(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】粉末混和材料のスラリー化供給装置
(51)【国際特許分類】
B28C 7/04 20060101AFI20231018BHJP
E04G 21/02 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
B28C7/04
E04G21/02 101
(21)【出願番号】P 2020063273
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【氏名又は名称】畠山 順一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 則雄
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103737726(CN,A)
【文献】中国実用新案第203622654(CN,U)
【文献】国際公開第2019/102850(WO,A1)
【文献】特開平03-240506(JP,A)
【文献】実開昭51-096049(JP,U)
【文献】国際公開第2017/090212(WO,A1)
【文献】特開昭60-125242(JP,A)
【文献】特開2012-122290(JP,A)
【文献】特開2013-177276(JP,A)
【文献】中国実用新案第206424855(CN,U)
【文献】中国実用新案第204004571(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 5/00 - 9/04
E04G 21/02
B01F 35/00 - 35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽内に粉末混和材料と水溶液(または水)が供給されて撹拌によりスラリー化するための、排出口を有する攪拌槽と、
前記攪拌槽の排出口と連通可能な三方弁と、
前記三方弁の残りの一方が連通可能な空気供給装置と、
前記三方弁の残りの他方が連通可能であり、吸引口と排出口を有するスラリー用ポンプと、
前記スラリー用ポンプの排出口に連結し、スラリーをコンクリートに供給する圧送ホースと
を具備することを特徴とする粉末混和材料のスラリー化供給装置。
【請求項2】
前記スラリー用ポンプは、停止時に吸引口と排出口とが連通している
ことを特徴とする
請求項1に記載の粉末混和材料のスラリー化供給装置。
【請求項3】
粉末混和材料および水溶液(または水)をそれぞれ計量し、
請求項1記載の粉末混和材料のスラリー化供給装置を用い、
前記攪拌層にて、前記計量された粉末混和材料および水溶液(または水)を撹拌しスラリー化し、
前記撹拌されたスラリーを
前記スラリー用ポンプおよび
前記圧送ホースを介して未硬化コンクリートに供給し、
前記スラリー用ポンプの稼働停止後、前記スラリー用ポンプおよび圧送ホース内の残留スラリーを
前記空気供給装置からの空気圧送により未硬化コンクリートに供給する
ことを特徴とする混和材料の供給方法。
【請求項4】
請求項3記載の混和材料の供給方法により、混和材料を未硬化コンクリートに供給し、混和する
ことを特徴とするコンクリートの製造方法。
【請求項5】
前記未硬化コンクリートはアジテータ車により運搬され、
前記アジテータ車のドラム内の未硬化コンクリートの量に対応する粉末混和材料および水溶液(または水)が計量され、
前記混和材料は、アジテータ車のドラム内の未硬化コンクリートに供給される
ことを特徴とする
請求項4記載のコンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末混和材料をスラリー化して未硬化コンクリート等に供給する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート等には目的に応じて様々な混和材料が混和される。たとえば、水中にコンクリートを打設する場合に、セメントの流出を大幅に低減し材料分離を防ぐ目的で、水中不分離性混和剤を混和したコンクリート(水中不分離性コンクリート)が用いられることが多い。水中不分離性混和剤は増粘剤の一種であり、セルロース系高分子又はアクリル系高分子を主成分とするものが殆んどである。
【0003】
大規模工事等で専用のコンクリート製造プラントや生コン工場において汎用のコンクリート製造プラントで、水中不分離性コンクリートを1日中製造する場合は特に問題は起きない。しかし、汎用のコンクリート製造プラントで、水中不分離性コンクリートを製造した後に、他の建設現場用のコンクリート(水中不分離性コンクリートではない)を製造すると、コンクリートミキサ内に付着した水中不分離性コンクリートが後に製造するコンクリートの性能に影響を与えてしまう。これに対し、水中不分離性コンクリートを洗い落す作業が必要となり、製造効率が悪く、製造コストも掛かり又廃棄物量も多くなるという問題がある。
【0004】
そのため、汎用のコンクリート製造プラントでは水中不分離性混和剤を添加しないコンクリートを製造し、工事現場で当該コンクリートに水中不分離性混和剤を添加した後に、混合することが行われている。この工事現場における混合には、専用に設置したコンクリートミキサで行われることもあるが、費用の点から、水中不分離性混和剤を添加していないコンクリートの運搬に用いるトラックアジテータのドラム内に、水中不分離性混和剤を水等でスラリー化した上で投入し該ドラムを高速回転させることで、水中不分離性コンクリートを製造することも多い(例えば、特許文献1(段落[0002]-段落[0006])、非特許文献1参照。)。
【0005】
水中不分離性混和剤のスラリーのようなスラリーや粘度の高い液体は、流量計による計量が困難である。その結果、品質維持が難しい。
【0006】
ところで、水中不分離性混和剤のスラリーは、時間が経つと粘性が増大するため、トラックアジテータ1台分の水中不分離性混和剤スラリーを製造した後に、製造した該スラリー全てをトラックアジテータのドラム内に投入した上で該ドラムを高速回転させ水中不分離性コンクリートを製造する。すなわち、1バッチ(アジテータ)毎に製造する。
【0007】
トラックアジテータ1台分の水中不分離性混和剤スラリーが入った容器からポンプで該ポンプに圧送ホースを繋ぎ該圧送ホースの先端をトラックアジテータのドラム内に挿入した上で圧送することもあるが、ポンプ内や圧送ホース内に水中不分離性混和剤スラリーが残ってしまうという問題があった。その結果、残留する水中不分離性混和剤スラリーを回収した上でトラックアジテータのドラムに投入することを行わない場合は、一のトラックアジテータのドラムに投入する水中不分離性混和剤スラリーの量が少なかったり、次のトラックアジテータのドラムに投入する水中不分離性混和剤スラリーの量が多かったり、品質ムラが生じるおそれがある。
【0008】
さらに、交通事情等によりトラックアジテータの到着間隔が長くなると、残留スラリーが詰まりの原因となるおそれがある。その結果、詰まりを解消するといった施工手間が増える。
【0009】
一方、混和剤タンクと混和剤計量装置とを備えるトラックアジテータが提案されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、計量困難に係る課題および残留スラリーに係る課題について完全には解決できない。さらに、汎用性および経済性に劣るため、実用化されていない。
【0010】
以上のような技術背景から、現在の施工現場の実務では、バケツ等の数リットル~20リットル程度の容量の容器に小分けし、トラックアジテータのホッパよりドラム内に人力で投入することも多い。しかしながら、当然、大変な労力である。
【0011】
また、スラリーをポンプ圧送する場合、残留スラリーをバケツに回収して、アジテートトラックのホッパ上部まで当該バケツを人力で持ち上げて回収した残留スラリーをホッパ内に投入することもある。しかしながら、当然、大変な労力である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平07-053251号公報
【文献】実開平01-156003号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】土木学会コンクリート委員会水中不分離性コンクリート研究小委員会(委員長 長瀧 重義)編、「コンクリート・ライブラリー第67号水中不分離性コンクリート設計施工指針(案)」、社団法人土木学会、平成3年5月17日、p.140-142
【発明の概要】
【0014】
上述の通り、粉末混和材料をスラリー化して未硬化コンクリート等に供給する際には、スラリーの計量困難に係る課題と残留スラリーに係る課題がある。
【0015】
本願発明は上記課題を解決するものであり、粉末混和材料をスラリー化して未硬化コンクリート等に供給する際に、所定量のスラリーを略全量投入できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決する本発明は、粉末混和材料のスラリー化供給装置である。槽内に粉末混和材料と水溶液(または水)が供給されて攪拌によりスラリー化するための、排出口を有する攪拌槽と、前記攪拌槽の排出口と連通可能な三方弁と、前記三方弁の残りの一方が連通可能な空気供給装置と、前記三方弁の残りの他方が連通可能であり、吸引口と排出口を有するスラリー用ポンプと、前記スラリー用ポンプの排出口に連結し、スラリーをコンクリートに供給する圧送ホースとを具備する。
【0017】
空気供給装置による空気圧送により、スラリー用ポンプによる圧送時に発生する残留スラリーもコンクリートに供給できる。すなわち所定量のスラリーを略全量投入できる。
【0018】
本発明において、攪拌槽と三方弁との間に貯留槽がある場合は、「攪拌槽の排出口と連通可能」を「攪拌槽の排出口の下流に設けられる貯留槽の排出口と連通可能」と読み替える。
【0019】
上記課題を解決する本発明は、粉末混和材料のスラリー化供給装置である。槽内に粉末混和材料と水溶液(または水)が供給されて攪拌によりスラリー化するための、排出口を有する攪拌槽と、前記攪拌槽の排出口の下流に設けられ、排出口を有する貯留槽と、前記貯留槽の排出口と連通可能な三方弁と、前記三方弁の残りの一方が連通可能な空気供給装置と、前記三方弁の残りの他方が連通可能であり、吸引口と排出口を有するスラリー用ポンプと、前記スラリー用ポンプの排出口に連結し、スラリーをコンクリートに供給する圧送ホースとを具備する。
【0020】
これにより、施工効率が向上する。
【0021】
本発明において、好ましくは、前記三方弁は、粉末混和材料のスラリー化時においては、前記攪拌槽の排出口と、空気供給装置及びスラリー用ポンプの吸引口とが連通しない状態とされ、粉末混和材料スラリーの攪拌槽からの排出時または/および前記スラリー用ポンプ稼働時においては、攪拌槽の排出口とスラリー用ポンプの吸引口とが連通する状態とされ、攪拌槽の排出口及びスラリー用ポンプの吸引口と、空気供給装置とが連通しない状態とされ、粉末混和材料スラリーの攪拌槽からの排出後においては、攪拌槽の排出口と、空気供給装置及びスラリー用ポンプの吸引口とが連通しない状態とされ、空気供給装置とスラリー用ポンプの吸引口とが連通する状態とされる。
【0022】
三方弁の状態制御により、スラリー製造時、スラリー供給時、残留スラリー空気圧送時に適した動作を可能とする。
【0023】
三方弁の状態制御は、手動制御でもよいし、制御装置による自動制御でもよい。
【0024】
本発明において、好ましくは、前記スラリー用ポンプは、停止時に吸引口と排出口とが連通している。
【0025】
これにより、スラリー用ポンプ内の空気圧送が可能となる。
【0026】
上記課題を解決する本発明は、混和材料の供給方法である。粉末混和材料および水溶液(または水)をそれぞれ計量し、前記計量された粉末混和材料および水溶液(または水)を攪拌しスラリー化し、前記攪拌されたスラリーをスラリー用ポンプおよび圧送ホースを介して未硬化コンクリートに供給し、前記スラリー用ポンプの稼働停止後、前記スラリー用ポンプおよび圧送ホース内の残留スラリーを空気圧送により未硬化コンクリートに供給する。
【0027】
スラリー用ポンプによる圧送時に発生する残留スラリーを空気圧送することにより、所定量のスラリーを略全量コンクリートに投入できる。
【0028】
本発明において、好ましくは、上記スラリー化供給装置を用いる。
【0029】
これにより、省力化でき作業が容易となる。
【0030】
上記課題を解決する本発明は、上記混和材料の供給方法により、混和材料を未硬化コンクリートに供給し、混和するコンクリートの製造方法である。
【0031】
これにより、混和剤が意図通り作用し、高品質のコンクリートが得られる。
【0032】
本発明において、好ましくは、前記未硬化コンクリートはアジテータ車により運搬され、前記アジテータ車のドラム内の未硬化コンクリートの量に対応する粉末混和材料および水溶液(または水)が計量され、前記混和材料は、アジテータ車のドラム内の未硬化コンクリートに供給される。
【0033】
これにより、現在の施工実務の範囲内で、本願発明の技術思想を容易に実現できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、粉末混和材料をスラリー化して未硬化コンクリート等に供給する際に、所定量のスラリーを略全量投入できる。
【0035】
このことはスラリーを正確に計量したことと同等である。
【0036】
また、残留スラリーがないことにより、施工手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図4】残留スラリー空気圧送時の三方弁の動作例である。
【0038】
~概略~
本工法においては、粉末混和材料および水溶液(または水)をそれぞれ計量する。計量された粉末混和材料および水溶液(または水)を攪拌しスラリー化する。攪拌されたスラリーをスラリー用ポンプおよび圧送ホースを介して未硬化コンクリートに供給する。スラリー用ポンプの稼働停止後、スラリー用ポンプおよび圧送ホース内の残留スラリーを空気圧送により未硬化コンクリートに供給する。
【0039】
粉末混和材料および水溶液(または水)は、スラリーに比べて、正確に計量できる。残留スラリーを含め所定量のスラリーを略全量投入するため、スラリーを正確に計量したことと同等である。残留スラリーがないことにより、施工手間を省くことができる。
【0040】
分散媒として、好ましくは、水または水溶液を用いる。エマルションも水溶液と同様に扱う。
【0041】
粉末混和材料としては特に限定されないが、分散媒と急激な反応を起こしスラリーの流動性がスラリー排出までに無くならないものであればよく、水硬性の粉末状急結剤、水硬性の硬化促進剤、水中不分離性混和剤、膨張材等の、分散媒と急激な反応を起こしスラリーの流動性がスラリー排出までに無くなることはないが、スラリー製造後に時間が経過するとスラリーの流動性が低下する粉末状混和材料を、本発明における粉末混和材料として好適に用いることができる。本発明に用いる粉末混和材料としては、粉末状の混和材および粉末状の混和剤の何れも使用可能であるが、添加する未硬化のコンクリート(ベースコンクリート)を製造する時の単位水量を多くすることができることから、粉末状混和剤が好ましく、水中不分離性混和剤が特に好ましい。
【0042】
未硬化のコンクリートには、未硬化のモルタル及び未硬化のセメントペーストが含まれる。上記粉末混和材料スラリーに含まれる粉末混和材料以外の混和材料の1種又は2種以上が含まれたものでもよい。
【0043】
~システム構成~
図1は、本工法に用いるシステムの例を示す概略構成図である。
【0044】
本システムは1、水供給機構101と、粉末混和材料供給機構102と、スラリー製造機構103と、スラリー供給機構104と、空気供給機構105と、セメント分散剤供給機構106とを備える。
【0045】
水供給機構101は、水50を貯留する水用容器52と、水中ポンプ51と、水供給用ホース55と、水供給用ホース55上に設けられた電磁流量計53と、電磁弁54とを有する。電磁弁54は、水用容器52内の水50に沈設してある水中ポンプ51にホースを介して繋がっており、反対側には電磁流量計53が管を介して繋がり、電磁流量計53には水供給用ホース55が繋がっている。これらに構成により、所定量の水50を正確に計量し、水供給用ホース55を介して、攪拌槽20に供給できる。所定量の水50を正確に計量し1個の容器又は複数個の容器に分けて準備し、当該所定量の水50を攪拌槽20の上側の開口部より、直接または漏斗若しくはホッパを介して攪拌槽20内に投入する場合は、当該容器、攪拌槽20の上側開口部及び漏斗若しくはホッパが、水供給機構101である。
【0046】
粉末混和材料供給機構102は、粉末混和材料5を貯留する容器と、計量機構と、開閉機構とを有する。これらに構成により、所定量の粉末混和材料5を正確に計量し、攪拌槽20に供給できる。所定量の粉末混和材料5を1個又は数個の袋等の容器に計量しておき、攪拌槽20の開口部より攪拌槽20内に供給することでもよい。
【0047】
スラリー製造機構103は、攪拌槽20とミキサ22とを有する。水50と粉末混和材料5とはミキサ22により攪拌され粉末混和材料スラリー23となる。攪拌槽20は排出口21を有する。排出口21が攪拌槽20の底部最深部にあると、製造した粉末混和材料スラリー23の自重で排出されることから好ましい。常設のミキサ22に替えて、ハンドミキサ等の移動式ミキサを攪拌の都度、攪拌槽20に挿入して粉末混和材料スラリーを製造してもよい。
【0048】
スラリー供給機構104は、スラリー用ポンプ30と圧送ホース4とを有する。スラリー用ポンプ30は、粉末混和材料スラリー23が圧送でき、且つ該スラリー用ポンプの停止時において当該スラリー用ポンプの吸引口31と排出口32が連通しているポンプであれば用いることができる。例えば、遠心ポンプが好ましい。ケーシング33内にあるインペラがモータにより回転し、スラリー用ポンプの吸引口31より粉末混和材料スラリー23が吸引によりケーシング33内に入り、インペラの回転による遠心力でスラリー用ポンプの排出口より粉末混和材料スラリー23が押し出され、圧送ホース4に送られる。一例としてのスラリー用ポンプ30は、遠心ポンプの一種のボリュートポンプである。
【0049】
圧送ホース4の先端は、トラックアジテータ60のホッパ62の内側を通し、ドラム61内に挿入されている。圧送ホース4に送られた粉末混和材料スラリー23は、圧送ホース4の先端よりドラム61内に排出され、ドラム61内の未硬化のコンクリートに添加される。
【0050】
遠心ポンプ30は、羽根車が止まっても、ポンプの吸引口31と排出口32がポンプ内部で連通している、つまり、ポンプの吸引口31、羽根車の羽根の間、羽根車とケーシング33の間、及び排出口32が繋がっている。これにより、当該ポンプ30が停止している時に、ポンプの吸引口31に圧縮空気12が送られてくると、その勢いにより羽根車が回転し、残留スラリーがポンプの排出口32より排出される。
【0051】
空気供給機構105は、コンプレッサ(空気供給装置)2と圧縮空気用ホース3とを有する。コンプレッサ2は、圧縮空気を送れる装置であれば良く、例えば、ブロワに替えてもよい。
【0052】
好ましくは、吐出圧力が0.1MPa以上且つ吐出空気量が10L/分以上の能力のものが好ましく、装置を小さくできることから、吐出圧力が0.1~1MPa且つ吐出空気量が10~100L/分の能力のものがより好ましい。吐出圧力が大きなものは圧送ホースが長いものでも対応可能であるが、あまり高すぎると圧送ホース、三方向弁、空気供給装置と三方向弁を繋ぐ送気管、三方向弁とスラリー用ポンプを繋ぐ配管並びに各連結部等をより高圧に耐えるものにする必要がある。実用的に充分な長さの圧送ホースを用いることができ、入手し易く特別な高圧に耐える部材を必要とすることもなく、且つ装置が小さいことから、本発明における空気供給装置としては、吐出圧力が0.2~0.8MPa且つ吐出空気量が10~50L/分の能力のものが更に好ましい。また、空気供給装置として空気タンク付きのコンプレッサを用いる場合は、備わる空気タンク容積が5L以上のものが好ましく、より好ましくは10~100Lのものとし、更には12~50Lのものとする。
【0053】
一例としてのコンプレッサ2は、空気タンク容積が15Lの空気タンクを具備し、吐出圧力が0.49MPa且つ吐出空気量が21L/分(50Hz時)である。
【0054】
セメント分散剤供給機構106は、セメント分散剤用ポンプ40と、セメント分散剤用容器41と、セメント分散剤用ホース43と、電磁流量計44と、電磁弁45を有する。
【0055】
セメント分散剤用ポンプ40は、スラリー用ポンプ30と同じボリュートポンプで、セメント分散剤用ポンプ40の吸引口はセメント分散剤42が貯留されているセメント分散剤用容器に接続されており、セメント分散剤用ポンプ40の排出口は、電磁弁45とその先に電磁流量計44とセメント分散剤用ホース43が繋がっており、セメント分散剤用ホース43の先がトラックアジテータ60のホッパ62の内側に配置されている。
【0056】
スラリー製造機構103とスラリー供給機構104と空気供給機構105との間には、二方ボールバルブ(二方弁)8および三方ボールバルブ(三方弁)10とが介挿されている。弁8,10により、スラリー製造機構103とスラリー供給機構104と空気供給機構105とは、それぞれ連通可能(連通不能)となる。
【0057】
三方弁10は、3つの口と弁機能を具備する。たとえば、三方向ボールバルブのように一つの弁体で3つの口の繋がりを制御する弁でもよいし、T字管(チーズ、T字継手)やY字管(Y字継手)等の三方向継手と、直管(ソケット)及びニップル等の二方継手(2つの口を有する継手)と、複数の二方向弁とを組み合わせていてもよい。すなわち、3つの口のうち2つずつが連通できる状態とできればよい。
【0058】
3つの口のうち一つは攪拌槽の排出口21の下方に配置され、粉末混和材料スラリー23が自重で三方弁10まで容易に到達する。すなわち、当該口は上方に向けられている。
【0059】
3つの口のうち別の一つは圧縮空気用ホース3を介してコンプレッサ2に連結している。3つの口のうち残りの一つは二方弁8および樹脂製ホースを介してスラリー用ポンプ30の吸引口31に連結している。
【0060】
制御盤6には、電源7及びリモコン9以外に、ミキサ22、電磁流量計44,電磁流量計53、電磁弁45、電磁弁54、スラリー用ポンプ30、セメント分散剤用ポンプ40及び水中ポンプ51が、電気的に接続されている。
【0061】
~工程~
図2~4に示す三方弁の動作例を中心に、本システムの動作および本方法の工程について説明する。
【0062】
[スラリー製造工程]
図2はスラリー製造時の三方弁の動作例である。粉末混和材料をスラリー化するために、先ず、三方ボールバルブ10内の弁体14を、攪拌槽の排出口21と、コンプレッサ(空気供給装置)2及びスラリー用ポンプの吸引口31とが連通しない状態にし、且つ二方ボールバルブ8の弁体13を閉じる状態にする。これにより、攪拌槽20に投入される水50及び製造される粉末混和材料スラリー23が、三方ボールバルブ10より先に流出せずに留めることができ、且つコンプレッサ2から圧縮空気用ホース3を通って三方ボールバルブ10へ送られる圧縮空気が二方ボールバルブ8の弁体13で止めることができる。
【0063】
当該状態とした上で、制御盤6のスイッチを操作して、水中ポンプ51を稼働させた上で電磁弁54を開く。電磁流量計53から制御盤6に送られる信号により積算水量を制御盤6の積算水量の表示部に表示させ、表示される積算水量が所定量となった時点で制御盤6のスイッチを操作して電磁弁54を閉じる。これにより、所定量の水50が計量されて攪拌槽20内に投入される。自動で所定量の水50を攪拌槽20に送り、投入するようにしてもよい。また、水50は、1バッチ分を1又は2以上のバケツ、タンク、缶等の容器に計り取ったものを、攪拌槽20内に投入してもよい。同様に、所定量の粉末混和材料5が計量され攪拌槽20内に投入される。粉体混和材料5も、1バッチ分を1又は2以上の袋などの容器に計り取ったものを、水50と同様に、攪拌槽20内に投入してもよい。
【0064】
所定量の水50および所定量の粉末混和材料5は、トラックアジテータ60のドラム61内の未硬化のコンクリートの量を1バッチとして、設定される。
【0065】
さらに、制御盤6のスイッチを操作してミキサ22を稼働させ粉末混和材料スラリー23を製造する。攪拌槽20内への水50及び粉末混和材料5の投入は、何れが先でも又同時でもよい。又、ミキサ22の稼働開始は、攪拌槽20内への材料の投入前、投入中、投入後の何れでもよい。又、ミキサ22の停止は、粉末混和材料スラリー23の製造後であれば、何れの時点でもよい。
【0066】
[スラリーポンプ排出工程]
圧送ホース4の先端を、未硬化のコンクリートが収容されているトラックアジテータ60のドラム61内に、ホッパ62の内側を通し挿入する。
【0067】
図3はスラリー供給時の三方弁の動作例である。三方ボールバルブ10内の弁体14を、攪拌槽の排出口21とスラリー用ポンプの吸引口31とが連通し、且つ攪拌槽の排出口21及びスラリー用ポンプの吸引口31と、コンプレッサ(空気供給装置)2とが連通しない状態にし、且つ二方ボールバルブ8の弁体13を開く状態にする。これにより、スラリー製造工程で製造した攪拌槽20内の粉末混和材料スラリー23が、三方ボールバルブ10、二方ボールバルブ8及び樹脂製ホース15を通って、スラリー用ポンプの吸引口31に送ることができる状態となる。
【0068】
その上で、リモコン9のスイッチを入れ、その信号が制御盤6に送られ制御盤6のスラリー用ポンプ用スイッチが入り、これによりスラリー用ポンプ30に内蔵されているモータが回転し、ケーシング33内のインペラが回転することで粉末混和材料スラリー23がスラリー用ポンプの吸引口31より吸引され、スラリー用ポンプの排出口32より圧送ホース4に送られ、粉末混和材料スラリーの流れ11ができる。
【0069】
圧送ホース4に送られた粉末混和材料スラリー23は、圧送ホース4の先端より排出されトラックアジテータ60のドラム61内にある未硬化のコンクリートに添加される。スラリー用ポンプ30を稼働させることによる粉末混和材料スラリー23の排出は、粉末混和材料スラリー23が三方ボールバルブ10の弁体14を通過するまで行う。粉末混和材料スラリー23が三方ボールバルブ10の弁体14を通過したことの確認は、何れの方法によるものでもよい。例えば、三方ボールバルブ10、二方ボールバルブ8又は樹脂製ホース15の何れかを透明又は半透明なもの(樹脂製)を用い内部が分かるようにすることで、目視で粉末混和材料スラリー23の通過を確認する。
【0070】
[残留スラリー排出工程]
図4は残留スラリー空気圧送時の三方弁の動作例である。スラリーポンプ排出工程により、粉末混和材料スラリー23が三方ボールバルブ10の弁体14を通過した後に、三方ボールバルブ10内の弁体14を、攪拌槽の排出口21と、コンプレッサ(空気供給装置)2及びスラリー用ポンプの吸引口31とが連通しない状態、且つコンプレッサ(空気供給装置)2とスラリー用ポンプの吸引口31とが連通する状態とする。すなわち、コンプレッサ2から圧縮空気を供給できる状態とする。その上で、制御盤6のスイッチを操作してコンプレッサ(空気供給装置)2を稼働させる。また、コンプレッサ(空気供給装置)2を稼働させた後に三方ボールバルブ10内の弁体14を、コンプレッサ2からスラリー用ポンプの吸引口31に圧縮空気を供給できる状態としてもよい。
【0071】
これにより、圧縮空気の流れ12が、三方ボールバルブ10、三方ボールバルブ10、樹脂製ホース、スラリー用ポンプ30及び圧送ホース4の内部に残った粉末混和材料スラリー23を、圧送ホース4の先端より、略全量を排出し、トラックアジテータ60のドラム61内にある未硬化のコンクリートに添加される。
【0072】
空気圧送後も、攪拌槽20の内壁、ミキサ22の軸及び攪拌羽根、三方ボールバルブ10と攪拌槽の排出口21とを繋ぐ配管の内壁、三方ボールバルブ10の内壁、三方ボールバルブ10とスラリー用ポンプ30を繋ぐ配管(二方ボールバルブ8及び樹脂製ホースを含む。)の内壁、スラリー用ポンプ30のケーシング33の内壁及びインペラ、並びに圧送ホース4の内壁等の経路内に、粉末混和材料スラリーが極薄く付着しているものと考えられる。しかし残量は未硬化のコンクリートに混和する所定量と比べて極僅かで無視できる。また、次のバッチへの影響も無視できる。
【0073】
[セメント分散剤の添加工程]
制御盤6のスイッチを操作して、セメント分散剤用ポンプ40を稼働させた上で電磁弁45を開く。電磁流量計44から制御盤6に送られる信号により積算セメント分散剤量を制御盤6の積算セメント分散剤量の表示部に表示させ、表示される積算セメント分散剤量が所定量となった時点で制御盤6のスイッチを操作して電磁弁45を閉じる。これにより、所定量のセメント分散剤42がトラックアジテータ60のドラム61内にある未硬化のコンクリートに添加される。
【0074】
自動で所定量のセメント分散剤42をドラム61に送り、投入するようにしてもよい。また、セメント分散剤42は、1バッチ分を1又は2以上のバケツ、タンク、缶等の容器に計り取ったものを、トラックアジテータ60のホッパ62の開口部からドラム61内に投入してもよい。
【0075】
[セメント分散剤の添加工程]は、[スラリー製造工程]の前であっても、[残留スラリー排出工程]の後であっても、何れもよい。すなわち、スラリー添加とは別工程である。ただし、[スラリー製造工程]の前としては、[スラリー製造工程]の前60分以内が好ましく、30分以内が更に好ましい。また、[残留スラリー排出工程]の後としては、[残留スラリー排出工程]の後60分以内が好ましく、30分以内が更に好ましい。
【0076】
[混合工程]
トラックアジテータ60のホッパ62の開口部から、圧送ホース4およびセメント分散剤用ホース43と取り出し、トラックアジテータ60のドラム61を高速で10秒~30分間回転させることで、ドラム61内にある未硬化のコンクリートと、添加した粉末混和材料スラリー23及びセメント分散剤42とを混合する。これにより、粉末混和材料スラリー23及びセメント分散剤42を所定量混和したコンクリートが得られる。
【0077】
~効果まとめ~
本方法によれば、スラリー自体の計量はおこなわないものの、水50および粉末混和材料5の計量を正確におこない、製造したスラリーを略全量供給しており、スラリーを正確に計量したことと同等である。その結果、混合工程後のコンクリートは、均一の品質を維持できる。
【0078】
本方法によれば、空気圧送により、残留スラリーがほぼ無い。これにより、次のバッチ(トラックアジテータ)への影響もなく、次のバッチも安定した品質を維持できる。
【0079】
本方法によれば、空気圧送により、残留スラリーがほぼ無い。残留スラリーが詰まりの原因となるおそれがない。これにより、交通事情等によりトラックアジテータの到着間隔が多少不規則となっても影響を受けず、安定した品質を維持できる。また、詰まり解消のための施工手間がない。
【0080】
従来の施工実務では、計量困難に係る課題および残留スラリーに係る課題を同時に解決できず、人力に頼る工程が多く、大変な労力であった。本法では、人力に拠る工程が少なく又はほぼ無く、計量困難に係る課題および残留スラリーに係る課題を同時に解決し、作業が容易である。
【0081】
~コンクリート圧送時の残留コンクリート処理との比較~
トラックアジテータからポンプ圧送によりコンクリート打設した後において、圧送ホース内に残留コンクリートが発生する。施工実務においては、ポンプの排出口と圧送ホースを一旦外し、水で濡らしたスポンジを圧送ホース内に入れた後に、ポンプの排出口と圧送ホースを連結し直し、ポンプ圧送により残留コンクリートを排出し、圧送ホース内を洗浄することが、一般的である。
【0082】
本願発明者は、残留コンクリート処理におけるスポンジ圧送を残留スラリー処理に適用することも検討した。
【0083】
しかしながら、スポンジ圧送では、圧送ホースのつなぎ替えの作業手間が発生すること、排出される残留スラリーを一度スポンジとともにバケツ等の容器に溜めた後にスポンジを除き、持ち上げてトラックアジテータのホッパよりドラム内に投入するために作業手間が発生すること、材料が無駄になることなどから、残留スラリー処理には適していない。
【0084】
~トラックアジテータについて~
本方法においては、トラックアジテータのドラム内にある未硬化のコンクリートを1バッチとするのが前提である。本願におけるトラックアジテータの技術的意義について検討する。
【0085】
生コン工場において汎用のコンクリート製造プラントでは、複数の現場に対応して、コンクリートを製造している。したがって、特定の混和剤専用にプラントを稼働することは、1日当たり及び単位時間当たりのコンクリート製造量、出荷量及び打設量が上手くマッチングするか、プラントを借り切るかしない限り、施工実務上困難である。
【0086】
これに対し、トラックアジテータを終日占有することは、施工実務において一般的である。一日の作業終了後、トラックアジテータ内のドラムを洗浄する。トラックアジテータのドラム内の未硬化のコンクリートを定量とすることは容易で、生コン工場より出荷するコンクリートの全バッチで行われている。1バッチに対応する水および粉末混和材料の計量をおこなうことも容易である。
【0087】
トラックアジテータに着目することにより、現在の施工実務の範囲で、本願発明の技術思想を容易に実現できる。
【0088】
~貯留槽~
本方法においては、トラックアジテータのドラム内にある未硬化のコンクリートを1バッチとするのが前提である。施工実務においては、複数のトラックアジテータが、生コン工場と施工現場の間を往復することが想定される。トラックアジテータの到着間隔が短い場合、施工効率を上げるため、攪拌槽20と三方弁10の間に貯留槽を設けてもよい。
【0089】
変形例において、本願における「攪拌槽の排出口と連通可能」を「攪拌槽の排出口の下流に設けられる貯留槽の排出口と連通可能」と読み替える。
【0090】
攪拌槽で製造した粉末混和材料スラリーが攪拌槽の排出口より貯留槽内に排出される。貯留槽の排出口が三方弁と繋がっている。貯留槽の排出口も貯留槽の底部の最深部にあると製造した粉末混和材料スラリーの自重で排出されることから好ましい。
【0091】
貯留槽には1バッチ相当量のスラリーが貯留され、トラックアジテータが到着次第、スラリーが供給される。攪拌槽では次バッチ用のスラリーが製造される。
【符号の説明】
【0092】
1 粉末混和材料のスラリー化供給装置 2 コンプレッサ(空気供給装置)
3 圧縮空気用ホース 4 圧送ホース
5 粉末混和材料 6 制御盤
7 電源 8 二方ボールバルブ(二方弁)
9 リモコン 10 三方ボールバルブ(三方弁)
11 粉末混和材料スラリーの流れ 12 圧縮空気の流れ
13 弁体 14 弁体
15 樹脂製ホース
20 攪拌槽 21 攪拌槽の排出口
22 ミキサ 23 粉末混和材料スラリー
30 スラリー用ポンプ 31 スラリー用ポンプの吸引口
32 スラリー用ポンプの排出口 33 ケーシング
40 セメント分散剤用ポンプ 41 セメント分散剤用容器
42 セメント分散剤 43 セメント分散剤用ホース
44 電磁流量計 45 電磁弁
50 水 51 水中ポンプ
52 水用容器 53 電磁流量計
54 電磁弁 55 水供給用ホース
60 トラックアジテータ 61 ドラム
62 ホッパ
101 水供給機構 102 粉末混和材料供給機構
103 スラリー製造機構 104 スラリー供給機構
105 空気供給機構 106 セメント分散剤供給機構