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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】橋梁の架替工法および橋梁上部構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20231018BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20231018BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20231018BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D22/00 Z
E01D19/12
E01D21/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019173549
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021050512
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592145268
【氏名又は名称】JR東日本コンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 順一
(74)【代理人】
【識別番号】230116296
【弁護士】
【氏名又は名称】薄葉 健司
(72)【発明者】
【氏名】大庭 光商
(72)【発明者】
【氏名】石橋 忠良
(72)【発明者】
【氏名】清水 満
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-015808(JP,A)
【文献】特開2009-052306(JP,A)
【文献】特開平07-003728(JP,A)
【文献】特開2002-332613(JP,A)
【文献】特開2014-066007(JP,A)
【文献】特開2003-253623(JP,A)
【文献】特開2007-321476(JP,A)
【文献】特開2006-265884(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0251936(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 24/00
E01D 22/00
E01D 19/12
E01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設橋梁上部構造は既設橋梁下部構造に支持されており、
新設橋梁上部構造の下面側には、橋軸方向に延設されている第1接続手段が設けられており、
既設橋梁上部構造上面を搬路として、前記新設橋梁上部構造を搬入し、
既設橋梁上部構造の上部に、前記新設橋梁上部構造を仮設し、前記新設橋梁上部構造の両端を仮支持し、
前記第1接続手段と第2接続手段とを接続するとともに、前記第2接続手段を介して、前記既設橋梁上部構造の撤去相当部を前記新設橋梁上部構造に吊支持させ、
前記既設橋梁上部構造の撤去相当部を切断し、
前記既設橋梁上部構造の撤去相当部を吊り上げ、さらに、前記第1接続手段を介して摺動させて、撤去し、
複数の前記既設橋梁上部構造の撤去相当部の撤去を繰り返し、前記既設橋梁上部構造を撤去し、
前記新設橋梁上部構造を降下させて本設する工法であって、
前記既設橋梁上部構造の残部は前記既設橋梁下部構造に支持された状態で、
前記既設橋梁上部構造の撤去相当部の撤去において、
前記既設橋梁上部構造の残部上に吊り降ろし、
前記既設橋梁上部構造の残部上面を搬路とする
ことを特徴とする橋梁の架替工法。
【請求項2】
既設橋梁上部構造は既設橋梁下部構造に支持されており、
新設橋梁上部構造の下面側には、橋軸方向に延設されている第1接続手段が設けられており、
既設橋梁上部構造上面を搬路として、前記新設橋梁上部構造を搬入し、
既設橋梁上部構造の上部に、前記新設橋梁上部構造を仮設し、前記新設橋梁上部構造の両端を仮支持し、
前記第1接続手段と第2接続手段とを接続するとともに、前記第2接続手段を介して、前記既設橋梁上部構造の撤去相当部を前記新設橋梁上部構造に吊支持させ、
前記既設橋梁上部構造の撤去相当部を切断し、
前記既設橋梁上部構造の撤去相当部を吊り上げ、さらに、前記第1接続手段を介して摺動させて、撤去し、
複数の前記既設橋梁上部構造の撤去相当部の撤去を繰り返し、前記既設橋梁上部構造を撤去し、
前記新設橋梁上部構造を降下させて本設する工法であって、
前記既設橋梁上部構造の残部は前記既設橋梁下部構造に支持された状態で、
前記既設橋梁上部構造の撤去相当部の撤去において、
摺動状態にて前記既設橋梁上部構造の残部上を通過させて既設橋梁の外部に搬出する
ことを特徴とする橋梁の架替工法。
【請求項3】
前記第2接続手段を介して、前記既設橋梁下部構造の撤去相当部を前記新設橋梁上部構造に吊支持させ、
前記既設橋梁下部構造の撤去相当部を切断し、
前記既設橋梁下部構造の撤去相当部を吊り上げ、さらに、前記第1接続手段を介して摺動させ、撤去し、
複数の前記既設橋梁下部構造の撤去相当部の撤去を繰り返し、前記既設橋梁下部構造を撤去する
ことを特徴とする請求項1または2いずれか記載の橋梁の架替工法。
【請求項4】
前記第2接続手段は、橋軸直交方向に2以上設けられ、
前記第2接続手段同士は、吊桁を介して連結されている
ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の橋梁の架替工法。
【請求項5】
前記新設橋梁上部構造本設後も、前記第1接続手段が設けられた状態を維持する
ことを特徴とする請求項1~4いずれか記載の橋梁の架替工法。
【請求項6】
前記既設橋梁上部構造は、橋軸交差方向に延設される線路または道路の上に設けられている
ことを特徴とする請求項1~5いずれか記載の橋梁の架替工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設橋梁を撤去し、新設橋梁を架設する架替工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にコンクリートの寿命は60~100年と言われている。コンクリートや鉄を主材料とする土木構造物も半世紀以上経過すると、大規模補修をして長寿命化を図るか、既設構造物を撤去して新設するかを検討することが多い。
【0003】
橋梁においても、既設橋梁を撤去し、新設橋梁を架設する架替が検討されている。しかしながら、橋梁周辺環境による制約により施工条件が厳しいことが多い。また、架替工事は、撤去工程と新設工程を含むため、長期化しやすい。そのため、施工条件に応じて、様々な架替工法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
たとえば、特許文献1開示の架替工法では、まず、橋脚に架設された既設橋桁を運搬台車上に設置されたジャッキにより下方から支持する。橋脚径間より短い長さで既設橋桁の両端を切断する。ジャッキを操作して既設橋桁を降下させる。ジャッキで既設橋桁を下方より支持した状態で、運搬台車により既設橋桁を搬出する。
【0005】
一方、新設橋桁架替位置に隣接する残部既設橋桁上で新設橋桁を構築する。さらに新設橋桁を大型クレーン吊りあげて橋脚間に架設する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-034911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12は、既設橋梁の一例である。都市部では狭隘な谷部に複数の鉄道が並走し、谷を跨ぎ線路と立体交差するように橋梁が架けられていることもある。半世紀以上前に架けられた橋梁は一般に径間が短く、両端の橋台に加えて、橋脚により支持されている。複数の鉄道が橋脚間または橋台橋脚間を通過している。
【0008】
上記のような橋梁において点検やメンテナンスをする際は、必ず、鉄道運行状況を考慮する必要がある。特に、線路に挟まれた橋脚の点検やメンテナンスは非常に作業条件が厳しい。したがって、架替の方が好ましいと判断される場合もある。なお、近年、径間が長くなる傾向にあり、橋脚による支持は不要となる。橋梁構造が単純化すれば点検やメンテナンスも容易となる。
【0009】
特許文献1記載の架替工法は、橋梁下において運搬台車を待機させている。図12に示す施工条件下では、橋梁下において運搬台車を待機させることは好ましくなく、特許文献1記載の架替工法の適用は困難である。上記施工条件に適した架替工法を検討する必要がある。
【0010】
本発明は上記課題を解決するものであり、橋梁下の施工条件が厳しい場合にも適用可能な橋梁の架替工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は橋梁の架替工法である。新設橋梁上部構造の下面側には、橋軸方向に延設されている第1接続手段が設けられており、既設橋梁上部構造上面を搬路として、前記新設橋梁上部構造を搬入し、既設橋梁上部構造の上部に、前記新設橋梁上部構造を仮設し、前記新設橋梁上部構造の両端を仮支持し、前記第1接続手段と第2接続手段とを接続するとともに、前記第2接続手段を介して、前記既設橋梁上部構造の撤去相当部を前記新設橋梁上部構造に吊支持させ、前記既設橋梁上部構造の撤去相当部を切断し、前記既設橋梁上部構造の撤去相当部を吊り上げ、さらに、前記第1接続手段を介して摺動させて、撤去し、複数の前記既設橋梁上部構造の撤去相当部の撤去を繰り返し、前記既設橋梁上部構造を撤去し、前記新設橋梁上部構造を降下させて本設する。
【0012】
上記手順において、橋梁下での作業はなく、既設橋梁上部構造上面を利用してほとんどの作業を行える。これにより、橋梁下の施工条件が厳しい場合にも適用可能となる。
【0013】
また、新設橋梁上部構造の仮支持状態を既設橋梁上部構造撤去の仮設設備として利用できる。
【0014】
なお、本願において、上部構造とは、桁と床版とを含む。
【0015】
上記発明において好ましくは、前記既設橋梁上部構造の撤去相当部の撤去において、前記既設橋梁上部構造の残部上に吊り降ろし、前記既設橋梁上部構造の残部上面を搬路とする。
【0016】
このように、既設橋梁上部構造の残部を有効活用できる。すなわち、橋梁下での作業を無くすことができる。
【0017】
上記発明において好ましくは、前記既設橋梁上部構造の撤去相当部の撤去において、摺動状態にて既設橋梁の外部に搬出する。
【0018】
これにより、既設橋梁上部構造の残部を作業エリアとして有効活用できる。
【0019】
上記発明において好ましくは、前記第2接続手段を介して、前記既設橋梁下部構造の撤去相当部を前記新設橋梁上部構造に吊支持させ、前記既設橋梁下部構造の撤去相当部を切断し、前記既設橋梁下部構造の撤去相当部を吊り上げ、さらに、前記第1接続手段を介して摺動させ、撤去し、複数の前記既設橋梁下部構造の撤去相当部の撤去を繰り返し、前記既設橋梁下部構造を撤去する。
【0020】
本願工法は、既設橋梁下部構造の撤去にも適用できる。なお、本願において、下部構造とは、橋脚と橋台とを含む。
【0021】
上記発明において好ましくは、前記第2接続手段は、橋軸直交方向に2以上設けられ、前記第2接続手段同士は、吊桁を介して連結されている。
【0022】
これにより、吊位置を調整できるとともに、吊状態が安定する。
【0023】
上記発明において好ましくは、前記新設橋梁上部構造本設後も、前記第1接続手段が設けられた状態を維持する。
【0024】
これにより、本設後の点検時等にも再利用可能となる。
【0025】
上記発明において好ましくは、前記既設橋梁上部構造は、橋軸交差方向に延設される線路または道路の上に設けられている。
【0026】
本願工法は、このような橋梁下の施工条件が厳しい場合に、好適である。橋梁下での作業はなく、橋梁下の状況に影響されにくい。
【0027】
上記課題を解決する本発明は橋梁上部構造である。新設橋梁上部構造の下面側には、橋軸方向に延設されているレール状の第1接続手段が設けられている。
【0028】
すなわち、第1接続手段は新設橋梁の一部であり、本設後も再利用可能である。
【0029】
上記課題を解決する本発明は橋梁上部構造である。下面側に、橋軸方向に延設されているレール状の第1接続手段が設けられ、第2接続手段が前記第1接続手段と接続される状態で、前記第1接続手段に沿って摺動可能である。
【0030】
第1接続手段と第2接続手段とからなる接続機構は架替工事の撤去工程にて利用できる。また、第1接続手段は本設後も再利用可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る架替工法によれば、橋梁下の施工条件が厳しい場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本願システム断面図
図2】接続機構(実施例および変形例)
図3】接続機構(変形例)
図4】既設上部構造撤去例斜視図(前半)
図5】既設上部構造撤去例斜視図(後半)
図6】既設下部構造撤去例斜視図
図7】新設上部構造架設例斜視図
図8】新設橋梁例斜視図
図9】既設上部構造撤去例斜視図(変形例)
図10】既設上部構造撤去例斜視図(変形例)
図11】既設上部構造撤去例斜視図(変形例)
図12】既設橋梁例斜視図
【発明を実施するための形態】
【0033】
~既設橋梁例~
図12は、本発明が適用される既設橋梁10の例である。都市部では狭隘な谷部に複数の鉄道が並走し、谷を跨ぎ線路と立体交差するように橋梁10が架けられている。既設橋梁は一般に径間が短いことが多く、上部構造(橋桁や床版を含む広義の概念)11が、両端の橋台12,12や橋脚13,13の下部構造により支持されている。なお、支承等その他の構成については図示を省略する。複数の鉄道が橋脚13,13間または橋台12橋脚13間を通過している。
【0034】
架替工事は、撤去工程と新設工程が錯綜するため、複雑になる。また、架替工事では、必ず、鉄道運行状況を考慮する必要がある。例えば、列車の運行のない夜間に架替工事を行なうとしても、資機材の搬入搬出に時間を要し、仮設設備等も毎回撤去する必要があり、橋梁下での作業は事実上困難である。
【0035】
上記施工条件下では、橋梁下での作業は可能な限りないことが好ましい。
【0036】
~特徴的構成~
本実施形態に係る架替工法は、特徴的構成を有するシステムにより行われる。
【0037】
図1は、本システムの断面図である。本システムは、既設橋梁10(図12参照)と新設橋梁20(図8参照)とを接続する接続機構30とを有する。接続機構30は、第1接続手段31と第2接続手段32とが接続されることにより、形成される。
【0038】
第1接続手段31は、橋軸方向にレール状に延設される構造となっている。2本の第1接続手段31,31が新設橋梁上部構造21の下面側において橋軸方向に延設されている(後述する図4参照)。
【0039】
第2接続手段32は吊ロッドである。吊ロッド32は、一端が既設撤去対象と連結されて吊支持可能であるとともに、他端が第1接続手段31上を摺動可能に第1接続手段31と接続している。吊ロッド32は長さ調整により既設撤去対象を吊上可能である。
【0040】
図1の例では、吊ロッド32は上側の吊ロッド33と下側の吊ロッド34とからなる。
【0041】
吊ロッド33の上端は第1接続手段31と摺動可能に接続されている。吊ロッド33の下端は、吊桁35に結合している。第1接続手段31と吊ロッド33との接続機構は、例えばJES継手による嵌合構造である。
【0042】
図2Aは接続機構の実施例であるJES継手である。JES継手は、断面C状の一端が瘤状となっており、互いのC状空間に瘤状を挿入し合うことにより、継手同士が嵌合している。図2Bは接続機構の変形例である。断面馬蹄形状空間を有する第1接続手段31内を吊ロッド33上端の円筒状係合部が摺動する。吊ロッド33は橋軸方向に幅を有していてもよい。
【0043】
図3は接続機構の別の変形例である。溝31が新設橋梁上部構造21の下面側において橋軸方向に延設されている。言い換えると、溝を有する第1接続手段31が新設橋梁上部構造21の下面側において橋軸方向に延びるように埋設されている。
【0044】
吊ロッド34の上端はジャッキ36を介して吊桁35に係合している。吊ロッド34の下端は、既設撤去対象(たとえば既設橋梁上部構造の撤去相当部11A)下面に設けられる留具37を介して既設撤去対象に係合している。
【0045】
なお、留具37による係合に代えて、後施工アンカによる結合とすることにより、橋梁下での作業を可能な限り減らすことができる。
【0046】
吊桁35は橋軸直交方向を長手方向とするように配置され、接続機構30は吊桁35の両端2か所に設けられている。すなわち、吊ロッド32,32は吊桁35を介して連結している。吊桁35を介することで、既設撤去対象の吊位置を調整できる。
【0047】
ジャッキ36は例えば、センターホールジャッキである。ジャッキ36により吊ロッド34を緊張することで、既設撤去対象を吊上可能となる。
【0048】
各構成間の相互作用については、架替工事手順において説明する。
【0049】
~架替工事手順~
図4および図5は、既設上部構造撤去例の斜視図である。架替工事は、撤去工程と新設工程とを含む。とくに、本願手順では、撤去工程と新設工程とが相互連動していることを特徴とする。
【0050】
予め、既設橋梁上部構造11外部において、新設橋梁上部構造21を構築しておく。桁長を調整できるように、両端に架設桁を延設してもよい。既設橋梁上部構造11上面を搬路として、新設橋梁上部構造21を搬入する。
【0051】
もしくは、既設橋梁上部構造11外部より新設橋梁上部構造21の構成部品を搬入し、既設橋梁上部構造11上面において新設橋梁上部構造21を構築してもよい。なお、新設橋梁上部構造21との搬入とは、構成部品の搬入も含む。
【0052】
既設橋梁上部構造11の両端であって、既設橋台12の橋軸直角方向両脇の地山(半透明で図示)に仮設ベント41,41を設ける。なお、仮設ベント41,41間隔を広げることにより、既設橋梁上部構造11上面にアクセス容易となる。
【0053】
仮設ベント41,41により新設橋梁上部構造21の両端を仮支持しながら、ジャッキアップし、既設橋梁上部構造11の上部に、新設橋梁上部構造21を仮設する。なお、新設橋梁上部構造21幅を既設橋梁上部構造残部11幅より広くしている。
【0054】
次いで、既設橋梁上部構造撤去相当部11Aにおいて接続機構30を介して、既設橋梁上部構造撤去相当部11Aと新設橋梁上部構造21とを接続する(図1参照)。その結果、既設橋梁上部構造撤去相当部11Aは新設橋梁上部構造21に吊支持される。なお、安定性の観点より長手物の吊支持は4点以上が一般的である(図4参照)。
【0055】
吊支持状態において、既設橋梁上部構造撤去相当部11Aを切断し撤去ブロックとする。ジャッキ36を介して撤去ブロック11Aを吊り上げ、撤去ブロック11A下面が既設橋梁上部構造残部11B上面位置より高くなるようにする(図4参照)。これにより、撤去ブロック11Aは摺動可能となる。
【0056】
既設橋梁上部構造撤去相当部11Aに隣接する既設橋梁上部構造残部11Bに搬出台車42を待機させておく。第1接続手段31を介して撤去ブロック11Aを摺動させ、ジャッキ36を介して撤去ブロック11Aを搬出台車42に吊り降ろす(図5参照)。
【0057】
既設橋梁上部構造残部11B上面を搬出台車42の搬路とし、撤去ブロック11Aを搬出する。このとき仮設ベント41,41間隔が充分に広ければ、仮設ベント41,41間より外部に搬出できる。
【0058】
図6は既設下部構造撤去例の斜視図である。既設橋梁上部構造撤去相当部11Aの一部を搬出し、開口ができれば、上方より既設橋脚撤去相当部13Aにアクセス可能となる。
【0059】
接続機構30を介して、既設橋脚撤去相当部13Aと新設橋梁上部構造21とを接続する結果、既設橋脚撤去相当部13Aは新設橋梁上部構造21に吊支持される。なお、図示のように2点支持としてもよい。
【0060】
吊支持状態において、既設橋脚撤去相当部13Aを切断し撤去ブロックとする。撤去ブロック11Aを搬出した手順にて、第1接続手段31を介して撤去ブロック13Aを摺動させ搬出する。
【0061】
撤去ブロック11Aおよび撤去ブロック13Aを搬出した手順を繰り返し、既設橋梁上部構造残部11Bや既設橋脚残部13Bを撤去する。
【0062】
図7は新設上部構造架設例の斜視図である。既設橋梁上部構造11および既設橋脚13を全て撤去した状態において、第1接続手段31と第2接続手段32との接続を解除し、第2接続手段32を取り外す。そして、仮設ベント41,41により新設橋梁上部構造21の両端を仮支持しながら、ジャッキダウンする。桁長を調整するように、両端架設桁を外す。新設橋梁上部構造21を降下させ、既設橋台12,12の所定位置に本設する。
【0063】
~効果~
上記手順を概略化すると、撤去対象の吊支持→切断→吊り上げ→摺動→既設橋梁上部構造上面への吊り降ろし→搬出の繰り返しである。上記手順において、原則として橋梁下での作業はなく、既設橋梁上部構造11上面を利用してほとんどの作業を行うことができる。
【0064】
すなわち、鉄道運行状況に影響されずに、架替工事を行なうことができる。尤も、施工実務では安全優先の観点から、実際は、列車運行のない夜間に行なわれるものと思われる。しかし、夜間施工に限定されたとしても、列車運行中も既設橋梁上部構造上面にて準備作業ができ、また、線路への資機材搬入搬出や仮設工事がないことから、大幅な工期短縮、安全性の確保が期待でき、その結果、コスト削減となる。
【0065】
また、撤去工程と新設工程とが相互連動している、言い換えると、新設橋梁上部構造21の仮支持状態を既設橋梁上部構造11撤去および既設橋脚13撤去の仮設設備として利用できるため、この点でも工期短縮およびコスト削減が期待できる。
【0066】
このように、本実施形態に係る架替工法は、橋梁交差方向に複数の鉄道が並走するような橋梁下での施工条件が厳しい場合にも適用可能である。
【0067】
~本設後の第1接続手段の利用~
図8は、本発明より架け替えされた新設橋梁20の例である。接続機構30のうち第2接続手段32は取り外すが、本設後も第1接続手段31は新設橋梁上部構造21の下面側に設置されている状態を維持する。すなわち、第1接続手段31は、新設橋梁20の一部である。
【0068】
新設橋梁上部構造21の下面側の点検やメンテナンスの際は、第1接続手段31を利用して、作業ゴンドラ(図示省略)を吊り下げて摺動させる。これにより、点検やメンテナンスのための仮設工事が大幅に軽減され、点検やメンテナンスが容易となる。
【0069】
~変形例~
本願発明の理解を容易にするために、一例として上記実施形態について説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲で種々の変形が可能である。
【0070】
図9は既設上部構造撤去変形例の斜視図である。上記実施形態では、撤去ブロック11Aを吊り上げ(図4参照)後、摺動させ、搬出台車42に吊り降ろし、(図5参照)、既設橋梁上部構造残部11B上面を搬出台車42の搬路として搬出しているのに対し、変形例では、撤去ブロック11Aを吊り上げ(図4参照)後、第1接続手段31末端まで摺動させ、吊り降ろし、既設橋梁10端部より搬出する。
【0071】
すなわち、変形例においては、既設橋梁上部構造残部11B上面を搬路として利用しない。これにより、既設橋梁上部構造残部11B上面を作業スペースとして有効利用でき、施工性や安全性が更に向上する。
【0072】
図10は別の既設上部構造撤去変形例の斜視図である。上記実施形態では、既設橋梁上部構造11および既設橋脚13については撤去し、既設橋台12については再利用しているのに対し、変形例では、既設橋台12も撤去し、新設橋台22を設ける。
【0073】
まず、既設橋台12,12の橋軸方向外側に新設橋台22,22を設ける。新設橋台22,22に仮設ベント41,41を設け、新設橋梁上部構造21の両端を仮支持する。
【0074】
撤去ブロック11Aおよび撤去ブロック13Aを搬出した手順にて、既設橋台12を切断して撤去ブロックとし、第1接続手段31を介して撤去ブロック摺動させ搬出する。このとき、撤去ブロックを新設橋台22まで摺動させ、新設橋台22から搬出すると、既設橋梁上部構造残部11B全面を作業スペースとして有効利用できる。
【0075】
既設橋梁上部構造11および既設橋梁上部構造12,13を全て撤去した状態において、新設橋梁上部構造21を降下させ、新設橋台22,22の所定位置に本設する。
【0076】
なお、新設橋台22幅を既設橋台12幅より広くするとともに、新設橋梁上部構造21幅を既設橋梁上部構造残部11B幅より広くすると、広い搬出スペースを確保でき、施工性がさらに向上する。
【0077】
図11は別の既設上部構造撤去変形例の斜視図である。撤去ブロック11Aを吊り上げ後、摺動させ、隣接する既設橋梁上部構造残部11Bに吊り降ろし、既設橋梁上部構造残部11B上で小割し、搬出する。
【0078】
図12に示す既設橋梁例では、既設橋脚13の存在を前提としたが、本願発明は橋脚のない既設橋梁にも適用できる。その場合、当然、既設橋脚13の撤去工程は不要である。すなわち、本願発明において、既設橋脚13撤去は必須でない。
【0079】
ところで、半世紀以上前に架けられた既設橋梁は一般に径間長が短いが、断面構造や材料を検討したり、PC橋、アーチ橋、斜張橋、吊橋としたり、適宜、近年の技術を用いることで、新設橋梁の径間長を長くできる。その結果、新設橋脚は不要である。
【0080】
上記実施形態では、橋梁下での施工条件が厳しい例として、橋梁交差方向に複数の鉄道が並走する(図12参照)場合を挙げたが、橋梁下にて主要幹線道路が交差する場合や、河川が交差し、流れが速く台船を停泊困難な場合等においても好適である。
【0081】
図12に示す既設橋梁例では、道路橋としたが、鉄道橋でもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 既設橋梁
11 既設橋梁上部構造
12 既設橋台(下部構造)
13 既設橋脚(下部構造)
20 新設橋梁
11 新設橋梁上部構造
12 既設橋台(下部構造)
30 接続機構
31 第1接続手段(レール状)
32 第2接続手段(吊ロッド)
33 上側吊ロッド
33 下側吊ロッド
35 吊桁
36 ジャッキ
37 留具
41 仮設ベント
42 搬出台車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12