IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウォッチアウトコープ・ソシエテ・アノニムの特許一覧

特許7368662工具ホルダと工作物ホルダとの間に3次元位置決め用の光学計測装置を持つ工作機械
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】工具ホルダと工作物ホルダとの間に3次元位置決め用の光学計測装置を持つ工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/24 20060101AFI20231018BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20231018BHJP
   B23B 25/06 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
B23Q17/24 B
G01B11/00 A
B23B25/06
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020534419
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 IB2018059463
(87)【国際公開番号】W WO2019123058
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】01602/17
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(31)【優先権主張番号】01603/17
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】523319645
【氏名又は名称】ウォッチアウトコープ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】ジャコー・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ラポルト・セバスチャン
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-136370(JP,A)
【文献】特開2008-157646(JP,A)
【文献】特開平03-281151(JP,A)
【文献】特開平07-246547(JP,A)
【文献】特開2003-042726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0343890(US,A1)
【文献】特開平10-038573(JP,A)
【文献】特開2010-217017(JP,A)
【文献】国際公開第2006/011386(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/24
G01B 11/00
B23B 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具ホルダ(310)と工作物ホルダ(320)とを装備されている機械加工モジュール(300)と、
前記工具ホルダ(310)と前記工作物ホルダ(320)との間の相対位置の3次元計測用の光学計測装置(10)と
を備える、工作機械であって、
前記光学計測装置(10)が、像取得系を持ち前記工作物ホルダ(320)に搭載されている光学系(100)と、前記工具ホルダ(310)に搭載されて前記光学系(100)の光軸線(O)に配置可能な位置基準を形成する有効面(202)を備える目標(200)とを備える、前記工作機械において、
前記光学計測装置(10)は、前記目標(200)の前記光学系(100)による単一露光ステップによって、機械加工対象の前記工作物ホルダ(320)と前記工具ホルダ(310)との間の3次元相対位置を決定可能に設定されてい
前記目標(200)は、3次元の目標(200)であって、前記有効面(202)上に、
平面的な基準面(212)を画定する第1構造(210)と、
平面的な前記基準面(212)に対して傾斜している傾斜面(222)を持つ第2構造(220)とを備え、
平面的な前記基準面(212)は、少なくとも第1部分(214)と第2部分(216)との間に分割されていて、
前記第1部分(214)の表面は、第1反射変数により反射するものであり、
前記第2部分(216)の表面は、第1反射変数と異なる第2反射変数により反射するものであり、
前記光学系(100)は、第1露光系(110)と第2露光系(120)とを備え、
前記光軸線(О)に沿って、前記第2露光系(120)の焦点距離と前記第1露光系(110)の焦点距離の差に相当する区間が、傾斜面(222)から前記基準面(212)を隔てている最小距離と最大距離との間にある、工作機械。
【請求項2】
前記目標(200)は、前記光学系(100)の像焦点平面が前記目標(200)の前記有効面(202)に一致可能に位置されている、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記第1部分(214)の表面は、拡散反射にしたがって反射するものであり、
前記第2部分(216)の表面は、鏡面反射にしたがって反射するものである、
請求項に記載の工作機械。
【請求項4】
前記第2部分(216)は、前記第1部分(214)に配置されている一連のローカライズ領域(217)にしたがって分割されている、請求項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記傾斜面(222)の表面は、均一に分布されている、レリーフ要素(224)又は鏡面要素(225)を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項6】
一連の前記ローカライズ領域(217)次の、四辺形、平行四辺形、長方形、正方形、ひし形、正多角形及び円形のリストに属する幾何学的図形の外形を画定する、請求項に記載の工作機械。
【請求項7】
前記第2部分(216)の前記ローカライズ領域(217)は、前記第1部分(214)に分布された島又は区間によって形成されている、請求項に記載の工作機械。
【請求項8】
前記第1構造(210)と前記第2構造(220)とが、互いに同心に前記有効面(202)上に位置されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項9】
前記第1構造(210)は前記第2構造(220)を囲んでいる、請求項1から8のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項10】
前記第1構造(210)の前記第2部分(216)の前記ローカライズ領域(217)は、前記第2構造(220)を囲む正方形を画定している、請求項に記載の工作機械。
【請求項11】
前記第2構造(220)を収容するハウジング(219)の開口部(218)を前記第1構造(210)が囲んで画定している、請求項1から10のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項12】
前記第2構造(220)は、前記第1構造(210)の前記基準面(212)に対して後退されている前記傾斜面(222)を持ち、前記ハウジング(219)内に位置している請求項11に記載の工作機械。
【請求項13】
前記第2構造(220)の傾斜面(222)の表面は、横紋状であるか、もしくは前記第2構造(220)の前記傾斜面(222)の表面は、次の、刻まれたネットワーク、構造化された格子又は鏡面線(225)の要素いずれかで覆われている、請求項1から12のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項14】
前記目標(200)は、前記有効面(202)の側で前記第1構造(210)及び前記第2構造(220)を覆う、透明材料、又はガラスの板も備える、請求項5から13のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項15】
前記光学計測装置(10)は3次元の前記目標(200)に向かって配向されている光源も備え、光源が、3次元の前記目標(200)の横方向の照明を作るために位置されている、請求項1から14のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項16】
前記光学系(100)は第1露光系(110)と第2露光系(120)とを備え、当該光学系において、
第1露光系(110)の被写界深度は、第2露光系(120)の被写界深度の少なくとも10倍大きく、
前記光学系(100)は、前記第1露光系(110)の光路と前記第2露光系(120)の光路とが、前記光学系(100)の光軸線(O)上に配置され、第1露光系(110)の像焦点平面と第2露光系(120)の像焦点平面とを備える共通区間を持つ、
請求項1から15のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項17】
前記光学系(100)は、前記目標(200)からの光路が、前記第1露光系と前記第2露光系(120)との一方の少なくとも1部分を、前記第1露光系と前記第2露光系(120)との他方に到達する前に、通過するように、配列されている、請求項16に記載の工作機械。
【請求項18】
前記第1露光系と前記第2露光系(120)は、互いに平行に配置されていて、
前記光学系(100)は、光学モジュール(128)も備え、前記光学モジュール(128)は、前記第1露光系と前記第2露光系(120)との間に配置され、前記第1露光系及び前記第2露光系(120)の一方の少なくとも一部を透過して前記第1露光系及び前記第2露光系(120)の他方に向かう光線の一部を偏向するように設定されている、
請求項16又は17に記載の工作機械。
【請求項19】
前記第2露光系(120)の焦点距離は、前記第1露光系(110)の焦点距離より長い、請求項16から18のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項20】
前記第1露光系(110)の倍率は、前記第2露光系(120)の倍率より小さい、請求項16から19のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項21】
前記第1露光系(110)の被写界深度(DOF1)は0.8ミリメートル以上である、請求項16から20のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項22】
前記第2露光系(120)の被写界深度(DOF2)は0.1ミリメートル以下である、請求項16から21のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項23】
前記第1露光系(110)はテレセントリックであり、前記第2露光系(120)はテレセントリックである、請求項16から22のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項24】
前記第1露光系(100)が、像焦点面が前記第1構造(210)の前記基準面(212)に対応可能に設定されていて、
前記第2露光系(120)が、像焦点面が3次元の前記目標(200)の前記傾斜面(222)を分割可能に設定されている、請求項1又は16に記載の工作機械。
【請求項25】
前記光学装置(10)が、前記工具ホルダ(310)に設けられ前記目標(200)の有効面(202)の配向と前記工具ホルダ(310)の角度配向との少なくとも一方の配向を登録すべく設定されている第3露光系(130)も備える、請求項16から24のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項26】
主方向Zにおいて互いに整列され離れている工具ホルダ(310)と工作物ホルダ(320)との間の、工作機械の3次元空間における3つの直交方向X、Y、Zにしたがった3次元光学的計測方法において、
光学系(100)が像取得系を備えて提供され、
前記光学系(100)は前記工作物ホルダ(320)上に搭載され、
目標(200)が、位置基準を形成する有効面(202)を備えて提供され、
前記目標(200)は、前記工具ホルダ(310)上に搭載され、
前記工具ホルダ(310)と前記工作物ホルダ(320)は、前記目標(200)を前記光学系(100)の光軸線(O)に置けるように位置され、
前記目標(200)と協働すべく位置される前記光学系(100)を使用して前記目標(200)の露光の単一ステップが実行され、それによって機械加工対象の前記工作物ホルダ(320)と前記工具ホルダ(310)との間の3次元相対位置が決定され
前記目標(200)は、3次元の目標(200)であって、前記有効面(202)上に、
平面的な基準面(212)を画定する第1構造(210)と、
平面的な前記基準面(212)に対して傾斜している傾斜面(222)を持つ第2構造(220)とを備え、
平面的な前記基準面(212)は、少なくとも第1部分(214)と第2部分(216)との間に分割されていて、
前記第1部分(214)の表面は、第1反射変数により反射するものであり、
前記第2部分(216)の表面は、第1反射変数と異なる第2反射変数により反射するものであり、
前記光学系(100)は、第1露光系(110)と第2露光系(120)とを備え、
前記光軸線(О)に沿って、前記第2露光系(120)の焦点距離と前記第1露光系(110)の焦点距離との間の差に相当する区間が、傾斜面(222)から前記基準面(212)を隔てている最小距離と最大距離との間にある、
計測方法。
【請求項27】
露光ステップにおいて、前記光学系(100)と前記目標(200)とは、前記光学系(100)の像焦点面が前記目標(200)の前記有効面(202)と一致可能に配置される、請求項26に記載の計測方法。
【請求項28】
請求項26又は27に記載の計測方法において、
前記目標(200)は、3次元であって、前記有効面(202)上にて、
少なくとも第1部分(214)と、第2部分(216)との間で分割された平面的な基準面(212)を画定する第1構造(210)であって、
前記第1部分(214)の表面は、拡散反射にしたがって反射するものであり、
前記第2部分(216)の表面は、鏡面反射にしたがって反射するものである、第1構造(210)と、
平面的な前記基準面(212)に対して傾斜面(222)を持つ第2構造(220)と
を備え
前記第1露光系(110)の被写界深度は、前記第2露光系(120)の被写界深度の少なくとも10倍大きく、
前記光学系(100)は、
記第1露光系(110)の光路と前記第2露光系(120)の光路とが、前記第1露光系(110)の像焦点平面及び前記第2露光系(120)の像焦点平面を含む共通区間を持つように構成され
記工具ホルダ(310)と前記工作物ホルダ(320)とは、
一方で、前記第1露光系(110)の焦点距離が、前記第1露光系(110)の像焦点を前記目標(200)の前記第1構造(210)上に置けるように、
他方で、前記第2露光系(120)の焦点距離が、前記第2露光系(120)の像焦点を前記目標(200)の前記第2構造(220)上に置けるように
位置され、
前記光学系(100)を用いる露光ステップにおいて、少なくとも1つの露光が、光学系(100)の前記第1露光系(110)と前記光学系(100)の前記第2露光系(120)とを用いて同時に行われ、それによって、光学系(100)の各露光に、
一方で、前記第1露光系(110)が、前記第1部分(214)に対する前記第2部分(216)の位置を、前記基準面(212)上での特定を可能にする前記目標(200)の第1像を生成し、
前記第1像は、第1に、前記目標(200)の方向Xにおける前記第1露光系(110)に対しての相対位置についての情報の第1部分を与え、第2に、方向Yにおける目標(200)と前記第1露光系(110)との間の相対位置についての情報の第2部分を与え、
他方で、前記第2露光系(120)が、前記第2構造(220)の前記傾斜面(222)の位置に対応するシャープな部分を備える前記目標(200)の第2像を生成し、
前記第2像は、方向Zにおける前記目標(200)と前記第2露光系(120)との間の距離についての情報の第3部分を与える、
計測方法。
【請求項29】
平面的な前記基準面(212)の前記第2部分(216)は、前記第1部分(214)に配置されている一連のローカライズ領域(217)にしたがって分割されていて、前記第1露光系(110)は前記目標(200)の第1像を生成し、前記第2部分(216)の前記ローカライズ領域(217)の位置が、前記基準面(212)上に特定されて、方向Yと方向Xにしたがった相対位置を計測可能にする、前記ローカライズ領域(217)と前記第1露光系(110)との間の相対位置の情報を示す、
請求項26から28のいずれか一項に記載の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工作機械の分野に関する。本発明は、第1対象物と第2対象物との間、特に、工作機械の工具ホルダと工作物ホルダの相対位置を光学的に計測する分野にも関する。
【背景技術】
【0002】
とりわけ材料の除去によって機械加工を行う工作機械の分野では、調整中に開発された機械加工計画に適合した加工範囲を確保するために、工具ホルダと工作物ホルダとの間の相対位置を正確に知る必要がある。
【0003】
機械加工モジュール(工作機械)、特に自動旋盤、自動旋回機、ターンミルセンタ、フライス盤、マシニングセンタ、搬送機による工作物の製造には、一般的に3つの異なる段階がある。
【0004】
第1調整(又はプリセット)段階では、オペレータ(例えば、旋盤オペレータ)が加工モジュール上で加工平面を定義し、テストする。オペレータは、例えば、最も効率的な加工計画が得られるようにする。すなわち、所与の工作物を最小限の操作で加工可能になり、工具間や工作物との衝突を回避可能になる、加工計画が得られるようにする。オペレータは、使用すべき工具を選択し、得られる工作物の品質、例えば表面の仕上げ、公差への適合性などを検査する。
【0005】
第2生産段階では、調整段階で設定された変数を用いて、プリセットされた加工モジュール上で一連の工作物が生産される。この段階は唯一の生産段階であり、自動供給機又はブランク搭載機(加工前の工作物)を使用して加工モジュールに原材料を供給しながら、多くの場合24時間体制で行われる。
【0006】
一連の工作物の生産は、摩耗した工具を交換するため、同じ加工モジュールで別のタイプの工作物を生産するため、機械のメンテナンスのためなどに中断され、その後、再開されることがある。そのような場合には、調整段階中にあらかじめ設定した変数を適用するために、前準備段階が必要となる。この前準備段階は、調整段階より速く行われる。
【0007】
前準備段階では、しばしば、機械に取り付けられた工具を、実施する加工に適した別の工具セットに交換する必要がある。これらの工具の位置決め精度が加工品質を左右するが、連続した前準備段階での再現は難しい。
【0008】
さらに、生産段階では、新しい工作物の加工が進むにつれて、特に長い間には、工具ホルダと工作物ホルダの間の位置のドリフト(ずれ)、特に機械の熱膨張に起因する位置のドリフトが起こらないとはいえない。
【0009】
したがって、生産段階及び前準備時に工具ホルダと工作物ホルダとの間の正しい相対位置決め、すなわち調整時に工具ホルダと工作物ホルダとの間の相対位置に整合する相対位置決めを保証するため、従来の技術では異なる解決策が提案されてきた。
【0010】
工作機械で使用される多くの原位置計測技術は、工作物又は工作物ホルダと工具自体との間の相対的な位置を計測することに焦点を当てている。しかし、この場合、工作物又は工作物ホルダと工具との間の相対位置の計測は、工具の摩耗や運転中の工作機械の熱ドリフトの影響を受ける。
【0011】
また、このタイプの相対位置計測は、特許文献1(DE202016004237U)に記載されているように、一般的に2次元、いわば2方向で実施される。
【0012】
工作物又は工作物ホルダと工具との間のこの相対位置決めは、2次元(例えば、Y及びX、それぞれ横方向及び縦方向)に限定されているので、正しい相対位置を保証するのに十分ではないので、別の技術が、第3次元(例えば、Z、工作物ホルダの前進/後退方向、とも呼ばれる。以下、「材料の方向」という。)の計測に、使用されなければならない。これでは、計測技術の費用が高くなるだけでなく、当該計測技術の実装にも時間がかかり、2つの計測系列を同時に使用することで誤差が生じることとなる。
【0013】
特許文献2(US2014362387AA)は、目標物が工具ホルダに干渉しないことを確認するために工具ホルダに配置された光学計測装置を開示する。この光学計測装置は、反射光線のセンサと入射光線の発光部との間の位置を含むレーザ光線計測装置の幾何学的変数を特徴付けるべく、複数の傾斜部を有する基準要素を使用する。この基準要素は、工具ホルダと機械加工される工作物となり得る目標物との間の相対位置の計測中には、利用されない。
【0014】
特許文献3(US2010111630AA)は、工作機械用の工具の再位置決めシステムを開示する。このシステムは、工具上に置かれる不規則な形の目標であって、位置が不特定な複数の光学計測要素により、工具の正確な位置の光学計測を可能にする目標を、備える。
【0015】
特許文献4(US5831734)には、光学センサが工具ホルダに固定されていて、当該センサが、識別印(溝)を用いて、この工具ホルダの加工対象の工作物に対する相対位置の登録を実施するという解決手段が記載されている。
【0016】
特許文献5(JP07246547)は、工具取付け軸に取り付けられた反射体と、反射体の位置を登録(計測)可能で、複数のレーザ干渉計を持つ計測装置と、を装備した工作機械を提案する。
【0017】
これらの解決手段は、しかしながら、空間の3次元における相対位置の決定を可能にする情報を提供する単一露光ステップにより、加工対象の工作物と工具との間の相対位置の決定を可能にするものではない。
【0018】
これらの解決手段はまた、機械加工中にリアルタイムで変化する変数、特に工具の摩耗と、工具、及び/又は加工される工作物を受け取る機械工具の作業空間の熱変動とを受けないものにはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】独国実用新案第202016004237号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/362387号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/111630号明細書
【文献】米国特許第5831734号明細書
【文献】特開平07-246547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の課題は、既知の計測技術の制限から解放された、工具ホルダと工作物ホルダとの間の相対位置の計測の実施を可能にする技術を提案することである。
【0021】
本発明の別の課題は、工具ホルダと工作物ホルダとの間の相対位置の計測の実施を可能にする技術であって、単一の露光ステップから第1対象物と第2対象物との間の3次元相対位置を提供する技術を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によると、工具ホルダ及び工作物ホルダを装備されている機械加工モジュールと、工作物ホルダと、工具ホルダ及び工作物ホルダの間の相対位置の3次元計測用の光学計測装置とを備える、工作機械であって、当該光学計測装置が、像取得系を持ち工作物ホルダに搭載されている光学系と、工具ホルダに搭載されて光学系の光軸線に配置可能な位置基準を形成する有効面を備える目標とを備える。
【0023】
本発明によると、光学計測装置は、目標の光学系による単一露光ステップによって、機械加工対象の工作物のホルダと工具ホルダとの間の3次元相対位置を決定可能に構成されている。このようにして、光学系によって目標の露光が実施されることによって、工具ホルダと工作物ホルダとの間の正確な位置の取得が可能である。この露光は、光学系による目標の像(又は複数の像)を取ること、より具体的には、目標の1つ又はそれ以上の像の取得、捕捉又は記録に対応する。特に、1つの可能性によると、光学系は、目標の第1像と第2像とを同時に取得可能である。これら2つの像(1組の像)は、目標と光学系との間の相対位置についての情報を持っていて、当該情報は、空間の3方向(特に、X、Y及びZ)における目標と光学系との間の相対位置を得ることを可能にする。変形例によると、光学系は、目標の像の組を一連で取得可能である。
【0024】
特に、目標は、光学系の像焦点平面が目標の有効面に一致可能に位置される。
【0025】
1実施形態によると、目標は、3次元目標であり、有効面上に、
平面的基準面を画定する第1構造と、
平面的基準面に対して傾斜した面を持つ第2構造とを備え、
光学系は、第1露光系と第2露光系とを備え、当該光学系において、第2露光系の焦点距離と、第1露光系との間の差が、傾斜面から基準面が離れている最小距離と最大距離との間にある。
【0026】
よって、光学系は、
一方で、第1露光系によって生成される像を介して基準面(又は第1基準面)に対する相対位置と、
他方で、第1露光系によって生成され、目標上の位置は基準面に対して既知である像を介して特定される傾斜面(又は第2基準面)の少なくとも1つの領域に対する相対位置
とを同時に特定可能である。
【0027】
この目標は、以下の特定事項の1つ又は他の又は複数に準拠可能でもある。
平面的基準面は、少なくとも、第1部分の表面が第1反射変数に応じて反射する第1部分と、第2部分の表面が第2反射変数に応じて反射する第2部分との間で分割されている。
第1部分の表面は、拡散反射にしたがって反射するものであり、第2部分の表面は、鏡面反射にしたがって反射するものである。
第2部分は、第1部分に位置する一連のローカライズ領域によって分割されている。
傾斜面の表面は、均一に分布されている、レリーフ要素又は他に鏡面要素を有する。
ローカライズ領域は、ローカライズ領域の間に、次の、四辺形、平行四辺形、長方形、正方形、ひし形、正多角形及び円形のリストに属する幾何学的図形を画定する。
第2部分のローカライズ領域は、第1部分に分布された島又は区間によって形成されている。
ローカライズ領域はクロムからなる。
第1構造及び第2構造は、互いに同心に有効面上に位置されていて、特に、第1構造は第2構造を囲む。
第1構造の第2部分のローカライズ領域は、第2構造を囲む正方形を画定している。
第1構造は、第2構造を収容するハウジングの開口部を区分ける。
第2構造は、第1構造の基準面に対して後退されている、特に基準面に区分けられた平面の後ろに下がっている、傾斜面を持ち、ハウジング内に位置している。
第2構造の傾斜面の表面は、横紋状であり、特に、傾斜面の表面は、次の、刻まれたネットワーク、構造化された格子又は鏡面線の要素いずれかで覆われている。
【0028】
一実施態様によると、当該傾斜面の表面は、均一に分布されたレリーフ要素を有する。別の実施態様によると、当該傾斜面の表面は、均一に分布された鏡面反射要素を有する。両方の態様において、おおまかに平面的で、方向Zにおいて基準面に直交している、傾斜面の登録(傾斜面の位置決め)を可能にする。
これを実施するには、ある場合では、レリーフ要素は、小さな不均等又は粗さの表面を構成し、傾斜面の表面は、粗さを有して、傾斜面の一部分をはっきりととらえるべく目標を見る光学系に拡散反射の形成を可能にする。特に、それらレリーフ要素は、700ナノメートルより大きなサイズ、特に1マイクロメートルより大きく、より具体的には入射放射、ここでは自然光の波長より大きなサイズを有している。
他の場合は、傾斜面の鏡面要素は、例えば、相互に平行な線として幾何学的配置にしたがって、そして方向Zについて異なる位置に、位置されていて、(好ましくは、拡散反射にしたがって反射するものとして)傾斜面の他の表面から視覚的に識別される。したがって、傾斜面の一部分をはっきりととらえるべく目標を見る光学系の可能な形態は、それらの鏡面要素の1つ又はそれ以上を持つものである。
【0029】
この3次元目標は、有効面を形成する側には、二つの構造を持ち、これら構造のそれぞれが第1平面的基準面と、第1基準面に対して傾斜された平面を画定する第2基準面とを画定している。目標のこの3次元幾何学形状は、それぞれが第1基準面と第2基準面とを作る2つの表面の特定の異なる特性に結びつけられていて、使用される光学系に対するこの目標の空間の3次元X、Y及びZにおける光学的登録(光学的位置決め)のために許容される。
一実施態様において、この光学系は、上記光学的登録(光学的位置決め)を可能にする、より具体的には、第1平面基準面と第2傾斜基準面との両方の露光の単一ステップによって、相対位置計測を最大限に可能にする。それゆえ、当該単一ステップは、第1平面的基準面と第2基準面との像の同時露光を含む。
この同時露光は、2、3又はそれ以上の繰り返しで、n回(nは1より大きな整数であり、例えば2から15である。)の露光に増大しても、実行可能である。このように、第1平面的基準面と第2基準面との複数の像(一連の像)を有することがある。このことは、計算アルゴリズムによる処理を、第1平面的基準面と第2基準面との単一の像ではなく、第1平面的基準面と第2基準面との一連の像の処理の実施を可能として、よって精度を得る。
【0030】
特に、一つの可能な規定では、後述するように、第1平面的基準面と第2基準面との像(又は複数の像)のこの生成は、調整の実施を必須とすることなく、使用される光学系で実施される。この場合、光学系で実施される特別な設定はなく、3次元目標の相対位置の計測を実施する上での時間の節約を可能にする。この解決手段は、特にこの目標を見る光学系の焦点距離における、複数の計測ステップ又は設定の変更を要せず、従来技術に対して特筆すべき優位性を提示する。
【0031】
また、この目標が、工具ホルダと工作物ホルダとの相対位置の計測に使用されるとき、この目標を工具ホルダに配置することで、(計測を)工具の摩耗と、工具の熱変動及び/又は加工対象の工作物を受け取る工作機械の作業空間の熱変動とから独立したものとすることが可能となる。
【0032】
1実施形態において、光学系は、第1露光系及び第2露光系を備え、当該光学系において、
第1露光系の被写界深度は、第2露光系の被写界深度の少なくとも10倍大きく、
光学系は、第1露光系の光路と第2露光系の光路とが、第1露光系の像焦点平面及び第2露光系の像焦点平面を含む共通区間を持つように構成されている。
【0033】
このような光学系は、関係する2つの対象物の一つ(工作物ホルダによって形成される第2対象物)に配置可能であり、当該光学系は、2つの露光系によって、2つの対象物のもう一方(工具ホルダによって形成される第1対象物)上の、互いに隣り合う2つの位置の2つのシャープな像を同時に取得できるようにする。第1対象物のそれら2つの位置は、第2対象物からわずかに異なる距離にある。このような光学系は、以下に後述するように、2つの像を介して、光学系を支持する、第1対象物と第2対象物との間の相対位置の3次元的な登録(位置決め)を可能にする。
【0034】
1実施形態において、光学系は、光路が、第1露光系と第2露光系との一方の少なくとも1部分を、第1露光系と第2露光系との他方に到達する前に、通過するように、構成される。このように、第1及び第2露光系と共通又は非常に近い、光学系の入力/出力として光路の1区間を持ってもよい。また、第1及び第2露光系を同一の光学系に組み合わせが可能であるだけでなく、第1対象物上の互いに隣り合う2つの位置、20ミリメートルや30ミリメートルの位置、2ミリメートル又は3ミリメートルでの位置も、さらに1ミリメートル未満での近い位置の登録が可能である。
【0035】
1実施態様において、第1及び第2露光系は、互いに平行に配置されていて、光学系は、光学モジュールも備え、光学モジュールは、第1露光系と第2露光系との間に配置され、第1露光系及び第2露光系の一方の少なくとも一部を透過して第1露光系及び第2露光系の他方に向かう光線の一部を偏向するように構成されている。1つの可能性によると、この光学モジュールは、鏡のような反射光学系であるか、鏡のような反射光学系を備える。
この光学系は、以下の規定の1つ又は他の又は複数に準拠可能でもある。
第2露光系の焦点距離は、第1露光系の焦点距離よりも長い。
第1露光系の倍率は、第2露光系の倍率以下である。
第1露光系の被写界深度(DOF1)は、0.8ミリメートル以上である。
第2露光系の被写界深度(DOF2)は、0.1ミリメートル以下である。
第1露光系はテレセントリックであり、第2露光系はテレセントリックである。
【0036】
第1露光系は、第1露光系の像焦点平面が第1構造の基準面に対応可能に設定され、
第2露光系は、第2露光系の像焦点平面が3次元目標の傾斜面を分割するように設定され、
光学装置は、工具ホルダ上に位置されて有効面の配向と工具ホルダの配向角度との少なくとも一方を登録すべく設定される第3露光系をも備える。
【0037】
本発明は、主方向Zにおいて互いに整列され離れている工具ホルダと工作物ホルダとの間の、工作機械の3次元空間における3つの直交方向X、Y、Zにしたがった3次元光学的計測方法にも関する。当該方法において、
光学系が像取得系を備えて提供され、
光学系は工作物ホルダ上に搭載され、
目標が、位置基準を形成する有効面を備えて提供され、
目標は、目標を光学系の光軸線に置けるように工具ホルダ上に搭載され、
目標と協働すべく位置される光学系を使用して目標の露光の単一ステップが実行され、それによって機械加工対象の工作物のホルダと工具ホルダとの間の3次元相対位置が決定される。
【0038】
この方法の一実施態様によると、露光ステップにおいて、光学系と目標とは、光学系の像焦点平面が目標の有効面と一致可能に位置される。
【0039】
この方法の一実施態様によると、目標は、3次元的であり、有効面上にて、
少なくとも第1部分と、第2部分との間で分割された平面的な基準面を画定する第1構造であって、
第1部分の表面は、拡散反射にしたがって反射するものであり、
第2部分の表面は、鏡面反射にしたがって反射するものである、第1構造と、
平面的な基準面について傾斜面を持つ第2構造と
を備え、
光学系は、第1露光系と第2露光系とを備え、
第1露光系の被写界深度は、第2露光系の被写界深度の少なくとも10倍大きく、
光学系は、
一方で、第1露光系の光路と第2露光系の光路とが、第1露光系の像焦点平面及び第2露光系の像焦点平面を含む共通区間を持つように構成され、
他方で、第2露光系の焦点距離と第1露光系の焦点距離との差が、基準面が傾斜面から離される最短距離と最長距離との間にあるように構成される。
工具ホルダと工作物ホルダとは、
一方で、第1露光系の焦点距離が、第1露光系の像焦点を目標の第1構造上に置けるように、
他方で、第2露光系の焦点距離が、第2露光系の像焦点を目標の第2構造上に置けるように
位置される。
光学系を用いる露光ステップにおいて、少なくとも1つの露光が、光学系の第1露光系と光学系の第2露光系とを用いて同時に行われ、それによって、光学系の各露光に、
一方で、第1露光系が、第1部分に対する第2部分の位置を、基準面上での特定を可能にする目標の第1像を生成し、
第1像は、第1に、目標の方向Xにおける第1露光系についての相対位置についての情報の第1部分を与え、第2に、方向Yにおける目標と第1露光系との間の相対位置についての情報の第2部分を与え、
他方で、第2露光系が、第2構造の傾斜面の位置に対応するシャープな部分を備える目標の第2像を生成し、
第2像は、方向Zにおける目標と第2露光系との間の距離についての情報の第3部分を与える。
【0040】
別の可能な規定によると、平面的な基準面の第2部分は、第1部分に配置されている一連のローカライズ領域にしたがって分割されていて、そこでは、第1露光系が目標の第1像を生成するとき、第2部分のローカライズ領域の位置が基準面上に特定され、これがローカライズ領域と第1露光系との間の相対位置についての情報の1部分を与える。この情報の1部分は、方向Yと方向Xとにおける相対計測の推定を可能にする。
【0041】
本発明の実装例は、添付の図面に描かれる記載において示される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】3次元目標及び光学系を備える3次元計測装置を示す。
図2A】工具ホルダと工作物ホルダ(材料スピンドルとも呼ばれる)間の相対位置の空間での計測のための本発明による工作機械における図1の3次元計測装置の使用を示す。
図2B図2Aの方向IIBから、すなわち、目標が光学系に向けられたときに光学系によって見られる方向Zに従って、3次元目標を有する工具ホルダに対応する図2Aの部分を示す。
図3A】3次元目標の構造を正面図で示す図である。
図3B】3次元目標の構造を斜視図で示す図である。
図3C】3次元目標の構造を、断面図で示す図である。
図3D図3A、3B及び3Cにおけるような、変形実施形態による目標の第2構造の斜視図である。
図3E図3A、3B及び3Cにおけるような、変形実施形態による目標の第2構造の斜視図である。
図4A】光学系の第2露光系によって生成された画像の処理を示す。
図4B】光学系の第2露光系によって生成された画像の処理を示す。
図5】3次元目標を備えた工具ホルダを斜視図及び分解図で表す。
図6】本発明による工具ホルダへの3次元光学計測装置の取り付けを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、光学系100と、目標200と光学系100との間の相対位置の3次元計測を実行するために協働可能な3次元目標200とを備える光学装置10を示す。計測位置では、目標200は、主水平方向Zを形成する主軸に平行な光学系100に向けられている。このため、光学系100の出力において、光路Oは、目標200の有効面202に直交している。
【0044】
次に、目標200について、図1図3A図3B及び図3Cに関連して説明する。目標200は、ペレットの形態であり、ここでは円形断面(それは正方形断面又は他のものであり得る)の円筒形状であり、その一方の側は、計測を実行するための有効面202を形成する。したがって、計測を実行するために、この有効面202は、光学系100に向けられ、特に光学系100の入力面102に向けられ、軸線Zは、主方向(図では水平)に対応する。軸線Zは、光学系100の入力面102から有効面202を分離する。
【0045】
目標200の有効面202の表面は、第1構造210と第2構造220との間に分布する。第1構造210は、その表面が滑らかであり、その第1部分214の間に分布する平面基準面212と、第2部分216とを有する。第2部分216の表面は、拡散反射によって反射性であり、その表面が鏡面反射によって反射性である。一実施形態では、第1部分214は、例えば硫酸バリウムBaSOで作られた反射拡散層で被覆され、第2部分216は、例えばクロムで作られた鏡面反射による反射層で形成される。図示の実施形態では、第2部分216は、連続する第1部分214内に形成された島を形成する円の形のいくつかのローカライズ領域217から構成される。これらのローカライズ領域217は、円以外の形状の区間又は島のような、他の形状を有し得る。
これらのローカライズ領域217は、複数領域間の関係によって次のリスト、四辺形、平行四辺形、長方形、正方形、ひし形、正多角形及び円形に属する幾何的図形を画定する。この幾何学的図形は、中心対称性を持つ幾何学的図形にしてもよい。図3A及び図3Bでは、24個の円形ローカライズ領域217が正方形に配置されている。この第1構造210の目的は、標準的な視覚工具を使用してその中心C3を正確に識別可能にすることである。正方形の場合、この正方形の2つの対角線C1とC2は正方形の中心で交差する。図1から図3図5とに示すように、計測位置では、基準面212はX及びY方向に平行に配置される。X方向とY方向とはそれぞれ、図示の配置の場合、それぞれ垂直方向(軸線)と横方向(軸線)をなす。
【0046】
第2構造220は、基準面212に対して傾斜した面222を備える。この傾斜面222は本質的に平面であり、この傾斜面の正中面は、基準面212に対して鋭角αを形成する。鋭角αは、10度から80度の間、例えば20度から30度の間、好ましくは25度程度(図3C参照)である。
【0047】
1つの実施形態では、この傾斜面222の表面は滑らかではないが、ランダムであるか、又は所定の形状に従って、例えばそれらの間に格子(グリッド)又はネットワークの形態を規定する表面の不均等さを形成するレリーフ要素224を有する。ラインの構造化された格子(図示なし)又は構造化されたラインのネットワーク(図3Dを参照)を構成する。
【0048】
そのようなレリーフ224の要素は、傾斜面222の平均平面に対して、突出又はくぼんで、すなわち下がっていてもよく、特に小さな粗さの形で、又は他の任意の表面の不規則性となっていてよい。そのようなレリーフ要素224は、傾斜面222の表面全体にわたって存在し得る。そのようなレリーフ要素224は、傾斜面222の表面全体にわたって規則的に分布され得る。例えば、これらのレリーフ要素224は、格子又はネットワークを区切るセットの形態を取り得る。あるいはより一般的には、レリーフ要素224は、この傾斜面222で反射された光を拡散可能にする構造化表面又は粗面を形成してもよい。第2構造222の傾斜面222の表面は、例えば、次の要素の一つで覆われている。刻まれたネットワーク又は構造化格子で、格子又はネットワークのパターン間のピッチが5マイクロメートルと100マイクロメートルとの間、特に5と50マイクロメートルとの間、特に8と15マイクロメートルとの間、例えば10マイクロメートル程度である。
【0049】
例えば、この傾斜面222は、研磨されていないシリコン又はその他のセラミック、又は研磨されていない金属又はガラス、又はその他の構造化材料で作られ、レリーフ224の要素は、フォトリソグラフィー、削りくずの除去による機械加工、直接書き込みなど、又はその他の構造化プロセスによって得られたものである。これらのレリーフ要素224は、例えば、それぞれ平均平面から数マイクロメートル又は数10マイクロメートル、特に0.5と50マイクロメートルの間の値で、後退/突出する窪み及び/又は突起を形成する。
【0050】
別の実施形態では、図3Eに示すように、この傾斜面222の表面は滑らかであり、クロムの線のネットワーク、又は鏡面要素225を構成するこれらのクロムの線の鏡面反射を引き起こす別の材料のネットワークを備える。線の形態のこれらの鏡面要素225は、互いに平行に配置される。計測位置では、線又は帯の形のこれらの鏡面要素225が平面Y、Zに平行に配置されるため、傾斜面に沿って、方向Zで、これらの線が1つずつ出会う(これはX方向に進む場合も同様である)。次に、第2構造220のウェハを形成する基板は、ガラス又はシリコンを含む異なる材料で製造可能であり、傾斜面222上に、例えば鏡面要素225と交互になる硫酸バリウムBaSO4で作られた反射拡散層を備える。あるいは、傾斜面の表面全体を覆い、鏡面要素225がこの拡散反射層の上に配置される。
例示的な実施形態では、線の形のこれらの鏡面要素225は、25マイクロメートルのピッチでネットワークを形成し、(特にクロムの)線は、12.5マイクロメートルの幅を有し、幅12.5マイクロメートルの線又は条片の形の拡散反射を伴う線の間隔又は部分の幅に等しい。別の実施によれば、10マイクロメートル以上のピッチ、より一般的には5と50マイクロメートルとの間のピッチが使用される。拡散反射を生成する残りの表面と交互になるこれらの鏡面要素225は、帯を形成する連続線又はセグメント以外の形、特に不連続線又は点線、ドットの境界線、円、三角形、その他の幾何学的形状などのパターンの形状をなしてもよい。
【0051】
図示されていない実施形態によれば、第2構造220の傾斜面222は、点状で、突出しているレリーフ要素224を持っていて、レリーフ要素224は、互いに平行な列に分布されている小さな盛り上がりの又はとがった形で、レリーフ要素224は、ある列が別の列からずらされて、互い違いのパターンを形成している。図示されていない別の実施形態によれば、第2構造220の傾斜面222は、互いに平行な区間の形態で、互いに90°で交差する2つのシリーズにおいて等しい距離で突出するレリーフ要素224を担持する。このレリーフ要素224のセットは、格子パターンを構成する。この格子は、互いに90°とは異なる角度で交差する一連の区間を持つ、互いに平行な2連の区間で形成してもよいことを特記する。図3A図3B図3C及び図3Dでは、第2構造220の傾斜面222は、方向Xに沿って、互いに平行でかつ互いに等距離にある一連の区間の形でくぼみが作られたレリーフ要素224を持つ。これらのレリーフ要素224は、この場合、溝を形成する。この方向Xは、したがって、レリーフ224の要素を形成する区間の方向に直交する。
【0052】
図3Eの実施形態では、したがって、第2構造220の傾斜面222の表面は、鏡面線225のネットワーク、すなわち、表面が鏡面反射特性を有する相互に平行な連続条片のネットワークによって覆われる。
【0053】
よって、上記の事例、特に図3D及び図3Eのものにおいては、傾斜面222の表面は、横紋状である。
【0054】
目標200について示される実施形態によれば、目標200を区切るパッチは、その有効面202上に、有効面202の表面の大部分を占める第1構造210と、第1構造210内に、第2構造220の領域とを備える。この状況では、第1構造210は第2構造220を取り囲む。より特定的には、第1構造210の第2部分216のローカライズ領域217は、第2構造を取り囲む正方形を画定する。可能な配置と、示される目標200の実施形態の場合とによれば、第1構造210及び第2構造220は、有効面202上に同心円状に配置される。
さらに、図示の場合のように、第1構造体210は、第2構造体220を収容するハウジング219用の開口部218を画定し、そして例えば、傾斜面222を有するウェハ上に配置される。ウェハがハウジング219に収容されるとき、第1構造体210の傾斜面222は、ハウジング219の外側に向かって、開口部218に向かって回転される。この特定の場合、第2構造体220は、ハウジング219内に配置され、傾斜面222は、第1構造210の基準面から後退される。これは、傾斜面22、したがって、第2構造220が、ハウジング219内で基準面212によって画定される平面の後ろ(主方向Zについて、図3B参照。)に配置されることを意味する。そして、第2構造220は、例えば、0.05から2ミリメートル又は他の値、およそ0.15ミリメートルで、後退される。図示されていない別の可能性によれば、第2構造体220は、基準面212によって区切られた平面の前、前面に配置される。図示されていないさらに別の可能性によれば、第2構造体220は、基準面212に対して、基準面212で区切られた平面のいずれかの側、すなわち、傾斜面222の一部が後方に配置され、傾斜面222の他の部分が前方に配置される。
【0055】
図3Cに見られるように、第1構造210及び第2構造220を環境(ほこり、油、衝撃など)から保護するために、目標200は、特にガラスの、透明な材料で、有効面202の側で第1構造210及び第2構造220を覆う保護板230を備える。
可能な一実装によれば、図3Cに示されるように、目標200は、スタックの形で次の要素を備える。底壁231は、有効面202の側の開口部218によって区切られたハウジング219を区切るために、その中心がくり抜かれた板によって形成された天板232が上に載っている。天板232は、ハウジング219を閉じる保護板230が上に載っている。全体は、目標200全体を保持する円筒形の壁234によって囲まれている。第2構造220は、例えば、有効面202に向かって傾斜されている(レリーフ要素224又は鏡面要素225を支持する)傾斜面222を有するハウジング219に収容されたシリコンウェハである。
有効面202に向けられた天板232の面は、説明したように2つの領域に反射層233を備え、それぞれ、第1部分214(拡散反射による反射面)と、第2部分216(鏡面反射による反射面、特に、ローカライズ要素217の形態)に関する。
【0056】
さらに、目標200は、RFID(近距離無線通信を用いた自動認識技術)タイプのチップ(図示せず)を装備して、目標200と、目標200が取り付けられることが意図されている第1対象物、特に工具ホルダ310(図5及び6を参照)とに関連する一意の識別子及びデータの記憶及び読み取りを可能にしてもよい。例えば、この工具ホルダ310の参照情報及び使用に関する他の情報(例えば、シリアル番号、タイプ、材料センター又は工作物ホルダに対する設定、使用回数など)である。
【0057】
ここで図1を参照して、空間200の3方向における2つの物体間の相対位置を計測するための光学装置10を一緒に形成するために説明された目標200に関連する光学系100を提示する。特に、図に直接示されているデカルト座標系X、Y、Zの直交空間について考えることとする。この光学系100は、露光の同一シーケンスにおいて、目標200の第1構造210の画像と、同時に目標200の第2構造220の画像との両方の同時撮像を意図している。現時点の記載によると、この2つの画像の同時撮像は調整なしで実行されるため、この露光の実行速度は非常に速くなる。特に上述の目標200の特定の構造に関連する他の特性も、最大の精度を可能にする。出願人の企業は、本明細書による光学的3次元計測装置10を製造し、1マイクロメートル以下の精度で再現可能な相対計測を0.5秒以下で達成することに成功した。
【0058】
この光学系100は、第1露光系110及び第2露光系120を備える。一構成によれば、当該光学系100は、第1露光系110の焦点距離と第2露光系120の焦点距離の差が、基準面212を傾斜面222から隔てる最小距離と最大距離との間にある。
別の構成によると、第1露光系110の被写界深度DOF1は、第2露光系120の被写界深度DOF2よりもはるかに大きく、特に少なくとも10倍大きい。例えば、第1露光系110の被写界深度DOF1は、10と10,000の間であるか、又は第2露光系120の被写界深度DOF2よりも100倍から5000倍大きい。
異なる可能性の中で、第1露光系110の被写界深度DOF1は、0.8ミリメートル以上、また他に、0.5と5ミリメートルの間、また他に0.8と3ミリメートルの間、また他に1と2ミリメートルの間である。また、異なる可能性によると、第2露光系120の被写界深度DOF2は、0.1ミリメートル以下、また他に5と50マイクロメートル、また他に8と30マイクロメートル、また他に10と20マイクロメートルの間である。
【0059】
これにより、第1露光系110は、自然に、他の調整なしに、目標200と第1露光系との間の、数ミリメートルにわたって変化する可能性がある距離の範囲内で第1構造210の基準面212全体に焦点合わせが可能となる。並行して、第2露光系120は、第2露光系120の焦点距離に対応する距離で第2露光系から離れている第2構造体210の傾斜面222の部分に、自然にそして他の調整なしに、焦点合わせが可能である。1つの可能性によると、第1露光系210の倍率は、第2露光系220の倍率未満である。
【0060】
本願記載の意味の範囲内の各露光系(第1露光系210及び第2露光系220)は、光学系、特に、光学部品と、像取得系とのセットを備える中心光学系に対応する。そのような像取得系は、写真及び/又はビデオ撮影を可能にし、例えば、カメラ又は写真装置、特にデジタル写真装置である。可能な構成によれば、第1露光系110の第1像取得系112及び第2露光系120の第2像取得系122は、第1像取得系110による第1画像及び第2露光系120による第2画像を同時に取得すべく同期される。
【0061】
第1露光系210及び第2露光系220による目標200の視野への同時アクセスを可能にするために、後者は、第2露光系220に出入りする共通の光路の一部を有する。目標200を第1対象物に取り付け、光学系100を第2対象物に取り付けた後、光学系100によって監視されている物体から生じ、この場合は目標200である(図1及び図2を参照)。このために、計測位置では、第1露光系210は、目標200の有効面202の方向に回転され、目標200と整合された露光系、及び第2露光系を形成する。第2露光系120は、目標200と整合された露光系110の光路116に結合し、光軸に関して目標200に対してずらした露光系を形成する光路126を有する。光学系100の光学軸線Oであり、光路116及び126の共通部分(目標と整列)に対する。換言すると、目標200と整合された露光系の光路は、基準面212に対して実質的に垂直である。光軸線Oは、第1光路116の共通部分の平均半径と重ね合わされる。この共通部分では、第1光路116の区間及び第2光路126の区間は互いに平行であるが、必ずしも重ね合わされる必要はない。
【0062】
特に、図1及び図2に示すように、第1露光系210は、目標200の有効面202の方向に向けられ、換言すると、目標200の有効面202に直角に配向される。これは、光軸線Oと、光路116及び126との共通部分が目標200と位置合わせされ、目標200の有効面202(したがって基準面212)に対して直角にあることを意味する。この構成では、図1及び2に見られるように、光軸線Oと、光路116及び126との共通部分は、主方向Zに平行であり、横方向X及びYと、平面X、Yとに直交している。
【0063】
光路116及び126の共通部分において、光線は、少なくとも部分的に一致するか、又は他に、互いに単に平行である。中心からずれている第2露光系120は、この第2露光系120の内部に、好ましくは光軸線Oに平行な光路126の一部分を有する。この内部光路126の内側部分は、光路116に接続されている、あるいはより具体的には、鏡129などの反射光学系を備える専用光学モジュール128によって位置合わせされた第1露光系110の光路116に結合される。このようにして、中心の光軸から離れて位置されている露光系の入力(ここでは第2露光系120)は、整列された露光系(ここでは第1露光系110)の経路又は光路に接続される。
【0064】
より一般的には、第1露光系110及び第2露光系120のうちの1つは、目標200の有効面202に向けられ、目標200に整列された露光系を形成して、他方が第1露光系110から外れた露光系を形成することが理解される。そして第2露光系120は、目標200に整列されている露光系110の光路116に結合する光路126を備えて、中心の光軸から外れた露光系を形成する。これは、他方の露光系が、傾斜面222、すなわち目標200の第2構造220を通過する光軸線を有することを意味する。
また、第1露光系110と第2露光系120は、互いに平行に配置されている。さらに、光学系は、第1露光系110と第2露光系120との間に配置され、第1露光系110及び第2露光系120の一方の少なくとも一部を透過して第1露光系及び第2露光系の他方に向かう光線の一部を偏向するように構成された(例えば、鏡などの反射光学系を有する)光学モジュール128をさらに備える。
逆に、光学系100は、光学系100によって見られる物体(図1及び図2の目標200)からの光路が、第1露光系110及び第2露光系120の他方(図1及び図2の第2露光系120)に到達する前に、第1露光系110と第2露光系120の一方の少なくとも一部(図1及び図2の第1露光系110)を通過するように配置される。
【0065】
一実施形態では、第2露光系120の焦点距離は、第1露光系110の焦点距離よりも長い。例えば、第2露光系120の焦点距離と、第1露光系110の焦点距離の差は、0.5と5ミリメートルの間にある。
【0066】
一実施形態では、第1露光系110の倍率は、第2露光系120の倍率以下である。例えば、第1露光系110の倍率は、第2露光系120の倍率の0.2倍と1倍との間である。例えば、第1露光系110の倍率は、第2露光系120の倍率の0.3倍と0.8倍との間、又は他に0.4倍と0.6倍との間、好ましくは第2露光系120の0.5倍である。
【0067】
図1及び図2の実施形態では、光学系100は、3次元目標200の方向に向けられた光源140をさらに備え、この光源140は、3次元目標200の横方向の照明を構成するように配置される。この目的のために、この光源140は、中心軸線から外して配置され、光学系100の光路116+126に対して傾斜している。特に、光源140の光線は、目標の反射面上での鏡面反射が、特にローカライズ領域217で、光学系100に入射しない反射光線を生成するような角度とされる。同様に、傾斜面222が鏡面反射要素225を備える場合、これらの鏡面反射素子225上での光源140からの光線の反射は、光学系100に入射しない。
【0068】
一実施形態によれば、使用される第1露光系210及び使用される第2露光系220はテレセントリックである。念のため、テレセントリックとは、光学系を通過する全ての主光線(光線の各線の中心光線)が、実質的にコリメートされ、光軸線に平行である、光学系の一特性である。テレセントリック光学系の場合、被写界深度の概念は作動距離の概念に置き換えられる別の実施形態によれば、使用される第1露光系210及び使用される第2露光系220がテレセントリックではないか、両方がテレセントリックではない。それらが両方ともテレセントリックである場合、それらはまた、工具ホルダ310上に配置された工具の幾何学的特性の計測にも、使用可能である。
【0069】
次に、図2A及び図6を参照して、機械加工モジュール300が上記のような光学装置10を備える工作機械の場合における、目標200と光学系100との間の三次元光学計測方法を説明する。選択される工作機械の基準方向X、Y及びZは、工作機械から、特に工作機械の、垂直X方向(又は第1横軸線)と、主水平方向Z(又は主軸線)と、横水平方向Y(又は第2横軸線)を提示する枠部から選択される。目標200は、第1対象物として機能する工具ホルダ310上に配置される(図5参照)。工具ホルダ310は、X軸線に対応する水平主方向に延在し、このX軸線周りに回転可能性を持つ。このために、工具ホルダ310の一部、例えばクランプ部は、その周囲に、通常、クランプ把持/解放する工具の搭載専用の溝部を持ち、そこに、これまでに説明したようにRFIDチップに関連付けられている目標200を配置可能となっている。
さらに、光学系100は、第2対象物として機能し、加工対象の工作物322を受け入れる工作物ホルダ320(図6を参照)に取り付けられる。工作物ホルダ320は、軸線Zについて回転可能性を持ちながら、軸線Zに対応する水平主方向に延在する。次に、工作物ホルダ320及び工具ホルダ310は、機械加工ステップの前に、近接位置に配置されて、工具312及び加工対象の工作物を互いに近くに配置する。工具ホルダ310上の目標200の位置決め及び工作物ホルダ320上の光学系100の位置決めは、この相対的な計測位置において、目標200、より正確には基準面202が、光学系100の光軸線O(この光軸線Oは方向Zに平行であることに注意されたい)の延長に、配置されることを可能にする。よって、目標200の基準面202は、光学系100の入力面102の方向に向けられる。
【0070】
図6に示される場合のように、光学装置10はまた、工具ホルダ310上に配置されて、目標200の有効面202の配向及び/又は工具ホルダ310の回転部分の特に軸線Xについての角度配置を登録すべく構成された第3露光系130を備える。当該光学系100を用いた同時露光ステップの前に目標200を位置決めする追加の予備ステップが実行される。追加の予備ステップは、次のとおりである。
3次元目標200の有効面202が光学系100の光路Oにあるように、工具ホルダ310及び工作物ホルダ320が配置される。特に、工具ホルダ310の回転部分に対する、それにより軸線Xに対する目標200の角度配置を登録するのに、第3露光系を使用してもよい。これにより、必要に応じて、X軸に対する工具ホルダ310の回転部分の角度配置(図6の矢印Rを参照)が変更可能、それゆえ、目標200の有効面202が光学系100に向けられるように目標200の配置を変更可能になる。相対計測位置は、 図1及び図2Aの場合に先に説明したように、目標200は光学系100の方向に向けられて、得られる。この場合、方向Zは目標200と光学系100との間に延在する。
【0071】
光学装置10、個別にいうと、工作物ホルダ320(又はより一般的には第2対象物)と工具ホルダ310(又はより一般的には第1対象物)とにそれぞれ搭載される、光学系100と関連する目標200を、初めて使用するときは、目標200を支持する工具ホルダ310(又はより一般的には第1対象物)に対する目標200の位置を、3方向X、Y、Zにおける空間的に基準を取る、追加の予備ステップを実行する必要がある。光学系100の変数、より具体的には第1露光系110及び第2露光系の変数が、焦点距離を含み、既知となっていることは、明らかであり、留意されたい。この段階で、加工モジュール300の作業空間が閉じられていて一定温度に維持されるとき、この熱安定性は、光学装置10の、したがってその変数の寸法安定性を生成すると言及可能である。
【0072】
工具ホルダ310(又はより一般的には第1対象物)と工作物ホルダ320(又はより一般的には第2対象物)との間の、X、Y及びZに関する3次元相対位置を最終的に知るべく、目標200と光学系100との間の3次元相対位置の計測が工作機械の場合に使用されることを再度考える。
【0073】
現記載において、3方向X、Y及びZは、例えば工作機械の機械加工モジュール300の軸線である。よってZは、主軸線、より詳しくは、第1対象物(工具ホルダ310)を第2対象物(工作物ホルダ320)から離す主水平方向として定義してもよい。Xは、横水平方向、又はより一般的には、第2横断軸線として定義してもよい。一実施形態では、工具ホルダ310はこの方向Xに平行な軸線について回転する。
【0074】
目標200の3方向X、Y及びZにおける位置の空間的基準をとる(光学装置10の較正)ステップでは、例えば図2A及び図2Bの配置では、光学系100による露光が有効となって、
一方で、第1露光系110の第1像取得系112による、全ての基準面212を持つ目標200の全ての有効面202の、鮮明な、第1像の生成という結果となり、
他方で、第2露光系12の第2像取得系122による、水平方向の帯の形態の鮮明な領域を持つ目標200の全ての傾斜面222の第2像の生成という結果となる。
この第1像は、ローカライズ領域217の像を備える。ここでは、第1像の処理が、正方形の対角線C1及びC2をなし、正方形の中心C3を特定可能にするように、正方形を区画している(図3A参照)。よって、第1像の光学軸線Oの位置がわかるので、正方形の中心C3の位置の決定で、光学軸線Oだけでなく、一方で、工具ホルダ310のX方向における基準点314に対する位置と、工具ホルダ310のY方向における基準点316に対する位置とに対する、目標200のXとYにおける位置がわかるようになる。
事実上、図2A及び図2Bからわかるように、X基準として、軸線Xに直交する、工具ホルダ310の一面が使用される。第1像上の線に見え、その面が方向Xにおいて基準点314を形成する、工具ホルダ310の区間に沿って段となった肩部が、その一面の例である。
さらに、図2A及び図2Bからわかるように、Y基準として、軸線Xに直交し、目標200のそばの工具ホルダ310の幅(方向Yに平行)で代表されることがある、目標200のそばの工具ホルダ310の寸法が使用される。寸法は、例えば、工具ホルダ310の目標200のそばの部分が円形区間の円筒であるなら、直径であり、この寸法が、方向Yの基準点316を形成する。
【0075】
並行して、例えば図4Aにみられる第2像の処理が実施される。この第2画像の局所的なコントラストを分析することにより(X位置の関数としてのコントラスト曲線を示す図4Bを参照)、第2画像のシャープな領域の鉛直方向Xの位置X0が決定される。この解析は、画像の中で最もシャープな画素の決定を可能にするアルゴリズムを用いて行われる。傾斜面222の傾斜が既知であるので、目標200に固有のこの傾斜面222のXとZとの間のマッピングから対応曲線を得る。この対応曲線のよって、位置X0(図4A及び図4Bを参照)が既知であることにより、光軸O上の傾斜面222の位置Z0、ひいては光学系100に対する目標200のZについての位置の推定が可能となる。さらに、工作物ホルダ320に対する光学系100の相対的なZについての位置は、光学系100を支持する工作物ホルダ320上のZ軸に沿って配置された計測尺度(図示せず)から既知である。同様に、工具ホルダ310の314に対する目標200のZについての相対位置は既知である。
【0076】
この操作を複数回実施し、毎回Zについて工作物ホルダ310の工具ホルダ320に対する距離を変更する(例えば工作物ホルダ310を後退又は前進させる)ことで、目標200の傾斜面222の3次元像の再構築と、工具ホルダ310に対する目標200の傾斜面222の3次元直交系のための図面にする基準のベースを持つことが、可能である。究極的には、それは、工具ホルダ310に対して3方向X、Y、Zにおいて空間的に基準とされる、目標200の有効面202の全面(基準面212及び傾斜面222)である。
【0077】
次に、上述した空間的基準計測の精度を維持するために、この目標200と光学系100を搭載した加工モジュール300を使用する動作の間に、必要に応じてその間に分解しないときはいつでも実測が実施可能である。この目的のために、例えば、図2Aの配置が示されている。ワークホルダ320は、必要に応じて、目標200を光学系100に整列させるために、軸線Xと平行なその回転軸(図6の矢印Rを参照)について回転される。次に、光学系100による露光が作動されて、それにより、一方で、第1露光系110の第1像取得系112は、基準面212の全体がシャープな焦点である目標200の全体の有効面202の第1画像を生成し、他方で、第2露光系120の第2像取得系122は、第2露光系120の焦点距離に対応し水平な条片の形でシャープな領域のみを有する目標200の全体の傾斜面222の第2画像を生成する。この第1画像の分析により、上述したように、ローカライズ要素217によって形成された正方形の中心C3の特定が可能となり、よって、光軸線Oに対する目標200のX及びYにおける位置、並びに工具ホルダ310に対する位置の特定が可能となる。第2画像の分析、特に第2画像(図2Aのような)のXについてのシャープな領域の位置によって、光学系100に対する目標200のZについての位置、ひいては距離がわかるようになる。実際、第2画像については、工具ホルダ310上の基準314及び316に対する傾斜面222の画像の各画素の位置Zが既知であるので、目標200の位置Z、ひいては工具ホルダ310の位置Zの非常に迅速な計測が可能である。
【0078】
上記から、このようにして、この光学系100の設定又は調整が伴う時間の損失なしに、光学系100によって生成された2つの画像の分析のみによって、光学系100に対する目標200のX、Y及びZについての位置、及び工作物ホルダ320に対する工具ホルダ310から始まる位置は、非常に迅速に計測される。これは、工作物ホルダ320に対する光学系100のX、Y及びZについての位置が既知であるために可能である。
【0079】
本願の記載は、光学系に搭載されることが意図されている第1対象物と第2対象物との間の相対位置の3次元計測用の当該光学系についても関する。当該光学系は、第1露光系と、第2露光系とを備え、当該光学系において、
第1露光系の被写界深度は、第2露光系の被写界深度の少なくとも10倍大きく、
当該光学系は、第1露光系の光路と第2露光系の光路とが、第1露光系の像焦点平面及び第2露光系の像焦点平面を含む共通区間を持つように構成されている。
【0080】
本願の記載は、 主方向Zにおいて整列されていて互いに離れている第1対象物と第2対象物との間の相対位置を3つの直交方向X、Y、Zにしたがって計測するための3次元光学的計測方法にも関する。当該3次元光学的計測方法において、以下のとおりである。
3次元目標が、位置基準を形成して有効面上に提供されていて、第1構造と第2構造とを備える。
第1構造は、少なくとも第1部分と、第2部分との間で分割された平面的な基準面を画定し、
第1部分の表面は、拡散反射にしたがって反射するものであり、
第2部分の表面は、鏡面反射にしたがって反射するものであり、第2部分は、第1部分に配置されている一連のローカライズ領域にしたがって分割されている。
第2構造は、平面的な基準面について傾斜面を持つ。
光学系が、第1露光系と第2露光系とを備えて提供され、
一方で、第1露光系の光路と第2露光系の光路とが、第1露光系の焦点平面と第2露光系の焦点平面とを持つ共通区間を持つように、
他方で、第2露光系の焦点距離と第1露光系の焦点距離との差が、傾斜面から基準面が離れている最小距離と最大距離との間にあるように、構成されている。
3次元目標は、
一方で第1露光系の焦点距離が第1露光系の像焦点を目標の第1構造に置けるように、
他方で第2露光系の焦点距離が第2露光系の像焦点を目標の第2構造に置けるように、第1対象物に位置される。
光学系が第2対象物に位置されて、
少なくとも1つの露光が、光学系の第1露光系と光学系の第2露光系とを使って同時に行われ、
それによって、光学系の各露光のため、
一方で、第1露光系が、基準面上で第1部分に対する第2部分の位置の特定を可能にする目標の第1像を生成し、
第1像は、
最初に、第1露光系に対する目標の方向Xにおける相対位置の情報の第1部分を示し、
第2に、方向Yにおける目標と第1露光系との間の相対位置の情報の第2部分を示し、
他方で、第2露光系が、第2構造の傾斜面の位置に対応するシャープな部分を備える目標の第2像を生成し、
第2像は、目標と第2露光系との間の方向Zにおける距離についての情報の第3部分を示す。
【0081】
これまで説明したように、光学系100はしたがって第1画像及び第2画像を同期して生成する。さらに、光学系100は、調節を実施することなく、第1画像及び第2画像を生成する。これにより、時間の喪失なく、即時に露光の実施が可能である。
【0082】
本願の記載は、前もって定義されるごとく光学目標を備える工作機械並びに前もって定義されるごとく光学システムを備える工作機械にも関する。本願の記載はまた、工具ホルダ及び工作物ホルダを備えた機械加工モジュールを備える工作機械、並びに前記工具ホルダと前記工作物ホルダとの間の相対位置を3次元計測するための光学計測装置に関する。光学計測装置は、工作物ホルダに取り付けられた光学系と工具ホルダに取り付けられた目標を備え、光学系の光軸に配置可能な位置決め基準を形成する有効面を備える。例えば、光学計測装置は、光学系による目標の単一の露光工程を通じて、機械加工される工作物のホルダと工具ホルダとの間の3次元の相対位置の決定を可能にするように構成される。また、1つの可能な規定によれば、目標は、光学系の像焦点面が目標の有効面と一致可能に配置される。
【0083】
本願記載は、第1対象物と第2対象物との間の相対位置を計測する3次元光学計測の装置にも関する。当該装置は、
第1対象物と第2対象物とを備える設備と、
本願に記載の光学計測装置であって、当該光学計測装置において、
第1露光系が、第1露光系の像焦点面が第1構造の基準面に対応可能に設定されていて、
第2露光系が、第2露光系の像焦点面が3次元目標の傾斜面を分割可能に設定されている、光学計測装置と、
を備える。
上述の第1可能性と互換性があるか、又は単独で用いる第2の可能性によると、光学計測装置は、
第1露光系の焦点距離は、像焦点を第1構造上に置けるように、
第2露光系の焦点距離は、像焦点を第2構造上に置けるようにするものである。
【0084】
そのような設備は、互いに可動で、3次元空間における相対位置の基準決めを実施するのに必要な第1対象物と第2対象物とを持つ、例えば装置一式、機械、モジュールであり、特に科学的又は工業的なものである。例えば、設備は、第1対象物として工具ホルダ又は複数の工具ホルダの1つを持ち、第2対象物として機械加工対象の一片(棒、ブランクなど)を支持する工作物支持部を持つ、加工機械又は機械加工モジュールである。別の例によると、この設備は、第1対象物としてPCB(プリント回路基板)の支持部を持ち、第2対象物として電子部品を搭載する把持部又は他の工具を持つ、電子部品をPCB(プリント回路基板)に搭載するユニットである。この設備のさらに別の例は、第1対象物がマイクロプレートの支持部であり、第2対象物が播種対象の細胞を注入する装置の支持部である、マイクロプレートに格納されている一連のウェルに播種する細胞培養モジュールである。
【0085】
本願の記載は、主方向Zにおいて整列されていて互いに離れている第1対象物と第2対象物との間の相対位置を3つの直交方向X、Y、Zにしたがって計測するための3次元光学的計測方法にも関する。当該3次元光学的計測方法において、以下のとおりである。
3次元目標が、位置基準を形成して有効面上に提供されていて、第1構造と第2構造とを備える。
第1構造は、少なくとも第1部分と、第2部分との間で分割された平面的な基準面を画定し、
第1部分の表面は、拡散反射にしたがって反射するものであり、
第2部分の表面は、鏡面反射にしたがって反射するものであり、第2部分は、第1部分に配置されている一連のローカライズ領域にしたがって分割されている。
第2構造は、平面的な基準面について傾斜面を持つ。
光学系が、第1露光系と第2露光系とを備えて提供され、
3次元目標は、
一方で、第1露光系の焦点距離が第1露光系の像焦点を目標の第1構造に置けるように、
他方で、第2露光系の焦点距離が第2露光系の像焦点を目標の第2構造に置けるように、第1対象物に位置される。
光学系が第2対象物に位置されて、
少なくとも1つの露光が、光学系の第1露光系と光学系の第2露光系とを使って同時に行われ、
それによって、光学系の各露光のため、
一方で、第1露光系が、基準面上で第1部分に対する第2部分の位置(又は特に、基準面のローカライズ領域の位置)を特定可能にする目標の第1像を生成し、
第1像は、
最初に、第1露光系に対する目標の方向Xにおける相対位置の情報の第1部分を示し、
第2に、方向Yにおける目標と第1露光系との間の相対位置の情報の第2部分を示し、
他方で、第2露光系が、第2構造の傾斜面の位置に対応するシャープな部分を備える目標の第2像を生成し、
第2像は、目標と第2露光系との間の方向Zにおける距離についての情報の第3部分を示す。
このため、1つの可能性によると、第1露光系の被写界深度(DOF1)は、第2露光系の被写界深度(DOF2)の少なくとも10倍大きい。
さらに、単独の又は上述の可能性と組み合わせられる別の可能性によると、光学系は、第1露光系の光路と第2露光系の光路とが、第1露光系の像焦点平面及び第2露光系の像焦点平面を含む共通区間を持つように構成されている。
さらに、単独の又は上述の可能性と組み合わせられる別の可能性によると、第2露光系の焦点距離と、第1露光系の焦点距離との差は、基準面を傾斜面から隔てる最小距離と最大距離との間にある。
【0086】
この方法によって、(第1)基準面と、目標の傾斜面又は第2基準面とに結び付けられる空間的幾何学情報を持つことが可能であり、そこから3つの空間的方向X、Y、Zにおける第1対象物と第2対象物との間の相対位置を推定可能である。目標と第1対象物との間の相対的3次元位置の基準の設定と、光学系と第2対象物との間の相対的3次元位置の設定とは、実行されているだろう。
【0087】
1実施態様において、露光又は像生成は、対応する露光系の調整なしで実行されると述べておくことは重要である。確かに、基準面と傾斜面とにそれぞれ対応する2つの像の同時生成を可能にするのは、
露光系が見ている(そしてそれゆえ第1露光系の目標の基準面に対する相対位置と、第2露光系の目標の傾斜面に対する相対位置)対象物に対する露光系の3方向X、Y、Zの相対位置と、
光学特性と、
例えば、光学系の各露光系の非常に異なる被写界深度である。
これら2つの像(複数の像の2連でもよい)の分析は、そこから、X(この方向Xは、例えば高さに対応する)についてと、Y(この方向Zは、例えば水平横方向に離れることに対応する)についてと、Z(この方向Zは、例えば主水平距離に対応する)についての、目標と光学系との間の相対位置、よって、3次元目標を支持する第1対象物と光学系を支持する第2対象物と間の相対的3次元位置についての情報の推定を可能にする。
【0088】
一実施態様において、3次元目標を第1対象物に位置決めし、光学系を第2対象物に位置決めした後、X、Y、Zについて第1対象物に対する目標の位置の空間的基準を決める追加のステップが光学系により実施される。
【0089】
1つの可能性によると、平面的な基準面の第2部分は、第1部分に配置されている一連のローカライズ領域にしたがって分割され、第1露光系に生成されるが目標の第1像は、第2部分のローカライズ領域の位置を基準面上に特定可能にし、これがローカライズ領域と第1露光系との間の相対位置についての情報の1部分を与える。この情報の1部分は、方向Yと方向Xとにおける相対計測の推定を可能にする。
【符号の説明】
【0090】
X 縦方向(第1横断軸線)
Y 横水平方向(第2横断軸線)
Z 第1対象物と第2対象物とを分ける主水平方向(主軸線)
C1 対角線
C2 対角線
C3 中心
α 傾斜面の角度
R 工具ホルダ及び目標の回転を示す矢印
10 光学装置
200 3次元目標
202 有効
210 第1構造
212 基準面
214 第1部分(放射反射による反射表面)
216 第2部分(鏡面反射による反射表面)
217 ローカライズ領域
218 開口部
219 ハウジング
220 第2構造
222 傾斜面
224 レリーフ要素
225 鏡面要素
230 透明保護板
231 底壁
232 天板
233 反射層
234 筒状壁
100 光学系
O 光学軸線
102 光学系の入力面
110 第1露光系
DOF1 第1露光系の被写界深度
F1 第1露光系の像焦点平面
112 第1像取得系
116 第1露光系の光路
120 第2露光系
F2 第2露光の像焦点平面
DOF2 第2露光系の被写界深度
122 第2像取得系
126 第2露光系の光路
128 反射光学系を持つ光学モジュール
129 鏡
130 第3露光系
140 光源(横方向の照明)
300 機械加工モジュール
310 工具ホルダ(第1対象物)
312 工具
314 工具ホルダ上のXについての位置決め
316 工具ホルダ上のYについての位置決め
320 工作物ホルダ又は材料スピンドル(第2対象物)
322 加工対象の工作物(材料)
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5
図6