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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20231017BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20231017BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20231017BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231017BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20231017BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20231017BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20231017BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231017BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20231017BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20231017BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20231017BHJP
   H01G 11/46 20130101ALI20231017BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20231017BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M4/131
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/62 Z
H01M10/04 Z
H01M10/052
H01M10/0567
H01G11/06
H01G11/24
H01G11/46
H01G11/64
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022516733
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 CN2020094652
(87)【国際公開番号】W WO2021243701
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】王 可飛
(72)【発明者】
【氏名】師 亮
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-003926(JP,A)
【文献】特開2006-066286(JP,A)
【文献】国際公開第2013/129658(WO,A1)
【文献】特開2015-176831(JP,A)
【文献】国際公開第2010/090028(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/090029(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/031226(WO,A1)
【文献】特開2002-056896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/02
H01M 4/131
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 4/62
H01M 10/04
H01M 10/052
H01M 10/0567
H01G 11/06
H01G 11/24
H01G 11/46
H01G 11/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、電解液とを備える電気化学装置であって、前記正極は正極活物質層を含み、接触角測定法により測定した非水溶媒に対する前記正極活物質層の接触角は、45°以下であ
前記正極活物質層が、親水性基及び親油性基を有する助剤を含有し、
前記助剤が以下の特徴のうちの少なくとも1つを有し、
(a)酸化電位が4.5V以上、且つ還元電位が0.5V以下であり、
(b)表面張力が40mN/m以下であり、
(c)不飽和カルボン酸基を含み、
(d)前記正極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量が3000ppm以下であり、
前記電解液は、式1で示される化合物を含み、
【化1】
Rは置換または非置換のC -C 10 炭化水素基であり、かつ置換された場合、置換基はハロゲンであり、
前記電解液の全重量に対する前記式1で示される化合物の含有量が0.001wt%~2wt%である、電気化学装置。
【請求項2】
前記接触角測定法とは、前記正極活物質層の表面にジエチルカーボネートの液滴3μlを滴下した後、100秒以内に前記液滴の前記正極活物質層の表面での接触角を測定することである、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記助剤は、2-アクリル酸ドデシル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、(2-エチルヘキシル)アクリレート、アクリレート非イオン性フルオロカーボン界面活性剤、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸(エステル)系共重合体、マレイン酸ーアクリル酸共重合体又はエチレン-アクリル酸共重合体のうちの少なくとも一つを含む、請求項に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記式1で示される化合物は、
【化2】
【化3】
、又は、
【化4】
のうちの少なくとも一つを含む、請求項に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記電解液における前記式1で示される化合物の含有量X mg及び前記正極活物質層の反応面積Y mは、10≦X/Y≦100を満たす、請求項に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記正極活物質層は、正極活物質を含み、前記正極活物質はメジアン径が異なるリチウム含有遷移金属酸化物を含有する、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記リチウム含有遷移金属酸化物は、一般式1で示される化合物を含み、
LiM1M2M3(1)
M1がCo、Ni又はMnから選択される少なくとも一種であり、
M2がMg、Ti、Zr、Ge、Nb、Al又はSnから選択される少なくとも一種であり、
M3がLi、M1及びM2以外の元素であり、
a、b、c及びdが、
0.5≦a<1.1、
0.8≦b<1.2、
0.002≦c≦0.05、及び
0≦d≦0.05を満たす、請求項に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記リチウム含有遷移金属酸化物は、Mgと、Ti、Zr、Ge、Nb、Al及びSnから選択される少なくとも一種の金属元素とを含む、請求項に記載の電気化学装置。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の電気化学装置を含む電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵分野に関し、具体的に、電気化学装置及び電子装置、特にリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
技術の発展及びモバイル装置に対する需要の増加に伴い、電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)に対する需要が著しく増加し、それにより、リチウムイオン電池の性能、特にリチウムイオン電池のサイクル特性などに対してより高い要求を提出する。
【0003】
リチウムイオン電池は、サイクル過程に充電/放電容量の低下が生じるため、リチウムイオン電池の性能が低下する。リチウムイオン電池の性能は、主に電極、電解液、及びセパレータの特性に依存する。電極の性能は、集電体と活物質層の特性に依存するだけでなく、活物質層における助剤とも密接に関係している。助剤は、活物質層における粒子の分散又は界面の結着に寄与する。しかしながら、リチウムイオン電池の調製過程において一般的に原料のマッチングが悪いことによる配合が困難であるなどの問題があるため、リチウムイオン電池の性能に悪影響を与える。
【0004】
この実情に鑑みて、改良された性能を有する電気化学装置及び電子装置を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施例は、少なくともある程度で、関連技術に存在する少なくとも一つの問題を解決するように、電気化学装置及び電子装置を提供する。
【0006】
本発明の一態様において、本発明は、正極と、負極と、電解液とを備える電気化学装置を提供し、前記正極は正極活物質層を含み、接触角測定法により測定した非水溶媒に対する前記正極活物質層の接触角は、45°以下である。
【0007】
本発明の実施例によれば、前記接触角測定法とは、前記正極活物質層の表面にジエチルカーボネートの液滴3μlを滴下した後、100秒以内に前記液滴の前記正極活物質層の表面での接触角を測定する、ことである。
【0008】
本発明の実施例によれば、前記正極活物質層が、親水性基及び親油性基を有する助剤を含有する。
【0009】
本発明の実施例によれば、前記助剤が以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
【0010】
(a)酸化電位が4.5 V以上、且つ還元電位が0.5 V以下であり、
(b)表面張力が40mN/m以下であり、
(c)不飽和カルボン酸基を含み、
(d)前記正極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、3000ppm以下である。
【0011】
本発明の実施例によれば、前記助剤は、2-アクリル酸ドデシル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、(2-エチルヘキシル)アクリレート、アクリレート非イオン性フルオロカーボン界面活性剤、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸(エステル)系共重合体、マレイン酸ーアクリル酸共重合体又はエチレン-アクリル酸共重合体のうちの少なくとも一つを含む。
【0012】
本発明の実施例によれば、前記電解液は、式1で示される化合物を含む。
【0013】
【化1】
【0014】
ここで、Rは置換または非置換のC-C10炭化水素基であり、置換された場合、置換基はハロゲンであり、
前記電解液の全重量に対する前記式1で示される化合物の含有量は0.001wt%~2wt%である。
【0015】
本発明の実施例によれば、前記式1で示される化合物は下記構造式のうちの少なくとも一つを含む。
【0016】
【化2】

【化3】

、又は
【化4】
【0017】
本発明の実施例によれば、前記電解液における前記式1で示される化合物の含有量X mg及び前記正極活物質層の反応面積Y mは、10≦X/Y≦100を満たす。
【0018】
本発明の実施例によれば、前記正極活物質層は、正極活物質を含み、前記正極活物質はメジアン径が異なるリチウム含有遷移金属酸化物を含有する。
【0019】
本発明の実施例によれば、前記リチウム含有遷移金属酸化物は一般式1で示される化合物を含む。
LiM1M2M3(1)
ここで、M1がCo、Ni又はMnから選択される少なくとも一種であり、
M2がMg、Ti、Zr、Ge、Nb、Al及びSnから選択される少なくとも一種であり、
M3がLi、M1及びM2以外の元素であり、
a、b、c及びdが、
0.5≦a<1.1、
0.8≦b<1.2
0.002≦c≦0.05、及び
0≦d≦0.05を満たす。
【0020】
本発明の実施例によれば、前記リチウム含有遷移金属酸化物は、Mgと、Ti、Zr、Ge、Nb、Al及びSnから選択される少なくとも一種の金属元素とを含む。
【0021】
本発明の更なる一態様において、本発明は、本発明による電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0022】
本発明の実施例の他の態様及び利点については、一部的に以下で説明され、示され、または本発明の実施例の実施を通じて説明される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。本発明の実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0024】
本明細書で使用されている下記した用語は、別に断らない限り、以下に示される意味を有する。
【0025】
発明を実施するための形態及び請求の範囲において、「うちの少なくとも一つ」という用語によって接続された項のリストは、リストされた項の任意の組み合わせを意味することができる。例えば、項A及びBがリストされている場合、「A及びBのうちの少なくとも一つ」という短句は、Aのみ、Bのみ、またはA及びBを意味する。他の実例では、項目A、B、及びCがリストされている場合、「A、B、及びCのうちの少なくとも一つ」という短句は、Aのみ又はBのみ、Cのみ、A及びB(Cを除く)、A及びC(Bを除く)、B及びC(Aを除く)、又はA、B、及びCのすべてを意味する。項Aは、単一の素子又は複数の素子を含み得る。項Bは、単一の素子又は複数の素子を含み得る。項Cは、単一の素子又は複数の素子を含み得る。「うちの少なくとも一種」という用語は、「うちの少なくとも一つ」という用語と同様な意味を有する。
【0026】
電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)の電極(正極または負極)は、一般的に、活物質、導電剤、増粘剤、粘着剤及び溶媒を混合して、混合したスラリーを集電体に塗布することにより作製される。しかしながら、溶媒と粘着剤との間または溶媒と活物質との間のマッチング性は一般に良くないですため、配合が困難になる。また、電気化学装置の理論容量は、活物質の種類によって異なる。サイクルが進行するにつれて、電気化学装置は、一般に、充電/放電容量の低下が生じる。これは、充電及び/又は放電時に電気化学装置における電極の界面が変化するからです。前記界面には、電極と電解液との界面、集電体と電極との界面、及び電極活物質と添加剤との界面などが含まれる。界面安定性の低下すると、電極活物質がその機能を発揮できなくなる。
【0027】
本発明は、特定の正極材料を使用することによって、サイクルにおける電気化学装置の界面安定性を確保し、それによって電気化学装置のサイクル特性、レート特性及び直流阻抗を向上させた。本発明の特定の正極材料は正極活物質層の表面の接触角を制御することにより得られる。接触角の制御方法として、正極用スラリーに助剤を添加すること、又は正極活物質層の表面に助剤コート層が設けられることにより制御することができる。
【0028】
本発明は、下記のような正極と、負極と、電解液とを備える電気化学装置を提供する。
【0029】
I、正極
【0030】
正極は、正極集電体と、前記正極集電体の一つまたは二つの表面に設けられた正極活物質層とを備える。
【0031】
正極活物質層
【0032】
正極活物質層は、正極活物質を含んでいる。正極活物質層は、単層であってもよく、複層であってもよい。複層の正極活物質層における各層は、同一又は異なる正極活物質を含んでもよい。
【0033】
接触角
【0034】
本発明の電気化学装置の1つの特徴は、接触角測定法により測定した非水溶媒に対する前記正極活物質層の接触角が45°以下である、ことである。いくつかの実施例において、接触角測定法により測定した非水溶媒に対する前記正極活物質層の接触角が40°以下である。いくつかの実施例において、接触角測定法により測定した非水溶媒に対する前記正極活物質層の接触角が35°以下である。非水溶媒に対する正極活物質層の接触角が上記のようなものであると、正極活物質層の界面が適度な表面張力を有し、電解液に対する濡れ性が良好であり、電気化学装置の充放電サイクルにおける安定性が良好であり、電気化学装置のサイクル特性、レート特性及び直流阻抗を著しく改善することができる。
【0035】
非水溶媒に対する正極活物質層の接触角は、正極活物質層を特徴付ける物理化学パラメータの1つであり、正極活物質層の表面特性を反映することができる。接触角が小さいほど、正極活物質層の表面張力が小さくなり、電気化学装置のサイクル特性、レート特性及び直流阻抗を著しく改善することができる。非水溶媒に対する正極活物質層の接触角は、主に助剤などを含む様々な要因によって影響され得る。
【0036】
いくつかの実施例において、前記接触角測定法とは、前記正極活物質層の表面にジエチルカーボネートの液滴3μlを滴下した後、100秒以内に前記液滴の前記正極活物質層の表面での接触角を測定することである。
【0037】
非水溶媒に対する正極活物質層の接触角及び非水溶媒の液滴の直径は以下の方法で測定することができる。正極活物質層の表面にジエチルカーボネート3μlを滴下し、100秒以内にJC2000D3E型接触角計を用いて液滴の直径を測定し、5点フィッティング法(即ち、まず液滴の左右平面の2点を取り、液固界面を決定し、次に液滴の円弧上で3点を取る)でフィッティングして非水溶媒に対する正極活物質層の接触角を得る。各サンプルを少なくとも3回測定し、少なくとも3つの差値が5°より小さいデータを選択し、平均値をとり、非水溶媒に対する正極活物質層の接触角を得る。
【0038】
接触角測定に用いられる非水溶媒としては、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート又はメチルイソプロピルカーボネートなどの電解液溶媒に一般的に用いられるものを用いることができる。
【0039】
助剤
【0040】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記正極活物質層は助剤を含む。いくつかの実施例において、前記助剤は、親水性基及び親油性基を有する。
【0041】
いくつかの実施例において、前記助剤の酸化電位が4.5 V以上、且つ還元電位が0.5V以下である。いくつかの実施例において、前記助剤の酸化電位が5V以上、且つ還元電位が0.3V以下である。上記した酸化/還元電位を有する助剤は電気化学的性能が安定しており、電気化学装置のサイクル特性、レート特性及び直流阻抗の改善に寄与する。
【0042】
いくつかの実施例において、前記助剤の表面張力は、40mN/m以下である。いくつかの実施例において、前記助剤の表面張力は、30mN/m以下である。いくつかの実施例において、前記助剤の表面張力は、25mN/m以下である。いくつかの実施例において、前記助剤の表面張力は、20mN/m以下である。いくつかの実施例において、前記助剤の表面張力は、15mN/m以下である。いくつかの実施例において、前記助剤の表面張力は、10mN/m以下である。前記助剤の表面張力は、固形分含有量が1%である助剤のNMP溶液の条件下で測定したものである。このような表面張力を有する助剤によれば、正極活物質層の界面を良好にすることができ、電気化学装置のサイクル特性、レート特性及び直流阻抗の改善に寄与する。
【0043】
助剤の表面張力は以下の方法により測定することができる。JC2000D3E型接触角計を用いて、固形分含有量が1%である助剤のNMP溶液を測定し、各サンプを少なくとも3回測定し、少なくとも3つのデータを選択し、平均値を取り、助剤の表面張力を得る。
【0044】
いくつかの実施例において、前記助剤は不飽和カルボン酸基を含む。いくつかの実施例において、前記不飽和カルボン酸基は、アクリル酸エステル、ビニルエーテルアクリレート、クロトン酸エステル、プロピオル酸エステル、ブチン酸エステル、又はアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルエーテル基で修飾されたカルボン酸エステルのうちの少なくとも一つを含む。
【0045】
いくつかの実施例において、前記助剤は、2-アクリル酸ドデシル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、(2-エチルヘキシル)アクリレート、アクリレート非イオン性フルオロカーボン界面活性剤、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸(エステル)系共重合体、マレイン酸ーアクリル酸共重合体又はエチレン-アクリル酸共重合体のうちの少なくとも一つを含む。
[0060]
いくつかの実施例において、前記正極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、3000ppm以下である。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、2500ppm以下である。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、2000ppm以下である。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、1500ppm以下である。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、1000ppm以下である。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、500ppm以下である。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、200ppm以下である。助剤の含有量が上記範囲内にあると、電気化学装置のサイクル特性、レート特性及び直流阻抗の改善に寄与する。
【0046】
正極活物質
【0047】
正極活物質の種類は、特に限定されず、電気化学方式で金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵及び放出可能なものであればよい。いくつかの実施例において、正極活物質は、リチウムと少なくとも一種の遷移金属とを含む物質である。正極活物質の実例は、リチウム遷移金属複合酸化物及びリチウム含有遷移金属りん酸化合物を含むが、これらに限定されない。
【0048】
いくつかの実施例において、前記正極活物質は、メジアン径が異なるリチウム含有遷移金属酸化物を含む。いくつかの実施例において、メジアン径が異なるリチウム含有遷移金属酸化物は、同じまたは異なる化学組成を有する。
【0049】
いくつかの実施例において、前記リチウム含有遷移金属酸化物は一般式1で示される化合物を含む。
LiM1M2M3(1)
ここで、M1がCo、Ni又はMnから選択される少なくとも一種であり、
M2がMg、Ti、Zr、Ge、Nb、Al及びSnから選択される少なくとも一種であり、
M3がLi、M1及びM2以外の元素であり、
a、b、c及びdが
0.5≦a<1.1、
0.8≦b<1.2、
0.002≦c≦0.05、及び
0≦d≦0.05を満たす。
【0050】
いくつかの実施例において、M1はCo又はNiのうちの少なくとも一種を含む。M1がCo又はNiのうちの少なくとも1つを含む場合、前記リチウム含有遷移金属酸化物におけるCo又はNiのうちの少なくとも1つの含有量は、50モル%以上であり、いくつかの実施例において60モル%以上であり、いくつかの実施例において70モル%以上であり、いくつかの実施例において80モル%以上であり、又はいくつかの実施例において90モル%以上である。
【0051】
いくつかの実施例において、M1はCoを含む。いくつかの実施例において、M1はCoである。M1がCoを含む場合、前記リチウム含有遷移金属酸化物におけるCoの含有量は30モル%以上であり、いくつかの実施例において50モル%以上であり、いくつかの実施例において65モル%以上であり、いくつかの実施例において80モル%以上であり、いくつかの実施例において90モル%以上であり、又はいくつかの実施例において95モル%以上である。リチウム含有遷移金属酸化物がCoを含むと、正極活物質層の密度の向上に寄与する。リチウム含有遷移金属酸化物におけるCoの含有量が上記範囲内にあると、正極活物質層の密度をさらに改善させることができる。
【0052】
いくつかの実施例において、M2はMgを含む。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するMgの含有量は、0.01モル%以上である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するMgの含有量は、0.05モル%以上である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するMgの含有量は、0.07モル%以上である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するMgの含有量は、0.5モル%以下である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するMgの含有量は、0.2モル%以下である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するMgの含有量は、0.1モル%以下である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するMgの含有量は、上記した任意の二つの端点で構成される範囲内にある。リチウム含有遷移金属酸化物におけるMgの含有量が上記範囲内にあると、Mg元素が効果的に作用し、電気化学装置のサイクル特性、レート特性及び直流阻抗を改善させることができる。
【0053】
いくつかの実施例において、M2はさらにTi、Zr、Ge、Nb、Al及びSnのうちの少なくとも一種を含む。
【0054】
いくつかの実施例において、M2はさらにTi、Zr、Ge又はNbのうちの少なくとも一種を含む。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するTi、Zr、Ge又はNbのうちの少なくとも1つの含有量は、0.005モル%以上である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するTi、Zr、Ge又はNbのうちの少なくとも1つの含有量は、0.008モル%以上である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するTi、Zr、Ge又はNbのうちの少なくとも1つの含有量は、0.01モル%以上である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するTi、Zr、Ge又はNbのうちの少なくとも1つの含有量は、0.3モル%以下である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するTi、Zr、Ge又はNbのうちの少なくとも1つの含有量は、0.1モル%以下である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するTi、Zr、Ge又はNbのうちの少なくとも1つの含有量は、0.05モル%以下である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するTi、Zr、Ge又はNbのうちの少なくとも1つの含有量は、上記した任意の二つの端点で構成される範囲内にある。リチウム含有遷移金属酸化物におけるTi、Zr、Ge又はNbのうちの少なくとも1つの含有量が上記範囲内にあると、電気化学装置のサイクル特性、レート特性及び直流阻抗を更に改善させることができる。
【0055】
いくつかの実施例において、M2はさらにAl又はSnのうちの少なくとも一種を含む。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するAl又はSnのうちの少なくとも1つの含有量は、0.01モル%以上である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するAl又はSnのうちの少なくとも1つの含有量は、0.05モル%以上である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するAl又はSnのうちの少なくとも1つの含有量は、0.07モル%以上である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するAl又はSnのうちの少なくとも1つの含有量は、0.5モル%以下である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するAl又はSnのうちの少なくとも1つの含有量は、0.2モル%以下である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するAl又はSnのうちの少なくとも1つの含有量は、0.1モル%以下である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対するAl又はSnのうちの少なくとも1つの含有量は上記した任意の二つの端点で構成される範囲内にある。リチウム含有遷移金属酸化物におけるAl又はSnのうちの少なくとも1つの含有量が上記範囲内にあると、電気化学装置のサイクル特性、レート特性及び直流阻抗をさらに改善させることができる。
【0056】
いくつかの実施例において、cが0.004≦c≦0.02を満たす。いくつかの実施例において、cが0.006≦c≦0.01を満たす。cが上記範囲内にあると、リチウムイオン電池のサイクル特性、レート特性及び直流阻抗を更に改善させることができる。
【0057】
リチウム含有遷移金属酸化物は、M2を様々な方式で含むことができ、特に制限されない。いくつかの実施例において、M2は、リチウム含有遷移金属酸化物粒子上に存在する。いくつかの実施例において、M2は、固体として、リチウム含有遷移金属酸化物内に均一に分散される。いくつかの実施例において、M2は、リチウム含有遷移金属酸化物内に濃度分布に基づく偏在する。いくつかの実施例において、M2は、リチウム含有遷移金属酸化物の表面上に化合物層を形成する。
【0058】
いくつかの実施例において、M3は、Li以外のアルカリ金属元素、Mg以外のアルカリ土類金属元素、IIIa族金属元素、Ti及びZr以外のIVb族金属元素、Nb以外のVb族金属元素、VIb族金属元素、Mn以外のVIIb族金属元素、Co及びNi以外のVIII族金属元素、Ib族金属元素、Zn、Al以外のIIIa族金属元素、Sn及びPb以外のIVa族金属元素、P又はBiのうちの少なくとも1つを含む。
【0059】
いくつかの実施例において、M3は、Na、K、Rb、Be、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Tc、Re、Fe、Ru、Rh、Cu、Ag、Au、Zn、B、Ca、In、Si、P又はBiのうちの少なくとも1つを含む。
【0060】
いくつかの実施例において、前記リチウム含有遷移金属酸化物はM3を含まない(即ち、d=0)。
【0061】
いくつかの実施例において、前記リチウム含有遷移金属酸化物は、
LiNi0.81Co0.16Al0.03
LiNi0.81Co0.16Mg0.03
LiNi0.81Co0.16Si0.03
LiNi0.81Co0.16Ti0.03
LiCo0.96Ti0.04
LiCo0.998Mg0.0008Ti0.0004Al0.0008
LiCo0.994Mg0.0024Ti0.0012Al0.0024
LiCo0.9988Mg0.0008Ti0.0004
LiCo0.9964Mg0.0024Ti0.0012、又は
LiCo0.334Ni0.33Mn0.33Mg0.0024Ti0.0012Al0.0024のうちの少なくとも1つを含む。
【0062】
リチウム含有遷移金属酸化物における各元素の含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)分析により求めることができる。リチウム含有遷移金属酸化物におけるリチウム含有量は、他の方法(例えば、原子吸光法)などを用いて測定することもできる。具体的に、リチウム含有遷移金属酸化物を約5g精秤し、200mlのビーカーに入れた後、王水100mlを加え、溶液の量が20~25mlになるまで加熱濃縮し、冷却し、Advantec社製の定量濾紙「No.5B」で固形物を分離し、濾液と洗浄液を100mlのメスフラスコに入れて、定容希釈した後、日本Nippon Jarrell-Ash Ltd製のシーケンシャル型ICP型分析装置「IPIS1000」を用いて元素の含有量を測定する。
【0063】
いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記リチウム含有遷移金属酸化物の含有量は、99wt%以下である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記リチウム含有遷移金属酸化物の含有量は、97.5wt%以下である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記リチウム含有遷移金属酸化物の含有量は、97wt%以下である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記リチウム含有遷移金属酸化物の含有量は、98wt%以下である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記リチウム含有遷移金属酸化物の含有量は、95wt%以下である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記リチウム含有遷移金属酸化物の含有量は、85wt%以上である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記リチウム含有遷移金属酸化物の含有量は、90wt%以下である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記リチウム含有遷移金属酸化物の含有量は、92wt%以下である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記リチウム含有遷移金属酸化物の含有量は、上記した任意の二つの端点で構成される範囲内にある。正極活物質層におけるリチウム含有遷移金属酸化物の含有量が上記範囲内にあると、正極活物質層が高容量と低抵抗を有し、正極の形成に寄与する。
【0064】
いくつかの実施例において、前記リチウム含有遷移金属酸化物は、第一のメジアン径を有する第一の粒子と、第二のメジアン径を有する第二の粒子とを含み、前記第一のメジアン径は前記第二のメジアン径よりも小さい。
【0065】
いくつかの実施例において、前記第一のメジアン径は0.5μm~10μmである。いくつかの実施例において、前記第一のメジアン径は1μm~8μmである。いくつかの実施例において、前記第一のメジアン径は2μm~6μmである。いくつかの実施例において、前記第二のメジアン径は11μm~30μmである。いくつかの実施例において、前記第二のメジアン径は12μm~25μmである。いくつかの実施例において、前記第二のメジアン径は13μm~20μmである。
【0066】
いくつかの実施例において、充電中に負極へのリチウム金属の意図しない析出を防止するように、正極活物質的放電容量は、負極活物質の充電可能容量よりも小さい。
【0067】
リチウム含有遷移金属酸化物のメジアン径は、以下の方法により調整することができる。遷移金属元素M1の酸性水溶液にNaOHを滴下し、沈殿させてM1の水酸化物が得られ、M1の水酸化物を焼成してM1の酸化物を得た。リチウム含有遷移金属酸化物のメジアン径は、沈降時間、沈殿粒子径及び焼成したM1の酸化物の粒子径を制御することにより制御されることができる。
【0068】
いくつかの実施例において、充電中に負極へのリチウム金属の意図しない析出を防止するために、正極活物質的放電容量は、負極活物質の充電可能容量よりも小さい。
【0069】
正極活物質層の密度
【0070】
いくつかの実施例において、前記正極活物質層の密度は、3.5g/cm以上である。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の密度は、3.6g/cm以上である。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の密度は、3.8g/cm以上である。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の密度は、4.6g/cm以下である。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の密度は、4.4g/cm以下である。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の密度は、4.2g/cm以下である。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の密度は、上記した任意の二つの端点で構成される範囲内にある。正極活物質層の密度が上記範囲内にあると、正極活物質層の濡れ性が良好となり、電気化学装置の性能の改善に寄与する。
【0071】
正極活物質層の密度は、以下の方法により測定することができる。正極を一定の面積で切り出し、その重量W1を最小目盛1mgの電子天秤で測定し、正極の厚みT1を最小目盛1μmのマイクロメーターで測定し、正極集電体を剥離し、その重量W2を電子天秤で測定し、かつ正極集電体の厚みT2をマイクロメーターで測定して、W1-W2を正極活物質層の重量、T1-T2を正極活物質層の厚さとし、正極活物質層の厚さ及び面積から正極活物質層の体積を算出した後、正極活物質層の重量及び体積から正極活物質層の密度を算出した。
【0072】
正極活物質層の厚さ
【0073】
いくつかの実施例において、前記正極活物質層の厚さは30μm~200μmである。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の厚さは50μm~180μmである。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の厚さは80μm~150μmである。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の厚さは100μm~120μmである。いくつかの実施例において、前記正極活物質層の厚さは、30μm、50μm、80μm、100μm、120μm、150μm、180μm、200μm、又は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0074】
正極活物質層の厚さは、以下の方法により測定することができる。正極を切り出し、正極の厚みT1を最小目盛1μmのマイクロメータで測定し、正極集電体を剥離し、正極集電体の厚さT2をマイクロメータで測定して、T1-T2を正極活物質層の厚さとする。
【0075】
導電層
【0076】
いくつかの実施例において、正極活物質層は、導電剤を含む導電層をさらに含んでもよい。いくつかの実施例において、前記導電層は正極活物質を含まない。導電剤の実例は、グラファイト、カーボンブラック又はアセチレンブラックを含むが、これらに限定されない。
【0077】
いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記導電剤の含有量は、1wt%以上である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記導電剤の含有量は、1.1wt%以上である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記導電剤の含有量は、1.2wt%以上である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記導電剤の含有量は、3wt%以下である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記導電剤の含有量は、2wt%以下である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記導電剤の含有量は、1.5wt%以下である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記導電剤の含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。正極活物質層における導電剤の含有量が上記範囲内にあると、正極活物質層の密度及び容量の改善に寄与し、電気化学装置のサイクル特性を向上して負荷特性を下げる。
【0078】
粘着剤
【0079】
いくつかの実施例において、前記正極活物質層は、粘着剤を含む。粘着剤の実例は、ポリフッ化ビニリデン又はポリテトラフルオロエチレンを含むが、これらに限定されない。
【0080】
いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記粘着剤の含有量は、1wt%以上である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記粘着剤の含有量は、1.3wt%以上である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記粘着剤の含有量は、1.5wt%以上である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記粘着剤の含有量は、4wt%以下である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記粘着剤の含有量は、3wt%以下である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記粘着剤の含有量は、2wt%以下である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対する前記粘着剤の含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。正極活物質層における粘着剤の含有量が上記範囲内にあると、正極活物質層と正極集電体との密着性が良好となり、正極が粉砕されて脱落する可能性を避けることで、正極の安定性の改善に寄与する。
【0081】
正極集電体
【0082】
正極集電体の種類は、特に限定されず、任意の既知の正極集電体に適用する材料であってもよい。正極集電体の実例は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケルメッキアルミニウム、ステンレス鋼、チタン、又はタンタルのうちの少なくとも一つ、カーボンクロス、カーボンペーパーなどの炭素材料を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、正極集電体は、金属材料である。いくつかの実施例において、正極集電体は、アルミニウムである。
【0083】
正極集電体の形態は、特に限定されない。正極集電体が金属材料である場合、正極集電体の形態は、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチングメタル、発泡メタルなどを含むが、これらに限定されない。正極集電体が炭素材料である場合、正極集電体の形態は、炭素板、炭素膜、炭素円柱などを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、正極集電体は金属薄膜である。いくつかの実施例において、前記金属薄膜はメッシュ状である。
【0084】
いくつかの実施例において、前記正極集電体の厚さは8μm~20μmである。いくつかの実施例において、前記正極集電体の厚さは10μm~18μmである。いくつかの実施例において、前記正極集電体の厚さは12μm~15μmである。いくつかの実施例において、前記正極集電体の厚さは、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0085】
正極集電体及び正極活物質層の電子の接触抵抗を低減するために、正極集電体の表面に、導電剤を含んでもよい。導電剤の実例は、炭素、及び金、プラチナ、銀などの貴金属類を含むが、これらに限定されない。
【0086】
本発明の正極の調製方法は限定されない。例えば、正極は、以下の方法により製造することができる。異なるメジアン径を有する2種以上のリチウム含有遷移金属酸化物を一定の重量比で混合し、必要に応じて導電剤及び粘着剤を添加し、溶剤を加えて正極合剤用スラリーが得られ、得られた正極合剤用スラリーを正極集電体(例えば、アルミ箔)上に塗布し、乾燥させて正極活物質層を形成して、正極集電体の片面または両面に正極活物質層を適用し、必要に応じて圧延ステップを経て正極を作製する。
【0087】
II、電解液
【0088】
本発明の電気化学装置に用いられる電解液は、電解質と、この電解質を溶ける溶媒とを含む。いくつかの実施例において、本発明の電気化学装置に用いられる電解液は、添加剤をさらに含む。
【0089】
いくつかの実施例において、前記電解液は、式1で示される化合物を含む。
【0090】
【化5】
【0091】
ここで、Rは、置換または非置換のC-C10炭化水素基であり、置換された場合、置換基はハロゲンである。
【0092】
いくつかの実施例において、前記式1で示される化合物は下記構造式のうちの少なくとも一つを含む。
【0093】
【化6】
【化7】

、又は
【化8】

【0094】
いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対する前記式1で示される化合物の含有量は0.001wt%~2wt%である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対する前記式1で示される化合物の含有量は0.01wt%~1wt%である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対する前記式1で示される化合物の含有量は0.05wt%~0.5wt%である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対する前記式1で示される化合物の含有量は0.1wt%~0.3wt%である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対する前記式1で示される化合物の含有量は、0.001wt%、0.005wt%、0.01wt%、0.05wt%、0.1wt%、0.3wt%、0.5wt%、0.8wt%、1wt%、1.2wt%、1.5wt%、1.8wt%、2wt%、又は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。電解液における式1で示される化合物の含有量が上記範囲内にあると、リチウムイオン電池のサイクル特性、レート特性及び直流阻抗を更に改善させることができる。
【0095】
いくつかの実施例において、前記電解液における前記式1で示される化合物の含有量X mg及び前記正極活物質層の反応面積Y mは、10≦X/Y≦100を満たす。いくつかの実施例において、X及びYは、20≦X/Y<100を満たす。いくつかの実施例において、X及びYは、20≦X/Y<70を満たす。X及びYが上記関係を満たすと、リチウムイオン電池のサイクル特性、レート特性及び直流阻抗を更に改善させることができる。
【0096】
正極活物質層の反応面積は、以下の方法により測定することができる。表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、窒素流通下で、350℃で試料を15分間予備乾燥した後、大気圧に対する窒素ガスの相対圧の値が0.3に正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定して、この方法に従い、正極活物質層の比表面積(即ち正極活物質及び添加剤(粘着剤、導電剤、増粘剤及びフィラーなど)を含む正極活物質層全体の比表面積)、及び正極活物質層の重量(即ち、正極活物質及び添加剤(粘着剤、導電剤、増粘剤及びフィラーなど)を含む正極活物質層全体の全重量)を測定して、そして、正極活物質層の反応面積は、下記式により算出する。
【0097】
【数1】
【0098】
いくつかの実施例において、前記電解液は、先行技術における電解液の溶媒に用いられる既知の任意の非水溶媒をさらに含む。
【0099】
いくつかの実施例において、前記非水溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、リン含有有機溶媒、硫黄含有有機溶媒、及び芳香族フッ素含有溶媒のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0100】
いくつかの実施例において、前記環状カーボネートの実例は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネートのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、前記環状カーボネートは、3~6個の炭素原子を有する。
【0101】
いくつかの実施例において、前記鎖状カーボネートの実例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。フッ素によって置換された鎖状カーボネートの実例は、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロメチル)カーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、ビス(2-フルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2-フルオロエチルメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネート、及び2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0102】
いくつかの実施例において、前記環状カルボン酸エステルの実例は、γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトンなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、環状カルボン酸エステルの水素原子の一部は、フッ素によって置換されてもよい。
【0103】
いくつかの実施例において、前記鎖状カルボン酸エステルの実例は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、ピバリン酸メチル及びピバリン酸エチルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、鎖状カルボン酸エステルの水素原子の一部は、フッ素によって置換されてもよい。いくつかの実施例において、フッ素によって置換された鎖状カルボン酸エステルの実例は、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸プロピル、トリフルオロ酢酸ブチル及びトリフルオロ酢酸2,2,2-トリフルオロエチルなどを含むが、これらに限定されない。
【0104】
いくつかの実施例において、前記環状エーテルの実例は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、2-メチル-1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン及びジメトキシプロパンのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0105】
いくつかの実施例において、前記鎖状エーテルの実例は、ジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、1,1-エトキシメトキシエタン及び1,2-エトキシメトキシエタンなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0106】
いくつかの実施例において、前記リン含有有機溶媒の実例は、りん酸トリメチル、りん酸トリエチル、りん酸ジメチルエチル、りん酸メチルジエチル、りん酸エチレンメチル、りん酸エチレンエチル、りん酸トリフェニル、亜りん酸トリメチル、亜りん酸トリエチル、亜りん酸トリフェニル、りん酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)及びりん酸トリス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)などのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0107】
いくつかの実施例において、前記硫黄含有有機溶媒の実例は、スルホラン、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルメチルスルホン、メチルプロピルスルホン、ジメチルスルホキシド、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸メチル、エタンスルホン酸エチル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル及び硫酸ジブチルのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、硫黄含有有機溶媒の水素原子の一部は、フッ素によって置換されてもよい。
【0108】
いくつかの実施例において、前記芳香族フッ素含有溶媒は、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン及びトリフルオロメチルベンゼンのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0109】
いくつかの実施例において、本発明の電解液に用いられる溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、及びそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施例において、本発明の電解液に用いられる溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酢酸n-プロピル又は酢酸エチルのうちの少なくとも一つを含む。いくつかの実施例において、本発明の電解液に用いられる溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、及びそれらの組み合わせを含む。
【0110】
電解液に鎖状カルボン酸エステル及び/または環状カルボン酸エステルを添加した後、鎖状カルボン酸エステル及び/または環状カルボン酸エステルは、電極表面にパッシベーション膜を形成できることにより、電気化学装置が断続的に充電サイクルした後の容量維持率を向上させることができる。いくつかの実施例において、前記電解液は、1%~60%の鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エステル、及びそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施例において、前記電解液は、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、及びそれらの組み合わせを含み、電解液の全重量に対するこの組合せの含有量は1%~60%、10%~60%、10%~50%、20%~50%である。いくつかの実施例において、前記電解液は、電解液の全重量に対して、1%~60%、10%~60%、20%~50%、20%~40%又は30%のプロピオン酸プロピルを含有する。
【0111】
いくつかの実施例において、前記添加剤の実例は、フルオロカーボネート、炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネート、硫黄-酸素二重結合を含有する化合物及び酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0112】
いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対する前記添加剤の含有量は0.01%~15%、0.1%~10%又は1%~5%である。
【0113】
本発明の実施例によれば、前記電解液の全重量に対する前記プロピオネートの含有量は前記添加剤の1.5~30倍、1.5~20倍、2~20倍又は5~20倍である。
【0114】
いくつかの実施例において、前記添加剤は、フルオロカーボネートの一種または多種を含む。リチウムイオン電池が充電/放電する時に、フルオロカーボネートがプロピオネートと一緒に協働して負極の表面に安定な保護膜を形成しうることにより、電解液の分解反応を抑制する。
【0115】
いくつかの実施例において、前記フルオロカーボネートは、式C=O(OR)(OR)を備え、ここで、R及びRは、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有するアルキル基又はハロゲン化アルキル基から選択され、R及びRのうちの少なくとも一つは、1~6個の炭素原子を有するフルオロアルキル基から選択され、且つR及びRは、任意に、それらが連結する原子とともに5~7員環を形成する。
【0116】
いくつかの実施例において、前記フルオロカーボネートの実例は、フルオロエチレンカーボネート、シス-4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、トランス-4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、炭酸トリフルオロメチルメチル、炭酸トリフルオロエチルメチル及び炭酸エチルトリフルオロエチルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0117】
いくつかの実施例において、前記添加剤は、炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネートの一種または多種を含む。前記炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネートの実例は、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、1,2-ジメチルビニレンカーボネート、1,2-ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-n-プロピル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1,1-ジビニルエチレンカーボネート、1,2-ジビニルエチレンカーボネート、1,1-ジメチル-2-メチレンエチレンカーボネート及び1,1-ジエチル-2-メチレンエチレンカーボネートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、前記炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネートは、入手しやすく、かつ更なる優れた効果を達成できるから、ビニレンカーボネートを含む。
【0118】
いくつかの実施例において、前記添加剤は、硫黄-酸素二重結合を含有する化合物の一種または多種を含む。前記硫黄-酸素二重結合を含有する化合物の実例は、環状硫酸エステル、鎖状硫酸エステル、鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状亜硫酸エステル及び環状亜硫酸エステルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0119】
前記環状硫酸エステルの実例は、1,2-エチレングリコール硫酸エステル、1,2-プロピレングリコール硫酸エステル、1,3-プロピレングリコール硫酸エステル、1,2-ブチレングリコール硫酸エステル、1,3-ブチレングリコール硫酸エステル、1,4-ブチレングリコール硫酸エステル、1,2-ペンチレングリコール硫酸エステル、1,3-ペンチレングリコール硫酸エステル、1,4-ペンチレングリコール硫酸エステル及び1,5-ペンチレングリコール硫酸エステルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0120】
前記鎖状硫酸エステルの実例は、硫酸ジメチル、硫酸エチルメチル及び硫酸ジエチルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0121】
前記鎖状スルホン酸エステルの実例は、フルオロスルホン酸メチル及びフルオロスルホン酸エチルなどのフルオロスルホン酸エステル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸メチル及び2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸エチルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0122】
前記環状スルホン酸エステルの実例は、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-メチル-1,3-プロパンスルトン、2-メチル-1,3-プロパンスルトン、3-メチル-1,3-プロパンスルトン、1-アクリル-1,3ースルトン、2-アクリル-1,3ースルトン、1-フルオロ-1-アクリル-1,3ースルトン、2-フルオロ-1-アクリル-1,3ースルトン、3-フルオロ-1-アクリル-1,3ースルトン、1-フルオロ-2-アクリル-1,3ースルトン、2-フルオロ-2-アクリル-1,3ースルトン、3-フルオロ-2-アクリル-1,3ースルトン、1-メチル-1-アクリル-1,3ースルトン、2-メチル-1-アクリル-1,3ースルトン、3-メチル-1-アクリル-1,3ースルトン、1-メチル-2-アクリル-1,3ースルトン、2-メチル-2-アクリル-1,3ースルトン、3-メチル-2-アクリル-1,3ースルトン、1,4-ブタンスルトン、1,5-ペンタンスルトン、メチレンメタンジスルホン酸エステル及びエチレンメタンジスルホン酸エステルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0123】
前記鎖状亜硫酸エステルの実例は、亜硫酸ジメチル、亜硫酸エチルメチル及び亜硫酸ジエチルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0124】
前記環状亜硫酸エステルの実例は、1,2-エチレングリコール亜硫酸エステル、1,2-プロピレングリコール亜硫酸エステル、1,3-プロピレングリコール亜硫酸エステル、1,2-ブチレングリコール亜硫酸エステル、1,3-ブチレングリコール亜硫酸エステル、1,4-ブチレングリコール亜硫酸エステル、1,2-ペンチレングリコール亜硫酸エステル、1,3-ペンチレングリコール亜硫酸エステル、1,4-ペンチレングリコール亜硫酸エステル及び1,5-ペンチレングリコール亜硫酸エステルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0125】
いくつかの実施例において、前記添加剤は、酸無水物の一種または多種を含む。前記酸無水物の実例は、環状リン酸無水物、カルボン酸無水物、ジスルホン酸無水物及びカルボン酸スルホン酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。前記環状リン酸無水物の実例は、トリメチルホスホン酸無水物、トリエチルホスホン酸無水物及びトリプロピルホスホン酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。前記カルボン酸無水物の実例は、コハク酸無水物、グルタル酸無水物及びマレイン酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。前記ジスルホン酸無水物の実例は、エタンジスルホン酸無水物及びプロパンジスルホン酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。前記カルボン酸スルホン酸無水物の実例は、スルホ安息香酸無水物、スルホプロピオン酸無水物及びスルホブタン酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0126】
いくつかの実施例において、前記添加剤は、フルオロカーボネートと炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネートとの組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フルオロカーボネートと硫黄-酸素二重結合を含有する化合物との組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フルオロカーボネートと2~4個のシアノ基を有する化合物との組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フルオロカーボネートと環状カルボン酸エステルとの組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フルオロカーボネートと環状リン酸無水物との組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フルオロカーボネートとカルボン酸無水物との組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フルオロカーボネートとスルホン酸無水物との組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フルオロカーボネートとカルボン酸スルホン酸無水物との組み合わせである。
【0127】
電解質は、特に限定されず、電解質としての公知の物質を任意に使用してもよい。リチウム二次電池の場合、通常、リチウム塩が用いられる。電解質の実例は、LiPF、LiBF、LiClO、LiAlF、LiSbF、LiTaF、LiWFなどの無機リチウム塩、LiWOFなどのタングステン酸リチウム類、HCOLi、CHCOLi、CHFCOLi、CHFCOLi、CFCOLi、CFCHCOLi、CFCFCOLi、CFCFCFCOLi、CFCFCFCFCOLiなどのカルボン酸リチウム塩類、FSOLi、CHSOLi、CHFSOLi、CHFSOLi、CFSOLi、CFCFSOLi、CFCFCFSOLi、CFCFCFCFSOLiなどのスルホン酸リチウム塩類、LiN(FCO)、LiN(FCO)(FSO)、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CFSO)(CSO)などのリチウムイミド塩類、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSOなどのリチウムメチラート塩類、リチウムビス(マロナト)ボレート、リチウムジフルオロ(マロナト)ボレートなどのリチウム(マロナト)ボレート塩類、リチウムトリス(マロナト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(マロナト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(マロナト)ホスフェートなどのリチウム(マロナト)ホスフェート塩類、及びLiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBFCF、LiBF、LiBF、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、 LiBF(CSOなどのフッ素含有有機リチウム塩類、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボラート、リチウムビス(オキサラト)ボレートなどのリチウムオキサラトホウ酸塩類、リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェートなどのリチウム(オキサラト)ホスフェート塩類などを含むが、これらに限定されない。
【0128】
いくつかの実施例において、電解質は、LiPF、LiSbF、LiTaF、FSOLi、CFSOLi、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiBFCF、LiBF、LiPF(CF、LiPF(C、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボラート、リチウムビス(オキサラト)ボレート又はリチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェートから選択される。それらは、電気化学装置の出力特性、高倍率充放電特性、高温保存特性及びサイクル特性などを改善させることに寄与する。
【0129】
電解質の含有量は、本発明の効果が損なわれない限り、特に限定されない。いくつかの実施例において、電解液におけるリチウムの総モル濃度は、0.3mol/L以上であり、0.4mol/Lを超え、或いは0.5mol/Lを超える。いくつかの実施例において、電解液におけるリチウムの総モル濃度は、3mol/L未満、2.5mol/L未満、或いは2.0mol/L以下である。いくつかの実施例において、電解液におけるリチウムの総モル濃度は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。電解質の濃度が範囲内にあると、荷電粒子としてのリチウムが少なすぎることはなく、そして、粘度を適切の範囲内にすることができるため、良好な電気伝導率を確保しやすい。
【0130】
二種以上の電解質を併用する場合、電解質は、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の塩を含む。いくつかの実施例において、電解質は、モノフルオロリン酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩を含む。いくつかの実施例において、電解質は、リチウム塩を含む。いくつかの実施例において、電解質の全重量に対して、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩の含有量は、0.01wt%を超え、或いは0.1wt%を超える。いくつかの実施例において、電解質の全重量に対して、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩の含有量は、20wt%未満、或いは10wt%未満である。いくつかの実施例において、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩の含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0131】
いくつかの実施例において、電解質は、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる一種以上の物質と、それ以外の一種以上の塩とを含む。それ以外の塩として、以上に例示されたリチウム塩が挙げられ、いくつかの実施例において、LiPF、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiBFCF、 LiBF、LiPF(CF、LiPF(Cである。いくつかの実施例において、それ以外の塩は、LiPFである。
【0132】
いくつかの実施例において、電解質の全重量に対するそれ以外の塩の含有量は、0.01wt%を超え、或いは0.1wt%を超える。いくつかの実施例において、電解質の全重量に対するそれ以外の塩の含有量は、20wt%未満、15wt%未満、或いは10wt%未満である。いくつかの実施例において、それ以外の塩の含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。上記含有量を有するそれ以外の塩は、電解液の電気伝導率と粘度とをバランスさせることに寄与する。
【0133】
電解液には、上記した溶媒、添加剤及び電解質塩に加えて、必要に応じて負極被膜形成剤、正極保護剤、過充電防止剤などの別の添加剤を含んでもよい。添加剤として、非水電解質二次電池に使用される一般的な添加剤を用いることができ、その実例は、ビニレンカーボネート、コハク酸無水物、ビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、2,4-ジフルオロアニソール、プロパンスルトン、プロペンスルトンなどを含むが、これらに限定されない。これらの添加剤は、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。なお、電解液におけるこれらの添加剤の含有量は、特に限定されず、この添加剤の種類によって適宜設定すればよい。いくつかの実施例において、電解液の全重量に対する添加剤の含有量は5wt%未満であり、0.01wt%~5wt%の範囲内にあり、或いは0.2wt%~5wt%の範囲内にある。
【0134】
III、負極
【0135】
負極は、負極集電体と、前記負極集電体の一つまたは二つの表面に設けられた負極活物質層とを備える。負極活物質層は負極活物質を含む。負極活物質層は、単層であってもよく、複層であってもよい。複層の負極活物質層における各層は、同一又は異なる負極活物質を含んでもよい。負極活物質は、リチウムイオンなどの金属イオンを可逆的に挿入及び脱離可能な任意のものである。いくつかの実施例において、充電中に負極へのリチウム金属の意図しない析出を防止するために、負極活物質の充電可能容量は、正極活物質の放電容量より大きい。
【0136】
負極活物質を保持する集電体としては、既知の集電体を任意に用いることができる。負極集電体の実例は、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼などの金属材料を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、負極集電体は銅である。
【0137】
負極集電体が金属材料である場合、負極集電体の形態は、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチングメタル、発泡メタルなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、負極集電体は金属薄膜である。いくつかの実施例において、負極集電体は銅箔である。いくつかの実施例において、負極集電体は、圧延法による圧延銅箔または電解法による電解銅箔である。
【0138】
いくつかの実施例において、負極集電体の厚さは、1μmを超え、或いは5μmを超える。いくつかの実施例において、負極集電体の厚さは、100μm未満、或いは50μm未満である。いくつかの実施例において、負極集電体の厚さが上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0139】
負極活物質は、特に限定されず、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出可能なものであればよい。負極活物質の実例は、天然黒鉛、人造黒鉛などの炭素材料、シリコン(Si)、スズ(Sn)などの金属、又はSi、Snなどの金属元素の酸化物などを含むが、これらに限定されない。負極活物質は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0140】
負極活物質層は、負極粘着剤をさらに含んでいてもよい。負極粘着剤は、負極活物質の粒子同士の粘着及び負極活物質と集電体との粘着を向上させる。負極粘着剤の種類は、特に限定されず、電解液または電極の製造中に用いる溶媒に対して安定な材料であればよい。いくつかの実施例において、負極粘着剤は樹脂粘着剤を含む。樹脂粘着剤の実例は、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂などを含むが、これらに限定されない。水系溶媒を用いて負極合剤用スラリーを調製する場合、負極粘着剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリプロピレン酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコールなどを含むが、これらに限定されない。
【0141】
負極は、負極活物質、樹脂粘着剤などを含む負極合剤用スラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥後、圧延して負極集電体の両面に負極活物質層を形成することにより製造することができる。
【0142】
IV、セパレータ
【0143】
正極と負極との間に、短絡を防止するために、通常、セパレータが設けられている。この場合、本発明の電解液は、通常、このセパレータに含浸させて用いる。
【0144】
セパレータの材料及び形状は、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に限定ない。前記セパレータは、本発明の電解液に対して安定な材料からなる樹脂、ガラス繊維、無機物などであってもよい。いくつかの実施例において、前記セパレータは、保液性が優れた多孔性シートまたは不織布状のものなどを含む。樹脂またはガラス繊維セパレータの材料の実例は、ポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルターなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、前記セパレータの材料はガラスフィルターである。いくつかの実施例において、前記ポリオレフィンは、ポリエチレンまたはポリプロピレンである。いくつかの実施例において、前記ポリオレフィンは、ポリプロピレンである。上記したセパレータの材料は、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。
【0145】
前記セパレータは、上記した材料を積層してなる材料であってもよく、その実例は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンをこの順に積層してなる三層セパレータなどを含むが、これらに限定されない。
【0146】
無機物の材料の実例は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などの酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物、硫酸塩(例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなど)を含むが、これらに限定されない。無機物の形態は、粒子状または繊維状を含むが、これらに限定されない。
【0147】
前記セパレータの形態は、フィルムの形態であつてもよく、その実例は、不織布、織布、微多孔性フィルムなどを含むが、これらに限定されない。フィルムの形態では、前記セパレータの孔径が0.01μm~1μmであり、厚さが5μm~50μmである。上記した独立のフィルム状のセパレータ以外に、以下のようなセパレータを用いることもできる。即ち、樹脂類の粘着剤を用いて、上記した無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/または負極の表面上に形成してなるセパレータを用いることができ、例えば、粘着剤としてフッ素樹脂を用いて、90%粒子径が1μm未満である酸化アルミニウムを、正極の両面に多孔層を形成させることにより形成されたセパレータを用いることができる。
【0148】
前記セパレータの厚さは、任意である。いくつかの実施例において、前記セパレータの厚さは、1μmを超え、5μmを超え、或いは8μmを超える。いくつかの実施例において、前記セパレータの厚さは、50μm未満、40μm未満、又は30μm未満である。いくつかの実施例において、前記セパレータの厚さは、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。前記セパレータの厚さが上記範囲内にあると、絶縁性及び機械的強度を確保しつつ電気化学装置のレート特性及びエネルギー密度を確保することができる。
【0149】
セパレータとして多孔性シートまたは不織布などの多孔質材料を用いる場合、セパレータの孔隙率は、任意である。いくつかの実施例において、前記セパレータの孔隙率は、20%を超え、35%を超え、或いは45%を超える。いくつかの実施例において、前記セパレータの孔隙率は、90%未満、85%未満、或いは75%未満である。いくつかの実施例において、前記セパレータの孔隙率は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。前記セパレータの孔隙率が上記範囲内にあると、絶縁性及び機械的強度を確保しつつ膜の抵抗を抑制することができ、電気化学装置は良好なレート特性を有するものとすることができる。
【0150】
前記セパレータの平均孔径も、任意である。いくつかの実施例において、前記セパレータの平均孔径は、0.5μm未満、又は0.2μm未満である。いくつかの実施例において、前記セパレータの平均孔径は、0.05μmを超える。いくつかの実施例において、前記セパレータの平均孔径は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。前記セパレータの平均孔径が上記範囲を超えると、短絡が発生しやすい。セパレータの平均孔径が上記範囲内にあると、短絡を防止しつつ膜の抵抗を抑制することができ、電気化学装置は良好なレート特性を有するものとすることができる。
【0151】
V、電気化学装置組立体
【0152】
電気化学装置組立体は、電極アセンプリー、集電構造、外装ケース、及び保護素子を含む。
【0153】
電極アセンプリー
【0154】
電極アセンプリーは、上記正極と負極とを、上記セパレータを介して積層してなる積層構造、及び、上記正極と負極とを、上記セパレータを介して渦巻き状で巻回してなる構造のうちの何れか一種を備えても良い。いくつかの実施例において、電極アセンプリーの質量が電池内容積に占める割合(電極アセンプリー占有率)は、40%を超え、或いは50%を超える。いくつかの実施例において、電極アセンプリー占有率は、90%未満、或いは80%未満である。いくつかの実施例において、電極アセンプリー占有率は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。電極アセンプリー占有率が上記範囲内にあると、電気化学装置の容量を確保しつつ内部圧力の上昇に伴う繰り返しの充放電特性及び高温保存などの特性の低下を抑制することができ、さらにガス放出弁の作動を防止することができる。
【0155】
集電構造
【0156】
集電構造は、特に限定されない。いくつかの実施例において、集電構造は、配線部分及び接合部分の抵抗を低減する構造である。電極アセンプリーが上記した積層構造である場合、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。電極面積が大きくなると、内部抵抗が大きくなるので、電極内に2つ以上の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極アセンプリーが上記した巻回構造である場合、正極及び負極にそれぞれ2つ以上のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0157】
外装ケース
【0158】
外装ケースの材質は、用いられる電解液に対して安定な物質であれば特に限定されない。外装ケースは、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金、マグネシウム合金などの金属類、或いは樹脂とアルミ箔との積層フィルムを用いるが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、外装ケースは、アルミニウムまたはアルミニウム合金の金属、或いは積層フィルムである。
【0159】
金属類の外装ケースは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着してなる封止密閉構造、或いは樹脂製ガスケットを介して上記した金属類を用いてなるリベット構造を含むが、これらに限定されない。上記した積層フィルムを用いた外装ケースは、樹脂層同士を熱融着してなる封止密閉構造などを含むが、これらに限定されない。シール性を上げるために、上記した樹脂層の間に積層フィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属は樹脂と接合するので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂または極性基を導入した変性樹脂が用いられる。また、外装ケースの形状も、任意であり、例えば、円筒形、角形、ラミネート型、ボタン型、大型などのうちの何れか一種であってもよい。
【0160】
保護素子
【0161】
保護素子として、異常発熱または非常に大きな電流が流れた時に抵抗が増大する正温度係数(PTC)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池の内部圧力または内部温度を急激に上昇させることにより電気回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)などが用いられる。上記した保護素子は、高電流の通常の使用に作動しない素子を選択してもよく、保護素子がなくても異常発熱または熱暴走を発生することがないように設計してもよい。
【0162】
VI、応用
【0163】
本発明の電気化学装置は、電気化学反応が生じる任意の装置を含み、その具体的な実例は、すべての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはキャパシタを含む。特に、その電気化学装置が、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウム重合体二次電池又はリチウムイオン重合体二次電池を含むリチウム二次電池である。
【0164】
本発明は、本発明による電気化学装置を含む電子装置をさらに提供する。
【0165】
本発明の電気化学装置の用途は、特に限定されず、既存技術で既知の任意の電子装置に用いることが可能である。いくつかの実施例において、本発明の電気化学装置は、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用大型蓄電池及びリチウムイオンキャパシタなどに利用されるが、これらに限定されない。
【0166】
以下では、リチウムイオン電池を例として、具体的な実施例を参照しながらリチウムイオン電池の調製を説明し、当業者は、本発明に記載された調製方法は例示であるに過ぎず、他の任意の適切な調製方法はいずれも本発明の範囲内にあることを理解すべきである。
【0167】
実施例
【0168】
以下では、本発明のリチウムイオン電池の実施例及び比較例により、本発明のリチウムイオン電池を説明して性能評価を行う。
【0169】
一、リチウムイオン電池の調製
【0170】
1、負極の調製
【0171】
人造黒鉛、スチレン-ブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを質量比96%:2%:2%で脱イオン水と混合し、均一に撹拌して、負極用スラリーを得た。この負極用スラリーを12μmの銅箔に塗布した。乾燥し、冷間圧延して、打ち抜き、タブを溶接して、負極を得た。
【0172】
2、正極の調製
【0173】
正極活物質、導電材(Super-P)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比95%:2%:3%でN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、次に助剤を加え、均一に撹拌して、正極用スラリーを得た。この正極用スラリーを12μmのアルミ箔に塗布し、乾燥し、冷間圧延して、打ち抜き、タブを溶接して、正極を得た。
【0174】
実施例又は比較例に用いられた正極活物質は市販品であり、具体的には以下の表に示す通りである。
【0175】
【0176】
実施例又は比較例に用いられた助剤を以下の表に示す。
【0177】
【0178】
3、電解液の調製
【0179】
乾燥アルゴンガス雰囲気で、EC、PC、PP及びDEC(重量比1:1:1:1)を混合し、LiPFを入れ、均一に混合して、基礎電解液を形成した。ここで、LiPFの濃度が1.15mol/Lである。基礎電解液に含有量が異なる添加剤を加えることにより、実施例及び比較例の異なる電解液を得た。
【0180】
実施例に用いられた電解液の成分を以下の表に示す。
【0181】
【0182】
4、セパレータの調製
【0183】
ポリエチレン(PE)多孔重合体フィルムをセパレータとした。
【0184】
5、リチウムイオン電池の調製
【0185】
得られた正極、セパレータ及び負極を順番に巻いて外装箔に入れ、注液口を残す。注液口から電解液を注入し、封止して、フォーメーション、容量測定などの工程を経て、リチウムイオン電池を得た。
【0186】
二、測定方法
【0187】
1、非水溶媒に対する正極活物質層の接触角の測定方法
【0188】
正極活物質層の表面にジエチルカーボネート3μlを滴下し、100秒以内にJC2000D3E型接触角計を用いて測定し、5点フィッティング法(即ち、まず液滴の左右平面の2点を取り、液固界面を決定し、次に液滴の円弧上で3点を取る)でフィッティングして非水溶媒に対する正極活物質層の接触角を得る。各サンプルを少なくとも3回測定し、少なくとも3つの差値が5°より小さいデータを選択し、平均値をとり、非水溶媒に対する正極活物質層の接触角を得る。
【0189】
2、正極活物質層の反応面積(Y)の測定方法
【0190】
表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、窒素流通下で、350℃でサンプルを15分間予備乾燥した後、大気圧に対する窒素ガスの相対圧の値が0.3に正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって正極活物質層の比表面積(m/mg)を測定した。正極活物質層の反応面積(Y)は、下記式により算出した。
【0191】
【数2】
【0192】
3、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率の測定方法
【0193】
45℃で、リチウムイオン電池を、1Cにて4.45Vまで定電流充電して、そして、4.45Vにて0.05Cまで定電圧充電し、次に1Cにて3.0Vまで定電流放電して、上記操作を初回サイクルとした。上記した条件でリチウムイオン電池に対して200サイクルを行った。「1C」とは、リチウムイオン電池容量を1時間内で完全放電させる電流の値である。リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率は、下記式により算出した。
【0194】
【数3】
【0195】
4、リチウムイオン電池のレート特性の測定方法
【0196】
25℃で、リチウムイオン電池を0.2Cにて3.0Vまで放電し、5分間静置した。その後、リチウムイオン電池を0.5Cにて4.45Vまで充電し、4.45Vにて0.05Cまで定電圧充電し、5分間静置した。放電レートを調整し、それぞれ、0.2C及び1.5Cにて放電測定を行って放電容量を得、1.5Cレートで得られた容量と0.2Cで得られた容量との比をレート百分率とした。
【0197】
5、リチウムイオン電池の直流阻抗(DCR)の測定方法
【0198】
25℃で、リチウムイオン電池を、1.5Cにて4.45Vまで定電流充電し、さらに4.45Vにて0.05Cまで定電圧充電し、30分間静置した。その後、0.1Cにて10秒間放電し、電圧値をU1として記録した。その後、1Cにて360秒間放電し、電圧値をU2)として記録した。「1C」とは、電池容量を1時間内で完全放電させる電流の値であった。リチウムイオン電池の直流阻抗は、下記式により算出した。
【0199】
【数4】
【0200】
特に断らない限り、本発明の前記直流阻抗とは、リチウムイオン電池の50%充電状態(SOC)における値を意味する。
【0201】
三、測定結果
【0202】
表1に、各実施例及び比較例における非水溶媒に対する正極活物質層の接触角、及び正極活物質層における助剤がリチウムイオン電池の性能に与える影響を示す。表1に示す各実施例及び比較例において、正極活物質は材料1であり、電解液は式1aで示される化合物0.2wt%を含有していた。
【0203】
【表1】
【0204】
結果から、助剤及びその含有量は、非水溶媒に対する正極活物質層の接触角に影響を及ぼすことがわかった。特定の添加剤は正極活物質のスラリーにおける各成分同士の相互作用を増加させることができ、スラリーの分布をより均一にして、それによって非水溶媒に対する正極活物質層の接触角を低下させる。非水溶媒に対する正極活物質層の接触角が45°以下であると、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びレート百分率を著しく向上させることができ、かつリチウムイオン電池の直流抵抗を著しく低下させることができる。非水溶媒に対する正極活物質層の接触角が45°以下であることに加えて、助剤の含有量を3000ppm以下に制御することで、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びレート百分率を更に向上させ、且つリチウムイオン電池の直流抵抗を更に低下させることができる。
【0205】
表2は、正極活物質がリチウムイオン電池の性能に与える影響を示す。実施例11~15は、表2にリストされている正極活物質のみが実施例3と異なる。
【0206】
【表2】
【0207】
結果から分かるように、正極活物質はメジアン径が異なるリチウム含有遷移金属酸化物を含むと、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びレート百分率を更に向上させるとともに、直流抵抗を更に低減させることができる。リチウム含有遷移金属酸化物は、Mgと、Ti、Zr、Ge、Nb、Al及びSnから選択される少なくとも一種の金属元素とを含むと、リチウムイオン電池のサイクル特性、レート特性及び直流抵抗の改善が特に顕著である。
【0208】
表3は、電解液における式1aで示される化合物の含有量がリチウムイオン電池の性能に与える影響を示す。実施例16~22は、表3にリストされているパラメータのみが実施例3と異なる。
【0209】
【表3】
【0210】
結果から分かるように、電解液における式1aで示される化合物の含有量が0.001wt%~2wt%の範囲内であると、リチウムイオン電池のサイクル特性、レート特性及び直流抵抗を更に顕著に改善させることができる。式1b及び式1cは、炭素鎖の長さのみが式1aと異なり、式1aとほぼ同等の効果を達成することができる。
【0211】
表4に、式1で示される化合物の重量と正極活物質層の反応面積との関係がリチウムイオン電池の性能に与える影響を示す。実施例23~26は、表4にリストされているパラメータのみが実施例3と異なる。
【0212】
【表4】
【0213】
結果から分かるように、電解液における式1で示される化合物の含有量X mg及び正極活物質層の反応面積Y mは、10≦X/Y≦100を満たすと、リチウムイオン電池のサイクル特性、レート特性及び直流抵抗を更に向上させることに寄与する。
【0214】
表5は、電解液における添加剤がリチウムイオン電池の性能に与える影響を示す。実施例27~34は、表5にリストされているパラメータのみが実施例3と異なる。
【0215】
【表5】
【0216】
結果から分かるように、電解液が添加剤をさらに含むと、リチウムイオン電池のサイクル特性、レート特性及び直流抵抗を更に改善させることに寄与する。
【0217】
明細書全体では、「実施例」、「実施例の一部」、「一つの実施例」、「別の一例」、「例」、「具体例」または「例の一部」による引用は、本発明の少なくとも一つの実施例または例は、当該実施例または例に記載した特定の特徴、構造、材料または特性を含むことを意味する。したがって、明細書全体の各箇所に記載された、例えば「いくつかの実施例において」、「実施例において」、「一つの実施例において」、「別の例において」、「一つの例において」、「特定の例において」または「例」は、必ずしも本発明における同じ実施例または例を引用するわけではない。また、本明細書の特定の特徴、構造、材料、または特性は、一つまたは複数の実施例または例において、いかなる好適な方法で組み合わせることができる。
【0218】
例示的な実施例が開示および説明されているが、当業者は、上述実施例が本発明を限定するものとして解釈されないこと、且つ、本発明の技術思想、原理、および範囲から逸脱しない場合に実施例への改変、置換および変更が可能であること、を理解すべきである。