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特許7368649股下寸法調整用の芯部材およびそれを有するズボン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】股下寸法調整用の芯部材およびそれを有するズボン
(51)【国際特許分類】
   A41D 1/06 20060101AFI20231017BHJP
   A41D 27/06 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A41D1/06 M
A41D27/06 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023041454
(22)【出願日】2023-03-16
【審査請求日】2023-03-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508177943
【氏名又は名称】株式会社このみ
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】相浦 孝行
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02483952(US,A)
【文献】実開平02-010420(JP,U)
【文献】特開2022-124736(JP,A)
【文献】特開2019-094600(JP,A)
【文献】登録実用新案第3147344(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1/06-1/12
A41D 27/06
A41F 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズボンの裾部の内側に接着または縫い付けられる股下寸法調整用の芯部材であって、
可塑性を有する、不織布または織布を樹脂で固めた素材で形成された、単一の帯状本体部から構成されており、
当該帯状本体部は、長手方向における中央位置近傍において、短手方向における端部が厚み方向に全て切断された切り込みを有しており、前記切り込みが形成された位置において、前記帯状本体部を長手方向に折れ曲げ可能な折れ部が形成可能となっている、股下寸法調整用の芯部材。
【請求項2】
前記折れ部を長手方向において折り曲げた際に、
前記折れ部の湾曲率が、前記芯部材の全長を円周とする円の湾曲率の1/2以下となる、あるいは、
前記折れ部を中心に前記帯状本体部を右辺と左辺とに分けた場合に、前記右辺と前記左辺とがなす角度が鋭角となる、請求項1に記載の股下寸法調整用の芯部材。
【請求項3】
前記切り込みは、V字状の切り欠きである、請求項1に記載の股下寸法調整用の芯部材。
【請求項4】
前記帯状本体部は、長手方向の両端に、端部切り欠きを有する、請求項1に記載の股下寸法調整用の芯部材。
【請求項5】
前方クリースおよび後方クリースを有するズボンであって、
請求項1ないし4のいずれかに記載の股下寸法調整用の芯部材が裾部に取り付けられており、
前記股下寸法調整用の芯部材の各端部が前方のクリース近傍に位置し、後方のクリース近傍に、前記切り込みおよび前記折れ部が位置する、ズボン。
【請求項6】
前記ズボンは、前記裾部において、前方のクリースよりも後方のクリースが広がっているとともに、前記裾部においても、後方のクリースの折れ目が形成されている、請求項5に記載のズボン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズボンの裾部に取り付けることで、ズボンの股下の寸法を簡易に調整することができる、股下寸法調整用の芯部材およびそれを有するズボンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脚部にクリースと呼ばれる折り目を付けた、スラックスなどのズボンが提供されている。クリースは、見た者に精悍な印象を与えるため、クリースのあるズボンにおいては、クリースが綺麗に形成されていることが好ましい。
【0003】
このようなクリースのあるズボンの裾部に取り付けることで、ユーザがズボンの股下の寸法を簡易に調整できるようにした芯部材が知られている。たとえば、特許文献1では、単一の帯状の芯部材をズボンの裾部に取り付ける構成が開示されている。また、特許文献2では、左右一対の板状の芯部材をズボンの裾部に取り付ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国出願公開第2015/0150325号明細書
【文献】特許第6530476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、クリースのあるズボンにおいては、裾部までクリースが形成されることが外観上好ましい。この点、特許文献1に記載の芯部材では、芯部材が前方クリースを跨がないように、芯部材の端部を前方クリース近傍に位置させることで、裾部においても、前方クリースの折り目が付く構成となっている。しかしながら、後方クリースの位置においては、大きく湾曲した芯部材が後方クリースを跨いだ状態で取り付けられるため、裾部において、後方クリースの折り目が形成されにくい構成となっていた。
一方で、特許文献2に記載の芯部材では、左右一対の芯材が前方クリースおよび後方クリースの両脇に配置されるため、裾部においても、前方クリースおよび後方クリースの両方で折り目を付けることができる。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の芯部材では、後方クリースを挟んだ形で左右一対の芯部材が配置されるため、裾部における後方クリースの折り目の広がりが狭く(後方クリースの折り目における角度が鋭角と)なりすぎてしまい、当該芯部材を取り付けたズボンを着用して歩いた場合に、後方クリースの折り目や左右一対の芯部材が、くるぶしや後ろ足首に当たってしまい、ユーザに不快感を与えてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、ズボンの股下寸法を簡易に調整することができ、ズボンの履き心地も良好とすることができ、かつ、ズボンの裾部までクリースの折り目を形成できる股下寸法調整用の芯部材およびそれを用いたズボンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る股下寸法調整用の芯部材は、ズボンの裾部の内側に接着または縫い付けられる股下寸法調整用の芯部材であって、可塑性を有する、不織布または織布を樹脂で固めた素材で形成された、単一の帯状本体部から構成されており、当該帯状本体部は、長手方向における中央位置近傍において、短手方向における端部が厚み方向に全て切断された切り込みを有しており、前記切り込みが形成された位置において、前記帯状本体部を長手方向に折れ曲げ可能な折れ部が形成可能となっている。
上記ズボン股下寸法調整用の芯部材において、前記折れ部を長手方向において折り曲げた際に、
前記折れ部の湾曲率が、前記芯部材の全長を円周とする円の湾曲率の1/2以下となる、あるいは、前記折れ部を中心に前記帯状本体部を右辺と左辺とに分けた場合に、前記右辺と前記左辺とがなす角度が鋭角となる構成とすることができる。
上記ズボン股下寸法調整用の芯部材において、前記切り込みは、V字状の切り欠きである構成とすることができる。
上記股下寸法調整用の芯部材において、前記帯状本体部は、長手方向の両端に、端部切り欠きを有する構成とすることができる。
本発明に係るズボンは、前方および後方にクリースを有するズボンであって、上記股下寸法調整用の芯部材が裾部に取り付けられており、前記股下寸法調整用の芯部材の各端部が前方のクリース近傍に位置し、後方のクリース近傍に、前記切り込みおよび前記折れ部が位置する。
上記ズボンにおいて、前記ズボンは、前記裾部において、前方のクリースよりも後方のクリースが広がっているとともに、前記裾部においても、後方のクリースの折れ目が形成されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ズボンの股下寸法を簡易に調整することができ、ズボンの履き心地も良好とすることができ、かつ、ズボンの裾部までクリースの折り目を形成できる、股下寸法調整用の芯部材およびそれを用いたズボンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る芯部材の概要図である。
図2】第1実施形態に係る芯部材を折り曲げた状態を示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係る芯部材を折り曲げた状態を説明するための図である。
図4】第1実施形態に係る芯部材をズボンに取り付けた状態を示す正面図である。
図5】第1実施形態に係る芯部材をズボンに取り付けた状態を示す背面図である。
図6】芯部材をズボンに取り付ける方法を説明するための図である。
図7】第1実施形態に係る芯部材とズボンの裾部との関係を説明するための図である。
図8】第2実施形態に係るズボン芯部材の概要図である。
図9】第2実施形態に係るズボン芯部材を用いた場合の外観を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図を参照して、本発明に係る股下寸法調整用の芯部材について説明する。なお、以下の実施形態では、本発明に係る股下寸法調整用の芯部材を、単に、芯部材と称して説明する。
【0012】
本発明は、クリースのあるズボンの裾部に取り付けることで、ズボンの股下寸法を簡易に調整することができ、ズボンの履き心地も良好とすることができ、かつ、ズボンの裾部までクリースの折り目を形成できる、股下寸法調整用の芯部材およびそれを用いたズボンを提供することを目的とする。ここで、クリースとは、ズボンの脚部の前方および後方のセンター部分に形成される折り目であり、ズボンを着用するユーザのみならず、当該ズボンを着用したユーザを見た者に対しても、精悍な印象や、清潔な印象を与える機能を有する。本発明に係る芯部材では、ユーザがズボンの股下寸法を簡易に調整することができることに加えて、芯部材を取り付けた場合でも、ズボンの裾部までクリースの折り目を形成できることを特徴とする。また、従来の芯部材を取り付けたズボンでは、ユーザが歩行する際に、芯部材を取り付けた裾部がユーザの足に当たってしまい履き心地が悪化してしまう場合があるが、本発明に係る芯部材では、芯部材をズボンに取り付けた場合でも、芯部材を取り付けた裾部がユーザの足に当たってしまうことを抑制し、ズボンの履き心地を良好とすることを目的とする。なお、本発明では、ズボンの脚部のセンター部分に形成される折り目をクリースと称すが、センタークリース、プリースなどと称する場合もある。
【0013】
《第1実施形態》
図1は、第1実施形態に係る芯部材1の概要図であり、図2は、第1実施形態に係る芯部材1を折り曲げた状態を示す斜視図である。図1および図2に示すように、第1実施形態に係る芯部材1は、単一の帯状本体部10により構成されている。なお、第1実施形態に係る芯部材1は、後述するように、ズボン2に縫い付けた状態でズボンと一体に提供されてもよいし、また、ユーザ自身がズボンに取り付けることができるように、ズボン2と分離して、芯部材1単独で提供されてもよい。
【0014】
まず、本実施形態に係る芯部材1を構成する帯状本体部10について説明する。帯状本体部10の素材は、特に限定されないが、たとえば、不織布や織布などの布で構成することができ、不織布または織布を樹脂素材で固めた構成とすることが好ましい。たとえば、帯状本体部10を、ポリエステルまたはポリエステルとナイロンとを混紡した不織布を合成ゴム樹脂で固めて形成することができる。帯状本体部10として不織布を用いることで、芯部材1の軽量化を図ることができ、ユーザが芯部材1の重量に起因して受ける違和感を軽減することができる。また、不織布または織布を樹脂で固めることで、帯状本体部10を頑丈にすることができるとともに、後述する折れ部12における折り目を出すことができる。また、後述するように、ユーザがズボン2の裾部21の幅に合わせて、芯部材1の端部13を切り取る場合に、芯部材1を切り取り易くすることもできる。
【0015】
なお、帯状本体部10の高さ(短手方向の長さ)は、特に限定されず、たとえば2~5cmとすることができる。また、帯状本体部10の長さ(長手方向の長さ)も、特に限定されず、ズボン2の裾部21の周囲に合わせた長さとすることができる。また、ユーザ自身がズボン2の取り付けるため、芯部材1をズボン2と分離して提供する場合には、ズボン2の裾部21の周囲に限定されず、さまざまな大きさのズボン2に取り付けられるように、帯状本体部10の長さを長めとすることが好ましい。たとえば、帯状本体部10の長さを、20~80cmとすることができる。
【0016】
本実施形態に係る芯部材1は、図1に示すように、帯状本体部10の長手方向中央に位置する切り込み11および折れ部12と、両端に位置する左右一対の端部13と、を有する。以下に、第1実施形態に係る芯部材1の各構成について説明する。
【0017】
切り込み11は、帯状本体部10の長手方向中央に形成されている。具体的には、切り込み11は、帯状本体部10の長手方向中央において、上辺側および下辺側から線状に切り込みを入れることで形成される。切り込み11の長さは、特に限定されないが、たとえば0.3~3.0cmとすることができ、より好ましくは0.5~1.5cmとすることができる。
【0018】
折れ部12は、芯部材1を長手方向に折り曲げるための部分である。芯部材1は、ズボン2に芯部材1を取り付ける際に、折れ部12において折り曲げられる。ただし、ユーザ自身が芯部材1をズボン2に取り付けることができるように、芯部材1を、芯部材1単独で(ズボン2とは別に)提供することもでき、この場合、折れ部12が折り曲げられていない状態(折り曲げ可能な状態)で、芯部材1を提供することができる。本実施形態では、帯状本体部10の中央位置の上辺および下辺に切り込み11が形成されているため、上辺の切り込み11と下辺の切り込み11との間が、他の部分と比べて折り曲げが容易となっており、この位置において折り曲げ可能な折れ部12が形成されることとなる。
【0019】
ここで、図3は、第1実施形態に係る芯部材を折り曲げた状態を説明するための図である。芯部材1は、折れ部12で折り曲げた場合に、折れ部12の湾曲率R1が、芯部材1の全長を円周とする円の湾曲率R2よりも小さく(湾曲率R1が湾曲率R2の1/2以下と)なるように構成されている。あるいは、芯部材1は、折れ部12で折り曲げた場合に、折れ部12を中心に帯状本体部10を右辺と左辺とに分けた場合に、右辺と左辺とがなす角度が鋭角、好ましくは60°以下となるように、芯部材1が構成されている。特に、本実施形態では、帯状本体部10が不織布を樹脂で固めた素材で構成されているため、可塑性を有しており、芯部材1は小さい湾曲率R1で湾曲に折れ曲がった状態となる。
【0020】
次に、本実施形態に係るズボン2について説明する。図4は、第1実施形態に係るズボン2の正面図であり、図5は、第1実施形態に係るズボン2の背面図である。図4および図5に示すように、ズボン2は、各足部の下端に裾部21を有し、各足部の前方および後方のセンター部分に前方クリース22および後方クリース23が形成されている。
【0021】
また、図4および図5に示すように、ズボン2の左右の裾部21には、第1実施形態に係る芯部材1がそれぞれ取り付けられている。芯部材1は、ズボン2の裾部21の内側に取り付けられており、外部からは視認できないが、図4および図5に示す例では、説明の便宜のため、ズボン2内側に取り付けた芯部材1を破線で示している。
【0022】
本実施形態では、芯部材1を、ズボン2の裾部21に縫い付ける構成としているが、芯部材1において、裾部21と接する面に粘着テープを設ける構成とすることで、芯部材1を裾部21に接着して取り付ける構成とすることもできる。また、本実施形態に係る芯部材1に接着剤を塗布して、ズボンの裾部21に接着する構成とすることもできる。芯部材1をズボン2に縫い付ける場合、縫い付け方は特に限定されないが、芯部材1が裾部21に取りつられていることが外部から看取できないようにするため、芯部材1を縫い付ける糸がズボン2の外側に出ないように(芯部材1を縫い付ける糸がズボン2の内部だけを通るように)、芯部材1をズボン2の内側からまつり縫いなどで縫い付けることが好ましい。さらに、芯部材1を、不織布または織布を樹脂で固めて構成することで、プラスチック製の芯部材と比べて、芯部材1をそのままズボン2に縫い付けることが可能である。
【0023】
本実施形態では、以下のように、芯部材1を、ズボン2に取り付けることができる。なお、芯部材1のズボン2への取り付けは、工場などにおいて機械または作業者が行う構成とすることもできるが、ズボン2を購入したユーザが自身で行う構成とすることもできる。以下においては、ユーザが、図1に示すような平板状の芯部材1を準備し、自身で芯部材1をズボン2に取り付ける場面を例示して説明する。
【0024】
まず、ユーザは、図2に示すように、芯部材1を、切り込み11が形成された位置において長手方向に折り曲げることで、折れ部12を形成する。そして、ユーザは、図4および図5に示すように、芯部材1の左右一対の端部13が前方クリース22を跨がないで前方クリース22近傍に位置するとともに、折れ部12が後方クリース23近傍に位置するように、芯部材1の位置を調整し、芯部材1を縫い付ける糸がズボン2の外側に出ないように(芯部材1を縫い付ける糸がズボン2の内部だけを通るように)、芯部材1をズボン2の裾部21に縫い付ける。
【0025】
ここで、図6は、芯部材1をズボン2の裾部21に取り付ける方法を説明するための図であり、(A)は芯部材1をズボン2の裾部21に取り付けた直後の状態を示す図であり、(B)は(A)のB-B線に沿う断面図である。また、(C)は(A)の状態からズボン2の裾部21を内側に折り返した状態を示す図であり、(D)は(C)のD-D線に沿う断面図である。なお、図6では、説明の便宜のため、ズボン2の内側に取り付けた芯部材1をグレーで表示している。
【0026】
まず、ユーザは、ズボン2の裾部21の内側に芯部材1を当て、図6(A)に示すように、ズボン2の裾部21の内側に芯部材1を本縫い、ジグザグ縫い、なみ縫い、返し縫いなどの方法で縫い付ける。この際、図6(A)に示すように、ズボン2の外側には縫い目が看取できる状態となる。次いで、ユーザは、ズボン2の裾部21を内側に折り返し、図6(B)に示すように、ズボン2の生地同士を内側からまつり縫いで縫い付ける。これにより、図6(B)の右図に示すように、芯部材1がズボン2の生地に挟まれて保持された状態でズボン2の裾部21に取り付けられるとともに、縫い目がズボン2の外側から看取できない状態とすることができる。
【0027】
次に、本実施形態に係る芯部材1を用いた場合の、裾部21の形状について説明する。図7は、ズボン2の裾部21と芯部材1との関係を説明するための図であり、ズボン2の裾部21を上方から見た裾部21の断面図である。また、図7(A)~(C)に示す例では、ユーザがズボン2を着用していない状態を示している。具体的に、図7(A)は、個々に分離した左右一対の芯部材を用いた場合の裾部21と芯部材との関係を説明するための図であり、図7(B)は、切り込み11および折れ部12を有しない単一の芯部材を用いた場合の裾部21と芯部材との関係を説明するための図である。一方、図7(C)は、第1実施形態に係る芯部材1を用いた場合の裾部21と芯部材1との関係を説明するための図である。なお、図7(A)~(C)では、各芯部材をグレーで表示している。
【0028】
図7(A)に示す例では、個々に分離した左右一対の芯部材を用いており、芯部材が後方クリース23を跨ぐことなく、一対の芯部材が後方クリース23の両脇に配置されている。そのため、後方クリース23の折り目(図7(A)で示すa部分。)の角度は、後方クリース23自体の折り目の角度となり、図7(B)や(C)に示す例と比べて小さくなる(後方クリース23の広がりが小さくなる)。そのため、ユーザが、図7(A)に示すズボンを着用して歩いた場合に、後方クリース23自体が、あるいは、後方クリース23近傍の裾部21(図7(A)のa部分)が、ユーザのくるぶしや後ろ足首に当ってしまい、ユーザに不快感を与えてしまうという問題がある。
【0029】
また、図7(B)に示す例では、芯部材が単一の帯状部材により構成されており、後方クリース23を跨いだ状態で、芯部材がズボンに取り付けられている。そのため、後方クリース23において、折れ目が広がる(折れ目の角度が大きくなる)ため、ユーザがズボンを着用して歩いた場合に、後方クリース23自体が、あるいは、後方クリース23近傍の裾部21(図7(B)のb部分)が、ユーザのくるぶしや後ろ足首に当たってしまうことを抑制することができる。しかしながら、図7(B)に示す例では、芯部材が切り込み11および折れ部12を有しないため、後方クリース23近傍において、芯部材が大きく湾曲してしまい、裾部21において、後方クリース23の折り目が形成されにくいという問題があった。
【0030】
これらに対して、本実施形態に係るズボン2では、折れ部12において折れ曲がった芯部材1を、後方クリース23を跨ぐように、ズボン2の裾部21に取り付けることで、図7(C)に示すように、前方クリース22よりも後方クリース23が広がり、図7(A)に示す芯部材と比べて、ユーザがズボン2を着用して歩いた場合でも、後方クリース23近傍の裾部(図7(C)のc部分)がくるぶしや後ろ足首に当たりにくくなり、ユーザに与える不快感を低減することができる。また、本実施形態に係るズボン2では、芯部材1が折れ部12において折れ曲がっているため、図7(B)に示す芯部材と比べて、後方クリース23の折れ目が広がってしまうことを抑制することができ、裾部21においても後方クリース23の折り目を付けることができる。
【0031】
以上のように、第1実施形態に係る芯部材1では、単一の帯状本体部10から構成されており、当該帯状本体部10は、長手方向における中央位置近傍において切り込み11を有しており、切り込み11が形成された位置において、帯状本体部10を長手方向に折れ曲げ可能な折れ部12が形成可能となっている。これにより、本実施形態に係る芯部材1では、ズボン2の裾部21に取り付けた場合に、図4および図5に示すように、裾部においても、前方クリース22および後方クリース23の両方で折れ目を付けることができ、ズボン2の外観性を高めることができる。また、本実施形態に係る芯部材1では、図6(C)に示すように、裾部21の後方クリース23が折れ部12で湾曲に折れ曲がるため、裾部21の後方クリース23が鋭角に折れ曲がる図6(A)と比べて、ユーザがズボン2を着用して歩いた場合に、後方クリース23、あるいは、後方クリース23近傍の裾部21(図6(C)のc部分)が、ユーザのくるぶしや後ろ足首に当たってしまい、ユーザに違和感を与えてしまうことを抑制することもできる。
【0032】
また、上述の実施形態では、芯部材1を、不織布または織布などの布を樹脂で固めた素材で形成することで、芯部材1の軽量化を図ることができ、芯部材1の重量に起因するユーザの違和感を軽減することもできる。また、芯部材1を、不織布を樹脂で固めた素材で形成することで、ユーザがズボン2の裾部21の幅に合わせて、芯部材1の端部13を切り取り芯部材1の長さを調整し易くすることもでき、また、ズボン2をズボンプレッサーに掛けた場合でも芯部材1が劣化してしまうことを防止することができる。
【0033】
《第2実施形態》
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図8は、第2実施形態に係る股下寸法調整用の芯部材1aの構成図である。図8に示すように、第2実施形態に係る芯部材1aは、切り込み11としてV字状の切り欠き14を有し、かつ、両方の端部13にも端部切り欠き15を有すること以外は、第1実施形態に係る芯部材1と同様の構成を有する。以下においては、第2実施形態に係る芯部材1aの構成について、第1実施形態に係る芯部材1と同様の構成については説明を割愛し、主に、第1実施形態に係る芯部材1と相違する構成について説明する。
【0034】
第2実施形態に係る切り欠き14は、第1実施形態に係る切り込み11と同様に、帯状本体部10aの長手方向中央位置に形成される。また、切り欠き14は、切り込み11と同様に、上辺側および下辺側にそれぞれ形成され、上下一対の切り欠き14の間に折れ部12が形成可能となっている。本実施形態では、図8に示すように、切り欠き14を、V字状に形成しているが、切り欠き14の形状はV字状に限定されず、たとえば半円状に形成することもできる。
【0035】
ここで、図9は、第2実施形態に係る芯部材1aを用いた場合の裾部21の外観を示す図である。具体的には、図9(A)は、第1実施形態に係る芯部材1をズボン2に取り付けた場合の裾部21の外観を示し、図9(B)は、第2実施形態に係る芯部材1aをズボン2に取り付けた場合の裾部21の外観を示す。第1実施形態に係る芯部材1を用いた場合には、図9(A)においてP1で示すように、前方クリース22および後方クリース23の両方において、芯部材1が取り付けられた部分と、芯部材1が取り付けられていない部分との間に段差が生じ、芯部材1を取り付けていることが外観から把握できてしまうという問題がある。これに対して、第2実施形態に係る芯部材1aを用いた場合には、図9(B)においてP2で示すように、前方クリース22および後方クリース23の両方において、芯部材1が取り付けられた部分と、芯部材1が取り付けられていない部分との間に段差が生じず(あるいは段差は小さくなり)、芯部材1を取り付けていることが外観上把握することができなくなり(あるいは外観上把握しにくくなり)、芯部材1を取り付けていないように見せることができる。
【0036】
以上のように、第2実施形態に係る芯部材1aは、切り込み11としてV字状の切り欠き14を有し、また、端部13にも端部切り欠き15を有するため、ズボン2の裾部21に取り付けた場合に、前方クリース22および後方クリース23の両方において、芯部材1が取り付けられた部分と、芯部材1aが取り付けられていない部分との間に段差が生じず(あるいは段差は小さくなり)、芯部材1aを取り付けていないように見せることができる。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1,1a…芯部材
10,10a…帯状本体部
11…切り込み
12…折れ部
13…端部
14…切り欠き
15…端部切り欠き
2…ズボン
21…裾部
22…前方クリース
23…後方クリース
【要約】
【課題】ズボンの股下寸法を簡易に調整することができ、ズボンの履き心地も良好とすることができ、かつ、ズボンの裾部までクリースの折り目を形成できる股下寸法調整用の芯部材およびそれを用いたズボンを提供する。
【解決手段】ズボン2の裾部21に取り付けられる股下寸法調整用の芯部材1であって、単一の帯状本体部10から構成されており、当該帯状本体部10は、長手方向における中央位置近傍において切り込み11を有しており、切り込み11が形成された位置において、帯状本体部10を長手方向に折れ曲げ可能な折れ部12が形成可能となっている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9