(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】磁性カーボンナノ材料及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/15 20170101AFI20231017BHJP
C01B 32/166 20170101ALI20231017BHJP
C01B 32/18 20170101ALI20231017BHJP
C25B 1/135 20210101ALI20231017BHJP
C25B 15/021 20210101ALI20231017BHJP
【FI】
C01B32/15
C01B32/166
C01B32/18
C25B1/135
C25B15/021
(21)【出願番号】P 2022566623
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 US2021031371
(87)【国際公開番号】W WO2021226509
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-12-27
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521134086
【氏名又は名称】シー2シーエヌティー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リヒト,スチュアート
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-535906(JP,A)
【文献】国際公開第2018/156642(WO,A1)
【文献】REN, Jiawen et al.,Transformation of the greenhouse gas CO2 by molten electrolysis into a wide controlled selection of carbon nanotubes,Journal OF CO2 Utilization,Elsevier,2017年,Vol.18,PP.335-344,ISSN:2212-9820, DOI:10.1016/j.jcou.2017.02.005
【文献】YOSHIDA, Hideto et al.,Atomic-Scale In-situ Observation of Carbon Nanotube Growth from Solid State Iron Carbide Nanoparticles,NANO LETTERS,American Chemical Society,2008年,Vol.8, No.7,PP.2082-2086,ISSN:1530-6984, DOI:10.1021/nl080452q
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/15-32/198
C25B 1/135
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性カーボンナノ材料生成物を製造するための方法であって、
(a)電解質媒体を加熱して、溶融電解質媒体を得ること;
(b)電解セルのアノードとカソードとの間に前記溶融電解質媒体を位置決めすること;
(c)前記磁性カーボンナノ材料生成物の炭化物駆動成長を行うために、前記電解セル内に磁性添加剤成分を導入すること;
(d)前記電解セル内に炭素源を導入すること;
(e)前記電解セル中の前記カソード及び前記アノードに電流を印加すること;及び
(f)前記カソードから前記磁性カーボンナノ材料生成物を回収すること
を含み、前記磁性カーボンナノ材料
生成物が、磁場により移動可能である、方法。
【請求項2】
磁性カーボンナノチューブ生成物、磁性カーボンナノファイバー生成物、磁性カーボンプレートレット生成物、磁性グラフェン生成物、磁性カーボンナノオニオン生成物、磁
性中空カーボンナノスフェア生成物又はそれらの任意の組合せを含むように前記磁性カーボンナノ材料生成物の構成要素のナノモルフォロジーを選択する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁性カーボンナノ材料生成物が、磁石に結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記
磁性添加剤成分が、金属炭化物である、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属炭化物が、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化コバルト;炭化ジルコニウム、炭化クロム、炭化タンタル、炭化ハフニウム及びそれらの任意の組合せのうちの1つである、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記金属炭化物が、前記炭化鉄である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記
磁性添加剤成分が、非金属炭化物である、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記非金属炭化物が、炭化ケイ素、炭化ゲルマニウム及びそれらの任意の組合せのうちの1つである、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記
磁性添加剤成分が、鉄、ニッケル、コバルト、ガドリニウム、サマリウム、ネオジム、鋼及び強磁性特性、常磁性特性、反磁性特性又はそれらの任意の組合せを有する1つ以上の磁性材料を含む合金のうちの1つ以上である、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記電解セルが、鋼、ステンレス鋼、鉄、鋳鉄、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鋳鉄、鉄を含む合金又はそれらの任意の組合せを含むコーティングで構成される1つ以上の壁を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記磁性添加剤成分が、前記磁性カーボンナノ材料生成物における1つ以上のノジュールとして組み込まれるか又は形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ノジュールが、黒鉛状炭素の1つ以上の層によって被覆される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記磁性添加剤成分が、前記電解セルの1つ以上の壁、前記アノード、前記カソード、前記電解質媒体又はそれらの任意の組合せに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記磁性添加剤成分が、前記電解質媒体に加えられる鉄ベース添加剤に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記鉄ベース添加剤が、鋳鉄粉末、鉄金属、鋼、ステンレス鋼、鉄含有金属合金、酸化鉄、FeO、Fe
2O
3、Fe
3O
4、及び鉄含有塩のうちの1つ以上である、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記炭素源が、二酸化炭素、前記電解質媒体、前記溶融電解質媒体又はそれらの任意の組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記電解質媒体が、(a)炭酸塩;及び(b)磁性添加剤成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記炭酸塩が、アルカリ炭酸塩、アルカリ土類炭酸塩又はそれらの任意の組合せである、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記炭酸塩が、酸化物、ホウ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、塩素酸塩、リン酸塩又はそれらの任意の組合せを含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項20】
前記磁性添加剤成分が、鉄ベース添加剤である、請求項
17に記載の方法。
【請求項21】
前記鉄ベース添加剤が、鋳鉄粉末、鉄金属、鋼、ステンレス鋼、鉄含有金属合金、酸化鉄、FeO、Fe
2O
3、Fe
3O
4、鉄含有塩及びそれらの任意の組合せのうちの1つ以上である、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記磁性添加剤成分が、約0.001モーラル~約10モーラル又はそれ以上の量で存在する、請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年5月8日に出願された米国仮特許出願第63/022,284号に対する優先権及びその利益を主張するものであり、この仮特許出願は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
[0002] 本開示は、一般に、カーボンナノ材料の製造に関する。特に、本開示は、磁性カーボンナノ材料を製造するための方法、システム及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 多層カーボンナノチューブ(CNT)は、円筒状グラフェンシートの同心性壁からなる。グラフェンは、1個の炭素原子の厚さに相当する約0.335nmの厚さを有するsp2混成軌道炭素原子の単層によって形成された2次元のハニカム構造化材料である。CNTは、任意の材料の最高測定引張り強さ(強度93,900MPa)を有する。CNTは、高導電性、高熱伝導性、可撓性を含む多くの有用な特性を有し、それらはまた、化学修飾され得る。これらの有用な特性の意味することは、CNTが、それらの用途の着実な増加を有することである。
【0004】
[0004] CNTが製造される公知のプロセスは、化学蒸着、CVDである。CNTのCVDは、高コストであり、それは、高いカーボンフットプリントを有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005] 本開示の実施形態は、カーボンナノチューブ(CNT)(その少なくとも一部が、磁性CNT(mCNT)又は他の磁性カーボンナノ構造若しくはモルフォロジーである)を含む様々なナノ構造を含む電気合成カーボンナノ材料(CNM)生成物を製造するための方法、システム及び組成物に関する。本方法及び装置は、炭素源として二酸化炭素(CO2)を用いることができ、ここで、炭素は、mCNTを含み得る磁性CNM(mCNM)生成物を作製するための電解反応における反応剤である。電解反応は、炭素源からmCNMへの炭素の物質移動を行う。本開示のある実施形態において、鉄が、鉄又は炭化鉄を含有するmCNTを含むmCNM生成物を作製するための電解反応の際、磁性材料添加プロセス若しくは炭化物核形成プロセス又は両方を促進するために、方法における反応剤として及び装置中の1つ以上の成分の一部として含まれる。本開示の他の実施形態において、ニッケル又は炭化ニッケルが、ニッケル又は炭化ニッケルを含有するmCNTを含むmCNM生成物を作製するための電解反応の際、磁性材料添加プロセス若しくは炭化物核形成プロセス又は両方を促進するために、方法における反応剤として及び装置中の1つ以上の成分の一部として含まれる。
【0006】
[0006] 本開示のある実施形態は、mCNM生成物を作製するための方法に関する。本方法は、電解質媒体を加熱して、溶融電解質媒体を得る工程を含む。次に、溶融電解質媒体は、電解セルのアノードとカソードとの間に配置される。本方法は、磁性添加剤成分を電解セル内に配置する工程をさらに含む。本方法は、電流を、電解セル内のカソード及びアノードに印加する工程及びカソードからmCNM生成物を回収する工程も含む。
【0007】
[0007] 本開示のある実施形態は、mCNM生成物の1つ以上の特定の構造/モルフォロジーの特性を選択するための方法に関する。mCNM生成物は、それらの位置及び/又はそれらの配向に関して磁場によって影響され得る。何らかの特定の理論によって制約されるものではないが、mCNM生成物は、薬物送達及びイメージングなどの1つ以上の医療用途;精密な位置決めのため;家庭用電化製品;情報保存;廃水処理;電気化学センサー;及び/又は様々な化学反応における触媒として使用され得る。
【0008】
[0008] 本明細書において使用される際、「ナノ材料モルフォロジーを選択する」という用語は、電気合成mCNM生成物の構造及び/又はモルフォロジーを制御するのに寄与する任意の工程を指す。本開示のある実施形態において、mCNMの選択されるモルフォロジーは、以下のCNMモルフォロジー:カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノオニオン、カーボンナノ足場(scaffolds)、カーボンナノスフェア、カーボンナノヘリックス、カーボンナノプレートレット、グラフェン又はそれらの組合せを含み得る。本開示のある実施形態において、ナノ材料モルフォロジーを選択する工程は、単一のCNMモルフォロジーの一部、大部分、実質的に全て又は全てである電気合成mCNM生成物をもたらし得る。例えば、ナノ材料モルフォロジーを選択する工程は、mCNT、磁性カーボンナノファイバー、磁性カーボンナノオニオン、磁性カーボンナノ足場、磁性カーボンナノスフェア、磁性カーボンナノヘリックス、磁性カーボンナノプレートレット又は磁性グラフェンのうちの1つの一部、大部分、実質的に全て又は全てである電気合成mCNM生成物を製造するために、電流及び/又は化学成分に関して、ナノ材料選択成分を加えることを含み得る。
【0009】
[0009] 本開示のある実施形態において、ナノ材料モルフォロジーを選択する工程は、直流電流(DC)としてカソード及びアノードに電流を印加することを含む。例えば、DC電解電流は、CNTモルフォロジーを含むmCNM生成物を選択し得る。
【0010】
[0010] 本開示のある実施形態において、ナノ材料モルフォロジーを選択する工程は、交流電流(AC)としてカソード及びアノードに電流を印加することを含む。例えば、AC電解電流は、ナノオニオンモルフォロジーを有するCNM生成物を選択し得る。
【0011】
[0011] 別の実施形態において、ナノ材料モルフォロジーを選択する工程は、ZnOを、溶融電解質媒体に加えること、及びグラフェンプレートレットモルフォロジーを有するCNM生成物を選択し得るAC電解電流を印加することを含む。
【0012】
[0012] 別の実施形態において、ナノ材料モルフォロジーを選択する工程は、酸化鉄を、電解質媒体に加えること、及びカーボンナノヘリックス生成物のための高密度電流を選択することを含む。
【0013】
[0013] 別の実施形態において、ナノ材料モルフォロジーを選択する工程は、MgOを、溶融電解質媒体に加えること、及び中空カーボンナノスフェア生成物のための電流を選択することを含む。
【0014】
[0014] 本開示のある実施形態は、1つ以上の磁性カーボンナノ材料生成物を作製するための電解セルを含むシステムに関する。電解セルは、プレナムを画定する1つ以上の壁並びにプレナム内に位置決めされたアノード及びカソードを含む。プレナムは、アノードとカソードとの間の溶融電解質媒体を受け入れ、保持するように構成される。電解セルは、磁性材料添加成分又は炭化物成長成分、任意選択のナノ材料選択成分並びに1つ以上の磁性カーボンナノ材料生成物を作製するための電解反応を開始させるためにアノード及びカソードに印加可能な電流を受け入れるようにさらに構成される。
【0015】
[0015] 何らかの特定の理論によって制約されるものではないが、本開示の実施形態は、磁性材料添加プロセス若しくは炭化物核形成プロセス又は両方によって、カーボンナノチューブ(mCNT)を含むmCNM生成物を作製するために、溶融電解質媒体中で二酸化炭素(CO2)を分割する電解反応に関する。mCNTを含む磁性カーボンナノ材料は、治療を対象の局所領域に指向する内科的治療などの、様々な用途を有する。mCNTを含む磁性カーボンナノ材料はまた、再生可能な触媒として使用され得る。
【0016】
[0016] 本開示の他の実施形態は、CO2の非存在下でmCNM生成物を作製するための電気合成プロセスに関する。何らかの特定の理論によって制約されるものではないが、本開示のある実施形態は、磁性材料添加プロセス若しくは炭化物核形成プロセス又は両方によって、カーボンナノチューブ(mCNT)を含むmCNM生成物を作製するための、溶融電解質媒体中の炭酸塩を分割して、炭素源を得る電解反応に関する。
【0017】
[0017] 本開示のある実施形態は、溶融電解質媒体を受け入れ、保持するための、鉄及び/又はニッケルを含む材料で作製された容器の使用に関する。それに加えて又はその代わりに、アノードからの鉄及び/又はニッケルは、カーボンナノチューブが成長するとカソードに移動し得る。例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDS)元素分析は、カーボンナノチューブ中の鉄の存在を確認し、X線回折(XRD)分析は、炭化鉄の存在を確認する。電解質媒体中の過剰な鉄は、鉄を含む容器を用いて、インコロイ(Incoloy)などの鉄リッチ合金をアノードのために用いて、カソードのために鉄含有合金を用いて、電解質媒体中に導入され得る鉄ベース添加剤、電解質媒体自体又はそれらの組合せによって、鉄のさらなる供給源を提供することによって達成され得る。核形成促進剤よりむしろ、過剰な鉄は、磁性材料添加、すなわち、黒鉛状炭素とも呼ばれるグラフェン層、mCNTなどのmCNT生成物中の構造の外面における被覆炭化鉄ノジュール、並びにmCNTなどのmCNMの構造中の炭化鉄をもたらし得る。
【0018】
[0018] 本開示のある実施形態は、磁性カーボンナノ材料生成物を作製するための電解質媒体である組成物に関する。電解質媒体は、炭酸塩;及び磁性材料添加成分若しくは炭化物成長成分又は両方を含む。
【0019】
[0019] 何らかの特定の理論によって制約されるものではないが、本開示の電解反応における反応剤として炭素を提供する炭素源として、大気からのCO2、又は人為的発生源からのCO2を用いることによって、本開示の実施形態は、mCNT及び/又は他の磁性ナノ構造を含み得るmCNM生成物を作製するプロセス及びシステムの温室効果ガスフットプリントを減少させることができる。
【0020】
[0020] 本開示のこれらの及び他の特徴は、添付の図面が参照される以下の詳細な説明においてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】[0021]2つの写真及び1つの線画を示す。
【
図1A】[0021]本開示の実施形態に係る電解ユニットの写真である。
【
図1B】[0021]約770℃でLi
2CO
3中の電解反応の際に電解セルのヘッドスペースから回収される、時間(h)の経過に伴う電解ガスアウトプット濃度(%)を示す線グラフであり、ここで、線Y1は、Li
2Oを用いない二酸化炭素濃度を示し、線Z1は、Li
2Oを用いない酸素であり、線Y2は、1mのLi
2Oを用いた二酸化炭素を示し、線Z2は、1mのLi
2Oを用いた酸素を示す。
【
図1C】[0021]磁石に結合された、本開示の実施形態に係るカーボンナノ材料生成物の写真である。
【
図2】[0022]本開示の実施形態に係るカーボンナノ材料生成物の3つの画像、及び1つの線グラフを示す。
【
図2A】[0022]カーボンナノ材料生成物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像(スケールバーは50μmである)である。
【
図2B】[0022]カーボンナノ材料生成物の透過型電子顕微鏡(TEM)画像(スケールバーは200nmである)である。
【
図2C】[0022]
図2Cの画像より高い倍率におけるカーボンナノ材料生成物の別のTEM画像(スケールバーは2nmである)である。
【
図2D】[0022]
図2C中の線2Cに沿って取られた、カーボンナノ材料生成物中の10個のカーボンナノチューブの壁間の間隔を表す線グラフである。
【
図3】[0023]本開示の実施形態に係るカーボンナノ材料生成物のSEM画像を示す。
【
図3A】[0023]第1の倍率(スケールバーは200μmである)におけるSEM画像である。
【
図3B】[0023]第2の、より高い倍率(スケールバーは10μmである)におけるSEM画像である。
【
図3C】[0023]第3の倍率(スケールバーは10μmである)における別のSEM画像である。
【
図3D】[0023]第1の倍率(スケールバーは3μmである)における高分解能SEM画像である。
【
図3E】[0023]第2の、より高い倍率(スケールバーは1μmである)における高分解能SEM画像である。
【
図4】[0024]本開示の実施形態にしたがって作製されたカーボンナノ材料生成物のX線回折(XRD)分析の結果を示す。
【
図4A】[0024]製造の方法に使用される電解質媒体が、電解工程を開始する約1日前に溶融された場合のXRD分析を示す。
【
図4B】[0024]製造の方法に使用される電解質媒体が、新たに溶融された場合のXRD分析を示す。
【
図4C】[0024]カーボンナノ材料生成物に関連する化合物のライブラリーXRDを示す。
【
図5】[0025]製造の方法に使用される電解質媒体が、電解工程を開始する約1日前に溶融された場合の、本開示の実施形態にしたがって作製されたカーボンナノ材料生成物の3つの点のエネルギー分散型X線分光法(EDS)を示す。
【
図5A】[0025]生成物内の第1の位置で得られたデータを示す。
【
図5B】[0025]生成物内の第2の位置で得られたデータを示す。
【
図5C】[0025]生成物内の第3の位置で得られたデータを示す。
【
図6】[0026]第1の倍率(スケールバーは500nmである)で撮影された、本開示の実施形態にしたがって作製されたカーボンナノ材料生成物の第1の領域(画像に追加された矩形中)の高分解能TEMからの明視野(BF)、暗視野(DF)及び高角度環状暗視野(HAADF)画像を示す上の横列;第2の、より高い倍率(スケールバーは50nmである)で撮影された、本開示の実施形態にしたがって作製されたカーボンナノ材料生成物の第1の領域のTEMから撮影されたBF、DF及びHAADF画像を示す真ん中の横列;並びに炭素(左側の画像)、鉄(真ん中の画像)及びニッケル(右側の画像)の存在/非存在を示す下の横列を含むEDS元素分析データを示す。
【
図7】[0027]第1の倍率(スケールバーは500nmである)で撮影された、本開示の実施形態にしたがって作製されたカーボンナノ材料生成物の第2の領域(画像に追加された矩形中)の高分解能TEMからの明視野(BF)、暗視野(DF)及び高角度環状暗視野(HAADF)画像を示す上の横列;第2の、より高い倍率(スケールバーは50nmである)で撮影された、本開示の実施形態にしたがって作製されたカーボンナノ材料生成物の第1の領域のTEMから撮影されたBF、DF及びHAADF画像を示す真ん中の横列;並びに炭素(左側の画像)、鉄(真ん中の画像)及びニッケル(右側の画像)の存在/非存在を示す下の横列を含むEDS元素分析データを示す。
【
図8】[0028]本開示の実施形態にしたがって形成されたmCNTの画像を示す。
【
図8A】[0028]異なる倍率レベルで、溶融電解質媒体中で分割する二酸化炭素(CO
2)によって形成されたCNT生成物のSEM画像を示す。
【
図8B】[0028]異なる倍率レベルで、溶融電解質媒体中で分割する二酸化炭素(CO
2)によって形成されたCNT生成物のSEM画像を示す。
【
図8C】[0028]異なる倍率レベルで、溶融電解質媒体中で分割する二酸化炭素(CO
2)によって形成されたCNT生成物のSEM画像を示す。
【
図8D】[0028]異なる倍率レベルで、溶融電解質媒体中で分割するCO
2によって形成されたCNT生成物のTEM画像を示す。
【
図8E】[0028]異なる倍率レベルで、溶融電解質媒体中で分割するCO
2によって形成されたCNT生成物のTEM画像を示す。
【
図8F】[0028]異なる倍率レベルで、溶融電解質媒体中で分割するCO
2によって形成されたCNT生成物のTEM画像を示す。
【
図9】[0029]真ちゅうカソード及びニクロムアノードを用いた鋳鉄容器中でのCNT形成の生成物の画像を示す。
【
図9A】[0029]
図9A(i)は、容器を示し、
図9A(ii)は、上にCNT生成物を有するカソード及びアノードの側面図を示し;
図9A(iii)は、上にCNT生成物を有するカソードの正面図を示す。
【
図9B】[0029]第1の倍率における、カソードから解離された後のCNT生成物のSEM画像を示す。
【
図9C】[0029]第2の、より高い倍率における、
図9BのCNT生成物を示す。
【
図9D】[0029]第3の、より高い倍率における、
図9CのCNT生成物を示す。
【
図9E】[0029]第4の、より高い倍率における、
図9DのCNT生成物を示す。
【
図9F】[0029]第5の、より高い倍率における、
図9EのCNT生成物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
[0030] 本開示の実施形態は、カーボンナノ構造(その少なくとも一部が磁性である)を含む磁性カーボンナノ材料(mCNM)生成物を製造するための方法、システム及び組成物に関する。磁性カーボンナノ構造の少なくとも1つの例は、磁性カーボンナノチューブ(mCNT)である。本明細書において使用される際、「磁性カーボンナノ材料」、「磁性カーボンナノ構造」、「磁性カーボンナノチューブ」及び「mCNT」という用語は、一般に又は具体的に文脈が許容する際、本明細書において以下に定義される際、カーボンナノ材料が、磁場によって移動可能な程度に、鉄、炭化鉄、ニッケル、炭化ニッケル又は他の磁性材料を含むカーボンナノ材料を指す。本方法及び装置は、mCNM生成物を作製するための電解反応における反応剤として二酸化炭素(CO2)を用いる。本開示のある実施形態において、鉄、ニッケル又は他の磁性材料は、mCNM生成物を作製するための電解反応の際、磁性材料添加プロセス若しくは炭化物核形成プロセス又は両方を促進するために、方法における反応剤として及びシステム中の1つ以上の成分の一部として含まれる。
【0023】
[0031] 本開示のある実施形態は、mCNM生成物を作製するための電解反応を用いる方法に関する。電解反応は、アノードとカソードとの間に位置決めされた溶融電解質媒体がある環境下で行われる。炭素が、純粋なCO2、大煙突若しくは燃焼排ガスからのものなどの人為的CO2、濃縮CO2又は大気中に同伴するCO2のいずれかとして溶融電解質媒体中に導入される。さらに、鉄が、その環境下に存在する。鉄は、電解反応が行われる電解セル中の1つ以上の壁を構成する材料、アノード、カソード、電解質媒体に加えられる添加剤又はそれらの組合せに由来し得る。実質的に一定の電流密度を有する電流が、アノード及びカソードに印加される場合、CO2は、分割されて、炭素を生成し、それが、鉄と組み合わされて、mCNM生成物を形成する。当業者によって理解されるように、ニッケルなどの他の磁性材料も、生成された炭素と組み合わされて、mCNM生成物を作製し得る。
【0024】
[0032] CNTを作製するための公知の化学蒸着(CVD)方法と対照的に、本開示の実施形態の物理化学的環境は、電気化学的プロセスである一方、CVDは化学的である。本開示の実施形態は、反応剤としてCO2を用いる一方、CVDは、有機反応剤を用いる。本開示の実施形態は、溶融電解質媒体と固体カソードとの間の界面でmCNM生成物を形成する化学反応を用いる一方、CVDは、一般に、気固界面で起こる。
【0025】
[0033] 本開示の実施形態とCVD方法との間にはまた、さらなるわずかな相違がある。本開示の実施形態は、カソード上の成長界面の近くにより高い密度の反応性炭素(溶融電解質媒体)を提供する。CVDは、CVD方法の際に基材に電場を印加しても又は印加しなくてもよいが、本開示の実施形態は、mCNM生成物の成長の際にカソードに隣接する二重層を通して急速に減少する強い電場を常に印加する。CVDは、CNTを成長させる炭素の遷移金属核形成に関連している。炭素を溶解させる炭化物の能力、それによって、CNT又はmCNTの核形成成長が、本開示の実施形態の電気化学的環境に適用されることは、過去に想定されていなかった。
【0026】
[0034] 本明細書において磁性カーボンナノ材料と呼ばれる、炭化鉄又は他の強磁性材料を含有するカーボンナノ材料が、磁石に結合され、医薬及び触媒反応を含む幅広い分野のために関心を集めている。公知の磁性材料としては、限定はされないが、鉄、ニッケル、コバルト、ガドリニウム、サマリウム、ネオジム、及び鋼などのこれらの磁性材料の1つ以上を含有する合金、及びかなりの、ただしより小さい強磁性、常磁性又は反磁性特性を有する材料が挙げられる。これらの磁性材料のそれぞれは、本明細書において「磁性添加剤成分」と呼ばれることがあり、電気合成方法によってmCNMの形成に寄与し得る任意の他の材料と同様に本開示の実施形態内で想定される。標的化薬物送達及びイメージングのためのツールとして、磁気共鳴イメージング(MRI)などのイメージング、幹細胞、並びに結腸癌、リンパ腺癌、黒色腫及び膀胱癌の治療のための抗癌剤において使用されるなどの、医療用途におけるmCNM生成物の多くの使用がある。
【0027】
[0035] 触媒用途のために、磁性材料、ひいては再生可能ナノスケール及び樹状材料の分野が、研究されており、関心を集めている。特殊な用途としては、mCNT、磁性グラフェン、及び磁性カーボンスフィア(微小球状炭素)及びナノオニオン触媒が挙げられる。
【0028】
[0036] 特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての専門用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0029】
[0037] 本明細書において使用される際、「約」という用語は、所与の値からの約+/-10%の変動を指す。このような変動が、具体的に言及されているか否かにかかわらず、本明細書において提供される任意の所与の値に常に含まれることが理解されるべきである。
【0030】
[0038] 本明細書において使用される際、「磁性」という用語は、磁場によって影響され得る材料の特性を指し、又はそれは、磁場を生成し得る。材料が、磁場によって影響される場合、それは、磁場の磁力線と整列するようにその配向を変化させ得、及び/又はそれは、磁場の存在に応答して移動し得る。
【0031】
[0039] 本明細書において使用される際、「磁性添加剤成分」という用語は、mCNM生成物を作製するために、本開示の電気合成方法に関与し得る化学成分を指す。磁性材料及び/又は炭化物が、mCNM生成物の構成要素であるカーボンナノスケール構造の上部、内部又は両方に組み込まれるか又は形成されるように、磁性添加剤成分は、方法、システムにおいて及び本開示の組成物の一部として使用され得る磁性材料添加成分若しくは炭化物成長成分又はそれらの組合せであり得る。「磁性材料添加成分」という用語は、磁性材料を含み、磁性材料添加プロセスによってmCNM生成物を作製するのに関与し得る化学成分を指すために本明細書において使用され得る。「炭化物成長成分」という用語は、炭化物核形成プロセスによってmCNM生成物を作製するのに関与し得る炭化物化学成分を指すために本明細書において使用され得る。一般に、mCNM生成物内の1つ以上の構成要素ナノ構造が、磁場内又は磁場の近くに配置されるときに移動可能であるように、磁性添加剤成分は、mCNM生成物に組み込まれる。
【0032】
[0040] ここで、本開示の実施形態は、実施例及び図を参照することによって説明される。
【0033】
[0041] 本開示のある実施形態は、mCNTを含み得るmCNM生成物を製造するための方法に関する。本方法は、電解質媒体を加熱して、溶融電解質媒体を得る工程;電解セルのアノードとカソードとの間に溶融電解質媒体を位置決めする工程;材料添加成分又は炭化物成長成分などの磁性添加剤成分を、電解セル内に位置決めする工程;電解セル中のカソード及びアノードに電流を印加する工程;及びカソードからmCNM生成物を回収する工程を含む。任意に、本方法は、本明細書において所望のナノ構造とも呼ばれ得る所望のナノスケールモルフォロジーのより高い割合を含むようにmCNM生成物を選択する工程をさらに含む。
【0034】
[0042] 電解質媒体を加熱する工程は、当業者によって理解されるように、様々な手段によって達成され得る。例えば、オーブン又は炉などの加熱装置が、それが溶融液体状態に移行するように十分な温度に電解質媒体を加熱するのに使用され得る。したがって、電解質媒体をその融点に加熱するのに必要な温度を達成し得る任意の加熱装置が、本明細書において想定される。
【0035】
[0043] 本開示のある実施形態において、電解質媒体は、1つ以上の炭酸塩を含む。本開示のある実施形態において、電解質媒体は、純粋なLi2CO3(約723℃の融点を有する)、又はNa2CO3、K2CO3、MgCO3、CaCO3、BaCO3などの他の炭酸塩と混合されたLi2CO3、又は酸化物、ホウ酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は硝酸塩を含む他の塩と混合されたLi2CO3を含むリチウム炭酸塩電解質を含む。
【0036】
[0044] 溶融電解質媒体は、電解セルのアノードとカソードとの間に位置決めされる。電解セルは、本開示の電解反応中に発生する電気化学環境に直面してその構造的完全性を維持し得る任意のタイプの容器であり得る。電解セルは、所望の材料で作製され得るか又は所望の材料で被覆される1つ以上の壁を有する。
【0037】
[0045] 磁性添加剤成分は、電解質媒体の構成要素であり得るか、又は他の形で本明細書に開示される電気合成方法の前若しくはその間に電解質媒体に加えられる化学成分を指す。本開示のある実施形態において、磁性添加剤成分は、磁性材料添加成分又は炭化物成長成分、それらの任意の組合せであり得る。磁性添加剤成分は、電解セルの1つ以上の壁に由来し得る。本開示のある実施形態において、磁性添加剤成分は、アノードに由来する。本開示のある実施形態において、磁性添加剤成分は、カソードに由来する。本開示のある実施形態において、磁性添加剤成分は、電解質媒体に加えられる鉄ベース添加剤に由来する。本開示のある実施形態において、磁性添加剤成分は、電解質媒体に由来する。本開示のある実施形態において、磁性添加剤成分は、電解セルの1つ以上の壁、アノード、カソード、電解質媒体に加えられる鉄ベース添加剤又は電解質媒体の任意の組合せに由来する。
【0038】
[0046] 磁性添加剤成分は、好適な量で電解質媒体に加えられ得る。例えば、本開示のある実施形態において、磁性添加剤成分は、約0.001モーラル~約10モーラル又はそれ以上の量で電解質媒体に加えられる。本開示のある実施形態において、磁性添加剤成分は、約0.003モーラル~約3モーラルの量で、約0.01モーラル~約1モーラル、又は0.03モーラル~約0.3モーラルの量で電解質媒体に加えられる。本明細書において使用される際、「モーラル」という用語は、電解質媒体1キログラム当たり1モルの磁性添加剤成分を指す。本開示の他の実施形態において、磁性添加剤成分は、約0.03~0.06モーラル、0.07~0.10モーラル、0.03~0.05モーラル、0.03~0.05モーラル、0.10~0.13モーラル、0.14~0.17モーラル、0.18~0.21モーラル、0.22~0.25モーラル、0.26~0.30モーラルの量で加えられる。本開示の好ましい一実施形態において、磁性添加剤成分は、約0.1モーラルの量で加えられる。
【0039】
[0047] 本開示のある実施形態において、電解質媒体は、電解セルの内部で溶融され得、又はそれは、セルの外部で溶融され、それに移され得る。電解反応は、ある期間にわたって行われ得、それによって、溶融電解質媒体が冷却し得るため、電解セルは、それ自体の一体型の加熱装置とともに構成され得、又はそれは、電解質媒体が所望の期間にわたって溶融状態に維持されるように、電解セルの外部にある外部加熱装置によって加熱されるように構成され得る。さらに、及び何らかの特定の理論によって制約されるものではないが、加熱装置なしで、熱が、CO2の発熱反応及び電解過電圧によって生成される抵抗加熱の両方によって加えられる。
【0040】
[0048] 本開示のある実施形態において、電解セルは、電解質媒体を、少なくとも約375℃に、少なくとも約400℃に、少なくとも約500℃に、少なくとも約600℃に、約650℃に、少なくとも約675℃に、少なくとも約700℃に、少なくとも約725℃に、少なくとも約750℃に、少なくとも約775℃に、少なくとも約800℃に、少なくとも約825℃に、少なくとも約850℃に、少なくとも約875℃に、少なくとも約900℃に、又は少なくとも約1000℃に維持するように構成され得る。
【0041】
[0049] アノードは、様々な金属又は合金で作製され得る。一部のアノードは、ニッケル、クロム、鉄又はそれらの組合せを含む材料で作製され得る。本開示のアノードのための好適な材料のいくつかの非限定的な例としては、実質的に純粋なニッケル、実質的に大部分がニッケルから構成される合金、いくらかのニッケルから構成される合金、実質的に純粋なクロム、実質的に大部分がクロムから構成される合金、いくらかのクロムから構成される合金、実質的に純粋な鉄、実質的に大部分が鉄から構成される合金、いくらかの鉄から構成される合金、又はそれらの組合せが挙げられる。例えば、Inconel 718又は他のInconel、例えば、限定はされないが、Inconel 600及びInconel 625、Nichrome A(約80%のニッケル及び約20%のクロムから構成される)、Nichrome C(およそニッケル、鉄及びクロムから構成される)、Incoloy合金(約40%の鉄、約30~35%のニッケル及び約19~23%のクロムから構成されるIncoloy 800など)又はそれらの組合せが、本開示の実施形態においてアノードとして使用するのに好適であり得る。アノードは、形状が平面、又は溶融電解に導電性の他の形状であってもよく、電解セル内に適合するために様々な寸法で作製され得る。
【0042】
[0050] 本開示のある実施形態において、磁性添加剤成分は、アノードに由来し得、磁性添加剤成分は、アノードの全材料の約0.001重量%~約100重量%の量を含み得る。本開示のある実施形態において、磁性材料は、アノードの全材料の約0.01重量%~約99重量%の量を、約0.1重量%~約90重量%、又は1重量%~約90重量%、又は約10重量%~約50重量%の量で含み得る。
【0043】
[0051] 本開示の他の実施形態において、磁性添加剤成分は、約0.01~19重量%、10~20重量%、10~20重量%、30~40重量%、40~50重量%、50~60重量%、60~70重量%、70~80重量%、90~100重量%の量で加えられる。本開示の好ましい一実施形態において、重量%は、30%~約50重量%である。本開示の他の実施形態において、アノード中の磁性添加剤成分は、約80重量%の1つの磁性金属及び20%の別の磁性金属の量などの、2つ以上の磁性材料を含有する合金に加えられる。
【0044】
[0052] カソードアノードは、様々な金属又は合金で作製され得る。一部のカソードは、銅、亜鉛、鉄又はそれらの組合せを含み得る材料で作製され得る。本開示のカソードのための好適な材料のいくつかの非限定的な例としては、実質的に純粋な銅、実質的に大部分が銅から構成される合金、いくらかの銅から構成される合金、実質的に純粋な亜鉛、実質的に大部分が亜鉛から構成される合金、いくらかの亜鉛から構成される合金、実質的に純粋な鉄、実質的に大部分が鉄から構成される合金、いくらかのクロムから構成される合金、実質的に純粋な鉄、実質的に大部分が鉄から構成される合金、いくらかの鉄から構成される合金、又はそれらの組合せが挙げられる。例えば、Muntz真ちゅうなどの真ちゅうは、本開示の実施形態においてカソードとして使用するのに好適であり得る。カソードは、形状が平面、又は溶融電解に導電性の他の形状であってもよく、電解セル内に適合するために様々な寸法で作製され得る。
【0045】
[0053] 磁性添加剤成分は、カソードに由来し得、磁性添加剤成分は、カソードの全材料の約0.001重量%~約100重量%の量を含み得る。本開示のある実施形態において、磁性添加剤成分は、カソードの全材料の約0.01重量%~約99重量%の量を、約0.1重量%~約90重量%、又は1重量%~約90重量%、又は約10重量%~約50重量%の量で含み得る。本開示の他の実施形態において、磁性添加剤成分は、約0.01~19重量%、10~20重量%、30~40重量%、40~50重量%、50~60重量%、60~70重量%、70~80重量%、90~100重量%の量でカソード材料に加えられる。本開示の好ましい一実施形態において、磁性添加剤成分は、全カソード材料の30%~約50重量%でカソードに加えられる。本開示の他の実施形態において、カソード中の磁性添加剤成分は、2つ以上の磁性添加剤成分、例えば、全カソード材料中の磁性添加剤成分の総量を基準にして又は全カソード材料を基準にして約80重量%の1つの磁性添加剤成分及び20%の別の磁性添加剤成分の量を含有する合金に加えられる。磁性添加剤成分を電解セル内に位置決めする工程は、電解反応が起こるとき、磁性添加剤成分が、mCNM生成物の成長を促進するように、金属塩及び/又は炭化物を含む磁性添加剤成分を、電解セルに加えることを含む。本開示のある実施形態において、炭化物は、mCNM生成物内のCNT及びmCNTの成長をもたらす1つ以上の核形成反応に関与し得る。本開示のある実施形態において、炭化物は、磁性であり得る。
【0046】
[0054] 本開示のある実施形態において、磁性添加剤成分は、金属、限定はされないが、金属炭化物を含む金属塩又は非金属炭化物又はそれらの任意の組合せとして由来し得る。
【0047】
[0055] 金属炭化物の好適な例としては、限定はされないが:炭化鉄、炭化ニッケル、炭化コバルト、炭化ジルコニウム、炭化クロム、炭化タンタル、炭化ハフニウム又はそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0048】
[0056] 非金属炭化物の好適な例としては、限定はされないが:炭化ケイ素、炭化ゲルマニウム又はそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0049】
[0057] 本開示のある実施形態において、電流は、実質的に一定の電流密度で印加される。例えば、印加された電流の電流密度は、約0.001A/cm2~約10A/cm2であり得る。ある実施形態において、印加された電流の電流密度は、約0.003A/cm2~約3A/cm2;約0.01A/cm2~約1A/cm2;約0.03A/cm2~約0.6A/cm2;又は約0.06A/cm2~約0.3A/cm2であり得る。本開示のある実施形態において、電流密度は、約0.1A/cm2である。
【0050】
[0058] 750℃の溶融Li2CO3電解質は、式1(EQN.1)にしたがって、0.2モーラルの酸化リチウムの平衡濃度を含む:
Li2CO3(溶融された)⇔Li2O(溶解された)+CO2(気体) (EQN.1)。
【0051】
[0059] CO2溶融炭酸塩電解のプロセスにおいて、小さい遷移金属「シード」が、CNT生成物の末端で観察され、溶融炭酸塩CNT成長の機構が、先端及び基底部の両方の遷移金属核形成プロセスによって活性化され得ることが示された。
【0052】
[0060] リチウム炭酸塩電解質中のCO2の還元は、何らかの特定の理論によって制約されるものではないが、式2(EQN.2)にしたがって進行する4e-プロセスである:
Li2CO3(溶融された)→C(ナノマテリアル;)+O2(気体)+Li2O(溶解された) (EQN.2)。
【0053】
[0061] 溶融電解質媒体に加えられるCO2は、何らかの特定の理論によって制約されるものではないが、式3(EQN.3)にしたがって、酸化リチウムと化学的に反応して、Li2CO3を再生及び改質する:
CO2(大気又はスタック)+Li2O(溶解された)⇔Li2CO3(溶融された) (EQN.3)。
【0054】
[0062] EQN.2が、EQN.3と組み合わされると、これは、何らかの特定の理論によって制約されるものではないが、4e-移動反応式4(EQN.4)にしたがって、正味の電解反応を生じる:
CO2(気体)→C(ナノマテリアル)+O2(気体) (EQN.4)。
【0055】
[0063] 炭酸リチウムは、約723℃で溶融する。800℃より高い温度で、何らかの特定の理論によって制約されるものではないが、二、むしろ四、電子還元が、950℃までますます優位であり、電解生成物は、何らかの特定の理論によって制約されるものではないが、2e-移動反応式5(EQN.5)にしたがって、炭素よりむしろ、純粋な一酸化炭素である:
CO2(気体)+2e-→CO2(気体)+1/2O2(気体) (EQN.5)。
【実施例】
【0056】
[0064] 実施例
[0065] 実施例1
[0066] 本開示の方法を行うために、電解質媒体を、炭酸リチウム(Li2CO3、純度約99.5%)及び酸化リチウム(Li2O、純度約99.5%)を用いて作製した。加熱要素を用いて、電解質媒体を、溶融されるまで加熱して、溶融電解質を得た。次に、溶融電解質媒体を、間にプレナムを画定するために1つ以上の壁を含む電解セル内に位置決めした。以下にさらに説明されるように、電解セルの壁は、ステンレス鋼、例えばステンレス鋼304、又は鋳鉄から構成されていた(又はそれらで被覆されていた)。電解セル内で、アノード及びカソードを位置決めした。アノードは、Inconel 718から構成されていた。アノードは、電解操作中に酸素を生成するために選択され得る。カソードは、約59~61%の銅及び約39~41%の亜鉛及びいくらかの微量の鉄の合金であるMuntz真ちゅうから構成されていた。
【0057】
[0067] 溶融電解質媒体が、電解セル内及びアノードとカソードとの間に位置決めされるとき、電流が、アノード及びカソードに印加されて、電解反応が開始される。この実施例において、電流は、約0.5アンペア(A)であり、それが、一定の電流密度で印加された。
【0058】
[0068] 電解反応中、カーボンナノ材料生成物を、カソードにおいて回収した。電解反応が、電流を除去することによって停止されたとき、カソードを、電解セルから取り出し、冷却させた。次に、カーボンナノ材料生成物は、軽く叩くことによって、冷却されたカソードから回収され得る。次に、カーボンナノ材料生成物を、脱イオン水DI水又は6モル以下の塩酸のいずれかで洗浄した。両方のタイプの洗浄が、同様のカーボンナノ材料生成物を生じたが、酸洗浄が、洗浄を加速したことが観察された。次に、洗浄されたカーボンナノ材料生成物を、ろ紙ろ過又は遠心分離のいずれかによって、洗浄溶液から分離した。両方の分離手法が、同様のカーボンナノ材料生成物を生じたが、遠心分離機の使用が、分離工程を加速したことが観察された。
【0059】
[0069]
図1Aは、本開示の実施形態にしたがってカーボンナノ材料生成物を製造するのに使用されたステンレス鋼304電解セルの一例の写真を示す。純粋なCO
2ガスを、酸化リチウム(Li
2CO
3のkg当たり1モルのLi
2O)とともに及びそれを伴わずに溶融炭酸リチウム電解質中にバブリングした。
図1Bに見られるように、短時間の活性化後、電解反応生成物の気相部分が、約100%の酸素に増加し、電解反応を免れたCO
2はなかった。電解は、
図1Aのステンレス鋼304電解セル中で行われる。電解セル内で、アノードは、Inconel 718で作製され、カソードは、Muntz真ちゅうで作製されていた。電解反応中、上記のEQN.4にしたがって、カーボンナノ材料生成物が、カソードにおいて成長し、冷却、及び洗浄の後、カーボンナノ材料は、カーボンナノチューブであることが分かる。抽出されたカソードは、冷却され、固体生成物が、カソードから容易に剥がされ、過剰な電解質媒体を除去するために洗浄された。予想外にも、電解反応が、セルの壁中に少なくともいくらかの鉄を有する電解セルにおいて行われた場合、カーボンナノ材料生成物は、磁性であることが分かった。
図1Cに示されるように、磁性CNTは、磁石に強く結合した。
【0060】
[0070] 実施例2
[0071] この実施例は、実施例1と同じ工程の多くを使用し、1つの例外は、空気からの純粋なCO2又は濃縮CO2ではなく、空気中CO2(周囲空気中約216ppmのCO2)の導入であり、これは、溶融電解質媒体中にバブリングされた。この実施例において、使用される電解質媒体は、本明細書に記載される他の実施例と同様に電流を印加することによって電解反応を開始させる前の約24時間にわたって熱風に曝されたLi2CO3溶融電解質媒体であった。アノードは、Inconel 718の約5cm2のプレートであり、カソードは、Muntz真ちゅうで作製されていた。この実施例において製造されたカーボンナノ材料も磁性であった。
【0061】
[0072] カーボンナノ材料生成物の構造モルフォロジーを特性評価するために、生成物を、走査電子顕微鏡法(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてイメージングした。X線回折(XRD)を用いて、カーボンナノ材料生成物の原子構造を特性評価した。
【0062】
[0073] カーボンナノ材料生成物を、カソードから回収し、洗浄し、分離し、EDS、FEI Teneo LV SEMを備えたPHENOM Pro Pro-X走査型電子顕微鏡(SEM)によって、及びFEI Teneo Talos F200X透過型電子顕微鏡(TEM)によって分析した。XRD粉末回折データを、Rigaku Miniflex回折計において回収し、Jadeソフトウェアパッケージを用いて分析した。
【0063】
[0074] カーボンナノ材料生成物の基本モルフォロジーは、それらが、セラミック(アルミナ)電解セル又は鋼電解セルのいずれで製造されたかにかかわらず、本質的に同じであった。過剰な鉄が、電解反応中にアノードから導入されるとき、観察された例外が、後の実施例に示される。
【0064】
[0075]
図2Aは、非常に均一なカーボンナノ材料生成物、この場合、反応剤として空気からのCO
2を用いたカーボンナノチューブ(CNT)を明らかにするSEM画像である。
図2Aにおいて、スケールバーは2nmである。
図2B及び
図2Cは、CNT壁、及びCNT壁間のグラフェンの間隔が0.33~0.34nmであると予想されることを示すTEM画像である(2つの赤色のバーの間及び
図2D中の両側矢印の下の10個のピークのそれぞれの間の距離を参照)。
図2Bにおいて、スケールバーは、200nmであり、
図2Cにおいて、スケールバーは、2nmである。
【0065】
[0076] 実施例3
[0077] さらなる磁性CNTは、本開示の実施形態にしたがって作製されたカーボンナノ材料生成物の一部として作製された。この実施例において、アノードが鉄を含有していない場合、磁性CNTが作製された。
【0066】
[0078] 電解反応を、ニッケルで裏打ちされた1つ以上の壁、又はニッケル合金を有する電解セルを用いて行って、電解セル内の鉄の存在を減少させた。電解質媒体は、約0.67mのLi2O(全電解質媒体の重量と比較して重量基準で約2%)を含有する溶融Li2CO3であり、それは、約770℃の温度に維持された。電解セルは、CO2を含む空気に開放されていた。アノードは、Nichrome Aで作製され、カソードは、Muntz真ちゅうで作製されていた。電解反応は、約0.1A/cm2の実質的に一定の電流密度で25Aの電流を印加することによって起こった。
【0067】
[0079] 電解反応の約4時間後、カソードを、電解セルから取り出し、冷却した。固体カーボンナノ材料生成物をカソードから剥がし、洗浄して、顕微鏡検査の前に過剰な電解質媒体を除去した。
【0068】
[0080] カーボンナノ材料生成物は、複数のSEM及びTEMの目視検査によって決定される際、約98%の均一なCNTであることが分かった。クーロン効率が、この電解反応中に100%に近づく。電解のクーロン効率は、以下の式6(EQN.6)によって決定される炭素に転化された、印加された定電流充電のパーセントとして計算される:
100%×C実験的/C理論的 (EQN.6)。
【0069】
[0081] これは、カソード(C実験的)から取り出された洗浄された炭素生成物の質量によって測定され、Q、電解中に通された時間積分電荷量、F、ファラデー(96485As mol-1 e-)、及びn=4価炭素の4e-mol-1還元から決定される理論的質量、C理論的=(Q/nF)×(12.01g C mol-1)から計算される。
【0070】
[0082]
図3A、
図3B及び
図3Cは、実施例3のカーボンナノ材料生成物の各SEM画像である。
図3Aは、200μmのスケールバーを有し、
図3Bは、10μmのスケールバーを有し、
図3Cは、10μmのスケールバーを有する。
図3D及び
図3Eはそれぞれ、3μm及び1μmのスケールバーを有する高分解能SEM画像である。
【0071】
[0083] 実施例4
[0084] さらなる磁性CNTを、本開示の実施形態にしたがって作製されたmCNM生成物の一部として作製した。この実施例において、磁性CNTを、電解質媒体の2つのサンプルを用いて作製した。サンプルAのための第1の電解質媒体が、電解工程を開始する約1日前に溶融され;サンプルAのための電解に使用される第2の電解質媒体が、新たに溶融された。
【0072】
[0085] 電解反応を、ステンレス鋼304を含む1つ以上の壁を有する電解セルを用いて行った。電解質媒体は、約0.67mのLi2O(全電解質媒体の重量と比較した重量基準で約2%)を含有する溶融Li2CO3であり、それは、約770℃の温度に維持された。電解セルは、CO2を含む空気に開放されていた。アノードは、Nichrome Aで作製され、カソードは、Muntz真ちゅうで作製されていた。電解反応は、約0.1A/cm2の実質的に一定の電流密度で、25Aの密度の実質的に一定の電流で電流を印加することによって起こった。
【0073】
[0086] 電解反応の約4時間後、カソードを、電解セルから取り出し、冷却した。固体カーボンナノ材料生成物を、カソードから剥がし、洗浄して、顕微鏡検査の前に過剰な電解質媒体を除去した。
【0074】
[0087]
図4Aは、サンプルAのx線回折(XRD)の結果を示す。
図4Bは、サンプルBのためのXRD結果を示す。
図4Cは、生成物(黒鉛状炭素、炭化鉄、及びニッケル又はクロムリチウム酸化物に関連する化合物のライブラリーXRDを示す。サンプルAのXRD結果は、サンプルBのXRD結果より黒鉛状炭素生成物中の大幅に多い炭化鉄のエビデンスを示した。いずれの電解反応後にも腐食の明らかな兆候はなく、サンプルAの前の長い電解質媒体浸漬が、生成物中のより多い炭化鉄をもたらしたことが明らかである。顕著なピークが、x=19°、y=26°、及びz=約44°の2Φで観察される。具体的には、XRDライブラリーと比較して、両方のサンプルA及びサンプルBが、x及びzでクロム又はニッケル酸化物ピークのいずれかを示し(
図4A及び
図4Bを参照)、両方のサンプルが、yで黒鉛状ピークを示した。しかしながら、サンプルBと比較したピークx又はyのいずれかに対するピークzの相対高さである、サンプルAにおけるピークの比率は、y及びzで炭化鉄スペクトルの強い寄与を示す。さらに、約44°で二重線ピークがあり、サンプルAにおいて、右側ピーク又はピークxのいずれかと比較して左側ピークの優位が、炭化鉄の寄与と一致している。サンプルAのEDSは、サンプルAのXRD結果と一致しており、これは、カーボンナノ材料生成物上の3つの点における元素分析を示し、1つの点は、100.0%原子パーセントのCであり、1つの点は、94.9%のC及び5.1%のFeであり、1つの点は、92.4%のC、5.8%のFe及び1.9%のCrである。炭化物を形成する鉄の供給源が、明らかに電解セルの1つ以上の壁に由来する一方、別の供給源が、アノードの成分の酸化から(鉄含有アノードの場合)、電解質媒体への直接の添加剤として、又はカソードの成分から(鉄含有カソードの場合)、又はそれらの任意の組合せであり得ることが明らかである。
【0075】
[0088]
図5は、サンプルAのEDSデータを示し、これは、サンプルAのXRD結果と一致している。EDSデータは、カーボンナノ材料生成物上の3つの位置における元素分析を示す:
図5Aは、94.9%の炭素及び5.1%の鉄を含む第1の点(
図5Aの挿入画像中の+
3を参照、スケールバーは10μmである)を示し、
図5Bは、92.4%の炭素、5.8%の鉄及び1.9%のCrを含む第2の位置(
図5Bの挿入画像中の+2位置を参照、スケールバーは10μmである)を示し;
図5Cは、100.0%原子パーセントの炭素である第3の位置で得られたEDSデータを示す。
【0076】
[0089] 何らかの特定の理論によって制約されるものではないが、炭化物を形成するための鉄の供給源は、電解セルの1つ以上の壁に由来する可能性が最も高い。しかしながら、鉄の別の供給源は、アノードの成分の酸化から(鉄含有アノードの場合)、鋳鉄粉末、鉄金属、鋼、ステンレス鋼、又は他の鉄含有金属合金、又は限定はされないが、FeO、Fe2O3、Fe3O4を含む酸化鉄、若しくは任意の他の鉄含有塩などの電解質媒体に加えられ得る直接の鉄ベース添加剤として、又は他の場合、又はカソードの成分から(鉄含有カソードの場合)、或いはそれらの任意の組合せであり得る。
【0077】
[0090]
図6及び
図7は、合成されたmCNM生成物の2つの異なる領域の高分解能TEMからのEDS(明視野(BF)、暗視野(DF)及び高角度環状暗視野(HAADF)を含む)画像である。第1の領域(
図6に示される)は、カーボンナノチューブの中空コアにおけるものであり、CNT生成物は、炭素組成物壁を有し、コア中に金属を有さない。第2の領域(
図7に示される)は、カーボンナノチューブの金属コアであり、主に鉄及び少量のニッケルが認められる。
【0078】
[0091] 実施例5
[0092] さらなる磁性CNTを、本開示の実施形態にしたがって作製されたカーボンナノ材料生成物の一部として作製した。この実施例において、磁性CNTを、過剰な鉄中で作製した。
【0079】
[0093] 電解反応を、ステンレス鋼304を含む1つ以上の壁を有する電解セルを用いて行った。電解質媒体は、溶融Li2CO3であった。電解セルは、CO2を含む空気に開放されていた。アノードは、Incoloy合金(約40%の鉄、約30~35%のニッケル及び約19~23%のクロムから構成される)で作製され、カソードは、Muntz真ちゅうで作製されていた。電解反応は、約0.1A/cm2の実質的に一定の電流密度で、8Aの電流を印加することによって起こった。
【0080】
[0094] 電解反応の約4時間後、カソードを、電解セルから取り出し、冷却した。固体カーボンナノ材料生成物を、カソードから剥がし、洗浄して、顕微鏡検査の前に過剰な電解質媒体を除去した。
【0081】
[0095] 高含量の鉄では、アノードは、電解反応中に酸化鉄を連続的に放出した可能性があることが留意され、これは、この電解反応が、0.1A/cm2で、純粋なLi2CO3中で起こったためであり、測定されたクーロン効率が、約89%に低下することが観察された。
【0082】
[0096]
図8A、
図8B及び
図8Cは、この実施例5からのカーボンナノ材料生成物のSEM画像を示す。これらの画像中のスケールバーはそれぞれ、30μm、20μm、及び10μmである。
図8D、
図8E及び
図8Fは、この実施例5からのカーボンナノ材料生成物のTEM画像を示す。これらの画像中のスケールバーはそれぞれ、500nm、50nm、及び10nmである。カーボンナノ材料生成物は、
図8に示されるように、少なくともいくらかの磁性CNTを含んでいた。
図2及び
図3に示されるCNTと異なり、
図8に示されるCNTは、CNTの外部に示されるグラフェン被覆ノジュールを含み、CNTの内部は、堆積物で部分的に充填される。同様の、ノジュール及び充填が、化学蒸着(CVD)を用いた炭化鉄に駆動されるCNT成長において観察された。これらのCVDで形成されたCNTにおいて、ノジュール及びCNT充填の内部は、炭化鉄として既に特定された。
図8FのTEM画像に示されるように、層間の格子間距離は、わずか0.20nmであり、これは、
図2Dに示されるように、CNTグラフェン壁間の0.33~0.34nmのグラフェン格子間層より著しく小さい。実施例6のカーボンナノ材料生成物において認められる0.20nmの格子間分離は、カーボンナノ構造で既に特定された分離と類似して見え、それらの以前の構造では、格子間分離は、炭化鉄として特定された。
【0083】
[0097] 実施例6
[0098] 前述された実施例に基づいて、電解反応が、低い濃度の加えられたLi2Oを有するLi2CO3溶融電解質媒体中で行われ、又は24時間にわたってエージングされた電解質媒体が、エージングされていない同等の純粋なLi2CO3電解質媒体より、カーボンナノ材料生成物内でより高い収量の均一なCNTをもたらし得ることが観察された。これは、エージングされていない純粋な溶融Li2CO3電解質媒体を用いて行われるが、ステンレス鋼容器ではなく鋳鉄容器中で行われる電解反応が、黒鉛状構造の炭化鉄形成を促進し得、電解反応のより均一なカーボンナノ材料生成物をもたらし得るという考えにつながる。
【0084】
[0099] 実施例6の電解反応を、約10cmの直径及び約5cmの高さである鋳鉄容器(2~4.3%の炭素を含有する鉄、
図9A(i)を参照)である電解セルを用いて行った。電解質媒体は、容器の表面層を除去するために、一晩、鋳鉄容器の内部で加熱されたLi
2CO
3であった。次に、約300gの新たなLi
2CO
3が、容器中に加えられ、約770℃に加熱され、溶融電解質媒体として働く。電解セルは、CO
2を含む空気に開放されていた。アノードは、Nichromeで作製され、カソードは、Muntz真ちゅうで作製されていた。電解反応は、約0.1A/cm
2の実質的に一定の電流密度で、2Aの電流を印加することによって起こった。
【0085】
[00100] 電解反応の約4時間後、カソードを、電解セルから取り出し、冷却した(
図9A(ii)及び(iii)を参照)。固体カーボンナノ材料生成物を、カソードから剥がし、洗浄して、顕微鏡検査の前に過剰な電解質媒体を除去した。
【0086】
[00101]
図9B~
図9Fは、この実施例6のカーボンナノ材料生成物のSEM画像を示す。
図9Bは、200μmのスケールバーを有し、
図9Cは、20μmのスケールバーを有し、
図9Dは、5μmのスケールバーを有し、
図9E及び
図9Fはそれぞれ、10μmのスケールバーを有する。カーボンナノ材料生成物内の磁性CNTは、非常に均一であり、高いアスペクト(長さ対直径)比を有する。EQN.6によって測定される際のクーロン効率は、100%に近づき、生成物は、均一(純度約98%)な極薄、磁性カーボンナノチューブであった。
【0087】
[00102] 何らかの特定の理論によって制約されるものではないが、本明細書に記載される実施例は、電解反応中に溶融電解質媒体に通してバブリングされたCO2の生成物として、又はCO2を含有する空気若しくはCO2の他の供給源への曝露によって、強磁性カーボンナノチューブを提供する。mCNTを作製する機構は、遷移金属媒介性プロセスではなく、磁性材料添加プロセス又は炭化物核形成プロセスによるようである。実施例6において、溶融炭酸リチウム電解質媒体を用いたCO2電解のための電解セルとしての鋳鉄容器の使用により、効率的なクーロン方式で高いアスペクト比を有する非常に均一なmCNTが製造されることも観察された。