(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】勾配ドープされたコバルトフリー正極材料、その調製方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20231017BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231017BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2022521171
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 CN2020137039
(87)【国際公開番号】W WO2022011967
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】202010677210.X
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522354388
【氏名又は名称】蜂巣能源科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】喬 斉斉
(72)【発明者】
【氏名】江 衛軍
(72)【発明者】
【氏名】孫 明珠
(72)【発明者】
【氏名】許 ▲金▼培
(72)【発明者】
【氏名】施 澤濤
(72)【発明者】
【氏名】馬 加力
(72)【発明者】
【氏名】陳 思賢
(72)【発明者】
【氏名】王 鵬飛
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-139583(JP,A)
【文献】特表2019-508869(JP,A)
【文献】特開2020-072057(JP,A)
【文献】特開2017-098196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
C01G 53/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配ドープされたコバルトフリー正極材料であって、組成は、一般式LiNi
xMn
yA
zO
2で表され、0.55≦x≦0.95で、0.05≦y≦0.45で、0.005≦z≦0.02であり、前記正極材料の表層から中心への方向に沿って、前記正極材料内の元素Aの含有量は逓減傾向となり、
元素Aは
、Zr、Ti、BおよびWのうちの1種または複数種であ
り、
前記正極材料の総重量を基準として、前記正極材料の表層における前記元素Aの含有量は0.2~2重量%であり、前記正極材料の中心における前記元素Aの含有量は0.05~0.2重量%であり、
前記正極材料の総重量を基準として、前記元素AはZrである場合、Zrの総含有量は0.1~2重量%で、前記元素AはTiである場合、Tiの総含有量は0.1~2重量%で、前記元素AはBである場合、Bの総含有量は0.1~1.5重量%で、前記元素AはWである場合、Wの総含有量は0.1~2重量%である、勾配ドープされたコバルトフリー正極材料。
【請求項2】
前記正極材料の総重量を基準として、前記正極材料の表層における前記元素Aの含有量は0.2~1重量%であり、前記正極材料の中心における前記元素Aの含有量は0.05~0.1重量%である、請求項
1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記正極材料の総重量を基準として、
前記元素AはZrである場合、Zrの総含有量は0.5~1重量%で、
前記元素AはTiである場合、Tiの総含有量は0.5~0.8重量%で、
前記元素AはBである場合、Bの総含有量は0.5~1重量%で、
前記元素AはWである場合、Wの総含有量は0.5~1.5重量%である、請求項
1に記載の正極材料。
【請求項4】
前記正極材料は単結晶材料である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の正極材料。
【請求項5】
前記正極材料の平均粒径は1~5μmである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の正極材料。
【請求項6】
前記正極材料の平均粒径は3~4μmである、請求項
5に記載の正極材料。
【請求項7】
(1)リチウム塩と、前駆体と、第1添加剤とを第1混合させてから第1焼成処理を行い、第1材料を取得することと、
(2)前記第1材料と第2添加剤とを第2混合させてから第2焼成処理を行い、第2材料を取得することと、
(3)前記第2材料を粉砕して篩分け処理を行い、勾配ドープされたコバルトフリー正極材料を取得することと、
を含む勾配ドープされたコバルトフリー正極材料の調製方法であって、
前記前駆体の式はNi
x1Mn
y1(OH)
2であり、0.55≦x1≦0.95で、0.05≦y1≦0.45であり、
前記第1添加剤と前記第2添加剤とは同じであり、それぞれZrO
2、Al
2O
3、TiO
2、Zr(OH)
4、Al(OH)
3、H
3BO
3およびWO
3から選ばれる1種または複数種である、調製方法。
【請求項8】
ステップ(1)において、前記リチウム塩と前駆体と第1添加剤との重量比は1:(2~2.2):(0.003~0.03)である、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(2)において、前記第1材料と前記第2添加剤との重量比は1:(0.004~0.06)である、請求項
7または
8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1添加剤と前記第2添加剤との重量比は1:(2~4)である、請求項
7~
9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン電池の技術分野に関し、例えば、勾配ドープされたコバルトフリー正極材料、その調製方法、リチウムイオン電池の正極およびリチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
コバルトフリー正極材料LiNixMn1-xO2は、コストが低く、サイクル性能が高い等の利点を有する。その構造安定性を更に向上させるために、ドープする必要がある。
【0003】
CN106654222Aは、高ニッケル正極材料、その調製方法およびリチウムイオン電池を開示し、該方法は、高ニッケル正極材料の前駆体に非金属ドーパントを加え、リチウム源を加えて焼結した後、非金属元素がドープされた高ニッケル正極材料を取得することを含む。該方法は、ドープ元素を材料内に均一に分布させることができる。
【0004】
現在、勾配ドープは一定の技術的優位性を有し、材料のバルク相構造を安定させることができるとともに、材料の表面を修飾することもできる。通常、勾配ドープは主に前駆体内でドープし、前駆体の合成過程において、ドーパントの添加量を制御することにより、ドープ元素の勾配ドープを形成する。
【0005】
しかし、勾配ドープされた前駆体とリチウム塩とを混合してから高温処理を行う時、前駆体に形成された勾配元素は均一に分布する傾向となりやすく、勾配ドープするという目的を達成できず、また、このような方法は、焼成条件に対する要求が非常に厳しくなる。
【0006】
そのため、勾配ドープされたコバルトフリー正極材料の研究開発は、重要な意義を持つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下は、本文について詳細に説明する主題の概要である。本概要は、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0008】
本開示は、勾配ドープされたコバルトフリー正極材料、その調製方法、リチウムイオン電池の正極およびリチウム電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施例において、
その組成は、一般式LiNixMnyAzO2で表され、0.55≦x≦0.95で、0.05≦y≦0.45で、0.005≦z≦0.02であり、前記正極材料の表層から中心への方向に沿って、前記正極材料内の元素Aの含有量は逓減傾向となり、
元素Aは、Zr、Ti、BおよびWのうちの1種または複数種であり、
前記正極材料の総重量を基準として、前記正極材料の表層における前記元素Aの含有量は0.2~2重量%で、例えば、0.2重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.7重量%、0.9重量%、1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.5重量%、1.7重量%、または2重量%等であり、前記正極材料の中心における前記元素Aの含有量は0.05~0.2重量%で、例えば、0.05重量%、0.08重量%、0.1重量%、0.12重量%、0.14重量%、0.15重量%、0.17重量%、0.18重量%、または0.2重量%等であり、
前記正極材料の総重量を基準として、前記元素AはZrである場合、Zrの総含有量は0.1~2重量%で、前記元素AはTiである場合、Tiの総含有量は0.1~2重量%で、前記元素AはBである場合、Bの総含有量は0.1~1.5重量%で、前記元素AはWである場合、Wの総含有量は0.1~2重量%であり、
前記正極材料の総重量を基準として、前記元素AはZrである場合、Zrの総含有量は0.1~2重量%で、例えば、0.1重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.7重量%、0.8重量%、1重量%、1.2重量%、1.5重量%、1.8重量%、または2重量%等であり、前記元素AはTiである場合、Tiの総含有量は0.1~2重量%で、例えば、0.1重量%、0.2重量%、0.4重量%、0.6重量%、0.8重量%、1重量%、1.3重量%、1.6重量%、1.8重量%、または2重量%等であり、前記元素AはBである場合、Bの総含有量は0.1~1.5重量%で、例えば、0.1重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.6重量%、0.7重量%、1重量%、1.2重量%、または1.5重量%等であり、前記元素AはWである場合、Wの総含有量は0.1~2重量%で、例えば、0.2重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.7重量%、0.9重量%、1.2重量%、1.5重量%、1.8重量%、または2重量%等である勾配ドープされたコバルトフリー正極材料を提供する。
【0010】
一実施例において、xは、例えば、0.55、0.60、0.65、0.70、0.72、0.75、0.80、0.85、0.90、0.93、または0.95等である。
【0011】
一実施例において、yは、例えば、0.05、0.08、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、または0.45等である。
【0012】
一実施例において、zは、例えば、0.005、0.008、0.01、0.012、0.015、0.017、または0.02等である。
【0013】
一実施例において、前記正極材料における前記元素Aの含有量は重量含有量である。
【0014】
本開示に係る一実施例において、勾配ドープされたコバルトフリー正極材料は、従来技術に存在するドープ元素が均一に分布する傾向となるという欠陥問題、および調製過程で焼成条件に対する要求が厳しいという問題を克服することができる。且つ、該コバルトフリー正極材料は良好なサイクル性能を有する。
【0016】
一実施例において、前記正極材料の総重量を基準として、前記正極材料の表層における前記元素Aの含有量は0.2~1重量%であり、前記正極材料の中心における前記元素Aの含有量は0.05~0.1重量%である。
【0018】
一実施例において、前記正極材料の総重量を基準として、前記元素AはZrである場合、Zrの総含有量は0.5~1重量%で、前記元素AはTiである場合、Tiの総含有量は0.5~0.8重量%で、前記元素AはBである場合、Bの総含有量は0.5~1重量%で、前記元素AはWである場合、Wの総含有量は0.5~1.5重量%である。
【0019】
一実施例において、前記正極材料は単結晶材料である。
【0020】
一実施例において、前記正極材料の平均粒径は1~5μmで、例えば、1μm、2μm、2.5μm、3μm、3.5μm、4μm、または5μm等である。
【0021】
一実施例において、前記正極材料の平均粒径は3~4μmである。
【0022】
本開示の一実施例において、
(1)リチウム塩と、前駆体と、第1添加剤とを第1混合させてから第1焼成処理を行い、第1材料を取得することと、
(2)前記第1材料と第2添加剤とを第2混合させてから第2焼成処理を行い、第2材料を取得することと、
(3)前記第2材料を粉砕して篩分け処理を行い、勾配ドープされたコバルトフリー正極材料を取得することと、
を含む勾配ドープされたコバルトフリー正極材料の調製方法であって、
前記前駆体の式はNix1Mny1(OH)2であり、0.55≦x1≦0.95で、例えば、0.55、0.60、0.65、0.70、0.72、0.75、0.80、0.85、0.90、0.93、または0.95等であり、0.05≦y1≦0.45で、例えば、0.05、0.08、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、または0.45等であり、
前記第1添加剤と前記第2添加剤とは同じであり、それぞれZrO2、Al2O3、TiO2、Zr(OH)4、Al(OH)3、H3BO3およびWO3から選ばれる1種または複数種である調製方法を提供する。
【0023】
本開示に係る一実施例において、勾配ドープされたコバルトフリー正極材料の調製方法は、
(1)2ステップ法でドープし、勾配ドープされたコバルトフリー正極材料を形成することができるという利点と、
(2)勾配ドープされたコバルトフリー正極材料は良好なサイクル性能を有するという利点と、
(3)調製方法は、従来の勾配ドープに対して簡単で実施しやすく、焼成条件に対する要求が簡単であり、大規模に適用できるという利点と、
を有する。
【0024】
一実施例において、ステップ(1)において、前記リチウム塩と前駆体と第1添加剤との重量比は1:(2~2.2):(0.003~0.03)で、例えば、1:2:0.005、1:2:0.01、1:2:0.015、1:2:0.02、1:2:0.025、1:2:0.03、1:2.1:0.005、1:2.15:0.01、1:2.15:0.015、1:2.1:0.02、1:2.1:0.025、1:2.1:0.03、1:2.2:0.005、1:2.2:0.01、1:2.2:0.015、1:2.2:0.02、1:2.2:0.025、または1:2.2:0.03等である。
【0025】
一実施例において、ステップ(2)において、前記第1材料と前記第2添加剤との重量比は1:(0.004~0.06)で、例えば、1:0.004、1:0.008、1:0.01、1:0.015、1:0.02、1:0.025、1:0.03、1:0.04、1:0.05、または1:0.06等である。
【0026】
一実施例において、前記第1添加剤と前記第2添加剤との重量比は1:(2~4)で、例えば、1:2、1:2.5:2、1:3、1:3.5、または1:4等である。
【0027】
一実施例において、ステップ(1)において、前記第1混合の条件は、100Lの機器の撹拌回転数が800~900rpmで、例えば、800rpm、850rpm、880rpm、または900rpm等であることと、時間が10~20minで、例えば、10min、15min、または20min等であることとを含む。
【0028】
一実施例において、前記第1焼成の条件は、温度が500~600℃で、例えば、500℃、525℃、550℃、または600℃等であることと、昇温速度が1~5℃/minで、例えば、1℃/min、2℃/min、3℃/min、または5℃/min等であることと、時間が4~6hで、例えば、4h、5h、または6h等であることとを含む。
【0029】
一実施例において、ステップ(2)において、前記第2混合の条件は、100Lの機器の撹拌回転数が900~1000rpmで、例えば、900rpm、950rpm、または1000rpm等であることと、撹拌時間が5~15minで、例えば、5min、10min、または15min等であることとを含む。
【0030】
一実施例において、前記第2焼成の条件は、温度が900~1000℃で、例えば、900℃、930℃、960℃、または1000℃等であることと、昇温速度が1~5℃/minで、例えば、1℃/min、2℃/min、4℃/min、または5℃/min等であることと、時間が10~20hで、例えば、10h、12h、15h、または20h等であることとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図面は、本開示の技術案に対する更なる理解を提供するためのものであり、明細書の一部を構成し、本開示の実施例と共に本開示の実施例の技術案を解釈するために用いられ、本開示の技術案を限定するものではない。
【0035】
【
図1】本開示の一実施例の元素Aがドープされていないコバルトフリー正極材料のSEM電子顕微鏡写真(1000倍)である。
【
図2】本開示の一実施例の元素Aがドープされていないコバルトフリー正極材料のSEM電子顕微鏡写真(5000倍)である。
【
図3】本開示の一実施例の元素Aが勾配ドープされたコバルトフリー正極材料のSEM電子顕微鏡写真(1000倍)である。
【
図4】本開示の一実施例の元素Aが勾配ドープされたコバルトフリー正極材料のSEM電子顕微鏡写真(5000倍)である。
【
図5】本開示の一実施例の元素Aがドープされていないコバルトフリー正極材料のEDS図である。
【
図6】本開示の一実施例の元素Aが勾配ドープされたコバルトフリー正極材料のEDS図である。
【
図7】本開示の一実施例の元素Aがドープされていないコバルトフリー正極材料および元素Aが勾配ドープされたコバルトフリー正極材料のサイクル性能のグラフである。
【符号の説明】
【0036】
a:「ドープ前」とは、「元素Aがドープされていないコバルトフリー正極材料」を意味する。
b:「勾配ドープ後」とは、「元素Aが勾配ドープされたコバルトフリー正極材料」を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示の一実施例において、勾配ドープされたコバルトフリー正極材料を提供し、ここで、前記正極材料の組成は、一般式LiNixMnyAzO2で表され、0.55≦x≦0.95で、0.05≦y≦0.45で、0.005≦z≦0.02であり、ここで、前記正極材料の表層から中心への方向に沿って、前記正極材料内の元素Aの含有量は逓減傾向となる。
【0038】
ここで、元素Aは、Al、Zr、Ti、BおよびWのうちの1種または複数種である。
【0039】
本開示において、「正極材料」は、いずれも「コバルトフリー正極材料」を指す。
【0040】
本開示の発明者は実験により、関連技術において、前駆体の合成過程でドーパントの添加量を制御することにより、前駆体において勾配ドープされたドープ元素を形成することを見出した。しかし、勾配元素がドープされた前駆体とリチウム塩とを混合して高温焼成処理を行う時、高温拡散作用により、前駆体において形成された勾配元素は、均一に分布する傾向となりやすく、勾配ドープするという目的を達成できず、且つ、高温焼成の条件は厳しい。一方、本開示に係る一実施例において、発明者は、2ステップ法のドーパントを用い、ドーパントの割合を制御するおよび焼成条件を制御することにより、勾配ドープされたコバルトフリー正極材料を形成することができ、且つ、該正極材料は良好なサイクル性能を有し、該調製方法は簡単で実施しやすい。
【0041】
また、本開示の一実施例に係る正極材料はコバルトフリー正極材料であり、コバルトフリー正極材料は構造が安定し、コバルト元素に対する依存を除去し、コストはコバルト材料を含むものよりも低い。
【0042】
本開示において、前記コバルトフリー正極材料は、単結晶材料に属し、且つ、電子顕微鏡写真から、本開示におけるコバルトフリー正極材料がコバルトフリー単結晶層状正極材料であることを確定できる。
【0043】
なお、前記正極材料における前記元素Aの含有量は逓減傾向となり、ここで、「逓減」は勾配逓減である。
【0044】
一実施例において、0.546≦x≦0.89であり、例えば、xは、0.546、0.739、0.744、0.75、0.89およびこれらの値のいずれか2つで構成される範囲内の任意の値であってもよい。
【0045】
一実施例において、0.099≦y≦0.447であり、例えば、yは、0.099、0.246、0.248、0.25、0.447およびこれらの値のいずれか2つで構成される範囲内の任意の値であってもよい。
【0046】
一実施例において、0.0067≦z≦0.015であり、例えば、z0.0067、0.008、0.01、0.015およびこれらの値のいずれか2つで構成される範囲内の任意の値であってもよい。
【0047】
一実施例において、xは0.75で、yは0.25で、zは0.01である。
【0048】
一実施例において、0.9997≦x+y+z≦1.01であり、x+y+zの値は、1.01、0.9997、0.999および1である。
【0049】
一実施例において、x+y+zの値は1である。
【0050】
一実施例において、前記元素Aは、Al、ZrおよびTiのうちの1種または複数種である。
【0051】
一実施例において、前記元素AはAlである。
【0052】
本開示の一実施例に係る勾配ドープされたコバルトフリー正極材料において、ドープした前記元素Aの含有量が多すぎると、材料容量は低下するため、前記正極材料の表層は、ドープした前記元素Aが多い材料であり、中心に向かって中心に至るまで、ドープした前記元素Aの含有量は勾配減少する。
【0053】
一実施例において、前記正極材料の総重量を基準として、前記正極材料の表層における前記元素Aの含有量は0.2~2重量%であり、前記正極材料の中心における前記元素Aの含有量は0.05~0.2重量%である。ドープした前記元素Aの含有量を該範囲内に限定することにより、コバルトフリー正極材料が高い容量を有することを確保するとともに、良好な安定性も有する。
【0054】
一実施例において、前記正極材料の総重量を基準として、前記正極材料の表層における前記元素Aの含有量は0.2~1重量%であり、前記正極材料の中心における前記元素Aの含有量は0.05~0.1重量%である。
【0055】
本開示に係る一実施例において、前記正極材料内に元素Aをドープすると、ドープ元素は、焼結過程において濃度勾配の形式で前記正極材料のバルク相に徐々に浸透し、このような元素ドープは、前記正極材料内のLi/Niの混合配列の程度を効果的に低減でき、また、元素ドープは材料の格子の安定性を向上させることができる。
【0056】
一実施例において、前記正極材料の総重量を基準として、Alの総含有量は0.1~1重量%で、Zrの総含有量は0.1~2重量%で、Tiの総含有量は0.1~2重量%で、Bの総含有量は0.1~1.5重量%で、Wの総含有量は0.1~2重量%である。
【0057】
一実施例において、前記正極材料の総重量を基準として、Alの総含有量は0.5~1.0重量%で、Zrの総含有量は0.5~1.0重量%で、Tiの総含有量は0.5~0.8重量%で、Bの総含有量は0.1~0.5重量%で、Wの総含有量は0.5~1.5重量%である。
【0058】
一実施例において、正極材料において、元素AはAl、Zr、Ti、B、またはWのうちの1種または複数種である。
【0059】
一実施例において、元素AはAlであり、元素Aの含有量は0.5~1.0重量%である。
【0060】
一実施例において、元素AはZrであり、元素Aの含有量は0.5~1.0重量%である。
【0061】
一実施例において、元素AはTiであり、元素Aの含有量は0.5~0.8重量%である。
【0062】
一実施例において、元素AはBであり、元素Aの含有量は0.1~0.5重量%である。
【0063】
一実施例において、元素AはWであり、元素Aの含有量は0.5~1.5重量%である。
【0064】
一実施例において、元素AはAl、Zr、Ti、B、またはWのうちの複数種であり、元素Aの総含有量(即ち、複数種の元素の総含有量)は0.5~1.5重量%である。例えば、正極材料において、元素Aは、AlとZrとBとの組み合わせであり、元素Aの総含有量(即ち、AlとZrとBとの総含有量)は0.1~1.5重量%で、例えば、0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.8重量%、1重量%、1.2重量%、または1.5重量%等である。
【0065】
ドープ元素の含有量は上記範囲内に限定され、このように、コバルトフリー正極材料が高い容量を有することを確保するとともに、良好なサイクル寿命も有する。
【0066】
一実施例において、前記正極材料は単結晶材料である。
【0067】
一実施例において、前記正極材料の平均粒径は1~5μmである。
【0068】
一実施例において、前記正極材料の平均粒径は3~4μmである。
【0069】
本開示において、「平均粒径」は前記正極材料のD50を指す。
【0070】
一実施例において、「平均粒径」はレーザー粒度分析計を用いて測定される。
【0071】
本開示の一実施例において、勾配ドープされたコバルトフリー正極材料の調製方法を提供し、前記方法は以下のステップを含む。
【0072】
(1)リチウム塩と、前駆体と、第1添加剤とを第1混合させてから第1焼成処理を行い、第1材料を取得する。
【0073】
(2)前記第1材料と第2添加剤とを第2混合させてから第2焼成処理を行い、第2材料を取得する。
【0074】
(3)前記第2材料を粉砕して篩分け処理を行い、勾配ドープされたコバルトフリー正極材料を取得する。
【0075】
ここで、前記前駆体の式はNix1Mny1(OH)2であり、0.55≦x1≦0.95で、0.05≦y1≦0.45である。
【0076】
ここで、前記第1添加剤と前記第2添加剤とは同じであり、それぞれZrO2、Al2O3、TiO2、Zr(OH)4、Al(OH)3、H3BO3およびWO3から選ばれる1種または複数種である。
【0077】
一実施例において、ステップ(1)で、前記リチウム塩と前駆体と第1添加剤との重量比は1:(2~2.2):(0.003~0.03)であり、前記リチウム塩と前駆体と第1添加剤との重量比は1:(2~2.1):(0.003~0.01)である。本開示の発明者は実験により、前駆体の使用量が多すぎると、容量は低くなり、サイクルは悪くなり、前駆体の使用量が少なすぎると、結晶中に不純物が出現しやすく、添加剤の使用量が多すぎると、容量は低下し、添加剤の使用量が少なすぎると、サイクル性能は悪くなることを見出した。
【0078】
一実施例において、ステップ(2)で、前記第1材料と前記第2添加剤との重量比は1:(0.004~0.06)であり、前記第1材料と前記第2添加剤との重量比は1:(0.006~0.03)である。
【0079】
一実施例において、前記第1添加剤と前記第2添加剤との重量比は1:(2~4)であり、前記第1添加剤と前記第2添加剤との重量比は1:(2~3)である。
【0080】
一実施例において、ステップ(1)で、前記第1混合の条件は、100Lの機器の撹拌回転数が800~900rpmで、撹拌時間が10~20minであることを含む。
【0081】
一実施例において、撹拌回転数は850~900rpmであり、撹拌時間は15~20minである。
【0082】
一実施例において、前記第1焼成の条件は、温度が500~600℃で、昇温速度が1~5℃/minで、時間が4~6hであることを含む。
【0083】
一実施例において、温度は500~550℃であり、昇温速度は1~3℃/minであり、時間は4~5hである。
【0084】
一実施例において、ステップ(2)で、前記第2混合の条件は、100Lの機器の撹拌回転数が900~1000rpmで、撹拌時間が5~15minであることを含む。
【0085】
一実施例において、撹拌回転数は950~1000rpmであり、撹拌時間は10~15minである。
【0086】
一実施例において、前記第2焼成の条件は、温度が900~1000℃で、昇温速度が1~5℃/minで、時間が10~20hであることを含む。
【0087】
一実施例において、温度は950~1000℃であり、昇温速度は3~5℃/minであり、時間は10~15hである。
【0088】
本開示の一実施例において、上述した方法で作製されたコバルトフリー正極材料を提供する。
【0089】
本開示の一実施例において、上述したコバルトフリー正極材料を含むリチウムイオン電池の正極を提供する。
【0090】
本開示の一実施例において、正極と負極とを備えるリチウムイオン電池を提供し、ここで、正極は上述したリチウムイオン電池の正極である。
【0091】
以下、実施例により本開示について詳細に説明する。
【0092】
以下の実施例および比較例において、
(1)SEM電子顕微鏡写真は走査型電子顕微鏡により測定され、ここで、SEM電子顕微鏡は、ドイツのZEISSメーカーから購入され、型番はSUPRA 55VPである。
(2)サイクル性能は、コイン型電池を組み立て、コイン型電池を試験することにより得られ、コイン型電池の作製は以下のとおりである。
正極材料である導電性カーボンブラック:粘着剤PVDF(ポリフッ化ビニリデン)=92:4:4の質量比で混合させ、NMP(N-メチルピロリドン)を溶媒として混合した後にアルミ箔に塗布し、90℃で真空乾燥して正極極シートを取得し、その後、前記負極極シート(リチウムシート)と、正極極シートと、電解液(1mol/LのLiPF6、EC:EMC=1:1)(ECはエチレンカーボネートで、EMCはエチルメチルカーボネートである)と、セパレータとを電池に組み立てる。
(3)50サイクルのサイクル性能試験は以下のとおりである。
取得された電池を25±2℃の環境で充放電試験を行い、充放電電圧は3.0~4.4Vで、電流密度は0.5C/1C(0.5C充電、1C放電)である。
(4)リチウム塩は、Ganfeng Lithium股フン有限公司から購入され、前駆体は、金馳エネルギー材料有限公司から購入され、添加剤は、石家荘京煌科技有限公司から購入される。
【0093】
以下は、本開示の典型的であるが限定的ではない実施例である。
【実施例1】
【0094】
本実施例は、コバルトフリー正極材料を提供し、その調製方法は以下のステップを含んだ。
【0095】
(1)原料の混合:100gのLiOHと、210gの前駆体Ni0.75Mn0.25(OH)2と、0.45gの添加剤Al2O3とを高速混合機器にて混合させ、混合時間は15minであり、100Lの機器の回転数は850rpmであり、機器内の材料充填効率は50%であった。
【0096】
(2)1回目の焼成:混合された材料を酸素ガス雰囲気(濃度が90%よりも大きい)において、550℃で5h反応させ、昇温速度は3℃/minであり、自然降温した。
【0097】
(3)2回目の混合:1回目の焼成後の220gの材料と0.90gの添加剤Al2O3とを混合させ、混合時間は10minであり、100Lの機器の回転数は950rpmであった。
【0098】
(4)2回目の焼成:2回目の混合後の材料を950℃の高温で15h反応させ、昇温速度は3℃/minであり、自然降温し、350メッシュの篩で篩分けした。
【0099】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を取得し、LiNi0.75Mn0.25AzO2、z=0.01と表記し、且つ、前記正極材料の総重量を基準として、Aは元素Alであり、前記正極材料の表層における前記元素Alの含有量は0.55重量%であり、前記正極材料の中心における前記元素Alの含有量は0.06重量%であった。
【0100】
前記正極材料の総重量を基準として、Alの総含有量は0.6重量%であった。
【0101】
図1は、本開示の一実施例の元素Aがドープされていないコバルトフリー正極材料のSEM電子顕微鏡写真(1000倍)であり、
図2は、本開示の一実施例の元素Aがドープされていないコバルトフリー正極材料のSEM電子顕微鏡写真(5000倍)であり、
図3は、本開示の一実施例の元素Aが勾配ドープされたコバルトフリー正極材料のSEM電子顕微鏡写真(1000倍)であり、
図4は、本開示の一実施例の元素Aが勾配ドープされたコバルトフリー正極材料のSEM電子顕微鏡写真(5000倍)であり、
図1~
図4において、ドープ前後の材料(元素Aがドープされていないコバルトフリー正極材料および元素Aが勾配ドープされたコバルトフリー正極材料)のSEMを比較することにより、ドープ前後の材料の形態がほとんど変化せず、単結晶形態であることが見られ、即ち、前記正極材料は単結晶材料であり、前記正極材料の平均粒径は1~5μmで、例えば、平均粒径は3~4μmであった。
【0102】
また、本開示において、
図1~
図4で、「ZEISS」は機器メーカーの標識である。
【0103】
図5は、本開示の一実施例の元素Aがドープされていないコバルトフリー正極材料のEDS図であり、
図6は、本開示の一実施例の元素Aが勾配ドープされたコバルトフリー正極材料のEDS図であり、
図5~
図6から、ドープ後の材料(元素Aが勾配ドープされたコバルトフリー正極材料)が、表面にAlが存在し、ドープの元素の一部が表面にあることが証明された。
【0104】
図7は、本開示の一実施例の元素Aがドープされていないコバルトフリー正極材料および元素Aが勾配ドープされたコバルトフリー正極材料のサイクル性能のグラフであり、
図7から見られるように、ドープされていないコバルトフリー正極材料の50サイクルの容量維持率は96.3%であり、本実施例1で調製された勾配ドープされた材料の50サイクルの容量維持率は98.8%であり、サイクル性能は2.6%向上した。
【実施例2】
【0105】
本実施例は、コバルトフリー正極材料を提供し、その調製方法は以下のステップを含んだ。
【0106】
(1)原料の混合:100gのLiOHと、205gの前駆体NixMny(OH)2(x=0.55、y=0.45)と、0.60gの添加剤ZrO2とを高速混合機器にて混合させ、混合時間は10minであり、100Lの機器の回転数は800rpmであり、機器内の材料充填効率は30%であった。
【0107】
(2)1回目の焼成:混合された材料を酸素ガス雰囲気(濃度が90%よりも大きい)において、500℃で6h反応、昇温速度は2℃/minであり、自然降温した。
【0108】
(3)2回目の混合:1回目の焼成後の215gの材料と1.25gの添加剤ZrO2とを混合させ、混合時間は8minであり、100Lの機器の回転数は900rpmであった。
【0109】
(4)2回目の焼成:2回目の混合後の材料を900℃の高温で12h反応させ、昇温速度は2℃/minであり、自然降温し、300メッシュの篩で篩分けした。
【0110】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を取得し、LiNixMnyAzO2、x=0.546、y=0.447、z=0.0067と表記し、且つ、前記正極材料の総重量を基準として、Aは元素Zrであり、前記正極材料の表層における前記元素Zrの含有量は0.8重量%であり、前記正極材料の中心における前記元素Zrの含有量は0.1重量%であった。
【0111】
前記正極材料の総重量を基準として、Zrの総含有量は0.86重量%であった。
【実施例3】
【0112】
本実施例は、コバルトフリー正極材料を提供し、その調製方法は以下のステップを含んだ。
【0113】
(1)原料の混合:100gのLiOHと、208gの前駆体NixMny(OH)2(x=0.90、y=0.10)と、0.50gの添加剤TiO2とを高速混合機器にて混合させ、混合時間は18minであり、100Lの機器の回転数は900rpmであり、機器内の材料充填効率は60%であった。
【0114】
(2)1回目の焼成:混合された材料を酸素ガス雰囲気(濃度が90%よりも大きい)において、600℃で4h反応させ、昇温速度は4℃/minであり、自然降温した。
【0115】
(3)2回目の混合:1回目の焼成後の218gの材料と1.20gの添加剤TiO2とを混合させ、混合時間は12minであり、100Lの機器の回転数は1000rpmであった。
【0116】
(4)2回目の焼成:2回目の混合後の材料を1000℃の高温で16h反応させ、昇温速度は4℃/minであり、自然降温し、400メッシュの篩で篩分けした。
【0117】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を取得し、LiNixMnyAzO2、x=0.89、y=0.099、z=0.01と表記し、且つ、前記正極材料の総重量を基準として、Aは元素Tiであり、前記正極材料の表層における前記元素Tiの含有量は0.69重量%であり、前記正極材料の中心における前記元素Tiの含有量は0.10重量%であった。
【0118】
前記正極材料の総重量を基準として、Tiの総含有量は0.78重量%であった。
【実施例4】
【0119】
実施例1と同じ条件に従ってコバルトフリー正極材料を調製し、区別は、
ステップ(1)において、「0.45gの添加剤Al2O3」を「0.67gの添加剤Al2O3」に変更し、ステップ(2)において、「0.9gの添加剤Al2O3」を「1.34gの添加剤Al2O3」に変更したことであった。
【0120】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を取得し、LiNixMnyAzO2、x=0.739、y=0.246、z=0.015と表記し、且つ、前記正極材料の総重量を基準として、Aは元素Alであり、前記正極材料の表層における前記元素Alの含有量は0.8重量%であり、前記正極材料の中心における前記元素Alの含有量は0.09重量%であった。
【0121】
前記正極材料の総重量を基準として、Alの総含有量は0.9重量%であった。
【実施例5】
【0122】
実施例1と同じ条件に従ってコバルトフリー正極材料を調製し、区別は、ステップ(1)において、「210gの前駆体Ni0.75Mn0.25(OH)2」を「220gの前駆体Ni0.75Mn0.25(OH)2」に変更したことであった。
【0123】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を取得し、LiNixMnyAzO2、x=0.744、y=0.24、z=0.008と表記し、且つ、前記正極材料の総重量を基準として、Aは元素Alであり、前記正極材料の表層における前記元素Alの含有量は0.50重量%であり、前記正極材料の中心における前記元素Alの含有量は0.05重量%であった。
【0124】
前記正極材料の総重量を基準として、Alの総含有量は0.55重量%であった。
【0125】
[比較例1]
実施例1と同じ条件に従ってコバルトフリー正極材料を調製し、区別は、ステップ(1)およびステップ(2)において、第1添加剤および第2添加剤がドープされていなかったことがであった。
【0126】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を取得し、LiNi0.75Mn0.25O2と表記した。
【0127】
[比較例2]
実施例1と同じ条件に従ってコバルトフリー正極材料を調製し、区別は、前駆体に添加剤をドープしたことであり、具体的には、以下のとおりであった。
【0128】
(1)原料の混合:210gの前駆体Ni0.75Mn0.25(OH)2と、1.35gの添加剤Al2O3とを高速混合機器にて混合させ、混合時間は15minであり、100Lの機器の回転数は850rpmであり、機器内の材料充填効率は50%であった。
【0129】
(2)原料の混合:混合された材料と100gのLiOHとを高速混合機器にて混合させ、混合時間は15minであり、100Lの機器の回転数は850rpmであり、機器内の材料充填効率は50%であった。
【0130】
(3)1回目の焼成:混合された材料を酸素ガス雰囲気(濃度が90%よりも大きい)において、550℃で5h反応させ、昇温速度は3℃/minであり、自然降温した。
【0131】
(4)2回目の焼成:2回目の混合後の材料を950℃の高温で15h反応させ、昇温速度は3℃/minであり、自然降温し、350メッシュの篩で篩分けした。
【0132】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を取得し、LiNi0.75Mn0.25AzO2、z=0.01と表記し、且つ、前記正極材料の総重量を基準として、Aは元素Alであり、前記正極材料の表層における前記元素Alの含有量は0重量%であり、前記正極材料の中心における前記元素Alの含有量は0.6重量%であった。
【0133】
前記正極材料の総重量を基準として、Alの総含有量は0.6重量%であった。
【0134】
[比較例3]
実施例1と同じ条件に従ってコバルトフリー正極材料を調製し、区別は、ステップ(1)において、「0.45gの添加剤Al2O3」を「0.60gの添加剤Al2O3」に変更し、ステップ(3)において、「0.90gの添加剤Al2O3」を「0.75gの添加剤Al2O3」に変更したことであった。
【0135】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を取得し、LiNi0.75Mn0.25AzO2、z=0.01と表記し、且つ、前記正極材料の総重量を基準として、Aは元素Alであり、前記正極材料の表層における前記元素Alの含有量は0.7重量%であり、前記正極材料の中心における前記元素Alの含有量は0.5重量%であった。
【0136】
前記正極材料の総重量を基準として、Alの総含有量は0.55重量%であった。
【0137】
[比較例4]
実施例1と同じ条件に従ってコバルトフリー正極材料を調製し、区別は、ステップ(2)において、「550℃で5h反応させ、昇温速度は3℃/minであった」を「650℃で10h反応させ、昇温速度は10℃/minであった」に変更し、ステップ(4)において、「950℃で15h反応させ、昇温速度は3℃/minであった」を「850℃で25h反応させ、昇温速度は8℃/minであった」に変更したことであった。
【0138】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を取得し、LiNi0.75Mn0.25AzO2、z=0.01と表記し、且つ、前記正極材料の総重量を基準として、Aは元素Alであり、前記正極材料の表層における前記元素Alの含有量は0.5重量%であり、前記正極材料の中心における前記元素Alの含有量は0.7重量%であった。
【0139】
前記正極材料の総重量を基準として、Alの総含有量は0.58重量%であった。
【0140】
[比較例5]
実施例1と同じ条件に従ってコバルトフリー正極材料を調製し、区別は、ステップ(1)において、「0.45gの添加剤Al2O3」を「1.35gの添加剤Al2O3」に変更し、ステップ(3)において、添加剤Al2O3がなかったことであった。
【0141】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を取得し、LiNi0.75Mn0.25AzO2、z=0.01と表記し、且つ、前記正極材料の総重量を基準として、Aは元素Al、前記正極材料の表層における前記元素Alの含有量は0.6重量%であり、前記正極材料の中心における前記元素Alの含有量は0.6重量%であった。
【0142】
前記正極材料の総重量を基準として、Alの総含有量は0.6重量%であった。
【0143】
[試験例]
実施例2~5および比較例1~5で調製されたコバルトフリー正極材料に対してサイクル性能試験を行い、結果は表1に示すとおりであり、表1はコバルトフリー正極材料の50サイクルの容量維持率およびサイクル性能の向上の百分率であった。
【0144】
【0145】
*「サイクル性能の向上の百分率」とは、実施例1~5および比較例2~5で調製されたコバルトフリー正極材料の50サイクルの容量維持率を、「ドープされない正極材料」(即ち、比較例1)の50サイクルの容量維持率に対比することにより得られたものであり、具体的には、以下のとおりである。
【数1】
【0146】
表1の結果から、以下のことが分かった。
【0147】
本開示の調製方法を採用し、実施例1で作製されたコバルトフリー正極材料はLiNi0.75Mn0.25Al0.01O2(元素Alは正極材料の表層で0.55重量%であり、正極材料の中心で0.06重量%である)で、実施例2で作製されたコバルトフリー正極材料はLiNi0.546Mn0.447Zr0.0067O2(元素Zrは正極材料の表層で0.8重量%であり、正極材料の中心で0.1重量%である)で、実施例3で作製されたコバルトフリー正極材料はLiNi0.89Mn0.099Ti0.01O2(元素Tiは正極材料の表層で0.69重量%であり、正極材料の中心で0.10重量%である)で、実施例4で作製されたコバルトフリー正極材料はLiNi0.739Mn0.246Al0.015O2(元素Alは正極材料の表層で0.8重量%であり、正極材料の中心で0.09重量%である)で、実施例5で作製されたコバルトフリー正極材料はLiNi0.744Mn0.248Al0.008O2(元素Alは正極材料の表層で0.50重量%であり、正極材料の中心で0.05重量%である)であった。これにより見られるように、実施例1~5はいずれも良好な容量維持率およびサイクル性能を有した。
【0148】
比較例1~5は、実施例1に対して調製された正極材料であり、比較例1で作製された正極材料はLiNi0.75Mn0.25O2で、比較例2で作製されたコバルトフリー正極材料はLiNi0.75Mn0.25Al0.01O2(元素Alは正極材料の表層で0重量%であり、正極材料の中心で0.6重量%である)で、比較例3で作製された正極材料はLiNi0.75Mn0.25Al0.01O2(元素Alは正極材料の表層で0.7重量%であり、正極材料の中心で0.5重量%である)で、比較例4で作製された正極材料はLiNi0.75Mn0.25Al0.01O2(元素Alは正極材料の表層で0.5重量%であり、正極材料の中心で0.7重量%である)で、比較例5で作製された正極材料はLiNi0.75Mn0.25Al0.01O2(元素Alは正極材料の表層で0.6重量%であり、正極材料の中心で0.6重量%である)であった。比較例1~5は、本開示に係る勾配ドープされたコバルトフリー正極材料の調製方法を採用しないため、実施例1に対し、比較例1~5の容量維持率およびサイクル性能は悪かった。
【0149】
また、本開示に係る勾配ドープされたコバルトフリー正極材料の調製方法は簡単で実施しやすく、焼成条件に対する要求が簡単である。