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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/07 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
G06F11/07 190
G06F11/07 193
G06F11/07 140H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022100814
(22)【出願日】2022-06-23
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】福田 涼
(72)【発明者】
【氏名】荒木 直幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健
(72)【発明者】
【氏名】三田村 公智
【審査官】今城 朋彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-021577(JP,A)
【文献】特開2008-225929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/07
G06F 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BIOS(Basic Input Output System)の部分機能を示すモジュールを識別するモジュール識別情報と、当該モジュールに対してのPOST(Power On Self Test)処理に要する処理時間を示すPOST時間の基準値とを対応付けて記憶する基準POST時間記憶部と、
前記BIOSに基づく処理を実行するBIOS処理部であって、
前記BIOSの設定に応じた前記モジュールごとに前記POST処理を実行し、実行した前記モジュールごとの前記POST時間を測定する処理と、
前記モジュールに対して測定した前記POST時間と、前記基準POST時間記憶部が記憶する当該モジュールの前記モジュール識別情報に対応する前記基準値とに基づいて、前記POST時間が増大しているか否かを判定し、異常のある前記モジュールである異常モジュールを特定する処理と
を実行するBIOS処理部と
を備え
前記BIOS処理部は、
前記モジュールに異常があると特定された場合に、前記POST時間が、徐々に増加した漸増と急激に増加した急増とのいずれかであるかと、当該モジュールがソフトウェアとハードウェアとのいずれに関連するのかとに基づいて、前記異常モジュールをカテゴリに分類し、分類したカテゴリに基づいて、異常の原因を推定する
報処理装置。
【請求項2】
前記BIOS処理部は、
今回測定した前記POST時間と、前回の前記POST時間との差分値と、過去の前記差分値の平均値とに基づいて、前記POST時間が前記漸増と前記急増とのいずれかであるかを判定する
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記BIOSの設定変更及び内蔵デバイスの変更を含む前記BIOSの環境変更に関する変更履歴を記憶する変更履歴記憶部を備え、
前記BIOS処理部は、
前記変更履歴記憶部から、前記異常モジュールに関連する前記変更履歴を取得し、前記異常モジュールに関連する前記変更履歴と、前記カテゴリとに基づいて、前記異常の原因を推定する
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記カテゴリと、前記異常の原因と、対応処理を示す対応処理情報とを対応付けて記憶する対応処理記憶部を備え、
前記BIOS処理部は、
前記カテゴリ及び前記異常の原因に対応する前記対応処理情報を、前記対応処理記憶部から取得し、取得した前記対応処理情報に基づく対応処理を実行する
請求項から請求項のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記対応処理情報には、前記BIOSの環境を変更前に戻すロールバック処理を示すロールバック処理情報が含まれ、
前記BIOS処理部は、
前記カテゴリ及び前記異常の原因に対応する前記対応処理情報が、前記ロールバック処理情報である場合に、前記ロールバック処理情報に基づく前記ロールバック処理を実行する
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記対応処理情報には、前記BIOSの環境を復旧するリカバリ処理を示すリカバリ処理情報が含まれ、
前記BIOS処理部は、
前記カテゴリ及び前記異常の原因に対応する前記対応処理情報が、前記リカバリ処理情報である場合に、前記リカバリ処理情報に基づく前記リカバリ処理を実行する
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
BIOS(Basic Input Output System)の部分機能を示すモジュールを識別するモジュール識別情報と、当該モジュールに対してのPOST(Power On Self Test)処理に要する処理時間を示すPOST時間の基準値とを対応付けて記憶する基準POST時間記憶部と、前記BIOSに基づく処理を実行するBIOS処理部とを備える情報処理装置の制御方法であって、
前記BIOS処理部が、前記BIOSの設定に応じた前記モジュールごとに前記POST処理を実行し、実行した前記モジュールごとの前記POST時間を測定するステップと、
前記BIOS処理部が、前記モジュールに対して測定した前記POST時間と、前記基準POST時間記憶部が記憶する当該モジュールの前記モジュール識別情報に対応する前記基準値とに基づいて、前記POST時間が増大しているか否かを判定し、異常のある前記モジュールである異常モジュールを特定するステップと
前記BIOS処理部が、前記モジュールに異常があると特定された場合に、前記POST時間が、徐々に増加した漸増と急激に増加した急増とのいずれかであるかと、当該モジュールがソフトウェアとハードウェアとのいずれに関連するのかとに基づいて、前記異常モジュールをカテゴリに分類し、分類したカテゴリに基づいて、異常の原因を推定するステップと
を含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置では、BIOS(Basic Input Output System)が実行されることにより、情報処理装置の初期化及びOS(Operating System)の起動を行っている。また、従来の情報処理装置では、BIOSを実行して起動する際に、POST(Power On Self Test)処理という診断テストを実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-10492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、情報処理装置では、BIOSの設定に応じたBIOS内のモジュールに対して、POST処理が実行されるが、情報処理装置が内蔵するデバイスの劣化や故障によって、POST処理の期間であるPOST時間が長くなることがある。しかしながら、従来の情報処理装置では、このようにPOST時間が長くなった場合に、POST時間が長くなったモジュールを特定し、異常の原因を推定することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、BIOSにより起動する際に、異常箇所を適切に特定することができる情報処理装置、及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、BIOS(Basic Input Output System)の部分機能を示すモジュールを識別するモジュール識別情報と、当該モジュールに対してのPOST(Power On Self Test)処理に要する処理時間を示すPOST時間の基準値とを対応付けて記憶する基準POST時間記憶部と、前記BIOSに基づく処理を実行するBIOS処理部であって、前記BIOSの設定に応じた前記モジュールごとに前記POST処理を実行し、実行した前記モジュールごとの前記POST時間を測定する処理と、前記モジュールに対して測定した前記POST時間と、前記基準POST時間記憶部が記憶する当該モジュールの前記モジュール識別情報に対応する前記基準値とに基づいて、前記POST時間が増大しているか否かを判定し、異常のある前記モジュールである異常モジュールを特定する処理とを実行するBIOS処理部とを備え、前記BIOS処理部は、前記モジュールに異常があると特定された場合に、前記POST時間が、徐々に増加した漸増と急激に増加した急増とのいずれかであるかと、当該モジュールがソフトウェアとハードウェアとのいずれに関連するのかとに基づいて、前記異常モジュールをカテゴリに分類し、分類したカテゴリに基づいて、異常の原因を推定する情報処理装置である。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記の情報処理装置において、前記BIOS処理部は、今回測定した前記POST時間と、前回の前記POST時間との差分値と、過去の前記差分値の平均値とに基づいて、前記POST時間が前記漸増と前記急増とのいずれかであるかを判定してもよい。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の情報処理装置において、前記BIOSの設定変更及び内蔵デバイスの変更を含む前記BIOSの環境変更に関する変更履歴を記憶する変更履歴記憶部を備え、前記BIOS処理部は、前記変更履歴記憶部から、前記異常モジュールに関連する前記変更履歴を取得し、前記異常モジュールに関連する前記変更履歴と、前記カテゴリとに基づいて、前記異常の原因を推定してもよい。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の情報処理装置において、前記カテゴリと、前記異常の原因と、対応処理を示す対応処理情報とを対応付けて記憶する対応処理記憶部を備え、前記BIOS処理部は、前記カテゴリ及び前記異常の原因に対応する前記対応処理情報を、前記対応処理記憶部から取得し、取得した前記対応処理情報に基づく対応処理を実行してもよい。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記の情報処理装置において、前記対応処理情報には、前記BIOSの環境を変更前に戻すロールバック処理を示すロールバック処理情報が含まれ、前記BIOS処理部は、前記カテゴリ及び前記異常の原因に対応する前記対応処理情報が、前記ロールバック処理情報である場合に、前記ロールバック処理情報に基づく前記ロールバック処理を実行してもよい。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記の情報処理装置において、前記対応処理情報には、前記BIOSの環境を復旧するリカバリ処理を示すリカバリ処理情報が含まれ、前記BIOS処理部は、前記カテゴリ及び前記異常の原因に対応する前記対応処理情報が、前記リカバリ処理情報である場合に、前記リカバリ処理情報に基づく前記リカバリ処理を実行してもよい。
【0013】
また、本発明の一態様は、BIOS(Basic Input Output System)の部分機能を示すモジュールを識別するモジュール識別情報と、当該モジュールに対してのPOST(Power On Self Test)処理に要する処理時間を示すPOST時間の基準値とを対応付けて記憶する基準POST時間記憶部と、前記BIOSに基づく処理を実行するBIOS処理部とを備える情報処理装置の制御方法であって、前記BIOS処理部が、前記BIOSの設定に応じた前記モジュールごとに前記POST処理を実行し、実行した前記モジュールごとの前記POST時間を測定するステップと、前記BIOS処理部が、前記モジュールに対して測定した前記POST時間と、前記基準POST時間記憶部が記憶する当該モジュールの前記モジュール識別情報に対応する前記基準値とに基づいて、前記POST時間が増大しているか否かを判定し、異常のある前記モジュールである異常モジュールを特定するステップと、前記BIOS処理部が、前記モジュールに異常があると特定された場合に、前記POST時間が、徐々に増加した漸増と急激に増加した急増とのいずれかであるかと、当該モジュールがソフトウェアとハードウェアとのいずれに関連するのかとに基づいて、前記異常モジュールをカテゴリに分類し、分類したカテゴリに基づいて、異常の原因を推定するステップとを含む制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、BIOSにより起動する際に、異常箇所を適切に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態によるノートPCの主要なハードウェア構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態によるノートPCの機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図3】本実施形態における基準POST時間記憶部のデータ例を示す図である。
図4】本実施形態におけるBIOS変更履歴記憶部のデータ例を示す図である。
図5】本実施形態における測定POST時間記憶部のデータ例を示す図である。
図6】本実施形態における差分値記憶部のデータ例を示す図である。
図7】本実施形態における判定条件情報記憶部のデータ例を示す図である。
図8】本実施形態におけるアクション情報記憶部のデータ例を示す図である。
図9】本実施形態におけるPOST時間の急増の一例を示す図である。
図10】本実施形態におけるPOST時間の漸増の一例を示す図である。
図11】本実施形態によるノートPCの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態による情報処理装置、及び制御方法について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施形態によるノートPC1の主要なハードウェア構成の一例を示す図である。なお、本実施形態において、情報処理装置の一例として、ノートPC1について説明する。
【0018】
図1に示すように、ノートPC1は、CPU11と、メインメモリ12と、ビデオサブシステム13と、表示部14と、チップセット21と、BIOSメモリ22と、HDD23と、オーディオシステム24と、WLANカード25と、USBコネクタ26と、エンベデッドコントローラ31と、入力部32と、電源回路33とを備える。
なお、本実施形態において、CPU11と、チップセット21とは、メイン制御部10に対応する。また、メイン制御部10は、メモリ(メインメモリ12)に記憶されたプログラムを実行するプロセッサ(メインプロセッサ)の一例である。
【0019】
CPU(Central Processing Unit)11は、プログラム制御により種々の演算処理を実行し、ノートPC1全体を制御している。
メインメモリ12は、CPU11の実行プログラムの読み込み領域として、又は、実行プログラムの処理データを書き込む作業領域として利用される書き込み可能メモリである。メインメモリ12は、例えば、複数個のDRAM(Dynamic Random Access Memory)チップで構成される。この実行プログラムには、BIOS(Basic Input Output System)、OS、周辺機器類をハードウェア操作するための各種ドライバ、各種サービス/ユーティリティ、アプリケーションプログラム等が含まれる。
【0020】
ビデオサブシステム13は、画像表示に関連する機能を実現するためのサブシステムであり、ビデオコントローラを含んでいる。このビデオコントローラは、CPU11からの描画命令を処理し、処理した描画情報をビデオメモリに書き込むとともに、ビデオメモリからこの描画情報を読み出して、表示部14に描画データ(表示データ)として出力する。
表示部14は、例えば、液晶ディスプレイであり、ビデオサブシステム13から出力された描画データ(表示データ)に基づく表示画面を表示する。
【0021】
チップセット21は、USB(Universal Serial Bus)、シリアルATA(AT Attachment)、SPI(Serial Peripheral Interface)バス、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス、PCI-Expressバス、及びLPC(Low Pin Count)バスなどのコントローラを備えており複数のデバイスが接続される。図1では、デバイスの例示として、BIOSメモリ22と、HDD23と、オーディオシステム24と、WLANカード25と、USBコネクタ26とが、チップセット21に接続されている。
【0022】
BIOSメモリ22は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュROMなどの電気的に書き換え可能な不揮発性メモリで構成される。BIOSメモリ22は、BIOS、及びエンベデッドコントローラ31などを制御するためのシステムファームウェアなどを記憶する。
【0023】
HDD(Hard Disk Drive)23(不揮発性記憶装置の一例)は、OS、各種ドライバ、各種サービス/ユーティリティ、アプリケーションプログラム、及び各種データを記憶する。
オーディオシステム24は、音データの記録、再生、出力を行う。
【0024】
WLAN(Wireless Local Area Network)カード25は、ワイヤレス(無線)LANにより、ネットワークに接続して、データ通信を行う。
USBコネクタ26は、USBを利用した周辺機器類を接続するためのコネクタである。
【0025】
エンベデッドコントローラ31(サブ制御部の一例)は、ノートPC1のシステム状態に関わらず、各種デバイス(周辺装置やセンサ等)を監視し制御するワンチップマイコン(One-Chip Microcomputer)である。また、エンベデッドコントローラ31は、電源回路33を制御する電源管理機能を有している。なお、エンベデッドコントローラ31は、不図示のCPU、ROM、RAMなどで構成されるとともに、複数チャネルのA/D入力端子、D/A出力端子、タイマ、及びデジタル入出力端子を備えている。エンベデッドコントローラ31には、それらの入出力端子を介して、例えば、入力部32、及び電源回路33などが接続されており、エンベデッドコントローラ31は、これらの動作を制御する。
【0026】
入力部32は、例えば、キーボード、ポインティング・デバイス、タッチパッドなどの入力デバイスである。
電源回路33は、例えば、DC/DCコンバータ、充放電ユニット、電池ユニット、AC/DCアダプタなどを含んでおり、AC/DCアダプタ、又は電池ユニットから供給される直流電圧を、ノートPC1を動作させるために必要な複数の電圧に変換する。また、電源回路33は、エンベデッドコントローラ31からの制御に基づいて、ノートPC1の各部に電力を供給する。
【0027】
次に、図2を参照して、本実施形態によるノートPC1の機能構成について説明する。
図2は、本実施形態によるノートPC1の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、図2では、ノートPC1が備える機能構成のうち、本発明に関連する構成のみを記載している。
【0028】
図2に示すように、ノートPC1は、メイン制御部10と、記憶部40とを備える。
記憶部40は、例えば、BIOSメモリ22により実現される記憶部であり、例えば、BIOSに関連する情報を記憶する。なお、BIOSの設定は、記憶部40に記憶されているものとする。
また、記憶部40は、基準POST時間記憶部41と、BIOS変更履歴記憶部42と、測定POST時間記憶部43と、差分値記憶部44と、判定条件情報記憶部45と、アクション情報記憶部46とを備える。
【0029】
基準POST時間記憶部41は、BIOSメモリ22により実現される記憶部であり、BIOSによるPOST(Power On Self Test)処理に要する処理時間を示すPOST時間の基準値を記憶する。POST時間の基準値は、ノートPC1の工場出荷時に測定されたPOST時間に基づいて設定される。ここで、図3を参照して、基準POST時間記憶部41のデータ例について説明する。
【0030】
図3は、本実施形態における基準POST時間記憶部41のデータ例を示す図である。
図3に示すように、基準POST時間記憶部41は、モジュール名と、基準値と、属性とを対応付けて記憶する。
ここで、モジュール名は、BIOSの部分機能を示すモジュールの名称を示している。モジュール名は、モジュールを識別するモジュール識別情報の一例である。
【0031】
また、基準値は、POST時間の基準値を示し、ノートPC1の工場出荷時に測定されたPOST時間に基づいて、モジュールごとに設定されている。なお、基準値は、ノートPC1の個体ごとに異なる値となる。
また、属性は、POST処理の内容が、ソフトウェア(S/W)に関連するのか、ハードウェア(H/W)に関連するのかを示す属性情報である。
【0032】
図3に示す例では、モジュール名が“PEI Phase”の全体の基準値が“1550”(ms)であるとことを示している。また、モジュール名が“PEI Phase”内の“000-1FF”の基準値が“400”であり、属性が“S/W”であることを示している。また、“200-3FF”の基準値が“850”であり、属性が“H/W”であることを示している。
【0033】
このように、基準POST時間記憶部41は、モジュール識別情報(モジュール名)と、POST時間の基準値とを対応付けて、全モジュール分記憶している。
【0034】
図2の説明に戻り、BIOS変更履歴記憶部42(変更履歴記憶部の一例)は、BIOSメモリ22により実現される記憶部であり、BIOSの設定変更及び内蔵デバイス(CPU11、メインメモリ12、HDD23など)の変更を含むBIOSの環境変更に関する変更履歴を記憶する。BIOS変更履歴記憶部42は、例えば、BIOSの設定変更や内蔵デバイスの変更のイベントログを記憶する。ここで、図4を参照して、BIOS変更履歴記憶部42のデータ例について説明する。
【0035】
図4は、本実施形態におけるBIOS変更履歴記憶部42のデータ例を示す図である。
図4に示すように、BIOS変更履歴記憶部42は、イベントと、要素とを対応付けたイベントログを記憶する。
【0036】
図4において、イベントは、実行されたBIOSの設定変更や内蔵デバイスの変更のイベントの内容を示している。また、要素は、イベントに関連する要素を示している。なお、BIOS変更履歴記憶部42は、イベントログを時系列に記憶している。
【0037】
図4に示す例では、最初のイベントログとして、イベントが“Device Change Event”であり、要素が“HDD、Memory”であるイベントログが記憶されていることを示している。また、次のイベントログとして、イベントが“Self Healing Event”であり、要素が“BIOS、EC”であるイベントログが記憶されていることを示している。
【0038】
再び、図2の説明に戻り、測定POST時間記憶部43は、BIOSメモリ22により実現される記憶部であり、実際に測定したPOST時間を記憶する。測定POST時間記憶部43は、例えば、モジュール名と、POST時間の測定値とを対応付けて記憶する。ここで、図5を参照して、測定POST時間記憶部43のデータ例について説明する。
【0039】
図5は、本実施形態における測定POST時間記憶部43のデータ例を示す図である。
図5に示すように、測定POST時間記憶部43は、モジュール名と、POST時間測定値と、過去測定値とを対応付けて記憶する。
【0040】
図5において、モジュール名は、モジュール識別情報の一例であり、POST時間測定値は、POST時間の測定値である。また、過去測定値は、過去の所定の回数のPOST時間の測定値を示している。
【0041】
例えば、図5に示す例では、モジュール名が“PEI Phase”の全体のPOST時間の測定値が、“1555”(ms)であり、過去測定値として、1回前が“1552”(ms)、2回前が“1550”(ms)、3回前が“1554”(ms)であることを示している。また、“000-1FF”の部分のPOST時間の測定値が、“402”(ms)であり、過去測定値として、1回前が“401”(ms)、2回前が“400”(ms)、3回前が“402”(ms)であることを示している。
【0042】
また、“200-3FF”の部分のPOST時間の測定値が、“852”(ms)であり、過去測定値として、1回前が“851”(ms)、2回前が“850”(ms)、3回前が“851”(ms)であることを示している。また、“400-5FF”の部分のPOST時間の測定値が、“300”(ms)であり、過去測定値として、1回前が“300”(ms)、2回前が“300”(ms)、3回前が“301”(ms)であることを示している。
【0043】
再び、図2の説明に戻り、差分値記憶部44は、BIOSメモリ22により実現される記憶部であり、今回測定したPOST時間と、前回測定したPOST時間との差分値と、当該差分値の所定の回数分の平均値とを記憶する。ここで、図6を参照して、差分値記憶部44のデータ例について説明する。
【0044】
図6は、本実施形態における差分値記憶部44のデータ例を示す図である。
図6に示すように、差分値記憶部44は、モジュール名と、差分値と、差分平均値とを対応付けて記憶する。
【0045】
図6において、モジュール名は、モジュール識別情報の一例であり、差分値は、今回測定したPOST時間と、前回のPOST時間との差分値を示している。また、差分平均値は、過去の所定回数分の差分値の平均値を示している。
【0046】
例えば、図6に示す例では、モジュール名が“PEI Phase”の差分値が、“10”(ms)であり、差分平均値が“10”(ms)であることを示している。また、“000-1FF”の部分の差分値が、“0”(ms)であり、差分平均値が“0”(ms)であることを示している。
【0047】
また、“200-3FF”の部分の差分値が、“10”(ms)であり、差分平均値が“10”(ms)であることを示している。また、“400-5FF”の部分の差分値が、“0”(ms)であり、差分平均値が“0”(ms)であることを示している。
【0048】
再び、図2の説明に戻り、判定条件情報記憶部45は、BIOSメモリ22により実現される記憶部であり、POST時間が増大した異常モジュールに対する原因の判定条件を記憶する。判定条件情報記憶部45は、例えば、POST時間の増大から異常が検出されたモジュールを分類したカテゴリとイベントログとから推定される原因を記憶する。判定条件情報記憶部45が記憶する情報は、予め記憶されているものとする。ここで、図7を参照して、判定条件情報記憶部45のデータ例について説明する。
【0049】
図7は、本実施形態における判定条件情報記憶部45のデータ例を示す図である。
図7に示すように、判定条件情報記憶部45は、カテゴリ名と、小分類と、検出されたイベントと、原因とを対応付けて記憶する。
【0050】
図7において、カテゴリ名は、分類したカテゴリ名を示し、小分類は、カテゴリの小分類を示している。なお、カテゴリの詳細については後述する。また、検出されたイベントは、上述したBIOS変更履歴記憶部42が記憶するイベントログのうち、直近において検出されたイベントを示している。また、原因は、異常モジュールの推定原因を示している。
【0051】
図7に示す例では、カテゴリ名が“A(S/W、急増)”において、小分類“A1”として、検出されたイベントが“BIOS Setup Configuration Change Event”及び“POST Error Event”である場合に、原因が“Configuration Change”であることを示している。
【0052】
このように、判定条件情報記憶部45は、カテゴリごとに、検出されたイベントに対して推定される原因(POST時間が増大した原因)を記憶している。
【0053】
再び、図2の説明に戻り、アクション情報記憶部46(対応処理記憶部の一例)は、BIOSメモリ22により実現される記憶部であり、POST時間が増大した異常モジュールの原因に対する対応処理(アクション)を示すアクションテーブルを記憶する。
【0054】
アクション情報記憶部46は、例えば、カテゴリと、異常の原因と、対応処理(アクション)を示す対応処理情報(アクション情報)とを対応付けて記憶する。アクション情報記憶部46が記憶する情報は、予め記憶されているものとする。ここで、図8を参照して、アクション情報記憶部46のデータ例について説明する。
【0055】
図8は、本実施形態におけるアクション情報記憶部46のデータ例を示す図である。
図8に示すように、アクション情報記憶部46は、カテゴリ名と、原因と、対応処理とを対応付けて記憶する。
【0056】
図8において、カテゴリ名は、カテゴリを識別するカテゴリ識別情報の一例である。また、原因は、POST時間が増大した異常モジュールの推定原因を示し、対応処理は、原因に対する対応処理(アクション)を示している。
【0057】
図8に示す例では、カテゴリ名が“A(S/W、急増)”であり、原因が“Configuration Change”である場合に、対応処理が“Setting rollback”であることを示している。また、カテゴリ名が“A(S/W、急増)”であり、原因が“Firmware Update Event”である場合に、対応処理が“BIOS recovery”であることを示している。
【0058】
また、カテゴリ名が“A(S/W、急増)”であり、原因が“Self Healing Event”である場合に、対応処理が“Warning Message”であることを示している。
【0059】
再び、図2の説明に戻り、メイン制御部10は、CPU11及びチップセット21に、BIOSメモリ22及びHDD23が記憶するプログラムを実行させることで実現される機能部であり、BIOS又はOSに基づくノートPC1の各種処理を実行する。メイン制御部10は、BIOS処理部110と、OS処理部120とを備える。
【0060】
BIOS処理部110は、CPU11及びチップセット21に、BIOSメモリ22が記憶するプログラムを実行させることで実現される機能部であり、BIOSに基づく各種処理を実行する。BIOS処理部110は、例えば、ノートPC1を起動する際に、POST処理を実行し、結果が正常である場合に、OSを起動して、後述するOS処理部120に処理を引き継ぐ。
【0061】
また、BIOS処理部110は、BIOSの設定に応じたモジュールごとにPOST処理を実行し、実行したモジュールごとのPOST時間を測定し、POST時間が増大した異常モジュールを特定する。また、BIOS処理部110は、特定したPOST時間が増大した異常モジュールに対する原因を推定し、推定した原因に対する対応処理を実行する。
また、BIOS処理部110は、POST処理部111と、異常検出処理部112と、カテゴリ分類部113と、原因判定処理部114と、対応処理部115とを備える。
【0062】
POST処理部111は、CPU11及びチップセット21に、BIOSメモリ22が記憶するプログラムを実行させることで実現される機能部であり、BIOSの設定に応じたモジュールごとにPOST処理を実行し、実行したモジュールごとのPOST時間を測定する処理を実行する。POST処理部111は、ノートPC1が起動する際に、モジュールごとにPOST処理を実行し、例えば、図5に示すように、モジュール名と、POST時間測定値と、過去測定値とを対応付けて、測定POST時間記憶部43に記憶させる。なお、過去測定値は、例えば、今回の測定以前の過去3回分の測定値である。
【0063】
異常検出処理部112は、PU11及びチップセット21に、BIOSメモリ22が記憶するプログラムを実行させることで実現される機能部であり、モジュールに対して測定したPOST時間と、基準POST時間記憶部41が記憶する当該モジュールのモジュール識別情報に対応する基準値とに基づいて、POST時間が増大しているか否かを判定し、異常のあるモジュールである異常モジュールを特定する処理を実行する。ここで、異常モジュールとは、POST時間が増大したことで異常があると判定されるモジュールである。
【0064】
異常検出処理部112は、モジュールごとに、測定POST時間記憶部43が記憶するPOST時間と、基準POST時間記憶部41が記憶する基準値とを比較して、POST時間が増大しているか否かを判定する。具体的に、異常検出処理部112は、下記の式(1)により、測定値が、(基準値+α)以上であるか否かにより、POST時間が増大しているか否かを判定する。
【0065】
【数1】
【0066】
なお、ここでの“α”は、所定のマージン値である。
また、異常検出処理部112は、POST時間が増大していると判定したモジュールを異常(問題)のある異常モジュールと特定する。
【0067】
カテゴリ分類部113は、CPU11及びチップセット21に、BIOSメモリ22が記憶するプログラムを実行させることで実現される機能部であり、モジュールに異常があると特定された場合に、異常モジュールを以下の4つのカテゴリに分類する。
【0068】
カテゴリ“A”:S/Wに関してPOST時間が急激に増大しているもの(S/W、急増)
カテゴリ“B”:S/Wに関してPOST時間が徐々に増大しているもの(S/W、漸増)
カテゴリ“C”:H/Wに関してPOST時間が急激に増大しているもの(H/W、漸増)
カテゴリ“D”:H/Wに関してPOST時間が徐々に増大しているもの(H/W、急増)
【0069】
すなわち、カテゴリ分類部113は、例えば、POST時間が、徐々に増加した漸増と急激に増加した急増とのいずれかであるかと、当該モジュールがソフトウェアとハードウェアとのいずれに関連するのかとに基づいて、異常モジュールをカテゴリに分類する。
【0070】
カテゴリ分類部113は、測定値tと、前回の測定値tN-1との差分値Δt(=t-tN-1)を算出する。カテゴリ分類部113は、例えば、測定POST時間記憶部43が記憶する情報を用いて、差分値Δtを算出する。
【0071】
また、カテゴリ分類部113は、過去複数回の差分値Δtを用いて差分平均値を算出する。カテゴリ分類部113は、測定POST時間記憶部43が記憶する情報を用いて、差分平均値を算出する。なお、カテゴリ分類部113は、異常モジュールに対して、差分値Δt及び差分平均値を算出し、算出した差分値Δt及び差分平均値と、モジュール名とを対応付けて、差分値記憶部44に記憶させる。
【0072】
カテゴリ分類部113は、算出した差分値Δtと差分平均値との比較により、POST時間の増加が急増であるか、漸増であるかを区別する。ここで、図9を参照して、POST時間の急増の判定について説明する。
【0073】
図9は、本実施形態におけるPOST時間の急増の一例を示す図である。
図9において、グラフの縦軸は、POST時間を示し、横軸は、起動回数を示している。また、グラフ内の“×”は、POST時間の測定値を示している。
【0074】
図9に示す例は、(N-1)回目まで、基準値t以下であったPOST時間(tN-1)が、N回目に、POST時間(t)が、基準値tを超えて、異常モジュールと判定された一例を示している。
この例では、差分値Δtと、差分平均値μとの関係は、下記の式(2)に表される。
【0075】
【数2】
【0076】
すなわち、カテゴリ分類部113は、差分平均値μより、差分値Δtが大きい場合(すなわち、傾きが、所定の傾き(ここでは、“0”)から急に変化した場合)に、POST時間の増加が急増であると判定する。
【0077】
また、図10は、本実施形態におけるPOST時間の漸増の一例を示す図である。
図10において、グラフの縦軸は、POST時間を示し、横軸は、起動回数を示している。また、グラフ内の“×”は、POST時間の測定値を示している。
【0078】
図10に示す例は、(N-1)回目まで、基準値t以下であったPOST時間(tN-1)が徐々に増加して、N回目にPOST時間(t)が、基準値tを超えて、異常モジュールと判定された一例を示している。
この例では、差分値Δtと、差分平均値μとの関係は、下記の式(3)に表される。
【0079】
【数3】
【0080】
すなわち、カテゴリ分類部113は、差分平均値μより、差分値Δtがほぼ等しい場合(すなわち、傾きが所定の傾きで一定のまま、基準値tを超えた場合)に、POST時間の増加が漸増であると判定する。
【0081】
また、カテゴリ分類部113は、図3に示す基準POST時間記憶部41の属性により、モジュールがソフトウェアとハードウェアとのいずれに関連するのかを判定する。
カテゴリ分類部113は、異常モジュールが、これらの急増と漸像とのいずれか、及びソフトウェアとハードウェアとのいずれに関連するのかに応じて、上述したカテゴリ“A”~カテゴリ“D”の4種類のカテゴリに分類する。
【0082】
原因判定処理部114は、CPU11及びチップセット21に、BIOSメモリ22が記憶するプログラムを実行させることで実現される機能部であり、カテゴリ分類部113が分類したカテゴリに基づいて、POST時間が増大した異常の原因を推定する。原因判定処理部114は、例えば、BIOS変更履歴記憶部42から異常モジュールに関連するイベントログ(変更履歴)を取得し、異常モジュールのカテゴリと、イベントログとに基づいて、異常の原因を判定する。
【0083】
原因判定処理部114は、例えば、図7に示すような判定条件情報記憶部45から、異常モジュールのカテゴリ名と、検出したイベントとに対応する原因を取得する。例えば、カテゴリ名が“A(S/W、急増)”であり、検出されたイベントが“BIOS Setup Configuration Change Event”及び“POST Error Event”である場合に、原因判定処理部114は、上述した図7に示すBIOS変更履歴記憶部42から、異常の原因が“Configuration Change”であると判定する。
【0084】
対応処理部115は、CPU11及びチップセット21に、BIOSメモリ22が記憶するプログラムを実行させることで実現される機能部であり、原因判定処理部114が判定した異常の原因に対する対応処理(アクション)を実行する。対応処理部115は、カテゴリ及び異常の原因に対応するアクション情報(対応処理情報)を、アクション情報記憶部46から取得し、取得したアクション情報に基づく対応処理を実行する。
【0085】
例えば、アクション情報には、BIOSの環境を変更前に戻すロールバック処理を示すロールバック処理情報(例えば、“Setting rollback”)が含まれる。対応処理部115は、カテゴリ及び異常の原因に対応する対応処理情報が、ロールバック処理情報である場合に、ロールバック処理情報に基づくロールバック処理を実行する。なお、アクション情報が、“Setting rollback”である場合に、対応処理部115は、BIOSの設定を変更前の状態に戻す対応処理を実行する。
【0086】
また、例えば、アクション情報には、BIOSの環境を復旧するリカバリ処理を示すリカバリ処理情報(例えば、“BIOS recovery”)が含まれる。対応処理部115は、カテゴリ及び異常の原因に対応するアクション情報が、リカバリ処理情報である場合に、リカバリ処理情報に基づくリカバリ処理を実行する。なお、アクション情報が、“BIOS recovery”である場合に、対応処理部115は、BIOSのファームウェア(BIOSのプログラム)のバージョンを元に戻す対応処理を実行する。
【0087】
また、例えば、アクション情報には、メッセージを表示する処理を示すメッセージ表示処理情報(例えば、“Warning Message”)が含まれる。対応処理部115は、カテゴリ及び異常の原因に対応するアクション情報が、メッセージ表示処理情報である場合に、メッセージ表示処理情報に基づくメッセージ表示処理を実行する。なお、アクション情報が、“Warning Message”である場合に、対応処理部115は、表示部14にワーニングメッセージを表示する対応処理を実行する。
【0088】
OS処理部120は、CPU11及びチップセット21に、BIOSメモリ22が記憶するプログラムを実行させることで実現される機能部であり、OSに基づく処理を実行する。OS処理部120は、OSに基づく、各種アプリケーションソフトなどの処理を実行する。
【0089】
次に、図面を参照して、本実施形態によるノートPC1の動作について説明する。
図11は、本実施形態によるノートPC1の動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、ノートPC1の起動する際のPOST処理の増加による異常原因の特定処理及び対応処理の動作について説明する。
【0090】
図11に示すように、ノートPC1が電源投入又はリセットされた場合に、ノートPC1のBIOS処理部110は、まず、モジュールごとにPOST処理を実行し、POST時間を測定する(ステップS101)。BIOS処理部110のPOST処理部111は、BIOSの設定に応じたモジュールごとに、POST処理を実行し、POST時間を、例えば、CPU11又はエンベデッドコントローラ31に内蔵されているタイマを用いて測定する。POST処理部111は、測定したPOST時間の測定値を、例えば、図5に示すように、測定POST時間記憶部43に記憶させる。
【0091】
次に、BIOS処理部110は、各POST時間と基準値とを比較して、各POST時間の増大を確認する(ステップS102)。BIOS処理部110の異常検出処理部112は、モジュールごとに、測定POST時間記憶部43が記憶するPOST時間と、基準POST時間記憶部41が記憶する基準値とを比較して、POST時間が増大しているか否かを判定する。具体的に、異常検出処理部112は、上述した式(1)により、測定値が、(基準値+α)以上であるか否かにより、POST時間が増大しているか否かを判定する。
【0092】
次に、異常検出処理部112は、POST時間が増大して異常であると判定されたモジュールがある否かを判定する(ステップS103)。すなわち、異常検出処理部112は、異常モジュールが検出されたか否かを判定する。異常検出処理部112は、異常モジュールが検出された場合(ステップS103:YES)に、処理をステップS104に進める。また、異常検出処理部112は、異常モジュールが検出されなかった場合(ステップS103:NO)に、処理をステップS107に進める。
【0093】
ステップS104において、BIOS処理部110は、POST時間の差分値Δt及び
平均値(差分平均値)と属性とからPOST時間の異常なモジュール(異常モジュール)をカテゴリに分類する。BIOS処理部110のカテゴリ分類部113は、上述した式(2)及び式(3)を用いて、POST時間が、徐々に増加した漸増と急激に増加した急増とのいずれかであるかを判定する。
【0094】
また、カテゴリ分類部113は、図3に示す基準POST時間記憶部41の属性により、モジュールがソフトウェアとハードウェアとのいずれに関連するのかを判定する。そして、カテゴリ分類部113は、異常モジュールが、これらの急増と漸像とのいずれか、及びソフトウェアとハードウェアとのいずれに関連するのかに応じて、上述したカテゴリ“A”~カテゴリ“D”の4種類のカテゴリに分類する。
【0095】
次に、BIOS処理部110は、カテゴリとイベントログとに基づいて、異常モジュールの原因を推定する(ステップS105)。BIOS処理部110の原因判定処理部114は、例えば、BIOS変更履歴記憶部42から異常モジュールに関連するイベントログ(変更履歴)を取得し、異常モジュールのカテゴリと、イベントログとに基づいて、異常の原因を判定する。
【0096】
次に、BIOS処理部110は、アクション情報記憶部46に基づいて原因に対応する対応処理を実行する(ステップS106)。BIOS処理部110の対応処理部115は、カテゴリ及び異常の原因に対応するアクション情報(対応処理情報)を、アクション情報記憶部46から取得し、取得したアクション情報に基づく対応処理を実行する。ステップS106の処理後に、BIOS処理部110は、処理を終了する。
【0097】
また、ステップS107において、BIOS処理部110は、OSの起動処理を実行する。ステップS107の処理後に、BIOS処理部110は、OS処理部120に処理を移行し、BIOSによる起動処理を終了する。
【0098】
以上説明したように、本実施形態によるノートPC1(情報処理装置)は、基準POST時間記憶部41と、BIOSに基づく処理を実行するBIOS処理部110とを備える。基準POST時間記憶部41は、BIOSの部分機能を示すモジュールを識別するモジュール識別情報(例えば、モジュール名)と、当該モジュールに対してのPOST時間の基準値とを対応付けて記憶する。POST時間は、POST処理に要する処理時間を示す。BIOS処理部110は、BIOSの設定に応じたモジュールごとにPOST処理を実行し、実行したモジュールごとのPOST時間を測定する処理と、モジュールに対して測定したPOST時間と、基準POST時間記憶部41が記憶する当該モジュールのモジュール識別情報に対応する基準値とに基づいて、POST時間が増大しているか否かを判定し、異常のあるモジュールである異常モジュールを特定する処理とを実行する。
【0099】
これにより、本実施形態によるノートPC1は、POST時間の測定値と、基準値とに基づいて、POST時間が増大している異常のあるモジュールを特定することができるため、BIOSにより起動する際に、異常箇所を適切に、且つ自動的に特定することができる。
【0100】
また、本実施形態では、BIOS処理部110は、モジュールに異常があると特定された場合に、POST時間が、徐々に増加した漸増と急激に増加した急増とのいずれかであるかと、当該モジュールがソフトウェアとハードウェアとのいずれに関連するのかとに基づいて、異常モジュールをカテゴリに分類し、分類したカテゴリに基づいて、異常の原因を推定する。
【0101】
これにより、本実施形態によるノートPC1は、異常モジュールをカテゴリに分類することにより、POST時間が増大した異常の原因をより適切に判定(推定)することができる。
【0102】
また、本実施形態では、BIOS処理部110は、今回測定したPOST時間と、前回のPOST時間との差分値と、過去の差分値の平均値とに基づいて、POST時間が漸増と急増とのいずれかであるかを判定する。
【0103】
これにより、本実施形態によるノートPC1は、POST時間との差分値と、過去の差分値の平均値とを用いることにより、漸増と急増とのいずれかであるかをより適切に判定することができ、異常モジュールをカテゴリに適切に分類することができる。よって、本実施形態によるノートPC1は、POST時間が増大した異常の原因をさらに正確に判定(推定)することができる。
【0104】
また、本実施形態によるノートPC1は、BIOSの設定変更及び内蔵デバイスの変更を含むBIOSの環境変更に関する変更履歴(イベントログ)を記憶するBIOS変更履歴記憶部42(変更履歴記憶部)を備える。BIOS処理部110は、BIOS変更履歴記憶部42から、異常モジュールに関連する変更履歴(イベントログ)を取得し、異常モジュールに関連する変更履歴(イベントログ)と、カテゴリとに基づいて、異常の原因を推定する。
【0105】
これにより、本実施形態によるノートPC1は、BIOS変更履歴記憶部42の変更履歴(イベントログ)と、カテゴリとを用いることで、簡易な手法により、POST時間が増大した異常の原因をさらに正確に判定(推定)することができる。
【0106】
また、本実施形態によるノートPC1は、カテゴリと、異常の原因と、対応処理を示すアクション情報(対応処理情報)とを対応付けて記憶するアクション情報記憶部46(対応処理記憶部)を備える。BIOS処理部110は、カテゴリ及び異常の原因に対応するアクション情報(対応処理情報)を、アクション情報記憶部46から取得し、取得したアクション情報(対応処理情報)に基づく対応処理を実行する。
【0107】
これにより、本実施形態によるノートPC1は、例えば、内蔵するデバイスの劣化や故障によってPOST時間が増大した場合に、自動的に対応処理を実行し、復旧させることができる。
【0108】
また、本実施形態では、アクション情報(対応処理情報)には、BIOSの環境を変更前に戻すロールバック処理を示すロールバック処理情報が含まれる。BIOS処理部110は、カテゴリ及び異常の原因に対応するアクション情報(対応処理情報)が、ロールバック処理情報である場合に、ロールバック処理情報に基づくロールバック処理を実行する。
これにより、本実施形態によるノートPC1は、ロールバック処理による修復(復旧)を、自動的に実行することができ、信頼性を向上させることができる。
【0109】
また、本実施形態では、アクション情報(対応処理情報)には、BIOSの環境を復旧するリカバリ処理を示すリカバリ処理情報が含まれる。BIOS処理部110は、カテゴリ及び異常の原因に対応する対応処理情報が、リカバリ処理情報である場合に、リカバリ処理情報に基づくリカバリ処理を実行する。
これにより、本実施形態によるノートPC1は、リカバリ処理による修復(復旧)を、自動的に実行することができ、信頼性を向上させることができる。
【0110】
また、本実施形態による制御方法は、BIOSの部分機能を示すモジュールを識別するモジュール識別情報と、当該モジュールに対してのPOST処理に要する処理時間を示すPOST時間の基準値とを対応付けて記憶する基準POST時間記憶部41と、BIOSに基づく処理を実行するBIOS処理部110とを備えるノートPC1の制御方法であって、POST時間測定ステップと、異常特定ステップとを含む。POST時間測定ステップにおいて、BIOS処理部110が、BIOSの設定に応じたモジュールごとにPOST処理を実行し、実行したモジュールごとのPOST時間を測定する。異常特定ステップにおいて、BIOS処理部110が、モジュールに対して測定したPOST時間と、基準POST時間記憶部41が記憶する当該モジュールのモジュール識別情報に対応する基準値とに基づいて、POST時間が増大しているか否かを判定し、異常のあるモジュールである異常モジュールを特定する。
【0111】
これにより、本実施形態による制御方法は、上述したノートPC1と同様の効果を奏し、BIOSにより起動する際に、異常箇所を適切に、且つ自動的に特定することができる。
【0112】
また、本実施形態によるノートPC1(情報処理装置)は、基準POST時間記憶部41と、プログラムを一時的に記憶するメモリ(例えば、メインメモリ12など)と、当該メモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサ(例えば、メイン制御部10)とを備える。基準POST時間記憶部41は、BIOSの部分機能を示すモジュールを識別するモジュール識別情報(例えば、モジュール名)と、当該モジュールに対してのPOST時間の基準値とを対応付けて記憶する。POST時間は、POST処理に要する処理時間を示す。プロセッサは、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、BIOS処理を行うように構成されている。プロセッサは、BIOS処理において、POST時間測定処理と、異常特定処理とを実行する。プロセッサは、POST時間測定処理として、BIOSの設定に応じたモジュールごとにPOST処理を実行し、実行したモジュールごとのPOST時間を測定する処理を実行する。また、プロセッサは、異常特定処理として、モジュールに対して測定したPOST時間と、基準POST時間記憶部41が記憶する当該モジュールのモジュール識別情報に対応する基準値とに基づいて、POST時間が増大しているか否かを判定し、異常のあるモジュールである異常モジュールを特定する処理を実行する。
これにより、本実施形態によるノートPC1は、BIOSにより起動する際に、異常箇所を適切に、且つ自動的に特定することができる。
【0113】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の実施形態において、情報処理装置がノートPC1(1a)である例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、タブレット端末装置、デスクトップPCなどの他の情報処理装置であってもよい。
【0114】
また、上記の実施形態において、BIOS処理部110が、異常モジュールに対する対応処理を行う例を説明したが、これに限定されるものではなく、異常の原因を推定(判定)するまでを行うようにしてもよい。
【0115】
また、上記の実施形態において、BIOS処理部110によるPOST処理、POST時間の増大の検出処理、異常の原因の推定処理、及び対応処理を、ノートPC1を起動する際に実行する例を説明したが、これに限定されるものではない。これらの処理は、例えば、BIOSの設定メニューから実行されてもよい。
【0116】
また、上記の実施形態において、異常モジュールに対する対応処理(アクション)は、上述したものに限定されるものではなく、他の対応処理(アクション)を実行するようにしてもよい。
【0117】
なお、上述したノートPC1が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述したノートPC1が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述したノートPC1が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0118】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後にノートPC1が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0119】
また、上述した機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 ノートPC
10 メイン制御部
11 CPU
12 メインメモリ
13 ビデオサブシステム
14、53 表示部
21 チップセット
22 BIOSメモリ
23 HDD
24 オーディオシステム
25 WLANカード
26 USBコネクタ
31 エンベデッドコントローラ(EC)
32 入力部
33 電源回路
40 記憶部
41 基準POST時間記憶部
42 BIOS変更履歴記憶部
43 測定POST時間記憶部
44 差分値記憶部
45 判定条件情報記憶部
46 アクション情報記憶部
110 BIOS処理部
111 POST処理部
112 異常検出処理部
113 カテゴリ分類部
114 原因判定処理部
115 対応処理部
120 OS処理部
【要約】
【課題】BIOSにより起動する際に、異常箇所を適切に特定する。
【解決手段】情報処理装置は、BIOSの部分機能を示すモジュールを識別するモジュール識別情報と、当該モジュールに対してのPOST処理に要する処理時間を示すPOST時間の基準値とを対応付けて記憶する基準POST時間記憶部と、前記BIOSに基づく処理を実行するBIOS処理部であって、前記BIOSの設定に応じた前記モジュールごとに前記POST処理を実行し、実行した前記モジュールごとの前記POST時間を測定する処理と、前記モジュールに対して測定した前記POST時間と、前記基準POST時間記憶部が記憶する当該モジュールの前記モジュール識別情報に対応する前記基準値とに基づいて、前記POST時間が増大しているか否かを判定し、異常のある前記モジュールである異常モジュールを特定する処理とを実行するBIOS処理部とを備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11