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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、および、制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/26 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
G06F1/26 303
G06F1/26 306
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022118434
(22)【出願日】2022-07-26
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】錢 立展
(72)【発明者】
【氏名】小川 満
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-076973(JP,A)
【文献】特開2019-194762(JP,A)
【文献】特開2011-034163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/26-1/3296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムデバイスと、
コントローラと、
バッテリと、
電源アダプタからの入力電力の電圧である入力電圧を所定の電圧比で中間電圧に変換する変換器と、
前記変換器から供給される電力である中間電力の一部または全部をシステム供給電力として前記システムデバイスに供給し、
前記中間電力のうち前記システムデバイスに供給されずに残された電力を充電電力として前記バッテリに充電する給電器と、を備え、
前記給電器は、
前記中間電力が前記システム供給電力よりも少ないとき、前記バッテリから放電される電力を前記システムデバイスに供給し、
前記コントローラは、
前記充電電力の電圧である充電電圧と前記システム供給電力を監視し、
前記システム供給電力と前記充電電力との差が所定の第1限界値以上になるとき、前記入力電圧を前記システム供給電力から推定されたシステム供給電圧に変更し、
前記充電電力と前記システム供給電力との差が所定の第2限界値以上になるとき、前記入力電圧を前記充電電圧と定める、
情報処理装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記充電電圧と、前記電圧比の逆数と、前記電源アダプタの定格電流とを用いて充電電力を推定する
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記電源アダプタまたは前記変換器は、前記電源アダプタからの入力電流を計測する計測器を備える
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
システムデバイスと、
バッテリと、
電源アダプタからの入力電力の電圧である入力電圧を所定の電圧比で中間電圧に変換する変換器と、
前記変換器から供給される電力である中間電力の一部または全部をシステム供給電力として前記システムデバイスに供給し、
前記中間電力のうち前記システムデバイスに供給されずに残された電力を充電電力として前記バッテリに充電する給電器と、を備え
前記給電器が、
前記中間電力が前記システム供給電力よりも少ないとき、前記バッテリから放電される電力を前記システムデバイスに供給する情報処理装置の方法であって、
前記情報処理装置が、
前記充電電力の電圧である充電電圧と前記システムデバイスの消費電力を監視する第1ステップと、
前記システム供給電力と前記充電電力との差が所定の第1限界値以上になるとき、前記入力電圧を前記システム供給電力から推定されたシステム供給電圧に変更し、
前記充電電力と前記システム供給電力との差が所定の第2限界値以上になるとき、前記入力電圧を前記充電電圧と定める第2ステップと、
を実行する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、および、制御方法、例えば、情報処理装置への電力供給を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)などの情報処理装置は、コンピュータシステムをなすシステムデバイスとして演算処理装置(プロセッサ)を備える。演算処理装置は、プログラムに従って各種の演算処理を実行するデバイスである。システムデバイスとして、通例、中央演算装置(CPU:Central Processing Unit)が採用されている。システムデバイスでは、高速な処理ほど消費電力が大きくなる。要求される機能により消費電力は大きく異なる。そのため、情報処理装置への電力供給における機能拡張が図られてきた。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の電子機器は、二次電池のシステム負荷電力を計測し、計測された電力を第1の閾値と、より小さい第2の閾値と比較し、二次電池での駆動中に比較結果に応じて第1の電力範囲、第2の電力範囲、第3の電力範囲のいずれかで動作させる。第1の電力範囲の電力は、第2の電力範囲の電力より大きく、第2の電力範囲の電力は、第3の電力範囲の電力よりも大きい。
【0004】
また、受給電規格USB PD(Power Delivery)では、USB Type-Cケーブルを用いて最大240Wまでの電力を供給できるように供給可能な電力の範囲が拡張されている。従来、供給可能としていた標準電力範囲(SPR:Standard Power Range)よりも拡張された部分である100Wから240Wまでの範囲は、拡張電力範囲(EPR:Extended Power Range)と呼ばれる。USB PDを用いることで、ゲーム用のPCのように大容量のシステムの動作に十分な電力供給を可能とするばかりではなく、他の周辺機器への電力供給も可能としている。そのため、商用電源からの電力供給に専用の電源アダプタのみならず、より軽量かつ小型化された電源アダプタの利用も可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-64838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
拡張電力範囲を実現する電源回路では、システムデバイスに供給する電力の電圧を可変とする(可変電圧供給(AVS:Adjustable Voltage Supply))。AVSでは、外部電源から供給される電力の入力電圧は、予め設定された固定値である複数の電圧の候補から選択可能としていた。入力電圧をシステムデバイスへの供給電圧に降下させる際に、選択された電圧が高いほど、電力損失が著しくなることがあった。また、発熱による温度上昇が顕著になりがちであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様に係る情報処理装置は、システムデバイスと、コントローラと、バッテリと、電源アダプタからの入力電力の電圧である入力電圧を所定の電圧比で中間電圧に変換する変換器と、前記変換器から供給される電力である中間電力の一部または全部をシステム供給電力として前記システムデバイスに供給し、前記中間電力のうち前記システムデバイスに供給されずに残された電力を充電電力として前記バッテリに充電する給電器と、を備え、前記コントローラは、前記充電電力の電圧である充電電圧と前記システム供給電力を監視し、前記充電電圧と前記システム供給電力に基づいて前記入力電圧を定める。
【0008】
上記の情報処理装置において、前記中間電力が前記システム供給電力よりも少ないとき、前記バッテリから放電される電力を前記システムデバイスに供給してもよい。
【0009】
上記の情報処理装置において、前記コントローラは、前記充電電力と前記システム供給電力のうち多い方の電力に基づいて前記入力電圧を定めてもよい。
【0010】
上記の情報処理装置において、前記コントローラは、前記システム供給電力と前記充電電力との差が所定の第1限界値以上になるとき、前記入力電圧を前記システム供給電力から推定されたシステム供給電圧に変更し、前記充電電力と前記システム供給電力との差が所定の第2限界値以上になるとき、前記入力電圧を前記充電電圧と定めてもよい。
【0011】
上記の情報処理装置において、前記コントローラは、前記充電電圧と、前記電圧比の逆数と、前記電源アダプタの定格電流とを用いて充電電力を推定してもよい。
【0012】
上記の情報処理装置において、前記電源アダプタまたは前記変換器は、前記電源アダプタからの入力電流を計測する計測器を備えてもよい。
【0013】
本発明の第2態様に係る制御方法は、システムデバイスと、バッテリと、電源アダプタからの入力電力の電圧である入力電圧を一定の電圧比で中間電圧に変換する変換器と、前記変換器から供給される電力である中間電力の一部または全部をシステム供給電力として前記システムデバイスに供給し、前記中間電力のうち前記システムデバイスに供給されずに残された電力を充電電力として前記バッテリに充電する給電器と、を備える情報処理装置の方法であって、前記情報処理装置が、前記充電電力の電圧である充電電圧と前記システムデバイスの消費電力を監視する第1ステップと、前記充電電圧と前記消費電力に基づいて前記入力電圧を定める第2ステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、供給可能な電力の拡張電力範囲を実現しながら電力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。
図2】本実施形態に係る電力供給系の構成例を示す概略ブロック図である。
図3】本実施形態に係る入力電圧制御方法を例示するフローチャートである。
図4】本実施形態に係る入力電圧の推定方法の第1例を示すフローチャートである。
図5】本実施形態に係る入力電圧の推定方法の第2例を示す状態遷移図である。
図6】入力電圧と中間電圧の範囲の例を示す図である。
図7】本実施形態に係る入力電圧の第1制御例を示す図である。
図8】本実施形態に係る入力電圧の第2制御例を示す図である。
図9】比較例におけるシステム供給電力の例を示す図である。
図10】本実施形態に係る中間電圧とシステム供給電力の関係を例示する図である。
図11】本実施形態に係る電圧差とシステム供給電圧との関係を例示する図である。
図12】本実施形態に係る電力損失とシステム供給電力との関係を例示する図である。
図13】比較例に係る電力損失とシステム供給電力との関係を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、本発明の実施形態に係る情報処理装置1の概要について説明する。図1は、本実施形態に係る情報処理装置1のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。図1の例では、情報処理装置1はPCとして構成される。情報処理装置1は、CPU11、メインメモリ12、GPU(Graphic Processing Unit;グラフィック処理装置)13、ディスプレイ14、チップセット21、BIOS(Basic Input Output System;基本入出力システム)メモリ22、補助記憶装置23、オーディオシステム24、WLAN(Wireless Local Area Network;無線構内ネットワーク)カード25、USB(Universal Serial Bus)コネクタ26、EC(Embedded Controller、エンベデッドコントローラ)31、入力部32、電源回路33、バッテリ34、放熱ファン351、温度センサ355、電源ボタン36、および、AC(Alternating Current)アダプタ37を備える。
【0017】
CPU11は、情報処理装置1に備わるシステムデバイスの中核をなすプロセッサである。CPU11は、ソフトウェア(プログラム)に記述された命令で指示される種々の演算処理を実行するプロセッサである。CPU11は、例えば、OS(Operating System)、BIOS、アプリケーションプログラム(本願では、「アプリ」と呼ぶ)など、各種のソフトウェアで指示される処理を実行する。なお、ソフトウェアに記述された指令(コマンド)で指示される処理を実行することを、「ソフトウェアを実行する」と呼ぶことがある。
【0018】
メインメモリ12は、プロセッサの実行プログラムの読み込み領域として、または、実行プログラムの処理データを書き込むための作業領域として利用される書き込み可能メモリである。メインメモリ12は、例えば、複数個のDRAM(Dynamic Random Access Memory)チップで構成される。実行プログラムには、OS、周辺機器などのハードウェアを操作するための各種ドライバ、各種サービス/ユーティリティ、アプリ等が含まれる。
【0019】
GPU13は、主に実時間画像処理を実行するプロセッサである。GPU13は、CPU11からの描画命令を処理し、処理した描画情報をビデオメモリ(図示せず)に書き込む。GPU13は、ビデオメモリから描画情報を読み出して、CPU11を経由し、ディスプレイ14に描画情報(表示情報)を示す表示データとして出力する(画像処理)。
CPU11は、OS上でグラフィックドライバを実行して、GPU13の動作を制御し、OS、アプリ、その他のプログラムで指示される画像処理を実現する。GPU13の個数は、1個に限られず、複数個でもよい。GPU13は、CPU11と一部の処理を分担し、画像処理以外の並列演算処理を実行してもよい。GPU13の動作は、CPU11とは異なり、間欠的となり、動作開始、終了を不定期に繰り返す傾向がある。
CPU11、メインメモリ12、および、GPU13は、情報処理装置1の中核となるコンピュータシステム、つまり、ホストシステムをなすシステムデバイスとして機能する。言い換えれば、情報処理装置1のコンピュータシステムは、ハードウェアとしてシステムデバイスと、OS、スケジュール・タスクなどのソフトウェアと、を含んで構成される。
【0020】
ディスプレイ14は、CPU11から出力された表示データに基づく表示画面を表示する。ディスプレイ14は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、OLED(Organic Light Emitting Diode、有機発光ダイオード)ディスプレイなどのいずれであってもよい。
【0021】
チップセット21は、1個または複数のコントローラを備え、複数のデバイスと各種のデータを入出力できるように接続可能とする。コントローラは、例えば、USB、シリアルATA(Advanced Technology Attachment)、SPI(Serial Peripheral Interface)バス、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス、PCI-Expressバス、および、LPC(Low Pin Count)などのバスコントローラのいずれか1個または組み合わせである。接続先となる複数のデバイスは、例えば、後述するBIOSメモリ22、補助記憶装置23、オーディオシステム24、WLANカード25、USBコネクタ26、および、EC31が該当する。
【0022】
BIOSメモリ22は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリで構成される。かかる不揮発メモリとして、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、および、フラッシュROM(Read Only Memory)などが該当する。BIOSメモリ22は、BIOS、EC31その他のデバイスの動作を制御するためのファームウェアなどを記憶する。BIOSは、システムデバイスの基本的な入出力を行うためのファームウェアである。本願では、BIOSとは、UEFI(Unified Extensible Firmware Interface)に規定された仕様に従って定義されたファームウェアも含まれうる。
【0023】
補助記憶装置23は、各種のデータを永続的に記憶する。記憶されるデータは、CPU11およびGPU13により実行されうる各種のプログラム、パラメータ、各種処理に用いられるデータ、各種処理により取得されるデータが含まれる。補助記憶装置23は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、および、SSD(Solid State Drive)などのいずれであってもよい。補助記憶装置23は、各種の不揮発性メモリを含んで構成される。不揮発性メモリとして、例えば、フラッシュメモリが用いられる。各種のプログラムには、例えば、OS、ドライバ、ファームウェア、アプリ、などの何れか1個または組み合わせが含まれうる。
【0024】
オーディオシステム24は、マイクロホンとスピーカ(図示せず)が接続され、音声データの記録、再生および出力を実行可能とする。なお、マイクロホンとスピーカは、例えば、情報処理装置1に内蔵されてもよいし、情報処理装置1とは別体であってもよい。
WLANカード25は、ワイヤレス(無線)LAN、または、ワイヤレスLANを経由して他のネットワークに接続して、接続先との機器との間で、各種のデータを送受信可能とする。
USBコネクタ26は、USBを利用して各種の周辺機器類を接続するためのコネクタである。
【0025】
EC31は、情報処理装置1の中核をなすホストシステムの動作状態に関わらず、各種デバイス(周辺装置やセンサ等)の状況を監視して制御するワンチップマイコン(One-Chip Microcomputer)である。EC31は、CPU11とは別個のCPU、メインメモリ12とは別個のRAMの他、ROM、複数チャネルのA/D(Analog-to-Digital)入力端子、D/A(Digital-to-Analog)出力端子、タイマおよびデジタル入出力端子(図示せず)を備える。EC31のデジタル入出力端子には、入力部32、電源回路33、および、放熱ファン351などが接続されており、EC31は、これらの動作を制御可能とされている。
また、EC31は、チップセット21を経由してプロセッサ、即ち、CPU11とGPU13の一方または両方のクロック周波数の変更、および、平均処理速度、等の制御を行って消費電力を制御してもよい。
【0026】
入力部32は、ユーザの操作を検出し、検出した操作に応じた操作信号をEC31に出力する入力デバイスを備える。入力部32には、例えば、キーボード、および、タッチパッドなどが該当する。入力部32をなすタッチセンサは、表示部をなるディスプレイ14と重なり合い、タッチパネルとして構成されてもよい。
【0027】
電源回路33は、ACアダプタ37、または、バッテリ34から供給される直流電力の電圧を、情報処理装置1を構成する各デバイスの動作に要する電圧に変換し、変換した電圧を有する電力を供給先のデバイスに供給する。電源回路33は、EC31の制御に従って、電力供給を実行する。電源回路33は、自器に供給される電力の電圧を変換する変換器と、電圧が変換された電力をバッテリ34に供給する給電器を備える。給電器は、ACアダプタ37から電力が供給されている場合、各デバイスにおいて供給されずに残された電力をバッテリ34に供給する。ACアダプタ37から電力が供給されない場合、または、ACアダプタ37から供給される電力が不足する場合には、バッテリ34から放電される電力を、動作電力として各デバイスに供給する。
【0028】
バッテリ34として、二次電池が用いられる。二次電池は、充電および放電とも可能な蓄電池である。二次電池として、例えば、リチウムイオン電池が該当する。
放熱ファン351は、フィン(羽)とモータを備える。モータは、EC31の制御に従いフィンを回転させる。フィンの回転により、情報処理装置1の筐体内に空気が流入し、流入した空気を各部と熱交換し、排出させる。
温度センサ355は、CPU11の温度を検出し、検出した温度を示す温度信号をEC31に出力する。EC31は、温度センサ355から通知された温度に基づいて放熱ファンの動作を制御する。
【0029】
電源ボタン36は、押下操作が受け付けられる都度、情報処理装置1の全体への電源投入(Power ON)および電源断(Power OFF)を制御する。電源ボタン36は、押下を示す押下信号をEC31に出力する。EC31は、情報処理装置1が電源断であるときに電源ボタン36から押下信号が入力されるとき、電源回路33に対し、情報処理装置1の各デバイスへの電力供給を開始させる(電源投入)。
【0030】
ACアダプタ37は、外部電源から供給される交流電力を電圧が一定となる直流電力に変換し、変換された電力を電源回路33に供給する。ACアダプタ37は、電源回路33およびEC31と各種のデータ信号を入出力可能に接続される。ACアダプタ37は、電源回路33を含む情報処理装置1の筐体と着脱可能とする装着具を備える。装着具は、電力とデータの両方を所定の規格に従って伝送することができるインタフェースを備える。所定の規格として、例えば、USB Type-Cを用いることができる。
【0031】
一般に、情報処理装置1を構成するデバイス、ならびに、これらに有線で接続されるデバイスのうち、システムデバイスの消費電力が主であり、かつ、時間変動が著しくなりがちである。電源回路33からの電力供給は、主にシステムデバイスにおける電力消費状態に基づいて制御される。電源回路33は、バッテリ34の起電力を検出する。バッテリ34の起電力は、正極と負極との電位差に相当する。電源回路33は、例えば、バッテリ34への充電を行うとき、バッテリ34の起電力よりも高く、かつ、システムデバイスへの供給電圧以下となるようにバッテリ34への充電電圧を定める。電源回路33は、バッテリ34から放電するとき、バッテリ34の起電力よりも低くなるように、かつ、システムデバイスへの供給電圧を定める。
【0032】
システムデバイスをなすプロセッサの消費電力は、実行中のプログラムで指示される処理の処理量が多いほど多くなる。プロセッサは、所定のプログラムの実行により、自部の消費電力を監視し、消費電力に応じて動作電圧と動作周波数の一方または両方を可変とする。例えば、CPU11は、ホストシステムの動作状態に応じた定格電力を、CPU11に備わるレジスタに設定する。CPU11は、その時点までの消費電力の移動平均値が定格電力を超えないように動作電圧または動作周波数を制御する。CPU11は、GPU13に対しても、同様な手法と用いて消費電力を制御することができる。CPU11は、公知の手法を用いて、予め定めた複数の動作モードから1段階の動作モードを選択する。CPU11は、例えば、標準モードと、低電力モードのいずれかの動作モードを選択する。低電力モードは、標準モードよりも消費電力(定格電力)が少ない動作モードである。
【0033】
動作モードは、例えば、フォアグランドで実行中のアプリケーションに対しては、ユーザ操作の有無、画面表示の有無、これらの継続時間などに基づいて選択される。例えば、ユーザ操作が所定時間以上検出されず、かつ、新たな画面表示が所定時間以上なされないとき、CPU11は、動作モードを標準モードから低電力モードに変更する。いずれかのユーザ操作を検出するとき、CPU11は、動作モードを低電力モードから標準モードに変更する。標準モードは、さらに定格電力が異なる複数段階の動作モードに区別されてもよい。CPU11は、プロセッサの消費電力の移動平均値が高いほど、より定格電力が多い動作モードを選択する。かかる処理は、ドライバ、ユーティリティ、ファームウェア、などのいずれの形態のプログラムを実行して実現されてもよい。CPU11は、定めた動作モードを示すモード情報をEC31に出力する。
【0034】
EC31にはCPU11から入力されるモード情報に基づいて、電源回路33の動作を制御してもよい。EC31には、予め動作モードごとに電圧制御情報を示すデータが設定されてもよい。電圧制御情報は、供給先となるデバイスとデバイスごとの電圧を示す。EC31は、モード情報で通知された動作モードに対応する電圧制御情報を電源回路33に出力する。電源回路33は、EC31から入力される電圧制御情報で指示されるデバイスごとに指示される電圧を有する電力を供給する。
【0035】
次に、本実施形態に係る電力供給系の構成例について説明する。図2は、本実施形態に係る電力供給系の構成例を示す概略ブロック図である。図2に例示される電力供給系は、電源回路33と、ACアダプタ37と、を備える。システムデバイスSD以外の電力の供給先となるデバイスの図示が省略されている。電源回路33は、ACアダプタ37とEC31のそれぞれと各種のデータを送受信可能に接続される。この接続は、例えば、USB Type-Cの規定に従う。電源回路33とACアダプタ37とは、基線38を用いて接続される。基線38は、電力線と信号線を有し、それらが並列に統合されている。基線38は、例えば、USB Type-Cケーブルである。電力線は、ACアダプタ37から電源回路33に電力を伝送する。信号線は、ACアダプタ37と電源回路33との間で、各種のデータ信号を伝送する。
【0036】
電源回路33は、PD(Power Delivery)コントローラ332と、電圧レギュレータ回路334と、NVDC(Narrow Voltage Direct Charging;狭電圧直流)給電器336と、スイッチ338と、を備える。
ACアダプタ37は、PDコントローラ372と、整流器374と、を備える。
【0037】
PDコントローラ372は、電源回路33から信号線を経由して入力される入力電圧制御信号で指示される入力電圧VBUSを整流器374に設定する。
整流器374は、外部の商用電源から自器に供給される交流電力を整流し、直流電力に変換する。直流電力の電圧は、設定された入力電圧VBUSとなる。整流器374は、変換した直流電力を電源回路33に電力線を経由して供給する。図2において、IVBUSは、整流器374から電源回路33に供給される電流(本願では、「入力電流」と呼ぶことがある)を示す。
【0038】
なお、整流器374は、入力電流IVBUSを予め定めた最大値(例えば、1~5A)以下となるように制限してもよい。
ACアダプタ37は、入力電流IVBUSを測定する測定器を備えてもよい。PDコントローラ372は、測定された入力電流IVBUSを示す入力電流情報をEC31に電源回路33を経由して出力してもよい。
PDコントローラ372は、基線38に送出するACアダプタ37の定格電流を示す電流情報を、EC31に電源回路33を経由して出力してもよい。この電流情報は、後述するように、EC31において充電電力の推定に用いられる。
【0039】
PDコントローラ332は、EC31およびACアダプタ37とデータ信号を入出力可能に接続される。PDコントローラ332は、例えば、EC31から入力される入力電圧制御信号をACアダプタ37に出力する。
PDコントローラ332は、自器に接続されるACアダプタ37の機種を検出し、検出した機種に応じた電圧比を定めてもよい。PDコントローラ332は、例えば、ACアダプタ37のPDコントローラ372への接続要求信号に対する応答信号を受信し、受信した応答信号で通知される機種を特定する。PDコントローラ332には、予め機種ごとの電圧比を示すテーブルが設定され、設定されたテーブルを参照して、検出した機器に対応する電圧比を特定することができる。電圧比は、電圧レギュレータ回路334へACアダプタ37から供給される入力電圧VBUSに対する中間電圧VINTの比に相当する。中間電圧VINTは、電圧レギュレータ回路334からNVDC給電器336へ供給される電力の電圧を指す。
【0040】
PDコントローラ332は、予め定めた複数の電圧比から、システム供給電圧に対する入力電圧VBUSの比以上であって、その比に最も近似する電圧比を定めてもよい。これにより、NVDC給電器336における電力損失を抑制することができる。
PDコントローラ332は、定めた電圧比を与える電圧比制御信号を電圧レギュレータ回路334とEC31に出力する。
なお、電圧レギュレータ回路334が入力電圧VBUSを所定の電圧比で中間電圧VINTに降圧する場合には、PDコントローラ332が電圧比を定め、電圧比制御信号を電圧レギュレータ回路334に出力する処理は省略されてもよい。
【0041】
電圧レギュレータ回路334は、ACアダプタ37から供給される電力の入力電圧VBUSを所定の電圧比(例えば、2:1)で降圧し、降圧後の電圧を中間電圧VINTとして有する電力を中間電力としてNVDC給電器336に供給する。
電圧レギュレータ回路334は、SCVR(Switched Capacitor Voltage Regulator)334aと、スイッチ334bと、を備える。SCVR334aとスイッチ334bは、並列に接続されている。
【0042】
SCVR334aは、ACアダプタ37から供給される電力の入力電圧VBUSをPDコントローラ332から入力される電圧制御信号で指示される電圧比で降圧する。SCVR334aは、降圧後の中間電圧VINTを有する中間電力をNVDC給電器336に送出する。
スイッチ334bは、PDコントローラ332から入力される電圧制御信号に従って、ACアダプタ37から供給される電力をNVDC給電器336に導通させるか否かを制御可能とする。SCVR334aの内部抵抗は、スイッチ334bの導通時における内部抵抗より十分に大きくなるように設定される。そのため、スイッチ334bの遮断時において、ACアダプタ37から供給される電力は、主にSDVR334aを通過する。よって、中間電圧VINTは、スイッチ334bの開閉により、入力電圧VBUSと電圧制御信号で指示される電圧比で降圧した電圧のいずれかに制御される。SCVR334aにおいて入力電圧VBUSを所定の電圧比で中間電圧VINTに降圧する場合には、スイッチ334bは、電力を遮断したままにしてもよい。
【0043】
NVDC給電器336は、電圧レギュレータ回路334から供給される中間電力の一部または全部をシステムデバイスSDに供給する。NVDC給電器336は、システムデバイスSDに供給されず、残された電力をバッテリ34にスイッチ338を経由して充電する。
NVDC給電器336は、EC31からバッテリ34に充電する電力の電圧(本願では、「充電電圧」と呼ぶことがある)に関する目標充電情報を取得する。取得される目標充電情報により、EC31から充電電圧VCHGと充電電流ICHGそれぞれの目標値が通知される。NVDC給電器336は、バッテリ34への充電電流ICHGが、その目標値を超えないようにシステムデバイスSDに供給するシステム供給電流ISYSと充電電流ICHGとの合計出力電流(ISYS+ICHG)を制限する。NVDC給電器336は、充電電圧VCHGの目標値に基づいてシステム供給電圧VSYSを定め、定めたシステム供給電圧VSYSとシステム供給電流ISYSの目標値に従って、システムデバイスSDに電力を供給する。ここで、システム供給電圧VSYSは、充電電圧VCHGの目標値に対し、スイッチ338および配線抵抗による電圧降下を補償して得られる値となる。電圧降下の補償に要するスイッチ338、配線抵抗それぞれの抵抗値は、予めNVDC給電器336に設定しておけばよい。
【0044】
なお、NVDC給電器336は、SCVR334aから供給される電力の中間電圧VINT、中間電力IVINTと、バッテリ34に現実に充電される電力の充電電圧VCHG、充電電流ICHGとを測定する測定器を備える。そして、NVDC給電器336は、中間電圧VINTの測定値と中間電力IVINTの測定値との積を入力電力PINとして算出する。NVDC給電器336は、充電電圧VCHGの測定値と充電電流ICHGの測定値との積を充電電力PCHGとして算出する。NVDC給電器336は、入力電力PINから充電電力PCHGの差をシステム供給電力PSYSとして算出する。NVDC給電器336は、定めたシステム供給電圧VSYSを示す電力供給情報をEC31に出力する。
【0045】
スイッチ338は、NVDC給電器336から電力が供給されない場合、または、NVDC給電器336から供給される電力がシステムデバイスSDにおける消費電力に不足する場合には、バッテリ34から放電される電力をシステムデバイスSDに供給する。
スイッチ338の一端は、NVDC給電器336とシステムデバイスSDに電気的に接続されている。スイッチ338の他端は、バッテリ34に電気的に接続されている。スイッチ338は、例えば、第1の整流器、第2の整流器、測定器、および、切替器を備える。第1の整流器は、一端から他端への電流を導通させ、他端から一端への電流を遮断する。第2の整流器は、他端から一端への電流を導通させ、一端から他端への電流を遮断する。測定器は、一端と他端との電位差を検出する。切替器は、検出された電位差が一端における電位の方が他端における電位よりも高いか否かにより、第1の整流器と第2の整流器のいずれに通電するかを切り替える。
【0046】
なお、PDコントローラ332は、ACアダプタ37から入力電流情報が入力される場合、その入力電流情報をEC31に出力してもよい。電源回路33は、ACアダプタ37から供給される電力の電流値を測定する測定器を備えてもよい。PDコントローラ332は、ACアダプタ37から入力される入力電流情報に代えて、または、その入力電流情報とともに、電源回路33の測定器が測定した電流値を入力電流として示す入力電流情報をEC31に出力してもよい。
【0047】
バッテリ34は、NVDC給電器336からスイッチ338を経由して供給される電力を充電する。バッテリ34は、充電電圧VCHGの目標値と充電電流ICHGの目標値を定めるコントローラを備える。コントローラは、例えば、自器における蓄電状態を示す電圧と電流を検出する検出器を備え、電気的特性を示す内部抵抗、静電容量、非常停止電圧、放電停止電圧などのパラメータを用いて、公知の蓄電制御方法を用いて充電電圧VCHGの目標値と充電電流ICHGの目標値を定める。コントローラは、定めた充電電圧VCHGの目標値と充電電流ICHGの目標値を示す目標充電情報をEC31に出力する。
【0048】
EC31は、NVDC給電器336から入力される電力供給情報と、EC31から入力される目標充電情報を監視する。EC31は、目標充電情報に示される充電電圧VCHGの目標値と電力供給情報に示されるシステム供給電力PSYSに基づいて入力電圧VBUSを定める。EC31は、定めた入力電圧VBUSを示す入力電圧制御信号をACアダプタ37に電源回路33を経由して出力する。なお、EC31は、バッテリから入力される目標充電情報をNVDC給電器336に出力する。
【0049】
EC31は、充電電圧VCHGに基づいて充電電力PADP_CHGを推定する。本願では、推定された充電電力PADP_CHGを、「推定充電電力PADP_CHG」、または、単に「推定充電電力」と呼ぶことがある。EC31は、例えば、充電電圧VCHGと、電圧レギュレータ回路334における電圧比の逆数と、入力電流IVBUSとの積を充電電力PADP_CHGとして算出することができる。具体的には、充電電圧VCHGが12V、入力電圧VBUSに対する中間電圧VINTの電圧比が2:1、入力電流IVBUSが5Aであるとき、推定充電電力PADP_CHGは、12V×2×5A=60Wとなる。ここで、入力電流IVBUSが一定値に固定されている場合、または、最大値以下に制限されている場合には、予め定めた入力電流IVBUSとして定格電力Iratedが利用できる。
【0050】
入力電流IVBUSが可変である場合には、EC31は、ACアダプタ37から入力される入力電流情報で通知される入力電流IVBUSを利用してもよい。推定充電電力PADP_CHGは、充電電圧VCHGをACアダプタ37から供給される入力電力と同じ次元に換算した電力とみなすことができる。各デバイスのうち、システムデバイスに供給される電力が主となる。
【0051】
EC31は、推定充電電力PADP_CHGとシステム供給電力PSYSとを比較し、推定充電電力PADP_CHGとシステム供給電力PSYSのいずれがより大きいかを判定する。EC31は、推定充電電力PADP_CHGとシステム供給電力PSYSのうち大きい方の電力に基づいて、入力電圧VBUSを定める。EC31は、大きい方の電力を入力電圧と同じ次元に換算した電圧を、入力電圧VBUSとして定める。即ち、EC31は、大きい方の電力を入力電流IVBUSで除算し、電圧比の逆数を乗じて得られる電圧を入力電圧VBUSとして定めることができる。
【0052】
次に、本実施形態に係る入力電圧制御方法の例について説明する。図3は、本実施形態に係る入力電圧制御方法の例を示すフローチャートである。
(ステップS102)EC31は、バッテリ34から通知される充電電圧VCHGとNVDC給電器336から通知されるシステム供給電力PSYSを監視する。
(ステップS104)EC31は、充電電圧VCHGをシステム供給電力と同じ次元の電力量を推定充電電力PADP_CHGとして変換する。
(ステップS106)EC31は、推定充電電力PADP_CHGとシステム供給電力PSYSとを比較し、どちらが大きいかを判定する。
【0053】
(ステップS108)EC31は、推定充電電力PADP_CHGとシステム供給電力PSYSの大きい方の電力を換算して得られる電圧を入力電圧VBUSとして定める。
(ステップS110)EC31は、定めた入力電圧VBUSを示す入力電圧制御信号をACアダプタ37に出力する。ACアダプタ37のPDコントローラ372は、EC31から入力されるから供給される入力電圧制御信号で指示される入力電圧VBUSを整流器374に設定する。その後、図3の処理を終了する。
【0054】
次に、本実施形態に係る入力電圧決定方法の例について説明する。図4は、ステップS108における入力電圧VBUSの推定方法を例示するフローチャートである。
(ステップS108a)システム供給電力PSYSが推定充電電力PADP_CHGよりも小さい場合(ステップS108a YES)、ステップS108bの処理に進む。システム供給電力PSYSが推定充電電力PADP_CHG以上となる場合(ステップS108a NO)、ステップS108cの処理に進む。
【0055】
(ステップS108b)EC31は、推定充電電力PADP_CHGを入力電流IVBUSで除算し、電圧比の逆数を乗じて得られる電圧VBUS_CHGを入力電圧VBUSとして定める。その後、ステップS110の処理に進む。
(ステップS108c)EC31は、システム供給電力PSYSを入力電流IVBUSで除算し、電圧比の逆数を乗じて得られる電圧VBUS_PSYSを入力電圧VBUSとして定める。その後、ステップS110の処理に進む。
【0056】
EC31が推定充電電力PADP_CHGとシステム供給電力PSYSのそれぞれの瞬時値を単純に比較すると、両者の大小関係、ひいては、入力電圧VBUSが逐次に変動することがある。そこで、EC31は、推定充電電力PADP_CHGとシステム供給電力PSYSのそれぞれの瞬時値に代えて、移動平均値を比較ならびに入力電圧VBUSの算出に用いてもよい。システム供給電力PSYSと推定充電電力PADP_CHGとの大小関係の変動が緩和するため、安定した入力電圧VBUSが算出される。そのため、情報処理装置1への電力供給の安定化が図られる。
【0057】
EC31は、移動平均値として現時点までの一定の期間内の瞬時値の単純平均値または加重平均値を算出してもよいし、指数移動平均値を算出してもよい。指数移動平均値は、現時点の瞬時値と前時点の瞬時値との差分と所定の平滑化係数との積に前時点の瞬時値との和に相当する。平滑化係数は、0よりも大きく1よりも小さい予め定めた正の実数値である。
【0058】
図3図4は、EC31が単純にシステム供給電力PSYSと推定充電電力PADP_CHGとの大小関係に基づいて入力電圧VBUSを定める場合を例にしたが、これには限られない。
図5に例示されるように、EC31は、システム供給電力PSYSが推定充電電力PADP_CHGと第1限界値αとの和以上となる場合、つまり、システム供給電力PSYSから推定充電電力PADP_CHGの差が第1限界値α以上となる場合、EC31は、電圧VBUS_PSYSを入力電圧VBUSとして定めてもよい。
EC31は、システム供給電力PSYSが推定充電電力PADP_CHGから第2限界値βの差以上となる場合、つまり、推定充電電力PADP_CHGからシステム供給電力PSYSの差が第2限界値β以上となる場合、EC31は、電圧VBUS_CHGを入力電圧VBUSとして定める。
【0059】
第1限界値αとして0よりも大きい正の実数を予め設定しておく。システム供給電力PSYSが充電電力PADP_CHGよりも有意に大きいとき、電圧VBUS_PSYSが入力電圧VBUSとして定まる。
第2限界値βとして0よりも大きい正の実数を予め設定しておく。推定充電電力PADP_CHGがシステム供給電力PSYSよりも有意に大きいとき、電圧VBUS_CHGが入力電圧VBUSとして定まる。
システム供給電力PSYSと推定充電電力PADP_CHGにノイズの影響が生じても、システム供給電力PSYSと推定充電電力PADP_CHGとの大小関係が有意に変化しなければ、入力電圧が変化しない。そのため、情報処理装置1への電力供給の安定化が図られる。
【0060】
本実施形態では、電圧レギュレータ回路334から供給される中間電力の中間電圧VINTの範囲(VINT_MIN~VINT_MAX)がバッテリ34への充電電圧の範囲およびシステム供給電圧VSYSの範囲に含むように、入力電圧VBUSの範囲(VBUS_MIN~VBUS_MAX)が設定されればよい(図6参照)。バッテリ34の充電電圧の範囲、システム供給電圧の範囲は、典型的には6~20Vとなる。入力電圧VBUSと中間電圧VINTとの電圧比が2:1である場合、入力電圧VBUSの範囲を、15~40Vとすればよい。
【0061】
次に、入力電圧VBUSの制御例について説明する。図7は、本実施形態に係る入力電圧VBUSの第1制御例を示す図である。図7は、システム供給電力PSYS、充電電圧VCHG、および、中間電圧VINTにより定まる入力電圧VBUS、入力電力PADP、および、消費効率ηの推移を示す。入力電力PADPは、入力電圧VBUSと入力電流IVBUSの積に相当する。消費効率η1~η5は、概ね96~98%と高い変換効率が得られた。
【0062】
第1段の例では、システム供給電力PSYS1が推定充電電力PADP_CHG1よりも小さいため、入力電圧VBUS1は、電圧VBUS_CHG1となる。
第2段の例では、システム供給電力PSYS2が推定充電電力PADP_CHG2よりも大きくなるため、入力電圧VBUS2は、電圧VBUS_SYS2となる。
第3段の例では、入力電圧VBUS3が最大値VBUS_MAXに達する。システム供給電力PSYSも最大値に達し、さらにシステム供給電力PSYSが増加するとACアダプタ37から供給される電力だけでは不足する。不足分の電力は、バッテリ34から放電される放電電力を用いて補われる。
第4段の例では、システム供給電力PSYS4が推定充電電力PADP_CHG4よりも小さくなるため、入力電圧VBUS4は、電圧VBUS_CHG4となる。
第5段の例では、システム供給電力PSYS5が推定充電電力PADP_CHG5よりもさらに小さくなるため、入力電圧VBUS4は、電圧VBUS_CHG5となる。
【0063】
図8は、本実施形態に係る入力電圧VBUSの第2制御例を示す図である。図8は、システム供給電力PSYS、入力電力PADP、充電電力PCHG、および、入力電圧VBUSならびに中間電圧VINTを示す。充電電力PCHGは、バッテリ34に現実に充電される電力である。図8において上方ほど充電電力PCHGが減少し、破線で示されるよりも上方は、充電電力PCHGが負値、つまり、バッテリ34からの放電電力を示す。システム供給電力PSYSは、時刻t1までの間、低い状態が継続し、時刻t1からt2にかけて増加し、時刻t2からt3までの間、高い状態が継続する。その後、システム供給電力は、時刻t3からt4にかけて減少し、時刻t4からt5までの間、低い状態が継続し、時刻t5からt6にかけて急激に増加する。そして、システム供給電力PSYSは、時刻t6からt7までの間、高い状態が継続し、時刻t7からt8にかけて急激に減少し、時刻t8以降、低い状態が継続する。
【0064】
これに対し、システム供給電力PSYSの増加に伴い、当初は充電電力PCHGが減少し、システム供給電力PSYSが推定充電電力PADP_CHGよりも大きくなることで、放電に転ずる(時刻t11、t12参照)。これ以降、入力電圧VBUSを電圧VBUS_SYSと定めることで、推定充電電力PADP_CHGが増加する。そのため、放電が抑制される。再度、システム供給電力PSYSが減少しても、しばらくの間、入力電圧VBUSを電圧VBUS_SYSと定まる。そのため、充電電力PADP_CHGが変動しても、放電ならびに充電ともに抑制される。システム供給電力PSYSが推定充電電力PADP_CHG以下となることで、入力電圧VBUSを電圧VBUS_CHGと定まることで、顕著な充電が開始され(時刻t21参照)、システム供給電力PSYSの安定化に伴い充電電力が安定化する(時刻t22参照)。
【0065】
よって、本実施形態によれば、システム供給電力PSYSと推定充電電力PADP_CHGの大小関係に応じて入力電圧の推定方法を切り替えることで、中間電圧VINTをシステム供給電圧VSYSに近似させることができる。また、システム供給電力PSYSが推定充電電力PADP_CHGよりも大きくなるときに、入力電圧VBUSを電圧VBUS_SYSと定めることで、システムデバイスSDの充放電を抑制することができる。
【0066】
比較例として、図9において、システム供給電力PSYSが図8の例と同様であって、入力電圧VBUSならびに中間電圧VINTを一定とする場合を掲げる。この場合には、充電電力PCHGの時間変化がシステム供給電力PSYSの時間変化に相応する。中間電圧VINTは、システム供給電圧VSYSとの差分が顕著となり、システムデバイスSDの充放電が抑制されない。このことは、電力の消費効率が低下する原因となっていた。
これに対し、本実施形態では、中間電圧VINTの時間変化は、システム供給電圧VSYSの時間変化と相関し、中間電圧VINTとシステム供給電圧VSYSの差分の時間変化が抑えられる。そのため、本実施形態によれば、電力の消費効率を向上させることができる。
【0067】
図10は、本実施形態に係る入力電圧VBUSならびに中間電圧VINTとシステム供給電力PSYSの関係を例示する図である。入力電圧VBUSまたは中間電圧VINTは、当初、システム供給電力PSYSに関わらず充電電圧VCHGに対応する一定値となるが、システム供給電力PSYSがある値を超えると、上限に達するまでシステム供給電力PSYSに比例して増加する。図10において、線のパターンは充電電圧VCHGの違いを示す。入力電圧VBUSまたは中間電圧VINTが一定となるシステム供給電力PSYSの範囲は、充電電圧が低いほど狭くなる。
【0068】
図11は、本実施形態に係る電圧差VDIFFとシステム供給電圧VSYSとの関係を例示する図である。電圧差VDIFFは、中間電圧VINTとシステム供給電圧VSYSとの差分に相当する。電圧差VDIFFは、当初、システム供給電力PSYSに関わらずゼロであるが、システム供給電力がある値を超えると、上限に達するまでシステム供給電力PSYSに比例して増加する。電圧差VDIFFがゼロとなる領域は、充電電圧VCHGが高いほど広くなる。電圧差VDIFFは、電力の消費効率を低下させる原因となるところ、要求されるシステム供給電力PSYSが高いほど充電電圧VCHGが高い方が好ましい。
【0069】
図12図13は、本実施形態、比較例のそれぞれに係る電力損失PLOSSとシステム供給電力PSYSとの関係を例示する図である。電力損失PLOSSは、システム供給電力PSYSの増加に伴い増加する傾向がある。また、充電電圧VCHGが低いほど電力損失PLOSSが増加する傾向がある。本実施形態では、システム供給電力PSYSが小さい領域における充電電圧VCHGの低下による電力損失PLOSSの増加が比較例よりも顕著に抑制される(図12、破線部分参照)。このことは、特にシステムデバイスSDの消費電力が小さい場合、変換効率の改善が著しいことを示す。
【0070】
以上に説明したように、本実施形態に係る情報処理装置1は、システムデバイスSDと、コントローラ(例えば、EC31)と、バッテリ34と、電源アダプタ(例えば、ACアダプタ37)からの入力電力の電圧である入力電圧を所定の電圧比で中間電圧に変換する変換器(例えば、電圧レギュレータ回路334)と、変換器から供給される電力である中間電力の一部または全部をシステム供給電力としてシステムデバイスSDに供給し、中間電力のうちシステムデバイスSDに供給されずに残された電力を充電電力としてバッテリ34に充電する給電器(例えば、NVDC給電器336)と、を備える。コントローラは、充電電力の電圧である充電電圧とシステム供給電力を監視し、充電電圧とシステム供給電力に基づいて入力電圧を定める。
この構成によれば、充電電圧とシステム供給電力に基づいて定めた入力電圧から変換された中間電圧を、充電電圧に近似させることができる。そのため、給電器における電力損失を抑制して電力の変換効率を向上することができる。
【0071】
また、情報処理装置1は、中間電力がシステム供給電力よりも少ないとき、バッテリ34から放電される電力をシステムデバイスに供給してもよい。
この構成によれば、中間電力がシステム供給電力よりも不足するとき、不足する電力がバッテリ34から放電される電力により補われる。一時的な中間電力の過不足をバッテリ34への充放電により補うことで、電源アダプタからの電力供給を過大にせずに済む。
【0072】
コントローラは、充電電力とシステム供給電力のうち多い方の電力に基づいて入力電圧を定めてもよい。
この構成によれば、バッテリ34への充電がなされるとき充電電圧に基づいて入力電圧が定まり、バッテリ34への充電がなされないときシステム供給電力に基づいて入力電圧が定まる。そのため、中間電圧を充電電圧に近似させるとともに、過度な充放電を回避することで変換効率の低下を抑制することができる。
【0073】
コントローラは、システム供給電力と充電電力との差が所定の第1限界値以上になるとき、入力電圧を前記システム供給電力から推定されたシステム供給電圧に変更し、充電電力と前記システム供給電力との差が所定の第2限界値以上になるとき、入力電圧を充電電圧と定めてもよい。
この構成によれば、システム電力が充電電力よりも有意に大きいとき、システム供給電圧が入力電圧として定まり、充電電力がシステム供給電力よりも有意に大きいとき、充電電圧が入力電圧として定まる。システム供給電力と充電電力との大小関係の一時的に変化しても、入力電圧を定める方法が変化しない。そのため、入力電圧を安定的に定めることができる。
【0074】
コントローラは、充電電圧と、入力電圧と中間電圧との電圧比の逆数と、電源アダプタの定格電流とを用いて充電電力を推定してもよい。
この構成により、バッテリ34に供給される充電電流を直接測定しなくても、入力電圧の決定に要する充電電力を推定することができる。
【0075】
電源アダプタ、または、変換器は、入力電流を計測する計測器を備えてもよい。
この構成により、入力電流の変動に関わらず充電電力、ひいては、入力電圧を定めることができる。
【0076】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0077】
1…情報処理装置、11…CPU、12…メインメモリ、13…GPU、14…ディスプレイ、21…チップセット、22…BIOSメモリ、23…補助記憶装置、24…オーディオシステム、25…WLANカード、26…USBコネクタ、31…EC、32…入力部、33…電源回路、34…バッテリ、36…電源ボタン、37…ACアダプタ、332…PDコントローラ、334…電圧レギュレータ回路、334a…SCVR、334b、338…スイッチ、336…NVDC給電器、355…温度センサ、372…PDコントローラ、374…整流器、SD…システムデバイス
【要約】
【課題】拡張電力範囲の実現に際し、電力損失を低減する。
【解決手段】システムデバイスと、コントローラと、バッテリと、電源アダプタからの入力電力の電圧である入力電圧を所定の電圧比で中間電圧に変換する変換器と、前記変換器から供給される電力である中間電力の一部または全部をシステム供給電力として前記システムデバイスに供給し、前記中間電力のうち前記システムデバイスに供給されずに残された電力を充電電力として前記バッテリに充電する給電器と、を備え、前記コントローラは、前記充電電力の電圧である充電電圧と前記システム供給電力を監視し、前記充電電圧と前記システム供給電力に基づいて前記入力電圧を定める。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13