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特許7368736異常検知装置及びそれを備えた振動搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】異常検知装置及びそれを備えた振動搬送装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20231018BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020516290
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2019016648
(87)【国際公開番号】W WO2019208395
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018086374
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘之
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-059270(JP,A)
【文献】特開2010-083615(JP,A)
【文献】特開2005-162479(JP,A)
【文献】特開平11-212637(JP,A)
【文献】特開平03-272908(JP,A)
【文献】特開2015-055383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-13/045、99/00
B65G 27/00-27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象機器の異常を検知する異常検知装置であって、
前記対象機器において同一時刻で物理量または測定位置が異なる複数種類の測定データを取得する複数のセンサと、
前記複数種類の測定データのうち前記対象機器が同一の動作を行うときのデータである同一動作データを正規化または標準化するデータ処理部と、
前記データ処理部でそれぞれ前記正規化または標準化された前記同一動作データを前記対象機器が同一の動作を行う各同一時刻で所定の順に並べることにより、前記対象機器が同一の動作を行う前記同一時刻における同一時刻データを生成する同一時刻データ生成部と、
前記対象機器が同一の動作を行う前記同一時刻において生成された前記同一時刻データを時系列に並べて繋げることにより、異常を検知可能な波形が得られるような時系列データを生成する時系列データ生成部と、
を備える、異常検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検知装置において、
前記複数種類の測定データのうち少なくとも2種類のデータは、前記対象機器の異常と相関関係を有する物理量のデータである、異常検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の異常検知装置において、
前記複数のセンサで取得された前記複数種類の測定データから、前記対象機器において同一動作を行うときのデータを、前記複数種類の同一動作データとして抽出する同一動作データ抽出部をさらに備える、異常検知装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の異常検知装置において、
前記時系列データの一部を格納する記憶部と、
前記時系列データのうち一定時間毎に抽出された所定範囲データを、前記記憶部に格納するとともに、前記記憶部に格納された前記所定範囲データが所定数に達した際に前記記憶部に格納されている複数の所定範囲データのうち最先に格納された所定範囲データを、保存データとするデータ記憶制御部と、
をさらに備える、異常検知装置。
【請求項5】
搬送物を搬送するための振動を発生する振動発生部と、
請求項1から4のいずれか一つに記載の異常検知装置と、
を備え、
前記複数種類の測定データは、搬送物の搬送に関する物理量を含む、振動搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の異常を検知する異常検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象機器の異常を検知する異常検知装置が知られている。このような異常検知装置として、例えば特許文献1には、機械設備に設置したセンサで測定した測定信号に基づいて、機械設備の異常を検知する異常判断システムが開示されている。
【0003】
前記異常判断システムは、前記測定信号から期間傾向成分を分離し、前記期間傾向成分から異常発生時の信号のパターンを特徴づける複数の特徴的な情報量を抽出する。また、前記異常判断システムは、前記情報量に基づいて、前記機械設備の異常を検知する。
【0004】
前記異常判断システムによって前記機械設備の異常を検知することにより、前記機械設備の初期の微小な異常を早期に検知することができる。
【0005】
よって、上述の異常判断システムを用いることにより、例えばプラントなどにおいて稼働中に検出された異常から、機器等の故障のタイミングを予測することができる。これにより、機器の点検及び修理のタイミングを判断することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-19830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、対象機器の異常を検知する方法として、上述の特許文献1に開示されている異常判断システムによる異常検知方法以外にも、各種の異常検知方法が考えられている。
【0008】
他の異常検知方法として、例えば、センサによって検出された検出値の平均値等を求めて、求めた値と閾値とを比較することにより、異常を検知する方法や、異常時のデータと平常時のデータとの違いから異常時のデータの特徴を調べて、その特徴がセンサ等によって検出された場合に、異常を検知する方法などがある。
【0009】
また、他の異常検知方法として、正常な状態を学習し、学習した正常状態に対する現状の状態の異常度を求めて、求めた値と閾値とを比較することにより、異常を検知する方法も考えられている。前記異常度を求める方法として、例えば、機械学習アルゴリズム(例えばk近傍法)を用いて求める方法や、特異スペクトル変換を用いて求める方法などが考えられている。
【0010】
上述の異常検知方法では、センサ等によって検出された1種類のデータを用いて、対象機器の異常を検知する。しかしながら、1種類のデータだけでは、対象機器の異常を精度良く検知できない場合がある。よって、対象機器の異常を精度良く検知するためには、複数種類のデータを用いることが好ましい。
【0011】
本発明の目的は、複数種類のデータを用いて異常を精度良く検知可能な異常検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に係る異常検知装置は、対象機器の異常を検知する異常検知装置である。この異常検知装置は、前記対象機器において同一時刻で物理量または測定位置が異なる複数種類の測定データを取得する複数のセンサと、前記複数種類の測定データのうち前記対象機器が同一の動作を行うときのデータである同一動作データを正規化または標準化するデータ処理部と、前記複数種類の測定データから前記データ処理部で得られた値を順に並べることにより、各時刻で同一時刻データを生成する同一時刻データ生成部と、各時刻で生成された前記同一時刻データを時系列に並べることにより時系列データを生成する時系列データ生成部と、を備える(第1の構成)。
【0013】
これにより、物理量または測定位置が異なる複数種類の測定データを用いて、対象機器の異常を検知することができる。すなわち、同一時刻で得られた、物理量または測定位置が異なる複数種類の測定データのうち前記対象機器が同一の動作を行うときのデータである複数種類の同一動作データを、正規化または標準化した後、順に並べることにより、前記複数種類の同一動作データの集合である同一時刻データを各時刻で生成することができる。そして、生成された各時刻の同一時刻データを、時系列で並べることにより、前記同一時刻データの時系列変化が分かる時系列データを生成することができる。よって、前記複数種類の同一動作データの時系列変化を容易に把握することができる。したがって、前記複数種類の同一動作データの一部に異常が現れた場合に、その異常を容易に把握することができる。
【0014】
これにより、1種類の測定データだけでは対象機器の異常を検知できない場合でも、上述のように複数種類の測定データを用いることにより、対象機器の異常を精度良く検知できる。
【0015】
前記第1の構成において、前記複数種類の測定データのうち少なくとも2種類のデータは、前記対象機器の異常と相関関係を有する物理量のデータである(第2の構成)。
【0016】
対象機器の異常と相関関係を有する物理量のデータは、対象機器の異常と関連して変動する。そのため、前記対象機器の異常と相関関係を有する物理量のデータを含む複数種類の測定データに基づいて得られる時系列データは、対象機器の異常と関連して変動する。よって、前記時系列データを用いて、対象機器の異常を、より精度良く検知することができる。
【0017】
前記第1または第2の構成において、前記複数種類の測定データから、前記対象機器において同一動作を行うときのデータを、前記複数種類の同一動作データとして抽出する同一動作データ抽出部をさらに備える(第3の構成)。
【0018】
これにより、複数種類の測定データから、対象機器において同一動作を行うときの同一動作データを、容易に抽出することができる。したがって、前記対象機器の異常をより容易に検知することができる。
【0019】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、異常検知装置は、前記時系列データの一部を格納する記憶部と、前記時系列データのうち一定時間毎に抽出された所定範囲データを、前記記憶部に格納するとともに、前記記憶部に格納された前記所定範囲データが所定数に達した際に前記記憶部に格納されている複数の所定範囲データのうち最先に格納された所定範囲データを、保存データとするデータ記憶制御部と、をさらに備える(第4の構成)。
【0020】
これにより、すべての時系列データを記憶することなく、所望の時間毎の時系列データのみを記憶することができる。過去の時系列データを記憶部に全て記憶しようとすると、必要な記憶容量が増大するが、上述の構成により、過去の時系列データを記憶するための記憶容量を低減することができる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る振動搬送装置は、搬送物を搬送するための振動を発生する振動発生部と、上述の第1から第4の構成のうちいずれか一つに記載の構成を有する異常検知装置と、を備える。前記複数種類の測定データは、搬送物の搬送に関する物理量を含む(第5の構成)。
【0022】
振動搬送装置の場合には、異常が発生すると、振動発生部の振動モードが変化する。すなわち、振動搬送装置の異常時には、搬送物の搬送に関する物理量が変化する。この物理量を含む複数種類の測定データに基づいて時系列データを生成することにより、振動搬送装置の異常時には前記時系列データがより顕著に変化する。したがって、振動搬送装置の異常をより精度良く検知することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施形態に係る異常検知装置によれば、同一時刻で得られた物理量または測定位置が異なる複数種類の測定データのうち前記対象機器が同一の動作を行うときのデータである複数種類の同一動作データを正規化または標準化して、得られた値を順に並べることにより同一時刻データを生成する。そして、各時刻で生成された前記同一時刻データを時系列に並べることにより時系列データを生成する。
【0024】
これにより、物理量または測定位置が異なる複数種類の測定データのうち、前記対象機器が同一の動作を行うときのデータである複数種類の同一動作データの時系列の変化を、容易に把握することができる。したがって、前記時系列データを用いて、対象機器の異常を、精度良く検知することができる。これにより、複数種類のデータから異常を精度良く検知可能な異常検知装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態1に係る異常検知装置の概略構成を機能ブロックで示す図である。
図2図2は、振動搬送装置の概略構成を示す図である。
図3図3は、(a)正常時の時系列データの一例、及び、(b)異常時の時系列データの一例を、グラフでそれぞれ示す図である。
図4図4は、異常検知装置の動作を示すフローである。
図5図5は、実施形態2に係る異常検知装置の図1相当図である。
図6図6は、(a)異常度の時間変化の一例、及び、(b)異常度の最大値の変化の一例を、グラフでそれぞれ示す図である。
図7図7は、実施形態3に係る異常検知装置の図1相当図である。
図8図8は、記憶部におけるデータ更新の一例を模式的に示す図である。
図9図9は、対象機器がロボットの場合における振動計測データの一例を示す。
図10図10は、図9に示す振動計測データから、ロボットの同一動作における振動計測データを抽出して並べた同一動作データの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0027】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る異常検知装置1の概略構成を機能ブロックで示す図である。この異常検知装置1は、例えば振動搬送装置などの対象機器の異常を、複数のセンサによって測定された複数種類の測定データに基づいて検知する装置である。前記複数種類の測定データは、物理量または測定位置が異なる測定データである。前記異常は、正常とは異なる状態を意味する。
【0028】
(振動搬送装置)
まず、前記対象機器としての振動搬送装置100について、以下で簡単に説明する。図2は、振動搬送装置100の概略構成を示す図である。
【0029】
振動搬送装置100は、振動によって搬送物を搬送しつつ、前記搬送物を乾燥させる。具体的には、振動搬送装置100は、ホッパ101と、供給側フィーダ102と、装置本体103と、排出側フィーダ104と、振動発生部105と、熱風給気部106と、冷風給気部107と、を備える。
【0030】
なお、本実施形態では、振動搬送装置100は、振動によって搬送する搬送物を乾燥させる機能を有するが、前記搬送物を搬送する機能のみを有していてもよいし、前記搬送物を搬送する機能に加えて他の機能を有していてもよい。
【0031】
ホッパ101は、内部に搬送物を貯留する。供給側フィーダ102は、ホッパ101内に貯留された搬送物を、装置本体103の搬送方向上流側に供給する。ホッパ101及び供給側フィーダ102は、装置本体103よりも上方に位置する。よって、搬送物は、供給側フィーダ102によって、装置本体103に対して上方から供給される。
【0032】
排出側フィーダ104は、装置本体103の搬送方向下流側に搬送される搬送物を、振動搬送装置100の外に搬送する。排出側フィーダ104は、装置本体103の下方に位置する。よって、装置本体103によって搬送された搬送物は、排出側フィーダ104に対して上方から排出される。
【0033】
ホッパ101、供給側フィーダ102及び排出側フィーダ104は、特に図示しないが、例えば、振動によって搬送物を搬送する。この場合、ホッパ101、供給側フィーダ102及び排出側フィーダ104は、それぞれ、振動発生部を有する。
【0034】
装置本体103は、トラフ111と、整流板121と、フードカバー131とを有する。
【0035】
トラフ111は、搬送方向に延びる一対の側壁112,113と、該一対の側壁112,113を搬送方向の両端部に接続する一対の端壁114,115と、底壁116とを有する。すなわち、トラフ111は、搬送方向に延びる樋状である。トラフ111は、内部に給気室111aを有する。給気室111aは、一対の側壁112,113と一対の端壁114,115と底壁116とによって形成されている。
【0036】
トラフ111は、一方の側壁112に、搬送方向に並ぶ複数の給気口111b,111cを有する。給気口111bには、熱風給気部106から熱風気体が供給される。給気口111cには、冷風給気部107から冷風気体が供給される。給気口111cは、トラフ111の側壁112における搬送方向下流側に位置する。また、トラフ111は、底壁116の搬送方向下流側に、搬送物を排出するための排出口111dを有する。トラフ111において、給気室111aと給気口111b,111cと排出口111dとは、連通している。
【0037】
整流板121は、多数の開口を有する平板状のパンチングメタルである。整流板121は、トラフ111の上側を覆う。整流板121におけるパンチングメタルの開口は、気体が下方から上方に通過可能である。整流板121は、搬送物の搬送路を構成する。
【0038】
フードカバー131は、整流板121の上側を覆う。フードカバー131は、図示しない部材を介して、トラフ111と接続されている。フードカバー131は、上面の搬送方向上流側に、供給側フィーダ102から搬送物が供給される供給口131aを有する。また、フードカバー131は、上面に、複数の排気口131bを有する。
【0039】
熱風給気部106は、ヒータ等によって温度が調節された熱風を、ファン等によって吹き出す装置である。熱風給気部106から吹き出す熱風の温度は、搬送物の種類や量、外気温などに応じて、調節される。冷風給気部107は、ファン等によって気体を吹き出す装置である。
【0040】
以上の構成により、熱風給気部106から給気口111bを介してトラフ111の給気室111a内に供給された熱風気体は、整流板121を下から上に通過して、整流板121上を搬送される搬送物を乾燥させる。一方、冷風給気部107から給気口111cを介してトラフ111の給気室111a内に供給された冷風気体は、整流板121を下から上に通過して、整流板121上を搬送される搬送物を冷却する。
【0041】
熱風気体及び冷風気体は、整流板121を通過した後、排気口131bからフードカバー131の外に流れて、集塵機108に集まる。この集塵機108では、熱風気体及び冷風気体に含まれる粉塵が取り除かれる。
【0042】
振動発生部105は、複数のバネ141と、カウンタウェイト142と、モータ143と、クランク機構144とを備える。
【0043】
カウンタウェイト142は、搬送方向に延びる直方体状の部材である。カウンタウェイト142は、バネ141及び図示しない連結部材によって、トラフ111に懸架されている。
【0044】
クランク機構144は、カウンタウェイト142上に位置するモータ143の回転に応じて回転することにより、トラフ111を搬送方向の斜め上方に往復運動させる。クランク機構144の構成は従来の構成と同様なので、クランク機構144に関する詳しい説明は省略する。
【0045】
以上の構成により、振動発生部105は、トラフ111に振動を与えることができる。これにより、整流板121にも振動が加わるため、整流板121上で搬送物を搬送方向に搬送することができる。
【0046】
(異常検知装置)
次に、上述の構成を有する振動搬送装置100の異常を検知する異常検知装置1の構成を、図1に基づいて説明する。
【0047】
図1に示すように、異常検知装置1は、複数のセンサ2~5と、異常検知制御部10とを有する。なお、異常検知装置1は、振動搬送装置100の図示しない制御部と一体で設けられていてもよいし、前記制御部とは別に設けられていてもよい。
【0048】
複数のセンサ2~5は、例えば振動搬送装置100の振動、熱風気体の温度、振動搬送装置100で発生する音及び給気室111a内の圧力などを測定する。すなわち、複数のセンサ2~5は、例えば、変位センサ、温度センサ、音センサ及び圧力センサなどを含む。振動搬送装置100における複数のセンサ2~5の取付位置は、従来と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0049】
複数のセンサ2~5で測定されたデータは、測定データとして、異常検知制御部10に入力される。
【0050】
なお、本実施形態では、一例として、異常検知装置1は4つのセンサを備えているが、この限りではなく、異常検知装置1は、3つ以下のセンサを備えていてもよいし、5つ以上のセンサを備えていてもよい。すなわち、異常検知装置1は、複数のセンサを備えていればよい。
【0051】
また、本実施形態では、異常検知装置1の複数のセンサ2~5は、振動搬送装置100における振動、温度、音及び圧力を測定するが、この限りではなく、複数のセンサ2~5は、振動搬送装置100の運転の異常を検知可能な他の物理量を測定してもよいし、同じ種類の物理量を異なる測定位置で測定してもよい。すなわち、複数のセンサ2~5によって、物理量または測定位置が異なる複数種類の測定データが取得される。
【0052】
異常検知制御部10は、複数のセンサ2~5から出力された前記複数種類の測定データに基づいて、時系列データを生成する。具体的には、異常検知制御部10は、測定データ取得部11と、データ処理部12と、同一時刻データ生成部13と、時系列データ生成部14と、記憶部15と、異常度演算部16と、出力部17と、を備える。
【0053】
測定データ取得部11は、複数のセンサ2~5から出力された複数種類の測定データを、所定の時間間隔で取得する。測定データ取得部11によって取得された前記複数種類の測定データは、記憶部15に一時的に格納される。記憶部15は、半導体素子メモリ、磁気記憶媒体、光学記憶媒体などを含む。記憶部15は、データを記憶可能であれば、どのような構成であってもよい。
【0054】
前記複数種類の測定データは、同一時刻で取得され、且つ、物理量または測定位置が異なる測定データである。また、前記複数種類の測定データは、振動搬送装置100の異常と関連して変動する物理量のデータである。すなわち、前記複数種類の測定データは、振動搬送装置100の異常と相関関係を有する物理量のデータである。また、前記複数種類の測定データは、振動搬送装置100における搬送物の搬送に関する物理量のデータを含む。
【0055】
なお、前記複数種類の測定データのうち、少なくとも2種類のデータが振動搬送装置100の異常と相関関係を有する物理量のデータであってもよい。例えば、前記複数種類の測定データのうち2種類の測定データが互いに強い相関関係を有する場合、一方の測定データのみを振動搬送装置100の異常検知に用いてもよい。なお、前記複数種類の測定データは、互いに相関関係がないデータが好ましい。
【0056】
測定データ取得部11は、複数のセンサ2~5から、前記所定の時間間隔内で測定データのピーク値を取得してもよい。この場合、測定データ取得部11は、前記測定データにおける正のピーク値及び負のピーク値を取得してもよいし、前記測定データにおけるピーク値の絶対値を取得してもよい。これにより、振動搬送装置100の異常発生時に測定データにピークが現れた場合でも、測定データ取得部11は、複数のセンサ2~5から、前記ピークを含む測定データを取得することができる。よって、測定データを用いて、振動搬送装置100の異常を精度良く検知することができる。
【0057】
データ処理部12は、測定データ取得部11で取得した複数種類の測定データを記憶部15から読み込んだ後、前記複数種類の測定データから、振動搬送装置100が同一の動作を行うときのデータである複数種類の同一動作データを抽出する。なお、振動搬送装置100は、同一の動作を繰り返しているため、装置の停止時及び非定常運転時を除いて、前記複数種類の測定データは、同一動作データとほぼ同じデータである。
【0058】
なお、前記同一の動作は、異常検知装置1によって振動搬送装置100の異常を検知可能な繰り返しの測定データが得られる範囲の動作であれば、全く同一の動作に限定されない。
【0059】
また、データ処理部12は、抽出した複数種類の同一動作データを正規化処理する。具体的には、データ処理部12は、同種の同一動作データごとに、演算対象範囲内での最小値を引いてレンジ(データの範囲)で除することにより、同一動作データの正規化を行う。データ処理部12で正規化されたデータは、記憶部15に一時的に格納される。
【0060】
このように、物理量または測定位置が異なる複数種類の同一動作データを正規化処理することにより、前記複数種類の同一動作データを同じ次元で並べて表示することが可能になる。
【0061】
なお、データ処理部12は、前記複数種類の同一動作データを標準化処理してもよい。この場合、データ処理部12は、同種の同一動作データごとに、演算対象範囲内での平均値を引いて標準偏差で除することにより、同一動作データの標準化を行う。
【0062】
また、データ処理部12は、複数種類の同一動作データが、同じ測定範囲のセンサから得られる同じ物理量の場合、上述の正規化処理または標準化処理を省略してもよい。
【0063】
同一時刻データ生成部13は、同一時刻で複数のセンサ2~5によって取得された前記複数種類の測定データから抽出され且つ正規化された複数種類の同一動作データを、記憶部15から読み込んだ後、順に並べることにより、同一時刻データを生成する。すなわち、同一時刻データ生成部13は、以下のような集合データd(t)を、同一時刻データとして生成する。
d(t)={a(t)、t(t)、s(t)、p(t)}
【0064】
ここで、a(t)、t(t)、s(t)、p(t)は、それぞれ、所定の時刻(t)において、複数のセンサ2~5が取得した振動、温度、音、圧力に関する測定データからそれぞれ抽出された同一動作データを正規化処理することにより得られたデータである。
【0065】
同一時刻データ生成部13によって生成された同一時刻データは、記憶部15に一時的に格納される。
【0066】
なお、前記同一時刻データにおける前記データの並び順は、各時刻で生成される同一時刻データにおいて前記データの並び順が同一であれば、どのような順番であってもよい。
【0067】
時系列データ生成部14は、各時刻における同一時刻データを記憶部15から読み込んだ後、これらの同一時刻データを時系列に並べて、以下のような1次元の時系列データDを生成する。
D={d(t)d(t-1)d(t-2)・・・・d(t-n)}
【0068】
時系列データ生成部14は、生成した時系列データを記憶部15に格納する。
【0069】
図3は、時系列データ生成部14によって生成される時系列データの一例を示すグラフである。図3(a)は、振動搬送装置100の正常時の時系列データの一例を示し、図3(b)は、振動搬送装置100の異常時の時系列データの一例を示す。図3(b)に破線で囲んだ部分のように、振動搬送装置100の異常時における時系列データの波形は、正常時における時系列データの波形と異なる。上述のように時系列データを生成することにより、波形の違いから異常を容易に検知することができる。
【0070】
異常度演算部16は、記憶部15から時系列データを読み込んで、前記時系列データにおける所望の範囲のデータに基づいて異常度を算出する。異常度演算部16は、例えば、公知の機械学習アルゴリズム(例えばk近傍法)を用いた方法や特異スペクトル変換を用いた方法などによって、時系列データに基づいて異常度を算出する。
【0071】
ここで、異常度演算部16は、例えば前記k近傍法を用いて異常度を算出する場合、2つのスライド窓を用いて、時系列データから複数の部分時系列データを生成する。前記複数の部分時系列データは、正常な場合の正常時部分時系列データと、検査対象である検査対象部分時系列データとを含む。そして、異常度演算部16は、k近傍法によって、ベクトル空間上における前記正常時部分時系列データと前記検査対象部分時系列データとのそれぞれの距離を演算する。異常度演算部16は、これらの距離に基づいて、異常度を算出する。
【0072】
一方、異常度演算部16は、特異スペクトル変換を用いて異常度を算出する場合、前記複数の部分時系列データをそれぞれ特異スペクトル変換し、その結果を用いて、行列の2ノルムを演算する。異常度演算部16は、演算によって得られた値の大きさから、異常度を算出する。
【0073】
異常度演算部16は、算出した異常度を、記憶部15に格納する。
【0074】
なお、前記所望の範囲は、同一時刻データを複数含む。前記所望の範囲は、予め設定された範囲であってもよいし、異常検知装置1に対する入力によって設定される範囲であってもよい。
【0075】
出力部17は、記憶部15に格納されている時系列データ及び異常度の少なくとも一方を読み込んだ後、読み込んだデータを外部に出力する。出力部17は、例えば、時系列データを、図3に示すようなグラフデータとして出力してもよいし、数値データとして出力してもよい。また、出力部17は、例えば、異常度をグラフデータ及び数値データの少なくとも一方として出力してもよい。
【0076】
なお、出力部17は、例えば、表示装置、出力装置などを含んでもよいし、外部の表示装置等に対するデータの出力を制御する構成を含んでもよい。
【0077】
(異常検知装置の動作)
次に、上述の構成を有する異常検知装置1の動作について説明する。図4は、異常検知装置1の動作を示すフローである。
【0078】
図4に示すように、異常検知装置1における異常検知制御部10の測定データ取得部11は、複数のセンサ2~5から、同一時刻で取得された複数種類の測定データを取得する(ステップS1)。その後、データ処理部12は、同一時刻で複数のセンサ2~5によって取得された複数種類の測定データから、振動搬送装置100が同一の動作を行うときのデータである複数種類の同一動作データを抽出して、正規化する(ステップS2)。
【0079】
同一時刻データ生成部13は、正規化された同一時刻の複数の同一動作データを順に並べることにより、同一時刻データを生成する(ステップS3)。時系列データ生成部14は、各時刻の同一時刻データを時系列で並べることにより、時系列データを生成する(ステップS4)。
【0080】
異常度演算部16は、前記時系列データを用いて、公知の機械学習アルゴリズム(例えばk近傍法)を用いた方法や特異スペクトル変換を用いた方法などによって、異常度を算出する(ステップS5)。
【0081】
出力部17は、時系列データ生成部14で生成された時系列データ及び異常度演算部16で算出された異常度の少なくとも一方を、出力する(ステップS6)。
【0082】
以上の構成により、異常検知装置1は、複数のセンサ2~5によって測定された、物理量または測定位置が異なる複数種類の測定データを用いて、振動搬送装置100の異常を検出することができる。
【0083】
また、同一時刻で得られた物理量または測定位置が異なる複数種類の測定データから抽出された複数種類の同一動作データを、正規化した後、順に並べることにより、前記複数種類の同一動作データの集合である同一時刻データを各時刻で生成することができる。そして、生成された各時刻の同一時刻データを、時系列で並べることにより、前記同一時刻データの時系列変化が分かる時系列データを生成することができる。よって、前記複数種類の同一動作データの時系列変化を容易に把握することができる。したがって、前記複数種類の同一動作データの一部に異常が現れた場合に、その異常を容易に把握することができる。
【0084】
これにより、1種類の測定データだけでは振動搬送装置100の異常を検知できない場合でも、上述のように複数種類の測定データを用いることにより、振動搬送装置100の異常を精度良く検知できる。
【0085】
また、本実施形態では、前記複数種類の測定データは、振動搬送装置100の異常と相関関係を有する物理量のデータである。振動搬送装置100の異常と相関関係を有する物理量のデータは、振動搬送装置100の異常時に、振動搬送装置100の異常と関連して変動する。そのため、前記複数種類の測定データに基づいて得られる時系列データは、振動搬送装置100の異常と関連して変動する。よって、前記時系列データを用いて、振動搬送装置100の異常を、より精度良く検知することができる。
【0086】
なお、振動搬送装置100は、連続して安定運転(定常運転)を行うため、異常検知装置1は、振動搬送装置100の定常運転時を異常検知の対象にして、それ以外の非定常運転時及び休止時には、異常検知の対象から除外することが好ましい。前記非定常運転時及び休止時のデータが、異常検知装置1で異常を検知する際に用いられるデータに含まれていると、前記非定常運転及び休止を、振動搬送装置100の異常として誤検出する可能性がある。なお、前記非定常運転時は、振動搬送装置100の運転スイッチを入れてから運転が安定するまでの期間と、前記運転スイッチを切ってから実際に運転が停止するまでの期間とを含む。
【0087】
そのため、異常検知装置1は、振動搬送装置100の定常運転開始時及び定常運転終了時を検出し、前記定常運転開始時と前記定常運転終了時との間の定常運転時のデータのみを取得する。
【0088】
前記定常運転開始時及び前記定常運転終了時を決める具体的な方法として、以下の方法が考えられる。
【0089】
前記定常運転開始時は、振動搬送装置100の運転スイッチを入れてから所定時間が経過した後のタイミングとしてもよい。前記所定時間は、振動搬送装置100が定常運転状態になるまでの時間に設定される。前記定常運転終了時は、振動搬送装置100の運転スイッチを切った時点としてもよい。
【0090】
また、振動搬送装置100の運転中に測定される物理量が、定常運転開始を判定する第1閾値を上回った場合に前記定常運転開始時と判定し、前記物理量が、定常運転終了を判定する第2閾値を下回った場合に前記定常運転終了時と判定してもよい。
【0091】
また、振動搬送装置100の運転開始時及び運転終了時の時刻が判明している場合には、運転開始時から所定時間経過後を前記定常運転開始時とし、運転終了時を前記定常運転終了時としてもよい。
【0092】
異常検知装置1は、振動搬送装置100が例えば上述の方法によって非定常運転時または休止時であると判定した場合には、振動搬送装置100の異常検知を停止する。
【0093】
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係る異常検知装置201の概略構成を示す機能ブロック図である。この実施形態における異常検知装置201は、所定時間前の時系列データを抽出し、その時系列データから求められる異常度(特徴値)を並べて出力する点で、実施形態1における異常検知装置1とは異なる。以下で、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0094】
異常検知装置201は、複数のセンサ2~5と、異常検知制御部210とを有する。異常検知制御部210は、測定データ取得部11と、データ処理部12と、同一時刻データ生成部13と、時系列データ生成部14と、記憶部15と、時系列データ抽出部220と、異常度演算部216と、出力部217と、を備える。
【0095】
時系列データ抽出部220は、記憶部15に格納されている時系列データから、複数の時点における所定期間の時系列データを抽出する。なお、前記複数の時点における所定期間の時系列データとは、それぞれ、前記複数の時点から過去に所定期間の範囲の時系列データを意味する。また、前記時点は、現在、数時間前、数日前、数か月前などである。
【0096】
異常度演算部216は、時系列データ抽出部220によって抽出された前記複数の時点における所定期間の時系列データから、それぞれ異常度を算出する。なお、前記異常度は、実施形態1と同様、例えば、公知の機械学習アルゴリズム(例えばk近傍法)を用いた方法または特異スペクトル変換を用いた方法などによって、算出される。
【0097】
出力部217は、異常度演算部216によって演算された異常度を用いて、例えば異常度のグラフ表示を行う。図6は、出力部217によるグラフ表示の一例を示す図である。図6(a)は、1時間前、1か月前及び1年前における異常度の時間変化を表示した一例であり、図6(b)は、1時間前、1か月前及び1年前における異常度の最大値の変化を表示した一例である。
【0098】
本実施形態によれば、異常度の変化を容易に把握することができるため、振動搬送装置100等の対象機器の異常をより精度良く検知することができる。
【0099】
[実施形態3]
図7は、実施形態3に係る異常検知装置301の概略構成を示す機能ブロック図である。この実施形態における異常検知装置301は、過去のデータの保存方法が実施形態1とは異なる。以下で、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0100】
異常検知装置301は、複数のセンサ2~5と、異常検知制御部310とを有する。異常検知制御部310は、測定データ取得部11と、データ処理部12と、同一時刻データ生成部13と、時系列データ生成部14と、記憶部15と、データ記憶制御部320と、異常度演算部16と、出力部17と、を備える。
【0101】
データ記憶制御部320は、記憶部15に対する時系列データの記憶を制御する。図8は、データ記憶制御部320による時系列データの記憶制御の一例を示す図である。
【0102】
図8に示すように、データ記憶制御部320は、時系列データ生成部14で生成された時系列データから、一定時間毎に所定範囲のデータ(以下、所定範囲データという)を抽出する。本実施形態では、前記一定時間は、例えば10分毎である。
【0103】
データ記憶制御部320は、前記所定範囲データを抽出する毎に、抽出した前記所定範囲データを記憶部15に格納する。なお、記憶部15は、前記所定範囲データを記憶するための記憶領域を、所定数、有する。
【0104】
データ記憶制御部320は、記憶部15に格納された前記所定範囲データの数が前記所定数に達した後、記憶部15に別の所定範囲データを格納する際に、記憶部15に格納されている所定数の所定範囲データのうち最先に記憶部15に格納された所定範囲データを、保存データに変更する。この保存データは、データ記憶制御部320によって記憶部15に格納された所定範囲データが新たな保存データに変更されるまで保持される。
【0105】
データ記憶制御部320によって前記所定範囲データが保存データに変更される際には、それまでの保存データに前記所定範囲データが置き換えられる。本実施形態では、データ記憶制御部320による保存データの置き換えは、例えば、前記所定範囲データの数が6つになった場合、すなわち、1時間経過後に、行われる。
【0106】
なお、前記一定時間を、例えば1週間としてもよい。この場合、データ記憶制御部320による保存データの置き換えを、例えば、前記所定範囲データの数が4つになった場合、すなわち1か月後に行ってもよい。前記一定時間は、上述の10分または1週間に限定されず、データ保存が必要な間隔に応じて適宜設定される。
【0107】
記憶部15に格納された保存データは、例えば、実施形態2の場合のように、過去の異常度と比較する際に利用される。
【0108】
以上の構成により、過去の時系列データを記憶部15に全て記憶する必要がないため、記憶部15の記憶容量の増大を抑制しつつ、必要な過去の時系列データを記憶部15に格納することができる。
【0109】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0110】
前記各実施形態では、異常検知装置1,201,301が異常を検知する対象機器として振動搬送装置100を挙げているが、この限りではなく、前記対象機器は、異常が発生する機器であれば、どのような機器であってもよい。
【0111】
図9に、対象機器がロボットの場合に、ロボットが動作したときの各部における振動測定データの一例を示す。図9の例では、ロボットは、2本のアーム部を有し、各アーム部を軸1、軸2で示す。また、図9では、軸1及び軸2で示すアーム部がそれぞれ伸長及び収縮の動作を行った場合の振動測定データを示す。
【0112】
図9に示すように、対象機器であるロボットは、同一の動作を連続して行うのではなく、異なる複数の動作を行う。そのため、異常検知装置1で対象機器の異常を検知する場合には、同一の動作を行うときの測定データを抽出する必要がある。
【0113】
図10に、例えばロボットの動作の中から軸1の伸長動作のみを抽出し、それに対応する振動測定データのみを並べた例を示す。このように、データ処理部12は、対象機器が動作したときの測定データの中から、同一の動作を行うときの測定データを抽出する。なお、データ処理部12は、例えば、対象機器の制御装置で生成される指令信号などを用いて対象機器の同一の動作を検出し、そのときの測定データを抽出する。
【0114】
このように、データ処理部12は、複数種類の測定データから、対象機器が同一の動作を行うときのデータである同一動作データを抽出する同一動作データ抽出部としても機能する。
【0115】
上述のように、対象機器が例えばロボットのように異なる複数の動作を行う場合には、データ処理部12によって抽出された同一動作データを正規化または標準化した後、得られたデータを用いて、同一時刻データ生成部13によって同一時刻データを生成する。これにより、異常検知装置1,201,301による異常検知を行うことができる。
【0116】
また、例えば、対象機器が、モータ、エンジン及びトランスミッションなどの回転機、ロボットなどのメカトロ機器、工作機械の場合などには、同一の動作が行われない場合もある。この場合には、対象機器の運転開始時あるいは停止時に、特定パターンの運転を行うことにより、前記対象機器に同一の動作を繰り返し行わせるようにしてもよい。
【0117】
具体的には、対象機器がロボットまたは工作機械の場合には、運転開始時に、毎回、同一の動作としてイニシャライズ動作を行ってもよい。また、対象機器がエンジンの場合には、エンジン始動時からアイドリングまでの動作、または、アイドリングからエンジン停止までの動作を、同一の動作として行ってもよい。また、対象機器がモータの場合には、所定のタイミングで、同一の動作として、所定回転数まで回転数を変動させる試運転動作を行ってもよい。
【0118】
これにより、対象機器がどのような機器であっても、同一動作を行うときの同一動作データを、異常検知装置によって取得して、前記同一動作データに基づいて、前記対象機器の異常を検知することができる。
【0119】
なお、上述のように、対象機器が特定パターンの動作を行う場合、その動作の開始及び終了は、前記対象機器に取り付けられた位置センサまたは前記対象機器を駆動制御する制御装置の指令等によって判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、対象機器の異常を検知する異常検知装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0121】
1、201、301 異常検知装置
2~5 センサ
10、210、310 異常検知制御部
11 測定データ取得部
12 データ処理部(同一動作データ抽出部)
13 同一時刻データ生成部
14 時系列データ生成部
15 記憶部
16、216 異常度演算部
17、217 出力部
100 振動搬送装置(対象機器)
101 ホッパ
102 供給側フィーダ
103 装置本体
104 排出側フィーダ
105 振動発生部
106 熱風給気部
107 冷風給気部
111 トラフ
111a 給気室
111b、111c 給気口
111d 排出口
121 整流板
131 フードカバー
131a 供給口
131b 排気口
220 時系列データ抽出部
320 データ記憶制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10