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特許7368529家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性評価方法及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性評価方法及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20231017BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12N1/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022048994
(22)【出願日】2022-03-24
(65)【公開番号】P2023101368
(43)【公開日】2023-07-20
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】202210024271.5
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522118953
【氏名又は名称】ヂェァジァン アカデミー オブ アグリカルチュラル サイエンシズ
【氏名又は名称原語表記】Zhejiang Academy of Agricultural Sciences
【住所又は居所原語表記】198 Shiqiao Rd, Hangzhou City, Zhejiang Province, 310021, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ワン ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ファ
(72)【発明者】
【氏名】シァォン シンニン
(72)【発明者】
【氏名】シァォ インピン
(72)【発明者】
【氏名】リュ ウェンタオ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】Journal of Food Protection,2007年,Vol.70, No.10,pp.2243-2250
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/06
C12N 1/20
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
AGRICOLA(STN)
BIOTECHNO(STN)
FSTA(STN)
SCISEARCH(STN)
TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性の評価方法であって、
ステップ1:細菌懸濁液の調製
家禽から分離して得られたサルモネラ菌及び品質管理菌株を大豆カゼインダイジェスト寒天平板上にストリークし、一定時間培養した後、3~5個の単一コロニーを滅菌綿棒に浸し、遠心管でよく撹拌し、細菌懸濁液の濁度を0.5のマクファーランド濁度に調整し、次にカゼイン加水分解物ブロス(MHB)で細菌懸濁液を100倍に希釈した後でよく混ぜて用意しておき、調製した濃度の細菌懸濁液は、15分以内に試料添加を完了し
ステップ2:塩素消毒剤の調合
滅菌済みの無菌水で消毒剤原液を濃度勾配希釈して用意しておき;
ステップ3:塩素抵抗性の測定及び評価
ブロス微量希釈法で供試菌株に対するNaClOの最小発育阻止濃度(MIC)を測定し、品質管理菌株のMIC値を基準とし、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてMIC値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし、又は、
複数の供試菌株が同じMIC値にある時、1/2MIC品質管理菌株の消毒剤濃度処理下の菌株OD600値を濁度法で測定し、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてOD600値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし、OD600値の大きさに基づき供試菌株の塩素抵抗性の強さを順位付け・評価する、
上記ステップ1~ステップ3を含み、
品質管理菌株は、サルモネラS.Enteritidis CVCC 1806である、
ことを特徴とする、家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性の評価方法。
【請求項2】
フローサイトメトリーを用いて処理した後の生細胞、死細胞及び損傷細胞を定量化し、濃度がMICの消毒液で品質管理菌株及び塩素抵抗性の特徴を持つ菌株を各々処理し、染色された菌株の生存率を観察し、供試菌株の塩素抵抗性の強さを判断する塩素抵抗性評価検証ステップ4をさらに含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性の評価方法。
【請求項3】
前記ステップ2内の消毒剤の希釈濃度は、1/2MIC品質管理菌株、MIC品質管理菌株、2MIC品質管理菌株、4MIC品質管理菌株、8MIC品質管理菌株に従い勾配を設定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性の評価方法。
【請求項4】
前記ステップ3の具体的なプロセスとしては、
まず、96ウェルマイクロタイタープレートに異なる濃度の消毒剤を含む50μLの作業溶液を加え、次に消毒剤濃度の低いものから高いものの順に希釈した細菌懸濁液を順次接種し、実験と同時に陽性対照及び陰性対照を設け、シールして適切な温度で一定時間培養した後、96ウェルマイクロタイタープレート内の細菌の目に見える成長を観察し、細菌の目に見える成長が観察されない最小消毒剤濃度を、菌株の最小発育阻止濃度(MIC)とし;
品質管理菌株のMIC値を基準とし、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてMIC値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし、又は、
複数の供試菌株が同じのMIC値にある時、1/2MIC品質管理菌株の消毒剤濃度処理下の菌株OD600値を濁度法で測定し、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてOD600値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし、OD600値の大きさに基づき供試菌株の塩素抵抗性の強さを順位付け・評価する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性の評価方法。
【請求項5】
前記ステップ4の具体的なプロセスとしては、
濃度がMIC品質管理菌株の消毒液で品質管理菌株及び有塩素抵抗性の特徴を持つ菌株をそれぞれ0、10、30分間処理し、生死細胞染色キットで生菌、死菌、損傷菌を区別し、1mLの菌液と1.5μLSYTO9染色色素を1.5μLヨウ化プロピジウム染色色素と混合し、次に混合物を暗所で室温にて15分間染色した後、フローサイトメーターでテストし、染色された菌株の生存率の観察を介して、供試菌株の塩素抵抗性の強さを判断する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性の評価方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性評価方法であって、抵抗性の特徴を持つサルモネラ菌のスクリーニング又はサルモネラ菌の塩素抵抗性の強さを評価するために用いられることを特徴とする、評価方法
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性評価方法であって、塩素抵抗性サルモネラ菌に対して交差耐性が生じる抗生物質をスクリーニングするために用いられることを特徴とする、評価方法
【請求項8】
スクリーニングステップとしては、
ステップ1:細菌懸濁液の調製
家禽から分離して得られたサルモネラ菌及び品質管理菌株を大豆カゼインダイジェスト寒天平板上にストリークし、一定時間培養した後、3~5個の単一コロニーを滅菌綿棒に浸し、遠心管でよく撹拌し、細菌懸濁液の濁度を0.5のマクファーランド濁度に調整し、次にカゼイン加水分解物ブロス(MHB)で細菌懸濁液を100倍に希釈した後でよく混ぜて用意しておき;
ステップ2:塩素消毒剤の調合
滅菌済みの無菌水で消毒剤原液を濃度勾配希釈して用意しておき;
ステップ3:塩素抵抗性の測定
ブロス微量希釈法で供試菌株に対するNaClOの最小発育阻止濃度(MIC)を測定し、品質管理菌株のMIC値を基準とし、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてMIC値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし、又は、
複数の供試菌株が同じのMIC値にある時、1/2MIC品質管理菌株の消毒剤濃度処理下の菌株OD600値を濁度法で測定し、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてOD600値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし;
ステップ4:抗生物質抵抗性の測定
好気性グラム陰性菌の薬剤感受性パネルを使用し、アンピシリン、アモキシシリン/クラブラン酸塩、セフォタキシム、メロペネム、アミカシン、ゲンタマイシン、コリスチン、セフチオフル、シプロフロキサシン、コトリモキサゾール、テトラサイクリン、チゲサイクリン、フロルフェニコールという13種類の抗生物質に対する塩素抵抗性の特徴を持つ菌株の最小発育阻止濃度(MIC)を測定し、塩素抵抗性サルモネラ菌の抗生物質抵抗性を判断し;
ステップ5:交差耐性の評価
塩素抵抗性(OD600値)と抗生物質抵抗性(MIC値)との間の相関関係を比較することにより、一体どの抗生物質が塩素抵抗性サルモネラ菌に対して交差耐性が生じるかを判断し、算出されたP値が有意に正の相関関係である場合、交差耐性が生じることを示し、これとは対照的に交差耐性が生じない、
ステップ1~ステップ5を含むことを特徴とする、請求項7に記載の評価方法
【請求項9】
前記塩素抵抗性サルモネラ菌に対して交差耐性が生じる抗生物質はセフチオフル、シプロフロキサシン、テトラサイクリン又はフロルフェニコールから選択されることを特徴とする、請求項8に記載の評価方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の薬剤耐性研究の技術分野に関し、特に、家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性評価方法及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
サルモネラ菌は、人に胃腸炎を起こす一般的な原因であり、世界中の重要な公衆衛生上の問題でもある。研究によりサルモネラ菌は、中国において毎年987万例の胃腸炎症例を起こしていることがわかっている。現在2600種類以上のサルモネラエンテリティディス血清型が報告され、報告によると、サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラケンタッキー、及びサルモネラインディアナがサルモネラ症を起こす最も一般的な血清型である。家禽製品は、サルモネラ菌がサルモネラ菌の最も一般的な感染媒介であり、中国の家禽サンプルの37.5%がサルモネラ菌に汚染されている。家禽の周囲環境の汚染及び同じ屠殺ラインでの多数の動物の屠殺は、家禽を直接汚染または交差汚染する可能性があり、不適切に調理及び/又は処理された汚染製品を食べると食品由来のサルモネラ症を罹患する可能性があった。
【0003】
次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)は、高効率の広域殺菌剤で、殺菌原理が水中で次亜塩素酸を生成し、細胞内のタンパク質と酸化的に反応するか、リン酸デヒドロゲナーゼの構造を破壊することで、糖代謝を障害させて、細胞死を起すことである。中国の肉用鶏屠殺の業界標準(NY/T 1174-2006)では、予冷された水中のNaClO消毒剤の濃度を50~100mg/Lに維持するよう定められている。しかし、大部分の細菌を殺す又は阻害することができる消毒剤の濃度で殺す又は阻害することができない菌株の出現につれ、消毒剤耐性菌が人々に徐々に注目されてきた。屠殺の予冷の水中に大量のNaClOを投入したとしてもサルモネラ菌の殺傷効率は低く、細菌がNaClOに対してある程度の耐性が存在してきた。消毒剤に対する細菌の抵抗性機序が非常に複雑で、能動排出方式、透過障壁、作用点の変化及び毒剤に抵抗又は分解する酵素の生成が主な機序である。研究によると、消毒剤に対する細菌の耐性と抗生物質に対する薬剤耐性との間には、ある程度の交差耐性が存在している。これまで、家禽サプライチェーンから分離されたNaClOに対するサルモネラ菌の耐性は、まだ完全に明確化されていない。
【0004】
現在、家禽由来サルモネラ菌の特許文献の多くは、PCR検査方法に焦点を当て、例えば特許文献1においてPCRバッファー、デオキシリボヌクレオチド三リン混合物、Taq DNAポリメラーゼ及びbcf遺伝子、heli遺伝子、rhs遺伝子、sdf遺伝子、fla遺伝子のプライマーペアを含み、家禽由来サルモネラ菌を同定するためのマルチプレックスPCR検出キットが開示され、また家禽の生産或いは家禽製品内に蔓延している異なるサルモネラ血清型を同定するため、前記キットを運用して家禽由来サルモネラ菌を同定するマルチプレックスPCR検査方法も開示されている。また特許文献2では、家禽由来サルモネラ菌のマルチプレックスPCR検出キット及び非診断的な検出方法が開示され、該キットには10×PCRバッファー、2.5U/μl Taq DNAポリメラーゼ、10Mm dNTPs、マルチプレックスPCR検出プライマーセット、陽性対照及び陰性対照が含まれ、陽性対照物はサルモネラエンテリティディスATCC13076、サルモネラチフィムリウムATCC14028、サルモネラガリナルムATCC9184ゲノムDNAを含み、陰性対照は滅菌再蒸留水であり、また前記キットを運用して家禽由来サルモネラ菌を検収するマルチプレックスPCR方法も開示されている。
【0005】
家禽の食品の安全性を向上するため、家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性を評価する方法に関する特許文献報告がなく、どのような抗生物質が塩素抵抗性のサルモネラ菌に対し交差耐性が生じるかという文献報告もない。
【0006】
上記をまとめると、家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性を正確に評価する方法を提供し、並びに該方法を運用して塩素抵抗性のサルモネラ菌に対して交差耐性が生じる抗生物質をスクリーニングすることは、当業者がまだ解決されない技術的課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】発明の名称が家禽由来サルモネラ菌を同定するためのマルチプレックスPCR検出キット及びその方法である、中国特許第CN104774969A号公開公報
【文献】発明の名称が家禽由来サルモネラ菌のマルチプレックスPCR検出キット及び非診断性検出方法である、中国特許第CN105648055A号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、サルモネラ分離株と品質管理菌株の最小発育阻止濃度(MIC)を比較するか、サルモネラ分離株と品質管理菌株の吸光度(OD600)を比較して、塩素抵抗性特徴を持つサルモネラ分離株を選別し、OD600値の大きさに基づきサルモネラ分離株の塩素抵抗性の強さを順位付け・評価する家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性の評価方法を提供することを、第1の技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の技術的課題を解決するために、次のような技術的手段を提示する。
【0010】
家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性の評価方法は、以下の構成を有する。すなわち、
ステップ1:細菌懸濁液の調製
家禽から分離して得られたサルモネラ菌及び品質管理菌株を大豆カゼインダイジェスト寒天平板上にストリークし、一定時間培養した後、3~5個の単一コロニーを滅菌綿棒に浸し、遠心管でよく撹拌し、細菌懸濁液の濁度を0.5のマクファーランド濁度に調整し、次にカゼイン加水分解物ブロス(MHB)で細菌懸濁液を100倍に希釈した後でよく混ぜて用意しておき;
ステップ2:塩素消毒剤の調合
滅菌済みの無菌水で消毒剤原液を濃度勾配希釈して用意しておき;
ステップ3:塩素抵抗性の測定及び評価
ブロス微量希釈法で供試菌株に対するNaClOの最小発育阻止濃度(MIC)を測定し、品質管理菌株のMIC値を基準とし、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてMIC値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし、又は、
複数の供試菌株が同じのMIC値にある時、1/2MIC品質管理菌株の消毒剤濃度処理下の菌株OD600値を濁度法で測定し、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてOD600値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし、OD600値の大きさに基づき供試菌株の塩素抵抗性の強さを順位付け・評価する。
【0011】
好ましくは、前述塩素抵抗性の評価方法は、次のステップ4をさらに含む。すなわち、
ステップ4:塩素抵抗性の評価検証
フローサイトメトリーを用いて処理した後の生細胞、死細胞及び損傷細胞を定量化し、濃度がMIC品質管理菌株(又は1/2MIC品質管理菌株)の消毒液で品質管理菌株及び塩素抵抗性菌株を各々処理し、染色された菌株の生存率を観察し、供試菌株の塩素抵抗性の強さを判断する。
【0012】
好ましくは、ステップ2内の消毒剤の希釈濃度は、1/2MIC品質管理菌株、MIC品質管理菌株、2MIC品質管理菌株、4MIC品質管理菌株、8MIC品質管理菌株に従い勾配を設定する。
【0013】
好ましくは、ステップ3の具体的なプロセスとしては、
まず、96ウェルマイクロタイタープレートに異なる濃度の消毒剤を含む50μLの作業溶液を加え、次に消毒剤濃度の低いものから高いものの順に希釈した細菌懸濁液を順次接種し、実験と同時に陽性対照及び陰性対照を設け、シールして適切な温度で一定時間培養した後、96ウェルマイクロタイタープレート内の細菌の目に見える成長を観察する。細菌の目に見える成長が観察されない最小消毒剤濃度を、菌株の最小発育阻止濃度(MIC)とし;
品質管理菌株のMIC値を基準とし、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてMIC値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし、又は、
複数の供試菌株が同じのMIC値にある時、1/2MIC品質管理菌株の消毒剤濃度処理下の菌株OD600値を濁度法で測定し、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてOD600値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし、OD600値の大きさに基づき供試菌株の塩素抵抗性の強さを順位付け・評価する。
【0014】
好ましくは、ステップ4の具体的なプロセスとしては、
濃度がMIC品質管理菌株(又は1/2MIC品質管理菌株)の消毒液で品質管理菌株及び有塩素抵抗性の特徴を持つ菌株をそれぞれ0、10、30分間処理し、生死細胞染色キットで生菌、死菌、損傷菌を区別する。1mLの菌液と1.5μLSYTO9染色色素を1.5μLヨウ化プロピジウム染色色素と混合し、次に混合物を暗所で室温にて15分間染色した後、フローサイトメーターでテストし、染色された菌株の生存率の観察を介して、供試菌株の塩素抵抗性の強さを判断する。
【0015】
好ましくは、前述の全ての評価方法における品質管理菌株は、サルモネラS.Enteritidis CVCC 1806から選択される。
【0016】
本発明は、抵抗性の特徴を持つサルモネラ菌のスクリーニング又はサルモネラ菌の塩素抵抗性の強さを評価するための上に述べたような家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性評価方法の応用も提供する。
【0017】
好ましくは、塩素抵抗性が極めて強いサルモネラ菌は、S.Enteritidis S2002-13としてスクリーニングされる。
【0018】
本発明は、前記塩素抵抗性評価方法に基づいて、各種抗生物質に対する塩素抵抗性の特徴を持つ菌株の最小発育阻止濃度(MIC)をさらに測定することにより、塩素抵抗性サルモネラ菌の抗生物質抵抗性を判断し、また塩素抵抗性(OD600値)と抗生物質抵抗性(MIC値)との間の相関関係を比較して、塩素抵抗性サルモネラ菌に対して交差耐性が生じる抗生物質をスクリーニングする家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性評価方法の応用を提供することを、第2の技術的課題とするものである。
【0019】
本発明は、第2の技術的課題を解決するために、次のような技術的手段を提示する。
【0020】
前記家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性評価方法の応用は、塩素抵抗性サルモネラ菌に対して交差耐性が生じる抗生物質をスクリーニングするために用いられる。
【0021】
好ましくは、次のスクリーニングステップを含む。すなわち、
ステップ1:細菌懸濁液の調製
家禽から分離して得られたサルモネラ菌及び品質管理菌株を大豆カゼインダイジェスト寒天平板上にストリークし、一定時間培養した後、3~5個の単一コロニーを滅菌綿棒に浸し、遠心管でよく撹拌し、細菌懸濁液の濁度を0.5のマクファーランド濁度に調整し、次にカゼイン加水分解物ブロス(MHB)で細菌懸濁液を100倍に希釈した後でよく混ぜて用意しておき;
ステップ2:塩素消毒剤の調合
滅菌済みの無菌水で消毒剤原液を濃度勾配希釈して用意しておき;
ステップ3:塩素抵抗性の測定
ブロス微量希釈法で供試菌株に対するNaClOの最小発育阻止濃度(MIC)を測定し、品質管理菌株のMIC値を基準とし、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてMIC値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし、又は、
複数の供試菌株が同じのMIC値にある時、1/2MIC品質管理菌株の消毒剤濃度処理下の菌株OD600値を濁度法で測定し、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてOD600値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし;
ステップ4:抗生物質抵抗性の測定
好気性グラム陰性菌の薬剤感受性パネルを使用し、アンピシリン、アモキシシリン/クラブラン酸塩、セフォタキシム、メロペネム、アミカシン、ゲンタマイシン、コリスチン、セフチオフル、シプロフロキサシン、コトリモキサゾール、テトラサイクリン、チゲサイクリン、フロルフェニコールという13種類の抗生物質に対する塩素抵抗性の特徴を持つ菌株の最小発育阻止濃度(MIC)を測定し、塩素抵抗性サルモネラ菌の抗生物質抵抗性を判断し;
ステップ5:交差耐性の評価
塩素抵抗性(OD600値)と抗生物質抵抗性(MIC値)との間の相関関係を比較することにより、一体どの抗生物質が塩素抵抗性サルモネラ菌に対して交差耐性が生じるかを判断し、算出されたP値が有意に正の相関関係である場合、交差耐性が生じることを示し、これとは対照的に交差耐性が生じない。
【0022】
好ましくは、前述のスクリーニング方法における品質管理菌株は、サルモネラS.Enteritidis CVCC 1806から選択される。
【0023】
好ましくは、塩素抵抗性サルモネラ菌に対して交差耐性が生じる抗生物質は、セフチオフル、シプロフロキサシン、テトラサイクリン又はフロルフェニコールから選択される。
【発明の効果】
【0024】
従来技術と比較すると、本発明の有利な効果は、次の通りである。すなわち、
1、本発明は、家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性の評価方法を提供し、172種のサルモネラ分離株に対し評価方法で試験を実施し、品質管理菌株S.Enteritidis CVCC 1806よりも塩素抵抗性が高い160種以上の供試菌株をスクリーニングでき、これにはサルモネラS.Enteritidis S2002-13も含まれるがこれに限定されない。対照的に、塩素抵抗性が品質管理菌株よりも非常に強い供試菌株は、サルモネラS.Enteritidis S2002-13である。
【0025】
2、スクリーニングされたサルモネラS.Enteritidis S2002-13について、フローサイトメトリーを通じて塩素抵抗性菌株と品質管理菌株の生存率の差を比較して、サルモネラS.Enteritidis S2002-13の塩素抵抗性が品質管理菌株S.Enteritidis CVCC 1806よりも優れていることを検証し、又はOD600値がサルモネラS.Enteritidis S2002-13よりも低い他の塩素抵抗性菌株の塩素抵抗性もサルモネラS.Enteritidis S2002-13よりも弱いことを検証する。
【0026】
3、本発明はまた、家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性評価方法の応用を提供し、塩素抵抗性が品質管理菌株S.Enteritidis CVCC 1806より優れている160種以上の供試菌株に対して、アンピシリン、アモキシシリン/クラブラン酸塩、セフォタキシム、メロペネム、アミカシン、ゲンタマイシン、コリスチン、セフチオフル、シプロフロキサシン、コトリモキサゾール、テトラサイクリン、チゲサイクリン、フロルフェニコールという13種類の抗生物質に対する塩素抵抗性の特徴を持つ菌株の最小発育阻止濃度(MIC)を測定することで、塩素抵抗性サルモネラ菌の抗生物質抵抗性を判断する。また塩素抵抗性(OD600値)と抗生物質抵抗性(MIC値)との間の相関関係を比較することで、一体どの抗生物質が塩素抵抗性サルモネラ菌に対し交差耐性が生じるかどうかを判断する。
【0027】
結果は、160以上の塩素抵抗性サルモネラ菌のうち、セフチオフル、シプロフロキサシン、テトラサイクリン、フロルフェニコールという4種類の抗生物質のみに対して交差耐性が生じることを示している。
【0028】
上記をまとめると、本発明により提供される家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性の評価方法及びその応用は、供試菌株の塩素抵抗性の強さを迅速かつ正確に評価し、塩素抵抗性供試菌株に対して交差耐性が生じする抗生物質をスクリーニングでき、禽類の食品の安全性を向上するために保護する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】96ウェルプレート設置方法を示す例である(プレートあたり4つの細菌を接種し、3組並列しループ、陽性対照及び陰性対照を各々設置する)。
図2】家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性の測定結果を示す図である。
図3】128mg/L次亜塩素酸ナトリウム処理下での品質管理菌株S.Enteritidis CVCC 1806(図3A図3C)及び塩素抵抗性菌株S.Enteritidis S2002-13(図3D図3F)のフローサイトメトリーの細胞図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面及び実施例を参照しつつ本発明の技術的手段をさらに説明する。ただし、本発明の保護範囲は、これらの実施例を含むがこれらに限定されず、本発明の技術的思想から逸脱しないすべて変化又は均等な置換は本発明の保護範囲に含まれている。
【0031】
(実施例1 家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性の評価方法の構築)
一、供試菌株の用意
1品質管理菌株:サルモネラS.Enteritidis CVCC 1806は、中国微生物菌種保存センターに由来する。品質管理菌株は、70℃以下で保存され、継代回数が5回以内までとした。
2供試菌株:家禽由来サルモネラ分離株。
【0032】
二、細菌懸濁液の調製
無菌操作で家禽から分離して得られたサルモネラ菌及び品質管理菌株を大豆カゼインダイジェスト寒天(TSA)平板上にストリークし、36±1℃で16~18時間培養し、3~5個の単一コロニーを滅菌綿棒に浸し、3mL生理食塩水を含む遠心管内でよく撹拌し、濁度計と標準比濁チューブを使用して菌液の濃度を0.5のマクファーランド単位(≒10CFU/mL)に校正してからカゼイン加水分解物ブロス(MHB)で細菌懸濁液を100倍に希釈した後でよく混ぜて用意しておく。
【0033】
調製した濃度の菌液は、15分以内に試料添加を完了しなければならない。
【0034】
三、塩素消毒剤の調合
塩素消毒剤溶液は、メーカー又は他の商業的に入手することができ、薬剤に薬剤の通称名、ロット番号、濃度及び有効期限を明記したラベルを貼り、指定された温度と湿度で保管される。
【0035】
この実験において、塩素56.8mg/mLを含有するNaClO原液は、上海生工生物科技有限会社から購入した。無菌のMilli-Q水(Pall,Buckinghamshire、UK)でNaClO原液を希釈して溶液を調製し、またPalintestChlorSense(KEMS10DISCN,Gateshead、UK)で溶液内の有効塩素濃度を測定した。測定した結果、次亜塩素酸ナトリウムの最小発育阻止濃度の範囲は128~768mg/L、濃度間の均等な間隔が128mg/Lであった。
【0036】
滅菌済みの無菌水で消毒剤原液を一連の濃度勾配に希釈して用意しておき、選択推奨範囲には、品質管理菌株の管理値、すなわち、1/2MIC品質管理菌株、MIC品質管理菌株、2MIC品質管理菌株、4MIC品質管理菌株、8MIC品質管理菌株等を含める。消毒剤試験濃度の数は、5つ以上の濃度を選択するよう推奨する。
【0037】
四、塩素抵抗性の測定
この実験において、ブロス微量希釈法で172株のサルモネラ菌株に対する次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の最小発育阻止濃度(MIC)を測定し、品質管理菌株のMIC値を基準とし、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてMIC値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし、又は、
複数の供試菌株が同じのMIC値にある時、1/2MIC品質管理菌株の消毒剤濃度処理下の菌株OD600値を濁度法で測定し、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてOD600値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし、OD600値の大きさに基づき供試菌株の塩素抵抗性の強さを順位付け・評価した。
【0038】
この研究では、分光光度計(ドイツOrtenberg社製のPOLARstarOmega)を用い、マイクロタイタープレート上のNaClO濃度(128mg/L)が最も低いウェルのOD600値をスキャンし、これに基づいてNaClOに対する異なる菌株の耐性の差を区別した。
【0039】
96ウェルプレートの設置方法の例を図1に示す。まず、96ウェルマイクロタイタープレートに異なる濃度の消毒剤を含む50μLの作業溶液(例えば濃度は1/2MIC品質管理菌株、MIC品質管理菌株、2MIC品質管理菌株、4MIC品質管理菌株、8MIC品質管理菌株に設定する)を加え、次に消毒剤濃度の低いものから高いものの順に50μLの希釈した細菌懸濁液(数量が約10FU)を順次接種し、実験と同時に陽性対照(50μLの細菌懸濁液と50μLのブランクMHBに接種)と陰性対照(100μLのブランクMHBに直接接種)を設けた。試料ごとに3つ繰り返して設けた。マイクロタイタープレート用の使い捨てシーリングフィルムでシールし、試料ごとに3つ繰り返して設け、36±1℃で18時間培養した。96ウェルマイクロタイタープレート内の細菌の目に見える成長を観察し、96ウェルマイクロタイタープレート内の細菌の目に見える成長(クリアウェル)が観察されない最小消毒剤濃度を、MIC(MIC供試菌>MIC品質管理菌、薬剤耐性菌)とした。
【0040】
品質管理菌株のMIC値を基準とし、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてMIC値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングした。
【0041】
ただし、複数の供試菌株が同じMIC値にある場合、特に供試菌株と品質管理菌株のMIC値が同じである場合、供試菌株に塩素抵抗性の有無、又は塩素抵抗性の強さがどれくらいか判断することができなかった。
【0042】
したがって、同じMIC値における菌株の塩素抵抗性の差を区別するため、品質管理菌株のMIC値を基準とし、1/2MIC品質管理菌株の消毒剤濃度処理下のウェルを選択してOD600値(濁度法による測定)を測定した。測定結果を図2に示す。図2内からも分かるように、OD600値が大きければ大きいほど抵抗性が強くなる。
【0043】
(実施例2 家禽由来サルモネラ菌の塩素抵抗性の評価方法の検証と応用)
実施例1に基づいて、172株のサルモネラ菌株のOD600値を測定することにより、160種以上の塩素抵抗性が品質管理菌株S.Enteritidis CVCC 1806よりも優れたサルモネラ菌分離株をスクリーニングし、またOD600値の大きさの順により、塩素抵抗性が極めて強い品質管理菌株のサルモネラ分離株、すなわち、サルモネラS.Enteritidis S2002-13をスクリーニングした。
【0044】
さらに、フローサイトメトリー(FCM)で試験した塩素抵抗性菌株と品質管理菌株の生存率の差を比較して、スクリーニングした塩素抵抗性菌株の塩素抵抗性が品質管理菌株よりも本当に優れているかどうかを検証・評価した。つまり、本実施例は、塩素抵抗性菌株S.Enteritidis S2002-13と品質管理菌株S.Enteritidis CVCC 1806の耐性の差を評価することにより、実施例1で構築された塩素抵抗性の評価方法を検証する。
【0045】
評価・検証の具体的なステップ:濃度がMIC品質管理菌株(又は1/2MIC品質管理菌株)の消毒液で品質管理菌株CVCC 1806、塩素抵抗性菌株S2002-13(8LogCFU/mL)をそれぞれ0、10、30分間処理し、生死細胞染色キット(BacLight(R)BacterialViabilityKitL7012,MolecularProbes,Carlsbad、USA)で生菌、死菌、損傷菌を区別する。1mLの菌液と1.5μLSYTO9染色色素を1.5μLヨウ化プロピジウム(PI)染色色素と混合し、次に混合物を暗所で室温にて15分間染色した後、装備する488nmと640nmレーザーのBD-AccuriC6のフローサイトメーターでFCMテストを実施した。テスト結果を図3に示す。
【0046】
図3から分かるように、
1)塩素消毒剤で処理されていない細菌は、SYTO9陽性が高かった(図3A及び図3D)。
2)10分間処理された後、約11.6%の品質管理菌株CVCC 1806と6.9%の塩素抵抗性菌株S2002-13細胞が損傷された(図3B及び図3E)。
3)品質管理菌株CVCC 1806の場合、細菌の68%が30分後にPI陽性でしたが、同じ処理時間で塩素耐性菌S2002-1の約19.2%がPI陽性であった(図3C及び図3F)。
4)品質管理菌株CVCC 1806と比較すると、耐塩素性菌株S2002-13は、塩素含有消毒剤ストレス後の生存率が高く、塩素に対する抵抗性がより高いことを示している。
【0047】
(実施例3 塩素抵抗性サルモネラ菌に対して交差耐性が生じる抗生物質をスクリーニングする方法及び応用)
実施例1に基づいて、172株のサルモネラ菌株のOD600値を測定することにより、160種以上の塩素抵抗性が品質管理菌株S.Enteritidis CVCC 1806よりも優れたサルモネラ菌分離株をスクリーニングする。さらに多種類の抗生物質に対するこの160種類以上のサルモネラ分離株の最小発育阻止濃度(MIC)を測定することで、塩素抵抗性サルモネラ菌の抗生物質抵抗性を判断する。また塩素抵抗性(OD600値)と抗生物質抵抗性(MIC値)との間の相関関係を比較することで、一体どの抗生物質が塩素抵抗性サルモネラ菌に対し交差耐性が生じるかどうかをスクリーニングする。
【0048】
スクリーニングステップは、具体的に次の通りである。すなわち、
一、供試菌株の用意
1品質管理菌株:サルモネラS.Enteritidis CVCC 1806は、中国微生物菌種保存センターに由来する。品質管理菌株は、70℃以下で保存され、継代回数が5回以内までとした。
2供試菌株:家禽由来サルモネラ分離株。
【0049】
二、細菌懸濁液の調製
無菌操作で家禽から分離して得られたサルモネラ菌及び品質管理菌株を大豆カゼインダイジェスト寒天(TSA)平板上にストリークし、36±1℃で16~18時間培養し、3~5個の単一コロニーを滅菌綿棒に浸し、3mL生理食塩水を含む遠心管内でよく撹拌し、濁度計と標準比濁チューブを使用して菌液の濃度を0.5のマクファーランド単位(≒10CFU/mL)に校正してからカゼイン加水分解物ブロス(MHB)で細菌懸濁液を100倍に希釈した後でよく混ぜて用意しておく。
【0050】
調製した濃度の菌液は、15分以内に試料添加を完了しなければならない。
【0051】
三、塩素消毒剤の調合
塩素消毒剤溶液は、メーカー又は他の商業的に入手することができ、薬剤に薬剤の通称名、ロット番号、濃度及び有効期限を明記したラベルを貼り、指定された温度と湿度で保管される。
【0052】
この実験において、塩素56.8mg/mLを含有するNaClO原液は、上海生工生物科技有限会社から購入した。無菌のMilli-Q水(Pall,Buckinghamshire、UK)でNaClO原液を希釈して溶液を調製し、またPalintestChlorSense(KEMS10DISCN,Gateshead、UK)で溶液内の有効塩素濃度を測定した。測定結果、次亜塩素酸ナトリウムの最小発育阻止濃度の範囲は128~1024mg/L、濃度間の均等な間隔が128mg/Lであった。
【0053】
滅菌済みの無菌水で消毒剤原液を一連の濃度勾配に希釈して用意しておき、選択推奨範囲には、品質管理菌株の管理値、すなわち、1/2MIC品質管理菌株、MIC品質管理菌株、2MIC品質管理菌株、4MIC品質管理菌株、8MIC品質管理菌株等を含める。消毒剤試験濃度の数は、5つ以上の濃度を選択するよう推奨する。
【0054】
四、塩素抵抗性の測定
この実験において、ブロス微量希釈法で172株のサルモネラ菌株に対する次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の最小発育阻止濃度(MIC)を測定し、品質管理菌株のMIC値を基準とし、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてMIC値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングし、又は、
複数の供試菌株が同じのMIC値にある時、1/2MIC品質管理菌株の消毒剤濃度処理下の菌株OD600値を濁度法で測定し、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてOD600値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングした。
【0055】
この研究では、分光光度計(ドイツOrtenberg社製のPOLARstarOmega)を用い、マイクロタイタープレート上のNaClO濃度(128mg/L)が最も低いウェルのOD600値をスキャンし、これに基づいてNaClOに対する異なる菌株の耐性の差を区別した。
【0056】
具体的にはまず、96ウェルマイクロタイタープレートに異なる濃度の消毒剤を含む50μLの作業溶液(例えば濃度は1/2MIC品質管理菌株、MIC品質管理菌株、2MIC品質管理菌株、4MIC品質管理菌株、8MIC品質管理菌株に設定する)を加え、次に消毒剤濃度の低いものから高いものの順に50μLの希釈した細菌懸濁液(数量が約10FU)を順次接種し、実験と同時に陽性対照(50μLの細菌懸濁液と50μLのブランクMHBに接種)と陰性対照(100μLのブランクMHBに直接接種)を設けた。試料ごとに3つ繰り返して設けた。マイクロタイタープレート用の使い捨てシーリングフィルムでシールし、試料ごとに3つ繰り返して設け、36±1℃で18時間培養した。96ウェルマイクロタイタープレート内の細菌の目に見える成長を観察し、96ウェルマイクロタイタープレート内の細菌の目に見える成長(クリアウェル)が観察されない最小消毒剤濃度を、MIC(MIC供試菌>MIC品質管理菌、薬剤耐性菌)とした。
【0057】
品質管理菌株のMIC値を基準とし、塩素抵抗性の特徴を持つ菌株としてMIC値が品質管理菌株よりも高い供試菌株をスクリーニングした。
【0058】
ただし、複数の供試菌株が同じMIC値にある場合、特に供試菌株と品質管理菌株のMIC値が同じである場合、供試菌株に塩素抵抗性があるかどうかを判断することができなかった。
【0059】
したがって、同じMIC値における菌株の塩素抵抗性の差を区別するため、品質管理菌株のMIC値を基準とし、1/2MIC品質管理菌株の消毒剤濃度処理下のウェルを選択してOD600値(濁度法による測定)を測定した。
【0060】
OD600値が大きいほど、抵抗性が強くなり、実験結果は塩素抵抗性が品質管理菌株S.Enteritidis CVCC 1806よりも優れたサルモネラ分離株が160種以上あることを示し、この160種以上の塩素抵抗性サルモネラ菌について次のステップの抗生物質耐性の測定を実施した。
【0061】
五、抗生物質耐性の測定
無菌操作で供試菌株及び品質管理菌株(Escherichia coli ATCC 25922)をTSA平板上にストリークし、36±1℃で16~18時間培養し、3~5個の単一コロニーを滅菌綿棒に浸し、3mL生理食塩水を含む遠心管内でよく撹拌し、濁度計と標準比濁チューブを使用して菌液の濃度を0.5のマクファーランド単位(≒10CFU/mL)に校正してからMHBで細菌懸濁液を100倍に希釈した後でよく混ぜて用意しておく。
【0062】
Biofosun(登録商標)好気性グラム陰性菌感受性パネルを使用してステップ4でスクリーニングされた160種以上の塩素抵抗性サルモネラ菌のアンピシリン(AMP)、アモキシシリン/クラブラン酸塩(AMC)、セフォタキシム(CTX)、メロペネム(MEM)、アミカシン(AMK)、ゲンタマイシン(GEN)、コリスチン(CS)、セフチオフル(CEF)、シプロフロキサシン(CIP)、コトリモキサゾール(T/S)、テトラサイクリン(TET)、チゲサイクリン(TIG)、フロルフェニコール(FFC)の計13種類の抗生物質の最小発育阻止濃度(MIC)を検査した。米国臨床検査標準化委員会(CLSI)の基準で結果を判断した。
【0063】
六、交差耐性の評価
この実験において、塩素抵抗性(OD600値)と抗生物質抵抗性(MIC値)との間の相関関係(P値の計算)を比較することにより、13種類の抗生物質のうち、一体どの抗生物質が塩素抵抗性サルモネラ菌に対して交差耐性が生じるかを判断する。つまり、算出されたP値が有意に正の相関関係である場合、交差耐性が生じることを示し、これとは対照的に交差耐性が生じない。
【0064】
SPSS Statistics 20ソフトウェア内のSpearman関連検定で塩素抵抗性(OD600値)と抗生物質抵抗性(MIC値)との間の相関関係を測定したところ、 Spearman係数の取り得る値の範囲は、-1~+1で、Spearmanの相関関係の分析の結果を表1に示す。
【0065】
表1からも分かるように、塩素消毒剤に対する細菌の抵抗性が抗生物質の薬剤耐性と有意に正の相関関係(p<0.05)にある場合、塩素含有消毒剤と抗生物質がサルモネラ菌に対して交差耐性が生じることを示している。
【0066】
結果は、13種類の抗生物質のうち、セフチオフル(CEF)、シプロフロキサシン(CIP)、テトラサイクリン(TET)、フロルフェニコール(FFC)のみが全ての塩素抵抗性サルモネラ菌に対して交差耐性が生じることを示している。
【0067】
【表1】
図1
図2
図3