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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】自動車外装パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/22 20060101AFI20231018BHJP
   B21D 24/04 20060101ALI20231018BHJP
   B21D 53/88 20060101ALI20231018BHJP
   B62D 65/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B21D22/22
B21D24/04 F
B21D24/04 G
B21D53/88 Z
B62D65/00 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019019094
(22)【出願日】2019-02-05
(65)【公開番号】P2020124730
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 栄志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亨
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-267154(JP,A)
【文献】特開2014-028379(JP,A)
【文献】特開2001-259751(JP,A)
【文献】特開2018-043713(JP,A)
【文献】特開平11-347642(JP,A)
【文献】実開平02-032322(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第106001309(CN,A)
【文献】特開2002-028743(JP,A)
【文献】特開昭60-166127(JP,A)
【文献】特開2003-205741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/20-22/26
B21D 24/04
B62D 65/00
B21D 53/88
B60J 5/00
B62D 25/00-25/10
B21D 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型セットを用いた鋼板製の自動車外装パネルの製造方法であって、
前記金型セットは、
パンチ金型と、
少なくとも一方向に延伸する流れ止め部を有するホルダ金型と、
ダイス金型と、
を備え、
前記流れ止め部は、その延伸方向に連続し、かつ、環状を形成し、
前記パンチ金型の頂面の形状は曲面であり、
前記流れ止め部は凸形状または凹形状であり、凸形状の頂部または凹形状の底部が、少なくとも一方向に沿った前記パンチ金型の前記頂面の一部の形状と一致し、
(a)前記ホルダ金型と、前記ダイス金型とで金属板を挟持し、
(b)挟持された前記金属板を、前記パンチ金型でプレスして、プレス成形品を成形し、
(c)前記プレス成形品から前記パンチ金型でプレス成形された第1部品を切り出し、
(d)前記プレス成形品から前記流れ止め部でプレス成形された第2部品を切り出し、
(e)前記第1部品において、前記パンチ金型の前記頂面の一部でプレス成形された部分
に、前記第2部品を接合する、
自動車外装パネルの製造方法。
【請求項2】
金型セットを用いた鋼板製の自動車外装パネルの製造方法であって、
前記金型セットは、
自動車外装パネルを形成する金型セットであって、
パンチ金型と、
少なくとも一方向に延伸する流れ止め部を有するホルダ金型と、
を備え、
前記流れ止め部は、その延伸方向に連続し、かつ、環状を形成し、
前記パンチ金型の頂面の形状は曲面であり、
前記流れ止め部は凸形状または凹形状であり、
前記ホルダ金型は、前記流れ止め部の延伸方向に沿って、前記流れ止め部に隣接する曲面部を有し、
前記曲面部は、少なくとも一方向に沿った前記パンチ金型の前記頂面の一部の形状と一致し、
(a)前記ホルダ金型と、ダイス金型とで金属板を挟持し、
(b)挟持された前記金属板を、前記パンチ金型でプレスして、プレス成形品を成形し、
(c)前記プレス成形品から前記パンチ金型でプレス成形された第1部品を切り出し、
(d)前記プレス成形品から前記流れ止め部および前記曲面部でプレス成形された第2部品を切り出し、
(e)前記第1部品において、前記パンチ金型の前記頂面の一部でプレス成形された部分に、前記第2部品を接合する、
自動車外装パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金型セットおよび自動車外装パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドアパネルなどの自動車外装パネルは軽量化の要請により、薄肉化の傾向にある。外装パネルを薄肉化すると張り剛性の低下が問題となる。例えば、外装パネルを手で押すと、容易に変形してしまう。
【0003】
特許文献1には、重量増およびコスト増を抑制しつつ、張り剛性の向上を実現する自動車用ドア構造が記載されている。特許文献1では、接合するドアアウタパネルとドアインナパネルとの間に形成される空間部に、張り剛性補強材を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-205741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように、張り剛性補強材を設けて張り剛性の低下を抑制する場合、ドアパネルとは別に、張り剛性補強材を製造する必要がある。この場合、製造コストと手間を要することになる。
【0006】
そこで、本開示の目的は、製造コストおよび手間を抑えつつ、張り剛性の低下を抑制した自動車外装パネルを成形する金型セット、および、自動車外装パネルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示は、自動車外装パネルを成形する金型セットであって、パンチ金型と、少なくとも一方向に延伸する流れ止め部を有するホルダ金型と、を備え、前記パンチ金型の頂面の形状は曲面であり、前記流れ止め部は凸形状または凹形状であり、凸形状の頂部または凹形状の底部が、少なくとも一方向に沿った前記パンチ金型の前記頂面の一部の形状と一致している。
【0008】
また、本開示は、自動車外装パネルを成形する金型セットであって、パンチ金型と、少なくとも一方向に延伸する流れ止め部を有するホルダ金型と、を備え、前記パンチ金型の頂面の形状は曲面であり、前記流れ止め部は凸形状または凹形状であり、前記ホルダ金型は、前記流れ止め部の延伸方向に沿って、前記流れ止め部に隣接する曲面部を有し、前記曲面部は、少なくとも一方向に沿った前記パンチ金型の前記頂面の一部の形状と一致している。
【0009】
また、本開示は、金型セットを用いた自動車外装パネルの製造方法であって、前記金型セットは、パンチ金型と、少なくとも一方向に延伸する流れ止め部を有するホルダ金型と、ダイス金型と、を備え、前記パンチ金型の頂面の形状は曲面であり、前記流れ止め部は凸形状または凹形状であり、凸形状の頂部または凹形状の底部が、少なくとも一方向に沿った前記パンチ金型の前記頂面の一部の形状と一致し、(a)前記ホルダ金型と、前記ダイス金型とで金属板を挟持し、(b)挟持された前記金属板を、前記パンチ金型でプレスして、プレス成形品を成形し、(c)前記プレス成形品から前記パンチ金型でプレス成形された第1部品を切り出し、(d)前記プレス成形品から前記流れ止め部でプレス成形された第2部品を切り出し、(e)前記第1部品において、前記パンチ金型の前記頂面の一部でプレス成形された部分に、前記第2部品を接合する。
【0010】
さらに、本開示は、金型セットを用いた自動車外装パネルの製造方法であって、前記金型セットは、自動車外装パネルを形成する金型セットであって、パンチ金型と、少なくとも一方向に延伸する流れ止め部を有するホルダ金型と、を備え、前記パンチ金型の頂面の形状は曲面であり、前記流れ止め部は凸形状または凹形状であり、前記ホルダ金型は、前記流れ止め部の延伸方向に沿って、前記流れ止め部に隣接する曲面部を有し、前記曲面部は、少なくとも一方向に沿った前記パンチ金型の前記頂面の一部の形状と一致し、(a)前記ホルダ金型と、前記ダイス金型とで金属板を挟持し、(b)挟持された前記金属板を、前記パンチ金型でプレスして、プレス成形品を成形し、(c)前記プレス成形品から前記パンチ金型でプレス成形された第1部品を切り出し、(d)前記プレス成形品から前記流れ止め部および前記曲面部でプレス成形された第2部品を切り出し、(e)前記第1部品において、前記パンチ金型の前記頂面の一部でプレス成形された部分に、前記第2部品を接合する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、従来破棄していた金属板の部分を補強部材として活用することで、製造時のコストダウンを実現できる。また、ホルダ金型とダイス金型とで金属板を狭持する際に、流れ止め部により補強部材を形成できるため、補強部材を別途製造する手間を省くことができる。これにより、製造コストおよび手間を抑えつつ、薄肉で張り剛性の低下を抑制した自動車外装パネルを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る自動車ドアの外装パネルを裏側から視た図である。
図2図2は、縦補強部材を延伸方向から視た図である。
図3図3は、図1のIII-III線における断面図である。
図4図4は、縦補強部材に設けられた切欠きを示す斜視図である。
図5図5は、縦補強部材の切欠きに、横補強部材が嵌め込まれた状態を示す斜視図である。
図6図6は、一枚の鋼板をプレス加工して得られるプレス成形品の平面図である。
図7図7は、プレス成形品を成形するための金型セットを示す図である。
図8図8は、金型セットで鋼板をプレス加工する状態を示す図である。
図9図9は、外装パネルの製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10に、実施形態の外装パネルの張り剛性を評価した結果を示す図である。
図11図11は、外装材の接合部分に倣った形状とするフランジを成形するための金型セットを説明する図である。
図12図12は、別形状を有する補強部材を延伸方向から視た図である。
図13図13は、凸部のみからなる縦補強部材に、横補強部材を交差させるための切欠きを設けた図である。
図14図14は、縦補強部材の切欠きに、横補強部材が嵌め込まれた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本開示の自動車外装パネルを、自動車ドアの外装パネルとして説明する。なお、自動車外装パネルは、フード、ルーフなど、自動車の他の部位のパネルであってもよい。
【0014】
<自動車ドアの外装パネル>
図1は、本実施形態に係る自動車ドアの外装パネル100を裏側から視た図である。図1の破線で示す部材は、外装パネル100の表側に設けられるドアノブである。以下の説明において、縦方向とは、外装パネル100を車両に取り付けた際に、自動車の車高方向となる方向であり、横方向とは、自動車の車長方向となる方向である。
【0015】
外装パネル100は、外装材110と、縦補強部材121、122と、横補強部材123、124と、を備えている。
【0016】
外装材110は、板厚が0.55mmの鋼板が、後述する金型セットによりプレスされて、成形される。外装材110は、縦方向において、中央部に向かうにつれて表側へ凸状となるよう湾曲した形状である。なお、外装材110の形状には特に制約はない。
【0017】
縦補強部材121、122および横補強部材123、124は、一方向に延伸した部材である。縦補強部材121、122および横補強部材123、124は、外装材110の張り剛性が低い部分に接合される。縦補強部材121、122は、縦方向に沿って、外装材110の裏面に接合される。横補強部材123、124は、横方向に沿って、外装材110の裏面に接合される。縦補強部材121、122および横補強部材123、124は、例えば、マスチック接着剤により、外装材110の裏面に接合される。補強部材121~124は、外装材110と同じ鋼板から形成される。
【0018】
図2は、縦補強部材121を延伸方向から視た図である。以下では、縦補強部材121の延伸方向に直交する方向を、幅方向と言う。図2では、縦補強部材121について示すが、他の補強部材122~124の延伸方向から視た形状は、縦補強部材121と同じである。
【0019】
縦補強部材121は、その延伸方向から視たときに、台形状の凸部120Aと、その凸部120Aに幅方向に隣接するフランジ120B、120Cとを有したハット型の形状である。縦補強部材121は、その凸部120Aの頂面120Dを、外装材110の裏面に密着させて、外装材110に固定される。同様に、他の補強部材122~124も、それぞれの凸部120Aの頂面120Dを、外装材110の裏面に密着させて、外装材110に固定されている。なお、各補強部材121~124は、延伸方向に沿って複数個所で接合されることで、外装材110に固定される。
【0020】
図3は、図1のIII-III線における断面図である。なお、図3は、外装材110と、縦補強部材121との接合部分のみを示す。外装材110に接合する縦補強部材121は、外装材110の接合部分に倣った形状となっている。詳しくは、上述したように、外装材110は湾曲した形状である。また、縦補強部材121は、その凸部120Aの頂面120Dが、外装材110の裏面に接合される。したがって、縦補強部材121の凸部120Aの頂面120Dが、外装材110の湾曲に倣った形状となっている。
【0021】
なお、縦補強部材121は、外装材110の張り剛性が低い部分に密着して接合されていればよく、図3に示すように、外装材110と密着していない部分があってもよい。したがって、縦補強部材121の凸部120Aの頂面120Dは、少なくとも、張り剛性が低い部分の外装材110の形状と一致していればよい。また、他の補強部材122~124も同様に、外装材110の接合部分に応じた形状となっている。
【0022】
縦補強部材121、122と横補強部材123、124とは交差して、外装材110に接合される。本実施形態では、縦補強部材121、122には切欠きが設けられ、その切欠きに横補強部材123、124を嵌め込むことで、部材同士の干渉を回避している。
【0023】
図4は、縦補強部材121に設けられた切欠き130を示す斜視図である。図5は、縦補強部材121の切欠き130に、横補強部材123が嵌め込まれた状態を示す斜視図である。
【0024】
延伸方向に沿って、縦補強部材121の凸部120Aの一部が、例えばレーザカットされることで、切欠き130が形成される。切欠き130の延伸方向の長さは、横補強部材123の幅方向の長さよりも長い。これにより、横補強部材123を、切欠き130に嵌め込むことができる。横補強部材123を、縦補強部材121の切欠き130に嵌め込んだ状態で、縦補強部材121のフランジ120B、120Cと、横補強部材123のフランジ120B、120Cとが重なる領域130Aを、例えばスポット溶接して、縦補強部材121と横補強部材123とが接合される。なお、アーク溶接またはマスチック接着剤により、縦補強部材121と横補強部材123とを接合してもよい。
【0025】
なお、縦補強部材121には、2つの切欠きが形成されている。そして、各切欠きに、横補強部材123、124が嵌め込まれる。また、縦補強部材122にも縦補強部材121と同様に、切欠きが設けられ、その切欠きに横補強部材123、124が嵌め込まれる。
【0026】
このように、補強部材121~124は、外装材110の裏面に接合されることで、外装材110を補強している。これにより、外装パネル100の張り剛性は高くなる。すなわち、本実施形態では、外装パネル100の張り剛性は、外装材110の板厚を大きくすることで確保するのではなく、縦補強部材121、122および横補強部材123、124により確保されている。
【0027】
<プレス成形品について>
外装パネル100を構成する外装材110と、補強部材121~124とは、プレス加工された一枚の鋼板から形成される。
【0028】
図6は、一枚の鋼板をプレス加工して得られるプレス成形品20の平面図である。プレス成形品20は、後述の金型セットにより一枚の鋼板がプレスされて成形される。プレス成形品20には、破線で示す第1部品21と、一点鎖線で示す第2部品22とが成形される。プレス成形品20から第1部品21を切り出すことで、外装材110が形成される。また、プレス成形品20から第2部品22を切り出すことで、縦補強部材121、122および横補強部材123、124が形成される。詳しくは、第2部品22は、補強部材121~124の凸部120Aとなる。
【0029】
なお、第2部品22は、第1部品21の周囲を囲んで成形されている。第2部品22における、第1部品21の縦方向に沿った部分が、第2部品22から切り出されて、縦補強部材121、122が形成される。また、第2部品22における、第1部品21の横方向に沿った部分が、第2部品22から切り出されて、横補強部材123、124が形成される。
【0030】
従来では、第1部品21のみをプレス成形品20から切り出し、他の部分は破棄されていた。本実施形態では、従来破棄されていた部分に、補強部材121~124となる第2部品22を成形することで、外装パネル100の製造時のコストダウンを実現できる。
【0031】
<金型セットについて>
次に、図6のプレス成形品20を成形する金型セットについて説明する。
【0032】
図7は、プレス成形品20を成形するための金型セット10を示す図である。図8は、金型セット10で鋼板5をプレス加工する状態を示す図である。金型セット10は、パンチ金型1と、ホルダ金型2と、ダイス金型3とを備えている。
【0033】
ホルダ金型2は、パンチ金型1が通過する貫通孔2Aと、貫通孔2Aに沿って形成された流れ止め部2Bとを有している。ダイス金型3はホルダ金型2と対向配置される。流れ止め部2Bはダイス金型3側へ突出した凸部である。
【0034】
ダイス金型3は、ホルダ金型2の貫通孔2Aを覆うように配置された鋼板5の周縁部分を、ホルダ金型2とで挟み込む。ダイス金型3には、流れ止め部2Bと対向する位置に、ホルダ金型2と反対側に窪む凹部3Aが形成されている。パンチ金型1が、ホルダ金型2とダイス金型3とで挟み込まれた鋼板5を、ホルダ金型2の貫通孔2Aを介してダイス金型3側へプレスすることで、鋼板5には第1部品21が成形される。また、ホルダ金型2とダイス金型3とで挟み込まれた鋼板5は流れ止め部2Bによりプレスされる。流れ止め部2Bによりプレスされることで、鋼板5には第2部品22が成形される。これにより、第1部品21および第2部品22が成形されたプレス成形品20が得られる。
【0035】
<流れ止め部について>
上述したように、流れ止め部2Bによりプレスされて成形された第2部品22は、補強部材121~124の凸部120Aとなる。この凸部120Aの頂面120Dは、外装材110の湾曲に倣った形状となる必要がある。そこで、凸状の流れ止め部2Bの頂部を、外装材110となる第1部品21を成形するパンチ金型1の頂面1Aに倣った形状とすることで、凸部120Aの頂面120Dは、外装材110の湾曲に倣った形状となる。
【0036】
詳しくは、縦方向に沿った流れ止め部2Bの頂部の形状は、縦方向に沿ったパンチ金型1の頂面1Aの一部(図7の破線領域11)の形状と一致している。この破線領域11には、成形される外装材110の張り剛性が低くなる部分を含む。
【0037】
また、横方向に沿った流れ止め部2Bの頂部は、横方向に沿ったパンチ金型1の頂面1Aの一部(図7の一点鎖線領域12)の形状と一致している。この一点鎖線領域12には、成形される外装材110の張り剛性が低くなる部分を含む。
【0038】
流れ止め部2Bを上記構成のようにすることで、鋼板5の破棄されていた第2部品22を成形でき、第1部品21と、第2部品22とを同じプレス工程で成形できる。そして、流れ止め部2Bをプレスして形成する補強部材121~124は、外装材110に密着させて接合することができる。
【0039】
<外装パネルの製造方法>
図9は、外装パネル100の製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【0040】
まず、鋼板5の周縁部分をホルダ金型2とダイス金型3とで挟み込み、パンチ金型1で鋼板5をプレスするプレス加工を行う(S1)。これにより、第1部品21と第2部品22とが成形されたプレス成形品20が成形される。次に、このプレス成形品20から、第1部品21と第2部品22とを切り出す(S2)。これにより、外装材110と、補強部材121~124とが形成される。
【0041】
次に、縦補強部材121、122に切欠き130を形成する(S3)。例えば、凸部120Aの一部合をレーザカットすることで、切欠き130を形成する。形成した縦補強部材121、122の切欠き130に、横補強部材123、124を嵌め込み、縦補強部材121、122と横補強部材123、124とを交差した状態でスポット溶接する(S4)。その後、補強部材121~124を、マスチック接着剤を用いて外装材110の裏面に接合する(S5)。これにより、外装パネル100が形成される。
【0042】
このように、S1のプレス加工で、外装材110と、補強部材121~124とを同時に形成でき、また、従来破棄していた部分を有効活用できるため、製造コストを抑えつつ、張り剛性の低下を抑制した外装パネル100を製造することができる。
【0043】
<実施例>
次に、本実施形態の外装パネル100とすることで、薄手化しても張り剛性が低下していないことを確認する試験を行った。
【0044】
図10に、本実施形態の外装パネル100の張り剛性を評価した結果を示す図である。図10に示す本開示例の外装パネル100は、厚さ0.5mmで、重量が3.57kgである。この重量は、外装材110の重量と、補強部材121~124の重量とを含む。また、比較例として挙げた外装パネルは、厚さ0.65mmで、重量が3.94kgである。
【0045】
この2つの外装パネルに対して、90Nの負荷を付与し、パネルのたわみ量を評価した。本開示例では、たわみ量が約5.5mmである。これに対し、比較例では、約7.9mmである。このように、本開示例では、比較例よりも軽量化しているにもかかわらず、たわみ量が小さく、張り剛性は低下していないことが読み取れる。
【0046】
<変形例>
以下に、本実施形態の変形例について説明する。
【0047】
上述の実施形態では、補強部材121~124は、各凸部120Aの頂面120Dを、外装材110の裏面に接合しているが、フランジ120B、120Cを外装材110の裏面に接合するようにしてもよい。この場合、フランジ120B、120Cが外装材110の接合部分に倣った形状となる。
【0048】
図11は、外装材110の接合部分に倣った形状とするフランジ120B、120Cを成形するための金型セットを説明する図である。図11は、図8の一部に相当する図である。ホルダ金型2は、流れ止め部2Bに隣接する曲面部2Cを有している。曲面部2Cは、流れ止め部2Bと同様、縦方向と横方向に沿って延伸している。縦方向に沿った曲面部2Cは、縦方向に沿ったパンチ金型1の頂面1Aの一部(図7の破線領域11)の形状と一致している。また、横方向に沿った曲面部2Cの頂部は、横方向に沿ったパンチ金型1の頂面1Aの一部(図7の一点鎖線領域12)の形状と一致している。この曲面部2Cにより成形されたフランジ120B、120Cは、外装材110の湾曲に倣った形状となる。
【0049】
また、補強部材121~124の延伸方向から視た形状は、図2の形状に限定されない。図12は、別形状を有する補強部材を延伸方向から視た図である。図12(A)に示すように、延伸方向から視た補強部材は、R状に湾曲した形状であってもよいし、図12(B)に示すように、三角形状であってもよい。
【0050】
補強部材121~124は、フランジ120B、120Cを有していなくてもよい。つまり、補強部材121~124は、凸部120Aのみからなっていてもよい。図13は、凸部120Aのみからなる縦補強部材121に、横補強部材を交差させるための切欠き131を設けた図である。凸部120Aの側面の一部が幅方向に切り開かれて、フランジ131A、131Bを形成している。フランジ131A、131Bが形成された部分に、切欠き131が形成される。
【0051】
図14は、縦補強部材121の切欠き131に、横補強部材123が嵌め込まれた状態を示す斜視図である。凸部120Aのみからなる場合、横補強部材123は、その延伸方向の一部に、幅方向に広がるフランジ120E、120Fを有している。横補強部材123は、このフランジ120E、120Fが設けられた部分を、縦補強部材121の切欠き131に嵌め込む。横補強部材123を、縦補強部材121の切欠き131に嵌め込んだ状態で、縦補強部材121のフランジ131A、131Bと、横補強部材123のフランジ120E、120Fとが重なる領域131Aをスポット溶接して、縦補強部材121と横補強部材123とが接合される。
【0052】
また、外装パネル100は、4つの補強部材121~124が、外装材110に接合された構成であるが、外装材110の張り剛性が低い部分に補強部材が接合されていれば、補強部材の数は適宜変更可能である。例えば、縦補強部材121のみを外装材110に接合させてもよいし、縦補強部材121と横補強部材123とを外装材110に接合させてもよい。
【0053】
さらに、流れ止め部2Bは、ダイス金型3側へ突出した凸形状であるが、ダイス金型3と反対側へ窪む凹形状であってもよい。この場合、ダイス金型3に設けられる凹部3A(図8)は、ホルダ金型2側へ突出した凸部となる。
【符号の説明】
【0054】
1 パンチ金型
2 ホルダ金型
2B 流れ止め部
2C 曲面部
3 ダイス金型
5 鋼板
10 金型セット
20 プレス成形品
21 第1部品
22 第2部品
100 外装パネル
110 外装材
121、122 縦補強部材
123、124 横補強部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14