(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】筆記用具、製図用具および/または描画用具のための芯、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/16 20140101AFI20231017BHJP
【FI】
C09D11/16
(21)【出願番号】P 2022513408
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2020025382
(87)【国際公開番号】W WO2021037392
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】102019006035.0
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】314006226
【氏名又は名称】ステッドラー マルス ゲーエムーベーハー ウント コー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】STAEDTLER Mars GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Moosaeckerstrasse 3, D-90427 Nuernberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヤーコプ
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-088263(JP,A)
【文献】特開昭49-012925(JP,A)
【文献】特表2011-528045(JP,A)
【文献】特開2008-045043(JP,A)
【文献】特開平05-039449(JP,A)
【文献】特開昭49-063525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの結合剤、少なくとも1つのワックス、少なくとも1つの着色剤および少なくとも1つの充填剤を少なくとも含む、筆記用具、製図用具および/または描画用具のための芯であって、
前記芯が鉛筆の芯および/または色鉛筆の芯として存在し、
前記少なくとも1つの結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)
および結合剤2として存在し、
前記結合剤2が、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールおよび/またはポリビニルブチラールであり、
且つヒドロキシプロピルセルロースの含有率が7~45質量%であることを特徴とする、前記芯。
【請求項2】
ヒドロキシプロピルセルロースの含有率が10~35質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の芯。
【請求項3】
前記芯が
7~45質量%のHPC(結合剤1)
5~65質量%の充填剤
0.5~15質量%の着色剤(顔料)
30質量%
以下の結合剤2
30質量%
以下のワックスおよび/またはオイル
0~15質量%の界面活性剤
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の芯。
【請求項4】
前記
芯が
10~35質量%のHPC(結合剤)
9~50質量%の充填剤
1.5~14質量%の着色剤(顔料)
30質量%
以下の結合剤2
30質量%
以下のワックスおよび/またはオイル
0~10質量%の界面活性剤
を含有することを特徴とする、請求項1に記載の芯。
【請求項5】
請求項1に記載のポリマー結合芯の製造方法であって、前記芯が押出によって形成されることを特徴とする前記方法。
【請求項6】
請求項1に記載のポリマー結合芯の製造方法であって、前記芯が下記の段階:
・ 芯の配合の全ての成分を混合し造粒して、芯の顆粒にする段階、
・ 前記芯の顆粒を押出機において100~180℃の範囲の温度で適切なダイを通じて押し出して、エンドレスの芯のストランドにする段階、
・ 前記エンドレスの芯のストランドを冷却して硬化させる段階、および
・ 前記エンドレスの芯のストランドを所定の長さに、殊に必要な鉛筆の長さに切断する段階
を実施して形成されることを特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性結合剤に基づく筆記用具、製図用具および/または描画用具のための芯、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製図、筆記および/または描画のための熱可塑性結合剤に基づく芯は原則的に公知である。
【0003】
例えば、独国特許出願公開第102008034014号明細書(DE102008034014 A1)から、少なくとも熱可塑性結合剤、ワックスおよび充填剤を含有する芯が公知である。この場合、使用される結合剤は、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル、スチレンブダジエン、ポリオレフィン、およびアクリロニトリル・ブダジエン・スチレンとして存在する。この場合、そのように仕上げられた芯は水溶性/水彩画法可能ではなく、且つ石油に基づく原料で構成されていることが欠点とみなされる。
【0004】
さらに、セルロース誘導体に基づいて構成され且つ製造され、その際、この誘導体が結合剤として作用する芯が従来技術から公知である。第1の段階において、水を添加しながら粗製の芯がプレスされる。第2の段階において、すぐに使える芯を得るためにこの粗製の芯を乾燥させなければならない。これについての例は、独国特許出願公開第4214396号明細書(DE4214396 A1)および欧州特許第0836846号明細書(EP0836846 B1)による芯が挙げられる。この場合、すぐに使用できる芯を得るために複数の作業段階が必要であることが欠点としてみなされる。引き続き、大きなエネルギーを消費しながら乾燥させることによって溶剤/水を除去し、最後に芯をワックス、脂肪および/またはオイルで含浸させる。さらに、熱安定性の欠如に基づき、ほとんどのセルロース誘導体は高温にさらすことができず、従って熱可塑的に変形可能もしくは加工可能ではないことが欠点としてみなされる。従って、例えば130℃より高い高温を必要とする製造方法を使用することはできない。さらに、水彩画法可能な芯を製造するために、セルロースの膨潤段階、乾燥の他に、追加的な含浸が必要とされることが欠点としてみなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102008034014号明細書
【文献】独国特許出願公開第4214396号明細書
【文献】欧州特許第0836846号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、上記の欠点を有さない筆記、製図および/または描画のための芯を作り出すことである。セルロースに基づいて構成されており、且つ殊に熱可塑的に加工可能もしくは製造することができ、且つ水溶性/水彩画法可能に仕上げられている、黒鉛芯および/または着色芯として仕上げられた芯を作り出すことが課題である。さらに、本発明の課題は、できるだけ少ない労力で、殊に少ない作業段階で費用効率良く芯を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの課題は、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を有する芯組成物を作り出すことによって解決された。この場合さらに、意外なことに、このように構成された芯を1つの作業段階で製造でき、さらに水彩画法可能に仕上げられていることが示されている。
【0008】
少なくとも1つの結合剤、少なくとも1つのワックス、少なくとも1つの着色剤および少なくとも1つの充填剤を少なくとも含む、筆記用具、製図用具および/または描画用具のための芯であって、前記芯は鉛筆の芯および/または色鉛筆の芯として存在し、前記少なくとも1つの結合剤はヒドロキシプロピルセルロース(HPC)として存在し、且つヒドロキシプロピルセルロースの含有率が7~45質量%である前記芯が作り出された。
【0009】
芯組成物におけるHPCの形態での前記少なくとも1つの結合剤の割合は、7~45質量%の範囲、好ましくは10~35質量%の範囲である。HPCの形態での添加される結合剤の特に好ましい範囲として、16~28質量%が挙げられる。
【0010】
HPCはセルロースの誘導体であり、水にも有機溶剤にも可溶性である。HPCは熱可塑性に仕上げられている。今日までのところ、HPCは薬学的な助剤として、セラミック材料用の結合剤、接着剤用の覆いとして、化粧品において、印刷インクにおいて、および重合技術において使用されている。意外なことにHPCは、芯の使用者の元の要件を失うことなく、芯の中で使用できることが示された。これらの要件は、破壊強度自体、および削る際の安定性、汚れの落としやすさ、および摺動性である。さらに、そのように製造された芯は水溶性、水彩画法可能であるように仕上げられることが判明した。これらの意外な効果は、鉛筆の芯でも着色芯でも確認できた。
【0011】
このように仕立てられる芯をより正確に表すために、下記の骨子の例および配合の例を挙げる。
【0012】
前記芯が
7~45質量%のHPC(結合剤1)
5~65質量%の充填剤
0.5~15質量%の着色剤(顔料)
0~30質量%の結合剤2
0~30質量%のワックスおよび/またはオイル
0~15質量%の界面活性剤
を有する場合、有利であることが判明している。
【0013】
殊に、前記芯が
10~35質量%のHPC(結合剤)
9~50質量%の充填剤
1.5~14質量%の着色剤(顔料)
0~30質量%の結合剤2
0~30質量%のワックスおよび/またはオイル
0~10質量%の界面活性剤
を有する場合が好ましい。
【0014】
有利には、少なくとも1つの充填剤は鉱物の充填剤である。例えば、黒鉛、六方晶窒化ホウ素、カオリン、層状ケイ酸塩、タルク、チョーク、重晶石、着色顔料および/または無着色顔料を含む群の充填剤が挙げられる。
【0015】
この場合、鉛筆の芯については殊に、充填剤としての、もしくは着色された充填剤としての黒鉛、またはカーボンブラックと組み合わせた黒鉛が好ましい。色鉛筆の芯については、白色または無色の充填剤、例えば六方晶窒化ホウ素、層状ケイ酸塩などと、着色顔料、例えばアゾ顔料、フタロシアニン、ジオキサジン、キナクリドン、酸化鉄、カーボンブラック、黒鉛、ウルトラマリン、鉄・シアン錯体との組み合わせが実証されている。
【0016】
さらなる結合剤、結合剤2として、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールおよび/またはポリビニルブチラールが挙げられる。
【0017】
水溶性の鉛筆の芯のための組成物は、
7~40質量%のHPC(結合剤1)
5~70質量%の充填剤
0~20質量%の着色剤(顔料)
0~30質量%の結合剤2
0~3質量%のワックスおよび/またはオイル
0.5~15質量%の界面活性剤
を含む。
【0018】
鉛筆の芯のための配合の例は、
20質量%のHPC(結合剤1)
61質量%のタルク
9質量%のポリエチレングリコール(結合剤2)
7質量%の黒鉛
1.5質量%の酸化PEワックス
1.5質量%のEO/POブロックコポリマー
を含む。
【0019】
鉛筆の芯のための着色剤として、例に示すとおり、黒鉛が使用される。しかしながら、黒鉛とカーボンブラックとの組み合わせも使用できる。
【0020】
色鉛筆の芯のための組成物は、
7~45質量%のHPC(結合剤1)
5~65質量%の充填剤
0.5~15質量%の着色剤(顔料)
0~28質量%の結合剤2
0~30質量%のワックスおよび/またはオイル
0~15質量%の界面活性剤
を含む。
【0021】
色鉛筆の芯のための配合の例:
23質量%のHPC(結合剤1)
56質量%のチョーク
7質量%のキナクリドン
14質量%のアミドワックス。
【0022】
着色芯の場合の着色剤として、着色および/または無色の顔料を使用できる。そのような顔料の例として、アゾ顔料、フタロシアニン、ジオキサジン、キナクリドン、酸化鉄、カーボンブラック、黒鉛、ウルトラマリン、鉄・シアン錯体が挙げられる。
【0023】
少なくとも1つのワックスとして、脂肪酸、ステアレート、モンタンワックス、アミドワックスおよびパラフィンを含む群からの少なくとも1つのワックスを使用できる。
【0024】
使用されるオイルは、例えばパーム油、パーム核油および/または大豆油として存在できる。
【0025】
界面活性剤は、EO/POブロックポリマー、エトキシル化アルコールおよび/またはアルキルポリグリコシドであってよい。
【0026】
本発明による芯の製造方法として、押出法が実証されている。
【0027】
本発明による芯は、殊に下記の段階:
・ 芯の配合の全ての成分を混合し造粒して、芯の顆粒にする段階、
・ 前記芯の顆粒を押出機において100~180℃の範囲の温度で適切なダイを通じて押し出して、エンドレスの芯のストランドにする段階、
・ 前記エンドレスの芯のストランドを冷却して硬化させる段階、および
・ 前記エンドレスの芯のストランドを所定の長さに、殊に必要な鉛筆の長さに切断する段階
を実施して製造される。
【0028】
押出ヘッドに応じて、芯の断面は丸形、角形またはそれらの組み合わせからの任意の形状を取ることができる。さらに、複数回の共押出を介して、異なる芯の配合を1つの押出ヘッドで組み合わせて、複数の成分の芯にすることが可能である。
【0029】
さらに、前記の芯の顆粒を適切な共押出法を用いて他のポリマー結合材料と共に押し出して完全な鉛筆にすることができる。