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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】インキュベーター
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20231017BHJP
   C12M 1/36 20060101ALI20231017BHJP
   C12M 1/06 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C12M3/00 B
C12M1/36
C12M1/06
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022552265
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 CN2021106395
(87)【国際公開番号】W WO2022012607
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】202021416351.8
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522342064
【氏名又は名称】上海我武幹細胞科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI WOLWO STEM CELL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 401, 4th Floor, Building 51, No.1089 North Qinzhou Road, Xuhui District Shanghai 200233 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡 ▲ゲン▼熙
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第206721213(CN,U)
【文献】中国実用新案第209243075(CN,U)
【文献】中国実用新案第207793283(CN,U)
【文献】特開2004-242581(JP,A)
【文献】特開2019-154343(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109370905(CN,A)
【文献】特開2006-000105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、変圧装置とを備え、前記筐体は変圧継ぎ手を有し、前記変圧装置は変圧継ぎ手を介して前記筐体に接続され、前記変圧装置は前記筐体に変動するガス圧又は一定のガス圧を送り込むために用いられるインキュベーターであって、
前記インキュベーターは、さらに、前記変圧装置が前記筐体に前記変動するガス圧又は一定のガス圧を送り込む経路とは別の経路でガスを前記筐体に補充するガス補充システムを備え、
前記ガス補充システムは、
前記筐体内のガスを排出するための圧力リリーフ装置と、
前記圧力リリーフ装置が排出を行うと同時に、少なくともガス濃度、ガス湿度、ガス温度のいずれかが安定したガスを前記筐体に供給するためのガス供給システムと、を備え、
前記ガス供給システムは予混合タンクを備え、
前記予混合タンクは送り込みラインによって複数種のガスを受け取り、
前記予混合タンクは送り出しラインによって前記筐体と接続され、
前記予混合タンク内には、ガス混合装置とガス制御装置とが設けられ、
前記ガス制御装置は、ガス濃度検出器、加熱装置、加湿装置及び/又は温度・湿度検出装置を備えることを特徴とするインキュベーター。
【請求項2】
前記変圧装置は、シリンダーとピストンを備え、前記シリンダーは、前記変圧継ぎ手を介して前記筐体に接続され、前記ピストンは、ピストンの移動により前記ガス圧が送り込まれるように前記シリンダー内に移動可能に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のインキュベーター。
【請求項3】
前記シリンダーは、前記変圧継ぎ手に直接接続され又はパイプを介して接続されている
ことを特徴とする請求項2に記載のインキュベーター。
【請求項4】
前記シリンダーは、前記変圧継ぎ手に直接接続され、前記変圧継ぎ手は、前記ピストンの移動に同期して前記シリンダー及び前記筐体がガス圧を変化できるように十分な大きさを有することを特徴とする、請求項2に記載のインキュベーター。
【請求項5】
前記シリンダーが前記筐体に固定して接続されおり、前記シリンダーが前記筐体の上部に固定して接続されていることを特徴とする請求項2に記載のインキュベーター。
【請求項6】
前記変圧装置は、電動シリンダー、ガスシリンダー、油圧シリンダーのいずれかをさらに備え、
前記電動シリンダーは、サーボモータと動力伝達機構とを備え、前記動力伝達機構は、前記サーボモータと前記ピストンとを接続して前記サーボモータの回転を前記ピストンの移動に変換し、
前記電動シリンダーは、電動プッシュロッドであり、前記電動プッシュロッドは、前記ピストンを移動させて動かすことが可能であることを特徴とする、請求項2に記載のインキュベーター。
【請求項7】
前記変圧装置は、増圧ガスライン及び減圧ガスラインを介して前記筐体に接続されるガスタンクを備え、
前記増圧ガスラインには、増圧ポンプ及び増圧制御弁が設けられ、前記増圧ポンプは、前記ガスタンクから前記筐体へガスを送るために用いられ、前記増圧制御弁は、前記増圧ガスラインの開放及び遮断を制御するために用いられ、
前記減圧ガスラインには、減圧ポンプ及び減圧制御弁が設けられ、前記減圧ポンプは、前記筐体から前記ガスタンクへガスを送るために用いられ、前記減圧制御弁は、前記減圧ガスラインの開放及び遮断を制御するために用いられることを特徴とする、請求項1記載のインキュベーター。
【請求項8】
前記筐体は、さらに安全弁を備え、前記筐体内の圧力が安全閾値を超えると、前記安全弁が開弁することを特徴とする、請求項1に記載のインキュベーター。
【請求項9】
前記筐体が、前記変圧継ぎ手とは独立した、開閉可能な給気口と開閉可能な排気口とをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載のインキュベーター。
【請求項10】
前記インキュベーター内には、滅菌装置又は/及び加湿装置又は/及び電気加熱装置が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のインキュベーター。
【請求項11】
前記滅菌装置が、紫外線放射装置又は蒸気滅菌装置であることを特徴とする、請求項10に記載のインキュベーター。
【請求項12】
前記インキュベーター内のガスは、複数種であり、前記ガスは、二酸化炭素、窒素及び酸素の少なくとも2種から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のインキュベーター。
【請求項13】
前記インキュベーター内のガスは、3種であり、3ガスインキュベーターにされ、前記ガスは、二酸化炭素、窒素及び酸素であることを特徴とする、請求項1に記載のインキュベーター。
【請求項14】
筐体内のガスが乱流状態になるようにしてガスの均一度を維持するためのガス混合装置が前記筐体内に設けられていることを特徴とする、請求項に記載のインキュベーター。
【請求項15】
前記送り出しラインには、前記筐体に対して給気制御装置が設置されていることを特徴とする、請求項に記載のインキュベーター。
【請求項16】
前記ガス制御装置及び/又は前記給気制御装置は、加熱装置、加湿装置又は/及びガスフィルターを備えることを特徴とする、請求項15に記載のインキュベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキュベーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インキュベーターは、主に微生物や植物、動物細胞の培養に用いられる筐体装置で、微生物、組織、細胞などの生育環境を模擬することによって、安定した温度、湿度、ガス濃度を賄うものであり、細胞や組織の培養と、いくつかの特別な微生物の増殖や培養に広く用いられている。3ガスインキュベーターの原理は他のインキュベーターと同様であり、特徴は、CO2だけでなく、窒素及び酸素も加えることができ、様々な異なるガスの含有量を制御・調整できることである。
多くの場合、インキュベーター内には大気圧よりも高い圧力がかかっておらず、また、定圧に設定されている場合が多い。公開番号がCN102978112Aである特許出願では、高圧環境下で、筐体内の細胞培養に必要な一定の圧力を維持しつつ、通常のバルブを用いるとガスの流入が速くなり過ぎて筐体内のガスの圧力が大きくなり過ぎるのを避けるため、第1バルブと第2バルブはいずれもニードルバルブを採用し、かつ前記第1バルブを通る筐体内のガスと前記第2バルブを通る大気は順次に高圧酸素減圧弁、流量計を経て前記ガス分析計に入り、サンプリングガスの量が制御される、高圧細胞インキュベーターが開示されている。
【0003】
しかし、本発明者らは、インキュベーター、特に3ガスインキュベーター内で、一定の圧力を追加的にかけると、良好な培養効果が得られ、さらに、インキュベーター内にかかるガス圧が経時的に正弦波状に変化する場合、幹細胞を培養する環境がより人体内の環境に似ており、より良い培養効果が得られることを見出した。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、圧力変動を発生させることができるインキュベーターを提供することである。
【0005】
本発明の実施例によれば、インキュベーターは筐体を備え、さらに変圧装置を備え、前記筐体は変圧継ぎ手を有し、前記変圧装置は変圧継ぎ手を介して前記筐体に接続され、前記変圧装置は、変動するガス圧又は一定のガス圧を前記筐体に送り込むために用いられる。
【0006】
本発明の実施例によれば、前記変圧装置は、シリンダーとピストンとを備え、前記シリンダーは、前記変圧継ぎ手を介して前記筐体に接続され、前記ピストンは、ピストンの移動によって前記ガス圧が送り込まれるように前記シリンダー内に移動可能設けられている。
【0007】
本発明の実施例によれば、前記シリンダーは、前記変圧継ぎ手に直接接続され又はパイプを介して接続される。
【0008】
本発明の実施例によれば、前記シリンダーは、前記変圧継ぎ手に直接接続され、前記変圧継ぎ手は、前記ピストンの移動に同期して前記シリンダー及び前記筐体がガス圧を変化できるように十分な大きさを有する。
【0009】
本発明の実施例によれば、前記シリンダーは、前記筐体に固定して接続されており、好ましくは、前記シリンダーは、前記筐体の上部に固定して接続されている。
【0010】
本発明の実施例によれば、前記変圧装置は、電動シリンダー、ガスシリンダー、油圧シリンダーのうちの1つをさらに備える。
【0011】
好ましくは、前記電動シリンダーは、サーボモータと動力伝達機構を備え、前記動力伝達機構は、前記サーボモータと前記ピストンとを接続して前記サーボモータの回転を前記ピストンの移動に変換し、
好ましくは、前記電動シリンダーは、電動プッシュロッドであり、前記電動プッシュロッドは、前記ピストンを移動させて動かすことが可能である。
【0012】
本発明の実施例によれば、前記変圧装置は、増圧ガスライン及び減圧ガスラインを介して前記筐体に接続されるガスタンクを備える。
前記増圧ガスラインには、増圧ポンプ及び増圧制御弁が設けられ、前記増圧ポンプは、前記ガスタンクから前記筐体へガスを送るために用いられ、前記増圧制御弁は、前記増圧ガスラインの開放及び遮断を制御するために用いられる。
前記減圧ガスラインには、減圧ポンプ及び減圧制御弁が設けられ、前記減圧ポンプは、前記筐体から前記ガスタンクへガスを送るために用いられ、前記減圧制御弁は、前記減圧ガスラインの開放及び遮断を制御するために用いられる。
【0013】
本発明の実施例によれば、前記筐体は、安全弁をさらに備え、前記筐体内の圧力が安全閾値を超えると、前記安全弁が開弁する。
【0014】
本発明の実施例によれば、前記筐体は、前記変圧継ぎ手とは独立した、開閉可能な給気口と開閉可能な排気口をさらに備える。
【0015】
本発明の実施例によれば、前記筐体内には、滅菌装置又は/及び加湿装置又は/及び電気加熱装置が設けられている。
【0016】
本発明の実施例によれば、前記滅菌装置は、紫外線放射装置又は蒸気滅菌装置である。
【0017】
本発明の実施例によれば、前記インキュベーター内のガスは、1種又は複数種であり、3ガスインキュベーターの方が好ましく、より好ましくは、前記ガスは、二酸化炭素、窒素、及び酸素である。
【0018】
本発明の実施例によれば、当該インキュベーターは、ガス補充システムをさらに備え、そのうち、圧力リリーフ装置は前記筐体内のガスを排出するために用いられ、また、ガス供給システムは、前記圧力リリーフ装置が排出を実行すると同時に、プロセスパラメータが安定したガスを前記筐体に供給するために用いられる。
【0019】
本発明の実施例によれば、筐体内のガスが乱流状態になるようにしてガスの均一度を維持するために、ガス混合装置が前記筐体内に設けられている。
【0020】
本発明の実施例によれば、前記ガス供給システムが予混合タンクを備え、前記予混合タンクは送り込みラインによって1種又は複数種のガスを受け取り、前記予混合タンクは送り出しラインによって前記筐体と接続され、前記予混合タンク内にガス混合装置が設けられており、前記送り込みラインには、ガス源に対してガス源制御装置が設けられており、前記送り出しラインには、前記筐体に対して給気制御装置が設けられている。
【0021】
本発明の実施例によれば、前記予混合タンク内には、ガス制御装置がさらに設けられ、前記ガス制御装置はガス濃度検出計、加熱装置、加湿装置及び/又は温度・湿度検出装置を含む。
【0022】
本発明の実施例によれば、前記ガス源制御装置及び/又は前記給気制御装置は加熱装置、加湿装置又は/及びガスフィルターを含む。
【0023】
上記の発明によれば、インキュベーターは、追加で加えた圧力変動を提供することができるため、細胞の置かれている圧力環境を模擬するために適用でき、さらに細胞の生物活性の向上に寄与し、なお、一定の圧力環境を提供することによっても良好な培養効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の上記特徴、特性及び利点及びその他の特徴、特性及び利点は、添付の図面及び実施例を参照しながら下記の記述により、より明確になる。そのうち、
図1】インキュベーターの筐体の断面図である。
図2】インキュベーターの第1の実施形態を示す模式図である。
図3】インキュベーターの第2の実施形態を示す模式図である。
図4】インキュベーターの第3の実施形態を示す模式図である。
図5】インキュベーターの1つの適用例において、異なる条件で培養した毛包間葉系幹細胞の増幅倍数を示す図である。
図6】インキュベーターの1つの適用例において、異なる培養条件下での毛包間葉系幹細胞の継代数と増幅倍数とを示す図であり、継代数はPnで表され、nは自然数である。
図7】インキュベーターの第4の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1及び図2に示すように、インキュベーターは、筐体16と変圧装置9を含む。筐体16は、既存のインキュベーターと同じくらいの構成を有し、細胞を培養するための空間と環境を提供する。下記の実施形態は、3ガスインキュベーターを例として説明したが、これに限定されるものではない。
図1に示すように、筐体16は、チャンバー3を含み、筐体16はさらに、上部に位置する給気口4、底部に位置する排気口5を含み、チャンバー3にはホルダー8が設けられ、ホルダー8は、微生物培養皿などの器具を置くのに用いられる。図2に示すように、変圧装置9は、シリンダー90とピストン91とを含む。シリンダー90は、筐体16に接続されている。筐体16は、図示されていない変圧継ぎ手を有している。この変圧継ぎ手を介して、シリンダー90内の空間がチャンバー3と連通することにより、ピストン91を動かすことで、シリンダー90内のガスを圧縮し、チャンバー3内にガス圧を送り込むことができる。ガス圧を送り込む場合、正圧を送り込んでもよく、又は負圧を送り込んでもよい。図2に示すように、ピストン91を左方向に移動させると正圧が送り込まれ、右方向に移動させると負圧が送り込まれる。変圧継ぎ手は、シリンダー90の断面とほぼ同じ大きさに設置されてもよく、こうすれば、シリンダー90とチャンバー3の内の空間がほぼ同じ空間となり、ピストン91の移動に同期して内部のガス圧が変化可能となる。別の実施形態では、変圧継ぎ手が小さく設置され、シリンダー90とチャンバー3との間で、ガス圧の変化の遅延が生じ、ピストン91の動きが一定期間停止してから、両者の内部のガス圧はやっと等しくなる。
【0026】
図3は他の実施形態を示しており、図1及び図2に示す実施形態と比較して異なる点は、変圧継ぎ手がパイプ13を介して変圧装置9に接続されることである。このように、変圧装置9と筐体16との間で間隔をおいて設置でき、変圧装置9と筐体16の空間配置の自由度が高くなり、変圧装置9と筐体16は、一体にされるのではなく、異なるインダストリにより分業して別々に製造できるので、コストを節約したり、装置の製品化に寄与したりすることができる。
【0027】
上記の実施形態では、ピストン91の移動は駆動装置92が接続されることで実現され、一実施形態では、駆動装置92は電動シリンダーであり(サーボモータと動力伝達機構を含む)、サーボモータは、速度が可変である回転を出力し、動力伝達機構がサーボモータの回転をピストン91の移動に変換する。動力伝達機構は、例えば、ラックピニオン、或いはねじナット型動力伝達機構である。好ましい実施形態では、駆動部92は、電動プッシュロッドである。別の実施形態では、駆動部92は、ガスシリンダー又は油圧シリンダーである。ピストン91の往復運動により、筐体16内のガスは圧力変動が発生し、その圧力の変化は必要に応じて設定でき、例えば正弦波状に変化する。ピストン91をある位置まで移動させてから固着させると、筐体に定圧を発生させることができる。筐体16には図示しない安全弁があり、圧力がある値を超えると安全弁が開弁し、自動的に圧力が解放される。また、当該安全弁は下記の実施形態にも適している。
【0028】
図4は、さらに他の実施形態を示す図である。図1及び図2に示す実施形態と比較して異なる点は、変圧装置9が、ガスタンク96、増圧ガスライン94及び減圧ガスライン95を含むことである。ガスタンク96は、増圧ガスライン94及び減圧ガスライン95を介してそれぞれ筐体16に接続されている。増圧ガスライン94には、増圧ポンプ14と増圧制御弁17が設けられており、増圧ポンプ14はガスタンク96から筐体16にガスを送るために用いられ、増圧制御弁14は、増圧ガスラインの開放及び遮断を制御するために用いられている。
【0029】
減圧ガスライン95には、減圧ポンプ15と減圧制御弁18が設けられており、減圧ポンプ15は筐体16からガスタンク96へガスを送るために用いられ、減圧制御弁18は、減圧ガスラインの開放及び遮断を制御するために用いられている。
【0030】
チャンバー3内の圧力を上昇させる必要がある場合、増圧ポンプ14の前の制御弁17が開けられ、増圧ポンプ14は、ガスタンク96からガスを吸い込んでチャンバー3内に送り始め、一方、減圧ポンプ15の前の制御弁18が閉じられ、チャンバー3内の圧力がある圧力値まで上昇し、昇圧終了となる。次に、増圧ポンプ14の前の制御弁17が閉じられ、減圧ポンプ15の前の制御弁18が開けられ、減圧ポンプ15は、チャンバー3からガスを吸い込んでガスタンク96に送り、チャンバー3は所定の値に減圧され、減圧終了となる。増圧ポンプ14、減圧ポンプ15、2つの制御弁17、18はコントローラーに接続され、コントローラーは、昇圧と減圧の運転・制御をプログラムの実行によって行い、チャンバー3内の圧力は経時的に周期的に変動することができる。
【0031】
さらに、筐体16に対してより多くの詳細な設定を実施することができる。図1に示すように、インキュベーターの筐体16のケース1はステンレス缶であり、円筒形状であってもよく、直方体でもあってもよく、内壁は円弧形状に遷移し、ステンレス缶は、蓋がドアと一体化されており、閉じた状態で一定の正圧に耐えられる。チャンバー3は、底部に加湿装置10が設けられ、その周囲にセンサー又はテスター12が設けられ、外部に設けられた図面しないディスプレイに接続されている。滅菌装置6は、チャンバー3において四辺に配置された紫外線放射装置であってもよいし、蒸気滅菌装置であってもよい。加熱装置7は、電気加熱によるものであり、チャンバー3において四辺に分布している。滅菌装置6で細胞培養環境を浄化し、加熱装置及び加湿装置でよりリアルな培養環境を模擬し、センサー又はテスター12は、温度、湿度、圧力などの情報をフィードバックするために用いることができ、フィードバック情報をコントローラーに送り、そしてコントローラーは、フィードバック情報によって、設定値と比較し、加熱装置7、加湿装置10などを制御・調整する。
【0032】
以下、本開示に係るインキュベーターを適用する実施例について説明する。
「異なる条件」又は「異なる培養条件」という用語は、比較に関与する細胞の培養条件同士は、以下に示す特別なガス環境特性のみが異なることを示し、これらの一連の比較用の異なる培養条件は、「4種類の条件」と称される。
常酸素(20%):酸素濃度20%であり、1気圧(1atm)を超える追加的な加圧はしない。
低酸素(5%):酸素濃度5%であり、1気圧を超える追加的な加圧はしない。
低酸素静圧(5%+静):酸素濃度5%であり、1気圧において追加的に95mmHgの一定の圧力を加えて、変圧装置9により筐体16に加圧を行い、追加で加える圧力が95mmHgに達する時に、ガス補充して加圧することを止めないという前提で、筐体16の給気と排気が動的平衡になるようにして、筐体16のガスを1気圧+95mmHgに維持させる。
低酸素動圧(5%+動):酸素濃度5%であり、1気圧において追加的に圧力を加えて、筐体16内の圧力は1気圧+75~115mmHgの範囲で正弦波状に、14回/分の頻度で周期的に変動する。
【0033】
実施例:異なる条件で培養した毛包間葉系幹細胞(MSC)の増幅倍数の比較
1) 完全な人体毛包組織を入手し、顕微ピンセットを用いて、毛包組織を1.5mL EPチューブの底に丁寧に配置した。1毛包毎に酵素分解液TripLE (Gibco-12604021) を5μL添加し、37℃、5% CO2、インキュベーター内で3時間放置し、1時間ごとにチューブの底を丁寧にはじき、穏やかに混合した。
2) 3時間の酵素分解の結果、毛包の外毛根鞘層は完全に酵素分解されたが、毛幹部分は完全には酵素分解できないことは鏡下で見える。酵素分解されなかった部分を取り出すことなく、100~1000μLのピペッターで10回軽く吸い込み吐き出し、酵素分解液を完全に混和した。1分間静置し、酵素分解されなかった毛幹がEPチューブの底に沈んでから、上層の酵素分解懸濁液を吸引し、これが初代間葉系幹細胞となる。
6ウェルプレートの1ウェルに、毛包5本をまとめた、酵素分解によって得られた初代間葉系幹細胞懸濁液25μLを添加してから、羊水培地(広州白雲山拜迪生物医薬有限公司より購入)2mLを加えて再懸濁させる。6ウェルプレートは、それぞれ常酸素(20%)、低酸素(5%)、低酸素静圧(5%+静圧)、低酸素動圧(5%+動圧)の4種類の条件で37℃で培養が行なわれ、3日ごとに液交換する。
3) 10~12日まで培養し、6ウェルプレート内において細胞密度が80%以上に達することが見えるところで培地を捨てることができ、6ウェルプレートの底に0.5mLの TryplE消化液を加えてから37℃のインキュベーター内に置いて3分間消化し、その後6ウェルプレートに1mLの羊水培地を加えて消化を終了し、上清を取り出して15mLの遠心管の中に置き、1mLの羊水培地でウェルプレートを1回リンスし、リンスした液を前記遠心管の中に加えた。遠心分離機で1500r.p.m.で5分間遠心分離し、上清を捨て、羊水培地1mLを加えて再懸濁し、計数してT25培養フラスコに接種し、P1継代毛包間葉系幹細胞を得た。
4) 細胞を、P12継代になるまで継代培養し続け、4種類の条件下で、細胞について常にそれぞれの培養条件を維持した。増幅倍数=継代するたびに取得した細胞数/接種した細胞数。本実施例では、厳密に5,000細胞/cm2の密度で継代を行い、1つのT25培養フラスコの面積が25 cm2、すなわち1つのT25培養フラスコに毎回1.25 × 105個の細胞を接種し、この場合、増幅倍数の計算式は「増幅倍数=毎回取得した細胞数/(1.25 x 105)」となる。
その結果を図5図6に示す。結果として、低酸素で培養した間葉系幹細胞の増幅倍数は常酸素の場合よりも高く、加圧によって、更に増幅倍数が上昇し、低酸素動圧の条件下で、間葉系幹細胞の増幅倍数が最も高くなることがわかった。
【0034】
図7は、本発明のインキュベーターの更なる実施形態を示す図である。インキュベーターは、筐体16と、変圧装置9と、ガス予混合タンク21とを含む。本実施形態は、上記の実施形態における構成要素の符号及び一部の内容を用いて、同一又は類似の構成要素について同一の符号で表し、同一の技術内容への説明については選択的に省略する。なお、省略した部分の説明について、上記の実施形態を参照することができ、本実施形態では繰り返されない。本実施形態は、図2図3又は図4に示す実施形態と比較して、変圧装置9のシリンダー90を筐体16の上部に固定接続し、その固定接続手段の1つを溶接とした点が異なっており、こうすれば、全体としてよりコンパクトで、強固で、信頼性高く構成し、より高いガス圧及び頻度のより高いガス圧変動に耐えられる。筐体16と変圧装置9との間には、図示されていない変圧継ぎ手が設けられている。この変圧継ぎ手を介して、シリンダー90内の空間は筐体16と連通しており、これにより、ピストン91を動かすことで、シリンダー90内のガスを圧縮し、筐体16内にガス圧を送り込むことができる。送り込まれるガス圧は、正圧又は負圧のいずれでもよい。ピストン91が下へ移動すると正圧が送り込まれ、上へ移動すると負圧が送り込まれる。変圧継ぎ手は、シリンダー90の断面積とほぼ同じ大きさに設定することができ、この場合、シリンダー90と筐体16の空間はほぼ同じ空間となり、ピストン91の移動に同期して内部のガス圧を変化させることができる。
【0035】
インキュベーターの各実施形態は、さらに選択的にガス補充システムを含み、当該ガス補充システムは、上記実施形態のいずれかに用いられてもよく、ガス供給システムと圧力リリーフ装置を含む。圧力リリーフ装置は、筐体内のガスを排出するために用いられる。ガス供給システムは、筐体内においてガスが排出されると同時に、プロセスパラメータが安定したガスを筐体へ補充するのに用いられ、筐体内のガスのプロセスパラメータの安定性を確保すし、筐体のガス雰囲気の変動を減少し、更に安定した培養環境を保証する。プロセスパラメータには、ガス濃度、ガス温度、ガス湿度などが含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
図7に示す実施形態では、ガス供給システムは、ガス源19、ガス予混合タンク21、ガス源制御装置20、給気制御装置24を含む。ガス予混合タンク21は、様々なガスを混合し、ガスのプロセスパラメータを調整する役割を果たす。ガス源19は、培養環境に必要なガス、例えば、酸素、二酸化炭素、窒素の混合ガスを供給する。ガス源19は1種又複数種のガスを供給するものであり、例えば窒素、二酸化炭素、酸素、空気或いは他のガスを供給する。ガス予混合タンク21は、送り込みライン210と送り出しライン211とを有し、送り込みライン210にガス源制御装置20が設置され、送り出しライン211に給気制御装置が設置されている。ガス源制御装置20は、各種の弁を含み、例えば、圧力調整弁及び制御弁のうちの1種又複数種を含み、さらに、加熱装置、加湿装置及び濾過装置のうちの1種又複数種を含み、制御弁は、ラインの開放及び遮断の制御に用いられ、圧力調整弁は、ラインの送出し圧の制御に用いられ、制御弁は逆止弁であることが好ましい。加熱装置は、ラインを通過するガスを予熱するためのもので、ジャケットヒーター、コイルヒーター、或いは電気ヒーターを選択できる。加湿装置は、ライン内のガスの湿度を上げるために水蒸気を添加するもので、水蒸気を添加する方法として、ライン内に水蒸気を噴射し或いは注射することを選択できる。給気制御装置24は圧力調節弁、制御弁中のうちの1種又複数種を含むが、それに限定されず、制御弁は逆止弁であることが好ましく、さらに、選択的に加熱装置、加湿装置或はガスフィルターを含み、ガスフィルターとして、孔径が0.3μm以下の高効率ガスフィルターを選択することが好ましい。予混合タンク21内には、ガス混合装置22とガス制御装置23とが設けられている。混合装置22は、ガス源19によって複数種のガスが供給されるときに使用され、予混合タンク21内に乱流を発生させるようにファン又はエアポンプを選択できる。ガス制御装置23としては、各種のガス濃度検出計、加熱装置、加湿装置、温度・湿度検出装置等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
ガスは、ガス源19から出て、ガス源制御装置20で調整されてから、予混合タンク21に入る。ガス混合装置22を経由することにより予混合タンク21内でガスが均一に混合され、予混合タンク21内のガス制御装置23によって設定値に調整された後、給気制御装置24によりインキュベーター16内に供気できる。その筐体16内のガスの流れ方向によって、ガスの流れが届きにくい箇所に1つ又は複数の排気孔161が設けられ、圧力リリーフ装置27により自発的に排気するとともに、給気制御装置24をオンにしてガスを補充する。筐体16内のガスの均一性と清浄度をさらに向上させるために、1つ又は複数のガス混合装置25がインキュベーター16内に配置され、筐体16内のガスが乱流状態になるようにして、ガスの均一度を維持する。筐体16内のガスのプロセスパラメータを正確に調節するために、筐体16内にはガス制御装置26がさらに設けられており、ガス制御装置26には様々なガス濃度検出計、加熱装置、加湿装置、温度・湿度検出装置などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本発明は、好ましい実施例で、上記のように開示されているが、本発明を限定することを意図するものではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者であれば可能な変形及び修正を行うことができる。したがって、本発明の技術案から逸脱せずに本発明の技術的実体に基づく上記実施例に対する修正、同等変更及び修整は、本発明の特許請求の範囲によって包含されるべきものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7