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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】アルミナ結晶粒、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/021 20220101AFI20231017BHJP
   C01F 7/02 20220101ALI20231017BHJP
   C30B 29/20 20060101ALI20231017BHJP
   C30B 7/10 20060101ALI20231017BHJP
   B01J 21/04 20060101ALI20231017BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20231017BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231017BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20231017BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20231017BHJP
   C07C 5/42 20060101ALI20231017BHJP
   B01J 23/62 20060101ALN20231017BHJP
   B01J 23/888 20060101ALN20231017BHJP
   B01J 23/883 20060101ALN20231017BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231017BHJP
【FI】
C01F7/021
C01F7/02
C30B29/20
C30B7/10
B01J21/04 M
B01J21/04 Z
B01J37/04 102
B01J37/08
C10G45/08 Z
C07C11/06
C07C5/42
B01J23/62 Z
B01J23/888 M
B01J23/883 M
C07B61/00 300
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022524238
(86)(22)【出願日】2020-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2020123485
(87)【国際公開番号】W WO2021078292
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】201911020895.4
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】518405289
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司大連石油化工研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】楊衛亜
(72)【発明者】
【氏名】隋寶寛
(72)【発明者】
【氏名】凌鳳香
(72)【発明者】
【氏名】張會成
(72)【発明者】
【氏名】王少軍
(72)【発明者】
【氏名】沈智奇
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107540006(CN,A)
【文献】特開2008-137884(JP,A)
【文献】特開2014-227320(JP,A)
【文献】特開2016-016404(JP,A)
【文献】特開平07-187663(JP,A)
【文献】特表2017-530927(JP,A)
【文献】米国特許第05538709(US,A)
【文献】国際公開第2018/056349(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第112707420(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 1/00-17/38
C30B 1/00-35/00
B01J 21/00-38/74
C10G 45/08
C07C 11/06
C07C 5/42
C07B 61/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶構造であり、略正八面体の立体形態を有し、8個の面がγ-アルミナの{111}結晶面族に属し、結晶粒の大きさが5~100μmである、ことを特徴とするアルミナ結晶粒。
【請求項2】
8個の面の形状が辺長5~50μmの略正三角形である、請求項1に記載のアルミナ結晶粒。
【請求項3】
結晶粒の大きさが10~80μmであり、辺長の相対偏差が±-15%の範囲である、請求項1又は2に記載のアルミナ結晶粒。
【請求項4】
XRDパターンは、2θ=10~70°の間で、33.53°、36.82°、39.49°、46.38°、60.89°及び67.01°の位置付近にピークを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のアルミナ結晶粒。
【請求項5】
(1)溶剤及び重合抑制剤の存在下で、粒度1000メッシュ以下のアルミナ粉体をせん断処理して、安定した懸濁液を得るステップと、
(2)ステップ(1)で得られた懸濁液を結晶面成長規定剤と均一に混合した後、密閉条件で水熱処理を行い、次に、固液分離し、固体を乾燥させて、焙焼するステップとを含み、
前記重合抑制剤は有機酸であり、前記結晶面成長規定剤は有機アミンと有機塩基である、アルミナ結晶粒の製造方法。
【請求項6】
前記重合抑制剤は、ギ酸、酢酸、クエン酸のうちの1種又は複数種である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記有機酸の使用量は、アルミナ粉体の質量の0.1wt%~10wt%である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記有機酸の使用量は、アルミナ粉体の質量の0.5wt%~5wt%である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記有機酸の使用量は、アルミナ粉体の質量の1wt%~3wt%である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記溶剤は、水又は水とアルコールの混合物であり、前記アルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノールのうちの1種又は複数種である、請求項5~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶剤は、水とエタノールの混合物であり、かつ水/アルコールの質量比が1~5である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記有機アミンと前記有機塩基との質量比が0.1~3:1である、請求項5~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記有機アミンと前記有機塩基との質量比が0.5~2:1である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記有機アミンの濃度は10~300g/L、材料系中の前記有機塩基の濃度は、10~300g/Lである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記有機アミンの濃度は15~100g/L、材料系中の前記有機塩基の濃度は15~100g/Lである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記有機アミンの濃度は18~40g/Lであり、材料系中の前記有機塩基の濃度は18~40g/Lである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記有機アミンは、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、エタノールアミン、1,2-プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミンのうちの1種又は複数種であり、
前記有機塩基は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドのうちの1種又は複数種である、請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記水熱処理の条件は、温度が60~250℃であり、時間が2~72時間であることを含む、請求項5~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記水熱処理の条件は、温度が120~280℃であり、時間が3~8時間であることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記焙焼の条件は、温度が450~750℃であり、時間が1~24時間である、請求項5~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記焙焼の条件は、温度が500~650℃であり、時間が3~12時間である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~4のいずれか1項に記載のアルミナ結晶粒の触媒担体としての使用。
【請求項23】
前記触媒は、水素化脱硫触媒、水素化脱金属触媒及びプロパン脱水素化触媒のうちの少なくとも1種である、請求項22に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、無機材料製造の分野に属し、具体的には、アルミナ結晶粒、その製造方法及び使用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
活性アルミナは、比表面積が大きく、細孔構造が調整可能であり、表面には異なる性質の酸性中心が存在し、機械的強度が高く、熱的安定性に優れるなどの良好な物理化学的性質があり、多相触媒の担体材料として広く利用されている。アルミナの物理化学的性質は、触媒の触媒性能を決定する重要な要素の1つである。
【0003】
結晶材料としてのアルミナでは、結晶面ごとに原子密度及び原子対称性が異なり、結果として各結晶面の電子構造、表面エネルギーや化学活性などの性質には大きな違いがある。アルミナ結晶の成長環境を調整することで、アルミナ結晶粒の表面の結晶面のタイプ及びその分布割合を変化させることにより、根本的にアルミナの比表面、細孔構造、酸性及び原子、分子化学環境などの重要な物理化性的質を高度に調整することができる。例えば、本発明人は先行の特許文献CN106140180B、CN106673030B及びCN106673033Bにおいて、シート状多結晶性γ-アルミナ、シート状アルミナで組み立てられたアルミナ中空球、シート状アルミナで組み立てられたシェルコア構造のアルミナミクロスフェアの製造方法を開示している。
【0004】
現在、アルミナ(γ-アルミナ)を担体とした産業用水素化触媒では、アルミナの表面には主に(110)、(111)及び(100)結晶面が分布しており、これらのうち、(110)結晶面の分布は一般に50%~70%である。アルミナ表面の3種類の結晶面及びその分布は水素化触媒の活性相に顕著な影響を与え、様々な触媒性能、例えば水素化触媒分野において指向的に強化される水素化脱硫やオレフィン飽和性能を触媒に持たせる。したがって、アルミナ表面の(110)、(111)及び(100)結晶面の相対的な割合を柔軟に調整し、それぞれの優勢分布を実現し、水素化触媒の触媒性能に対するドミナント優勢結晶面の影響の法則を決定できれば、新規な多相触媒担体を開発するための理論的な指導を提供し、触媒性能を調整するための新しい技術手段を確立することができる。しかしながら、アルミナ結晶の成長の癖による制限のため、一般的な合成方法では、アルミナ表面(110)の結晶面の優勢分布を変化することが難しい。
【0005】
アルミナ表面の結晶面のタイプ及び分布の調整は、現在、世界において急務と考えられる主要な科学的問題である。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明は、八面体アルミナ結晶の結晶粒及びその製造方法を提供する。本発明のアルミナ結晶粒は、露出した結晶面が一意であるので、これを多相触媒担体として使用して得られた触媒は明らかに向上した触媒性能を有する。
【0007】
本発明のアルミナ結晶粒は、単結晶構造であり、正八面体又は略正八面体の形態を有する。該八面体結晶粒の表面で露出した8個の結晶面はγ-アルミナの{111}結晶面族であり、それぞれ(111)、(-111)、(1-11)、(11-1)、(-1-1-1)、(1-1-1)、(-11-1)、及び(-1-11)結晶面であり、前記アルミナ結晶粒の8個の結晶面の形状は辺長5~70μmの正三角形又は略正三角形である。アルミナ結晶粒の結晶粒の大きさは7~100μmである。
【0008】
本発明のアルミナ結晶粒の製造方法は、
(1)溶剤及び重合抑制剤の存在下で、一定の粒度のアルミナ粉体をせん断処理し、安定した懸濁液を得るステップと、
(2)ステップ(1)で得られた懸濁液を結晶面成長規定剤と均一に混合した後、密閉条件で水熱処理を行い、次に、固液分離し、得られた固体を順次乾燥、焙焼するステップとを含む。
【0009】
本発明で提供されるアルミナ結晶材料は、例えば、留分油の水素化触媒担体、残油の水素化脱金属触媒担体、プロパン脱水素化によるプロピレン製造のための触媒担体など、多相触媒、吸着の分野において応用の将来性が期待できる。本発明で提供される製造方法は実施されやすく、コストが低く、取り扱い性が良好である。
【0010】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕立方晶系八面体結晶粒の表面で露出した結晶面の模式図である。
図2〕実施例1で製造されたアルミナ結晶粒を550℃で焙焼したものの走査型電子顕微鏡写真である。
図3〕実施例1で製造されたアルミナ結晶粒を550℃で焙焼したものの電子回折パターンである。
図4〕実施例1で製造されたアルミナ結晶粒を200℃で加熱乾燥したもののXRDパターンである。
図5〕実施例1で製造されたアルミナ結晶粒を550℃で焙焼したもののXRDパターンである。
図6〕比較例1で得られたサンプルを550℃で焙焼したものの電子回折パターンである。
【0011】
〔発明を実施するための形態〕
本明細書で開示された範囲の端点及びいずれかの値もこの正確な範囲又は値に制限されるものではなく、これらの範囲又は値はこれらの範囲又は値に近い値を含むと理解すべきである。数値の範囲の場合、各範囲の端点値同士、各範囲の端点値と個別の点値、及び個別の点値同士は互いに組み合わせられて1つ又は複数の新しい数値範囲としてもよく、これらの数値の範囲は本明細書において具体的に開示されるものとみなすべきである。
【0012】
本発明にかかるアルミナは単結晶構造の結晶粒であり、結晶粒は正八面体又は略正八面体の立体形態を有する。前記アルミナ八面体結晶粒の表面の8個の結晶面はγ相アルミナの{111}結晶面族に属し、それぞれ(111)、(-111)、(1-11)、(11-1)、(-1-1-1)、(1-1-1)、(-11-1)、及び(-1-11)結晶面である。γ-アルミナは面心立方結晶構造であることから、対称性が高く、上記の結晶面は等同の性質を有し、このため、(111)結晶面として総称する。
【0013】
アルミナ八面体結晶粒の表面の8個の結晶面の形状は、辺長5~70μmの正三角形又は略正三角形である。
【0014】
本発明で提供される八面体アルミナ結晶粒は、大きさが7~100μmである。
【0015】
本発明では、アルミナ結晶粒の形状及びサイズは、走査型電子顕微鏡によって観察・測定されたものである。結晶形はX線回折によって特徴づけられ、サンプル粒子が単結晶であるか多結晶であるかについて、電子回折によって分析判断が行われる。
【0016】
本発明では、正八面体とは、八面体の表面の8個の結晶面が全て正三角形であり、かつ8個の正三角形の辺長が等しいものである。本発明では、略正八面体とは、八面体の表面の8個の結晶面が全て三角形であり、かつ8個の三角形の辺長が近いものである。任意の三角形のいずれかの辺長は、8個の三角形の全辺長の平均値に対する相対偏差が±10%である。
【0017】
本発明にかかるアルミナ結晶粒では、(111)結晶面族表面、(110)結晶面族表面及び(100)結晶面族表面の全表面を基準として、(111)結晶面族表面は90%以上、好ましくは100%であり、(100)結晶面族表面は5%以下であり、(110)結晶面族表面は10%以下である。
【0018】
結晶面表面の割合は面積法で測定され、結晶面の割合関係は、アルミナ結晶粒の表面のこの結晶面の面積をアルミナ結晶粒の表面の結晶面の全面積で割ることにより得られる。走査型電子顕微鏡を用いてサンプルの写真を撮影し、写真から八面体結晶粒の三角形結晶面の辺長を測定することで、該三角形の面積を算出し、結晶粒外面全体の総面積を算出し、面積の割合関係から特殊な結晶面の割合を得る。
【0019】
前記アルミナ結晶粒の8個の面の辺長は、好ましくは、14~65μmである。
【0020】
アルミナ結晶粒の大きさは、7~100μm、好ましくは10~91μm、例えば7μm、8μm、10μm、15μm、21μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μmである。
【0021】
本発明では、アルミナ結晶粒の大きさとは、八面体結晶粒のうち距離が最も離れた2つの頂点の間の距離である。走査型電子顕微鏡によって測定され得る。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明で提供されるアルミナ結晶粒は、500~550℃で焙焼した場合、XRDパターンにおいて、2θ=10~70°の間で、33.53°、36.82°、39.49°、46.38°、60.89°及び67.01°の回折角位置近旁にそれぞれ(220)、(311)、(222)、(400)、(511)及び(440)結晶面に対応するγ-アルミナの特徴的な回折ピークを含む。本発明では、回折角2θの値は±1°の範囲で変化可能である。
【0023】
本発明の方法では、ステップ(1)において、前記アルミナの粒度サイズは2000~20000メッシュであり、アルミナ粉体は、市販のアルミナ粉体を粉砕することにより得られるものであってもよく、擬ベーマイトを焙焼してからす粉砕して得られるものであってもよい。
【0024】
焙焼条件は、温度が350~650℃、好ましくは、400~550℃であり、時間が1~12時間、好ましくは2~6時間であるものを含んでもよい。本発明では、1000メッシュ以上とは、粉体の粒度が、1000メッシュの篩に対応するメッシュサイズよりも小さいことである。
【0025】
前記粉砕は、高エネルギーボールミルで行われてもよく、ボールミルの操作条件は、要件を満たす粉体の粒度が得られるように柔軟に調整される。
【0026】
本発明の方法では、ボールミリングをよりうまく実施するために、好ましくは、ボールミリングにおいて無機潤滑剤を加えて粉砕した後、無機潤滑剤を除去して、後の操作に進む。前記無機潤滑剤は無機ナトリウム塩であってもよく、前記無機ナトリウム塩は、好ましくは、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムのうちの1種又は複数種である。
【0027】
無機ナトリウム塩の使用量は、アルミナ粉体(擬ベーマイト粉体を550℃で5時間焙焼した生成物を基準として)の0.1~10wt%、好ましくは、2~5wt%である。
【0028】
本発明では、好ましくは、水、好ましくは脱イオン水で無機ナトリウム塩を洗浄して除去する。
【0029】
本発明の方法では、ステップ(1)の操作において、好ましくは、まず、溶剤とアルミナ粉体を混合してアルミナ懸濁液とし、次に、重合抑制剤を加えてせん断処理し、安定した懸濁液を得る。好ましくは、アルミナ懸濁液の質量濃度は10~200g/L、好ましくは、15~100g/L、より好ましくは、20~50g/Lである。
【0030】
本発明の方法では、ステップ(1)において、前記(アルミナ懸濁液の)の溶剤は一般には、水又は水とアルコールの混合物である。前記アルコールは、炭素数1~4の一価アルコール、二価アルコール又はポリオール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール又はt-ブタノール、好ましくは、メタノール及び/又はエタノールであってもよい。前記溶剤は、好ましくは、水とエタノールの混合物である。水/アルコールの質量比は1~10である。
【0031】
本発明の方法では、ステップ(1)において、前記重合抑制剤の添加及びせん断処理は、アルミナ粉体の凝集体を破砕し、安定した懸濁液を得ることを目的とする。ここで、前記懸濁液が安定かの判断基準は、室温、常圧の条件で少なくとも1時間静置したものに明らかな(目視で視認可能な)沈殿が生じていないことである。好ましくは、前記重合抑制剤は有機酸であり、炭素数1~10の一塩基酸、二塩基酸又はポリ酸であってもよい。カルボキシルの個数は好ましくは1~4である。前記有機酸は、カルボキシルに加えて、1つ又は複数のヒドロキシルを含有してもよい。本発明では、好ましくは、前記有機酸はギ酸、酢酸、クエン酸のうちの1種又は複数種である。有機酸の使用量は、好ましくは、アルミナ粉体の質量の0.1wt%~10wt%、好ましくは、0.5wt%~5wt%、より好ましくは、1wt%~3wt%である。
【0032】
本発明の方法では、ステップ(1)において、前記せん断条件は、回転数が2000~50000回転/分、時間は1~60分間であり、好ましくは、回転数は5000~50000回転/分、時間は5~45分間であり、より好ましくは、回転数は8000~25000回転/分、時間は10~150分間である。せん断温度は環境温度とすればよく、即ち、別の加熱や降温が必要とされない。
【0033】
本発明の方法では、前記結晶面成長規定剤は、できるだけ多くの{111}結晶面に成長するようにアルミナ結晶粒の結晶面成長を誘導/制御するものである。好ましくは、前記結晶面成長規定剤は有機アミンと有機塩基である。前記有機アミンは、炭素数1~10のアミン系化合物、例えばモノアミン、ジアミン又はポリアミン、例えば一級アミン、二級アミン、三級アミンのうちの1種又は複数種であってもよく、脂肪アミンであってもよく、芳香族アミンであってもよい。前記有機アミンは、Nに加えて、1つ又は複数のヒドロキシルを含有してもよく、即ち、前記有機アミンはアルカノールアミンであってもよい。本発明では、好ましくは、前記有機アミンは、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、エタノールアミン、1,2-プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミンのうちの1種又は複数種である。
【0034】
前記有機塩基は各種のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドであってもよく、前記アルキルは炭素数1~5の直鎖又は分岐アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロプル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチルであってもよく、4つのアルキルは、同じであってもよいし、異なってもよく、好ましくは、前記有機塩基はテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドのうちの1種又は複数種である。
【0035】
好ましくは、前記結晶面成長規定剤は有機アミンと有機塩基の混合物である、さらに好ましくは、有機アミンと有機塩基との質量比は、好ましくは0.1~3:1、好ましくは0.5~2:1である。
【0036】
材料系中の有機アミンの濃度は、好ましくは、10~300g/L、より好ましくは、15~100g/L、さらに好ましくは、18~40g/Lであり、材料系中の有機塩基の濃度は、好ましくは、10~300g/L、より好ましくは、15~100g/L、さらに好ましくは、18~40g/Lである。
【0037】
本発明の方法では、ステップ(2)において、前記水熱処理の条件は、温度が60~300℃、好ましくは、120~280℃、時間が2~72時間、好ましくは、3~24時間であることを含む。
【0038】
前記水熱処理は、好ましくは密閉オートクレーブで行われる。
【0039】
本発明の方法では、ステップ(2)において、前記乾燥の温度は200℃以下、好ましくは、120℃以下であり、乾燥は、乾燥温度では材料の重量が一定になることを基準とする。
【0040】
本発明の方法では、ステップ(2)において、前記焙焼の条件は、温度が450~750℃、好ましくは500~650℃、時間が1~24時間、好ましくは3~12時間であることを含む。
【0041】
本発明で提供されるアルミナ結晶粒は、触媒担体として使用してもよく、水素化触媒担体として使用してもよく、脱水素化触媒担体として使用してもよい。従来の市販アルミナ担体に比べて、本発明で提供されるアルミナは、触媒の触媒活性を高めることができる。
【0042】
例えば、前記触媒は、水素化脱硫触媒、水素化脱金属触媒及びプロパン脱水素化触媒のうちの少なくとも1種であってもよい。上記の触媒の活性成分の種類、使用量や製造方法は従来技術を参照してもよい。例えば水素化脱硫触媒の活性成分はW、Mo及びNi元素であってもよく、かつそれぞれWO、MoO、NiO換算で、触媒の全重量を基準として、これらの含有量はそれぞれ、5~10重量%、5~10重量%及び1~5重量%である。例えば、プロパン脱水素化触媒の活性金属成分はPt及びSnであり、前記水素化脱金属触媒の活性成分はNi及びMoである。本発明では、これについて詳しく説明しない。
【0043】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。アルミナ結晶粒の形状及びサイズは、走査型電子顕微鏡によって、観察・測定される。結晶形はX線回折によって特徴づけられ、サンプル粒子が単結晶であるか多結晶であるかについて、電子回折によって分析判断が行われる。
【0044】
実施例1
擬ベーマイト粉体を550℃で5時間焙焼したものに、擬ベーマイト粉体の質量に対して3%の塩化ナトリウムを均一に混入し、ボールミルで粉砕して微粉末とし、6000メッシュ程度の粉末を篩分けにより取得し、蒸留水で洗浄して塩化ナトリウムを除去し、次に、質量比4.5の水とエタノールの混合物を溶剤とした22g/Lの懸濁液に調製した。アルミナ前駆体の質量に対して2.0%の使用量で懸濁液にギ酸を加えた。高速せん断撹拌器(20000回転/分)を用いて、室温でせん断撹拌を20分間行い、得た懸濁液を常温常圧の条件で1.5時間放置したところ、明らかな沈殿が認められなかった。両方の最終濃度がそれぞれ25g/L及び20g/Lとなるようにエタノールアミン及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシドを系に加え、均一に撹拌した後、系を密閉させて200℃に昇温して6時間水熱処理した。120℃で乾燥させた生成物を2つの部分に分けて、それぞれ200℃での6時間加熱乾燥、550℃での6時間焙焼にかけた。2つの処理温度で得られた生成物のXRDパターンから、それぞれ擬ベーマイト及びγ-アルミナであることが確認された。
【0045】
図2は、550℃での焙焼後に得られたアルミナ結晶粒の走査型電子顕微鏡写真である。
【0046】
図3は、550℃での焙焼後に得られたアルミナ結晶粒生成物切片の電子回折パターンである。
【0047】
図4は、200℃での加熱乾燥後に得られたアルミナ結晶粒のXRDパターンである。
【0048】
図5は、550℃での焙焼後に得られたアルミナ結晶粒のXRDパターンである。
【0049】
走査型電子顕微鏡によって観察した結果、加熱乾燥又は焙焼温度は形態に明らかな影響を与えず、この温度にかかわらず、生成物は八面体の粒子形状であり、加熱乾燥及び焙焼物の電子回折スペクトルは全て規則的に配列されたスポットであり、このため、加熱乾燥及び焙焼物は全て単結晶構造である。図2は焙焼物の典型的な電子回折スペクトルであり、図1に示す立方晶系の構造の関係から分かるように、該八面体の表面には{111}族結晶面が露出している。図2は、八面体結晶粒のサイズが約17μmであり、八面体{111}族結晶面が略正三角形であり、その辺長が約12μm(辺長の相対偏差は約5.7%)であり、略正八面体が形成されることを示す。該八面体アルミナ結晶粒の表面に露出した{111}族結晶面の占める割合は100%である。
【0050】
実施例2
擬ベーマイト粉体を650℃で4時間焙焼したものに、擬ベーマイト粉体の質量に対して5%の硫酸ナトリウムを均一に混入し、ボールミルで粉砕して微粉末とし、15000メッシュ程度の粉末を篩分けにより取得し、蒸留水で洗浄して硫酸ナトリウムを除去し、次に、質量比1.2の水とメタノールの混合物を溶剤とした質量濃度20g/Lの懸濁液を調製した。アルミナ前駆体の質量に対して3.0%の使用量で懸濁液に酢酸を加えた。高速せん断撹拌器(15000回転/分)を用いて、室温下で30分間処理し、得られた懸濁液を常温常圧の条件で2時間放置したところ、明らかな沈殿が認められなかった。両方の最終濃度がそれぞれ23g/L及び36g/Lとなるようにトリエタノールアミン及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを系に加え、均一に撹拌した後、系を密閉させて180℃に昇温して12時間水熱処理した。120℃で乾燥させた生成物を、それぞ200℃での6時間加熱乾燥、550℃での6時間焙焼にかけた。2つの処理温度で得られた生成物のXRDパターンから、それぞれ擬ベーマイト及びγ-アルミナであることが確認された。
【0051】
走査型電子顕微鏡写真、電子回折パターン及びXRDパターンは実施例1と類似している。加熱乾燥及び焙焼の生成物は全て八面体粒子形状であり、かつこれらの電子回折スペクトルは全て規則的に配列された回折スポットであり、このため、これらは全て単結晶構造を有する。焙焼物については、立方晶系の構造の関係から分かるように、得られた八面体の表面には{111}族結晶面が露出している。走査型電子顕微鏡写真は、八面体結晶粒のサイズが約15μmであり、八面体{111}族結晶面が略正三角形であり、その辺長が約11μm(辺長の相対偏差は約5.4%)であり、略正八面体が形成されることを示す。該八面体結晶粒の表面に露出した{111}族結晶面の占める割合は100%である。
【0052】
実施例3
擬ベーマイト粉体を600℃で4時間したものに、擬ベーマイト粉体の質量に対して3%の硫酸ナトリウムを均一に混入し、ボールミルで粉砕して微粉末とし、10000メッシュ程度の粉末を篩分けにより取得し、蒸留水で洗浄して硫酸ナトリウムを除去し、次に、質量比2.2の水とメタノールの混合物を溶剤とした質量濃度35g/Lの懸濁液を調製した。一部のギ酸と酢酸とを等質量で混合したものを、アルミナ前駆体の質量に対して0.5%の使用量で懸濁液に加えた。高速せん断撹拌器(20000回転/分)を用いて、室温で20分間処理し、得られた懸濁液を室温、大気圧の条件で2時間放置したところ、明らかな沈殿が認められなかった。両方の最終濃度がそれぞれ30g/L及び25g/Lとなるようにアニリン及びテトラプロピルアンモニウムヒドロキシドを系に加え、均一に撹拌した後、系を密閉させて150℃に昇温して60時間水熱処理した。120℃で乾燥させた生成物を、それぞれ200℃での6時間加熱乾燥、550℃での6時間焙焼にかけた。2つの処理温度で得られた生成物のXRDパターンから、それぞれ擬ベーマイト及びγ-アルミナであることが確認された。
【0053】
走査型電子顕微鏡写真、電子回折パターン及びXRDパターンは実施例1と類似している。加熱乾燥及び焙焼生成物は全て八面体粒子形状であり、これらの電子回折スペクトルは規則的に配列された回折スポットであり、このため、得た粒子は全て単結晶構造を有する。焙焼物については、立方晶系の単位胞構造の関係から分かるように、該八面体の表面には{111}族結晶面が露出している。走査型電子顕微鏡写真は、八面体結晶粒のサイズが約49μmであり、八面体{111}族結晶面が略正三角形であり、その辺長が約34μm(辺長の相対偏差は約4.2%)であり、略正八面体が形成されることを示す。該八面体結晶粒の表面に露出した{111}族結晶面の占める割合は100%である。
【0054】
実施例4
擬ベーマイト粉体を580℃で4時間焙焼したものに、擬ベーマイト粉体の質量に対して4%の硝酸ナトリウムを均一に混入し、ボールミルで粉砕して微粉末とし、10000メッシュ程度の粉末を篩分けにより取得し、蒸留水で洗浄して硝酸ナトリウムを除去し、次に、水を溶剤とした質量濃度100g/Lの水懸濁液を調製した。アルミナ前駆体の質量に対して1.5%の使用量で懸濁液にクエン酸を加えた。高速せん断撹拌器(10000回転/分)を用いて、室温で150分間処理し、得られた懸濁液を室温、大気圧の条件で1時間放置したところ、明らかな沈殿が認められなかった。両方の最終濃度がそれぞれ46g/L及び16g/Lとなるようにベンジルアミン及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシドを系に加え、均一に撹拌した後、系を密閉させて170℃に昇温して24時間水熱処理した。100℃で乾燥させた生成物を、それぞれ200℃での4時間加熱乾燥、及び650℃での4時間焙焼にかけた。2つの処理温度で得られた生成物のXRDパターンから、それぞれ擬ベーマイト及びγ-アルミナであることが確認された。
【0055】
走査型電子顕微鏡写真、電子回折パターン及びXRDパターンは実施例1と類似している。加熱乾燥及び焙焼生成物は全て八面体粒子形状であり、これらの電子回折スペクトルは全て規則的に配列された回折スポットであり、このため、得た粒子は全て単結晶構造を有する。焙焼物については、立方晶系の単位胞構造の関係から分かるように、該八面体の表面には{111}族結晶面が露出している。走査型電子顕微鏡写真は、八面体結晶粒のサイズが約86μmであり、八面体{111}族結晶面が略正三角形(辺長の相対偏差は約2.6%)であり、その辺長が約61μmであり、略正八面体が形成されることを示す。該八面体結晶粒の表面に露出した{111}族結晶面の占める割合は100%である。
【0056】
実施例5
市販のアルミナ粉体と、その質量に対して3%の炭酸ナトリウムを均一に混合し、ボールミルで粉砕して微粉末とし、10000メッシュ程度の粉末を篩分けにより取得し、蒸留水で洗浄して炭酸ナトリウムを除去し、次に、質量比3の水とエタノールの混合物を溶剤とした質量濃度15g/Lの懸濁液を調製した。アルミナ前駆体の質量に対して1%の使用量で一部の酢酸を懸濁液に加えた。高速せん断撹拌器(20000回転/分)を用いて、室温で20分間処理し、得られた懸濁液を室温、常圧の条件で3時間放置したところ、明らかな沈殿が認められなかった。両方の最終濃度がそれぞれ23g/L及び40g/Lとなるようにアニリン及びテトラプロピルアンモニウムヒドロキシドを系に加え、均一に撹拌した後、系を密閉させて270℃に昇温して6時間水熱処理した。180℃で乾燥させた生成物を500℃で8時間焙焼した。
【0057】
走査型電子顕微鏡写真、電子回折パターン及びXRDパターンは実施例1と類似しており、八面体粒子形状であり、電子回折スペクトルは規則的に配列された回折スポットであり、このため、得た粒子は単結晶構造を有する。立方晶系の単位胞構造の関係から分かるように、該八面体の表面には{111}族結晶面しか露出しない。走査型電子顕微鏡写真は、八面体結晶粒のサイズが約12μmであり、八面体{111}族結晶面が略正三角形であり、その辺長が約8μm(辺長の相対偏差は約6.7%)であることを示す。該八面体結晶粒体の表面に露出した{111}族結晶面の占める割合は100%である。
【0058】
実施例6
擬ベーマイト粉体を550℃で5時間焙焼したものに、擬ベーマイト粉体の質量に対して3%の酢酸ナトリウムを均一に混入し、ボールミルで粉砕して微粉末とし、6000メッシュ程度の粉末を篩分けにより取得し、蒸留水で洗浄して酢酸ナトリウムを除去し、次に、質量比4.5の水とエタノールの混合物を溶剤とした22g/Lの懸濁液を調製した。アルミナ前駆体の質量に対して2.0%の使用量で懸濁液にギ酸を加えた。高速せん断撹拌器(20000回転/分)を用いて、室温でせん断撹拌を20分間行い、得られた懸濁液を常温、常圧の条件で1.5時間放置したところ、明らかな沈殿が認められなかった。両方の最終濃度がそれぞれ25g/L及び20g/Lとなるようにエタノールアミン及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシドを系に加え、均一に撹拌した後、系を密閉させて200℃に昇温して6時間水熱処理した。120℃で乾燥させた生成物を550℃で6時間焙焼した。
【0059】
得た製品の特性評価の結果は実施例1と類似しており、表面に{111}族結晶面が露出した単結晶の八面体結晶粒である。八面体結晶粒のサイズが約26μmであり、八面体{111}族結晶面が略正三角形であり、その辺長が約18μm(辺長の相対偏差は約4.9%)であり、略正八面体が形成される。該八面体結晶粒の表面に露出した{111}族結晶面の占める割合は100%である。
【0060】
実施例7
擬ベーマイト粉体を650℃で4時間焙焼したものに、擬ベーマイト粉体の質量に対して5%の硫酸ナトリウムを均一に混入し、ボールミルで粉砕して微粉末とし、15000メッシュ程度の粉末を篩分けにより取得し、蒸留水で洗浄して硫酸ナトリウムを除去し、次に、質量比1.2の水とメタノールの混合物を溶剤とした質量濃度20g/Lの懸濁液を調製した。アルミナ前駆体の質量に対して3.0%の使用量で懸濁液にクエン酸を加えた。高速せん断撹拌器(15000回転/分)を用いて、室温で30分間処理し、得られた懸濁液を常温、常圧条件で2時間放置したところ、明らかな沈殿が認められなかった。両方の最終濃度がそれぞれ23g/L及び36g/Lとなるようにトリエタノールアミン及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを系に加え、均一に撹拌した後、系を密閉させて180℃に昇温して12時間水熱処理した。120℃で乾燥させた生成物を550℃で6時間焙焼した。
【0061】
得た製品の特性評価の結果は、実施例1と類似しており、表面に{111}族結晶面が露出した晶の八面体結晶粒である。八面体結晶粒のサイズが約10μmであり、八面体{111}族結晶面が略正三角形であり、その辺長が約7μm(辺長の相対偏差約は8.5%)であり、略正八面体が形成される。該八面体結晶粒の表面に露出した{111}族結晶面の占める割合は100%である。
【0062】
実施例8
擬ベーマイト粉体を550℃で5時間焙焼したものに、擬ベーマイト粉体の質量に対して3%の塩化ナトリウムを均一に混入し、ボールミルで粉砕して微粉末とし、6000メッシュ程度の粉末を篩分けにより取得し、蒸留水で洗浄して塩化ナトリウムを除去し、次に、質量比4.5の水とエタノールの混合物を溶剤とした22g/Lの懸濁液を調製した。アルミナ前駆体の質量に対して2.0%の使用量で懸濁液にギ酸を加えた。高速せん断撹拌器(20000回転/分)を用いて、室温でせん断撹拌を20分間行い、得た懸濁液を常温、常圧の条件で1.5時間放置したところ、明らかな沈殿が認められなかった。両方の最終濃度がそれぞれ21g/L及び11g/Lとなるようにエタノールアミン及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシドを系に加えた。
【0063】
得た製品の特性評価の結果は、実施例1と類似しており、表面に{111}族結晶面が露出した単結晶の八面体結晶粒である。八面体結晶粒のサイズが約12μmであり、八面体{111}族結晶面が略正三角形であり、その辺長が約8μm(辺長の相対偏差は約6.4%)であり、略正八面体が形成される。該八面体結晶粒の表面に露出した{111}族結晶面の占める割合は約100%である。
【0064】
比較例1
エタノールアミンを同重量のテトラエチルアンモニウムヒドロキシドに変更し、即ち、有機アミンを加えなかった以外、実施例1の方法によってアルミナを製造し、得た製品の特性評価の結果、実施例1と比較して、粒子のサイズは約31μmであるが、形態は規則的ではなく、このため、確定した表面結晶面露出関係を有しない。
【0065】
比較例2
高速せん断後、系にエタノールアミン及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシドを加える代わりに、直接密閉させて水熱処理及び後続の操作を行った以外、実施例1の方法によってアルミナを製造し、得た製品の特性評価の結果、実施例1と比較して、形態は規則的ではなく、このため、確定した表面結晶面の露出関係を有しない。
【0066】
比較例3
CN201610494090.3の実施例1に記載の方法によって八面体アルミナ結晶粒を製造した。得た生成物を200℃での5時間加熱乾燥、550℃での5時間焙焼にかけた。200℃での焙焼物は擬ベーマイト又はベーマイトの構造を有しておらず、550℃での焙焼生成物の電子回折パターンは図6に示す。電子回折パターンの画像特徴から分かるように、550℃での焙焼物は、単結晶構造(規則的に配列されたスポットのような電子回折スペクトル)ではなく、多結晶構造(環状の電子回折スペクトル)である。
【0067】
比較例4
擬ベーマイト粉体を粉砕せずに、そのまま200メッシュの擬ベーマイトを水と配合して懸濁液とし、後続の操作を行った以外、実施例1の方法によってアルミナを製造し、得た製品の特性評価の結果、実施例1と比較して、形態は規則的ではなく、このため、確定した表面結晶面の露出関係を有しない。
【0068】
性能テスト
1)留分油水素化脱硫触媒性能
触媒の製造:実施例1~実施例8と比較例1~比較例4で得られたアルミナ粉体、及びSasol社製の擬ベーマイト粉末(550℃で3時間焙焼)をそれぞれ原料とし、直径2.5mmの円柱状として成形し、成形物を120℃で3時間乾燥後、550℃で3時間焙焼して担体を得た。WO、MoO、NiOの含有量がそれぞれ8.2%、7.1%、及び2.8%となるように、上記の担体を、それぞれメタタングステン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム及び硝酸ニッケルの混合物の水溶液に浸漬した。浸漬後、さらに120℃で2時間乾燥させ、550℃で2時間焙焼して、酸化状態触媒を得た。マイクロ反応器を用いて、コーカーナフサの水素化脱硫反応に用いる場合の各触媒の活性を評価し、反応条件として、圧力5.0MPa、水素/オイルの体積比300、体積空間速度5.0h-1、反応温度280℃、反応時間15日とした。結果を以下の表1に示す。
【0069】
2)プロパン脱水素化活性
実施例1~実施例8と比較例1~比較例4で得られたアルミナ粉体、及びSasol社製の擬ベーマイト粉末(550℃で3h焙焼)とをそれぞれ原料とし、直径2mmの球状粒子としてボール成形し、成形物を120℃で3時間乾燥後、550℃で3時間焙焼し、担体を得た。0.08gのHPtCl・6HO、0.21gのSnCl・5HO、及び0.19gのNaNOを脱イオン水100mlに溶解し、十分に撹拌して、均一な溶液を形成した。上記の同一の溶液8部分をそれぞれ上記の球状担体と混合し、室温で6時間撹拌し、さらにロータリーエバポレータで系中の水分を蒸発除去し、固体生成物を得た。固体生成物を120℃で3時間乾燥後、600℃で5時間焙焼し、次に、Hを用いて還元し、2組の担持型Pt-Sn/A1触媒を得た。0.5gの触媒を固定層石英反応器に入れて、反応温度を610℃、反応圧力を0.1MPa、プロパン:水素ガスのモル比を1:1、プロパンの質量空間速度を3.0h-1、反応時間を50hとした。結果を以下の表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
上記の表1の結果から明らかなように、本発明で製造されたアルミナ担体(実施例1~8)、比較例1~4、市販のアルミナ担体をのそれぞれ用いて製造された触媒を比較した結果、コーカーナフサ水素化脱硫及びプロパン脱水素化によるプロピレン製造の触媒反応において、本発明の担体のいずれも、触媒性能は比較例及び市販製品よりも優れている。
【0072】
3)残油水素化脱硫触媒性能
実施例1~実施例8と比較例1~比較例4で得られたアルミナ粉体、及びSasol社製の擬ベーマイト粉末をそれぞれ原料とし、ストランド状担体に成形し、900℃で3h焙焼した。触媒の製造:上記の担体を使用し、モリブデン酸アンモニウム、硝酸ニッケル、リン酸、有機キレート剤を金属塩複合液とし、担体を2h浸漬後、担体を取り出して陰乾し、120℃で5h乾燥させ、450℃で4h焙焼し、酸化状態のNi-Mo/Al残油水素化脱金属触媒を得た。触媒性能の評価:茂名石油化学公司の混合残油を原料として、200mL固定層反応器にて触媒性能の評価を行った。反応器の両側に石英砂、中間部に100mLの触媒を詰めた。反応条件:触媒硫化後、反応温度375℃、水素分圧15MPa、水素/オイルの体積比760、質量空間速度5.0h-1で、300h反応させ、触媒の活性が安定になると、オイルをサンプリングしてテストした。テストの結果を表2に示す。
【0073】
ここで、脱金属率=(原料中の金属元素の含有量-水素化留分油中の金属元素の含有量)/原料中の金属元素の含有量*100%。金属元素の含有量は誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP)を用いた方法によって測定された。脱硫率=(原料中の硫黄元素の含有量-水素化留分油中の硫黄元素の含有量)/原料中の硫黄元素の含有量*100%。硫黄元素の含有量はエネルギー分散型蛍光X線分析法によって測定された。
【0074】
【表2】
【0075】
上記表2の結果から明らかなように、本発明で製造されたアルミナ担体(実施例1~実施例8)、比較例1~比較例4、及び市販のアルミナ担体をそれぞれ用いて製造された触媒を比較した結果、残油の水素化脱金属反応において、本発明の担体の場合、脱金属率は比較例及び市販製品よりも優れており、同時に脱硫率も高い。
【0076】
以上は、本発明の好適な実施形態を詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の技術的構想を逸脱することなく、本発明の技術的解決手段に対して、各技術的特徴を任意の他の適切な方式で組み合わせたりするなど、様々な簡単な変形を行ってもよく、これらの簡単な変形や組み合わせも、本発明の開示内容ともなすべきであり、全て本発明の特許範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】立方晶系八面体結晶粒の表面で露出した結晶面の模式図である。
図2】実施例1で製造されたアルミナ結晶粒を550℃で焙焼したものの走査型電子顕微鏡写真である。
図3】実施例1で製造されたアルミナ結晶粒を550℃で焙焼したものの電子回折パターンである。
図4】実施例1で製造されたアルミナ結晶粒を200℃で加熱乾燥したもののXRDパターンである。
図5】実施例1で製造されたアルミナ結晶粒を550℃で焙焼したもののXRDパターンである。
図6】比較例1で得られたサンプルを550℃で焙焼したものの電子回折パターンである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6