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特許7368627金属-プラスチック複合素材及びこの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】金属-プラスチック複合素材及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20231017BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20231017BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20231017BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231017BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B32B15/08 N
B29C65/02
B32B7/12
B32B27/00 D
C23C28/00 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022535092
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 KR2020017822
(87)【国際公開番号】W WO2021118196
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0164956
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ユー、 ヘ-ジン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン、 チャン-セ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジュン-ス
(72)【発明者】
【氏名】ペク、 ジェ-フン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 フィ-ゴン
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-285354(JP,A)
【文献】特開平06-015773(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052520(WO,A1)
【文献】特開2019-025842(JP,A)
【文献】特開昭62-048542(JP,A)
【文献】特開2004-345214(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0153157(US,A1)
【文献】特開2016-056371(JP,A)
【文献】特開2013-170267(JP,A)
【文献】特開2014-098148(JP,A)
【文献】特開2018-104689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C63/00-63/48
65/00-65/82
B32B1/00-43/00
C23C24/00-30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と、
前記金属層の少なくとも一面上にプラスチック層と、を含み、
前記金属層と前記プラスチック層との間にシランカップリング剤の薄膜層を備え、
前記シランカップリング剤の薄膜層は、前記シランカップリング剤の薄膜層の総重量を基準に、シランカップリング剤95~99重量%及びポリフェノキシ系樹脂1~5重量%を含み、
前記シランカップリング剤は、6-[[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(6-[[3-(triethoxysilyl)propyl]amino]-1,3,5-triazine-2,4-dithiol monosodium,TES)及びテトラメトキシシラン(tetramethoxy silane)からなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記金属層及び前記プラスチック層は、前記シランカップリング剤との共有結合によって接合されたものである、金属-プラスチック複合素材。
【請求項2】
前記金属層の素材は、電気亜鉛めっき鋼板または溶融亜鉛めっき鋼板である、請求項1に記載の金属-プラスチック複合素材。
【請求項3】
前記プラスチック層は、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びポリウレタンからなる群から選択される一つ以上の高分子を含む、請求項1に記載の金属-プラスチック複合素材。
【請求項4】
前記プラスチック層及び前記金属層の厚さの比は3:1~1:5である、請求項1に記載の金属-プラスチック複合素材。
【請求項5】
前記薄膜層は1nm以上~1000nm未満の厚さである、請求項1に記載の金属-プラスチック複合素材。
【請求項6】
前記共有結合は、炭素-炭素結合、シロキサン結合、アミド結合、エステル結合またはエーテル結合である、請求項1に記載の金属-プラスチック複合素材。
【請求項7】
前記金属-プラスチック複合素材は、前記プラスチック層の両面に前記金属層が形成されたものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の金属-プラスチック複合素材。
【請求項8】
金属層の一面または両面にシランカップリング剤をコーティングしてシランカップリング剤の薄膜層を形成する段階と、
前記薄膜層上にプラスチック層を積層させて金属-プラスチック積層素材を製造する段階と、
前記金属-プラスチック積層素材に熱及び圧力を加えて接合する段階と、を含み、
前記シランカップリング剤の薄膜層は、前記シランカップリング剤の薄膜層の総重量を基準に、シランカップリング剤95~99重量%及びポリフェノキシ系樹脂1~5重量%を含み、
前記シランカップリング剤は、6-[[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(6-[[3-(triethoxysilyl)propyl]amino]-1,3,5-triazine-2,4-dithiol monosodium,TES)及びテトラメトキシシラン(tetramethoxy silane)からなる群から選択される少なくとも一つである、金属-プラスチック複合素材の製造方法。
【請求項9】
前記金属-プラスチック積層素材に熱及び圧力を加えて接合する段階によって前記シラ
ンカップリング剤と前記金属層及び前記シランカップリング剤と前記プラスチック層が共
有結合を形成する、請求項8に記載の金属-プラスチック複合素材の製造方法。
【請求項10】
前記接合する段階は80~280℃の温度で行われる、請求項8に記載の金属-プラ スチック複合素材の製造方法。
【請求項11】
前記共有結合は、炭素-炭素結合、シロキサン結合、アミド結合、エステル結合または エーテル結合である、請求項9に記載の金属-プラスチック複合素材の製造方法。
【請求項12】
前記薄膜層は1nm以上~1000nm未満の厚さである、請求項8に記載の金属- プラスチック複合素材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属-プラスチック複合素材及びこの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過去20年間、過度なエネルギー使用の問題が話題になり、エネルギー使用を減らすために産業全般において素材を軽量化する試みが盛んである。深刻なエネルギー使用による環境汚染の問題、及び自動車需要の急激な増加によるエネルギー資源の枯渇に対する懸念が日々深化している。これにより、素材の軽量化に対する活発な研究が進められており、さらに、アルミニウムなどのような軽量素材の使用量も毎年増加している。特に、自動車産業において、自動車素材の軽量化は長い間抱き続けてきた関心事であるとともに、全ての自動車メーカーにとっては次世代の開発目標である。世界的に有名な自動車メーカーと部品、素材関連企業では、自動車軽量化のための新素材の開発及び採用を通じて、高い燃費効率を有する自動車の生産を目指しており、熾烈な技術競争を繰り広げている。
【0003】
一方、軽量素材の中でもアルミニウムは、非鉄系素材のうち自動車素材として最も広く使用されており、特に自動車の外装パネル用に適用される割合が増加している。しかし、アルミニウムは加工過程で多くのエネルギーが消耗されコストの面で不利であるという問題がある。
【0004】
そこで、アルミニウムに対する対応素材として、厚さの薄い高強度鋼板が台頭している。しかし、高強度鋼板を使用する場合、厚さが薄くなり、外板の剛性が不足するという問題があり、一定厚さ以下の高強度鋼板は、加工過程中に微細しわ或いはスプリングバック現象が起こる限界がある。よって、代案として、鋼板の間に接着性質を有する軽い高分子層を挿入した軽量のサンドイッチ鋼板が研究されている。
【0005】
しかし、このようなプラスチック層を挿入した形態の複合鋼板は、プラスチック層と鋼板との接合のために、接着剤を塗布した後に合紙(韓国公開特許第2017-0068716号公報を参照)するか、又は鋼板の表面にプラズマ処理した後に合紙する工程などを行っている。ところが、接着剤を塗布する方式には有害物質が発生したり、加工あるいは温度の変化によって界面が広がるという問題があり、鋼板の表面にプラズマを処理する方式にはプラスチック層と鋼板との間に十分な接着力が確保されないという限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、接着強度及び成形性に優れた金属-プラスチック複合素材及びこの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点において、本発明は、金属層と、上記金属層の少なくとも一面上にプラスチック層と、を含み、上記金属層と上記プラスチック層との間にシランカップリング剤の薄膜層を備え、上記金属層及び上記プラスチック層は、上記シランカップリング剤との共有結合によって接合されたものである、金属-プラスチック複合素材を提供する。
【0008】
本発明の他の観点において、本発明は、金属層の一面または両面にシランカップリング剤をコーティングしてシランカップリング剤の薄膜層を形成する段階と、上記薄膜層上にプラスチック層を積層させて金属-プラスチック積層素材を製造する段階と、上記金属-プラスチック積層素材に熱及び圧力を加えて接合する段階と、を含む、金属-プラスチック複合素材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、金属層とプラスチック層とを共有結合によって接合させるため、接着剤を使用した場合に比べて著しく薄い厚さで金属層とプラスチック層とを接合させることができ、短時間内で接合が可能であり、接着剤の使用時に発生し得る揮発性有機化合物が発生せず、一定かつ優れた接合強度を確保することができる。さらに、加工過程で発生する微細しわ或いはスプリングバックなどの現象を防止することができ、且つ、周囲環境による劣化の発生がなく、プラスチックの種類/特性にかかわらず鋼板との接合力をより堅固にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は、本発明の共有結合によるプラスチック層と金属層とが接合される形態を例示的に示すものであり、(b)は、プラスチック層と金属層との間に形成された共有結合の一例示を示すものであり、(c)は、シランカップリング剤により形成される共有結合の一例示を示すものである。
図2】本発明の実施例によって製造された複合素材の接合強度を測定した結果を示す。
図3】本発明の実施例によって製造された複合素材の成形性を測定した結果を示す。
図4】実施例1、3及び比較例3で製造された複合素材の加工時における接合界面のイメージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な異なる形態に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
一般的に、サンドイッチ鋼板を製造する際、接着剤で金属とプラスチックとを接合する場合、ファンデルワールス結合または水素結合のような非共有結合により接合されるため、上記サンドイッチ鋼板の接合強度が弱く不規則である。また、接着剤を使用するため、接着層の厚さが数十μmと非常に厚く、接合に要する時間も長い。さらに、接合時に接着剤自体の成分によって揮発性有機化合物が発生したり、周囲環境(湿度、熱、酸性雰囲気など)による劣化現象が発生し、金属及びプラスチックに応じて接着剤を選定しなければならない不便さがあり、徹底した品質管理も伴わなければならないという問題がある。
【0013】
さらに、金属の表面にプラズマ処理した後、プラスチックを合紙する方式でサンドイッチ鋼板を製造する方式があるが、上記のような方式は、プラスチックと金属との間に十分な接着力が確保されないという限界がある。
【0014】
そこで、本発明者らは、金属とプラスチックを接合する場合、著しく優れた接合力を得ることができる構造を研究し、その結果、金属とプラスチックを共有結合により接合する場合(図1(a))、上記のような接合強度、接着層の厚さ、接合に要する時間などを全て改善することができる利点があることを確認した。
【0015】
したがって、本発明は、金属とプラスチックとの分子的結合(または共有結合)によって接着力及び成形性に優れた金属-プラスチック複合素材及びこの製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
詳細に、本発明は、金属層と、上記金属層の少なくとも一面上にプラスチック層と、を含み、上記金属層とプラスチック層との間にシランカップリング剤の薄膜層を備え、上記金属層及びプラスチック層は、上記シランカップリング剤との共有結合によって接合されたものである、金属-プラスチック複合素材を提供することができる。
【0017】
さらに、本発明は、金属層の一面または両面にシランカップリング剤をコーティングしてシランカップリング剤の薄膜層を形成する段階と、上記薄膜層上にプラスチック層を積層させて金属-プラスチック積層素材を製造する段階と、上記金属-プラスチック積層素材に熱及び圧力を加えて接合する段階と、を含む、金属-プラスチック複合素材の製造方法を提供することができる。
【0018】
より具体的に、本発明の金属-プラスチック複合素材において使用される金属層及びプラスチック層について説明する。上記金属層の素材は、従来、金属-プラスチック複合素材に使用される金属であれば、制限なく使用することができる。好ましくは、金属の表面に官能基が形成されているめっき鋼板を使用することができる。
【0019】
したがって、本発明の金属-プラスチック複合素材は、上記金属の表面に形成された官能基がシランカップリング剤と共有結合を形成し、さらにシランカップリング剤がプラスチックとも共有結合を形成して、金属-プラスチック複合素材を形成することができるものである(図1(b))。
【0020】
さらに、上記金属層の厚さは、例えば0.2~1.2mmであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0021】
一方、本発明の金属-プラスチック複合素材は、軽量化のためにプラスチックを使用するものであって、上記プラスチックを金属層と金属層との間に挟み込んだ形態で使用したり、一つの金属層上に接合させた状態で使用することができる。
【0022】
例えば、本発明の金属-プラスチック複合素材は、金属層/プラスチック層の2層構造、金属層/プラスチック層/金属層、プラスチック層/金属層/プラスチック層のようなサンドイッチ式の3層構造が可能であり、プラスチック層の両面に金属層が形成されたものであってもよく、その他に多様な積層構造を有してもよい。
【0023】
上記プラスチック層の素材としては、エンジニアリングプラスチックを使用することができるが、これに制限されるものではない。エンジニアリングプラスチックとは、工業材料または構造材料として使用される強度の高いプラスチックの総称を意味する。エンジニアリングプラスチックは、分子量が数十万~数百万の範囲の高分子物質からなっていることから、数十~数百程度の低分子物質からなる従来のプラスチックとは区別される。
【0024】
エンジニアリングプラスチックの性能及び特徴は、その化学構造によって異なるが、本発明は、共有結合によって金属とプラスチックとを接合させることができるものであって、制限なく任意のプラスチックを使用することができるため、例えば、上記プラスチック層は、ポリアミド、ポリアセチル、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びポリウレタンからなる群から選択される一つ以上の高分子を含むことができる。また、ポリエステルの一つであるポリブチレンテレフタレートを使用することができる。
【0025】
上記プラスチック層の厚さは、例えば0.2~1.2mmであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0026】
一方、本発明のプラスチック層及び金属層の厚さの比は3:1~1:5、好ましくは2:1~1:2であってもよく、複合素材の総厚さは0.4~3.6mmであってもよい。上記のような範囲で金属-プラスチック複合素材の剛性と軽量化を同時に実現することができるが、これに制限されるものではなく、必要に応じて上記厚さの比を調節することができる。
【0027】
さらに、本発明は、上記のようなプラスチック層及び金属層を共有結合させるためにシランカップリング剤の薄膜層を含むことができる。このとき、シランカップリング剤は、金属層に形成された官能基と共有結合を形成し、同時に上記シランカップリング剤はプラスチック層と共有結合を形成する。
【0028】
上記官能基は、シランカップリング剤と共有結合を形成可能なものであれば制限されず、例えば、上記官能基は、アミン基、ビニル基、カルボキシ基、カルボニル基、アルコキシ基、及びヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基であってもよい。
【0029】
例えば、ヒドロキシ基は、金属の表面の脱脂、酸化などによって金属の表面に形成されることができる。基本的にシランは、鋼板との結合力を有する無機物であって、金属にシランカップリング剤を処理することにより、金属とシランカップリング剤との共有結合が形成されることができる。
【0030】
さらに、上記薄膜層は、数nm~数百nmの厚さで、1nm以上~1000nm未満であってもよく、例えば、金属層の表面にシランカップリング剤が50~200mg/mで塗布されて形成された薄膜層であってもよい。これは、上記薄膜層がほぼ単分子に近い層を形成するため、上記のような厚さが可能であり、これにより、複合素材の界面を最小化して、加工時に金属とプラスチックが接合された部分の剥離現象を減らすことができる。
【0031】
さらに、上記シランカップリング剤は、金属層及びプラスチックとそれぞれ共有結合を形成することができるものであって、エトキシ基、アミン基等を有するシランカップリング剤、3官能又は4官能のシランカップリング剤を使用することができる(図1(c))。例えば、上記シランカップリング剤は、ヒドロキシ基と反応することができるメトキシ基やエトキシ基を有する3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3-glycidoxy propyl trimethoxy silane)、6-[[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(6-[[3-(triethoxysilyl)propyl]amino]-1,3,5-triazine-2,4-dithiol monosodium,TES)、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(3-Acryloxy propyl trimethoxy silane)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(3-amino propyl triethoxy silane)、テトラメトキシシラン(tetramethoxy silane)などを使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0032】
一方、上記薄膜層は、より堅固な接合強度のために少量のポリウレタン系樹脂またはフェノキシ系樹脂を含むことができる。但し、上記樹脂は、金属層及びプラスチック層との共有結合を形成しにくいため、シランカップリング剤に比べて少量使用することが好ましい。例えば、薄膜層の総重量を基準に、シランカップリング剤は5~99重量%含まれ、ポリウレタン系樹脂またはポリフェノキシ系樹脂は1~5重量%含まれることができる。
【0033】
さらに、金属-プラスチック複合素材の耐食性、耐化学性などを確保するために、水素ヘキサフルオロジルコン酸塩(IV)、シュウ酸、タンニン酸、有機Tiキレート、消泡剤、湿潤(wetting)剤などをさらに含むことができるが、上記成分もシランカップリング剤の共有結合を妨げない程度に含まれることが好ましい。例えば、上記成分は、薄膜層の総重量を基準に1~5重量%含まれることができる。
【0034】
さらに、上記共有結合は、金属層の表面に形成された官能基とシランカップリング剤、及び上記シランカップリング剤とプラスチック層によって形成されたものであって、上記共有結合は如何なる結合でも形成されることができる。例えば、炭素-炭素結合、シロキサン結合、アミド結合、エステル結合またはエーテル結合であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0035】
このとき、上記のような共有結合は、上記金属-プラスチック積層素材を熱及び圧力を加えて接合する場合に形成できるものであって、上記シランカップリング剤と金属層及び上記シランカップリング剤とプラスチック層の共有結合は、上記金属-プラスチック積層素材に熱及び圧力を加えることにより形成されることができる。
【0036】
上記熱及び圧力はホットプレス(hot press)で行うことができるが、これに制限されるものではなく、接合される高分子素材の融点に応じて異なってもよい。通常、熱融着方法によって製造される金属-プラスチック複合素材に使用されるプラスチックの融点を考慮して、80~280℃の温度で行われることができる。上記温度より低い場合には、熱融着が起こらないことがあり、上記温度を超える場合には、融着されるプラスチックが溶けてしまい、プラスチックの性質が変形する可能性があるという問題が生じることがある。
【0037】
一方、金属とプラスチックを接着剤で接着する場合、金属とプラスチックを同時に接合させることができる接着剤を見つけることが難しい。また、「金属-接着剤-プラスチック」のような構造で接合がなされるため、界面の数が多くなり、製造された複合素材の加工時に、接合面において剥離が起こりやすいという問題がある。しかし、このような問題は、本発明のように共有結合を介した金属-プラスチック接合によって解決することができる。
【0038】
また、ロールまたは化学的/電気化学的にエッチングして金属の表面に凹凸を形成し、上記凹凸とプラスチックの接合効果を付与しようとする場合、均一な凹凸の形成が困難であるという問題がある。さらに、上記プラスチックが溶融して上記凹凸の間に流れ込み、接合効果を発現すべきであるが、プラスチックの種類に応じてレオロジー(Rheology)特性が異なり、最適な凹凸構造を規定する上で限界がある。しかし、本発明は、プラスチックの種類にかかわらず共有結合によって金属とプラスチックとを接合させるため、上記のような限界を乗り越えることができる。
【0039】
なお、プラスチックを改質して化学官能基を付与した後、金属と接合する場合は、UV処理、オゾン処理、ラジカル反応、グラフト反応及び架橋剤処理などによってプラスチック層の表面に極性官能基を導入するようになる。しかし、このような工程は複雑であったり、長時間がかかったりし、さらに鋼板との接合力を持たせるためには架橋剤などが必要となる。また、プラスチックの改質によって均一に極性官能基が導入されにくいという問題がある。しかし、本発明は共有結合によって金属とプラスチックとを接合させるため、上記のようにプラスチックに極性官能基を導入する必要がなくなる。
【0040】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【実施例
【0041】
(実施例1)
金属層としては2枚の溶融めっき亜鉛鋼板を使用(横150mm、縦120mm、そして、厚さ0.3mmの薄板状に切断した後、蒸留水で洗浄し乾燥して準備する)し、ナイロン6からなるプラスチック層(横150mm、縦50mm、厚さ1mm)を使用した。
【0042】
上記金属層の表面に官能基を形成するために、シランカップリング剤水溶液を上記金属層にバーコーティングにより塗布した後、80~120℃の間で硬化させた。その後、金属-プラスチック-金属の3層構造で積層(表面処理された鋼板の上にプラスチック層を載置し、さらに表面処理された鋼板がプラスチックと当接するように積層)し、ホットプレスを用いて180℃で接合させた。
【0043】
このとき、水100g当たり2.5gのテトラメトキシシラン及び4.5gの3-アミノプロピルトリエトキシシランが含まれたシランカップリング剤水溶液を50~300mg/mの量で塗布したものであり、これにより、上記金属層の表面に1μm未満の厚さの薄膜層を形成させた。その後、2枚の金属層上に形成された上記薄膜層と接するように上記プラスチック層を上記金属層の間に入れ、ホットプレスを用いて加圧及び加熱処理して金属-プラスチック複合素材を製造した。
【0044】
(実施例2、3)
実施例1に比べてシランカップリング剤の含量を1.5倍の重量(実施例2)及び2倍の重量(実施例3)で使用したことを除いては、実施例1と同様に金属-プラスチック複合素材を製造した。
【0045】
(比較例1)
実施例1において、シランカップリング剤水溶液を使用しないことを除いては、実施例1と同様に金属-プラスチック複合素材を製造した。
【0046】
(比較例2)
電気めっき鋼板を横150mm、縦120mm、そして厚さ0.3mmの薄板状に切断した後、蒸留水で洗浄し乾燥して準備し、60~250g/LのNaOH溶液を電解液として使用し、印加電圧5~2V、印加時間10~30分にして電解エッチングを行い、電気めっき鋼板を物理的にエッチングした。上記のようにエッチングされた金属及びナイロン6を含むプラスチック層を金属-プラスチック-金属の3層構造で積層(表面処理された鋼板の上にプラスチック層を載置し、さらに表面処理された鋼板がプラスチックと当接するように積層)し、ホットプレスを用いて180℃で接合させた。
【0047】
(比較例3)
実施例1において、接着剤として市販されているウレタン系接着剤を接着剤として使用し、1μm厚さの薄膜層を形成したことを除いては、実施例1と同様に金属-プラスチック複合素材を製造した。
【0048】
(実験例)
実施例1~3及び比較例1~3で製造された金属-プラスチック複合素材の接合強度、成形性及び曲げ加工性を測定した。
【0049】
[接合強度の測定]
通常の重ねせん断実験(Lap.shear test、ASTM D 1002)により接合強度を測定した。その結果、図2に示すように、実施例1~3の金属-プラスチック複合素材は、比較例1~3の金属-プラスチック複合素材に比べて少なくとも1.5倍の接着強度を示すことが確認できた。
【0050】
[成形性の測定]
金属-プラスチック複合素材の成形性を測定するために、エリクセン評価を行った。具体的に、パンチストロークを変化させながら、実施例1の金属-プラスチック複合体及び上記金属-プラスチック複合体と同じ厚さの溶融めっき鋼板の成形性を測定した。
【0051】
その結果、図3に示すように、パンチストロークの力が高くなっても溶融めっき鋼板のみからなる素材の成形に対して、実施例1の金属-プラスチック複合素材は、上記パンチストロークにより素材が破れずにさらに向上した成形性が獲得されたことが確認できた。図3において、GI CQは、上記溶融めっき鋼板のみからなる素材を示し、CPCは実施例1の金属-プラスチック複合素材を示す。
【0052】
[曲げ加工性の測定]
バイス(VISE)を使用して比較例3の金属-プラスチック複合素材を180°曲げ加工した後、プラスチックと鋼板が剥離するか否かを確認した。図4(a)に示すように、比較例3で製造された金属-プラスチック複合素材を曲げたとき、接合力が劣り、複合素材の界面が剥離することが確認できた。一方、図4(b)に示すように、実施例1及び3に該当する複合素材は、曲げ加工時に、接合力に優れており、複合素材の界面が剥離していないことが確認できた。
【0053】
以上のように、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明である。
図1
図2
図3
図4