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  • 特許-熱間プレス成形用めっき鋼板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】熱間プレス成形用めっき鋼板
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/48 20060101AFI20231018BHJP
   C22C 18/00 20060101ALI20231018BHJP
   C25D 5/26 20060101ALI20231018BHJP
   C21D 9/00 20060101ALN20231018BHJP
   C21D 1/18 20060101ALN20231018BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
C25D5/48
C22C18/00
C25D5/26 N
C21D9/00 A
C21D1/18 C
C22C38/00 301T
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019192104
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2021066919
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】河村 保明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 武寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 亜暢
(72)【発明者】
【氏名】前田 大介
(72)【発明者】
【氏名】戸田 由梨
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-007266(JP,A)
【文献】特開平11-350186(JP,A)
【文献】特開2016-089274(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125740(WO,A1)
【文献】特開平09-324280(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0144600(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00-7/12
C25D 1/00-3/66
C21D 1/18
C21D 9/00
C22C 18/00
C22C 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板と、前記鋼板の片面又は両面に設けられ、Niを含有する亜鉛めっき層と、を有し、
前記亜鉛めっき層は、走査型電子顕微鏡により観察したときに、観察像に見られるクラックで囲まれる領域数が、5000個/mm以上30000個/mm以下であり、
前記亜鉛めっき層の平均Ni濃度が、質量%で9~18%であり
前記めっき層のNi濃度が下記式(1)の関係を満たす熱間プレス成形用めっき鋼板。
式(1):[Ni]>[Ni]
(式(1)中、[Ni]は、亜鉛めっき層の深さ方向の中心から、亜鉛めっき層及び鋼板の界面までの領域におけるNi濃度の平均値を示す。[Ni]は、亜鉛めっき層の深さ方向の中心から、亜鉛めっき層の表面までの領域におけるNi濃度の平均値を示す。)
【請求項2】
前記亜鉛めっき層の付着量が、鋼板片面あたりで5~100g/mである請求項1又は請求項に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板。
【請求項3】
前記亜鉛めっき層のNi濃度が下記式(2)の関係を満たす請求項1又は請求項2に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板。
式(2):3×[Ni]>[Ni]>1.2×[Ni]
(式(2)中、[Ni]は、亜鉛めっき層の深さ方向の中心から、亜鉛めっき層及び鋼板の界面までの領域におけるNi濃度の平均値を示す。[Ni]は、めっき層の深さ方向の中心から、亜鉛めっき層の表面までの領域におけるNi濃度の平均値を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,熱間プレス成形用めっき鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境の保護と地球温暖化の防止のために、化石燃料の消費を抑制する要請が高まっている。かかる要請は、様々な製造業に対して影響を与えている。例えば、移動手段として日々の生活や活動に欠かせない自動車についても例外ではなく、車体の軽量化などによる燃費の向上等が求められている。しかしながら、自動車では、単に車体の軽量化を実現することは製品機能上許されず、適切な安全性を確保する必要がある。
【0003】
自動車の構造の多くは、鉄系材料、特に鋼板により形成されている。かかる鋼板の重量を低減することが、車体の軽量化にとって重要である。しかしながら、上述の通り、単に鋼板の重量を低減することは許されず、鋼板の機械的強度を確保することが同時に求められる。このような鋼板に対する要請は、自動車製造業のみならず、様々な製造業でも同様になされている。よって、鋼板の機械的強度を高めることにより、従来使用されていた鋼板より薄肉化しても機械的強度を維持又は向上させることが可能な鋼板について、研究開発が行われている。
【0004】
一般的に、高い機械的強度を有する材料は、曲げ加工等の成形加工において、形状凍結性が低下する傾向にあり、複雑な形状に成形加工することが困難となる。かかる成形性についての問題を解決する手段の一つとして、いわゆる「熱間プレス法(ホットスタンプ法、ホットプレス法、又は、ダイクエンチ法とも呼ばれる。)」が挙げられる。
【0005】
熱間プレス法では、成形対象である鋼板を一旦高温に加熱して、加熱により軟化した鋼板にプレス加工を行って成形した後、冷却する。かかる熱間プレス法によれば、鋼板を一旦高温に加熱して軟化させるため、対象とする鋼板を容易にプレス加工することが出来る。更に、成形後の冷却による焼入れ効果により、鋼板の機械的強度を高めることが出来る。従って、熱間プレス法により、良好な形状凍結性と高い機械的強度とを両立した成形品を得ることができる。
【0006】
しかしながら、かかる熱間プレス法を鋼板に適用すると、鋼板が800℃以上の高温に加熱されることで鋼板の表面が酸化して、スケール(化合物)が生成される。従って、熱間プレス加工を行った後に、かかるスケールを除去する工程(いわゆる、デスケーリング工程)が必要となり、生産性が低下する。また、耐食性を必要とする部材等では、加工後に部材表面へ防錆処理や金属被覆をする必要があり、表面清浄化工程及び表面処理工程が必要となって、更に生産性が低下する。更に、鋼板のみでは、例え熱間プレス加工後に塗装を施しても耐食性が劣る課題がある。
【0007】
例えば、特許文献1には亜鉛系めっき鋼板を用いた技術、特許文献2にはAl,Feを主成分とする金属間化合物層を有するアルミめっき鋼板を用いた技術、特許文献3には10~25質量%のNiを含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなるめっき層を有する鋼板を用いた技術、特許文献4には融点が800℃以上であるめっき層が開示されており、いずれも前述のスケールの形成を抑制し、さらには耐食性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-73774号公報
【文献】特開2003-49256号公報
【文献】WO2012/070482号公報
【文献】WO2012/121399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の技術では、ホットスタンプ後にZnが鋼板表層に残存するため、高い犠牲防食作用が期待できる。しかしながら、Znが溶融した状態で鋼板が加工されるため、溶融Znが鋼板に侵入し、鋼板内部に割れが生ずるおそれがある。この割れは、液体金属脆化割れ(Liquid MetalEmbrittlement、以下「LME」ともいう。)と呼ばれる。そして、LMEに起因して、成形体の疲労特性が劣化する。 特許文献1に記載の技術でLMEの発生を回避するために、鋼板加工時の加熱条件を適宜制御する必要がある。具体的には、溶融Znのすべてが鋼板中に拡散し、Fe-Zn固溶体となるまで加熱をする方法等が採用されている。しかしながら、これらの方法については、長時間の加熱が必要であり、その結果、生産性が低下するという問題がある。
【0010】
特許文献2の技術では、めっき層にZnよりも融点が高いAlを用いていることから、特許文献1のように溶融金属が鋼板に侵入するおそれは低い。このため、優れた耐LME性を得られ、ひいてはホットスタンプ後の成形体の疲労特性が優れていると予想される。しかしながら、Alめっき層が形成された鋼板には、自動車用部材の塗装前に行われる、りん酸塩処理時に、りん酸塩皮膜を形成し難くなり、塗膜密着性が低下する課題がある。また、AlめっきはZnめっきより鋼板に対する犠牲防触作用がないため、耐食性が劣る。
【0011】
特許文献3の技術では、めっき層に10~25質量%のNiを含むことで、融点が881℃と高いγ相が形成されるので、加熱時におけるスケールやZnOの生成を最小限に抑制することができるため、耐食性を更に高めた技術である。
特許文献4は、めっき層の融点を800℃以上とすることで耐液体金属脆性(耐LME性)を確保する技術であり、融点が800℃以上となるめっき層として、Zn-Niめっき層が例示されている。
【0012】
しかし、特許文献3及び特許文献4の明細書に記載されているように、Zn-Niめっき層は、融点が881℃であるため、融点以上に加熱されて加工される熱間プレスにおいては、めっき層が溶融してしまうためLMEが発生してしまう問題がある。また、たとえ、めっき層の融点未満で熱間プレスした場合でも、熱間プレス装置の温度のばらつきなどにより局所的に温度が融点を超えてしまうとLMEが発生する恐れがある。
【0013】
そこで、本発明の課題は、上記の問題点を解決し、耐LME性、塗装密着性及び塗装後耐食性に優れる熱間プレス成形体の素材として好適な熱間プレス成形用めっき鋼板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための手段は、下記態様を含む。
[1]
鋼板と、前記鋼板の片面又は両面に設けられ、Niを含有する亜鉛めっき層と、を有し、
前記亜鉛めっき層は、走査型電子顕微鏡により観察したときに、観察像に見られるクラックで囲まれる領域数が、5000個/mm以上30000個/mm以下であり、
前記めっき層のNi濃度が下記式(1)の関係を満たす熱間プレス成形用めっき鋼板。
式(1):[Ni]>[Ni]
(式(1)中、[Ni]は、亜鉛めっき層の深さ方向の中心から、亜鉛めっき層及び鋼板の界面までの領域におけるNi濃度の平均値を示す。[Ni]は、亜鉛めっき層の深さ方向の中心から、亜鉛めっき層の表面までの領域におけるNi濃度の平均値を示す。)
[2]
前記亜鉛めっき層の平均Ni濃度が、質量%で9~26%である[1]に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板。
[3]
前記亜鉛めっき層の付着量が、鋼板片面あたりで5~100g/mである[1]又は[2]に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板。
[4]
前記亜鉛めっき層のNi濃度が下記式(2)の関係を満たす[1]~[3]のいずれか1項に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板。
式(2):3×[Ni]>[Ni]>1.2×[Ni]
(式(2)中、[Ni]は、亜鉛めっき層の深さ方向の中心から、亜鉛めっき層及び鋼板の界面までの領域におけるNi濃度の平均値を示す。[Ni]は、めっき層の深さ方向の中心から、亜鉛めっき層の表面までの領域におけるNi濃度の平均値を示す。)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐LME性、塗装密着性及び塗装後耐食性に優れる熱間プレス成形体の素材として好適な熱間プレス成形用めっき鋼板が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の熱間プレス成形用めっき鋼板のめっき層における「クラックに囲まれた領域の個数(クラック個数)」の計測方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一例である好適な実施の形態について詳細に説明する。
なお、本明細書において、化学組成の各元素の含有量の「%」表示は、「質量%」を意味する。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
「めっき層の表面」とは、めっき層厚み方向で鋼板側とは反対側の表面を示す。
【0018】
本発明の熱間プレス成形用めっき鋼板(以下、「めっき鋼板」とも称する)、鋼板の片面又は両面に設けられ、Niを含有する亜鉛めっき層(以下「めっき層」とも称する)と、を有する。
亜鉛めっき層は、走査型電子顕微鏡により観察したときに、観察像に見られるクラックで囲まれる領域数が、5000個/mm以上30000個/mm以下である。
そして、亜鉛めっき層のNi濃度が下記式(1)の関係を満たす。
式(1):[Ni]>[Ni]
式(1)中、[Ni](以下「界面Ni濃度[Ni]」とも表記する)は、亜鉛めっき層の深さ方向の中心から、亜鉛めっき層及び鋼板の界面までの領域におけるNi濃度の平均値を示す。
[Ni](以下「表面Ni濃度[Ni]」とも表記する)は、亜鉛めっき層の深さ方向の中心から、めっき層の表面までの領域におけるNi濃度の平均値を示す。
【0019】
本発明のめっき鋼板は、上記構成により、耐LME性、塗装密着性及び塗装後耐食性に優れる熱間プレス成形体の素材として好適な熱間プレス成形用めっき鋼板となる。
そして、本発明のめっき鋼板は、次の知見により見出された。
【0020】
まず、発明者らは、鋭意検討したところ、融点の高い、Niを含有する亜鉛めっき層にクラックを予め設けることで、クラックを設けていないものと比べて、LMEが抑制されることを知見した。この機構については詳しくは解明されていないが、熱間プレス前に設けためっき層のクラックの一部は、鋼板の粒界に沿った形で配置される。そのため、熱間プレスの加熱により、めっき層表面及びクラック内部にZnOが生成されたとき、鋼板の粒界上にもZnOが生成する。その結果、鋼板の粒界がZnOで蓋をされる形になり、鋼板の粒界内部への液体Znの侵入を抑制する。
【0021】
また、めっき層中のNi濃度は、高い方がめっき層の融点が高くなる。しかし、めっき層中のNi濃度を過度に高めると、犠牲防食性が低下する。そこで、めっき層のNi濃度を式(1)の関係とすること、つまり、めっき層と鋼板との界面側のめっき層のNi濃度(界面Ni濃度[Ni])を、めっき層の表面側のNi濃度(表面Ni濃度[Ni]s)よりも、高くする。そうすると、めっき層全体のNi濃度は抑えつつ、めっき層下層の融点を高められる。めっき層と鋼板との界面側のめっき層の融点を高めることで、熱間プレス初期に、鋼板との界面付近のめっき層は、溶融及び酸化しにくい状態が保たれる。その結果、めっき層下層におけるZnの溶融を抑え、鋼板の粒界内部への液体Znの侵入を抑制する。
一方で、表面付近のめっき層のNi濃度を低くすることで、めっき層の表層の融点を比較的低くして、めっき層の表層を優先的に酸化させる。つまり、めっき層の表層において、亜鉛酸化物であるZnOを選択的に生成させる。このZnOの生成により、めっき層のクラックを通してクラック部の底に存在する鋼板の粒界がZnOで蓋をされやすくなる。
【0022】
それらにより、耐LME性が向上するものと考えられる。
【0023】
加えて、クラックからZnOが生成することで、熱間プレス後にめっき層に表面凹凸が付与(具体的にはクラック部が凸となる表面凹凸)され、凹凸の付与により電着塗装後の塗装密着性も向上すると考える。そして、塗装密着性が向上するため、腐食による塗装膨れが抑制され、塗装後耐食性も向上すると考えられる。
【0024】
以上の知見から、本発明のめっき鋼板は、耐LME性、塗装密着性及び塗装後耐食性に優れる熱間プレス成形体の素材として好適な熱間プレス成形用めっき鋼板となることが見出された。
【0025】
以下、本発明のめっき鋼板の詳細について説明する。
【0026】
(1)鋼板(以下、「素地鋼板」」とも称する。)
亜鉛めっき層が形成される素地鋼板は、特に限定されるものではなく、公知の特性や化学組成を有する各種の鋼板を使用することが可能である。
素地鋼板の化学組成は、特に限定されるものではないが、焼き入れによって高強度を得られる化学組成であることが好ましい。
例えば、引張強度が980MPa以上の熱間プレス成形体を得ようとする場合には、素地鋼板として、質量%で、C:0.05~0.4%、Si:0.5%以下、Mn:0.5~2.5%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.1%以下、N:0.01%以下、B:0~0.005%、Ti:0~0.1%、Cr:0~0.5%、Nb:0~0.1%、Ni:0~1.0%、及び、Mo:0~0.5%を含有し、残部は、Fe及び不純物からなる化学組成を有する焼入用鋼板が例示される。
なお、焼入れ時に強度が980MPa未満となる比較的低強度の熱間プレス成形体を得ようとする場合には、素地鋼板の化学組成は、上述の範囲でなくともよい。
【0027】
素地鋼板において、上述の焼入れ時の焼き入れ性の観点、及び加熱後の酸化亜鉛層中にMn酸化物及びCr酸化物を形成する観点から、Mn含有量及びCr含有量の合計量Mn+Crは、0.5~3.0%であることが好ましく、0.7~2.5%であることがより好ましい。
【0028】
(2)亜鉛めっき層
-クラックで囲まれる領域数-
亜鉛めっき層において、走査型電子顕微鏡により観察したときに、観察像に見られるクラックで囲まれる領域数を、5000個/mm以上30000個/mm以下とする。
【0029】
クラックで囲まれる領域数が5000個/mm未満では、耐LME性、塗装密着性及び塗装後耐食性が劣る。一方、クラックで囲まれる領域数は、多い方が好適であるが、30000個/mm以上では、耐LME性や塗装密着性に対する向上効果が飽和する、また、クラックで囲まれる領域数が多すぎると、めっき層が素地鋼板から脱離するなどの不具合が発生する恐れがある。
よって、クラックで囲まれる領域数は、上記範囲とする。耐LME性、塗装密着性及び塗装後耐食性の向上の観点から、クラックで囲まれる領域数は、10000個/mm以上30000個/mm以下が好ましく、10000個/mm以上25000個/mm以下がより好ましい。
【0030】
「クラックで囲まれる領域数」は、めっき層の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察可能で、めっき層の表面の観察像に見られるクラックで囲まれる領域数であって、単位面積(1mm)当たりのその領域の個数である。
ここで、「クラックに囲まれた領域」とは、SEMによる観察像において見られる、クラックにより島状に区画された領域である。
【0031】
具体的には、次のようにして「クラックで囲まれる領域の個数」を求める。
めっき層の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察する。SEMの種類、加速電圧などは特に限定されないが、FE-SEMなどのような高解像度を実現しうる顕微鏡を用いることが好ましい。SEMにより、めっき層の表面を観察し、クラックにより囲まれた領域の個数を計測する。
このときの視野は、特に限定されないが、過度に広い場合、つまり低倍率の場合には、解像度が低くなるため領域数が低めに計測される傾向があり、過度に狭い場合、つまり高倍率の場合には、解像度は高いものの測定点ごとのばらつきが大きくなり、領域数の信頼性が低下する傾向がある。
したがって、次の方法により計測することが好ましい。すなわち、サンプルのめっき層表面における任意の場所30点について、倍率を1000倍として表面観察を行う。得られた30枚の観察像について任意に設定した0.1mm×0.05mmの範囲(計測範囲)の視野中にあるクラックに囲まれた領域の個数(クラック個数)を計測する。計測方法は特に限定されず、適切な画像解析手段を用いればよい。30枚の観察像から求めたクラック個数の平均値を算出し、これを200倍した値を「クラックで囲まれる領域数」(1mm当たりのクラック領域の個数)とする。
【0032】
具体的な、「クラックに囲まれた領域の個数(クラック個数)」の計測は、次の通り行う。
図1(a)は、クラックを有するめっき鋼板のめっき層表面の観察像(SEM像)の一例である。この観察像(SEM像)で、0.1mm×0.05mmの範囲(計測範囲)に、クラックに囲まれた領域(以下「クラック領域」とも称する)の全体が入っている場合には、図1(b)のように、そのクラック領域を囲むクラックを実線で表す。一方、計測範囲にクラック領域の一部が入っている場合には、そのクラック領域を囲むクラックのうち、計測範囲外へと延びるものおよび計測範囲外にあるものを、図1(b)のように点線で囲む。こうして計測範囲内に少なくとも一部が含まれるクラック領域を特定したのち、実線のみで囲まれているクラック領域、すなわち全体が計測範囲に含まれるクラック領域の個数(第1のクラック個数)および一部が点線で囲まれているクラック領域、すなわち一部が計測範囲外にあるクラック領域の個数(第2のクラック個数)を求める。そして、第1のクラック個数+第2のクラック個数/4を、一つの計測範囲における「クラックに囲まれた領域の個数(クラック個数)」とする。
【0033】
めっき層にクラックを設けるためには、例えば、次の方法が挙げられる。
1)酸性の液にめっき鋼板を一定時間浸漬させることで、めっき層にクラックを設ける方法。
酸性の液に浸漬することでめっき層が部分的にエッチングされてクラックが発生する。酸性の液は、めっき層をエッチングできる液であれば、一般に公知の液(例えば、硫酸、塩酸、又は、これらを含む複数種の液等)を用いる。
また、Niを含有する亜鉛めっき層は、電気めっき法により形成することが好適である。そのため、めっき層を形成後のめっき鋼板を、通電せずに単にめっき浴に浸漬することで、めっき層をエッチングさせて、クラックを発生させることもできる。めっき液の種類、濃度、浸漬時間は、特に規定するものではなく、必要に応じて適宜選定し、クラックが本発明の規定に入るように事前に調整した条件とすればよい。
【0034】
2)めっき鋼板を調質圧延することで、めっき層にクラックを設ける方法。
めっき鋼板を調質圧延することでも、めっき層にクラックを発生させることもできる。Niを含有する亜鉛めっき層は、比較的硬いため、調質圧延を施してめっき層を変形させるとクラックが発生する。調質圧延の圧延率、圧下荷重などの条件は、特に規定するものではなく、必要に応じて適宜選定し、クラックが本発明の規定に入るように事前に調整した条件とすればよい。
【0035】
-式(1):[Ni]>[Ni]
めっき層のNi濃度は、式(1):[Ni]>[Ni]を満たす。
界面Ni濃度[Ni]を表面Ni濃度[Ni]よりも高くすることで、耐LME性、塗装密着性及び塗装後耐食性が向上する。界面Ni濃度[Ni]が表面Ni濃度[Ni]よりも低いと、LMEが発生し易くなると共に、塗装密着性及び塗装後耐食性が低下する。
よって、めっき層のNi濃度は、式(1)を満たすこととする。
耐LME性、塗装密着性及び塗装後耐食性の向上の観点、および、界面Ni濃度[Ni]」が表面Ni濃度[Ni]よりも過度に高くなると、塗装後耐食性が低下する傾向がある観点から、めっき層のNi濃度は、(2)を満たすことが好ましい。
式(2):3×[Ni]>[Ni]>1.2×[Ni]
【0036】
界面Ni濃度[Ni]、および表面Ni濃度[Ni]は、高周波グロー放電発光表面分析装置(高周波GDS)で求めることができる。具体的には、次の通りである。
【0037】
めっき鋼板のめっき層の表面から、アルゴンスパッタリングしながら高周波GDSにて、めっき層の深さ方向にZnとNiとFeについて分析を行う。
得られたFeとZnとNiの発光強度から、Fe濃度を[Fe濃度(%)]=[Feの発光強度]/([Feの発光強度]+[Znの発光強度]+[Niの発光強度])より求める。また、ZnとNiの発光強度のみから、Ni濃度を[Ni濃度(%)]=[Niの発光強度]/([Znの発光強度]+[Niの発光強度])により求める。
そして、高周波GDSの測定時間とFe濃度及びNi濃度との関係を表すグラフを得る。
【0038】
次に、測定時間0秒の位置をめっき層表面、Fe濃度が50%となる時間の位置を素地鋼板とめっき層との界面(界面位置時間と称す)と定義する。そして、測定時間0秒から[界面位置時間]/2の時間までのNi濃度を積分したものを「表面Ni濃度[Ni]」、[界面位置時間]/2から[界面位置時間]までのNi濃度を積分したものを「界面Ni濃度[Ni]」と定義して、各Ni濃度を算出する。
【0039】
界面Ni濃度[Ni]、および表面Ni濃度[Ni]を変える方法としては、電気めっき法において、異なる条件で2回以上めっき処理する方法が挙げられる。
具体的には、電気めっき液中のNiイオン濃度を変更することで、Ni濃度が異なるめっき層を得ることができる。そのため、最初に、Niイオン濃度の高いめっき液で電気めっき処理した後に、Niイオン濃度の低いめっき液で電気めっきすることで、Ni濃度が式(1)の関係を満たすめっき層を形成することができる。
電気めっき液の種類および濃度は、特に規定するものではなく、必要に応じて適宜選定し、めっき層のNi濃度が本発明の規定に入るように事前に調整した条件とする。
また、電気めっきの電流密度などの条件によっても、Ni濃度は変化するため、必要に応じて適宜選定し、めっき層のNi濃度が本願発明の規定に入るように事前に調整した条件とする。
【0040】
-めっき層のその他特性-
めっき層の平均Ni濃度は、9~26%が好ましい。めっき層の平均Ni濃度が、9%未満であると耐LME性が低くなる傾向にあり、26%超では、犠牲防食効果の高いZnの量が少なくなるため、塗装後耐食性(具体的に犠牲防食性)が低下する傾向がある。
そのため、めっき層の平均Ni濃度は、上記範囲が好ましい。耐LME性および塗装後耐食性(具体的に犠牲防食性)の向上の観点から、めっき層の平均Ni濃度は、9~18%がより好ましく、9~14%がさらに好ましい。
【0041】
めっき層の平均Ni濃度は、高周波グロー放電発光表面分析装置(高周波GDS)で求めることができる。具体的には、次の通りである。
まず、界面Ni濃度[Ni]、および表面Ni濃度[Ni]の測定と同様に、高周波GDSの測定時間とNi濃度との関係を表すグラフを得る。そして、測定時間0秒から[界面位置時間]までのNi濃度を積分したもの平均Ni濃度と定義して、めっき層の平均Ni濃度を算出する。
【0042】
めっき層の付着量は、素地鋼板片面あたりで5~100g/mが好ましい。めっき層の付着量が、5g/m未満では耐食性に低下する傾向があり、100g/m超では電気めっき法でめっきする際に電流密度を高くなったり浸漬時間が長くなったりして生産性が低下する。
そのため、めっき層の付着量は、上記範囲が好ましい。耐食性および生産性の向上の観点から、めっき層の付着量は、10~40g/mがより好ましい。
【0043】
(3)めっき鋼板の製造方法
本発明のめっき鋼板は、電気めっき法にて製造することが好ましい。電気めっきを利用する場合、具体的なめっき操作としては、ZnイオンおよびNiイオンを含有する電解液中にて、鋼板を負極として対極との間で電解処理を実施する。また、素地鋼板へのめっき層の付着量の制御は、電解液組成や電流密度、電解時間により行う。
なお、めっき層の、「クラックで囲まれる領域数」、界面Ni濃度[Ni]、および表面Ni濃度[Ni]の制御方法については、上述した通りである。
【0044】
(4)熱間プレス成形
本発明のめっき鋼板は、熱間プレス成形に供される。熱間プレス成形は、めっき鋼板を所定の温度まで加熱させた後、プレス成形を行う成形方法である。
【0045】
熱間プレス成形は、緩加熱による熱間プレス成形と、急速加熱による熱間プレス成形という2つの方法があるが、いずれでもよい。めっき鋼板を加熱する加熱方法としては、電気炉、ガス炉、火炎加熱、通電加熱、高周波加熱、誘導加熱等の周知の加熱方法が利用できる。加熱時の雰囲気も、特に制限されるものではない。
熱間プレス成形では、通常、熱間プレス前に、700~1000℃にめっき鋼板を加熱するが、急速冷却後にマルテンサイト単相としたり、マルテンサイトを体積率で90%以上としたりする場合、加熱温度の下限温度は、Ac3点以上とすることが好ましい。
特に、急速冷却後の熱間プレス成形体の組織をマルテンサイト/フェライトの2相域とする場合も、加熱温度としては、上記のように700~1000℃とすることが好ましい。
熱間プレス前のめっき鋼板加熱時の平均昇温速度は、特に規定するものではないが、20℃/秒以上が好ましい。また、板温が最高温度に到達した後の保持時間も特に規定するものではなく、必要に応じて適宜選定することができる。
【0046】
昇温後に加熱炉から取り出されためっき鋼板は、金型を用いてプレスされる。めっき鋼板をプレスする際に、金型によって鋼板が冷却される。金型内には、冷却媒体(例えば水など)が循環しており、金型が鋼板を抜熱して冷却する。以上の工程により、通常加熱により熱間プレス成形体が製造される。
【0047】
本発明のめっき鋼板を熱間プレス成形した熱間プレス成形体は、後処理として、例えば、1)成形体表面を洗浄する脱脂処理、2)りん酸亜鉛処理、一般に金属酸化物処理(金酸処理)とも呼ばれるジルコン処理等の化成処理、3)カチオン電着塗装が順次施される。これら処理を施すと、成形体の耐食性が向上する。
【0048】
脱脂処理は、市販のアルカリ脱脂液を用いることができ、処理条件も処理液メーカーの推奨条件で実施することができる。
りん酸亜鉛処理、ジルコン処理等の化成処理は、自動車用に用いている一般に公知の処理液で実施することができる。化成処理の処理条件も必要に応じて適宜選定することができる。
カチオン電着塗装も、一般に公知のカチオン電着塗装で実施することができる。
【実施例
【0049】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0050】
<素地鋼板>
まず、表1に示す化学組成を有する溶鋼を製造した。その後、製造したそれぞれの溶鋼を用いて、連続鋳造法によりスラブを製造した。得られたスラブを熱間圧延し、熱延鋼板を製造した。続いて、熱延鋼板を酸洗した後、冷間圧延を実施して、冷延鋼板を製造し、表1に記載の化学組成を有する鋼#1~#8の鋼板を作製した。表1に示すとおり、各鋼種の鋼板の板厚は、いずれも1.6mmとなるように製造した。
【0051】
<めっき層の形成>
硫酸水溶液に金属亜鉛を亜鉛イオンとして65g/L溶解し、更に金属亜鉛を溶解した溶液に対して炭酸ニッケルをニッケルイオンとして40g/L添加し、更に硫酸又は炭酸ナトリウムでpH調整して、pH1.5のめっき浴を作製した。なお、めっき浴中の亜鉛イオン量とニッケルイオン量は誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MAS)にて分析して、必要に応じて金属亜鉛添加量及び炭酸ニッケル添加量を調整して、求める濃度のめっき浴を作製した。
鋼#1~#8の鋼板に対して、作製しためっき浴を温度50℃で電流密度を5~100A/dmと変化させて電気めっきを行った。電気めっきは必要に応じて2種のめっき浴を用いて2段階でめっきした。更に、必要に応じて、電気めっき完了後に通電していない、めっき浴にめっき鋼板を浸漬させることで、めっき層の表面にクラックを発生させた。なお、無通電のめっき浴浸漬に使用するめっき浴の組成は、2段目めっきで使用するめっき浴と同じ組成とした。
具体的には、表2の条件に従って、鋼板にめっき層を形成した。
【0052】
<評価>
(各種測定)
各種測定について以下に記す。また、測定の結果については表3に記載した。
-クラックで囲まれる領域数-
作製しためっき鋼板のめっき層における「クラックで囲まれる領域数」を走査型電気顕微鏡にて測定した。具体的には、(株)日立ハイテクサイエンスシステムズ社製S-3400N型走査電子顕微鏡で、加速電圧25.0kVのSEM像にてクラックを観察し、既述の方法に従って、「クラックで囲まれる領域数」を測定した。
測定した「クラックで囲まれる領域数」については「500以下」については「500以下」、500を超えるものについては100刻みの範囲で記載した。
【0053】
-めっき層の、各種Ni濃度-
既述の方法に従って、堀場製作所社製の高周波GDS「GD-Profiler2」にて、作製しためっき鋼板のめっき層の、平均Ni濃度、界面Ni濃度[Ni]、表面Ni濃度[Ni]を測定した。
【0054】
(耐LME性評価)
作製しためっき鋼板に対して、炉加熱方式にて熱間プレス加熱を行い、熱間プレスを実施した。炉加熱では、炉内雰囲気を910℃、空燃比を1.1とし、鋼板温度が900℃に到達後、めっき鋼板を速やかに炉内から取り出した。そして、熱間プレス加熱後、鋼板温度が650℃になるまで、めっき鋼板を冷却した。冷却後、直ちに3種類のハンドプレス機を用いて、めっき鋼板に対して熱間V曲げ加工を行い成形体とした。
なお、金型の形状は、V曲げ加工による曲げ半径の外側部分が曲げ加工終了時に、それぞれ10%、15%および20%伸ばされるような形状とした。
【0055】
その後、成形体のV曲げ加工部位の厚さ方向断面について、SEMおよび反射電子検出器を用いて反射電子像を観察することにより、LMEの発生の有無を観察した。
そして、素地鋼板(Fe濃度が98%以上の箇所)にまで割れが進展している場合をLME発生とした。
熱間V曲げ試験による耐LME性の評価においては、20%伸びで割れがなかったものを「A(○)」、20%伸びでは割れが発生したものの、15%伸びでは割れがなかったものを「A(○△)」、15%伸びでは割れが発生したものの、10%伸びでは割れがなかったものを「B(△)」、10%伸びで割れが発生したものを「C(×)」と評価した。
【0056】
(塗装密着性及び塗装後耐食性評価)
1)熱間プレス成形体の作製
作製しためっき鋼板に対して、炉加熱方式にて熱間プレス加熱を行い、熱間プレスを実施した。炉加熱では、炉内雰囲気を910℃、空燃比を1.1とし、鋼板温度が900℃に到達後、めっき鋼板を速やかに炉内から取り出した。熱間プレス加熱後、鋼板温度が650℃になるまで冷却した。冷却後、水冷ジャケットを備えた平板金型を利用して、めっき鋼板を挟み込んで、熱間プレスし、熱間プレス成形体を製造した。熱間プレス時冷却速度が遅い部分でも、マルテンサイト変態開始点である360℃程度まで、50℃/秒以上の冷却速度となるように冷却し、焼入れした。
【0057】
2)化成処理及び電着塗装
-リン酸塩処理-
作製した熱間プレス成形体に対して、日本パーカライジング株式会社製の表面調整処理剤プレパレンX(商品名)を用いて、表面調整を室温で20秒実施した。更に、日本パーカライジング株式会社製のリン酸亜鉛処理液パルボンド3020(商品名)を用いて、リン酸塩処理を実施した。処理液の温度は43℃とし、板状の熱間プレス成形体を処理液に120秒間浸漬後、水洗及び乾燥を行った。
【0058】
-電着塗装-
リン酸塩処理を実施した後、熱間プレス成形体に対して、日本ペイント株式会社製のカチオン型電着塗料を電圧160Vのスロープ通電で電着塗装した。更に、焼き付け温度170℃で20分間焼き付け塗装した。電着塗装後の塗料の膜厚の平均は15μmとした。
【0059】
3)塗装密着性評価
電着塗装した熱間プレス成形体を、50℃の温度を有する5%NaCl水溶液に、500時間浸漬した。浸漬後、試験面60mm×120mmの領域(面積A10=60mm×120mm=7200mm)全面に、ポリエステル製テープを貼り付けた。その後、テープを引きはがした。テープの引きはがしにより剥離した塗膜の面積A2(mm)を求め、式:塗膜剥離率=(A2/A10)×100に基づいて、塗膜剥離率(%)を求めた。
そして、塗膜剥離率が5%未満の場合は「○」、剥離率が5%以上10%未満の場合は「○△」、剥離率が10%超50%未満の場合は「△」、剥離率が50%以上の場合は「×」と評価した。
【0060】
4)塗装後耐食性評価
電着塗装した熱間プレス成形体に対して、素地鋼板にまで到達するようにクロスカットをいれ、日本自動車規格(JASO)に記載のJASO M609に準じたサイクル腐食試験を実施した。試験期間は180サイクルとした。塗装膨れ幅にて耐食性を評価し、180サイクルの複合腐食試験を実施した後の塗装膨れ幅が2.0mm以下のものを「A(○)」、2.0mm超3.0mm以下のものを「A(○△)」、3.0mm超5.0mm以下のものを「B(△)」、5.0mm超のものを「C(×)」と評価した。
【0061】
(熱間プレス成形体の引張強さ評価)
前記「(塗装密着性及び塗装後耐食性評価)の1)」に記載の熱間プレス成形体から、JIS5号試験片を切り出し、常温で引張試験を行うことで熱間プレス成形体の引張強さを評価した。そして引張強度が980MPa以上であったものを「A(○)」、980MPa未満であったものを「B(△)」と評価した。
【0062】
(めっき層形成の生産性評価)
前記「<めっき層の形成>」に記載しためっき層の形成において、1段目めっきのめっき時間と2段目めっきのめっき時間、無通電めっきの浸漬時間の合計時間をめっき層の形成の生産性として評価した。生産性について、合計時間が60秒以下であれば「A(○)」、60秒超120秒以下であれば「B(△)」、120秒超であれば「C(×)と評価した。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
上記結果から、本実施例のめっき鋼板は、比較例のめっき鋼板に比べ、耐LME性、塗装密着性及び塗装後耐食性に優れる熱間プレス成形体が得られることがわかる。
図1