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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】パージバルブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
F02M25/08 301H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020072938
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021169790
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】宇野 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】白井 浩介
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-203396(JP,A)
【文献】特開2019-183742(JP,A)
【文献】特開2019-143564(JP,A)
【文献】特開2017-024180(JP,A)
【文献】特開2016-117184(JP,A)
【文献】特開2007-260957(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110388287(CN,A)
【文献】特開2010-090234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
B23K 26/00
B29C 65/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電時に励磁するコイルと、
このコイルの通電時磁気回路内に配置される磁性材製のステータと、
前記コイルの通電時磁気回路内にこのステータと磁気間隙を介して対向配置されるプランジャと、
このプランジャとともに移動する弁体と、
キャニスタからの蒸発燃料及び空気を流入する流入ポートと、
この流入ポートと連通する弁室と、
この弁室内に配置される円筒状の弁座部材と、
この弁座部材の先端に位置し、前記弁体が当接する弁座と、
前記弁体をこの弁座側に押圧する圧縮バネと、
前記弁座部材の内部に形成される弁座通路と、
円筒形状のレーザー光透過樹脂により形成され、この弁座通路と連通して、蒸発燃料及び空気を吸気通路側に流出する流出ポートと、
円柱形状のレーザー光吸収樹脂により形成され、前記流出ポートの先端部側に配置され、内部に整流通路を有する整流器とを備え、
前記弁座通路は、前記弁座の位置で通路断面積を最小として絞り部を形成し、この絞り部から前記流出ポートに向けて通路断面積を順次増加し、
前記流出ポートは、前記弁座通路の通路断面積が最大となった位置で連通して、その通路断面積が前記弁座通路の最大通路断面積と同一であり、
前記整流通路の断面は、その通路断面積の合計が前記流出ポートの通路断面積より小さく、
前記整流器の外周面には、その一端に挿入用テーパ部を有し、他端に前記流出ポートの前記先端部と当接するフランジ部を有し、中間部分に溶着用テーパ部を有し、
前記整流器が前記流出ポートに配置された状態で、前記整流器と前記流出ポートとは前記整流器の前記溶着用テーパ部の部位で結合している
パージバルブの製造方法であって、
前記整流器は、前記挿入用テーパ部を外周面より突出形成し、前記フランジ部を外周面より突出形成し、前記溶着用テーパ部を外周面より突出形成し、
前記整流器は前記流出ポートの先端部から挿入され、
前記整流器が前記流出ポートに挿入された状態で、前記整流器の前記溶着用テーパ部及び前記流出ポートの前記溶着用テーパ部との当接部分がレーザー光溶着される
ことを特徴とするパージバルブの製造方法。
【請求項2】
前記流出ポートの内周には、前記弁座通路と前記整流器の前記一端との間に通路断面積が一定の整流用空間が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のパージバルブの製造方法
【請求項3】
前記弁座通路のうち前記弁座の位置での通路断面積と、前記整流器の通路の通路断面積の合計とは、略同一である
ことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のパージバルブの製造方法
【請求項4】
前記流出ポートの外周に、蒸発燃料及び空気を前記吸気通路側に導くホースが配置され、
前記流出ポートの前記先端部に、このホースの抜け止めを行う係止肩部が形成され、
前記整流器の前記溶着用テーパ部は、この係止肩部を外した個所に位置する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のパージバルブの製造方法
【請求項5】
前記溶着用テーパ部は、前記整流器の外周に周方向に亘って間欠的に突出形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のパージバルブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャニスタと吸気通路の間に介在して、パージ通路を開閉するパージバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パージ通路を流れる蒸発燃料や空気に起因する異音を低減する整流器をパージバルブの出口部に設けることが記載されている。ただ、特許文献1には、パージバルブ内部構造や整流器の取り付け構造に関しての説明はない。
【0003】
一方、パージバルブ内部には入り口ポート、弁室、弁体、弁座通路、出口ポートと流れる流路が形成され、パージバルブ内部の流体流れは複雑である。かつ、整流器を設ける際にも、整流器による異音低減効果を効率的に発揮させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-143564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記点に鑑み、整流器を組み込んだパージバルブの最も望ましい構成を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1は、通電時に励磁するコイルと、磁性材製のステータと、このステータと磁気間隙を介して対向配置されるプランジャと、このプランジャとともに移動する弁体と、この弁体が当接する弁座と、弁体をこの弁座側に押圧する圧縮バネとを備えるパージバルブである。また、本開示の第1のパージバルブは、キャニスタからの蒸発燃料及び空気を流入する流入ポートと、この流入ポートと連通する弁室と、この弁室内に配置される円筒状の弁座部材と、この弁座部材の先端に位置する弁座と、蒸発燃料及び空気を吸気通路側に流出する流出ポートとを有している。
【0007】
特に、本開示の第1のパージバルブは、弁座部材の内部に通路断面積が弁座から順次増加する弁座通路を形成し、この弁座通路の弁座部位置の通路断面積を最小として絞り部を形成している。そして、弁座通路の通路断面積最大部位で連通する流出ポートを設け、この流出ポートは円筒形状のレーザー光透過樹脂により形成している。また、円柱形状のレーザー光吸収樹脂により形成され、内部に整流通路を有する整流器を、流出ポートの先端部から挿入している。そして、整流通路の断面は、その通路断面積の合計が流出ポートの通路断面積より小さい。
【0008】
弁座通路で通路断面積を増加させてから、流出ポートと連通し、その流出ポートに整流器を配置しているので、整流器の整流通路で蒸発燃料及び空気の流れを絞ることができる。そのため、整流器によって、絞り部下流の弁座通路での渦流れの発生を抑制することができ、整流器の異音低減効果を高めることができる。
【0009】
本開示の第1のパージバルブの製造方法は、整流器一端に挿入用のテーパ部を外周面より突出形成し、他端に流出ポートの先端部と当接するフランジ部を外周面より突出形成し、中間部分に溶着用テーパ部を外周面より突出形成している。そして、整流器が流出ポートに挿入された状態で、整流器の溶着用テーパ部と流出ポートの溶着用テーパ部当接部分をレーザー光により溶着している。整流器と流出ポートとの溶着による樹脂変形を、整流器の外周と流出ポートの内周との間の隙間で吸収することができる。特に流出ポートの先端部はフランジ部によって閉じられるので、溶融した樹脂が外部に流れ出ることはない。
【0010】
本開示の第2のパージバルブは、流出ポートの内周であって弁座通路と整流器の一端との間の部位に通路断面積が一定の整流用空間を形成している。そのため、蒸発燃料及び空気が弁座通路から直接整流器の整流用通路に流入することがない。この整流用空間で整流したのちに、蒸発燃料及び空気を整流器の整流用通路に流入させるので、整流器の異音低減効果を高めることができる。また、整流用空間の通路断面積を弁座通路のうち流出ポートと連通する位置での通路断面積と同一にしているので、弁座通路と整流用空間との間での蒸発燃料及び空気の流れをスムーズにすることができる。
【0011】
本開示の第3は、弁座通路のうち絞り部での通路断面積と、整流器の整流用通路の通路断面積の合計とを略同一にしている。整流用通路による蒸発燃料及び空気の流通抵抗増大の影響を抑えつつ、整流用通路による異音低減効果を得ている。
【0012】
本開示の第4は、流出ポートの外周に蒸発燃料及び空気を吸気通路側に導くホースを配置するとともに、流出ポートの先端部にこのホースの抜け止めを行う係止肩部を形成している。そして、整流器の溶着用テーパ部を、この係止肩部を外した個所に位置させている。そのため、レーザー光による溶着が、係止肩部により阻害されることがない。
【0013】
本開示の第5は、パージバルブの製造方法で、溶着用テーパ部を整流器の外周に周方向に亘って間欠的に突出形成している。整流器と流出ポートとの溶着による樹脂変形を、整流器の外周と流出ポートの内周との間の隙間で吸収するに際し、溶着用テーパ部の周囲の全周を利用することができる。かつ、整流器を流出ポートに挿入する際の押圧力が過大とならない
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、パージバルブの利用状態を説明する図である。
図2図2は、パージバルブの断面図である。
図3図3は、図2図示整流器の正面図である。
図4図4は、図3図示整流器の側面図である。
図5図5は、流出ポートとホースとの結合状態を示す断面図である。
図6図6は、レーザ溶着を示す断面図である。
図7図7は、整流器の他の例を示す側面図である。
図8図8は、整流器の更に他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1にパージバルブの利用状態を示す。燃料タンク100で蒸発した炭化水素ガス(以下蒸発燃料)はキャニスタ110に吸着される。キャニスタ110での吸着量が増えてくると、パージバルブ200がパージ通路120を開く。パージ通路120はキャニスタ110とエンジン130のスロットルバルブ135下流の吸気通路140とを連通しているので、パージバルブ200が開かれると蒸発燃料は大気バルブ112から取り入れられた空気とともに吸気通路140に吸入される。なお、137はエアフィルタ、138は吸気マニホールドを示している。また、大気バルブ112は通常は開いている。
【0016】
図2に示すように、パージバルブ200は、樹脂材料製のボビン201の周りに銅製ワイヤが多数回巻装されてコイル202が形成される。コイル202の外周には、磁性材製のヨーク203が配置され、コイル202の内周には同じく磁性材製のステータ204が配置されている。かつ、コイル202の内周には、磁性材製のプランジャ205がステータ204と磁気ギャップを介して対向配置されている。プランジャ205は、圧縮バネ206によってステータ204から離れる方向に付勢されている。また、プランジャ205には、ゴム材料製の弁体207がインサート成形されている。208は圧縮バネ206のガイド部材であり、ステータ204の内周に固定される。
【0017】
ボビン201、コイル202、ヨーク203、ステータ204及びガイド部材208は、全体としてバルブボディ210にインサート成形されている。バルブボディ210はレーザー光を吸収する樹脂材料で、ポリブチルテレフタレートPBTや、ポリアミドPA66などを用いる。バルブボディ210にはコネクタ211が形成され、コイル202と電気接続する一対の端子212がこのコネクタ211に露出している。また、バルブボディ210には、キャニスタ110からの蒸発燃料や空気が流入する流入ポート213が円管状に形成されている。この流入ポート213の外周には、パージ通路120を構成するホースが取り付けられる。
【0018】
220は、整流器ボディで、バルブボディ210とともに弁室221を構成している。整流器ボディ220もポリブチルテレフタレートPBTや、ポリアミドPA66などの樹脂材料製であるが、レーザー光を透過する。
【0019】
整流器ボディ220には、円筒状の弁座部材222が弁室221に向けて形成されている。弁座部材222の先端はテーパ形状の弁座223を形成している。上述の弁体207は、プランジャ205を介して圧縮バネ206によって弁座223に押し付けられている。弁体207はゴム材料でできており弁座223はテーパ形状となっているので、圧縮バネ206により弁体207が多少傾いてもその周面は弁座223に適切に当接して、十分なシール性能が確保できる。
【0020】
弁座部材222の内周には弁座通路224が形成されており、弁座通路224の通路断面積は弁座223部分で最小となって、絞り部209を形成している。そしてこの絞り部209から通路断面積は順次広がっている。絞り部209の辺りでは直径が4~5ミリメートル程度の円形断面であり、最も広がった位置では直径9ミリメートル弱の円形断面である。本開示では、弁座通路224の傾斜角度は10度程度である。
【0021】
整流器ボディ220には円筒状の流出ポート230が突出形成されている。流出ポート230の長さは20ミリメートル程度であり、肉厚は2ミリメートル程度である。流出ポート230の内部には整流空間231が形成され、その通路断面は、弁座通路224の最も広がった部位と同一で直径が9ミリメートル弱の円形断面である。したがって、整流空間231と弁座通路224とは通路断面積及び通路断面形状の変化なく連続している。
【0022】
流出ポート230の先端部位には、円柱状の整流器240が配置される。整流器240もポリブチルテレフタレートPBTや、ポリアミドPA66などの樹脂材料製であり、レーザー光を吸収する。整流器240の長さは10ミリメートル程度である。即ち、整流器240は流出ポート230長さの半分程度であり、結果、整流空間231の長さも10ミリメートル程度となる。整流器240の外径は流出ポート230の内径より小さく、整流器240と流出ポート230との間には0.15~0.2ミリメートル程度の隙間が生じている。
【0023】
図3に示すように、整流器240の一端には、整流器240を流出ポート230に挿入する際にガイドとなる挿入用テーパ部241が形成されている。挿入用テーパ部241の外径は流出ポート230の内径より小さく、挿入された状態では挿入用テーパ部241は流出ポート230の内周に当接することはない。挿入用テーパ部241の幅は1ミリメートル程度であり、その後端(図3の左側)には同じく幅1ミリメートル程度の円柱形ガイド部2411が形成されている。
【0024】
整流器240の他端にはフランジ部242が径方向に直角に突出形成されている。整流器240が流出ポート230内に挿入された状態では、フランジ部242が流出ポート230の先端と当接して、軸方向の位置合わせが行われる。フランジ部242の径方向の幅は、流出ポート230の外径より小さく、後述するホース260の挿入時にフランジ部242が邪魔することはない。
【0025】
整流器240の中間部分には、流出ポート230と溶着する溶着用テーパ部243が突出形成されている。溶着用テーパ部243は、傾斜角度30度程度のテーパ面2431とこのテーパ面2431と連続する傾斜角度60度程度の斜面2432とからなる三角形状であり、高さは0.3ミリメートル程度である。溶着用テーパ部243の高さが整流器240と流出ポート230との隙間より大きい結果、整流器240が流出ポート230に挿入された状態では、溶着用テーパ部243の頂部2433と流出ポート230のうちその頂部2433が当接する部位が弾性変形する。
【0026】
溶着用テーパ部243は、周方向に等間隔離れて複数形成される。本開示では溶着用テーパ部243は6か所に形成されている。したがって、各溶着用テーパ部243は独立して整流器240の外周から突出形成されている。
【0027】
図4に示すように、整流器240には整流通路245が複数形成されている。本開示では、中心軸上に1つ形成された整流通路245と、周方向に等間隔離れた6つの整流通路245とを形成している。整流通路245はいずれも断面が直径2ミリメートル程度の円形であり、軸方向に直線状に形成されている。
【0028】
図5に示すように、流出ポート230の外周にパージ通路120をなすホース260が接続される。そして、流出ポート230の先端部の外周には、ホース260の抜け止めを行う係止肩部233が膨出形成されている。
【0029】
次に、上記構成からなるパージバルブ200の組付け手順を説明する。まず、ボビン201の外周にコイル202を巻装し、ヨーク203、ステータ204等とともに電磁部を組み立てる。その状態で、コイル202を一対の端子212と電気接続し、電磁部と端子212とともにバルブボディ210にインサート成形する。
【0030】
また、整流器ボディ220の流出ポート230の先端側から整流器240を挿入する。その際には、挿入用テーパ部241が流出ポート230の先端と係合して、挿入のガイドを行う。次いで、溶着用テーパ部243が流出ポート230の先端と当接し、溶着用テーパ部243の頂部と流出ポート230の内周とが弾性変形する。ここで、溶着用テーパ部243は全周に亘って間欠的に形成されているので、弾性変形するのに必要な押圧力を過大にすることはない。整流器240の挿入は、フランジ部242が流出ポート230の先端に当接するまでなされ、フランジ部242の当接によって整流器240の位置決めがなされる。
【0031】
位置決めにより溶着用テーパ部243の位置が正確に定まるので、図6に示すように、レーザー光249を溶着用テーパ部243に照射して、溶着用テーパ部243とこれに当接する流出ポート230を溶かしてレーザー溶着する。図5において符号247で示す部位が溶着部位である。レーザー溶着の際に、溶着用テーパ部243の頂部2433が溶けて、整流器240と流出ポート230との隙間に流れることとなるが、ガイド部2411によって整流空間231に流れ出ることは防止できる。また、フランジ部242が流出ポート230の先端に当接しているので、外部に流れ出ることも防止できる。かつ、溶着用テーパ部243は周方向に分離しているので、溶けたとしてもその量は限られている。かつ、溶着用テーパ部243の周囲に全周に広がるので、整流空間231への流出は確実に抑えられる。
【0032】
レーザー溶着のレーザー光249は、溶着用テーパ部243の頂部2433に焦点を当てているため、整流器240の外周で溶着用テーパ部243が形成されていない部位にレーザー光249が当たったとしても、その部位を溶かすことはない。
【0033】
また、本開示では、溶着用テーパ部243を流出ポート230のうち係止肩部233を外した部位に位置させている。係止肩部233では、流出ポート230の肉厚が変化しているので、その部位にレーザー光249を照射したのでは、溶着用テーパ部243に到達するレーザー光249も変化してしまう恐れがある。しかしながら、本開示では、溶着用テーパ部243を流出ポート230の肉厚が一定の部位に配置しているので、溶着用テーパ部243に到達するレーザー光249を一定に保つことができる。
【0034】
次いで、電磁部をインサート成形したバルブボディ210に、圧縮バネ206のガイド部材208と、圧縮バネ206と、弁体207をインサート成形したプランジャ205とを配置する。その状態で、弁座223に弁体207が当接するようにして、整流器ボディ220をバルブボディ210に組み付ける。組み付け後、整流器ボディ220の当接面フランジ220aとバルブボディ210の当接面フランジ210aとをレーザー溶着する。
【0035】
次に、本開示のパージバルブ200の動作を説明する。キャニスタ110に付着した蒸発燃料が少ない状態では、パージ通路120はパージバルブ200によって閉じられる。即ち、コイル202に通電されず、プランジャ205は圧縮バネ206によってステータ204から離れる方向の付勢力を受ける。この付勢力によって、弁体207は弁座223に押し付けられ、弁座通路224は閉じられる。
【0036】
キャニスタ110の蒸発燃料が増えてパージ通路120を開く必要があるときに、パージバルブ200がパージ通路120を開く。ここで、大気バルブ112は通常開いているので、空気をキャニスタに導入する。
【0037】
この際、パージバルブ200のコイル202は通電される。通電により、コイル202の磁気回路がステータ204、ヨーク203、プランジャ205に形成され、ステータ204とプランジャ205との間の磁気ギャップに吸引力が発生する。この吸引力が圧縮バネ206の付勢力に打ち勝って、プランジャ205をステータ204側に移動させ、その移動に伴って弁体207が弁座223から離れる。弁体207は最大で1ミリメートル強弁座223から離れる。
【0038】
大気バルブ112が開いているのでキャニスタ110側は大気圧であり、一方、吸気通路140はスロットルバルブ135下流にあるので負圧である。従って、その圧力差によってキャニスタ110から蒸発燃料と空気とがパージ通路120を介して吸気通路140に流れる。
【0039】
より具体的には、流入ポート213から流入した蒸発燃料及び空気が弁室221に流れ、弁座部材222の弁座223の全周から弁座通路224の絞り部209に流入する。特にスロットルバルブ135が閉じているエンジンのアイドリング状態では負圧による圧力差が大きいので、最大で毎分120リットル程度の蒸発燃料及び空気が弁座通路224に流入する。
【0040】
弁座通路224は弁座223部分の断面積を小さくしているので、弁体207の受圧面積も小さくなり、コイル202の励磁力で弁体207が移動しやすくなっている。かつ、弁体207と弁座223とのシール面を小さくして、シール性能を向上させている。
【0041】
弁座通路224では、絞り部209の下流で通路断面積を徐々に大きくして、蒸発燃料及び空気の流速を徐々に低下させている。また、弁座通路224での通路断面積の急変を避けて、蒸発燃料及び空気の流れをスムーズにしている。しかしながら、通路断面積の変化に伴う渦流れの発生を防止することはできず、絞り部209の下流では渦流れが生じる。
【0042】
本開示では、弁座通路224に連続して、流出ポート230に整流空間231を形成している。この整流空間231により、弁座通路224で生じた渦流れを安定させている。その状態で、蒸発燃料及び空気は整流器240の整流通路245に流入する。換言すれば、整流空間231が整流通路245の上流に位置して、弁座通路224で生じた渦流れを整流通路245と協働して抑制している。それによって、蒸発燃料及び空気の渦流れに起因する異音の発生を抑制することができる。
【0043】
本開示では、弁座通路224の弁座223部分(絞り部209)での通路断面積と、整流器240の整流通路245の合計の通路断面積とを略同様にしている。そのため、弁座223部分(絞り部209)での蒸発燃料及び空気の流速と整流器240での流速とで大きな変化がない。
【0044】
なお、上述したのは本開示の望ましい態様ではあるが、本開示は種々に変更可能である。例えば、上述の開示で整流通路245の断面形状を円形としたが、他の形状としてもよい。また、整流通路245の数も7より少なくしてもよく、逆に多くしてもよい。
【0045】
図7は整流通路245を扇形として6つ設けた例であり、図8は整流通路245を四角形状として4つ設けた例である。このように、整流通路245の数や形状を変更しても、整流通路245の通路断面積を絞ることによる整流器240の異音低減効果を得ることが可能である。
【0046】
また、上述の開示では整流通路245の合計断面積を弁座223部分での通路断面積と略同じとしたが、合計断面積を弁座223部分の通路断面積より大きくしてもよい。通路断面積は略同じであるのが望ましいが、通路断面積が異なっていても、整流通路245によって蒸発燃料及び空気の流れを絞ることで、弁座通路224での渦流れの発生を抑制することは可能である。
【0047】
また、上述の開示では、整流器240と弁座通路224との間に、整流器240と同じ程度の長さの整流空間231を形成したが、整流空間231の長さをより長くしても、逆に短くしてもよい。整流空間231にも望ましい容積があるが、容積を変更したとしても弁座通路224での渦流れの発生を抑制することは可能である。極端な例では、弁座通路224と整流通路245とが連続するようにしてもよい。
【0048】
また、上述の開示では、溶着用テーパ部243を周方向に間欠的に形成したが、溶着用テーパ部243を周方向の全周に亘って形成することも可能である。全周に亘って形成しても、溶けた樹脂が整流空間231に流れ出ることはガイド2411によって阻止でき、外部に流れ出ることはフランジ部242によって阻止できる。ただ、全周に亘って形成する場合には、整流器240を流出ポート230に挿入する際の押圧力が大きくなるので、溶着用テーパ部243の高さや形状を工夫する必要がある。
【0049】
また、ガイド2411を廃止することも可能である。整流器240の挿入は挿入用テーパ部241によってガイドされ、挿入用テーパ部241も外周面に突出形成されているので、挿入用テーパ部241によっても溶けた樹脂の流れ出しは阻止できる。
【符号の説明】
【0050】
200・・・パージバルブ
202・・・コイル
204・・・ステータ
205・・・プランジャ
207・・・弁体
210・・・バルブボディ
220・・・整流器ボディ
222・・・弁座部材
223・・・弁座
224・・・弁座通路
230・・・流出ポート
231・・・整流空間
240・・・整流器
241・・・挿入用テーパ部
242・・・フランジ部
243・・・溶着用テーパ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8