(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】正の力および気筒休止の動作と副バルブ事象との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
F02D 13/06 20060101AFI20231017BHJP
F02D 17/02 20060101ALI20231017BHJP
F01L 13/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
F02D13/06 E
F02D17/02 U
F01L13/00 303Z
(21)【出願番号】P 2022504195
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 IB2020057372
(87)【国際公開番号】W WO2021024186
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-01-21
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413266
【氏名又は名称】ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルトラッキ、ジャスティン、ディー.
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-207540(JP,A)
【文献】特開平07-119502(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1756722(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0230021(US,A1)
【文献】特開昭58-195005(JP,A)
【文献】特開2006-200414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 - 45/00
F01L 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を備える内燃エンジンにおいてエンジンバルブを作動させるための方法であって、
前記複数の気筒の各々が、少なくとも1つのエンジンバルブを備え、かつ、前記気筒に関連付けられた少なくとも1つの主バルブ作動運動源を有し、前記少なくとも1つの主バルブ作動運動源は、少なくとも1つのバルブトレインを介して前記少なくとも1つのエンジンバルブに主バルブの作動を提供するように構成され、このような主バルブの作動は、前記気筒による正の力の生成をサポートするのに十分なものであり、
前記複数の気筒は、少なくとも1つの休止可能な気筒を含み、前記少なくとも1つの休止可能な気筒の各々は、前記休止可能な気筒の前記少なくとも1つのバルブトレインを介して前記少なくとも1つのエンジンバルブに対してバルブ作動運動を常に供給するように構成された少なくとも1つの補助バルブ作動運動源と、前記休止可能な気筒の前記少なくとも1つのバルブトレインに動作可能に接続された少なくとも1つの休止装置アセンブリを有しており、前記少なくとも1つの休止装置アセンブリの各々は、前記休止可能な気筒の前記少なくとも1つのエンジンバルブの前記主バルブの作動が許容された稼働状態か、または前記休止可能な気筒の前記少なくとも1つのエンジンバルブの前記主バルブの作動が禁止された休止状態かのいずれかで動作するように構成されており、
前記少なくとも1つの補助バルブ作動運動源によって供給される前記バルブ作動運動は、前記少なくとも1つの休止装置アセンブリの前記稼働状態の間、前記主バルブの作動によって隠される少なくとも1つの副バルブ事象を備え、
前記方法は、
前記主バルブの作動に従って、正の力の生成を提供するために、前記複数の気筒のうちの少なくとも1つの気筒を動作させることと、
前記少なくとも1つの休止可能な気筒のうちの休止可能な気筒の前記少なくとも1つの休止装置アセンブリを前記休止状態にすることと、
前記休止可能な気筒の前記少なくとも1つの休止装置アセンブリが前記休止状態にある間、かつ、前記少なくとも1つの気筒が、前記主バルブの作動に応じて正の力の生成を提供するために動作している間に、前記休止可能な気筒の前記少なくとも1つのエンジンバルブの排気バルブを介して、前記少なくとも1つの補助バルブ作動運動源によって供給される前記少なくとも1つの副バルブ事象であり、排気ガスを前記内燃エンジンの排気マニホールドから前記休止可能な気筒の中に引き込み、そして前記休止可能な気筒から前記排気マニホールドの中に前記排気ガスを排出するように構成される前記少なくとも1つの副バルブ事象を実行することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記休止可能な気筒の前記少なくとも1つの休止装置アセンブリが、前記休止状態において、前記主バルブの作動によって提供されるピークリフトよりも少ないリフト量を喪失し、
前記少なくとも1つの副バルブ事象が、前記休止可能な気筒の前記少なくとも1つの休止装置アセンブリを介した前記主バルブの作動によって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの副バルブ事象が、排気温度、冷却液温度、油温、または後処理システム温度を含む1つ以上のエンジン動作パラメータに基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの休止可能な気筒が、第1の休止可能な気筒と、第2の休止可能な気筒と、を含み、前記少なくとも1つの副バルブ事象が、前記第1の休止可能な気筒のみに適用可能な第1の副バルブ事象と、前記第1の副バルブ事象とは異なる、前記第2の休止可能な気筒のみに適用可能な第2の副バルブ事象と、を含み、
前記休止可能な気筒の前記少なくとも1つの休止装置アセンブリを前記休止状態にすることが、前記第1の休止可能な気筒または前記第2の休止可能な気筒のいずれかのための前記少なくとも1つの休止装置アセンブリを前記休止状態にすることをさらに含み、
前記休止可能な気筒の前記少なくとも1つのエンジンバルブを介して前記少なくとも1つの副バルブ事象を実行することが、前記第1の休止可能な気筒の前記少なくとも1つのエンジンバルブを介して前記第1の副バルブ事象を実行すること、または前記第2の休止可能な気筒の前記少なくとも1つのエンジンバルブを介して前記第2の副バルブ事象を実行することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの副バルブ事象を実行することが、排気温度、冷却液温度、油温、または後処理システムの温度を含む1つ以上のエンジン動作パラメータに基づいて、前記第1の副バルブ事象、または前記第2の副バルブ事象のいずれかを選択することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記休止可能な気筒の前記少なくとも1つの休止装置アセンブリが前記休止状態にある間と、前記少なくとも1つの気筒が前記主バルブの作動に従って正の力の生成を提供するために動作する間に、前記休止可能な気筒の前記少なくとも1つのエンジンバルブを介して前記少なくとも1つの補助バルブ作動
運動源によって提供される少なくとも1つの追加的な副バルブ事象を実行することであって、前記少なくとも1つの追加的な副バルブ事象は、前記少なくとも1つの休止装置アセンブリの前記休止状態の間、前記主バルブの作動によって隠されず、かつ前記少なくとも1つの追加的な副バルブ事象は、追加的な排気ガスを前記内燃エンジンの排気マニホールドから前記休止可能な気筒の中に引き込むように構成され、かつ前記休止可能な気筒から前記排気マニホールドの中に前記追加的な排気ガスを押し戻すように構成される前記少なくとも1つの追加的な副バルブ事象を実行することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの副バルブ事象が、ゼロリフトでない第1の副バルブ事象と、ゼロリフトでない第2の副バルブ事象との間にある、バルブリフトがゼロである期間とともに、前記ゼロリフトでない第1の副バルブ事象と前記ゼロリフトでない第2の副バルブ事象を含む請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、内燃エンジンの気筒休止に関し、特に、正の力を生成する気筒および休止された気筒と、1つ以上の副バルブ事象との組み合わせた動作を提供するための内燃エンジンの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
気筒休止(CDA)とは、多くの場合、冷間エンジン始動中、低負荷運転、または他のエンジン運転状態中の燃料消費を低減する目的で、内燃エンジン内の気筒による正の力の生成を停止する技術を指す。そのような始動シナリオにおいては、利用可能なエンジン気筒の一部を正の力の生成(すなわち、燃料供給)モードで動作させ、他の利用可能な気筒をCDAモードで動作させることが知られている。気筒への燃料供給を遮断することと組み合わせて、当技術分野で知られている気筒休止の技術は、通常、休止される気筒ごとに制御ソレノイドを利用する。そのようなシステムでは、エンジンバルブのバルブトレイン内に油圧制御された休止構成要素(例えば、リフタ、ロッカーアーム、バルブブリッジなど)が通常設けられており、これは、正の力の生成(「主」バルブ事象として称されることもある)を提供するために通常使用されるエンジンバルブ作動運動がエンジンバルブに伝達されるアクティブな/ロックされた/圧潰されていない状態と、そのようなバルブ作動運動がエンジンバルブに伝達されず、それによって、対応する気筒を効果的に休止する非アクティブな/ロック解除された/圧潰された状態との間で切り替えられ得る。加えて、エンジンバルブに補助バルブ事象を提供することも知られており、「補助」の記述は、正の力の生成(例えば、圧縮開放ブレーキ、ブリーダブレーキ、気筒減圧、ブレーキガス再循環(BGR)など)以外の目的、または正の力の生成に追加する(例えば、内部排気ガス再循環(IEGR)、可変バルブ作動(VVA)、ミラー/アトキンソンサイクル、スワール制御など)他のエンジンバルブ運動を指す。
【0003】
加えて、有害な排出物を低減する後処理システムが、内燃エンジンとともに長い間使われている。適切な動作のために、十分に高温の排気ガスを供給することにより、そのような後処理システムを比較的高温に維持することが多くの場合必要とされる。テストでは、低負荷運転では、CDAの組み込みは、排気ガスの温度を上げて、後処理システムが過度に冷えないようにする、つまり、すでに加熱された後処理システムを十分に暖かく保つのによい働きをすることが示された。しかしながら、冷間エンジン始動時にCDAが採用される場合、CDA動作中の気筒の存在により、排気ガスの流量が低減し、下流の後処理システムの温度を上げる時間が長くなることがテストによってさらに示された。
【0004】
さらに、一部のエンジンは、高レベルのオイル消費がない場合、真空で気筒を動作させることができない。従来の気筒休止は、多くの場合、バルブトレインを休止する直前に空気の吸入を提供する方法で休止するように気筒の動作を制御し、それによって気筒内に加圧ガスを閉じ込める。しかしながら、時間の経過とともに、気筒圧力が減衰し、気筒が真空引きを始め、続いて、潤滑油が気筒内に引き込まれて消費され、それによって、利用可能な油が低減し、望ましくない排出物を発生させる。この減衰の例が
図1に示されており、これは、CDAの時点でガスが中に閉じ込められた気筒の経時的な平均ピーク気筒圧力を示している。図示するように、ピーク気筒圧力102は、時間T
0で開始されるCDA動作の前では比較的一定である。しかしながら、図示した例では、約T
0+8秒後、閉じ込められたガスが除去され、ピストン上死点(TDC)の圧力が周囲圧力とエンジンの圧縮比との積よりも低い場合、気筒は真空で動作する。例えば、気筒圧力がTDCで約16~20バールであると、下死点(BDC)において、ある程度の真空が引き込まれることになる。このような圧力減衰と、それに伴う許容度の低い真空を防止するために、現在のシステムは、気筒休止をオフにしてから再びオンにするように制御し、それによって気筒がガスで「補充」されることを可能にしている。多くのCDAシステムがソレノイドを介して油圧で制御されている限り、この絶え間のないオンとオフは、そのようなソレノイドのかなりの数のパワーサイクルを招き、ひいては、ソレノイドの早期摩耗と故障をもたらす。
【0005】
したがって、熱管理または他の用途のためのCDAの使用を容易にする一方で、先行技術の上述の欠点を克服する解決策は、当技術分野の歓迎すべき進歩を表すことになるであろう。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、内燃エンジン内の気筒の動作のための技術を説明しており、内燃エンジンでは、気筒が正の力の生成モードおよび気筒休止モードで同時に動作する。一実施形態では、内燃エンジンは、複数の気筒を備える。さらに、複数の気筒の各々は、少なくとも1つのエンジンバルブを含み、それに関連する少なくとも1つの主バルブ作動運動源を有する。少なくとも1つの主バルブ作動運動源は、少なくとも1つのバルブトレインを介して少なくとも1つのエンジンバルブに主バルブの作動を提供するように構成され、そのような主バルブの作動は、気筒による正の力の生成をサポートするのに十分である。さらに、複数の気筒は、少なくとも1つの休止可能な気筒を含み、少なくとも1つの休止可能な気筒の各々は、休止可能な気筒の少なくとも1つのバルブトレインに動作可能に接続された少なくとも1つの休止装置アセンブリを有している。少なくとも1つの休止装置アセンブリの各々は、休止可能な気筒の少なくとも1つのエンジンバルブの主バルブの作動が許容されている稼働状態、または休止可能な気筒の少なくとも1つのエンジンバルブの主バルブの作動が禁止されている休止状態のいずれかで動作するように構成されている。そのような内燃エンジンにおいて、エンジンバルブを作動させるための方法は、主バルブの作動に従って正の力の生成を提供するために複数の気筒のうちの少なくとも1つの気筒を動作させることと、加えて、少なくとも1つの休止可能な気筒のうちの休止気筒の少なくとも1つの休止装置アセンブリを休止状態にすることと、を含む。休止可能な気筒の少なくとも1つの休止装置アセンブリが休止状態にある間、少なくとも1つの気筒が主バルブの作動に従って正の力の生成を提供するために動作している間、本方法は、休止可能な気筒の少なくとも1つのエンジンバルブを介して少なくとも1つの副バルブ事象を実行することをさらに含む。
【0007】
別の実施形態では、内燃エンジンは、休止可能な気筒に関連付けられた少なくとも1つの補助バルブ作動運動源をさらに備え、少なくとも1つの補助バルブ作動運動源は、休止可能な気筒の少なくとも1つのバルブトレインを介して少なくとも1つのエンジンバルブにバルブ作動運動を提供するように構成されている。このシステムでは、少なくとも1つの副バルブ事象が、少なくとも1つの補助バルブ作動運動源によってもたらされ得る。
【0008】
別の実施形態では、休止可能な気筒の少なくとも1つの休止装置アセンブリが、休止状態で動作するときに、主バルブの作動によって提供されるピークリフトよりも少ないリフト量を喪失する。この場合、少なくとも1つの副バルブ事象は、休止可能な気筒の少なくとも1つの休止装置アセンブリを介した主バルブの作動によってもたらされ得る。
【0009】
別の実施形態では、休止可能な気筒の少なくとも1つのエンジンバルブは、少なくとも1つの排気バルブまたは少なくとも1つの吸気バルブを含む。少なくとも1つの副バルブ事象は、次いで、少なくとも1つの排気バルブまたは少なくとも1つの吸気バルブによって実行され得る。さらに、少なくとも1つの副バルブ事象は、少なくとも1つの排気バルブによって実行される第1の副バルブ事象と、少なくとも1つの吸気バルブによって実行される第2の副バルブ事象とを含み得る。
【0010】
別の実施形態では、少なくとも1つの副バルブ事象は、ガスが気筒内に引き込まれることを可能にするか、またはガスが気筒から排出されることを可能にするか、またはその両方を行うように構成され得る。
【0011】
さらに、少なくとも1つの休止可能な気筒は、第1の休止可能な気筒および第2の休止可能な気筒を含み得る。少なくとも1つの副バルブ事象は、同様に、第1の休止可能な気筒のみに適用可能な第1の副バルブ事象と、第2の休止可能な気筒のみに適用可能な第1の副バルブ事象とは異なる第2の副バルブ事象とを含み得る。この場合、休止可能な気筒の少なくとも1つの休止装置アセンブリを休止状態にするステップは、第1の休止可能な気筒の、または第2の休止可能な気筒のうちいずれかの少なくとも1つの休止装置アセンブリを休止状態にすることをさらに含み、加えて、休止可能な気筒の少なくとも1つのエンジンバルブを介して少なくとも1つの副バルブ事象を実行するステップは、第1の休止可能な気筒の少なくとも1つのエンジンバルブを介した第1の副バルブ事象か、または第2の休止可能な気筒の少なくとも1つのエンジンバルブを介した第2の副バルブ事象かのいずれかを実行することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
前述および他の特徴および利点は、添付の図面とともに、特定の実施形態の以下の非限定的な説明で詳細に論じられる。
【0013】
【
図1】先行技術による内燃エンジン内にある休止気筒内の空気圧の減衰を示すグラフである。
【
図2】本開示による技術を実装するために使用され得ることを示す、内燃エンジンの概略部分断面図である。
【
図3】本開示によるエンジンバルブの作動を制御するための方法を示すフローチャートである。
【
図4】本開示による副バルブ事象の様々な実施例を示すグラフである。
【
図5】本開示による副バルブ事象の様々な実施例を示すグラフである。
【
図6】本開示による副バルブ事象の様々な実施例を示すグラフである。
【
図7】本開示による副バルブ事象の様々な実施例を示すグラフである。
【
図8】本開示による副バルブ事象の様々な実施例を示すグラフである。
【
図9】本開示による副バルブ事象の様々な実施例を示すグラフである。
【
図10】本開示による副バルブ事象の様々な実施例を示すグラフである。
【
図11】本開示の一実施形態による直列6気筒エンジンの概略図である。
【
図12】本開示の一実施形態による、別の直列6気筒エンジンの概略図である。
【
図13】本開示による、
図12に示すタイプのエンジン上でエンジンバルブ作動を制御する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2は、内燃エンジン200の部分概略図であり、本開示によるエンジン気筒202および関連するバルブ作動システムの断面図を含んでいる。単一の気筒202が
図2に示されているが、これは単に例示を容易にするためのものであり、内燃エンジンは、多くの場合、クランクシャフト(図示せず)を駆動するための複数のそのような気筒を含むことが理解される。エンジン気筒202は、その中にピストン204が配置されており、また、気筒の上部に吸気バルブ206および排気バルブ208も含んでいる。ピストン204は、正の力の動作(すなわち、ピストン204およびドライブトレインを駆動するための燃料の燃焼)の間、エンジンブレーキ動作(すなわち、ピストン204を使用して、空気圧縮を達成し、ドライブトレインを介して力を吸収する)の間、または、気筒202の気筒休止動作(すなわち、燃料供給されていない状態、かつ、バルブの作動が典型的にバルブ206、208に適用されない状態)の間に、上下に繰り返し往復運動する。吸気バルブ206および排気バルブ208は、それぞれ、吸気ガス経路210および排気ガス経路212との連通をもたらすために開閉(バルブ作動)される。吸気バルブ206および排気バルブ208を開くバルブ作動力は、それぞれのバルブトレイン214、216によって伝達される。次に、そのようなバルブ作動力(破線の矢印によって示される)は、回転カムなどのそれぞれの主運動源218、222および/または補助運動源220、224によってもたらされ得る。本明細書で使用される場合、記述「主」は、いわゆる主事象エンジンバルブ運動、すなわち、正の力の生成中に使用されるバルブ運動を指し、一方で、記述「補助」は、正の力の生成を除いた(例えば、圧縮開放ブレーキ、ブリーダブレーキ、気筒減圧、ブレーキガス再循環(BGR)など)、または正の力の生成に追加する(例えば、内部排気ガス再循環(IEGR)、可変バルブ作動(VVA)、ミラー/アトキンソンサイクル、スワール制御など)目的の他のエンジンバルブ運動を指す。
【0015】
バルブトレイン214、216は、当技術分野で既知の任意の数の機械式、油圧式、水力機械式、電磁式、または他のタイプのバルブトレイン要素を含み得る。例えば、バルブトレイン214、216の各々は、バルブ作動運動をバルブ206、208に伝達するために使用される1つ以上のカムフォロア、プッシュチューブ、ロッカーアーム、バルブブリッジなどを含み得る。さらに、1つ以上の喪失運動構成要素(lost motion component)を、バルブトレイン214、216のいずれかまたは両方に含むことができ、それにより、通常、バルブトレイン214、216によって伝達されるバルブ作動運動の一部またはすべてが、バルブ206、208に到達するのが防止される(すなわち喪失する)。このような喪失運動を採用する特定の機能は、気筒休止である。
【0016】
上述のように、気筒休止とは、多くの場合、燃料消費量を低減することを目的とする、内燃エンジン内の気筒による正の力の生成を停止するための技術を指す。
図2の文脈において、本明細書で「休止装置」と称される喪失運動構成要素226、228は、気筒休止を実現するために、吸気バルブトレイン214および排気バルブトレイン216の各々に設けられている。各休止装置226、228は、エンジンコントローラ230に動作可能に接続され、最終的にエンジンコントローラ230によって制御されている。エンジンコントローラ234は、休止装置226、228の動作を制御するためのいずれかの電子式、機械式、油圧式、電気油圧式、または他のタイプの制御装置を含み得る。例えば、エンジンコントローラ230は、当技術分野で知られているように、マイクロプロセッサ、および必要な制御機能を実装するために使用される実行可能命令を格納する対応するメモリによって実装され得る。エンジンコントローラ230の他の機能的に同等の実装、例えば、適切なプログラム済み特定用途向け集積回路(ASIC)などが等しく採用され得ることが理解される。さらに、エンジンコントローラ230は、クランクシャフト位置、エンジン速度、車速、油温、冷却液温度、マニホールド(またはポート)温度、マニホールド(またはポート)圧力、気筒温度、気筒圧力、粒子情報、その他の排気ガスパラメータ、ドライバ入力(エンジンブレーキの開始要求など)、トランスミッション入力、車両コントローラ入力、エンジンクランク角度、ならびに当業者に知られている他の様々なエンジンおよび車両パラメータなどの様々なエンジン動作パラメータに対応する(必要とされる制御機能で用いられる)データを取得するために好適な計器にリンクされ得る。同様に、エンジンバルブ作動がエンジンバルブに伝達されるアクティブな/ロックされた/圧潰されていない状態(本明細書では、時として「稼働状態」と称される)と、バルブ作動運動がエンジンバルブに伝達されない非アクティブな/ロック解除された/圧潰された状態(本明細書では、時として「休止状態」と称される)との間で切り替えられ得る、油圧制御構成要素を使用してそのような休止装置226、228を実装し、それにより、対応する気筒を効果的に休止することが当技術分野で知られている。
【0017】
このような油圧制御構成要素の例は、米国特許第9,790,824号(「’824特許」)に示され、説明されており、これは、通常は、ロックされた/圧潰されていない、または運動伝達状態にあり、油圧流体が適用されると、ロック解除された/圧潰された、または運動吸収状態に切り替わるロック機構を説明している。さらに、’824特許で説明されている各ロック機構は、(例えば、単一のエンジンバルブを作動させるロッカーアーム内の)個々のエンジンバルブ、または(例えば、2つ以上のエンジンバルブを作動させるために使用されるバルブブリッジ内の)複数のエンジンバルブに適用され得る。例示を容易にするために
図2には示されていないが、休止装置226、228は、通常、1つ以上の休止装置コントローラを介して制御されており、これらは、通常、油圧制御休止装置への油圧流体(例えば、モータオイル)の流れを制御するソレノイドを使用して実装されている。この場合、休止装置コントローラ(ソレノイド)は、エンジンコントローラ230および休止装置226、228に動作可能に結合されており、エンジンコントローラ230によって休止装置コントローラに提供される電気信号が休止装置コントローラを動作させるようになっている。いずれにしても、本明細書で使用される場合、休止装置アセンブリという用語は、休止装置226、228を実装するために使用されるこれらの構成要素、ならびに、それらの動作を制御するために必要とされる構成要素(例えば、休止装置コントローラ)を集合的に指している。
【0018】
図2のバルブ作動機構を実装するための、かつ、本明細書に記載の様々なバルブリフトを実装するための装置が、当技術分野で知られている。例えば、そのようなシステムは、米国特許第8,851,048 B2号、欧州特許第0961018 B1号、および/または欧州特許第2959122 B1号の特許文献に記載されており、それらの教示は、参照により本明細書に組み込まれる。当業者によって理解されるように、これらの文献はそれぞれ、例えば、以下でさらに詳細に説明されるような副バルブリフトを含む、気筒休止を実施するための’824特許に記載の休止装置を含むように容易に修正され得るシステムを説明している。
【0019】
概して、本開示は、一実施形態において、休止された気筒の排気バルブおよび/または吸気バルブの1つ以上のバルブ開放事象を提供することによって、気筒休止ウォームアップ(エンジン始動)モードで生成される熱を改善する技術を説明する。以下に説明するように、そのようなバルブ作動事象は、気筒圧力を増加させることによって休止された気筒からのポンピング作業を増加させることができ、動作温度をエンジンウォームアップにとってより好ましい範囲に上昇させることができる。IEGR動作および/または後処理再生成を容易にするための追加の実施形態が説明されている。
【0020】
図3は、本開示による気筒休止動作を提供するための処理のフローチャートを示している。一実施形態では、
図3に示される処理は、エンジンコントローラ230によって実行され、好ましくは、1つ以上のメモリデバイスに格納され、メモリデバイスに動作可能に接続された少なくとも1つの処理デバイスによって実行される実行可能命令の形で実装される。さらに、
図3に示される処理は、複数の気筒を有する内燃エンジンを使用して実施され、各気筒は、少なくとも1つのエンジンバルブを備え、それに関連付けられた少なくとも1つの主バルブ作動運動源を有する。本開示の目的のために、各気筒の少なくとも1つのエンジンバルブは、1つ以上の排気バルブ、1つ以上の吸気バルブ、またはその両方であり得る。少なくとも1つの主バルブ作動運動源は、少なくとも1つのバルブトレインを介して少なくとも1つのエンジンバルブに主バルブ作動を提供するように構成され、そのような主バルブ作動は、気筒による正の力の生成をサポートするのに十分である。本明細書で使用される場合、バルブ作動事象は、気筒内の燃料の制御された燃焼を可能にする範囲で正の力の生成をサポートするのに十分である。対照的に、バルブ作動事象(本明細書で説明される副バルブ事象など)は、燃料の燃焼が発生し得ない程度まで、気筒による正の力の生成をサポートするには不十分である。例えば、吸気バルブの作動事象は、ピストンを変位させてクランクシャフトにトルクを提供するのに十分な燃料を燃焼させるのに十分な新鮮な空気を気筒に引き込むことを可能にする程度まで、正の力の生成をサポートするのに十分である。同様に、排気バルブ作動事象は、次の吸気事象中に新鮮な空気を取り入れることができるように十分な量の排気ガスの排出を可能にする程度まで、正の力の生成をサポートするのに十分である。
【0021】
さらに、本開示の目的のために、複数の気筒は、少なくとも1つの休止可能な気筒を含み、少なくとも1つの休止可能な気筒の各々は、休止可能な気筒の少なくとも1つのバルブトレインに動作可能に接続された少なくとも1つの休止装置アセンブリを有する。気筒休止を提供するために、そのような休止装置アセンブリの各々は、休止可能な気筒の少なくとも1つのエンジンバルブの主バルブの作動が許容されている稼働状態、または休止可能な気筒の少なくとも1つのエンジンバルブの主バルブの作動が禁止された休止状態のいずれかで動作するように構成されている。
【0022】
いずれにしても、ブロック302から開始して、複数の気筒のうちの少なくとも1つの気筒は、正の力の生成を提供するために動作し、すなわち、燃料供給された気筒内で正の力の生成をサポートするのに十分な主バルブの作動事象に従って動作する。当技術分野で知られているように、そのような正の力の動作は、単に関連する休止装置がそれらの稼働状態で動作するように制御することによって、その他の休止可能な気筒によって提供され得る。正の力の生成を提供するための気筒のそのような動作は、(例えば、エンジンをより迅速に暖めようとする場合、および後処理システムの場合のような)エンジンの始動時またはトルクの正の力の生成中に生じ得る。
【0023】
少なくとも1つの気筒が正の力の生成を提供するように動作している間、処理はブロック304に継続し、ここで、1つ以上の休止可能な気筒を休止する必要があるかどうか、すなわち、関連する休止装置226、228をそれぞれの休止状態にする必要があるかどうかが判定される。そのような判定は、特定の条件のセットが現在存在するという判定(例えば、エンジンコントローラが現在の車速および負荷が燃料消費の低減の機会をもたらすと判定する場合)に応答して、または明示的な要求(例えば、排気後処理温度を気筒休止によって望ましく上昇させることが可能な、後処理熱管理の場合)に応答して行われ得る。さらに、ステップ302がステップ304の前に生じるとして示されているという事実にもかかわらず、ステップ304で気筒を休止する判定は、以前に正の力の生成状態にあった(すなわち、稼働状態にある)気筒に条件付けられる必要はない。すなわち、ステップ302と304の実施は逆転することができる。例えば、当技術分野では、冷間エンジン始動中にディーゼルエンジンで気筒休止を採用することが知られている。
【0024】
いずれにしても、一旦、気筒休止が必要であると決定されると、処理はステップ306に続き、休止可能な気筒の休止装置が休止状態にされる。例えば、休止装置が’824特許に教示されているような油圧作動式のロック/ロック解除機構に従って実装されている場合、このことは、対応する油圧ソレノイドを制御して、加圧油圧流体を休止装置に提供することによって達成され得、休止装置がロック解除/圧潰され、これにより、それに加えられたすべてのバルブ作動運動を吸収できるようになっている。
【0025】
その後、ステップ308において、ステップ304からの休止装置が休止状態にある間、およびステップ302からの少なくとも1つの気筒が正の力の生成を提供するために動作している間、少なくとも1つの副バルブ事象が、休止された気筒のエンジンバルブで実行される。現在好ましい実施形態では、排気ガスの温度を上昇させるために少なくとも1つの副バルブ事象が選択されるが、内燃エンジンが全体的な正の力の生成を妨げられるほどの高レベルの働きではない。別の実施形態では、IEGRの場合のように、気筒に出入りするガスの所望の流れを代替的または追加的に達成するために、少なくとも1つの副バルブ事象が選択される。このような副バルブ事象のさまざまな例について、以下でさらに詳しく説明する。2つ以上の可能なタイプの副バルブ事象から選択可能な場合(その例は以下でさらに詳細に説明される)、そのような選択は、1つ以上のエンジン動作パラメータ(限定されないが、排気温度、冷却液温度、油温、または後処理システム温度を含む)と、対応する閾値との比較に基づき得る。
【0026】
ステップ310において、以前に休止された気筒を再稼働するかどうかの判定が行われる。休止された気筒が、例えば、エンジンのウォームアップまたは後処理の熱管理を提供するために使用されていた場合、そのような判定は、任意の所望の温度レベルが達成されたときに行われ得る。いずれにしても、一旦、気筒を再稼働する判定が行われると、処理はステップ312に続き、そこで休止された気筒の1つ以上の副バルブ事象が停止する。その後、ブロック314で、休止された気筒の休止装置は、それらの稼働状態にされる。’824特許で教示されている油圧作動式ロック/ロック解除機構の例をもう一度参照すると、このことは、対応する油圧ソレノイドを制御して、休止装置への加圧油圧流体の提供を停止し、休止装置を再度、ロック/圧潰解除できるようにし、そこに適用されたバルブ作動運動が休止装置を介してエンジンバルブに伝達されるようにすることによって達成され得る。
【0027】
上述のような副バルブ事象の提供は、様々な方法で達成され得る。例えば、
図4を参照すると、副バルブ事象は、補助バルブ作動運動源によって提供されるデフォルトリフトによって提供され得る。特に、
図4は、通常の主排気バルブ事象402に加えて、本出願人に与えられた、その教示が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第8,936,006号(「’006特許」)および米国特許出願公開第2014/0245992号(「’992出願」)で教示されているような補助排気バルブ作動運動源のプロファイル404を示している。’006特許および’992出願で教示されているように、プロファイル404は、デフォルトリフトローブ406を含む、2ストローク圧縮開放エンジンブレーキを達成するために使用されるいくつかのバルブ作動を提供する。当技術分野で知られているように、このプロファイル404によって別の方法で排気バルブに提供されることになるバルブ作動は、通常、エンジンの正の力の動作中に(エンジン気筒のバルブトレイン内に配置された好適な喪失運動機構を介して)喪失する。エンジンブレーキが望まれる場合、エンジンの正の力の動作が停止され、(すなわち、気筒に燃料が供給されなくなり、主バルブの作動運動402が喪失する)、関連する喪失運動機構が制御されて、補助プロファイル404のバルブ作動運動を排気エンジンバルブに提供する。
【0028】
しかしながら、プロファイル404によって提供される他のより低いローブとは異なり、デフォルトのリフトローブ406は、十分な高さを有しており、関連する喪失運動機構がプロファイル404によって提供される運動を喪失するように制御されたときであっても、完全に喪失しないようになっている。別の言い方をすれば、補助運動源プロファイル404に適用可能な喪失運動機構は、それらが吸収できる最大の運動量を有し、デフォルトのリフトローブ406の高さは、その最大の喪失した運動量よりも大きくなっている。この配置の正味の結果は、正の力の動作中であっても、デフォルトのバルブリフト408が、補助運動源404によって常に排気バルブに提供されることである。しかしながら、正の力の動作中、デフォルトのバルブリフト408の存在は、より大きな主排気バルブの作動402によって効果的に「隠され」、したがって、気筒動作に影響を及ぼさない。そのようなデフォルトリフト408の主な利点は、正の力の生成からエンジンブレーキへの移行を支援することであり、そこでは、喪失運動構成要素の動作が主事象402を喪失することは比較的迅速に発生し得、一方で、エンジンブレーキ機構は、いくつかのエンジンサイクルにわたって完全に係合しない場合がある。このデフォルト事象408のさらなる利点は、排気主事象が再ロックしない場合、または再ロックが遅すぎる場合、(エンジンブレーキから正の力の生成への移行中に)気筒内に閉じ込められたピーク圧力を制限することである。このデフォルトのリフト408は、あらゆる状況下での排気ストロークの間に気筒圧力の一部が排出されることを確実にすることにより、吸気バルブトレイン構成要素を過度の負荷から保護する。デフォルトリフト408は、適切な燃焼および正の力の生成をサポートするには不十分であるが、エンジンブレーキをオンにするときの負荷、過渡ノイズ、および吸気負荷を低減することができる。
【0029】
本開示の文脈において、デフォルトのリフト408を提供するために使用されるのと同じ技術が、同様に、休止された気筒の動作中に副バルブ事象を提供するために使用され得る。しかしながら、’006特許および’992出願とは異なり、デフォルトのリフト408は、エンジンブレーキのみのエンジンの動作中には提供されず、(例えば、上述のステップ302の)エンジンの一部の気筒で正の力の動作が提供され、同時に、(副バルブ事象で、例えば、ステップ306、308の)他の気筒が休止されている時間中に提供される。副バルブ事象の形状および/またはタイミングを制御することにより、様々な望ましい効果が達成され得る。
【0030】
ここで
図5を参照すると、本開示による副バルブ事象506の第1の実施例が、気筒休止中に停止される主排気502および吸気504のバルブ事象とともに示されている。特に、副バルブ事象506は、1つ以上の排気バルブに適用され、2つの部分508、510を含んでいる。排気ストロークの開始時にBDCの直前に開始する第1の部分508は、加圧された排気マニホールドから気筒内に空気を引き戻すように構成されている。第2の部分510は、排気ストロークの残りの部分(当技術分野で既知のブリーダエンジンブレーキバルブリフトと同様)の低減されたリフト部分であり、以前に引き込まれた排気ガスがピストンによって加圧されて排気マニホールド内に排出されることを可能にする。副バルブ事象506の全体が、再び主排気事象502によって隠されていることに留意されたい。副バルブ事象506の第2の部分510の間に以前に引き込まれた排気ガスの加圧によって被る仕事は、それらが排出されるときにそれらのガスの温度を上昇させ、それによって排気システム全体の温度を上昇させる。例えば、テストは、図示した副バルブ事象506で3つの気筒が正の力の生成モードで作動し、3つの気筒が休止状態で動作する6気筒エンジンにおいて、副バルブ事象506が採用されていない同等の状況と比較して約38℃の上昇を達成できることを示した。
【0031】
図6は、本開示による副バルブ事象606の第2の実施例を示す。この第2の実施例606は、異なるリフトの排気バルブ開口が提供されている2つの部分608、610を含むという点で
図5の第1の実施例506に類似しているが、この場合、第1の部分608と第2の部分610は、ゼロリフトが提供される第3の部分612によって分離されている。第1の実施例の副バルブリフト506と同様に、副バルブリフト608の第1の部分は、BDC近くの排気ストロークの開始時に、加圧された排気マニホールドガスが気筒内に引き戻されることを可能にする。第2のバルブ事象606のゼロリフト部分612は、第1の実施例の副バルブリフト506と比較して、気筒圧力でさらに大きな増加をもたらす。その後、副バルブ事象606の第2の部分610は、増加した圧力の排気ガスが、排気ストロークの終了時にTDC位置の近くの排気マニホールドに再び流入することを可能にする。
図5にあるように、この副バルブ事象606は、休止された気筒から仕事を吸収し、仕事を熱として排気システムに放出する。第1の部分608および第2の部分610の様々なリフトは、例えば、冷間エンジン始動中の後処理システムのウォームアップのために、必要とされるだけの仕事を生み出すように調整することができる。
【0032】
シミュレーションは、排気ストロークの終了近くで発生する副バルブ事象606の第2の部分610が、気筒内にある程度の残留ガスが閉じ込められることを確実にするように十分に早く閉じない場合、休止された気筒内で高い真空レベルの問題を引き起こす可能性があることを示した。(例えば、
図5の第2の部分510の終了と比較して)排気ストロークの終了の少し前に第2の部分610を閉じることによって、気筒内の望ましくない真空レベルを回避して、依然として熱的利点を提供することができる。
【0033】
上述の副排気バルブ事象506、606はいずれもピストンの排気ストローク中に発生するが、これは要件ではなく、副バルブ事象はまた、ピストンの吸気ストローク中にも提供され得る。そのようなリフトが吸気ストローク中に1つ以上の吸気バルブに提供される場合、吸気マニホールドからの新鮮な空気が休止された気筒に引き込まれ、1つ以上の排気バルブのための
図5および
図6で詳述したタイプの圧縮-放出事象(その後のエンジンサイクルで)のために同様にガスを供給することができるか、または、休止された気筒内に望ましくない高い真空レベルが形成されるのを防ぐことができ、そしてEGR(排気ガス再循環)を容易にする新しい概念がある。さらに、吸気ベースの副バルブ事象の使用は、休止された気筒を通って流れる新しいタイプの有益なガスを促進することができる。
【0034】
当技術分野で知られているように、気筒休止動作中、背圧比に対するブーストは所望よりも高くなる可能性があり、排気ガス再循環(EGR)動作の一部として吸気マニホールドに戻る排気ガスの適切な流れを提供することは不可能である。結果として生じる、望まれるよりも低いEGR率は、NOx排出量の増加を引き起こすことがあり、また気筒休止の利点を減少させることがある。排気マニホールドから吸気マニホールドに排気ガスを移動させる方法は、気筒内で達成することでき、本明細書に記載の技術に基づいて、一般に内部排気ガス再循環(iEGR)と呼ばれる。
【0035】
気筒の通常の正の力の動作中に、排気ガスは、排気バルブを開くことによって吸気ストローク中に気筒内に引き込むことができるか、または吸気バルブは、排気ストロークの高圧領域の間に排気ガスを吸気マニホールド内に押し込むために開くことができ、この排気ガスは、後に、次の吸気事象の間に気筒内に引き戻される。しかしながら、主事象の吸気および排気の中に「隠されている」副バルブ事象の場合、EGR動作は、以下に説明するように、隠されたリフト事象の単純なシステムを使用して気筒休止モードで提供できる。
【0036】
iEGRを達成するために使用され得る第3の例示的な副バルブ事象が
図7に示されている。休止された気筒の排気ストローク中に、1つ以上の排気バルブの第1の副バルブ事象702は、上述の第1の部分508、608と同様の方法で、気筒内の排気マニホールドからのガスを捕捉するためにタイミング設定され得る。しかしながら、この場合、その後の吸気ストローク中に、1つ以上の吸気バルブの第2の副バルブ事象704が、第1の副バルブ事象702からの閉じ込められたガスが吸気マニホールドに放出されるようにタイミング設定され得る。このように、組み合わされた副バルブ事象702、704は、排気ガスを排気マニホールドから吸気マニホールドに逆流させ、それにより、吸気と排気との相対圧力が、通常はEGRの適切な流れを可能にしないときに、EGRを効果的に提供する。この動作モードからの追加の潜在的な利点は、高温の排気ガスを吸気マニホールドに駆動させることから生じるウォームアップ動作のための吸気充填の温度を上昇させる。第2の副バルブ事象704は、最大EGR率および気筒内の最大仕事のために(
図7に示されるように)最大気筒圧力で圧力を開放するためにタイミング設定することができるか、またはiEGRおよび仕事を低減して特定のエンジンの要件を最適化するために、それを遅延させることができる(すなわち、
図7で右にシフトするが、依然として吸気ストローク内にある)。さらに、この方法で実行されるポンプ作業は、システムの負荷を増加させ、それにより、エンジンが冷えているとき、および後処理温度を適切に機能する範囲に上げるのに負荷が不十分なときに、ウォームアップすることを支援する。
【0037】
(
図7の第3の例示的な副バルブ事象に類似している)第4の例示的な副バルブ事象が
図8に示されている。
図7にあるように、第4の例示的な副バルブ事象は、排気ストローク中に実質的に発生する1つ以上の排気バルブに対する第1の副バルブ事象802と、吸気ストローク中に実質的に発生する1つ以上の吸気バルブに対する第2の副バルブ事象804とを含む。図示されるように、第1の副バルブ事象802および第2の副バルブ事象804の両方は、それぞれの排気ストロークおよび吸気ストロークの終了近くで発生するが、第1の副バルブ事象802および第2の副バルブ事象804の位置は変化し得る。このことは、気筒への新鮮な空気の調整された取り込み(第2の副バルブ事象804の間)および(第1の副バルブ事象802中に)休止された気筒による高い力の吸収を伴う圧縮開放をもたらす。これにより、高温で酸素リッチな空気を排気に供給し、他の正の力を生成する気筒からの高温の排気ガスと混合することができる。例えば、6気筒エンジンでは、3つの正の力を生成する気筒を、エンジンに負荷をかけて高温の排気ガスを生成するために提供することができ、3つの休止気筒を、正の力を生成する気筒に対して負荷をかけて負荷を増加させるために提供することができる。このことは、後処理システムの適切な動作を確実にするために高い排気温度が採用される後処理再生成に特に有用であり得る。当業者によって理解されるように、圧縮開放力吸収および質量流量は、再生成モード中に必要な質量と排気の目標温度とのバランスをとるために、第1の副バルブ事象802および第2の副バルブ事象804の設計において制御することができる。
【0038】
概して、本明細書に記載の副バルブ事象を適用するための実用的な手法は、エンジンブレーキ(すなわち、専用ブレーキ)カムおよびエンジンブレーキロッカーアームを使用して、1つ以上の排気バルブに作用することである。しかしながら、状況によっては、代わりに副バルブ事象を排気バルブではなく1つ以上の吸気バルブに適用する方が合理的および/または必要な場合がある。
【0039】
図9は、気筒圧力が低いとき、すなわち、吸気ストロークの終了時にBDCの近くで開き、気筒休止中の真空を防ぐために新鮮な空気を気筒に引き込むことができる第5の例示的な副バルブ事象902を示す。代替的な第6の例示的な副バルブ事象1002が
図10に示されており、ここでは、副バルブ事象1002の前半(吸気ストロークのTDCに最も近い部分)が、気筒から吸気マニホールドへ戻す、以前に圧縮されたガスの放出を提供し、一方で、副バルブ事象1002の後半(吸気ストロークのBDCに最も近い部分)が、真空が閉じ込められるのを防ぎ、その後の圧縮開放のための充填を提供するために、気筒に新鮮な空気を引き込むための開口を提供する。加圧ガスの吸気マニホールド内への放出は、突然で乱流であり、吸気マニホールドプレナム内の空気と混合し、圧縮ガスと新鮮な空気の混合からの熱は、正の力の生成モードで動作している他の気筒に供給され、それにより、追加的な熱の発生を促進する。第6の例示的な副バルブ事象1002によって提供されるこのサイクルは、気筒の充填を低減するために第6の例示的な副バルブ事象1002の前半と後半との間で事象の開閉タイミング、および可能な再閉鎖(すなわちゼロリフト)を調整することによって、望ましい最小限の、もしくは最大限の圧縮開放仕事、または最大限の気筒圧力を提供するために最適化され得る。第6の例示的な副バルブ事象1002は、休止された気筒からの正味の質量流量がなくても発熱仕事を生み出すことができることから、吸気および排気の副バルブ事象の組み合わせ(例えば、
図8)と比較して追加の利点を有する。すなわち、
図8にある上述の組み合わされた吸気および排気の副バルブ事象は、気筒を通る質量流量の増加をもたらし、これは、追加された質量からの冷却効果により温度を低下させることができる。
【0040】
上述のように、そこに適用される少なくとも1つの副バルブ事象を有する他の休止可能な気筒とともに正の力の生成モードで同時に動作するいくつかの気筒の提供は、
図11に示されるように概略的に図示すことができる。特に、
図11は、6つの気筒1102を備える直列エンジン1100を示しており、3つの気筒は正の力の生成モードで動作可能であり(気筒2、4、および6)、他の3つの気筒は休止可能である(気筒1、3、および5)。示されるように、休止可能な気筒の各々は、それに関連付けられた1つ以上の休止装置を有し、上述のように副バルブ事象(SVE)をさらに受け入れる。しかしながら、休止可能な気筒はまた、正の力の生成モードでも動作することができることが理解される。したがって、すべての気筒を休止可能であるようにすることにより、複数の気筒休止モードを提供することが可能になり、そこでは、休止された気筒での異なるタイプの副バルブ事象が、正の力の生成モードで動作する気筒と組み合わせられ得る。
【0041】
この例は、
図12に示されており、
図12は、6つの気筒1202を有する直列エンジン1200を再び概略的に示している。この場合、気筒1202の各々は、そこに関連付けられた1つ以上の休止装置を有し、6つの気筒すべてが、正の力の生成モードまたは気筒休止モードのいずれかで動作し得るようになっている。さらに示されるように、気筒の異なるグループには、異なる副バルブ事象が提供され得る。図示した例では、気筒の第1のグループ(図示した例では気筒1、3、および5)にのみ適用可能な第1の副バルブ事象(SVE1)と気筒の第2のグループ(図示した例では気筒2、4、および6)にのみ適用可能な第2の副バルブ事象(SVE2)とで区別される気筒の2つのグループがある。このように構成すると、2つの異なる気筒休止方策が、特定のニーズに応じて採用され得る。例えば、SVE1は(エンジンのウォームアップまたは後処理の再生成の場合のように)発熱を最大化するように構成され得、一方でSVE2は負荷を最小化し、それにより(すでに高温の後処理の場合のように)燃料経済性を最大化するように構成され得る。この場合、最大の発熱を採用することが望まれる場合、気筒の第1のグループは、SVE1が適用された気筒休止モードで動作し、気筒の第2のグループは、正の力の生成モードで動作する。他方で、最小負荷/最大燃料経済性を採用することが望まれる場合、気筒の第1のグループは正の力の生成モードで動作し、気筒の第2のグループはSVE2が適用された気筒休止モードで動作する。
【0042】
この方策に基づいて、制御方法の例が
図13に示され、これは、気筒休止動作モードに入るときにエンジンコントローラによって実施されることになる。特に、ブロック1302では、排気温度が特定の閾値を超えているかどうかを判定した。例えば、閾値は、すでに高温の後処理システムを維持するために必要な排気温度に従って選択され得る。排気温度が閾値を超えていないと判定された場合、処理は、ステップ1304に継続し得、そこで休止された気筒が動作し、SVE1(最大発熱)が適用されるようになっている。あるいは、排気温度が閾値を超えると判定された場合、処理は、ステップ1306に継続し得、そこで休止された気筒が動作し、SVE2(最小負荷/最大燃料経済性)が適用されるようになっている。
図13の例は、排気温度と閾値との比較に基づいているが、1つ以上の他のエンジン動作パラメータも等しく採用され得ることが理解される。非限定的な例として、そのようなエンジン動作パラメータは、冷却液温度、油温、後処理システム温度などを含み得る。このように、どの副バルブ事象を使用するかの選択的判定は、いくつかのエンジンパラメータのいずれかに基づくことができる。
【0043】
さらなる方策として、
図12に示される構成は、すべての気筒がゼロ燃料消費と最小摩擦量のために休止されることになる「惰行モード」(すなわち、エンジンのピストンが、ドライブトレインを介してエンジンに加えられる車両の勢いによって駆動される)を提供することができる。副バルブ事象が休止された気筒に選択的に適用され得る(または適用されない)範囲で、休止された気筒の一部は、副バルブ事象がそのような休止された気筒に適用されない場合のように、気筒を通る質量流量がゼロになるように動作され得る。他方で、他の休止気筒が副バルブ事象とともに提供され得、これが、例えば、休止気筒に出入りする排気ガスの再循環をもたらし、それによって排気システム内に熱を放出して排気マニホールド、ターボチャージャ、および隣接する構成要素を暖かく保ち、正の力の生成に移行しても冷たい排気システムになることはない。
【0044】
特定の好ましい実施形態が示され、説明されてきたが、当業者は、本発明の教示から逸脱することなく変更および修正を行うことができることを理解するであろう。したがって、上記の教示のありとあらゆる修正、変形、または同等物は、上で開示され、本明細書で特許請求される基本的な基本原理の範囲内にあると考えられる。
【0045】
例えば、上述のように、様々な副バルブ事象が、’006特許および’992出願で教示されるように、関連するエンジンバルブに常に提供されているが、主バルブ事象によって常に「隠された」、「デフォルト」バルブリフトを有する補助バルブ作動運動源を使用することによって実施され得る。しかしながら、「常にそこにある」デフォルトのバルブ事象とは対照的に、補助バルブ作動運動源のより選択可能なバージョンもまた使用され得ることが理解される。そのような選択可能性は、適切な喪失運動機構の使用を通じて提供され得、これは、例えば、気筒の正の力の動作中など、選択されていないときに補助バルブ事象の全部または一部を喪失するが、気筒休止動作中などのように、選択されたときに補助(副)バルブ事象を提供する。そのようなシステムは、選択可能性の機能性を提供するために必然的により複雑である一方で、副バルブ作動が気筒休止と組み合わせて使用され得る場合にも、より大きな柔軟性を提供する。
【0046】
さらに、副バルブ事象を提供するための本明細書に記載のシステムは、(「デフォルト」または選択可能なバルブ事象によるかどうかにかかわらず)補助バルブ作動運動源の使用に基づいている。しかしながら、このことは、副バルブ事象が主バルブ事象から派生し得る範囲で、要件である必要はない。例えば、いわゆる「中心」バルブ事象は、主バルブ事象のリフトを減らしたバージョンであり、喪失運動構成要素(上述の休止装置など)を使用して提供されており、これらは、主バルブの作動によって提供されるピークリフト未満のリフト量だけを喪失することができる。例えば、所与の主バルブリフトが14mmのピークリフトを有するが、対応するバルブトレインに配置された休止装置が、10mmの休止ストローク長を有する場合、バルブトレインは、依然として主バルブ事象のピークリフト部分を中心に4mmのリフトを提供し、この4mmのリフトは、状況によっては、副バルブ事象として採用され得る。
【0047】
本明細書に示される様々な副バルブ事象は、いわゆるオンーランプおよびオフーランプを、すなわち、エンジンバルブの滑らかなリフトと着座を確実にするためにエンジンバルブ速度を制御するように設計された、所与の副バルブ事象のそれぞれの開始および終了にある移行領域を使用し得ることにも留意されたい。
【0048】
上述の機能性に加えて、ターボチャージャの速度を閾値より上に維持するために必要な最小質量流量レベルを生成するためにも副バルブ事象が使用され得、ターボチャージャベアリングを油膜上で適切に支持されるようにし、突然の負荷需要の増加に対する過渡的ターボ反応を改善する。
【0049】
さらに、上述の本開示は、様々な副バルブ事象が、排気および吸気ストローク中にのみ提供される、すなわち、それらが主バルブ事象内に「隠れている」と説明している。しかしながら、このことは要件ではないことが理解され、それは、エンジンの膨張および/または圧縮ストローク中に、同じピストンの上下運動を有することにより、同様の「吸気」と「排気」の特性を示す範囲で実質的に同様の副バルブ事象(気筒休止動作中)を組み込むことも可能であり、または代替的に組み込むことが可能であるからである。