(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂用の結晶化促進剤、及び該結晶化促進剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20231018BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K5/098
(21)【出願番号】P 2019167928
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000191250
【氏名又は名称】新日本理化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩崎祥平
(72)【発明者】
【氏名】松本和也
(72)【発明者】
【氏名】井上光子
(72)【発明者】
【氏名】篠田佑里恵
(72)【発明者】
【氏名】内山陽平
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-507395(JP,A)
【文献】特開2006-225576(JP,A)
【文献】特開2009-149724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00
C08K 5/098
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下
記一般式(2)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩を含んでなるポリオレフィン系樹脂用の結晶化促進剤。
【化1】
(上記式中、Mは金属イオンを表し、mはnが1の場合は2、nが2の場合は1であり、nはmが1の場合は2であり、mが2の場合は1である。)
【請求項2】
前記金属イオンが、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、ヒドロキシアルミニウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選ばれた1種である請求項1に記載の結晶化促進剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の結晶化促進剤を含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載されたポリオレフィン系樹脂組成物を原料とするポリオレフィン系樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂の結晶化促進効果に非常に優れた新規な結晶化促進剤に関するものであり、詳しくは、特定の構造の多環脂環式構造を基本骨格とする特定の構造の脂環式ジカルボン酸の金属塩を含むことを特徴とする結晶化促進剤、及び該結晶化促進剤を含む結晶性に優れたポリオレフィン系樹脂組成物並びに該樹脂組成物を原料とするポリオレフィン系樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂は、安価でバランスの良い性能を有し、汎用のプラスチックとして様々な用途で使用されている。また、一般的に結晶性の樹脂の場合、その結晶性を改良することにより、例えば、成形加工性を改善することや得られた成形品の機械的特性や熱的特性、光学的特性を向上することが可能あることが広く知られており、ポリオレフィン系樹脂の場合も同様である。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂等の結晶性樹脂の結晶性を改良する方法には、樹脂の構造・組成を制御する方法も広く検討されており、実際に実用化されているが、結晶化促進剤等の添加剤を配合することにより結晶化を促進する方法が、簡易でより実用的な方法として広く用いられている。上記結晶化促進剤は、結晶核の生成速度や生成した結晶核からの成長速度を高める効果を有しており、その結果、成形加工時間の短縮が可能であり、更には得られた成形品の機械的特性、熱的特性、更には光学的特性を改善する効果を有する。その様な結晶化促進剤としては、これまでタルク等の無機化合物、エチレンビスステアリン酸アミド等のアミド化合物、ジアセタール化合物、リン酸エステルの金属塩、カルボン酸やスルホン酸の金属塩等の有機化合物などが良く知られており、実際に広く実用化されている。
【0004】
上記結晶促進剤のなかでも、ステアリン酸等の脂肪酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸等の脂環式カルボン酸など、様々なカルボン酸の金属塩が優れた結晶化促進効果を有することが古くから知られており、代表的なものとしては、安息香酸のナトリウム塩やp-tert-ブチル安息香酸のヒドロキシアルミニウム塩などが挙げられ、様々な用途で広く使われてきた(特許文献1、2、非特許文献1、2)。
【0005】
また、最近では、ヘキサヒドロフタル酸や水添ナジック酸のカルシウム塩やナトリウム塩などの脂環式カルボン酸の金属塩が、熱可塑性樹脂の結晶化促進剤として優れた効果を有することが報告されている(特許文献3~7)
【0006】
近年、様々な用途で、コスト削減や軽量化等の目的でプラスチックへの切り替えが進んでおり、なかでもポリオレフィン系樹脂は安価でかつ軽量であることより最も有用な材料として注目されている。その中でも、自動車用途は、最近の環境問題より低燃費化の要求が強く、最もポリオレフィン系樹脂の使用が進んでいる分野であり、最近では小型部材にとどまらず、大型部材にもポリオレフィン系樹脂を使われるようになっており、その様な分野では、これまでに知られている結晶化促進剤では必ずしも満足されておらず、更なる改善が望まれている。
【0007】
また、上記自動車部材の中でもバンパー等の安全性に係る部材では、優れた剛性や強度等の機械的性能が必要であり、ポリオレフィン系樹脂単独では十分な機械的性能を得ることが難しく、タルク等の充填剤を配合する処方が一般的である。近年、上述の様に軽量化の要求が強く、充填剤の配合量を可能な限り少なくする傾向が一般的となってきている。しかし、充填剤の配合量を少なくすると機械的性能等の性能低下は避けられず、その改善が大きな課題であった。上述の通り、結晶化促進剤を用いることにより、ポリオレフィン系樹脂の結晶性や機械的強度を向上することが可能であり、上記の機械的性能等の性能低下を結晶化促進剤の配合で補うことが検討され、実際に使われている。しかし、従来の結晶化促進剤の多くは、充填剤との併用系では十分な効果を発揮することが難しく、近年益々厳しくなってきている軽量化の要求に対応することが難しいのが現状である。従って、タルク等の充填剤との併用系で優れた効果を発揮する結晶化促進剤の開発が強く望まれている。
【0008】
また、ポリオレフィン系樹脂等では、結晶化促進剤を配合することにより透明性が大きく向上することが知られており、日用雑貨品や食品包装材料等の用途において、広く使われている。従って、特にポリオレフィン系樹脂等においては透明性の改善効果も非常に重要であり、且つ必須な性能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第3207737号明細書
【文献】米国特許第3207739号明細書
【文献】特表2004-525227号公報
【文献】特表2004-524417号公報
【文献】特表2004-531613号公報
【文献】特表2007-509196号公報
【文献】特開2012-97268号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】J.Appl.Poly.Sci.,11,673-685(1967)
【文献】Polymer,11(5)、253-267(1970)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂の結晶化促進効果に非常に優れた、即ち、ポリオレフィン系樹脂に配合することによりポリオレフィン系樹脂の結晶化速度、即ち結晶化温度を著しく向上することのできる結晶化促進剤、及び該結晶化促進剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物並びに該樹脂組成物を原料とするポリオレフィン系樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上述の状況に鑑み、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、特定の構造の脂環式ジカルボン酸の金属塩が、ポリオレフィン系樹脂に配合することによりポリオレフィン系樹脂の結晶化速度、即ち結晶化温度を著しく向上することのできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下に示す新規な脂環式ジカルボン酸の金属塩を含有してなるポリオレフィン系樹脂用の結晶化促進剤、及び該結晶化促進剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物並びに該樹脂組成物を原料とするポリオレフィン系樹脂成形体を提供するものである。
【0014】
[項1] 下記一般式(1)又は一般式(2)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩を含んでなるポリオレフィン系樹脂用の結晶化促進剤。
【化1】
【化2】
(上記式中、Mは金属イオンを表し、mはnが1の場合は2、nが2の場合は1であり、nはmが1の場合は2であり、mが2の場合は1である。)
【0015】
[項2] 前記金属イオンが、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、ヒドロキシアルミニウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選ばれた1種である[項1]に記載の結晶化促進剤。
【0016】
[項3] 前記脂環式ジカルボン酸中の2つのオキシカルボニル基が、シス配置である[項1]又は[項2]に記載の結晶化促進剤。
【0017】
[項4] [項1]~[項3]の何れかに記載の結晶化促進剤を含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
【0018】
[項5] 結晶化促進剤の含有量が、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001~10質量部である[項4]に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【0019】
[項6] 結晶化促進剤の含有量が、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.01~5質量部である[項5]に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【0020】
[項7] [項4]~[項6]の何れかに記載されたポリオレフィン系樹脂組成物を原料とするポリオレフィン系樹脂成形体。
【発明の効果】
【0021】
本発明の結晶化促進剤をポリオレフィン系樹脂に配合することによりポリオレフィン系樹脂の結晶化速度、即ち結晶化温度を著しく向上することができる。その結果、特に大型部材等における成形サイクルが大幅に短縮され、コストダウンや加工時のトラブル防止等に非常に有効である。更に、結晶性を改善することにより、えられた成形品の剛性等の機械的性能、透明性等の光学的性能、耐熱性等の熱的性能が向上するだけでなく、ひけやそりが少なくなり、複雑な形状の成形品も安定して製造可能となる。また、本発明の結晶化促進剤は、タルク等の充填剤との併用系でもその効果が低減することなく、優れた効果を発揮することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<ポリオレフィン系樹脂用の結晶化促進剤>
本発明のポリオレフィン系樹脂用の結晶化促進剤は、以下に示す特定の構造の脂環式ジカルボン酸の金属塩を含有してなることを特徴とする。なお、該結晶化促進剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の結晶化促進剤以外のその他の結晶化促進剤や一般的にポリオレフィン系樹脂に使われている各種添加剤を含有していても良い。その場合、結晶化促進剤中に占める本発明の結晶化促進剤の含有量は、結晶化促進剤全体を100質量%とした場合に、70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であることが推奨される。
【0023】
[脂環式ジカルボン酸]
本発明の脂環式ジカルボン酸は、下記一般式(3)又は一般式(4)で示される多環構造の脂環式ジカルボン酸である。
【化3】
【化4】
【0024】
上記脂環式ジカルボン酸は、工業的にはシクロ環上に置換基のない構造が好ましいか、本発明の効果を奏するものであれば、シクロ環上に、例えば、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が置換されているものを用いることもできる。
【0025】
また、本発明の脂環式ジカルボン酸には、2つのオキシカルボニル基が同方向を向いているシス配置と異方向を向いているトランス配置の2種類の立体異性体が存在する場合があるが、本発明においては、本発明の効果を奏する限り、その異性体の構造に依存するものではなく、シス配置、トランス配置及びその混合物の何れであっても良いが、結晶化促進効果の観点より、シス配置であることが望ましい。
【0026】
[金属イオン]
本発明の金属塩を形成する金属イオンは、本発明の効果を奏するものであれば、特に限定されることなく、一価又は二価の金属イオンを用いることができるが、結晶化促進効果の観点より、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、ヒドロキシアルミニウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選ばれた1種であることが好ましい。
【0027】
本発明の脂環式ジカルボン酸の金属塩の具体的な態様としては、例えば、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の二ナトリウム塩、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の二リチウム塩、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸のカルシウム塩、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の亜鉛塩、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の二ナトリウム塩、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の二リチウム塩、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸のカルシウム塩、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の亜鉛塩、1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸の二ナトリウム塩、1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸の二リチウム塩、1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸のカルシウム塩、1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸の亜鉛塩などが挙げられ、中でも、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の二ナトリウム塩、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の二リチウム塩、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の亜鉛塩、1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸の二ナトリウム塩などが好ましく、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の二ナトリウム塩、1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸の二ナトリウム塩などが特に推奨される。
【0028】
<脂環式ジカルボン酸の金属塩の製造方法>
本発明の脂環式ジカルボン酸の製造方法は、本発明の効果を奏する限り、特に制限されないが、例えば、共役ジエン化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応により、脂環式ジカルボン酸無水物を得て、続いて、得られた脂環式ジカルボン酸無水物と水と金属酸化物、金属水酸化物、又は金属塩化物とを反応させて、金属塩とする方法などで容易に製造することができる。
【0029】
本発明のポリオレフィン系樹脂用の結晶化促進剤の粒子形状は、本発明の効果を奏する限り、特に制限はないが、本発明の結晶化促進剤が、分散タイプである場合、二次凝集により樹脂中での分散性が悪化しない程度に粒子の大きさが小さいほど、樹脂との接触面が広くなり、より少量で、より優れた結晶化促進剤としての性能を発揮できる可能性がある。従って、結晶化促進性能の観点より、レーザー回折式粒度分布測定により求めた粒径の平均値が、100μm以下、好ましくは50μm、より好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下であることが推奨される。また、分散性の観点より、上述の通り、レーザー回折式粒度分布測定により求めた粒径の平均値が、0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であることが推奨される。
【0030】
<ポリオレフィン系樹脂組成物>
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、上記特定の構造の脂環式ジカルボン酸の金属塩を含有してなるポリオレフィン系樹脂用の結晶化促進剤を含んでなることを最大の特徴とする。
【0031】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、上記ポリオレフィン系樹脂用の結晶化促進剤とポリオレフィン系樹脂とを、必要に応じてその他のポリオレフィン系樹脂用添加剤を加えて、室温にてドライブレンド後、所定の条件にて溶融混合することにより、容易に得ることができる。
【0032】
また、上記ポリオレフィン系樹脂用の結晶化促進剤に、必要に応じてその他のポリオレフィン系樹脂用の添加剤を配合して、ポリオレフィン系樹脂用の添加剤組成物を調製して、該組成物とポリオレフィン系樹脂とを、室温にてドライブレンド後、所定の条件にて溶融混合することによって、得ることもできる。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂中の本発明に係るポリオレフィン系樹脂用の結晶化促進剤の含有量は、結晶核剤としての効果を奏する限り、特に制約はないが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001~10質量部、より好ましくは0.01~5質量部であることが推奨される。
【0034】
[ポリオレフィン系樹脂]
上記ポリオレフィン系樹脂としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されることなく、従来公知のポリオレフィン系樹脂が使用可能であり、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂などが例示される。より具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、エチレン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のエチレンコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン50重量%以上、好ましくは70重量%以上のプロピレンコポリマー、ブテンホモポリマー、ブテン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のブテンコポリマー、メチルペンテンホモポリマー、メチルペンテン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のメチルペンテンコポリマー、ポリブタジエン等が例示される。また、上記コポリマーはランダムコポリマーであってもよく、ブロックコポリマーであってもよい。更に、これらの樹脂の立体規則性がある場合は、アイソタクチックでもシンジオタクチックでもよい。上記コポリマーを構成し得るコモノマーとして、具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン等の炭素数2~12のα-オレフィン、1,4-エンドメチレンシクロヘキセン等のビシクロ型モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等が例示される。
【0035】
かかる重合体を製造するために適用される触媒としては、一般に使用されているチーグラー・ナッタ型触媒はもちろん、遷移金属化合物(例えば、三塩化チタン、四塩化チタン等のチタンのハロゲン化物)を塩化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウムを主成分とする担体に担持してなる触媒と、アルキルアルミニウム化合物(トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド等)とを組み合わせてなる触媒系、メタロセン触媒等も使用できる。
【0036】
本発明に係るポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(以下「MFR」と略記する。JIS K 7210-1999)は、その適用する成形方法により適宜選択されるが、通常0.01~200g/10分程度、好ましくは0.05~100g/10分程度が推奨される。
【0037】
[その他の添加剤]
また、上述の通り、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物には、その使用目的やその用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲でその他のポリオレフィン系樹脂用添加剤が含まれていてもよい。
【0038】
上記ポリオレフィン系樹脂用添加剤としては、例えば、ポリオレフィン等衛生協議会編「ポジティブリストの添加剤要覧」(2004年9月)に記載されている各種添加剤が挙げられる。具体的には、蛍光増白剤(2,5-チオフェンジイル(5-t-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)、4,4’-ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン等)、酸化防止剤、安定剤(金属化合物、エポキシ化合物、窒素化合物、燐化合物、硫黄化合物等)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等)、界面活性剤、滑剤(パラフィン、ワックス等の脂肪族炭化水素、炭素数8~22の高級脂肪酸、炭素数8~22の高級脂肪酸金属(Al、Ca等)塩、炭素数8~22の高級脂肪族アルコール、ポリグリコール、炭素数4~22の高級脂肪酸と炭素数4~18の脂肪族1価アルコールとのエステル、炭素数8~22の高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン誘導体等)、充填剤(タルク、ハイドロタルサイト、マイカ、ゼオライト、パーライト、珪藻土、炭酸カルシウム、ガラス繊維等)、発泡剤、発泡助剤、ポリマー添加剤、可塑剤(ジアルキルフタレート、ジアルキルヘキサヒドロフタレート等)、架橋剤、架橋促進剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、有機無機の顔料(インディゴ化合物、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ウルトラマリン化合物、アルミン酸コバルト化合物等)、加工助剤、他の核剤等の各種添加剤が例示される。
【0039】
これらの添加剤を使用する場合、その使用量は、本発明の効果を阻害しない限り、通常使用されている範囲で使用すればよいが、例えば、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001~100質量部程度、より好ましくは0.001~50質量部程度で使用されるのが一般的である。
【0040】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が例示され、具体的な酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンなどのフェノール系酸化防止剤、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾールなどの硫黄系酸化防止剤、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンなどの亜リン酸エステル系酸化防止剤等が例示される。中でも、フェノール系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、亜リン酸エステル系の酸化防止剤であるトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンなどが特に推奨される。
【0041】
また、本発明のポリオレフィン系樹脂用の結晶化促進剤のポリオレフィン系樹脂中での分散性等の観点より、その他の添加剤として分子中に少なくとも1個の水酸基を有していても良い炭素数12~22の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩を配合する処方が推奨される。
【0042】
上記金属塩における脂肪酸としては、具体的に、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸などが挙げられ、中でもラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸が推奨され、特にステアリン酸、12-ヒドロキステアリン酸が最も推奨される。
【0043】
また、上記金属塩を形成する金属種としては、具体的に、リチウム、マグネシウム、バリウム、ナトリウム、アルミニウム、カリウム、ストロンチウム、亜鉛などが挙げられ、中でもリチウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛が推奨され、特にリチウム、亜鉛が推奨される。
【0044】
<ポリオレフィン系樹脂成形体>
本発明のポリオレフィン系樹脂成形体は、上記本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を原料とし、慣用されている成形方法に従って成形することにより得られる。前記成形方法としては、本発明の効果を奏する限り、特に制約はなく、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧空成形、回転成形、フィルム成形等の従来公知の成形方法のいずれも採用できる。
【0045】
かくして得られたポリオレフィン系樹脂成形体は、結晶化温度が高く、即ち結晶化速度が速く、その結果、特に大型部材等における成形サイクルが大きく短縮され、コストダウンや加工時のトラブル防止等に非常に有効である。更に、結晶性を改善することにより、えられた成形品の剛性等の機械的性能、透明性等の光学的性能、耐熱性等の熱的性能が向上するだけでなく、ひけやそりが少なくなり、複雑な形状の成形品も安定して製造可能となり、成形品やシート、フィルムとして、自動車部材、電気部材、機械部品、日常雑貨など様々な用途で、非常に有用である。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、各特性の測定は以下の通りである。
【0047】
[得られた化合物の分析方法]
【0048】
(1)赤外線分光分析(IR分析)
FT-IR装置:商品名「Spectrum One」、パーキンエルマー社製、測定範囲:650~4000cm-1、測定方法:ATR法、積算回数:3回、分解能:4.00cm-1
なお、測定はサンプルを装置のセル上に押し付けて分析を行った。
【0049】
(2)核磁気共鳴分光分析(NMR分析)
NMR分析装置:商品名「DRX-500」、Bruker社製
溶媒:重ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)
内部標準物質:テトラメチルシラン(TMS)
試料管:5mm
1H-NMR・・・共鳴周波数:500.1MHz、積算回数4回
13C-NMR・・・共鳴周波数:125.8MHz、積算回数23回
なお、測定試料は、30mgの試料を0.8mlの溶媒で希釈して調製した。
【0050】
(3)誘導結合プラズマ分析(ICP分析)
ICP装置:商品名「iCAP 6500Duo」Thermo Fisher SCIENTIFIC社製、
スプレイチャンバ:サイクロン噴霧器
プラズマ条件:プラズマ/補助/キャリアー=15/1.0/0.6
プラズマ観測方向:アキシャル方向3回
なお、測定はマイクロウェーブ分解法による前処理を行い測定用試料とした。
マイクロウェーブ装置:Anton Paar社製Multiwave PRO
分解条件:試料 約0.05gと硝酸(特級)6mLを分解後、蒸留水で希釈して調製した。
【0051】
[ポリオレフィン系樹脂成形体の評価方法]
(4)結晶化温度
示差走査熱量分析装置(パーキンエルマー社製、DSC8500)を用い、JISK7121(1987)に従って測定した。評価用試料には、各実施例・比較例のポリオレフィン樹脂組成物約6mgを使用した。その試料を装置にセットし、200℃で3分間保持した後、10℃/分の冷却速度で冷却し、吸熱ピークの頂点を結晶化温度(℃)とした。
【0052】
(5)半結晶化時間(T1/2)
示差走査熱量分析装置(同社製)を用い、JISK7121(1987)に従って測定した。評価用試料には、各実施例・比較例のポリオレフィン樹脂組成物約6mgを使用した。その試料を装置にセットし、200℃で3分間保持した後、750℃/分の冷却速度で140℃まで冷却し、その温度において等温結晶化を行った。等温結晶化工程開始から、時間と熱量との関係図において認められる結晶化に基づく発熱ピークの面積の 1/2 に到達するまでの所要時間を半結晶化時間(T1/2、秒)とした。
【0053】
(6)曇り度(ヘイズ値)
日本電色工業(株)のヘイズメータ(NDH 7000)を用いて、JISK7136(2000)に準じた方法でヘイズ値(%)を測定した。評価試料には、0.5mm厚み射出成形品のオレフィン系樹脂成形体を使用した。得られたヘイズ値の数値が小さい程、透明性に優れていることを示す。
【0054】
(7)曲げ弾性率及び 応力
万能材料試験機(インストロン社製)を用い、JISK7171(2016)に準じた方法で曲げ弾性率及び 応力を測定した。なお、試験温度は25℃、試験速度は10mm/分とした。
【0055】
[製造例1]
攪拌装置と温度計を備えた4つ口フラスコに、市販の5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製、試薬)64g(0.39モル)と、水300ml、水酸化ナトリウム32g(0.8モル)を仕込み、室温下で反応系が均一になるまで攪拌した(攪拌中、僅かに発熱)。得られた均一溶液をアセトン(6L)中へ注ぎ、析出した白色固体を濾別後、140℃で減圧乾燥して、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の二ナトリウム塩66g(化合物1)を得た。IR分析、ICP分析より、得られた化合物1の構造が目的の化合物の構造であることを確認した。
【0056】
[製造例2]
攪拌装置と温度計を備えた4つ口フラスコに、市販の5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製、試薬)64g(0.39モル)と、水300ml、水酸化リチウム19.2g(0.8モル)を仕込み、室温下で反応系が均一になるまで攪拌した(攪拌中、僅かに発熱)。得られた均一溶液をアセトン(6L)中へ注ぎ、析出した白色固体を濾別後、140℃で減圧乾燥して、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の二リチウム塩60g(化合物2)を得た。IR分析、ICP分析より、得られた化合物2の構造が目的の化合物の構造であることを確認した。
【0057】
[製造例3]
攪拌装置と温度計を備えた4つ口フラスコに、水500mlと水酸化カルシウム61g(0.81モル)を仕込み、室温下で攪拌してスラリー化した。得られたスラリーに市販の5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製、試薬)133g(0.81モル)を加えて、50℃に加熱して、5時間攪拌し、反応を行った。反応終了後、スラリーを濾別し、更に十分な量の水で洗浄後、140℃で一晩減圧乾燥して、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸のカルシウム塩(化合物3)168gを得た。IR分析、ICP分析より、得られた化合物3の構造が目的の化合物の構造であることを確認した。
【0058】
[製造例4]
攪拌装置と温度計を備えた4つ口フラスコに、水500mlと酸化亜鉛66g(0.81モル)を仕込み、室温下で攪拌してスラリー化した。得られたスラリーに市販の5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製、試薬)133g(0.81モル)を加えて、50℃に加熱して、5時間攪拌し、反応を行った。反応終了後、スラリーを濾別し、更に十分な量の水で洗浄後、140℃で一晩減圧乾燥して、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の亜鉛塩(化合物4)160gを得た。IR分析、ICP分析より、得られた化合物の構造が目的の化合物4の構造であることを確認した。
【0059】
[製造例5]
攪拌装置と温度計を備えた4つ口フラスコに、水500mlと水酸化アルミニウム30.4g(0.39モル)を仕込み、室温下で攪拌してスラリー化した。5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製、試薬)64g(0.39モル)を加えて、50℃に加熱して、5時間攪拌し、反応を行った。反応終了後、スラリーを濾別し、更に十分な量の水で洗浄後、140℃で一晩減圧乾燥して、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩(化合物5)70gを得た。IR分析、ICP分析より、得られた化合物5の構造が目的の化合物の構造であることを確認した。
【0060】
[製造例6]
耐圧オートクレーブ中に、市販の5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製、試薬)115g(0.69モル)、ジシクロペンタジエン46g(0.7モル)、トルエン160gを仕込み、撹拌下、190℃まで昇温し、3時間保持した後、反応器を25℃まで冷却した。
次に、上記反応液320gに対して、トルエン645gをガラス容器に仕込み、撹拌下、室温にて、5重量%水酸化ナトリウム水溶液420gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に20分間撹拌した後攪拌を停止し、10分間静置後、水層を除去した。更に、上記水洗操作を3回実施した。上記で得られたトルエン溶液を、ロータリーエバポレーターにてトルエンの存在量が50重量%になるまで濃縮した。
【0061】
続いて、ガラスの撹拌槽に、ヘプタン332gを仕込み、25℃にて上記で得られた濃縮液173gを滴下した。撹拌下、反応器の温度を5℃まで冷却し、更に2時間撹拌下で保持した後、得られたスラリーを濾過後、更に新たなヘプタンで洗浄した。最後に、得られた固体を減圧乾燥させ1,2,3,4,4a,5,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物(白色の固体)66gを得た。
【0062】
続いて、上記で得られた1,2,3,4,4a,5,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物50g、トルエン100gとパラジウム触媒(パラジウム5%/アルミナ95%)0.5gを耐圧オートクレーブ中に仕込み、水素圧1MPa、温度80℃で、攪拌下に4時間水素化反応した。反応終了後、反応物を遠心分離法で触媒と分離して、トルエン溶液150gを得た。ロータリーエバポレーターにてトルエンを濃縮し、白色の固体32gを得た。IR分析及びNMR分析により、得られた白色固体が1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物であることを確認した。
【0063】
続いて、攪拌装置と温度計を備えた4つ口フラスコに、上記で得られた1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物11.6g(0.05モル)と、水50ml、水酸化ナトリウム4g(0.1モル)を仕込み、室温下で反応系が均一になるまで攪拌した(攪拌中、僅かに発熱)。得られた均一溶液をアセトン(6L)中へ注ぎ、析出した白色固体を濾別後、140℃で減圧乾燥して、1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸の二ナトリウム塩12g(化合物6)を得た。IR分析、ICP分析より、得られた化合物6の構造が目的の化合物の構造であることを確認した。
【0064】
[製造例7]
攪拌装置と温度計を備えた4つ口フラスコに、水50mlと水酸化カルシウム3.8g(0.05モル)を仕込み、室温下で攪拌してスラリー化した。得られたスラリーに製造例6で得られた1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物11.6g(0.05モル)を加えて、50℃に加熱して、5時間攪拌し、反応を行った。反応終了後、スラリーを濾別し、更に十分な量の水で洗浄後、140℃で一晩減圧乾燥して、1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物のカルシウム塩(化合物7)10gを得た。IR分析、ICP分析より、得られた化合物7の構造が目的の化合物の構造であることを確認した。
【0065】
[製造例8]
攪拌装置と温度計を備えた4つ口フラスコに、水500mlと水酸化カルシウム61g(0.81モル)を仕込み、室温下で攪拌してスラリー化した。得られたスラリーにシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(新日本理化(株)製、リカシッドHH)125g(0.81モル)を加えて、50℃に加熱して、5時間攪拌し、反応を行った。反応終了後、スラリーを濾別し、更に十分な量の水で洗浄後、140℃で一晩減圧乾燥して、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸のカルシウム塩(化合物8)168gを得た。IR分析、ICP分析より、得られた化合物8の構造が目的の化合物の構造であることを確認した。
【0066】
[実施例1]
ポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレンホモポリマー(MFR=9g/10分(荷重2160g、温度230℃))100質量部、結晶化促進剤として上記製造例1で得られた5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の二ナトリウム塩(化合物1)0.2質量部、及びその他の添加剤としてテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン(株)製、商品名「IRGANOX1010」)0.05質量部、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン(株)製、商品名「IRGAFOS168」)0.05質量部をドライブレンドした。そのドライブレンド物を二軸押出機((株)テクノベル社製 L/D=45、スクリュー径15mm、ダイス径5mm)を用いてバレル温度200℃にて溶融混合後、押し出されたストランドを冷却し、ペレタイザーでカッティングして、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0067】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、射出成形機(日精樹脂工業(株)製NS40-5A)にて射出成形温度(加熱温度)200℃、金型温度(冷却温度)40℃の条件下で成形して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0068】
[実施例2]
化合物1の代わりに製造例2で得られた5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の二リチウム塩(化合物2)を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0069】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0070】
[実施例3]
化合物1の代わりに製造例3で得られた5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸のカルシウム塩(化合物3)を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0071】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0072】
[実施例4]
化合物1の代わりに製造例4で得られた5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の亜鉛塩(化合物4)を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表1示した。
【0073】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0074】
[実施例5]
化合物1の代わりに製造例5で得られた5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩(化合物5)を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0075】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0076】
[実施例6]
化合物1の代わりに製造例6で得られた1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸の二ナトリウム塩(化合物6)を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0077】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0078】
[実施例7]
化合物1の代わりに製造例7で得られた1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸のカルシウム塩(化合物7)を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0079】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0080】
【0081】
[比較例1]
化合物1の代わりに製造例8で得られたシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸のカルシウム塩(化合物8)を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0082】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0083】
[比較例2]
化合物1の代わりに市販の2,2‘-メチレンビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩((株)ADEKA製、アデカスタブ NA-11、以下NA-11と略記する)を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0084】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0085】
[比較例3]
化合物1の代わりに市販のp-tert-ブチル安息香酸のヒドロキシアルミニウム塩(以下AL-PTBBAと略記する)を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0086】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0087】
[比較例4]
化合物1の代わりに市販の安息香酸のナトリウム塩(以下BA-Naと略記する)を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0088】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0089】
[比較例5]
結晶化促進剤を配合しないで、実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0090】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0091】
【0092】
[実施例8]
ポリオレフィン系樹脂としてリニア低密度ポリエチレン(MFR=20g/10分(荷重2160g、温度190℃))100重量部、結晶化促進剤として上記製造例1で得られた5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の二ナトリウム塩(化合物1)0.2重量部、及びその他の添加剤としてテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン(株)製、商品名「IRGANOX1010」)0.05重量部、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン(株)製、商品名「IRGAFOS168」)0.05重量部をドライブレンドした。そのドライブレンド物を二軸押出機((株)テクノベル社製 L/D=45、スクリュー径15mm、ダイス径5mm)を用いてバレル温度200℃にて溶融混合後、押し出されたストランドを冷却し、ペレタイザーでカッティングして、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度を測定し、得られた結果を表3に示した。
【0093】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製NS40-5A)にて射出成形温度(加熱温度)200℃、金型温度(冷却温度)40℃の条件下で成形して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片のヘイズ値を測定し、得られた結果を表3に示した。
【0094】
[実施例9]
化合物1の変わりに製造例2で得られた5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸の二リチウム塩(化合物2)を用いた以外は、実施例8と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度を測定し、得られた結果を表3に示した。
【0095】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例8と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片のヘイズ値を測定し、得られた結果を表3に示した。
【0096】
[実施例10]
化合物1の代わりに製造例6で得られた1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸の二ナトリウム塩(化合物6)を用いた以外は、実施例8と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
【0097】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例8と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片のヘイズ値を測定し、得られた結果を表3に示した。
【0098】
[比較例6]
化合物1の代わりにNA-11を用いた以外は、実施例8と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度を測定し、得られた結果を表3に示した。
【0099】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例8と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片のヘイズ値を測定し、得られた結果を表3に示した。
【0100】
[比較例7]
結晶化促進剤を配合しないで、実施例8と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度を測定し、得られた結果を表3に示した。
【0101】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例8と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片のヘイズ値を測定し、得られた結果を表3に示した。
【0102】
【0103】
表1の実施例1~7と表2の比較例5の結晶化温度及び半結晶化時間の比較より、本発明の結晶化促進剤が非常に優れた結晶化促進効果を有することがわかる。また、ヘイズ値及び曲げ弾性率の比較より、本発明の結晶化促進剤が、結晶化が促進すると同時に、透明性や剛性の改善にも非常に効果があることがわかる。また、表2の比較例2~4の従来公知の結晶化促進剤と比べても、その効果が非常に優れていることが明確に示されている。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の結晶化促進剤は、ポリオレフィン系樹脂に配合することによりポリオレフィン系樹脂の結晶化速度、即ち結晶化温度を著しく向上することが可能であり、例えば、大型部材等における成形サイクルが約半分に短縮され、その結果、コストダウンや加工時のトラブル防止等に大きく貢献することができる。また、本発明の結晶化促進剤は、結晶性を改善することが可能であり、その結果、得られた成形品の剛性等の機械的性能、透明性等の光学的性能、耐熱性等の熱的性能が向上するだけでなく、ひけやそりが少なくなり、複雑な形状の成形品も安定して製造可能となる。更に、タルク等の充填剤との併用系でも、優れた効果を示すことが可能であり、剛性や強度等の要求される用途でも有効に使用することが可能である。従って、本発明の結晶化促進剤は、上記の様な特徴を活かして、自動車部材、電気部材、機械部品、日用雑貨、衣装等のケース、食品等の容器など、様々な用途で広く使うことができる。