(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】クロマトグラフィー用の固定相
(51)【国際特許分類】
B01J 20/281 20060101AFI20231017BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20231017BHJP
B01J 20/288 20060101ALI20231017BHJP
B01D 15/40 20060101ALI20231017BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20231017BHJP
C08F 292/00 20060101ALI20231017BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20231017BHJP
C08F 220/58 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B01J20/281 X
B01J20/281 G
G01N30/02 N
B01J20/288
B01D15/40
B01J20/26 L
B01J20/30
C08F292/00
C08F220/26
C08F220/58
(21)【出願番号】P 2022117602
(22)【出願日】2022-07-22
(62)【分割の表示】P 2020539639の分割
【原出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2018161561
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 寛嗣
(72)【発明者】
【氏名】新蔵 聡
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-531312(JP,A)
【文献】特表2017-515129(JP,A)
【文献】国際公開第16/152996(WO,A1)
【文献】特開2016-190204(JP,A)
【文献】WEST,C., LESELLIER,E.,Orthogonal screening system of columns for supercritical fluid chromatography,Journal of Chromatography A,2008年,vol.1203,pp.105-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/281 - 20/30
G01N 30/00 - 30/96
C08F 220/26 -292/00
B01D 15/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖の繰り返し単位に親水性基を有するポリマーが結合している無機担体粒子から構成される、クロマトグラフィー用の固定相であって、
以下の式(II)で示される構造を有する、クロマトグラフィー用の固定相。
【化1】
(式(II)中、W’は、単結合または分岐鎖を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基であり、W’’は、水素または炭素数1~12のアルキル基であり、Xは、アミド基、エステル基、炭素数1~3のN-アルキルアミド基、エーテル基、スルホキシド基、スルホン基、スルフィド基、またはリン酸エステル基であり、Yは、炭素数1~30のアルキレン基であり、Vは、無機担体表面と結合したエーテル基、炭素数1~5のアルコキシ基、ハロゲン、炭素数1~20のアルキルメルカプチル基、窒素含有基、アリル基、2-メチル-2-プロペニル基、または炭素数1~3のアルキル基であり、R
1
は、水素または炭素数1~6のアルキルであり、R
2
は、炭素数1~12のアルキレンであり、R
3
は、単結合であり、X
2
は、-O-であり、Y
2
は、単結合、または(-(CH
2
)
a
-O-)
b
であり、aは1~5の整数、bは1~20の整数であり、Z
2
は、水素、炭素数1~6のアルキル、ハロゲン、-N
+
R
4
3
、-SO
3
-
、-CO
2
-
、または-PO
4
-R
4
であり、R
4
は水素、炭素数1~6のアルキル、または炭素数1~6のヒドロキシアルキルである。pは1~10であり、qは10~3000である。)
【請求項2】
主鎖の繰り返し単位に親水性基を有するポリマーが結合している無機担体粒子から構成される、クロマトグラフィー用の固定相であって、
以下の式(V)で示される構造を有する、クロマトグラフィー用の固定相。
【化2】
(式(V)中、Yは、単結合または炭素数1~30のアルキレン基であり、Vは、無機担体表面と結合したエーテル基、炭素数1~5のアルコキシ基、ハロゲン、窒素含有基、アリル基、イソプロペニル基、または炭素数1~5のアルキル基であり、T’は、炭素数1~12のアルキレン残基またはチオエーテルであり、R
1
は、水素または炭素数1~6のアルキルであり、R
2
は、炭素数1~12のアルキレンであり、R
3
は、単結合であり、X
2
は、-O-であり、Y
2
は、単結合、または(-(CH
2
)
a
-O-)
b
であり、aは1~5の整数、bは1~20の整数であり、Z
2
は、水素、炭素数1~6のアルキル、ハロゲン、-N
+
R
4
3
、-SO
3
-
、-CO
2
-
、または-PO
4
-R
4
であり、R
4
は水素、炭素数1~6のアルキル、または炭素数1~6のヒドロキシアルキルである。qは2~300の整数である。)
【請求項3】
主鎖の繰り返し単位に親水性基を有するポリマーが結合している無機担体粒子から構成される、クロマトグラフィー用の固定相であって、
以下の式(II)で示される構造を有する、クロマトグラフィー用の固定相。
【化3】
(式(II)中、W’は、単結合または分岐鎖を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基であり、W’’は、水素または炭素数1~12のアルキル基であり、Xは、アミド基、エステル基、炭素数1~3のN-アルキルアミド基、エーテル基、スルホキシド基、スルホン基、スルフィド基、またはリン酸エステル基であり、Yは、炭素数1~30のアル
キレン基であり、Vは、無機担体表面と結合したエーテル基、炭素数1~5のアルコキシ基、ハロゲン、炭素数1~20のアルキルメルカプチル基、窒素含有基、アリル基、2-メチル-2-プロペニル基、または炭素数1~3のアルキル基であり、R
1
は、水素または炭素数1~6のアルキルであり、R
2
は、単結合であり、R
3
は、単結合であり、X
2
は、-NH-、または-N(CH
3
)-であり、Y
2
は、単結合であり、Z
2
は、水素、または炭素数1~6のアルキルである。pは1~10であり、qは10~3000である。)
【請求項4】
主鎖の繰り返し単位に親水性基を有するポリマーが結合している無機担体粒子から構成される、クロマトグラフィー用の固定相であって、
以下の式(V)で示される構造を有する、クロマトグラフィー用の固定相。
【化4】
(式(V)中、Yは、単結合または炭素数1~30のアルキレン基であり、Vは、無機担体表面と結合したエーテル基、炭素数1~5のアルコキシ基、ハロゲン、窒素含有基、アリル基、イソプロペニル基、または炭素数1~5のアルキル基であり、T’は、炭素数1~12のアルキレン残基またはチオエーテルであり、R
1
は、水素または炭素数1~6のアルキルであり、R
2
は、単結合であり、R
3
は、単結合であり、X
2
は、-NH-、または-N(CH
3
)-であり、Y
2
は、単結合であり、Z
2
は、水素、または炭素数1~6のアルキルである。qは2~300の整数である。)
【請求項5】
前記無機担体粒子が多孔質無機粒子または無孔質無機粒子であることを特徴とする、請求項1
~4のいずれか一項に記載のクロマトグラフィー用の固定相。
【請求項6】
前記無機担体粒子が多孔質無機粒子であり、該多孔質無機粒子がコアシェル型粒子である、請求項
5に記載のクロマトグラフィー用の固定相。
【請求項7】
平均粒径が0.1μm~50μmであることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載のクロマトグラフィー用の固定相。
【請求項8】
超臨界流体クロマトグラフィー用である、請求項1~
7のいずれか一項に記載のクロマトグラフィー用の固定相。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の固定相と、超臨界流体を含む移動相とを用いて目的物質を分離する工程を含む、目的物質の分離方法。
【請求項10】
下記(i)~(v)のいずれかの工程を含む、クロマトグラフィー用の固定相の製造方法
であって、
下記(i)~(v)のいずれかの工程における、親水性基を有する(メタ)アクリルモ
ノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーが、以下の式(1)で表される構造を有する、クロマトグラフィー用の固定相の製造方法。
(i)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーと、重合性官能基が結合している無機担体粒子とをラジカル共重合させる工程
(ii)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーを、末端に架橋性シリル基を有する連鎖移動剤の存在下でラジカル重合させてポリマーを得る工程と、得られたポリマーを無機担体粒子表面でシランカップリングする工程
(iii)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーと重合性二重結合を有するシランカップリング剤を共重合させる工程と、得られたポリマーを無機担体粒子表面でシランカップリングする工程
(iv)重合性二重結合を有するシランカップリング剤と、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーとを、無機担体粒子の存在下で共重合する工程
(v)無機担体粒子表面に連鎖移動性官能基を導入し、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーをラジカル重合する工程
【化5】
【請求項11】
下記(i)~(v)のいずれかの工程を含む、クロマトグラフィー用の固定相の製造方法であって、
下記(i)~(v)のいずれかの工程における、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーが、以下の式(1)で表される構造を有する、クロマトグラフィー用の固定相の製造方法。
(i)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーと、重合性官能基が結合している無機担体粒子とをラジカル共重合
させる工程
(ii)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーを、末端に架橋性シリル基を有する連鎖移動剤の存在下でラジカル重合させてポリマーを得る工程と、得られたポリマーを無機担体粒子表面でシランカップリングする工程
(iii)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーと重合性二重結合を有するシランカップリング剤を共重合させる工程と、得られたポリマーを無機担体粒子表面でシランカップリングする工程
(iv)重合性二重結合を有するシランカップリング剤と、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーとを、無機担体粒子の存在下で共重合する工程
(v)無機担体粒子表面に連鎖移動性官能基を導入し、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーをラジカル重合する工程
【化6】
【請求項12】
前記無機担体粒子が多孔質無機粒子または無孔質無機粒子であることを特徴とする、請求項
10または
11に記載のクロマトグラフィー用の固定相の製造方法。
【請求項13】
前記無機担体粒子が多孔質無機粒子であり、該多孔質無機粒子がコアシェル型粒子である、請求項
12に記載のクロマトグラフィー用の固定相の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー技術に関する。より詳しくはクロマトグラフィーに用いられる固定相に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィーとして、液体クロマトグラフィー及び超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)が広く知られている。
SFCに用いられる固定相としては、例えば非特許文献1で紹介されているように、シリカゲルあるいはその表面を様々な原子団で修飾したものが挙げられる。特にSFCにおいてよく用いられるものは、2-エチルピリジンと呼ばれる、(2-ピリジル)エチル基を結合したものである。普通の固定相ではテーリングして幅広いピークを与える塩基性化合物を分離した場合でも、その固定相を用いた場合にはシャープなピークとなって溶出するだけでなく、酸性化合物も適度に保持可能であるため、好んで用いられる。
しかしながら、非特許文献2で指摘されているように、様々な化合物に対する保持の傾向が相似的であり、特徴の差がない固定相も少なくない。
【0003】
これまでにSFC用の固定相として用いられてきたものの多くは、シリカゲルあるいはその表面を様々な低分子化合物で修飾したものが大多数であった。一方で、シリカゲル表面を高分子で修飾した固定相の報告例もある。
例えば、非特許文献3や特許文献1のように、ビニルポリマーを高速液体クロマトグラフィー用の固定相として用いたものがある。これらの例では、ポリ(4-ビニルピリジン)をシリカゲル表面上に化学結合したものが用いられており、様々な化合物の分離に有効であることが明らかになっている。
また、生体関連物質のような親水性物質の分離のために、双性イオン物質をモノリス担体に担持させたものを用いて、液体クロマトグラフィーに適用する技術も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-337125号公報
【文献】特開2010-190602号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】C. West 他、J. Chromatogr. A, 1203(2008) 105
【文献】C. West 他、 J. Chemometrics, 26(2012) 52
【文献】H. Ihara 他、J. Liq. Chromatogr. Relat. Technol. 26(2003) 2491
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、良好な分子識別能、特に親水性化合物について良好な分離特性を有するクロマトグラフィー用の固定相を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、主鎖の繰り返し単位に親水性基を有するポリマーが結合している無機担体粒子から構成される、クロマトグラフィー用の固定相であって、特定の工程を含む製造方法によって得られるものが、クロマトグ
ラフィー、特に超臨界流体クロマトグラフィーにおいて良好な分子識別能が発現されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 主鎖の繰り返し単位に親水性基を有するポリマーが結合している無機担体粒子から構成される、クロマトグラフィー用の固定相であって、
前記固定相が以下の(i)~(v)のいずれかの工程を含む製造方法によって製造されたものである、クロマトグラフィー用の固定相。
(i)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーと、重合性官能基が結合している無機担体粒子とをラジカル共重合させる工程
(ii)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーを、末端に架橋性シリル基を有する連鎖移動剤の存在下でラジカル重合させてポリマーを得る工程と、得られたポリマーを無機担体粒子表面でシランカップリングする工程
(iii)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーと重合性二重結合を有するシランカップリング剤を共重合させる工程と、得られたポリマーを無機担体粒子表面でシランカップリングする工程
(iv)重合性二重結合を有するシランカップリング剤と、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーとを、無機担体粒子の存在下で共重合する工程
(v)無機担体粒子表面に連鎖移動性官能基を導入し、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーをラジカル重合する工程を含む製造方法
[2] 親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーが、以下の式(1)で表される構造を有する、[1]に記載のクロマトグラフィー用の固定相。
【化1】
[3] 上記無機担体粒子が多孔質無機粒子または無孔質無機粒子であることを特徴とする、[1]または[2]に記載のクロマトグラフィー用の固定相。
[4] 上記無機担体粒子が多孔質無機粒子であり、該多孔質無機粒子がコアシェル型粒子である、[3]に記載のクロマトグラフィー用の固定相。
[5] 平均粒径が0.1μm~50μmであることを特徴とする、[1]~[4]のいずれかに記載のクロマトグラフィー用の固定相。
[6] 超臨界流体クロマトグラフィー用である、[1]~[5]のいずれかに記載のクロマトグラフィー用の固定相。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の固定相と、超臨界流体を含む移動相とを用いて目的物質を分離する工程を含む、目的物質の分離方法。
[8] 下記(i)~(v)のいずれかの工程を含む、クロマトグラフィー用の固定相の製造方法。
(i)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーと、重合性官能基が結合している無機担体粒子とをラジカル共重合させる工程
(ii)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーを、末端に架橋性シリル基を有する連鎖移動剤の存在下でラジカル重合させてポリマーを得る工程と、得られたポリマーを無機担体粒子表面でシランカップリングする工程
(iii)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ
)アクリルアミドモノマーと重合性二重結合を有するシランカップリング剤を共重合させる工程と、得られたポリマーを無機担体粒子表面でシランカップリングする工程
(iv)重合性二重結合を有するシランカップリング剤と、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーとを、無機担体粒子の存在下で共重合する工程
(v)無機担体粒子表面に連鎖移動性官能基を導入し、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーをラジカル重合する工程を含む製造方法
[9] 親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーが、以下の式(1)で表される構造を有する、[8]に記載のクロマトグラフィー用の固定相の製造方法。
【化2】
[10] 上記無機担体粒子が多孔質無機粒子または無孔質無機粒子であることを特徴とする、[8]または[9]に記載のクロマトグラフィー用の固定相の製造方法。
[11] 上記無機担体粒子が多孔質無機粒子であり、該多孔質無機粒子がコアシェル型粒子である、[10]に記載のクロマトグラフィー用の固定相の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な分子識別能、特に親水性物質について良好な分離特性を有する、クロマトグラフィー用の固定相を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ポリ(PA)結合シリカゲルを固定相としたSFCによる水溶性ビタミンの分離を示すクロマトグラムである。
【
図2】ポリ(4-ビニルピリジン)結合シリカゲルを固定相としたSFCによる水溶性ビタミンの分離を示すクロマトグラムである。
【
図3】様々なビニルポリマー結合シリカゲルを固定相としたHPLCによるウリジンの分離を示すクロマトグラムである。
【
図4】既存市販品シリカゲルを固定相としたHPLCによるウリジンの分離を示すクロマトグラムである。
【
図5】1.6μmシリカゲルを原料に調製されたポリ(PA)結合シリカゲルを固定相としたHPLCによるウリジンの分離を示すクロマトグラムである。
【
図6】様々な調製法や、コアシェル型シリカゲルを原料に用い調製されたポリ(PA)結合シリカゲルを固定相としたHPLCによるウリジンの分離を示すクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のクロマトグラフィー用の固定相は、主鎖の繰り返し単位に親水性基を有するポリマーが結合している無機担体粒子を含むものである。
なお、本発明における固定相とは、クロマトグラフィー法において、分析用具(カラムまたはキャピラリー)の内部に固定され、これと接触しながら移動する流体との間で分離対象物質を分配し、分離に導く材料を意味するが、これが粒子である場合には、該粒子が充填されることによって形成された集合体を指すこともあり、またその個別の粒子を指すこともある。
【0012】
ここで、「親水性基」は、例えば両性イオン、カチオン、またはアニオンのイオン性基を好ましく例示できる。また、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミド基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアミノ塩基、トリアルキルホスホニウム塩基及びポリオキシエチレン基を挙げることもできる。
【0013】
本発明の一実施形態にかかる固定相では、その安定性、分離性能の見地から担体とポリマーとの間に化学結合(共有結合)を形成させている。具体的には、例えば以下の(i)~(v)で示される工程のいずれかを含む製造方法を例示することができる。
クロマトグラフィー用の固定相において、担体との物理的結合を利用してポリマーをコーティングすることは可能であるが、そのような場合には溶媒によってポリマーが溶出することもあるので、好ましい方法とはいえない。
(i)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーと、重合性官能基が結合している無機担体粒子とをラジカル共重合させる工程
(ii)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーを、末端に架橋性シリル基を有する連鎖移動剤の存在下でラジカル重合させてポリマーを得る工程と、得られたポリマーを無機担体粒子表面でシランカップリングする工程
(iii)親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーと重合性二重結合を有するシランカップリング剤を共重合させる工程と、得られたポリマーを無機担体粒子表面でシランカップリングする工程
(iv)重合性二重結合を有するシランカップリング剤と、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーとを、無機担体粒子の存在下で共重合する工程
(v)無機担体粒子表面に連鎖移動性官能基を導入し、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーをラジカル重合する
工程を含む製造方法
いずれの方法でも重合時の重合温度、重合溶媒、添加剤等により、生成ポリマーの立体規則性を制御することも可能である。
【0014】
(i)の工程を含む製造方法について説明する。
(i)の工程を含む製造方法に用いられる重合性官能基が結合している無機担体粒子(以下、単に担体ともいう)は、以下の方法により作製することができる。
担体に結合している重合性官能基として、ラジカル重合性官能基を挙げることができ、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、またはω位に二重結合を有する炭素数4~12のアルケニル基を挙げることができる。この中でも、ビニル基、アリル基またはイソプロペニル基が好ましい。
また、無機担体粒子としては多孔質無機粒子または無孔質無機粒子を用いる。多孔質無機粒子の担体として適当なものは、シリカゲル、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ガラス、カオリン、酸化チタン、ケイ酸塩、ヒドロキシアパタイトなどである。好ましい多孔質無機粒子はシリカゲル、アルミナ、又はガラスである。
無孔質無機粒子の担体として適当なものは、例えば無孔質シリカゲル、無孔質酸化チタンを挙げることができる。
担体として多孔質シリカゲルまたは無孔質シリカゲル(以降、両方を含む概念として単に「シリカゲル」と表記することもある)を用いる場合には、それぞれのシリカゲルが有するシラノール基を介して、上記の重合性官能基が担体と化学結合している。
多孔質シリカゲルまたは無孔質シリカゲル以外の担体を用いる場合には、担体の表面処理を行うことにより、担体自体への分離対象物質の過剰な吸着を抑制できるとともに、表面処理で導入された基を介して重合性官能基と結合させることができる。表面処理剤としては、アミノプロピルシランのようなシランカップリング剤や、チタネート系・アルミネート系カップリング剤を挙げることができる。
担体として多孔質シリカゲルを用いる場合、コアシェルあるいはペリフェラルと呼ばれる、コアが無孔質であり、表層のみを多孔質にしたコアシェル型のシリカゲルであってもよい。
コアシェル型の担体(コアシェル型粒子ともいう)を用いる場合、後述するものを用いることができる。
【0015】
上記のような、重合性官能基が結合している担体は、例えば下記式(I)で表される化合物と、担体、好ましくはシリカゲルとをシランカップリングすることにより得られる。
【化3】
(式(I)中、Wは、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、またはω位に二重結合を有する炭素数4~12のアルケニル基であり、Xは、アミド基、エステル基、炭素数1~3のN-アルキルアミド基、エーテル基、スルホキシド基、スルホン基、スルフィド基、またはリン酸エステル基であり、Yは、炭素数1~30のアルキレン基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基であり、Zは式(I)中のケイ素原子と担体との間に結合を作らせ得る脱離基である。nは1~3の整数である。)
【0016】
上記式(I)中、Wは、ビニル基、アリル基、またはイソプロペニル基であることが好ましい。
上記式(I)中、Xは、Wと末端のZ基とのリンカーの一部であり、アミド基、炭素数1~3のN-アルキルアミド基、エステル基であることが好ましい。
上記式(I)のYは、炭素数1~5のアルキレンであることが好ましく、メチレン基、
エチレン基、トリメチレン基のいずれかであることがより好ましい。
上記式(I)のRは、メチル基、またはエチル基であることが好ましい。
【0017】
上記式(I)中のZは、脱離基であり、式(I)中のケイ素原子と、担体を構成する酸素のような原子との間に結合を作らせ得るものであれば、いかなる原子団であってもよい。取り扱いのしやすさと反応性のバランスが良いために、一般的に用いられるものは、炭素数1~5のアルコキシ基、特に好ましくはメトキシ基あるいはエトキシ基を挙げることができ、ハロゲン(塩素、臭素またはヨウ素)、炭素数1~20のアルキルメルカプチル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基、イミダゾリル基のような窒素含有基、アリル基または2-メチル-2-プロペニル基を挙げることができる。脱離基の種類によって反応条件(触媒添加も含めて)を調整できる。
【0018】
上記式(I)で表される化合物は、上記式(I)のWで表される構造を有する化合物と、上記式(I)の-Y-SiR3-nZnの構造を有する化合物とを反応させることにより得ることができる。
それらの化合物同士の反応により、上記式(I)の「-X-」が生じる。
【0019】
Wで表される構造を有する化合物としては、ビニル基に結合する炭素の水素が、炭素数が1~12のアルキル基で置換されていてもよいアクリル酸や、ビニル基に結合する炭素の水素が、炭素数が1~12のアルキル基で置換されていてもよいアクリル酸のハロゲン化物を挙げることができる。
【0020】
上記式(I)の-Y-SiR3-nZnの構造を有する化合物としては、上記で説明したXの前駆体である基を有し、脱離基として炭素数が1~5のアルコキシ基を有するシランカップリング剤を挙げることができる。
【0021】
本発明で用いる重合性官能基が結合している担体は、上記式(I)で表される化合物と、シリカゲルとをシランカップリングすることによって得られる表面修飾シリカゲルであることが好ましい。
【0022】
本発明の一実施形態にかかる固定相は、上記で説明した(i)の工程を含む製造方法で製造する場合、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーと、重合性官能基が結合している担体とを共重合させて得られるものである。
その共重合の態様としては、上記のモノマーの(メタ)アクリロイル基と、重合性官能基の両方について共重合を起こさせることが挙げられ、その際の反応条件は公知の方法を用いることができる。
【0023】
親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーとしては、以下の式(1)で表されるモノマーを挙げることができる。
【化4】
【0024】
【化5】
式(2)において、R
1は水素またはメチルであり、R
2はメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、またはヘキシレンであり、メチレンまたはエチレンであることが好ましく、R
3はメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、またはヘキシレンであり、メチレンまたはエチレンであることが好ましく、R
4はメチルまたはエチルであり、メチルであることが好ましい。
【0025】
上記式(2)で表されるモノマーの具体例として、例えば、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、3-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリシクロヘキシルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリフェニルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート等が挙げられる。上記の中で、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン:以下、「PA」と略すこともある)を用いることが入手の容易性から好ましい。
【0026】
式(1)において、X
2が、-O-、-NH-、または-N(CH
3)-であり、Y
2が-N
+(R
4)
2-であるとき、以下の式(3)で表されるモノマーを好ましく挙げることができる。
【化6】
式(3)において、R
1は、水素またはメチルであり、R
2は炭素数1~12のアルキレンあり、R
4は水素、メチルまたはエチルであり、Z
2はR
4と同じ基である。X
-は、フルオリド、クロリド、ブロミドまたはヨージドである。
【0027】
上記式(3)で表されるモノマーの具体例として、例えば、メタクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムクロリド、2-(メタクリロイルアミノ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド、3-(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド、4-(メタクリロイルアミノ)ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、5-(メタクリロイルアミノ)ペンチルトリメチルアンモニウムクロリド、6-(メタクリロイルアミノ)へキシルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムブロミド、2-(メタクリロイルアミノ)エチルトリメチルアンモニウムブロミド、3-(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムブロミド、4-(メタクリロイルアミノ)ブチルトリメチルアンモニウムブロミド、5-(メタクリロイルアミノ)ペンチルトリメチルアンモニウムブロミド、6-(メタクリロイルアミノ)へキシルトリメチルアンモニウムブロミド、メタクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムヨージド、2-(メタクリロイルアミノ)エチルトリメチルアンモニウムヨージド、3-(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムヨージド、4-
(メタクリロイルアミノ)ブチルトリメチルアンモニウムヨージド、5-(メタクリロイルアミノ)ペンチルトリメチルアンモニウムヨージド、6-(メタクリロイルアミノ)へキシルトリメチルアンモニウムヨージド、メタクリロイルオキシメチルトリメチルアンモニウムクロリド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド、4-(メタクリロイルオキシ)ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、5-(メタクリロイルオキシ)ペンチルトリメチルアンモニウムクロリド、6-(メタクリロイルオキシ)へキシルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリロイルオキシメチルトリメチルアンモニウムブロミド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロミド、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメチルアンモニウムブロミド、4-(メタクリロイルオキシ)ブチルトリメチルアンモニウムブロミド、5-(メタクリロイルオキシ)ペンチルトリメチルアンモニウムブロミド、6-(メタクリロイルオキシ)へキシルトリメチルアンモニウムブロミド、メタクリロイルオキシメチルトリメチルアンモニウムヨージド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムヨージド、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメチルアンモニウムヨージド、4-(メタクリロイルオキシ)ブチルトリメチルアンモニウムヨージド、5-(メタクリロイルオキシ)ペンチルトリメチルアンモニウムヨージド、6-(メタクリロイルオキシ)へキシルトリメチルアンモニウムヨージド、が挙げられる。
【0028】
式(1)において、Y
2が-N
+(R
4)
2-であるとき、以下の式(4)で表されるモノマーを好ましく挙げることができる。
【化7】
【0029】
上記式(4)で表されるモノマーの具体例として、例えば、2-(N-3-スルホプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム)エチルメタクリラート、2-(N-3-スルホプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム)エチルメタクリルアミド、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロピオナート、3-[[2-(メタクリルアミド)エチル]ジメチルアンモニオ]プロピオナート、が挙げられる。
【0030】
【化8】
式(5)において、X
2は、-O-、-NH-、または-N(CH
3)-であり、R
1は、水素またはメチルであり、aは1~5の整数であり、bは1~20の整数であり、Z
2は水素、メチル、またはエチルであることが好ましい。
【0031】
上記式(5)で表されるモノマーの具体例として、例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ジエチレングリコールモノメタクリルアミド、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリルアミド、ジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリルアミド、トリエチレングリコールモノメタクリルアミド、トリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリルアミド、トリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリルアミド、テトラエチレングリコールモノメタクリルアミド、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリルアミド、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリルアミド、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジエチレングリコールモノアクリルアミド、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアクリルアミド、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリルアミド、トリエチレングリコールモノアクリルアミド、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリルアミド、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアクリルアミド、テトラエチレングリコールモノアクリルアミド、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアクリルアミド、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルアクリルアミド、ポリエチレングリコールモノアクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリルアミド、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルアクリルアミド、が挙げられる。
【0032】
【0033】
上記式(6)で表されるモノマーの具体例として、例えば、3-(メタクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸リチウム、3-(メタクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム、3-(メタクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸カリウム、3-(メタクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸セシウム、3-(メタクリルアミド)プロパンスルホン酸リチウム、3-(メタクリルアミド)プロパンスルホン酸ナトリウム、3-(メタクリルアミド)プロパンスルホン酸カリウム、3-(メタクリルアミド)プロパンスルホン酸セシウム、3-(N-メチルメタクリルアミド)プロパンスルホン酸リチウム、3-(N-メチルメタクリルアミド)プロパンスルホン酸ナトリウム、3-(N-メチルメタクリルアミド)プロパンスルホン酸カリウム、3-(N-メチルメタクリルアミド)プロパンスルホン酸セシウム、3-(アクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸リチウム、3-(アクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム、3-(アクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸カリウム、3-(アクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸セシウム、3-(アクリルアミド)プロパンスルホン酸リチウム、3-(アクリルアミド)プロパンスルホン酸ナトリウム、3-(アクリルアミド)プロパンスルホン酸カリウム、3-(アクリルアミド)プロパンスルホン酸セシウム、3-(N-メチルアクリルアミド)プロパンスルホン酸リチウム、3-(N-メチルアクリルアミド)プロパンスルホン酸ナトリウム、3-(N-メチルアクリルアミド)プロパンスルホン酸カリウム、3-(N-メチルアクリルアミド)プロパンスルホン酸セシウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸リチウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム、2-(
メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸カリウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸セシウム、2-(メタクリルアミド)エタンスルホン酸リチウム、2-(メタクリルアミド)エタンスルホン酸ナトリウム、2-(メタクリルアミド)エタンスルホン酸カリウム、2-(メタクリルアミド)エタンスルホン酸セシウム、2-(N-メチルメタクリルアミド)エタンスルホン酸リチウム、2-(N-メチルメタクリルアミド)エタンスルホン酸ナトリウム、2-(N-メチルメタクリルアミド)エタンスルホン酸カリウム、2-(N-メチルメタクリルアミド)エタンスルホン酸セシウム、2-(アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸リチウム、2-(アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム、2-(アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸カリウム、2-(アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸セシウム、2-(アクリルアミド)エタンスルホン酸リチウム、2-(アクリルアミド)エタンスルホン酸ナトリウム、2-(アクリルアミド)エタンスルホン酸カリウム、2-(アクリルアミド)エタンスルホン酸セシウム、2-(N-メチルアクリルアミド)エタンスルホン酸リチウム、2-(N-メチルアクリルアミド)エタンスルホン酸ナトリウム、2-(N-メチルアクリルアミド)エタンスルホン酸カリウム、2-(N-メチルアクリルアミド)エタンスルホン酸セシウムが挙げられる。
【0034】
式(1)において、R
2およびR
3が単結合であり、X
2が-NH-であるとき、以下の式(7)で表されるモノマーを好ましく挙げることができる。
【化11】
式(7)中、R1は水素または炭素数1~6のアルキルであり、Z
2は、水素または炭素数1~6のアルキルである。
【0035】
上記式(7)で表されるモノマーの具体例として、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-エチルメタクリルアミドが挙げられる。
【0036】
共重合の条件としてラジカル共重合を挙げることができ、少量のラジカル発生剤を触媒に用いて共重合を起こさせることができる。ラジカル発生剤は、重合反応に用いる公知のものを用いることができ、その具体例としては、アゾ化合物や過酸化物を挙げることができる。上記で説明した原料や(i)の工程を含む製造方法を用いて得られる本発明の一実施形態にかかる固定相は、以下の構造を有すると推定される。
【化12】
(式II中、W’、W’’は、それぞれ式(I)のWに由来し、付加重合により生成する基であり、Xは、アミド基、エステル基、炭素数1~3のN-アルキルアミド基、エーテル基、スルホキシド基、スルホン基、スルフィド基、またはリン酸エステル基であり、Yは、炭素数1~30のアルキレン基であり、Vはシリカゲル表面と結合したエーテル基、もしくは未反応の上記式(I)で示されるZ基、またはR基であり、X
2、Y
2、Z
2、R
1、R
2、R
3は上記の式(1)で説明した内容と同じである。)
【0037】
上記式(II)において、W’の具体例としては、単結合、分岐鎖を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基を挙げることができる。好ましくは、単結合、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基を挙げることができる。
上記式(II)において、W’’の具体例としては、水素または炭素数1~12のアルキル基を挙げることができる。
式(II)中のX及びYの好ましい基は、上記式(I)と同様のものを採用できる。
式(II)中のX2、Y2、Z2、R1、R2、R3は上記の式(1)で説明した内容と同じであり、X2とY2の好ましい組み合わせと、それにより生じる好ましい構造は、上記の式(2)~(7)の説明と同様である。
式(II)中、pは1~10であり、qは10~3000程度を挙げることができ、pは好ましくは1~5であり、qは好ましくは15~2500、更に好ましくは20~2000である。
式(II)のVについて、上記式(I)で示される化合物において、n=1の場合、V=Rであり、n=2の場合、全てのVの数に対し、未反応のZ基またはR基の割合は50~100%であり、n=3の場合、全てのVの数に対し、未反応のZ基またはR基の割合は0~100%である。
式(II)におけるX2、Y2、Z2、R1、R2、R3は、上記の式(1)で説明した内容と同じであり、具体的な例として、上記の式(2)~(7)のいずれかで説明した内容を挙げることができる。
【0038】
次に、本発明の一実施形態にかかる固定相を得るための(ii)の工程を含む製造方法について説明する。
(ii)の工程を含む製造方法は、末端に架橋性シリル基を有する連鎖移動剤の存在下でラジカル重合させる工程と、得られたポリマーを担体表面でシランカップリングする工程
を含む製造方法である。
(ii)の工程を含む製造方法で用いる、末端に架橋性シリル基を有する連鎖移動剤として、以下の式(III)で示される化合物を例示することができる。本発明における架橋性シリル基とは、下記の式(III)のZで示されるような脱離基が結合しているシリル基のことを意味する。以下の他の製法において用いる化合物においても同様である。
【化13】
(式(III)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基であり、Zは式(III)中のケイ素原子と担体との間に結合を作らせ得る脱離基である。Yは単結合または炭素数1~30のアルキレン基であり、Tは連鎖移動性官能基である。nは1~3の整数である。)
【0039】
式(III)中、Rは、メチル基、エチル基、あるいはプロピル基であることが好ましい。Zは、脱離基であり、式(III)中のケイ素原子とシリカゲルを構成する酸素との間に結合を作らせ得るものであれば、いかなる原子団であってもよい。
取り扱いのしやすさと反応性のバランスが良いために、脱離基として一般的に用いられるものは、炭素数1~5のアルコキシ基であり、その中でもメトキシ基あるいはエトキシ基を例示でき、ハロゲン(塩素、臭素またはヨウ素)、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基、イミダゾリル基のような窒素含有基、またアリル基やイソプロペニル基も用いることができ、脱離基の種類によって反応条件(触媒添加も含めて)を調整できる。Yは、単結合または炭素数1~10のアルキレン基であることがより好ましい。Tは連鎖移動性官能基である。連鎖移動性官能基とは重合反応において、生長活性種の移動および再開始反応を伴う連鎖移動反応が活発に起こる官能基のことである。連鎖移動性官能基があることで、生成ポリマーの分子量や末端構造の制御がある程度可能となる。連鎖移動性官能基の具体例としては、ハロゲン化された炭素数1~12のアルキル基、末端にチオールを有する炭素数1~12のアルキル基またはジスルフィド基を基内に有する炭素数1~12のアルキル基が好ましい。
上記ハロゲン化された炭素数1~12のアルキル基のハロゲンは塩素、臭素またはヨウ素を挙げることができ、そのアルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基を挙げることができる。
このような連鎖移動剤の存在下、少量のラジカル発生剤を触媒に用い、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーのラジカル重合を行うことで、下記式(IV)で示される構造を有する化合物を得ることができる。このときに、連鎖移動剤とモノマーのモル比からある程度の分子量の制御が可能となる。ラジカル発生剤は、重合反応に用いる公知のものを用いることができ、その具体例としては、アゾ化合物や過酸化物を挙げることができる。担体については、シリカゲルの他には上記(i)の工程を含む製造方法で用いるものと同じものを用いることができ、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーについても、(i)の工程を含む製造方法と同じものを用いることができる。また、ラジカル発生剤についても、(i)の工程を含む製造方法と同じものを用いることができる。
【0040】
【化14】
(式IV中、T’は式IIIのTに由来し、連鎖移動反応により生成する基であり、X
2、Y
2、Z
2、R
1、R
2、R
3は上記の式(1)で説明した内容と同じである。qは2~300の整数である。)
【0041】
式(IV)におけるX
2、Y
2、Z
2、R
1、R
2、R
3は、上記の式(1)で説明した内容と同じであり、具体的な例として、上記の式(2)~(7)のいずれかで説明した内容を挙げることができる。
式(IV)において、T’は、Tが末端にハロゲンが結合している炭素数1~12のアルキル基の場合、そのハロゲンが置換された炭素数1~12のアルキレン残基であり、Tが末端にチオールを有する炭素数1~12のアルキル基またはジスルフィド基を基内に有する炭素数1~12のアルキル基である場合はチオエーテルである。
本発明の一実施形態にかかる固定相の(ii)の製造方法で用いる担体は、(i)の製造方法で用いる担体と同じものを用いることができる。
式(III)で示される化合物と、担体とをシランカップリング反応によって結合させる方法ついては、公知のシランカップリングの方法を用いることができる。
上記(ii)の工程を含む製造方法により得られる本発明の一実施形態にかかる固定相は、下記式の(V)で表される構造を有すると推定される。
【化15】
(式(V)中、Yは、単結合または炭素数1~30のアルキレン基であり、Vは無機担体がシリカゲルの場合、表面と結合したエーテル基、もしくは未反応の上記式(III)で示されるZ基、またはR基であり、T’は式IIIのTに由来し、連鎖移動反応により生成する基であり、X
2、Y
2、Z
2、R
1、R
2、R
3は上記の式(1)で説明した内容と同じであり、具体的な例として、上記の式(2)~(7)のいずれかで説明した内容を挙げることができる。qは2~300の整数である。)
【0042】
次に(iii)の工程を含む製造方法について説明する。
この製造方法は、重合性二重結合を有するシランカップリング剤と、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーとを共重合させる工程と、得られたポリマーを担体表面でシランカップリングする工程を含む方法である。
【0043】
重合性二重結合を有するシランカップリング剤としては、例えば以下の式(VI)で表される構造を有する化合物を挙げることができる。
【化16】
(式(VI)中、Wは、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、またはω位に二重結合を有する炭素数4~12のアルケニル基であり、Xは、アミド基、エステル基、炭素数1~3のN-アルキルアミド基、エーテル基、スルホキシド基、スルホン基またはリン酸エステル基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基であり、Zは式(VI)中のケイ素原子と担体との間に結合を作らせ得る脱離基であり、Yは、炭素数1~30のアルキレン基である。nは1~3の整数である。)
【0044】
上記式(VI)中のYは、炭素数1~5のアルキレンであることが好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基のいずれかであることがより好ましい。
Rはメチル基、あるいはエチル基であることが好ましい。
Zは脱離基であり、式(VI)中のケイ素原子と、担体が例えばシリカゲルである場合、そのシリカゲルを構成する酸素との間に結合を作らせ得るものであれば、いかなる原子団であってもよい。担体がシリカゲルでない場合でも、担体を構成する原子との間に結合を作らせ得るものである。
取り扱いのしやすさと反応性のバランスが良いために、脱離基として一般的に用いられるものは、炭素数1~5のアルコキシ基であり、その中でもメトキシ基あるいはエトキシ基を例示でき、ハロゲン(塩素、臭素またはヨウ素)、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基、イミダゾリル基のような窒素含有基、またアリル基やイソプロペニル基)も用いることができ、脱離基の種類によって反応条件(触媒添加も含めて)を調整できる。
上記(iii)の工程を含む製造方法においても、担体については、シリカゲルの他には上記(i)や(ii)の工程を含む製造方法で用いるものと同じものを用いることができ、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーについても、(i)や(ii)の工程を含む製造方法と同じものを用いることができる。
共重合の条件としてラジカル共重合を挙げることができ、少量のラジカル発生剤を触媒に用いて共重合を起こさせることができる。ラジカル発生剤については、(i)の製造方法で用いるものと同じものを用いることができる。この製造方法では、ポリマー合成の際に適当な連鎖移動剤や、上述のリビングラジカル重合法を用いることで、分子量の制御も可能である。得られたポリマーと担体とをシランカップリング反応によって結合させる方
法ついては、公知のシランカップリングの方法を用いることができる。
上記(iii)の工程を含む製造方法により得られる本発明の一実施形態にかかる固定相は、上記の(II)で表される構造を有すると推定される。
【0045】
次に(iv)の工程を含む製造方法について説明する。
この製造方法は、重合性二重結合を有するシランカップリング剤と、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーとを、担体の存在下で共重合する工程を含む製造方法である。
この製造方法において、重合性二重結合を有するシランカップリング剤は上記の(iii)の工程を含む製造方法で用いる式(VI)で表される構造を有する化合物を用いることができる。
また、担体については、シリカゲルの他には上記(i)や(ii)の工程を含む製造方法で用いるものと同じものを用いることができ、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーについても、(i)や(ii)の工程を含む製造方法と同じものを用いることができる。
共重合の条件としてラジカル共重合を挙げることができ、少量のラジカル発生剤を触媒に用いて共重合を起こさせることができる。ラジカル発生剤は、重合反応に用いる公知のものを用いることができ、その具体例としては、アゾ化合物や過酸化物を挙げることができる。
上記(iv)の工程を含む製造方法により得られる本発明の一実施形態にかかる固定相は、上記の(II)で表される構造を有すると推定される。
【0046】
次に(v)の工程を含む製造方法について説明する。この製造方法は、担体表面に連鎖移動性官能基を導入し、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーをラジカル重合する工程を含む製造方法である。なお、連鎖移動性官能基は、式(III)の説明で例示したものと同じものを例示でき、好ましい例も同様にものを挙げることできる。
この製造方法において、連鎖移動性官能基が結合している担体は、上記の(ii)の工程を含む製造方法で用いる式(III)で表される構造を有する化合物と、担体としてシリカゲルを用いる場合はシリカゲルとシランカップリングすることにより得られる。
【0047】
表面に連鎖移動性官能基が導入された(化学結合した)担体の存在下、少量のラジカル開始剤を触媒として用い、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーのラジカル重合を行うことで、担体表面にポリマーを固定化することが可能になる。担体については、シリカゲルの他には上記(i)や(ii)の工程を含む製造方法で用いるものと同じものを用いることができ、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーまたは親水性基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーについても、(i)や(ii)の工程を含む製造方法と同じものを用いることができる。また、ラジカル発生剤についても、(i)や(ii)の工程を含む製造方法と同じものを用いることができる。
上記(v)の工程を含む製造方法により得られる本発明の一実施形態にかかる固定相は、上記式の(v)で表される構造を有すると推定される。
【0048】
上記(i)~(v)のいずれの工程を含む製造方法により得られた固定相も、超臨界流体クロマトグラフィー用の固定相として優れた性能を有する。
【0049】
上記の操作を経て得られる、本発明の一実施形態にかかる固定相の担体に結合した、主鎖の繰り返し単位に親水性基を有するポリマーの重量平均分子量は、1,000以上、5,000,000以下であることが好ましい。なお、本発明でいうポリマーの重量平均分子量は、例えば上記式(II)や(IV)で示される構造の場合、主鎖の繰り返し単位で
ある-(CH2-CAB)n-の部位のものである。
上記重量平均分子量は、ポリマーの溶媒への溶解性、ポリマーを担体に担持させる際の粒子の凝集の防止、移動相溶媒への溶解の抑制、担体に化学結合する際の結合量の維持、等の観点から、上記範囲が好ましい。最適点はポリマーの種類によって異なる。
ただし、(i)、(iv)、(v)の工程を含む製造方法においては、親水性基を有するモノマーの重合とシリカゲルへの固定化が同時に起こるため、重合溶液の上澄みから重量平均分子量を見積もる。
(ii)、(iii)の工程を含む製造方法においては、主鎖の繰り返し単位に親水性基を有するポリマーを担体に結合させる前に、そのポリマーの重量平均分子量を測定する。
重量平均分子量はポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチレングリコール)を標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)方法により測定できる。
【0050】
本発明の一実施形態にかかる固定相では、主鎖の繰り返し単位に親水性基を有するポリマーが担体表面に共有結合しているので、本来これらポリマーを溶かしうる溶媒あるいはそれを含む混合溶媒を展開溶媒に用いても、溶解することなく、固定相としての機能を損ねることはない。
【0051】
本発明の一実施形態にかかる固定相の比表面積は用いる担体の比表面積に相当するため、所望の比表面積の担体を選択すればよい。担体が、例えば多孔質のシリカゲルを選択肢に含む多孔質無機粒子である場合、適当な製品を選ぶことで調整することができる。一般的に、ポリマーを担体に担持させる態様では、担持の前後で比表面積に誤差以上の変化はないため、固定相の比表面積は、用いる担体の比表面積と同一とみなすことができる。
担体として、コアシェル型粒子を用いる場合、その比表面積はシェルの比表面積に相当する。
【0052】
本発明で用いることができる担体の平均粒径は、通常0.1μm以上、50μm以下であり、別の一態様では1μm以上、40μm以下であり、さらに別の一態様では1μm以上、30μm以下であり、さらに別の一態様では1μm以上、5μm以下であり、さらに別の一態様では1μm以上、3μm以下である。平均孔径は、通常10Å以上、10000Å以下であり、別の一態様では50Å以上、1000Å以下であり、さらに別の一態様では100Å以上、1000Å以下である。
また、担体の比表面積は、多孔質シリカゲルを選択肢に含む多孔質無機粒子の場合、通常5m2/g以上、1000m2/g以下、別の一態様では10m2/g以上、500m2/g以下である。一方、無孔質シリカゲルを選択肢に含む無孔質無機粒子の場合、その比表面積は、通常5m2/g未満であり、別の一態様では4m2/g以下であり、通常、0.01m2/g以上である。一般的に、ポリマーを担体に担持させる場合であれば、担持の前後で比表面積に誤差以上の変化はないため、固定相の平均粒径は、用いる担体の平均粒径と同一とみなすことができる。つまり、本発明の粒子状の固定相は、その平均粒径として、0.1μm以上、1000μm以下である態様を挙げることができ、通常0.1μm以上、50μm以下、別の一態様では1μm、50μm以下である。
【0053】
担体に担持された該ポリマーの平均厚み(担体g当たり担持量/担体比表面積)は通常0.5nm以上、5nm以下が好ましい。上記範囲であれば、ピークがシャープになる傾向があり好ましい。
【0054】
一方で、本発明の実施形態では、担体として、無孔性のコアとその外面に多孔性のシェルを有するコアシェル型粒子を用いることができる。本明細書において、コアシェル型粒子は多孔質無機粒子に分類される。そのコアシェル型粒子のシェルの平均細孔直径は9n
m以上のものを用いることができ、また、30nm以上のものを用いることもできる。シェルの平均細孔直径は通常300nm以下である。
コアシェル型粒子のシェルの平均細孔直径が9nm以上、別の態様では30nm以上であることで、コアシェル型粒子のシェルの内部にまで、リガンドとなる物質が浸透し、目的物質の良好な分離に寄与することが期待される。
コアシェル粒子のシェルの平均細孔直径はガス吸着法により測定できる。
ガス吸着法は、多孔質試料に圧力を変化させて気体を吸着させ、そのときの吸着量を測定し、相対圧(=吸着平衡状態の圧力と飽和蒸気圧の比)と吸着量をプロットした吸脱着等温線から、比表面積,細孔容積,細孔分布などを算出する方法であり、粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性について規定されたJIS Z8831-2(メソ細孔及びマクロ
細孔)またはJIS Z8831-3(ミクロ細孔)を準用することができる。
【0055】
ここで本発明でいう無孔性とは、BET法により測定されるコア粒子の表面の比表面積(m2/g)をAとし、コア粒子の粒子径から求められる表面積(粒子半径rから算出される、4πr2)から算出できる単位重量あたりの表面積(m2/g)をBとしたとき、(A-B)/B×100が20未満であるものをいう。
一方、本発明でいう多孔性とは、BET法により測定されるその表面の比表面積が10mm2/g以上であるものをいう。
コアシェル型粒子のコアとシェルの厚さの比は通常、1:9~9:1である。この比は、目的物質の良好な分離特性を確保する観点から、4:1~2:1であることが好ましい。この比については、後述するようにコアシェル粒子のシェルの層の厚さを調整することで、調製可能である。
ここで、コアの厚さとは、コアの直径をいう。
【0056】
コアシェル型粒子を構成するコアの材料は無機物質であり、その具体例としては、ガラス、チタン及びジルコニウムのような金属またはその金属酸化物及びベントナイトや雲母などの粘土鉱物に代表されるものから選ばれるもので無孔性の粒子を好ましく挙げることができる。
【0057】
コアシェル型粒子の平均粒子径は、通常0.1μm以上、10μm以下、好ましくは1μm~5μm、さらに好ましくは1μm~3μmであるものを用いる。なお、本発明で言うコアシェル型粒子の粒子径は、遠心沈降法による平均粒子径の測定方法により測定される粒子径をいう。
【0058】
コアシェル型粒子を構成するシェルの材料としては、アルコキシシランの部分加水分解により得られるポリアルコキシシロキサンをさらに加水分解させたものである。このような材料であることが、コアシェル型粒子を容易に製造できる観点から好ましい。
上記アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシランであることが好ましく、その中でも、テトラメトキシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランを用いることが好ましく、テトラエトキシシランを用いることがより好ましい。
上記コアシェル型粒子の作製に当たっては、特開昭49-36396号公報を参照することができる。具体的には、まず、アルコキシシランについて部分加水分解を行ってポリアルコキシシロキサンを生成させる。そして、それにより得られたポリアルコキシシロキサンをエーテル、アセトン、ジクロロメタンのような溶媒に溶解させてポリアルコキシシロキサンの溶液を調製する。この溶液を上記コアとなる粒子に塗布あるいは上記コア粒子をこの溶液に浸漬させ、その後に溶媒を除去することで、コア粒子の表面にポリアルコキシロキサンをシェルとして積層させる。そしてその後、積層させたポリアルコキシシロキサンについて、水の存在下で重縮合(加水分解)を行わせる。これにより、コアシェル型粒子を得ることができる。
【0059】
コアシェル型粒子を構成するシェルの厚さは、0.1~100μmの範囲で適宜調整することが可能であり、その方法として、シェルとなるアルコキシシランの粘度を調整することが挙げられ、例えば、シェルの厚さを厚くする場合には、アルコキシシランの粘度を低くすることが挙げられる。
また、シェルの比表面積及び細孔直径の調整方法としては、シェルを積層し、重縮合を行わせる際に用いる水溶液のpHを調整することが挙げられ、例えば、比表面積及び細孔直径を大きくする場合には、pHを増加させることが考えられる。
ここで、シェルの厚さとは、コアシェル型粒子の直径から、コアの直径を引き、その値を2で割った値をいう。
【0060】
上記コアシェル型粒子は、市販品として販売されている「コアシェル型シリカゲル」を用いてもよい。そのような市販品では、カタログ値として上記範囲の細孔直径や比表面積、粒子径を有するものである。また、そのような市販されているコアシェル型シリカゲルでは、コアがガラスからなり、シェルがシリカゲル(ポリアルコキシシロキサンの加水分解物)からなるものを用いることができる。
上記コアシェル型粒子は、市販品として販売されている「コアシェル型シリカゲル」を用いてもよい。そのような市販品では、カタログ値として上記範囲の細孔直径や比表面積、粒子径を有するものである。
【0061】
ポリマーが担体上に担持された固定相において、固定相100質量部中に含まれるポリマーの質量部の割合(%)は、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは3~30質量%であり、さらに好ましくは5~30質量%である。このような割合とすることで、ポリマーの吸着能力を適切に発現させながら、徒に保持を強くすることやピークを幅広にすることを避けることができ、好ましい。
なお、固定相100質量部中に含まれるポリマーの質量部の割合(%)は、元素分析により測定することが可能であり、ポリマーが結合する前の担体の炭素含有量と、得られた固定相の炭素含有量を測定結果に基づき、ポリマーが結合する前の担体に含まれる炭素以外の炭素は、全てポリマーに由来するものとして、固定相中のポリマーの質量部の割合を算出する。
【0062】
本発明の粒子状の固定相の平均粒径は、球形であればその直径を指し、不定形粒子の場合には、該粒子体積と等しくなる球の直径で表される。平均粒径は顕微鏡画像用いて測定する装置、例えばMalvern社製Mastersizer 2000Eにより測定す
ることができる。
【0063】
本発明の粒子状の固定相は、アスペクト比が2以下、好ましくは1.5以下である球状粒子状であることが好ましい。真球に近ければ近いほど好ましいので、下限は、1まで特に制限されない。
アスペクト比は以下のとおりに測定する。試料を観察台上に無作為に散布した状態で真上から電子顕微鏡あるいは光学顕微鏡によって観察し、独立した(他のどの粒子とも接触あるいは重複していない)一次粒子が10個以上観察される任意の画面において、画面内の個々の独立した一次粒子に対し、長軸および短軸(長軸に垂直で最も長い部分の長さ)を求め、両者の比を個別粒子のアスペクト比とする。画面内のすべての独立した一次粒子に対するアスペクト比を相加平均したものを、本発明におけるアスペクト比とする。一次粒子とは、粒子間の界面が明瞭に観察することができる粒子のことである。通常、観察は試料台上での一次粒子の重なりを避けるように適度に分散させて行うが、偶発的重なりは避けがたく、また、複数の一次粒子が凝集したバルク状粒子もあるが、これらは観察対象から除かれる。
【0064】
本発明の一実施形態にかかる固定相は、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)の固定相として用いることが好ましい。
本発明の一実施形態にかかる固定相をSFC用に用いると、親水性物質について優れた分離特性を有する。
【0065】
本発明の一実施形態にかかる固定相は、例えば特開2006-058147号に記載のような、超臨界流体クロマトグラフィー用のカラムに充填して用いることができる。
超臨界流体クロマトグラフィーでは、超臨界流体と溶剤とを含有する流体を移動相として用いる。ここで言う超臨界流体クロマトグラフィーとは、超臨界流体を主たる移動相とするクロマトグラフィーに対する一般的名称である。上記超臨界流体は、臨界圧力以上及び臨界温度以上の状態(すなわち超臨界状態)にある物質である。超臨界流体として用いられる物質としては、例えば二酸化炭素、アンモニア、二酸化硫黄、ハロゲン化水素、亜酸化窒素、硫化水素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ハロゲン化炭化水素、水等をあげることができるが、適当な臨界条件、安全性、コストなどから、実質的には二酸化炭素を意味する。また厳密に超臨界であることは必要ではなく、亜臨界状態での使用も含めて“超臨界流体クロマトグラフィー”と呼ばれる。
【0066】
上記溶剤としては、上記目的の物質の種類や超臨界流体の種類等に応じて、公知の種々の溶剤の中から一種又は二種以上が選ばれる。上記溶剤としては、例えばメタノール、エタノールや2-プロパノール等の低級アルコール、アセトン等のケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、THF等が挙げられる。
【0067】
上記超臨界流体クロマトグラフィーは、上記超臨界流体と上記溶剤とを含有する流体を移動相に用いるクロマトグラフィーであれば特に限定されない。本発明の一実施形態にかかる固定相を用いた上記超臨界流体クロマトグラフィーは、分析用であってもよいし分取用であってもよい。
分取用の超臨界流体クロマトグラフィーは、カラムで分離した目的の物質に応じて、カラムを通過した後の移動相をフラクションコレクタで分け取る工程を含む超臨界流体クロマトグラフィーであれば特に限定されない。
【0068】
充填するカラムは公知のサイズのものを用いることができる。
また、流速も適宜調整して用いることができ、0.3~10mL/minの態様を挙げることでき、好ましくは1~6mL/minの態様を挙げることができる。
また、カラム温度も0~50℃程度の態様を挙げることができ、20~40℃程度を挙げることができる。
背圧は120~180bar程度の態様を挙げることができ、130~160bar程度を挙げることができる。
【0069】
本発明の超臨界流体クロマトグラフィー用の固定相は、水溶性ビタミン、アミノ酸、糖類、核酸、親水性代謝物のような親水性物質の分離性能に優れている。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に制限されない。
【0071】
<調製例1>
(シリカゲルのN-メチル-N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]2-プロペンアミド処理)
まず、以下の手順でアクリルアミド含有シランカップリング剤の調製を行った。フラスコ中に4-ピロリジノピリジン151mgを添加し、脱気後窒素パージを行った。その中
にトルエン95mL、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン 4.04mL、ト
リエチルアミン 5.66mLを窒素雰囲気下この順番で添加した。その後アクリル酸ク
ロリド2.16mLのトルエン溶液(5mL)を窒素雰囲気下約10分間にわたり滴下した。60℃で3時間で加熱し、N-メチル-N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]2-プロペンアミド粗生成物を合成した。
【0072】
上記反応により得られた粗生成物をろ過し、副生成物のトリエチルアミン塩酸塩を除去し、ろ液をシリカゲル20.1gに受けた。尚、シリカゲルは予め160℃、3時間真空乾燥後、室温まで冷却した。粗生成物を約10mLのトルエンで洗浄した後、シリカゲルを分散したトルエン溶液をオイルバスで130℃、3時間加熱還流した。熱処理終了後、室温まで冷却しろ過回収の後、トルエン100mL、メタノール400mL、アセトン200mLで洗浄した。得られた固定相を、60℃で一晩真空乾燥し、アクリルアミドが結合したシリカゲル(以下、アクリルアミド処理シリカゲル)を得た。
このようにして得られたシリカゲルの炭素含量は4.26質量%であった。得られたシリカゲルの比表面積をBET法で測定したところ、119m2/gであり、平均粒径は3μmとみなされた。
【0073】
<実施例1>
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(PA)1.11gをフラスコに採り、2-プロパノール5.89mL、ピリジン0.1mLをこの順に添加した。ここに、0.23Mに調整したジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)の2-プロパノール溶液を0.4mL添加した。最後に、調製例1で得たアクリルアミド処理シリカゲル(平均粒子径3μm、平均細孔径300Å)2.00gをフラスコに添加し、フラスコをオイルバスで60℃に加温し6時間保った。共重合終了後、得られた粉末をろ過回収の後、50mLのメタノールで4回洗浄した。得られた固定相を、60℃で一晩真空乾燥した。
得られたシリカゲルの炭素含量は8.81質量%であり、原料シリカゲルのそれは4.26質量%であったことから、約12.7質量%のポリ(PA)が結合しているものと推定された。炭素含量の測定は元素分析により行い、増加分はすべてポリ(PA)に由来するものとして、算出した。
【0074】
得られたポリ(PA)結合シリカゲルは、以下の構造を有していることが推定できる。
【化17】
【0075】
<実施例2>
2-(N-3-スルホプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム)エチルメタクリラート(AS)1.69gをフラスコに採り、水5.23mL、ピリジン0.1mLをこの順に
添加した。ここに、0.38Mに調整した2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩の水溶液を0.4mL添加した。最後に、調製例1で得たアクリルアミド処理シリカゲル(平均粒子径3μm、平均細孔径300Å)2.00gをフラスコに添加し、フラスコをオイルバスで70℃に加温し6時間保った。共重合終了後、得られた粉末に飽和食塩水10mL添加後、ろ過回収を行った。その後、10mLの飽和食塩水で2回、50mLの水で1回、50mLのメタノールで2回、50mLのアセトンで1回洗浄した。得られた固定相を、60℃で一晩真空乾燥した。
得られたシリカゲルの炭素含量は、10.02質量%であり、原料シリカゲルのそれは4.19質量%であったことから、約15.6質量%のポリ(AS)が結合しているものと推定された。炭素含量の測定は元素分析により行い、増加分はすべてポリ(AS)に由来するものとして、算出した。
【0076】
得られたポリ(AS)結合シリカゲルは、以下の構造を有していることが推定できる。
【化18】
【0077】
<実施例3>
3-(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド(A)1.83gをフラスコに採り、2-メトキシエタノール5.93mL、N,N-ジメチルアセトアミド0.1mLをこの順に添加した。ここに、0.52Mに調整したジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)の2-メトキシエタノール溶液を0.4mL添加した。最後に、調製例1で得たアクリルアミド処理シリカゲル(平均粒子径3μm、平均細孔径300Å)2.21gをフラスコに添加し、フラスコをオイルバスで80℃に加温し6時間保った。共重合終了後、得られた粉末にメタノール10mL添加後、ろ過回収を行った。その後、50mLのメタノールで4回、50mLのアセトンで1回洗浄した。得られた固定相を、60℃で一晩真空乾燥した。
得られたシリカゲルの炭素含量は10.09質量%であり、原料シリカゲルのそれは4.19質量%であったことから、約13.3質量%のポリ(A)が結合しているものと推定された。炭素含量の測定は元素分析により行い、増加分はすべてポリ(A)に由来するものとして、算出した。
【0078】
得られたポリ(A)結合シリカゲルは、以下の構造を有していることが推定できる。
【化19】
【0079】
<実施例4>
数平均分子量が500のポリ(エチレングルコール)モノメチルエーテルメタクリレート(PEG)1.88gをフラスコに採り、ジエチレングリコールジメチルエーテル5.26mL、N,N-ジメチルアセトアミド0.1mLをこの順に添加した。ここに、0.234Mに調整したジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)のジエチレングリコールジメチルエーテル溶液0.4mLを添加した。最後に、調製例1で得たアクリルアミド処理シリカゲル(平均粒子径3μm、平均細孔径300Å)2.03gをフラスコに添加し、フラスコをオイルバスで80℃に加温し6時間保った。共重合終了後、得られた粉末にメタノール10mL添加後、ろ過回収を行った。その後、50mLのメタノールで3回、50mLのアセトンで1回洗浄した。得られた固定相を、60℃で一晩真空乾燥した。
得られたシリカゲルの炭素含量は12.24質量%であり、原料シリカゲルのそれは4.19質量%であったことから、約18.6質量%のポリ(PEG)が結合しているものと推定された。炭素含量の測定は元素分析により行い、増加分はすべてポリ(PEG)に由来するものとして、算出した。
【0080】
得られたポリ(PEG)結合シリカゲルは、以下の構造を有していることが推定できる。
【化20】
【0081】
<実施例5>
3-(メタクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸カリウム(S)1.60gをフラスコに採り、水5.81mL、N,N-ジメチルアセトアミド0.1mLをこの順に添加した。ここに、0.38Mに調整した2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩の水溶液0.4mLを添加した。最後に、調製例1で得たアクリルアミド処理シリカゲル(平均粒子径3μm、平均細孔径300Å)2.03gをフラスコに添加し、フラスコをオイルバスで80℃に加温し6時間保った。共重合終了後、得られた粉末に水10mL添加後、ろ過回収を行った。その後、10mLの水で2回、40mLのメタノールで1回、50mLのアセトンで1回洗浄した。得られた固定相を、60℃で一晩真空乾燥した。
得られたシリカゲルの炭素含量は9.52質量%であり、原料シリカゲルのそれは4.19質量%であったことから、約21.7質量%のポリ(S)が結合しているものと推定された。炭素含量の測定は元素分析により行い、増加分はすべてポリ(S)に由来するものとして、算出した。
【0082】
得られたポリ(S)結合シリカゲルは、以下の構造を有していることが推定できる。
【化21】
【0083】
<実施例6>
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.98gをフラスコに採り、2-メトキシエタノール6.09mL、N,N-ジメチルアセトアミド0.1mLをこの順に添加した。ここに、0.47Mに調整したジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)の2-メトキシエタノール溶液0.4mLを添加した。最後に、調製例1で得たアクリルアミド処理シリカゲル(平均粒子径3μm、平均細孔径300Å)2.02gをフラスコに添加し、フラスコをオイルバスで80℃に加温し6時間保った。共重合終了後、得られた粉末にメタノール10mL添加後、ろ過回収を行った。その後、50mLのメタノールで3回、50mLのアセトンで1回洗浄した。得られた固定相を、60℃で一晩真空乾燥した。
得られたシリカゲルの炭素含量は10.45質量%であり、原料シリカゲルのそれは4.19質量%であったことから、約13.9質量%のポリ(HEMA)が結合しているものと推定された。炭素含量の測定は元素分析により行い、増加分はすべてポリ(HEMA)に由来するものとして、算出した。
【0084】
得られたポリ(HEMA)結合シリカゲルは、以下の構造を有していることが推定できる。
【化22】
【0085】
<実施例7>
アクリルアミド(Am)0.53gをフラスコに採り、水6.47mL、N,N-ジメチルアセトアミド0.1mLをこの順に添加した。ここに、0.47Mに調整した2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩の水溶液0.4mLを添加した。最後に、調製例1で得たアクリルアミド処理シリカゲル(平均粒子径3μm、平均細孔径300Å)2.21gをフラスコに添加し、フラスコをオイルバスで70℃に加温し6時間保った。共重合終了後、得られた粉末にメタノール20mL、水20mL添加後、ろ過回収を行った。その後、50mLの水で2回、50mLのメタノールで1回、50mLのアセトンで1回洗浄した。得られた固定相を、60℃で一晩真空乾燥した。
得られたシリカゲルの炭素含量は7.87質量%であり、原料シリカゲルのそれは4.19質量%であったことから、約8.6質量%のポリ(Am)が結合しているものと推定された。炭素含量の測定は元素分析により行い、増加分はすべてポリ(Am)に由来するものとして、算出した。
【0086】
得られたポリ(Am)結合シリカゲルは、以下の構造を有していることが推定できる。
【化23】
【0087】
<実施例8>
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(PA)2.48gをフラスコに採り、2-メトキシエタノール8.92mL、N,N-ジメチルアセトアミド0.2mLを
この順に添加した。ここに、0.52Mに調整したジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)の2-メトキシエタノール溶液を0.4mL添加した。最後に、調製例1と同様の手法で得たアクリルアミド処理したコアシェルシリカゲル(平均粒子径2.7μm、平均細孔径160Å、シェル厚0.5μm)3.49gをフラスコに添加し、フラスコをオイルバスで80℃に加温し6時間保った。共重合終了後、得られた粉末にメタノール10mL添加後、ろ過回収を行った。その後、50mLのメタノールで4回洗浄した。得られた固定相を、60℃で一晩真空乾燥した。
得られたシリカゲルの炭素含量は5.57質量%であり、原料シリカゲルのそれは2.97質量%であったことから、約6.6質量%のポリ(PA)が結合しているものと推定された。炭素含量の測定は元素分析により行い、増加分はすべてポリ(PA)に由来するものとして、算出した。
【0088】
得られたポリ(PA)結合シリカゲルは、実施例1と同様の構造を有していることが推定できる。
【0089】
<実施例9>
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(PA)1.55gをフラスコに採り、2-メトキシエタノール5.45mL、N,N-ジメチルアセトアミド0.1mLをこの順に添加した。ここに、0.33Mに調整したジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)の2-メトキシエタノール溶液を0.4mL添加した。最後に、調製例1と同様の手法で得たアクリルアミド処理したシリカゲル(平均粒子径1.6μm、平均細孔径700Å)2.24gをフラスコに添加し、フラスコをオイルバスで80℃に加温し6時間保った。共重合終了後、得られた粉末にメタノール15mLを添加後、ろ過回収を行った。その後、50mLのメタノールで4回洗浄した。得られた固定相を、60℃で一晩真空乾燥した。
得られたシリカゲルの炭素含量は14.02質量%であり、原料シリカゲルのそれは6.49質量%であったことから、約24.5質量%のポリ(PA)が結合しているものと推定された。炭素含量の測定は元素分析により行い、増加分はすべてポリ(PA)に由来するものとして、算出した。
【0090】
得られたポリ(PA)結合シリカゲルは、実施例1と同様の構造を有していることが推定できる。
【0091】
<実施例10>
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(PA)3.55gをフラスコに採り、2-メトキシエタノール12.5mL、N,N-ジメチルアセトアミド0.2mLをこの順に添加した。ここに、0.37Mに調整したジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)の2-メトキシエタノール溶液を0.8mL添加した。最後に、調製例1と同様の手法で得たアクリルアミド処理した無孔質シリカゲル(平均粒子径2.5μm)5.01gをフラスコに添加し、フラスコをオイルバスで80℃に加温し6時間保った。共重合終了後、得られた粉末にメタノール20mLを加え、ろ過回収を行った。その後、50mLのメタノールで4回洗浄した。得られた固定相を、60℃で一晩真空乾燥した。
得られた無孔質シリカゲルの炭素含量は0.62質量%であり、原料の無孔質シリカゲルのそれは0.44質量%であったことから、約0.4質量%のポリ(PA)が結合しているものと推定された。炭素含量の測定は元素分析により行い、増加分はすべてポリ(PA)に由来するものとして、算出した。
【0092】
得られたポリ(PA)結合シリカゲルは、実施例1と同様の構造を有していることが推定できる。
【0093】
<実施例11>
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(PA)1.55gをフラスコに採り、2-メトキシエタノール5.32mL、N,N-ジメチルアセトアミド0.1mLをこの順に添加した。ここに、0.33Mに調整したジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)の2-プロパノール溶液0.4mLを添加した。ここに、シリカゲル(平均粒子径3μm、平均細孔径300Å)2.21gを添加した後、最後に3-(トリメチルシリル)プロピルメタクリレート0.12mLをフラスコに添加し、フラスコをオイルバスで60℃に加温し6時間保った。共重合終了後、得られた粉末に15mLのメタノールを添加後、ろ過回収を行った。その後、15mLのメタノールで洗浄し25mLのアセトンで洗浄した。得られた固定相を、60℃で一晩真空乾燥した。
得られたシリカゲルの炭素含量は9.14質量%であったことから、約20.4質量%のポリ(PA)が結合しているものと推定された。炭素含量の測定は元素分析により行い、増加分はすべてポリ(PA)に由来するものとして、算出した。
【0094】
得られたポリ(PA)結合シリカゲルは、実施例1と同様の構造を有していることが推定できる。
【0095】
<実施例12>
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(PA)1.56gをフラスコに採り、2-メトキシエタノール5.45mL、N,N-ジメチルアセトアミド0.1mLをこの順に添加した。ここに、0.33Mに調整したジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)の2-メトキシエタノール溶液0.4mLを添加した。最後に、表面をチオール処理したアクリルアミド処理シリカゲル(平均粒子径3μm、平均細孔径300Å:市販品)2.21gをフラスコに添加し、フラスコをオイルバスで80℃に加温し6時間保った。共重合終了後、得られた粉末にメタノール20mL添加後、ろ過回収を行った。その後、50mLのメタノールで3回、50mLのアセトンで1回洗浄した。得られた固定相を、60℃で一晩真空乾燥した。
得られたシリカゲルの炭素含量は6.41質量%であり、原料シリカゲルのそれは1.94質量%であったことから、約11.7質量%のポリ(PA)が結合しているものと推定された。炭素含量の測定は元素分析により行い、増加分はすべてポリ(PA)に由来するものとして、算出した。
【0096】
得られたポリ(PA)結合シリカゲルは、以下の構造を有していることが推定できる。
【化24】
【0097】
<実施例13>
[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド(AS)1.68gをフラスコに採り、水5.33mL、ピリジン0.
1mLをこの順に添加した。ここに、0.38Mに調整した2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩の水溶液を0.4mL添加した。最後に、表面をチオール処理したアクリルアミド処理シリカゲル(平均粒子径3μm、平均細孔径300Å:市販品)2.21gをフラスコに添加し、フラスコをオイルバスで70℃に加温し6時間保った。共重合終了後、得られた粉末に飽和食塩水20mL添加後、ろ過回収を行った。その後、30mLの飽和食塩水で2回、30mLの水で2回、50mLのメタノールで1回、50mLのアセトンで1回洗浄した。得られた固定相を、60℃で一晩真空乾燥した。
得られたシリカゲルの炭素含量は2.35質量%であり、原料シリカゲルのそれは1.94質量%であったことから、約0.9質量%のポリ(AS)が結合しているものと推定された。炭素含量の測定は元素分析により行い、増加分はすべてポリ(AS)に由来するものとして、算出した。
【0098】
得られたポリ(AS)結合シリカゲルは、以下の構造を有していることが推定できる。
【化25】
【0099】
実施例1で得られたポリ(PA)結合シリカゲル固定相を3.0mmφ×150mmカラムにスラリー充填し、SFCによってビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12を分離した。
図1は、モディファイヤとして、20mMのギ酸アンモニウムを含むメタノールを10分間かけて10%から60%にリニアグラジエント条件時のSFCクロマトグラムである。流速:3mL/min、温度:40℃、背圧:15.0MPaの条件で行った。サンプルの検出条件は以下のとおりである。ビタミンB1:UV 266nm、ビタミンB2:UV 268nm、ビタミンB6:UV 284nm、ビタミンB12:361nm。
【0100】
図2は、既存市販品のP4VPカラム(DAICEL DCpak P4VP、粒子径:3μm)を用い、
図1と同条件で、水溶性ビタミンを分析したSFCクロマトグラムである。
本発明の一実施形態にかかる固定相は、明らかに、水溶性ビタミンに対し、良好な保持特性と分離能を示している。
【0101】
実施例1~7で得られた固定相を4.6mmφ×150mmカラムにスラリー充填した各カラムを用いたHPLCによって、ウリジンの分析を行った。分析は、流速:1mL/min、温度:25℃、移動相A:アセトニトリル、移動相B:20mM酢酸アンモニウム水溶液、移動相比 A:B=90:10の条件で行った。このサンプルは、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)モードにおいて、固定相の保持の強さを表す指標としてよく用いられている(J.Chromatogr.A1218(2011)5903)。結果のクロマトグラムを
図3に示す。
【0102】
既存市販品のAgilent HILIC-Zカラム(粒子径:2.7μm)、HILICON iHILIC Fusion(粒子径:3.5μm)、HILICON iHILIC Fusion(+)(粒子径:3.5μm)、HILICON iHILIC
Fusion(P)(粒子径:5.0μm)、DAICEL,DCpakP4VP(粒子径:3.0μm)、Merck,ZIC-HILIC(粒子径:3.0μm)カラムを用い、実施例1~7の固定相を用いたときと同じ条件で、ウリジンの分析を実施した。各クロマトグラムを
図4に示す。表1には、
図3、4のクロマトグラムで示した保持係数(k)の値をまとめた。トルエンの保持時間をt0として計算した。特に実施例3および5において、既存市販品よりも優れた保持特性を示すことがわかった。
【表1】
【0103】
実施例8で得られた固定相を3.0mmφ×50mmカラムにスラリー充填したカラムを用いたHPLCによって、ウリジンの分析を行った。分析は、流速:0.43mL/min、温度:25℃、移動相A:アセトニトリル、移動相B:20mM酢酸アンモニウム水溶液、移動相比 A:B=90:10の条件で行った。結果のクロマトグラムを
図5に示す。低流速で通液しているにも関わらず、実施例1よりも保持時間が短く、ピーク対称性も良好であることから、ハイスループット分析に適していると言える。
【0104】
実施例1、9、11、12で得られた固定相を4.6mmφ×150mmカラムにスラリー充填した各カラムを用いたHPLCによって、ウリジンの分析を行った。分析は、流速:1mL/min、温度:25℃、移動相A:アセトニトリル、移動相B:20mM酢酸アンモニウム水溶液、移動相比 A:B=90:10の条件で行った。結果のクロマト
グラムを
図6に示す。実施例1と比較し、実施例9や12はシャープなピークを与えた。表1には、
図6のクロマトグラムで示した保持係数(k)の値をまとめた。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の一実施形態にかかる固定相は、従来の分離剤では分離が難しかった物質、特に親水性物質について良好な分離特性を有する。具体的には、カラム段数の向上が見込まれる。また、親水性化合物の保持特性が、既存市販品よりも優れていることも示された。このことから本発明の一実施形態にかかる固定相は、これまで分離が難しかった様々な物質の新たな分離条件の発見や改良だけでなく、分離された物質の同定、解析の利便性の向上に寄与することが期待される。