン10がセクションを構成する一方の係合突起部9aと周方向に隣り合う他方の係合突起部9aとに接触した際のそれぞれのモータ27の機械角によって規定される。ブレーキ機構8は、回転体9の回転範囲を規制することにより、回転体9が接続されているモータ27の回転軸27aの回転範囲を各セクションによる規制範囲に規制する。
【0086】
回転体9の回転軸線Pに垂直な面には、複数のAB相信号被検出部2と複数のZ相信号被検出部3とを有する回転板7が設けられている。回転板7は、複数のAB相信号被検出部2によって構成されるAB相信号用コードホイールCW1及び複数のZ相信号被検出部3によって構成されるZ相信号用コードホイールCW2のそれぞれの回転軸線Pが回転体9の回転軸線Pと一致するように回転体9に固定されている。つまり、AB相信号被検出部2、Z相信号被検出部3、回転板7及び回転体9は、モータ27の回転軸27aの回転軸線Pを中心として一体で回転する。また、複数のAB相信号被検出部2は、回転体9の周方向に沿って周方向に等間隔に配置されている。複数のZ相信号被検出部3は、回転体9の周方向に沿って周方向に等間隔を含む様々な間隔で配置されている。
【0087】
(回転体とアブソリュートエンコーダの位置関係)
次に、図5図6とを用いて、アブソリュートエンコーダ1のAB相信号被検出部2及びZ相信号被検出部3とブレーキ機構8の回転体9との位置関係について詳細に説明する。図5は、本発明の実施形態に係るアブソリュートエンコーダ1と回転体9との位置関係を表す平面図である。図6は、本発明の実施形態に係るAB相信号の信号波形とZ相信号の信号波形を表す模式図である。
【0088】
複数のAB相信号被検出部2は、回転体9の回転軸線Pの軸線方向から見て回転方向の前方のエッジがZ相信号立ち上がり被検出部(例えば、Z相信号立ち上がり被検出部3Aa)と一致するように配置されている。つまり、アブソリュートエンコーダ1は、Z相信号の立ち上がりとAB相信号の立ち上がりとを同じタイミングで生成する。
【0089】
図5に示すように、複数のAB相信号被検出部2は、回転体9の周方向に沿って機械角360度の範囲に等間隔に配置されている。回転体9の回転範囲を規制している第1セクションS1、第2セクションS2、第3セクションS3、第4セクションS4、第5セクションS5及び第6セクションS6による規制範囲内には、それぞれ等しい数のAB相信号被検出部2が位置付けられている。
【0090】
複数のZ相信号被検出部3は、回転体9の周方向に沿って機械角360度の範囲に等間隔を含む様々な間隔で配置されている。複数のZ相信号被検出部3は、規制範囲である各セクションに少なくとも一つ位置付けられる。本実施形態において、第1セクションS1には、第1Z相信号被検出部3Aが位置付けられている。第2セクションS2には、第2Z相信号被検出部3Bが位置付けられている。第3セクション3Sには、第3Z相信号被検出部3Cが位置付けられている。第4セクションS4には、第4Z相信号被検出部3Dが位置付けられている。第5セクションS5には、第5Z相信号被検出部3Eが位置付けられている。第6セクションS6には、第6Z相信号被検出部3Fが位置付けられている。
【0091】
また、各セクションには、少なくとも一組のZ相信号立ち上がり被検出部3a及びZ相信号立ち下がり被検出部3bが位置している。第1セクションS1には、第1Z相信号被検出部3Aを構成する第1Z相信号立ち上がり被検出部3Aaと第1Z相信号立ち下がり被検出部3Abとが周方向に隣り合って位置している。第1Z相信号立ち上がり被検出部3Aaと第1Z相信号立ち下がり被検出部3Abとは、周方向に第1間隔Ga1を有するように配置される。第1間隔Ga1は、第1Z相信号立ち上がり被検出部3Aaの位置に対応する機械角と第1Z相信号立ち下がり被検出部3Abの位置に対応する機械角とによって規定される機械角の角度範囲である。
【0092】
第2セクションS2には、第2Z相信号被検出部3Bを構成する第2Z相信号立ち上がり被検出部3Baと第2Z相信号立ち下がり被検出部3Bbとが周方向に隣り合って位置している。第2Z相信号立ち上がり被検出部3Baと第2Z相信号立ち下がり被検出部3Bbとは、周方向に第2間隔Gb1を有するように配置される。第2間隔Gb1は、第2Z相信号立ち上がり被検出部3Baの位置に対応する機械角と第2Z相信号立ち下がり被検出部3Bbの位置に対応する機械角とによって規定される機械角の角度範囲である。
【0093】
第3セクションS3には、第3Z相信号被検出部3Cを構成する第3Z相信号立ち上がり被検出部3Caと第3Z相信号立ち下がり被検出部3Cbとが周方向に隣り合って位置している。第3Z相信号立ち上がり被検出部3Caと第3Z相信号立ち下がり被検出部3Cbとは、周方向に第3間隔Gc1を有するように配置される。第3間隔Gc1は、第3Z相信号立ち上がり被検出部3Caの位置に対応する機械角と第3Z相信号立ち下がり被検出部3Cbの位置に対応する機械角とによって規定される機械角の角度範囲である。
【0094】
第4セクションS4には、第4Z相信号被検出部3Dを構成する第4Z相信号立ち上がり被検出部3Daと第4Z相信号立ち下がり被検出部3Dbとが周方向に隣り合って位置している。第4Z相信号立ち上がり被検出部3Daと第4Z相信号立ち下がり被検出部3Dbとは、周方向に第4間隔Gd1を有するように配置される。第4間隔Gd1は、第4Z相信号立ち上がり被検出部3Daの位置に対応する機械角と第4Z相信号立ち下がり被検出部3Dbの位置に対応する機械角とによって規定される機械角の角度範囲である。
【0095】
第5セクションS5には、第5Z相信号被検出部3Eを構成する第5Z相信号立ち上がり被検出部3Eaと第5Z相信号立ち下がり被検出部3Ebとが周方向に隣り合って位置している。第5Z相信号立ち上がり被検出部3Eaと第5Z相信号立ち下がり被検出部3Ebとは、周方向に第5間隔Ge1を有するように配置される。第5間隔Ge1は、第5Z相信号立ち上がり被検出部3Eaの位置に対応する機械角と第5Z相信号立ち下がり被検出部3Ebの位置に対応する機械角とによって規定される機械角の角度範囲である。
【0096】
第6セクションS6には、第6Z相信号被検出部3Fを構成する第6Z相信号立ち上がり被検出部3Faと第6Z相信号立ち下がり被検出部3Fbとが周方向に隣り合って位置している。第6Z相信号立ち上がり被検出部3Faと第6Z相信号立ち下がり被検出部3Fbとは、周方向に第6間隔Gf1を有するように配置される。第6間隔Gf1は、第6Z相信号立ち上がり被検出部3Faの位置に対応する機械角と第6Z相信号立ち下がり被検出部3Fbの位置に対応する機械角とによって規定される機械角の角度範囲である。
【0097】
第1Z相信号被検出部3Aの第1間隔Ga1、第2Z相信号被検出部3Bの第2間隔Gb1、第3Z相信号被検出部3Cの第3間隔Gc1、第4Z相信号被検出部3Dの第4間隔Gd1、第5Z相信号被検出部3Eの第5間隔Ge1及び第6Z相信号被検出部3Fの第6間隔Gf1は、それぞれ異なる角度範囲に規定されている。第1間隔Ga1内には、P1個のAB相信号被検出部2が位置する。第2間隔Gb1内には、P2個のAB相信号被検出部2が位置する。第3間隔Gc1内には、P3個のAB相信号被検出部2が位置する。第4間隔Gd1内には、P4個のAB相信号被検出部2が位置する。第5間隔Ge1内には、P5個のAB相信号被検出部2が位置する。第6間隔Gf1内には、P6個のAB相信号被検出部2が位置する。各間隔内には、それぞれ異なる数のAB相信号被検出部2が位置する。従って、各セクション内のZ相信号被検出部3によって生成されるZ相信号の立ち上がりから立下りまでの角度範囲においてAB相信号被検出部2によって生成されるAB相信号のパルス数は、セクション毎に異なる。
【0098】
第1Z相信号立ち下がり被検出部3Abと第2Z相信号立ち上がり被検出部3Baとは、周方向に隣り合って位置している。第1Z相信号立ち下がり被検出部3Abの位置に対応する機械角と第2Z相信号立ち上がり被検出部3Baの位置に対応する機械角とによって規定される角度範囲には、第1セクションS1と第2セクションS2とを区画している係合突起部9aが位置している。第1Z相信号立ち下がり被検出部3Abと第2Z相信号立ち上がり被検出部3Baとは、周方向に第1-2間隔Gbを有するように配置される。
【0099】
同様に、第2Z相信号立ち下がり被検出部3Bbの機械角と第3Z相信号立ち上がり被検出部3Caの機械角とによって規定される角度範囲には、第2セクションS2と第3セクションS3とを区画している係合突起部9aが位置している。第2Z相信号立ち下がり被検出部3Bbと第3Z相信号立ち上がり被検出部3Caとは、周方向に第2-3間隔Gbcを有するように配置される。
【0100】
第3Z相信号立ち下がり被検出部3Cbの機械角と第4Z相信号立ち上がり被検出部3Daの機械角とによって規定される角度範囲には、第3セクションS3と第4セクションS4とを区画している係合突起部9aが位置している。第3Z相信号立ち下がり被検出部3Cbと第4Z相信号立ち上がり被検出部3Daとは、周方向に第3-4間隔Gcdを有するように配置される。
【0101】
第4Z相信号立ち下がり被検出部3Dbの機械角と第5Z相信号立ち上がり被検出部3Eaの機械角とによって規定される角度範囲には、第4セクションS4と第5セクションS5とを区画している係合突起部9aが位置している。第Z相信号立ち下がり被検出部3Dbと第5Z相信号立ち上がり被検出部3Eaとは、周方向に第4-5間隔Gdeを有するように配置される。
【0102】
第5Z相信号立ち下がり被検出部3Ebの機械角と第6Z相信号立ち上がり被検出部3Faの機械角とによって規定される角度範囲には、第5セクションS5と第6セクションS6とを区画している係合突起部9aが位置している。第5Z相信号立ち下がり被検出部3Ebと第6Z相信号立ち上がり被検出部3Faとは、周方向に第5-6間隔Gefを有するように配置される。
【0103】
第6Z相信号立ち下がり被検出部3Fbの機械角と第1Z相信号立ち上がり被検出部3Aaの機械角とによって規定される角度範囲には、第6セクションS6と第1セクションS1とを区画している係合突起部9aが位置している。第6Z相信号立ち下がり被検出部3Fbと第1Z相信号立ち上がり被検出部3Aaとは、周方向に第6-1間隔Gfaを有するように配置される。
【0104】
第1-2間隔Gb、第2-3間隔Gbc、第3-4間隔Gcd、第4-5間隔Gde、第5-6間隔Gef及び第6-1間隔Gfaの角度範囲のいずれかに係合ピン10が位置する場合、回転体9は、係合突起部9aと係合ピン10との接触により各角度範囲内の全域に亘って周方向に回転できない。従って、第1-2間隔Gb、第2-3間隔Gbc、第3-4間隔Gcd、第4-5間隔Gde、第5-6間隔Gef及び第6-1間隔Gfaの角度範囲は、機械角の特定に用いることが出来ない。
【0105】
図6に示すように、アブソリュートエンコータ1は、回転体9の第1セクションS1の規制範囲内において第1Z相信号被検出部3Aによって第1Z相信号Z1を生成する。合わせて、アブソリュートエンコーダ1は、第1間隔Ga1内においてP1個のAB相信号被検出部2によってP1個のAB相信号を生成する。アブソリュートエンコーダ1は、第2セクションS2の範囲内において第2Z相信号被検出部3Bによって第2Z相信号Z2を生成する。合わせて、アブソリュートエンコーダ1は、第2間隔Gb1内においてP2個のAB相信号被検出部2によってP2個のAB相信号を生成する。アブソリュートエンコーダ1は、第3セクションS3の範囲内において第3Z相信号被検出部3Cによって第3Z相信号Z3を生成する。合わせて、アブソリュートエンコーダ1は、第3間隔Gc1内においてP3個のAB相信号被検出部2によってP3個のAB相信号を生成する。アブソリュートエンコーダ1は、第4セクションS4の範囲内において第4Z相信号被検出部3Dによって第4Z相信号Z4を生成する。合わせて、アブソリュートエンコーダ1は、第4間隔Gd1内においてP4個のAB相信号被検出部2によってP4個のAB相信号を生成する。アブソリュートエンコーダ1は、第5セクションS5の範囲内において第5Z相信号被検出部3Eによって第5Z相信号Z5を生成する。合わせて、アブソリュートエンコーダ1は、第5間隔Ge1内においてP5個のAB相信号被検出部2によってP5個のAB相信号を生成する。アブソリュートエンコーダ1は、第6セクションS6の範囲内において第6Z相信号被検出部3Fによって第6Z相信号Z6を生成する。合わせて、アブソリュートエンコーダ1は、第6間隔Gf1内においてP6個のAB相信号被検出部2によってP6個のAB相信号を生成する。
【0106】
(連続回転時の回転角度検出)
次に、図2及び図7から図9を用いて、モータ27を制御する駆動装置31(図12参照)によるアブソリュートエンコーダ1を用いたモータ27の回転軸27a(図4参照)の回転角度の検出について説明する。図7は、Z相信号における信号波形の立ち下がりから立ち上がりの間隔におけるAB相信号のパルス数の関係を表すグラフである。図8は、発明の実施形態に係るブレーキ機構により回転範囲が制限されてる状態で回転角度を検出する際の作動状態を表す平面図である。図9は、本発明の実施形態に係るブレーキ機構により回転範囲が制限されてる状態で検出するAB相信号とZ相信号との関係を表す模式図である。
【0107】
図2に示すように、駆動装置31は、機械角の原点を基準としてAB相信号検出部4の位置、Z相信号検出部5の投光素子及び受光素子の位置にそれぞれ対応する機械角を記憶している。また、駆動装置31は、第1間隔Ga1内に位置するAB相信号被検出部2の数P1、第2間隔Gb1内に位置するAB相信号被検出部2の数P2、第3間隔Gc1内に位置するAB相信号被検出部2の数P3、第4間隔Gd1内に位置するAB相信号被検出部2の数P4、第5間隔Ge1内に位置するAB相信号被検出部2の数P5、及び、第6間隔Gf1内に位置するAB相信号被検出部2の数P6を記憶している(図6参照)。つまり、駆動装置31は、アブソリュートエンコーダ1によって各セクションにおいて生成されるZ相信号の立ち上がりと立ち下がりとの間に生成されるAB相信号の数を記憶している。
【0108】
駆動装置31は、回転板7または回転体9が反時計回りに回転する場合、A相信号、B相信号及びZ相信号のパルス数をカウントアップ(加算)し、回転板7または回転体9が時計回りに回転する場合、AB相信号及びZ相信号のパルス数をカウントダウン(減算)するものとする。
【0109】
図7に示すように、モータ27が反時計回りに連続回転している場合、駆動装置31は、アブソリュートエンコーダ1からAB相信号を取得するとともに第1Z相信号Z1から第6Z相信号Z6を順に取得する。また、駆動装置31は、取得したAB相信号及びZ相信号をカウントアップする。駆動装置31は、例えば、第1Z相信号Z1における信号波形の立ち上がりから立ちがりまでの間に取得するAB相信号のパルス数を算出する。
【0110】
駆動装置31は、算出したAB相信号のパルス数であるパルスP1が、予め記憶している第1間隔Ga1から第6間隔Gf1のそれぞれにおいて生成されるAB相信号のパルス数のいずれに等しいか判断する。駆動装置31は、算出したAB相信号のパルス数が第1間隔Ga1において生成されるパルス数に等しいと判断すると、取得したZ相信号を第1Z相信号Z1に特定する。
【0111】
駆動装置31は、第1Z相信号Z1の立ち上がりを生成した第1Z相信号立ち上がり被検出部3Aaの機械角から第1Z相信号立ち上がり被検出部3Aaが第1Z相信号Z1の立ち上がりを生成した時点でのZ相信号検出部5の位置に対応する位置における回転軸27aの機械角θzを算出する(図2参照)。駆動装置31は、第1Z相信号Z1の立ち上がりを取得した時点からのAB相信号のパルス数をカウントすることにより、実時間における回転軸27aの機械角360度以内の回転角度を算出する。
【0112】
駆動装置31は、順次取得するZ相信号における信号波形の立ち上がりから立ち下がりまでの間に取得するAB相信号のパルス数に基づいて回転軸27aの機械角360度以内の回転角度を定期的に算出する。
【0113】
(起動時の回転角度検出)
図8に示すように、モータ27(図4参照)に電流が供給されていない場合、またはモータ27がトルクを出力していない場合、回転体9は、規制位置に切り替えられた係合ピン10によって回転可能な範囲が規制範囲に制限されている。この際、回転体9が回転可能な規制範囲は、セクションを構成している一方の係合突起部9aが係合ピン10に接触する機械角から同一のセクションを構成している他方の係合突起部9aが係合ピン10に接触する機械角までの角度θの範囲である。
【0114】
モータ27(図4参照)に電流の供給を開始する場合、駆動装置31は、モータ27の回転軸27a(図4参照)の回転角を検出するために、係合ピン10を規制位置に切り替えた状態で、モータ27の回転軸27aを反時計回り(CCW矢印参照)と時計回り(CW矢印参照)に交互に回転させる。この際、駆動装置31は、過去に取得したAB相信号のパルス数をゼロにリセットしてから回転軸27aを反時計回りと時計回りとに回転させる。駆動装置31は、出力電流値、回転角度等から、回転体9の係合突起部9aが係合ピン10に接触したと判断すると、モータ27回転軸27aを逆の方向に回転させる。駆動装置31は、回転体9のセクション内において、回転体9の係合突起部9aと係合ピン10との接触を検出する度にモータ27回転軸27aの回転方向を反転させる。
【0115】
アブソリュートエンコーダ1は、回転軸27aの反時計回り方向と時計回り方向の回転に伴ってAB相信号及びZ相信号を生成しつつ、駆動装置31に送信する。
【0116】
駆動装置31は、取得したAB相信号のパルス数を算出する。駆動装置31は、反時計回りの回転時においてAB相信号のパルス数をカウントアップし、時計回りの回転時においてAB相信号のパルス数をカウントダウンする。
【0117】
図8図9とに示すように、駆動装置31は、回転軸27aを複数回の反時計回り(CCW)方向と時計回り(CW)方向に回転させることで、Z相信号における信号波形の立ち上がりから立ち下がりまでの間に生成されるAB相信号のパルス数を取得する。
【0118】
例えば、回転体9のセクション内に2組のZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとが位置している場合、駆動装置31は、任意のセクション内の任意の回転角度でのAB相信号のパルス数を0として、規制位置に位置する係合ピン10が回転体9のセクションを構成している一方の係合突起部9aに接触するまでモータ27の回転軸27aを反時計回りに回転させる(図8の矢印CCW、図9の矢印A1参照)。駆動装置31は、生成されるAB相信号のパルス数をカウントアップする。駆動装置31は、回転体9の一方の係合突起部9aと係合ピン10との接触を検出すると、モータ27の回転軸27aを停止させる。同時に、駆動装置31は、AB相信号のカウントアップをパルスPAの時点で停止する。
【0119】
次に、駆動装置31は、係合ピン10が同一のセクションを構成している他方の係合突起部9aに接触するまでモータ27の回転軸27aを時計回りに回転させる(図8の矢印CW、図9の矢印A2参照)。駆動装置31は、生成されるAB相信号のパルスに応じてパルスPAからカウントダウンする。駆動装置31は、Z相信号の信号波形の立ち上がりを取得すると、立ち上がりパルス数としてパルスPB、パルスPDを記憶する。駆動装置31は、回転体9前記他方の係合突起部9aと係合ピン10との接触を検出すると、モータ27の回転軸27aを停止させる。同時に、駆動装置31は、AB相信号のカウントダウンをパルスPFの時点で停止する。
【0120】
次に、駆動装置31は、係合ピン10が回転体9の前記一方の係合突起部9aに接触するまでモータ27を反時計回りに回転させる(図8の矢印CCW、図9の矢印A3参照)。駆動装置31は、生成されるAB相信号のパルスに応じてパルスPFからカウントアップする。駆動装置31は、Z相信号を取得すると、立ち上がりパルス数としてパルスPE、パルスPCを記憶する。駆動装置31は、回転体9の一方の係合突起部9aと係合ピン10との接触を検出すると、モータ27の回転軸27aを停止させる。同時に、駆動装置31は、AB相信号のカウントアップをパルスPAの時点で停止する。
【0121】
駆動装置31は、求めた立ち上がりパルス数の最大値であるパルスPBと立ち上がりパルス数の最小値であるパルスPEとの平均値を算出する。次に、駆動装置31は、立ち上がりパルス数の平均値よりも小さい立ち上がりパルス数のうち最大の立ち上がりパルス数であるパルスPDと、立ち上がりパルス数の平均値よりも大きい立ち上がりパルス数のうち最小の立ち上がりパルス数であるパルスPCとの差を算出する。
【0122】
駆動装置31は、算出した立ち上がりパルス数の差が、予め記憶しているZ相信号の第1間隔Ga1から第6間隔Gf1のそれぞれで生成されるAB相信号のパルス数のいずれに等しいか判定する。駆動装置31は、等しいパルス数のAB相信号が生成されると判定した間隔から係合ピン10が規制位置に位置している回転体9のセクションを特定する。
【0123】
このように構成されるアブソリュートエンコーダ1のブレーキ機構8は、少なくとも2つの係合突起部9aを有する回転体9を備える。電源がオフ時におけるモータ27の回転軸27aの回転範囲は、ブレーキ機構8によって、最大でも機械角180度未満の角度範囲に制限される。アブソリュートエンコーダ1は、アブソリュートエンコーダ1の電源がオフの場合にモータ27の回転軸27aが回転しても、機械角180度未満の範囲において回転角度を特定するためのAB相信号とZ相信号とを駆動装置31に出力する。モータ27の回転軸27aの回転範囲は、180度未満である。よって、駆動装置31は、モータ27の回転軸27aの決められた原点からの回転角度と回転回数とを一義的に算出することができる。また、係合突起部9aを6つ有する回転体9によってモータ27の回転軸27aの回転範囲を制限する場合、係合突起部9aの摩耗等によって係合突起部9aのうち隣り合う2つの係合突起部9aが係合ピン10に接触しない状態であってもモータ27の回転軸27aの回転範囲が機械角180度未満の回転角度に制限される。これにより、簡素な構造によってモータ27の回転軸27aの回転角度と回転回数とを算出可能なマルチターンアブソリュートエンコーダを構成することができる。
【0124】
従来のグレイコードエンコーダや磁気式エンコーダは、電源を投入した直後の静止状態でもアブソリュートエンコーダとして機能し、モータ27の検出対象部材の機械角を検出することができる。しかしながら、グレイコードエンコーダや磁気式エンコーダは、機械角を特定するための計算量が多いため、専用ICが必要になる。また、Z相信号としてM系列を採用したABZ型エンコーダは、電源を投入した直後の静止状態ではアブソリュートエンコーダとして機能しないが、ブレーキ機構等によって制限された制限範囲において回転運動することでアブソリュートエンコーダ化することができる。つまり、前記M系列を採用したABZ型エンコーダは、検出対象部材の機械角を検出できるようになる。しかしながら、前記M系列を採用したABZ型エンコーダは、割り込み頻度のボラティリティが大きいため、ピーク負荷に合わせた専用ICが必要になる。一方、本実施形態におけるアブソリュートエンコーダ1は、回転体9における各セクションのそれぞれの規制範囲に、周方向の間隔がそれぞれ異なる少なくとも一組のZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとが位置する。これにより、アブソリュートエンコーダ1は、回転体9の各セクションにおいてZ相信号の信号波形が立ち上がりから立ち下がりまでにAB相信号被検出部2が生成するAB相信号のパルス数を算出することでセクション内の機械角を特定する。よって、従来のアブソリュートエンコーダよりも計算負荷が小さく専用ICを必要としない。
【0125】
また、各係合突起部9aの周方向両方に位置するZ相信号立ち下がり被検出部3bとZ相信号立ち上がり被検出部3aとの周方向の間隔である第1-2間隔Gb、第2-3間隔Gbc、第3-4間隔Gcd、第4-5間隔Gde、第5-6間隔Gef及び第6-1間隔Gfaは、同じ角度範囲の間隔が含まれていてもよい。これにより、Z相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとの組み合わせによって規定される周方向の間隔のばらつきが小さくなる。従って、機械角360度内の回転角度を取得する各処理の平準化が図られ、モータ27の回転軸27aの回転角度を特定する駆動装置の処理のピーク負荷を低減することができる。一般にリアルタイム制御を実行するためのコンピュータは、ピーク負荷時にもリアルタイム性を失わないような性能が要求される。よって、ピーク負荷を低減することでコンピュータの要求性能を簡素化できる。
【0126】
また、モータ27は、ブレーキ機構8によって回転範囲が第1セクションS1から第6セクションS6のいずれかに制限されている。駆動装置31は、いずれかのセクションの規制範囲でモータ27を時計回りと反時計回りに複数回、往復回転させる。駆動装置31は、セクションによる規制範囲をAB相信号被検出部2とZ相信号被検出部3とが複数回通過することにより、Z相信号の信号波形における立ち上がりから立ち下がりまでの間に生成されたAB相信号のパルス数を確実に取得することができる。これにより、ブレーキ機構8によってモータ27の回転軸27aの回転範囲が制限されていても、簡素な構造によってモータ27の回転軸27aの回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成することができる。また、駆動装置31の処理負荷を低減して駆動装置31のハードウェアリソースの設計自由度を向上することができる。
【0127】
また、複数のAB相信号被検出部2、複数のZ相信号立ち上がり被検出部3a及び複数のZ相信号立ち下がり被検出部3bは、回転体9と一体に回転する回転板7または回転体9に設けられる。従って、AB相信号被検出部2とZ相信号被検出部3とは、互いの位相が固定された状態において一体にモータ27の回転軸27aまたはブレーキ機構8の回転体9に設けられる。これにより、ブレーキ機構8によってモータ27の回転軸27aの回転可能な範囲が制限されていても、簡素な構造によってモータ27の回転軸27aの回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成することができる。
【0128】
駆動装置31は、取得したAB相信号のパルス数から、係合ピン10が規制位置に位置しているセクションを特定する。これにより、モータ27が十分なトルクを出力していない起動直後でも回転体9の位置検出精度が向上する。従って、駆動装置31の処理負荷を低減して駆動装置31のハードウェアリソースの設計自由度を向上することができる。
【0129】
[実施形態2]
<多関節ロボットアーム装置>
図10から図12を用いて、本発明の実施形態2に係る多関節ロボットアーム装置11の全体構成について説明する。多関節ロボットアーム装置11は、上述のアブソリュートエンコーダ1を含む。なお、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0130】
図10は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットアーム装置11の模式図である。図11は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットアーム12に係るS軸回転関節14の模式図である。図12は、本発明の実施形態2に係る多関節ロボットアーム装置11の制御ブロック図である。
【0131】
(多関節ロボットアーム)
図10に示すように、多関節ロボットアーム装置11は、多関節ロボットアーム12及び多関節ロボットアーム制御装置32を含む。多関節ロボットアーム12は、本実施形態において、リンクが1自由度の回転関節によって基端から先端まで直列に連結されたシリアルリンク機構のロボットアームである。多関節ロボットアーム12は、例えば6軸の垂直多関節ロボットアームである。多関節ロボットアーム12は、例えば製造装置の基台や遠隔操作可能な遠隔操作車両に設けられている。
【0132】
多関節ロボットアーム12では、基端部から順に、S軸回転関節14、L軸回転関節16、U軸回転関節18、R軸回転関節20、B軸回転関節22及びT軸回転関節24が、それぞれ、筐体及びリンクによって、直列に連結されている。各軸は、モータユニットMによって回転可能に構成されている。S軸回転関節14、L軸回転関節16、U軸回転関節18、R軸回転関節20、B軸回転関節22及びT軸回転関節24は、それぞれ、モータユニットMを有する。
【0133】
モータユニットMは、減速機25、アクチュエータ26を含む。多関節ロボットアーム12は、多関節ロボットアーム制御装置32によって制御される。多関節ロボットアーム12は、多関節ロボットアーム制御装置32から出力される制御信号を各軸のアクチュエータ26に含まれる駆動装置31によって取得する。また、多関節ロボットアーム12は、各軸のモータユニットMのモータ27の出力に関する情報及びアブソリュートエンコーダ1から出力される情報を、多関節ロボットアーム制御装置32に送信する。
【0134】
図11に示すように、S軸回転関節14は、多関節ロボットアーム12全体を旋回させる回転関節である。S軸回転関節14は、多関節ロボットアーム12のSL軸用の筐体15に設けられている。S軸回転関節14の出力軸には、ベース部材13が固定されている。ベース部材13は、多関節ロボットアーム12の設置面に固定されている。S軸回転関節14は、多関節ロボットアーム12の設置面に対して垂直な方向にS軸回転関節14の軸線が延びるように配置されている。
【0135】
図10に示すように、L軸回転関節16は、下リンク17を揺動させる回転関節である。L軸回転関節16は、SL軸用の筐体15に設けられている。L軸回転関節16は、S軸回転関節14の軸線に対して垂直な方向にL軸回転関節16の軸線が延びるように配置されている。L軸回転関節16の出力軸には、下リンク17の一端部が固定されている。
【0136】
U軸回転関節18は、上腕リンク21を揺動させる回転関節である。U軸回転関節18は、多関節ロボットアーム12のUR軸用の筐体19に設けられている。U軸回転関節18の出力軸は、下リンク17の他端部に固定されている。U軸回転関節18は、L軸回転関節16の軸線に対して平行な方向にU軸回転関節18の軸線が延びるように配置されている。
【0137】
R軸回転関節20は、上腕リンク21を回転させる回転関節である。R軸回転関節20は、UR軸用の筐体19に設けられている。R軸回転関節20は、U軸回転関節18の軸線に対して垂直な方向にR軸回転関節20の軸線が延びるように配置されている。R軸回転関節20の出力軸には、上腕リンク21の一端部が固定されている。
【0138】
B軸回転関節22は、T軸回転関節24を揺動させる回転関節である。B軸回転関節22は、多関節ロボットアーム12のBT軸用の筐体23に設けられている。B軸回転関節22の出力軸は、上腕リンク21の他端部に固定されている。B軸回転関節22は、R軸回転関節20の軸線に対して垂直な方向にB軸回転関節22の軸線が延びるように配置されている。
【0139】
T軸回転関節24は、図示しないエンドエフェクタを回転させる回転関節である。T軸回転関節24は、BT軸用の筐体23に設けられている。T軸回転関節24は、B軸回転関節22の軸線に対して垂直な方向にT軸回転関節24の軸線が延びるように配置されている。T軸回転関節24の出力軸は、エンドエフェクタ取り付け部を有している。
【0140】
このように構成される多関節ロボットアーム12は、各軸のモータユニットMによってX軸、Y軸、Z軸方向の併進3自由度とX軸、Y軸、Z軸まわりの回転3自由度の合計6自由度を有する。従って、多関節ロボットアーム12は、多関節ロボットアーム12の可動空間内において、T軸回転関節24の出力軸を任意の位置に移動させることができるとともに任意の姿勢にすることができる。
【0141】
(モータユニット)
図10図11に示すように、S軸、L軸、U軸、R軸、B軸、T軸のモータユニットMは、それぞれ、多関節ロボットアーム制御装置32からの制御信号に従って、出力軸を回転させる駆動装置である。各軸のモータユニットMは、減速機25と、アクチュエータ26とを含む。つまり、モータユニットMは、減速機25、モータ27、ブレーキ機構8を含むアブソリュートエンコーダ1及びモータ27を制御するコンピュータである駆動装置31が多関節ロボットアーム12の筐体15,筐体19(図10参照),筐体23(図10参照)の内部に配置されている。なお、各軸のモータユニットMは同一の構成を有するため、以下では、S軸回転関節14について説明を行う。
【0142】
図11に示すように、S軸回転関節14の減速機25は、出力軸を入力軸の回転速度に対して減速した状態において回転させるとともに、前記出力軸の出力トルクとして前記減速に反比例した出力トルクを生成する装置である。減速機25は、多関節ロボットアーム12の筐体15内に設けられている。減速機25のハウジングは、多関節ロボットアーム12の筐体15の内部に固定されている。減速機25の出力軸は、ベース部材13に固定されている。
【0143】
S軸回転関節14のアクチュエータ26は、減速機25と、モータ27と、アブソリュートエンコーダ1と駆動装置31とを含む。S軸回転関節14は、多関節ロボットアーム12の筐体15内に設けられている。つまり、多関節ロボットアーム12の筐体15内には、減速機25、モータ27、ブレーキ機構8を含むアブソリュートエンコーダ1及び駆動装置31が配置されている。
【0144】
アクチュエータ26に含まれるモータ27は、動力の発生源である。本実施形態では、モータ27は、筒状のステータ内に、ロータが回転可能に配置された、いわゆるインナーロータ型のモータ27である。ロータには、軸心に沿って延びる回転軸27aが軸方向に貫通した状態において固定される。モータ27は、減速機25のケースにおいて動力が入力される一端部に固定されている。回転軸27aの一端部は、モータ27の出力軸として減速機25の入力軸に連結されている。
【0145】
アクチュエータ26に含まれるアブソリュートエンコーダ1は、モータ27における回転軸27aの機械角360度以内の回転角度を検出する。アブソリュートエンコーダ1は、機械角360度以内の回転角度を検出するためのAB相信号と機械角の原点を検出するためのZ相信号とを、駆動装置31と多関節ロボットアーム制御装置32(図10参照)とに送信する。アブソリュートエンコーダ1は、モータ27における回転軸27aの他端部に設けられている。つまり、ブレーキ機構8を含むアブソリュートエンコーダ1とは、モータ27の回転軸27aに設けられている。
【0146】
アブソリュートエンコーダ1に含まれるブレーキ機構8は、モータ27における回転軸27aの回転を規制する。本実施形態では、ブレーキ機構8は、回転軸27aの他端部に設けられている。ブレーキ機構8は、機械的な係合によってモータ27の回転軸27aの回転を制限する。なお、ブレーキ機構8は、回転軸27aの一端部に設けられていてもよい。
【0147】
アクチュエータ26に含まれる駆動装置31は、モータ27に供給する駆動電流を制御する。駆動装置31は、例えば、コンピュータである。駆動装置31は、多関節ロボットアーム12の筐体15内に設けられている。駆動装置31は、多関節ロボットアーム制御装置32からの制御信号に応じた電流をモータ27に供給する。また、駆動装置31は、アブソリュートエンコーダ1のAB相信号とZ相信号とをフィードバックパルスとして取得する。駆動装置31は、指令パルスに対するフィードバックパルスの差分に応じた電流をモータ27に供給するフィードバック制御によって、モータ27を制御する(図12参照)。
【0148】
このように構成されるS軸回転関節14は、減速機25と、アクチュエータ26に含まれるモータ27及びアブソリュートエンコーダ1が一体に構成されている。また、モータユニットMは、減速機25、アクチュエータ26及び駆動装置31が多関節ロボットアーム12の筐体15内に配置された機電一体構造として構成されている。S軸回転関節14では、モータ27の回転によって減速機25の出力軸が回転することにより、多関節ロボットアーム12の筐体15とアクチュエータ26とを一体に回転させる。
【0149】
図12に示すように、多関節ロボットアーム制御装置32は、多関節ロボットアーム12を制御する装置である。多関節ロボットアーム制御装置32は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスによって接続された構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。多関節ロボットアーム制御装置32には、多関節ロボットアーム12の動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。
【0150】
多関節ロボットアーム制御装置32は、S軸回転関節14、L軸回転関節16、U軸回転関節18、R軸回転関節20、B軸回転関節22及びT軸回転関節24に含まれる駆動装置31にそれぞれ接続されている。多関節ロボットアーム制御装置32は、各軸の駆動装置31に制御信号を送信することができる。また、多関節ロボットアーム制御装置32は、各軸のモータユニットMからモータ27の回転位置情報を取得することができる。
【0151】
上述のアブソリュートエンコーダ1が接続された駆動装置31は、隣り合うZ相信号における信号波形の立ち下がりから立ち上がりまでに生成されるAB相信号のパルス数を記憶している。従って、駆動装置31は、Z相信号の信号波形の立ち下がりから立ち上がりまでに生成されるAB相信号のパルス数と位相とをカウントすることで、回転軸27aの機械角360度以内の回転角度を特定することができる。これにより、駆動装置31は、エンコーダ専用のICを追加することなく、モータ27の回転軸27aの回転角を取得する処理を簡易かつ高精度にすることができる。よって、ブレーキ機構8によってモータの回転可能な範囲が制限されていても、簡素な構造によってモータ27の回転軸27aの回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成することができる。
【0152】
[実施形態3]
<他のZ相信号の間隔のばらつき>
以下に、図5図13とを用いて、本発明の実施形態に係るアブソリュートエンコーダ1Aについて説明する。図13は、本発明の実施形態3に係るAB相信号の信号波形とZ相信号の信号波形を表す模式図である。本実施形態において、回転体9の各セクションの角度範囲には、2つのZ相信号被検出部3が位置付けられている。2つのZ相信号被検出部3は、周方向に隣り合っている。また、各Z相信号被検出部3のZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとは、周方向に隣り合っている。
【0153】
図13に示すように、各セクションにおける各Z相信号被検出部3のZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとの周方向の間隔である間隔G1、間隔G2は、全て同じ間隔である。また、各セクションにおける一方のZ相信号被検出部3のZ相信号立ち上がり被検出部3aと他方のZ相信号被検出部3のZ相信号立ち上がり被検出部3aとの周方向の間隔である間隔G3は、全て異なる間隔である。また、各セクションにおける一方のZ相信号被検出部3のZ相信号立ち下がり被検出部3bと他方のZ相信号被検出部3のZ相信号立ち下がり被検出部3bとの周方向の間隔である間隔G4は、全て異なる間隔である。また、各セクションにおける一方のZ相信号被検出部3のZ相信号立ち上がり被検出部3aと他方のZ相信号被検出部3のZ相信号立ち下がり被検出部3bとの周方向の間隔である間隔G5は、全て異なる間隔である。また、また、各セクションにおける一方のZ相信号被検出部3のZ相信号立ち下がり被検出部3bと他方のZ相信号被検出部3のZ相信号立ち上がり被検出部3aとの周方向の間隔である間隔G6は、全て異なる間隔である。
【0154】
このように構成されるアブソリュートエンコーダ1Aは、周方向に隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとの間にAB相信号被検出部2が位置するように配置される。また、アブソリュートエンコーダ1Aは、機械角360度の回転において生成するAB相信号のパルス数(例えば360パルス)よりも少ないパルス数(例えば12パルス)のZ相信号を生成する。従って、間隔G1、間隔G2、間隔G3、間隔G4、間隔G5及び間隔G6は、AB相信号のパルス数で表現することができる。
【0155】
アブソリュートエンコーダ1Aは、各セクションにおける間隔G1及び間隔G2によって規定される角度範囲の全てにおいて、同じパルス数のAB相信号を生成する。また、アブソリュートエンコーダ1Aは、各セクションにおける間隔G3によって規定される角度範囲の全てにおいて、異なるパルス数のAB相信号を生成する。同様に、アブソリュートエンコーダ1Aは、各セクションにおける間隔G4によって規定される角度範囲の全てにおいて、異なるパルス数のAB相信号を生成する。同様に、アブソリュートエンコーダ1Aは、各セクションにおける間隔G5によって規定される角度範囲の全てにおいて、異なるパルス数のAB相信号を生成する。同様に、アブソリュートエンコーダ1Aは、各セクションにおける間隔G6によって規定される角度範囲の全てにおいて、異なるパルス数のAB相信号を生成する。
【0156】
この際、Z相信号被検出部3は、各セクションの規制範囲のそれぞれにおいて、次の条件のうち少なくとも一つを満たす。
【0157】
各セクションのZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち上がり被検出部3aとは、各セクションの間隔G3の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数の中央値を基準とする所定の間隔内に収まるように各セクションの制限範囲内に位置する。具体的には、各セクションのZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち上がり被検出部3aとは、各セクションの間隔G3の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数における中央値と最小値との差、及び前記中央値と最大値との差が前記中央値の半分よりも小さくなるように位置する。
【0158】
または、各セクションのZ相信号立ち下がり被検出部3bとZ相信号立ち下がり被検出部3bとは、各セクションの間隔G4の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数の中央値を基準とする所定の間隔内に収まるように各セクションの制限範囲内に位置する。具体的には、各セクションのZ相信号立ち下がり被検出部3bとZ相信号立ち下がり被検出部3bとは、各セクションの間隔G4の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数における中央値と最小値との差、及び前記中央値と最大値との差が前記中央値の半分よりも小さくなるように位置する。
【0159】
または、各セクションのZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとは、各セクションの間隔G5の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数の中央値を基準とする所定の間隔内に収まるように各セクションの制限範囲内に位置する。具体的には、各セクションのZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとは、各セクションの間隔G5の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数における中央値と最小値との差、及び前記中央値と最大値との差が前記中央値の半分よりも小さくなるように位置する。
【0160】
または、各セクションのZ相信号立ち下がり被検出部3bとZ相信号立ち上がり被検出部3aとは、各セクションの間隔G6の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数の中央値を基準とする所定の間隔内に収まるように各セクションの制限範囲内に位置する。具体的には、各セクションのZ相信号立ち下がり被検出部3bとZ相信号立ち上がり被検出部3aとは、各セクションの間隔G6の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数における中央値と最小値との差、及び前記中央値と最大値との差が前記中央値の半分よりも小さくなるように位置する。
【0161】
例えば、アブソリュートエンコーダ1Aは、第1セクションS1における間隔G3の角度範囲においてAB相信号を24パルス生成する。
【0162】
同様に、アブソリュートエンコーダ1Aは、第2セクションS2における間隔G3の角度範囲においてAB相信号を29パルス生成する。アブソリュートエンコーダ1Aは、第セクションSにおける間隔G3の角度範囲においてAB相信号を28パルス生成する。アブソリュートエンコーダ1Aは、第4セクションS4における間隔G3の角度範囲においてAB相信号を27パルス生成する。第5セクションS5における間隔G3の角度範囲においてAB相信号を26パルス生成する。アブソリュートエンコーダ1Aは、第6セクションS6における間隔G3の角度範囲においてAB相信号を25パルス生成する。
【0163】
上述した各セクションの間隔G3の角度範囲において生成されるAB相信号のパルス数の中央値は、26.5パルスである。また、各セクションの間隔G3の角度範囲において生成されるAB相信号のパルス数の最小値は、24パルスである。また、各セクションの間隔G3の角度範囲において生成されるAB相信号のパルス数の最大値は、29パルスである。
【0164】
各セクションのZ相信号被検出部3は、間隔G3の角度範囲において生成されたAB相信号のパルス数の中央値26.5パルスと最小値24パルスとの差が2.5パルスになるように構成されている。また、各セクションのZ相信号被検出部3は、間隔G3の角度範囲において生成されたAB相信号のパルス数の中央値26.5パルスと最大値との差が2.5パルスになるように構成されている。従って、各セクションのZ相信号被検出部3は、中央値と最小値との差、及び中央値と最大値との差が中央値の半分の13.25パルスよりも小さくなるように構成されている。
【0165】
Z相信号被検出部3では、隣り合う係合突起部9aによって制限される回転体9の規制範囲の全てにおいて、Z相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとの組み合わせによって規定される間隔G3、間隔G4、間隔G5及び間隔G6のうち少なくとも一つの間隔が所定の範囲内のばらつきにおいて全て異なる。つまり、隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ちがり被検出部3との周方向の間隔の組み合わせである間隔G3、間隔G4、間隔G5及び間隔G6のうち少なくとも一つがほぼ等間隔に近い状態で、全ての間隔が異なるようにZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ちがり被検出部3とが位置している。
【0166】
<第3実施形態の別実施形態>
第3実施形態の別実施形態として、アブソリュートエンコーダ1AのZ相信号被検出部3は、各セクションの規制範囲のそれぞれにおいて、更に次の条件を満たすように構成されてもよい。
【0167】
各セクションのZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち上がり被検出部3aとは、各セクションの間隔G3の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数における最大値と最小値との差が、各セクションの間隔G3の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数における中央値の半分よりも小さくなるように位置する。
【0168】
各セクションのZ相信号立ち下がり被検出部3bとZ相信号立ち下がり被検出部3bとは、各セクションの間隔G4の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数における最大値と最小値との差が、各セクションの間隔G4の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数における中央値の半分よりも小さくなるように位置する。
【0169】
各セクションのZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ちがり被検出部3とは、各セクションの間隔G5の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数における最大値と最小値との差が、各セクションの間隔G5の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数における中央値の半分よりも小さくなるように位置する。
【0170】
各セクションのZ相信号立ち下がり被検出部3bとZ相信号立ちがり被検出部3とは、各セクションの間隔G6の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数における最大値と最小値との差が、各セクションの間隔G6の角度範囲においてそれぞれ生成されるAB相信号のパルス数における中央値の半分よりも小さくなるように位置する。
【0171】
例えば、各セクションのZ相信号被検出部3は、間隔G3の角度範囲において生成されたAB相信号のパルス数の最大値29パルスと最小値24パルスとの差である5パルスが中央値26.5パルスの半分である13.25パルスよりも小さくなるように位置する
【0172】
このようにアブソリュートエンコーダ1Aは、各セクションに位置付けられている2つのZ相信号被検出部3によって規定される間隔G1、間隔G2、間隔G3、間隔G4、間隔G5及び間隔G6のうち少なくとも一つの間隔が各セクションにおいてそれぞれ異なるように配置されている。また、各セクション内の2つのZ相信号被検出部3によって規定される間隔のうち少なくとも一つの間隔の角度範囲において生成されるAB相信号のパルス数は、セクション毎に異なる。よって、実施形態3のアブソリュートエンコーダ1Aは、実施形態1のアブソリュートエンコーダ1と同様の作用効果が得られる。
【0173】
また、アブソリュートエンコーダ1Aは、各セクションのZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ちがり被検出部3との周方向の間隔の組み合わせである間隔G3、間隔G4、間隔G5及び間隔G6の角度範囲において生成されるAB相信号の各パルス数のばらつきが各セクションの隙間の角度範囲において生成されるAB相信号のパルス数の中央値を基準とする一定の範囲内になるように構成されている。つまり、アブソリュートエンコーダ1Aは、隣り合うZ相信号の間隔がほぼ等間隔に近い状態で、全ての間隔が異なるように生成する。これにより、前記ブレーキ機構8によってモータ27の回転軸27aの回転範囲が制限されていても、簡素な構造によってモータ27の回転軸27aの回転角度を算出可能なAB相信号及びZ相信号を生成することができる。
【0174】
また、アブソリュートエンコーダ1Aは、一定の回転速度において、AB相信号のパルス数の中央値を基準として所定時間以上の時間間隔においてZ相信号を生成することができる。これにより、駆動装置31の処理負荷を低減して駆動装置31のハードウェアリソースの設計自由度を向上することができる。
【0175】
また、Z相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとの組み合わせによって規定される間隔が全て異なる場合、つまり、Z相信号の信号波形が全て異なる場合、一つのZ相信号の立ち上がりと立ち下がりの両方において割り込み処理を発生させることにより、アブソリュートエンコーダ1Aの1回転中における絶対位置の検出機会を増やすことができる。一方、駆動装置31は、一つの前記Z相信号の立ち上がりもしくは立ち下がりの一方に割り込み処理を発生させることにより計算負荷を抑えることができる。
【0176】
[実施形態4]
<訂正部>
以下に、図12図14とを用いて、本発明の実施形態4に係るアブソリュートエンコーダ1Bについて説明する。図14は、本発明の実施形態に係るアブソリュートエンコーダ1Bによるエラー訂正の制御態様を表すフローチャートである。
【0177】
図12に示すように、アブソリュートエンコーダ1、1A、1Bは、AB相信号のエラーを訂正するエラー訂正部である訂正部33を有していてもよい。
【0178】
アブソリュートエンコーダ1Bの訂正部33は、AB相信号の一部が生成できなかった場合に、回転軸27aの機械角360度以内の回転角度の訂正を行う。訂正部33は、アブソリュートエンコーダ1Bに設けられている。訂正部33は、各セクションのZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ちがり被検出部3との周方向の間隔の組み合わせである間隔G1、間隔G2、間隔G3、間隔G4、間隔G5及び間隔G6の角度範囲において生成されるAB相信号の各パルス数を全て記憶している(図13参照)。
【0179】
図14に示すように、訂正部33は、AB相信号検出部4、及びZ相信号検出部5からAB相信号及びZ相信号を取得する(ステップS110)。さらに、訂正部33は、AB相信号のパルス数のカウントアップ(積算)を開始する(ステップS120)。
【0180】
訂正部33は、次のZ相信号を取得すると(ステップS130)、その直前(ステップS110)に取得したZ相信号における信号波形の立ち上がりから今回(ステップS130)のステップで取得したZ相信号における信号波形の立ち上がりまでの間に取得したAB相信号のパルス数Pb1を算出する(ステップS140)。
【0181】
訂正部33は、その直前(ステップS110の前)に算出したAB相信号のパルス数Pa1に基づいて推測される信号波形の立ち上がりから今回(ステップS130)のステップで取得したZ相信号における信号波形の立ち上がりまでに取得したパルス数Pb2を算出する(ステップS150)。訂正部33は、算出したAB相信号のパルス数Pb1が、その直前のZ相信号における信号波形の立ち上がりから立ち上がりまでの間に生成されたパルス数Pa1から推測されるパルス数Pb2に一致しているか否か判定する(ステップS160)。
【0182】
訂正部33は、算出したAB相信号のパルス数Pb1が、推測されるAB相信号のパルス数Pb2と一致している場合、AB相信号用コードホイールCW1における間隔Gdbに該当する部分についてエラーが生じていないと判定し、訂正を行わない(ステップS170)。
【0183】
訂正部33は、算出したAB相信号のパルス数Pb1が、推測されるAB相信号のパルス数Pb2に一致していない場合、該当するAB相信号被検出部2においてエラーが生じていると判定する(ステップS171)。訂正部33は、算出したパルス数Pb1を、推測されるパルス数Pb2に変更する訂正を実施する。
【0184】
このように、アブソリュートエンコーダ1Bは、全て異なる角度範囲においてZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bが設けられていることにより、隣接するZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとの周方向の間隔における角度範囲において生成されるAB相信号のパルス数の関係が予め定められている。従って、アブソリュートエンコーダ1Bは、特定のZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとの周方向の間隔における角度範囲においてAB相信号の一部が生成できないエラーが生じても、訂正部33によって隣接するZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとの周方向の間隔における角度範囲において生成されたAB相信号のパルス数からエラーが生じたAB相信号を推測する。これにより、駆動装置31の処理負荷を低減して駆動装置31のハードウェアリソースの設計自由度を向上することができる。
【0185】
[実施形態5]
<異常検出部>
以下に、図1図15とを用いて、本発明の実施形態5に係るアブソリュートエンコーダ1、1A、1Bについて説明する。図15は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ26によるアブソリュートエンコーダ1、1A、1Bの異常検知の制御態様を表すフローチャートである。
【0186】
図1に示すように、アクチュエータ26の異常検出部30は、アクチュエータ26の一部であるモータ27の駆動装置31に設けられている。異常検出部30は、磁束オブザーバを有している。磁束オブザーバとは、モータ27に印可される電圧と電流とから、モータ27の内部磁束等の状態を算出し、モータ27における回転軸27a(ロータ)の速度又は電気角を推定する数理モデルである。異常検出部30は、アブソリュートエンコーダ1、1A、1BからAB相信号とZ相信号とを取得することができる。
【0187】
図15に示すように、異常検出部30は、アブソリュートエンコーダ1、1A、1BからAB相信号とZ相信号とを取得する(ステップS210)。異常検出部30は、取得したAB相信号とZ相信号とに基づいて回転軸27aの電気角θxを算出する(ステップS220)。
【0188】
次に、異常検出部30は、磁束オブザーバで回転軸27aの電気角θyを推定する(ステップS230)。
【0189】
異常検出部30は、アブソリュートエンコーダ1、1A、1BのAB相信号及びZ相信号から算出した電気角θxと磁束オブザーバによって推定した電気角θyとを比較する。異常検出部30は、電気角θxと電気角θyとの差異(|θx-θy|)が基準値θs以下の場合、AB相信号被検出部2及びZ相信号被検出部3に異常は生じていないと判定する(ステップS250)。
【0190】
一方、異常検出部30は、電気角θxと電気角θyとの差異(|θx-θy|)が基準値θsよりも大きい場合、回転体9の塑性変形等の変形により、AB相信号被検出部2及びZ相信号被検出部3にひずみが生じ、AB相信号及びZ相信号の生成に異常が発生していると判定する(ステップS251)。
【0191】
これにより、駆動装置31は、アブソリュートエンコーダ1、1A、1Bの異常を速やかに検出することができるので、ピーク負荷を低減して駆動装置31のハードウェアリソースの設計自由度を向上することができる。なお、異常検出部30は、アブソリュートエンコーダ1、1A、1BのAB相信号検出部4及びZ相信号検出部5に設けてもよい。
【0192】
[実施形態6]
<他のZ相信号の信号波形>
以下に、図16を用いて、本発明の実施形態に係るアブソリュートエンコーダ1Cについて説明する。図16は、本発明の実施形態に係るAB相信号の信号波形とZ相信号の信号波形を表す模式図である。本実施形態において、回転体9の各セクションの角度範囲には、2つのZ相信号被検出部3が位置付けられている。2つのZ相信号被検出部3は、周方向に隣り合っている。また、各Z相信号被検出部3のZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとは、周方向に隣り合っている。
【0193】
図16に示すように、アブソリュートエンコーダ1Cは、各セクションにおいて周方向に隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとの間隔G1及び間隔G2が全て異なる。従って、アブソリュートエンコーダ1Cは、周方向に隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部3aの機械角とZ相信号立ち下がり被検出部3bの機械角とによって規定される角度範囲の全てにおいて、異なるパルス数のAB相信号を生成する。
【0194】
同様に、アブソリュートエンコーダ1Cは、各セクションにおいて周方向に隣り合うZ相信号立ち下がり被検出部3bの機械角とZ相信号立ち下がり被検出部3bの機械角とによって規定される角度範囲の全てにおいて、異なるパルス数のAB相信号を生成する。同様に、アブソリュートエンコーダ1Cは、各セクションにおいて周方向に隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部3aの機械角とZ相信号立ち上がり被検出部3aの機械角とによって規定される角度範囲の全てにおいて、異なるパルス数のAB相信号を生成する。
【0195】
Z相信号立ち上がり被検出部3aの機械角とZ相信号立ち下がり被検出部3bの機械角との組み合わせによって規定される角度範囲が全て異なる場合、駆動装置31は、一つのZ相信号における信号波形の立ち上がりと立ち下がりの両方において割り込み処理を発生させることができる。これにより、駆動装置31は、回転軸27aの1回転中における回転角の検出機会を増やすことができる。一方、駆動装置31は、一つのZ相信号における信号波形の立ち上がりもしくは立ち下がりの一方に割り込み処理を発生させることで計算負荷を抑えることができる。
【0196】
(その他の実施形態)
なお、上述の全ての実施形態2において、6軸の垂直多関節ロボットアームである多関節ロボットアーム12は、一例としてS軸回転関節14、L軸回転関節16、U軸回転関節18、R軸回転関節20、B軸回転関節22及びT軸回転関節24がそれぞれリンクによって直列に連結されているが、これに限定されない。各軸のモータユニットMの連結順、連結される際の軸線方向等は、多関節ロボットアームとして成立する構造であれば、上述の実施形態2以外の構成であってもよい。
【0197】
また、上述の全ての実施形態において、モータユニットMは、多関節ロボットアーム12の各軸の回転関節として用いられる。しかしながら、モータユニットMの構成は、上述の実施形態の構成に限定されない。例えば、モータユニットは、XYテーブルや垂直搬送装置等、位置制御が必要な装置等に適用してもよい。また、モータユニットは、アクチュエータのみの構成でもよい。
【0198】
また、上述の全ての実施形態において、アクチュエータ26は、モータ27、ブレーキ機構8を含むアブソリュートエンコーダ1及び駆動装置31が多関節ロボットアーム12の筐体15、筐体19、筐体23内にそれぞれ設けられている機電一体構造として構成されている。しかしながら、アクチュエータの構成は、上述の実施形態の構成に限定されない。例えば、アクチュエータは、駆動装置が多関節ロボットアームの筐体の外部に配置されていてもよい。
【0199】
また、上述の全ての実施形態において、アブソリュートエンコーダ1、1A、1B、1Cは、反射型の光学式アブソリュートエンコーダである。しかしながら、アブソリュートエンコーダの構成は、上述の実施形態の構成に限定されない。例えば、アブソリュートエンコーダは、透過型の光学式アブソリュートエンコーダ、磁気式アブソリュートエンコーダ又は電磁誘導式アブソリュートエンコーダ等であってもよい。
【0200】
また、上述の全ての実施形態において、アブソリュートエンコーダ1、1A、1B、1Cは、機械角360度につきAB相信号を360パルス生成する。しかしながら、アブソリュートエンコーダの構成は、上述の実施形態の構成に限定されない。例えば、アブソリュートエンコーダは、必要な回転精度を確保するために必要なパルス数を生成するように構成されていればよい。
【0201】
また、上述の全ての実施形態において、アブソリュートエンコーダ1、1A、1B、1Cは、機械角360度につきZ相信号が12パルス生成する。しかしながら、アブソリュートエンコーダの構成は、上述の実施形態の構成に限定されない。例えば、アブソリュートエンコーダは、機械角360度につきZ相信号が2パルス以上、且つAB相信号のパルス数未満であればよい。
【0202】
また、上述の全ての実施形態において、アブソリュートエンコーダ1、1A、1B、1Cは、全ての周方向に隣り合うZ相信号立ち上がり被検出部3aの機械角とZ相信号立ち下がり被検出部3bの機械角との組み合わせによって規定される角度範囲において同一のAB相信号のパルス数となる角度範囲が存在するようにZ相信号立ち上がり被検出部3aとZ相信号立ち下がり被検出部3bとを配置してもよい。例えば12の間隔が6種類のパルス数によって構成される場合、コンピュータは、Z相信号を3個取得し、AB相信号のパルス数を比較することでモータにおける回転軸の回転角を検出することができる。
【0203】
また、上述の全ての実施形態において、回転板7は、ブレーキ機構8の回転体9に設けられている。しかしながら、回転板7は、上述の実施形態の構成に限定されない。例えば、回転板7は、モータの回転軸に直接固定されていてもよい。
【0204】
また、上述の全ての実施形態において、ブレーキ機構8の回転体9は、係合突起部9aを周方向に等間隔に6つ有している。しかしながら、ブレーキ機構8の回転体9は、上述の実施形態の構成に限定されない。例えば、ブレーキ機構の回転体は、複数の係合突起部を周方向に等間隔に有していればよい。また、回転体は、複数の係合突起部を周方向に不等間隔に有していてもよい。
【0205】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0206】
1、1A、1B、1C アブソリュートエンコーダ
2 AB相信号被検出部2
3 Z相信号被検出部
3a Z相信号立ち上がり被検出部
3b Z相信号立ち下がり被検出部
4 AB相信号検出部
5 Z相信号検出部
6 出力部
7 回転板
8 ブレーキ機構
9 回転体
9a 係合突起部
10 係合ピン
11 多関節ロボットアーム装置
12 多関節ロボットアーム
27 モータ
31 駆動装置
27a 回転軸 G1、G2、G3、G4、G5、G6 隙間
S1、S2、S3、S4、S5、S6 セクション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16