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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】光硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/04 20060101AFI20231018BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C08F290/04
C09K3/10 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020553163
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2019040290
(87)【国際公開番号】W WO2020080309
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2018196528
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松井 千晶
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152392(WO,A1)
【文献】特開2013-216782(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051915(WO,A1)
【文献】特開2017-186439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/04
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分~(C)成分を含み、(A)成分100質量部に対して(B)成分0.1~15質量部を含み、(A)成分100質量部に対して(C)成分50~80質量部を含む光硬化性組成物:
(A)成分:ポリイソブチレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物
(B)成分:1官能である(メタ)アクリルアミド化合物
(C)成分:(A)成分および(B)成分以外の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物
【請求項2】
前記(C)成分が、水酸基を含まない(メタ)アクリレートモノマーである請求項に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
さらに、(D)成分としてポリマー型の光開始剤を含む請求項1または2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、(E)成分として表面にシラノールが残留するアモルファスシリカを含む請求項1~のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
初期のチクソ比(25℃)と60℃雰囲気下で2週間後におけるチクソ比(25℃)とが、ともに4.0以上である請求項1~のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を含むシール剤。
【請求項7】
ハードディスクドライブのカバーシール向けの請求項に記載のシール剤。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を光照射により硬化させた硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソブチレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含む光硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2013/047314号(米国特許出願公開第2014/243444号明細書に相当)には、(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体および活性エネルギー線重合開始剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物の発明が記載されている。骨格にポリイソブチレンを有するオリゴマーは非反応性および反応性を問わず様々な組成物に使用されてきた。しかしながら、ポリイソブチレンの極性が低いために相溶する他の成分が限られ、相溶の影響で組成物としての粘度とチクソ性を表すチクソ比が安定しない。促進試験(60℃雰囲気下)においては、組成物を放置した際に粘度とチクソ比が大きく変化する。
【発明の概要】
【0003】
従来は、ポリイソブチレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含む組成物において粘度やチクソ比を安定化させることが困難であった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、粘度やチクソ比を安定化できる、ポリイソブチレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含む光硬化性組成物を提供することである。
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、ポリイソブチレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含む光硬化性組成物において、粘度とチクソ比の安定化に関する手法を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の要旨を次に説明する。本発明の第一の実施態様は、(A)成分および(B)成分を含み、(A)成分100質量部に対して(B)成分0.1~15質量部を含む光硬化性組成物である:
(A)成分:ポリイソブチレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物
(B)成分:(メタ)アクリルアミド化合物。
【0007】
本発明の第二の実施態様は、(C)成分として、(A)成分および(B)成分以外の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む第一の実施態様に記載の光硬化性組成物である。
【0008】
本発明の第三の実施態様は、前記(C)成分が、水酸基を含まない(メタ)アクリレートモノマーである第二の実施態様に記載の光硬化性組成物である。
【0009】
本発明の第四の実施態様は、(A)成分100質量部に対して(C)成分50~80質量部を含む第二または第三の実施態様に記載の光硬化性組成物である。
【0010】
本発明の第四五の実施態様は、さらに、(D)成分としてポリマー型の光開始剤を含む第一から第四の実施態様のいずれかに記載の光硬化性組成物である。
【0011】
本発明の第六の実施態様は、さらに、(E)成分として表面にシラノールが残留するアモルファスシリカを含む第一から第五の実施態様のいずれかに記載の光硬化性組成物である。
【0012】
本発明の第七の実施態様は、初期のチクソ比(25℃)と、60℃雰囲気下で2週間後のチクソ比(25℃)とが、ともに4.0以上である第一から第六の実施態様のいずれかに記載の光硬化性組成物である。
【0013】
本発明の第八の実施態様は、第一から第七の実施態様のいずれかに記載の光硬化性組成物を含むシール剤である。
【0014】
本発明の第九の実施態様は、ハードディスクドライブのカバーシール向けの第八の実施態様に記載のシール剤である。
【0015】
本発明の第十の実施態様は、第一から第七の実施態様のいずれかに記載の光硬化性組成物を光照射により硬化させた硬化物である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の光硬化性組成物は、(A)成分:ポリイソブチレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物および(B)成分:(メタ)アクリルアミド化合物を含み、前記(A)成分100質量部に対して前記(B)成分0.1~15質量部を含む。かかる構成を有する本発明では、ポリイソブチレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含む光硬化性組成物において、粘度やチクソ比を安定化させることができる。
【0017】
本発明の詳細を次に説明する。本発明で使用することができる(A)成分としては、ポリイソブチレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物である。ポリイソブチレン骨格とは、下記一般式1の様な重合体のブロックを指し、当該骨格がブロックとして含まれる。ここで、nは2以上を示す。(A)成分は、ポリイソブチレン骨格を含むため、透湿性が低いことが特徴である。(A)成分は、他のブロックとジブロック体やトリブロック体になっていても良いが、最も好ましいのはモノブロック体である。(A)成分は、化合物に2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を含み、硬化性の観点から(メタ)アクリロイルオキシ基が2つであることが好ましい。(A)成分の製造方法は限定されず、特開2013-35901号公報、国際公開第2013/047314号、国際公開第2017/099043号などの製造方法により製造することができる。
【0018】
【化1】
【0019】
(A)成分の具体例としては、株式会社カネカ製のエピオン(EPION)(登録商標)シリーズでEP400Vなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。なお、(A)成分のポリイソブチレン骨格を有する(メタ)アクリレートと、(B)成分の(メタ)アクリルアミドの両方を有する化合物は、(A)成分に含まれるものとし、(B)成分には含まれないものとする。
【0020】
本発明で使用することができる(B)成分は、(メタ)アクリルアミド化合物であり、(A)成分100質量部に対して(B)成分0.1~15質量部を含む。ここで、(メタ)アクリルアミド化合物と(メタ)アクリレート化合物は区別される。(B)成分としては、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジエチルアクリルアミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。(B)成分の(メタ)アクリルアミド化合物としては、作業性の観点から、25℃において液状であり1官能であることが好ましい。
【0021】
(B)成分の具体例としては、KJケミカルズ株式会社製のDMAA(登録商標)、ACMO(登録商標)、DEAA(登録商標)などが、富士フイルム株式会社製の2官能アクリルアミドTM-1、4官能アクリルアミドFAM-401などが知られているが、これらに限定されるものではない。
【0022】
(A)成分100質量部に対して(B)成分0.1~15質量部を含む。(B)成分を当該範囲で含むことで、初期のチクソ比および促進試験後のチクソ比が4.0以上を維持出来ると共に粘度およびチクソ比の経時変化が抑制できる。さらに好ましくは、(A)成分100質量部に対して(B)成分が0.1~10質量部であり、最も好ましくは、(A)成分100質量部に対して(B)成分が0.5~10質量部である。
【0023】
本発明で使用することができる(C)成分としては、(A)成分および(B)成分以外の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が挙げられる。(A)成分および(B)成分以外の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であれば、(C)成分としては限定されず、1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。(A)成分を希釈する観点から、(C)成分は(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。さらに好ましい(C)成分は、(A)成分との相溶性を向上することができる観点から、水酸基を含まない(メタ)アクリレートモノマーである。ここで、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、メタクリロイルオキシ基とアクリロイルオキシ基とを合わせた表現である。また、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートとアクリレートとを合わせた表現である。(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、(メタ)アクリレート化合物の上位概念に相当し、(メタ)アクリレート化合物以外にも、(メタ)アクリル酸などが含まれる。また、(メタ)アクリレート化合物には、モノマー(低分子化合物)、さらに2量体以上のオリゴマーやポリマー(好ましくは分子量1000未満)が含まれる。
【0024】
(C)成分としての(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、(メタ)アクリロイルオキシ基を1~3個有する。すなわち、1~3官能の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。さらに、(A)成分を希釈することを考慮すると、分子量は1000以下であることが好ましい。
【0025】
(C)成分としての1官能の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ラウリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の鎖状構造を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート(n≒1)、エチレンオキサイド変性フタル酸(メタ)アクリレート等の芳香環構造を有する(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等の複素環構造を有する(メタ)アクリレート;エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート;等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
(C)成分としての2官能の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の具体例としては、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の鎖状構造を有する(メタ)アクリレート;ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート等の芳香環構造を有する(メタ)アクリレート;ジメタクリロイルイソシアヌレート等の複素環構造を有する(メタ)アクリレート;等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
(C)成分としての3官能の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の鎖状構造を有する(メタ)アクリレート;トリス(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等の複素環構造を有する(メタ)アクリレート;等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明で好ましい(C)成分としては、水酸基を含まない鎖状構造、水酸基を含まない脂環式構造または水酸基を含まない芳香族構造を有する(メタ)アクリレートモノマーである。水酸基を含まないことで(A)成分との相溶性を向上することができ、保管時に組成物が分離することを防止できる。鎖状構造を有するものとしてはイソノニルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレートなどが、脂環式構造を有するものとしてはイソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレ-トなどが、芳香環構造を有するものとしてはノニルフェノールEO変性アクリレート(n≒1)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。(C)成分の具体的な商品名としては、大阪有機化学工業株式会社製のINAA、IBXA、アルケマ株式会社製のSR440(登録商標)、三菱ケミカル株式会社製のアクリル酸-2-エチルヘキシル、東亞合成株式会社製の2-エチルヘキシルアクリレート、日立化成株式会社製のファンクリル(登録商標) FA-513AS、東亞合成株式会社製のアロニックス(登録商標) M-111などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本発明の光硬化性組成物においては、組成物に含まれる(C)成分の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が、水酸基を含まない鎖状構造、水酸基を含まない脂環式構造または水酸基を含まない芳香族構造を有する(メタ)アクリレートモノマーのみ含むことが最も好ましい。特に、分子量が1000以上である高分子量の(メタ)アクリレートオリゴマーや(メタ)アクリレートポリマーは、(A)成分との相溶性の観点から含まないことが最も好ましい。
【0030】
(A)成分100質量部に対して(C)成分は40~90質量部含まれることが好ましく、さらに好ましくは50~80質量部である。(C)成分は40質量部以上含まれると最適な取扱性を発現し、90質量部以下の場合は良好な硬化性を維持する。また、光硬化性組成物において、(B)成分と(C)成分との合計100質量部に対して(B)成分0.1~5質量部を含むことが、粘度とチクソ比を最適に保つことができる観点から好ましい。
【0031】
本発明で使用することができる(D)成分としては、光開始剤が挙げられる。光を照射することで(D)成分が分解してラジカル種が発生し、(A)~(C)成分がラジカル重合することができればよい。(D)成分としては、ジメトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、カルバゾール、2-ヒドロキシ-2-メチルフェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー、3-メチルアセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、3-ペンチルアセトフェノン、4-メトキシアセトフェノン、3-ブロモアセトフェノン、p-ジアセチルベンゼン、3-メトキシベンゾフェノン、4-アリルアセトフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-クロロ-4-ベンジルベンゾフェノン、3-クロロキサントーン、3,9-ジクロロキサントーン、3-クロロ-8-ノニルキサントーン、ベンゾイル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2-クロロチオキサトーンなど、ポリマー型としては2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパンのポリマー(オリゴマーを含む)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。特に好ましい(D)成分は、硬化物から発生するアウトガスを低減させる効果があるポリマー型の光開始剤である。当該ポリマー型の光開始剤は、基本構造が繰り返し入っていることから、2量体以上であればよく、光活性部位が複数存在するものとも言えるが、分子量が300以上の高分子量のポリマー(オリゴマーを含む)が好ましい。また、このポリマー型の光重合開始剤の分子量の上限は特に限定されないが、10000以下が好ましい。
【0032】
(D)成分の具体例としては、ポリマー型の光開始剤のLamberti社製のESACURE(登録商標) KIP-150(オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、分子量:204.7×n(2≦n≦5))などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
(A)成分100質量部に対して、(D)成分は0.1~10質量部含まれることが好ましい。さらに好ましくは、1.0~5.0質量部である。(D)成分は0.1質量部以上含まれると最適な取扱性を発現し、10質量部以下の場合は硬化性を維持する。
【0034】
本発明で使用することができる(E)成分としては、表面にシラノールが残留するアモルファスシリカが挙げられる。アモルファスシリカとは平均一次粒子径が1~100nmで、BET法による比表面積が10~300m/gの親水性シリカ粉を指す。製造後のアモルファスシリカは表面にシラノールが残留しているが、様々な表面処理によりシラノールに側鎖を付加させた化合物が存在する。本発明では(E)成分として表面にシラノールが残留するアモルファスシリカが適している。表面処理剤が残留してアウトガスにならないこと、また、(E)成分は(A)~(C)成分と組み合わせることでさらに低い粘度と高いチクソ比との両立と安定化に寄与する。
【0035】
(E)成分の具体例としては、日本アエロジル株式会社製のAEROSIL(登録商標)シリーズ OX50、50、90G、130、150、200、300、380などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
(A)成分100質量部に対して、(E)成分は1~30質量部含まれることが好ましく、さらに好ましくは、5~25質量部である。(E)成分は1質量部以上含まれると高いチクソ比を維持し、30質量部以下の場合は取扱性が良好である。
【0037】
本発明に係る光硬化性組成物は、本発明の特性を損なわない範囲において有機過酸化物を含んでいてもよい。これにより、光が当たらない部分を加熱により硬化させることができる。有機過酸化物の具体例を挙げると、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジt-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジn-プロピルパーオキシジカーボネート、ビス-(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジ2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカルボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジt-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート等のパーオキシエステル類;及びアセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアリルカーボネートなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本発明に係る光硬化性組成物は、本発明の特性を損なわない範囲において非反応性の可塑剤を含んでいてもよい。非反応性とは、本発明の(A)成分、(B)成分および(C)成分と反応してポリマー化しない化合物である。
【0039】
非反応性の可塑剤の具体例としては、ポリカルボン酸エステル系可塑剤として、芳香族ポリカルボン酸エステル、フタル酸エステル系可塑剤として、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)など;トリメリット酸エステル系可塑剤として、トリメリット酸トリオクチル(TOTM)、トリメリット酸トリイソデシル(TITM)など;ピロメリット酸エステル系可塑剤としてピロメリット酸テトラオクチルなど;脂肪族ポリカルボン酸エステル系可塑剤として、アジピン酸ジ2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸イソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジブチル(DBS)、マレイン酸ジ2-エチルヘキシル(DOM)、フマル酸ジブチル(DBF)、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル(DOZ)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル、クエン酸トリオクチル、グリセロールトリアセテートなど;リン酸エステル系可塑剤として、トリメチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、アルキルアリールホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ(クロロエチル)ホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルフェニルホスフェートなど;等が挙げられるがこれらに限定されない。また、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
非反応性の可塑剤としてエラストマーも使用することができる。25℃で固体または液体のエラストマーであれば使用することができるが、取扱性を考慮すると25℃で液体であることが好ましい。非反応性のエラストマーとしては、ポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、これらの単量体の共重合体、これらのジブロック重合体およびこれらのトリブロック重合体などゴム系のエラストマーが挙げられる。ブロック重合体としては、ポリスチレン-ポリイソブチレンジブロック共重合体やポリスチレン-ポリイソブチレン-ポリスチレントリブロック共重合体などが挙げられるがこれらに限定されない。当該成分は(A)~(C)成分と相溶性を有することが好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明に係る光硬化性組成物は、本発明の特性を損なわない範囲において、上記(A)~(E)成分以外の成分を含んでいてもよい。当該成分としては、例えば、顔料、染料などの着色剤、金属粉、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウムなどの無機充填剤、ポリスチレンフィラー、ポリウレタンフィラー、ポリ(メタ)アクリルフィラー、ゴムフィラーなどの有機充填剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、重合禁止剤、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤などが挙げられる。これらの他の成分の添加により、樹脂強度・接着強さ・作業性・保存性等に優れた組成物およびその硬化物が得られる。
【0042】
本発明に係る光硬化性組成物を光照射で硬化させる装置としては、紫外線、可視光等のエネルギー線を光源とする高圧水銀灯やLEDを有する照射装置が挙げられ、ベルトコンベアー型照射器やスポット照射器などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、積算光量としては20kJ/m以上であることが好ましく、より好ましくは30kJ/m以上である。
【0043】
本発明の光硬化性組成物は、初期のチクソ比(25℃)と60℃雰囲気下で2週間後のチクソ比(25℃)とが、ともに4.0以上である。60℃は促進試験における温度であるが、通常の保管温度である25℃以下では、さらにチクソ比が安定している。そのため、管理温度が60℃に限定される訳では無く、あくまでも60℃で促進試験を行った場合を指す。
【0044】
本発明の光硬化性組成物の用途としては、当該光硬化性組成物を含むシール剤が挙げられる。本発明のシール剤は、透湿性が低く、圧縮永久ひずみが小さいシール剤であり、さらに、粘度およびチクソ比の変化が少ないことから生産性が高い。特に、ハードディスクドライブのカバーシール向けに好適に使用できる。ハードディスクドライブのシール剤は、形状や寸法を厳密に管理することで筐体内部の不活性気体を外部環境への漏れや、外部環境からの水分の侵入を防ぐことができる。形状や寸法にバラツキが有る場合、当該部分からの漏れや侵入が発生する。
【0045】
本発明の他の実施形態としては、上記した本発明の光硬化性組成物を光照射により硬化させた硬化物である。かかる硬化物は、透湿性が低く、圧縮永久ひずみが小さい。そのため、上記したシール剤を硬化させた場合に、当該硬化物の持つ特性を有効に発現させることができる点で優れている。なお、硬化物を得るのに用いる光照射装置や積算光量は上記した通りである。
【実施例
【0046】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない(以下、光硬化性組成物を単に組成物とも呼ぶ)。
【0047】
[実施例1~6および比較例1~6]
実施例1~6および比較例1~6の組成物を調製するために下記成分を準備した。
【0048】
(A)成分:ポリイソブチレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物
・ポリイソブチレン骨格を有するアクリレート化合物(株式会社カネカ製 EPION(登録商標) EP400V)
(B)成分:(メタ)アクリルアミド化合物
・ジメチルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社製 DMAA(登録商標))
・アクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ株式会社製 ACMO(登録商標))
(B’)成分:(B)以外の化合物
・テトラヒドロフルフリルアクリレート(共栄社化学株式会社製 ライトアクリレート(登録商標)THF-A)
(C)成分:(A)成分および(B)成分以外の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物
・イソノニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製 INAA)
・ノニルフェノールEO変性アクリレート(n≒1)(東亞合成株式会社製 アロニックス(登録商標) M-111)
・イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製 IBXA)
・ジシクロペンタニルアクリレ-ト(日立化成株式会社製 ファンクリル(登録商標) FA-513AS)
・イソオクチルアクリレート(アルケマ株式会社製 SR440(登録商標))
(D)成分:光開始剤
・2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパンのオリゴマー(Lamberti社製 ESACURE(登録商標) KIP-150)
(E)成分:表面にシラノールが残留するアモルファスシリカ
・平均一次粒子径:16nm、比表面積(BET法):130m/gの親水性シリカ(日本アエロジル株式会社製 AEROSIL(登録商標)130)。
【0049】
次に、前記(A)~(E)成分およびその他成分を秤量し、撹拌機に投入した。その後、真空脱泡しながら撹拌機にて1時間撹拌した。詳細な調製量は表1に従い、数値は全て質量部で表記する。(A)成分100質量部に対する(B)成分(又は(B’)成分)と(C)成分との合計含有量と、(A)成分100質量部に対する(C)成分の含有量も合わせて記載する。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例1~6および比較例1~6の組成物に対して外観(硬化前)確認、厚膜硬化性確認、粘度およびチクソ比測定、促進試験、圧縮永久歪み測定および透湿度測定(感湿センサー法)を実施し、その結果を表2にまとめた。
【0052】
[外観(硬化前)確認]
試験管に組成物を10g採取して、雰囲気温度25℃で3日間放置した。目視により組成物の白濁の有無を確認して、「外観(硬化前)」とした。「透明」であることが好ましいが、「やや白濁」であっても厚膜硬化性が3mm以上であれば問題は無い。
【0053】
[厚膜硬化性確認]
内径10mmのポリプロピレン製円筒形容器に組成物を10mmの深さになる様に入れた。開口部からベルトコンベアー型の紫外線照射器により積算光量60kJ/mを照射して硬化させた。硬化物を円筒形容器から取り出し、未硬化部分を拭き取り硬化物の厚さをノギスにより測定して「厚膜硬化性(mm)」とした。深部硬化性を考慮すると3mm以上であることが好ましい。
【0054】
[粘度およびチクソ比測定]
レオメーターにより以下の仕様により粘度およびチクソ比を測定した。サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のHAAKE MARSIIIを用いた。剪断速度が20s-1の時の粘度を粘度1、剪断速度が2s-1の時の粘度を粘度2とした。粘度1の数値を「粘度(Pa・s)」とし、粘度2/粘度1の数値を「チクソ比」とした。
【0055】
測定仕様
・測定時の雰囲気温度:25℃
・コーン:C35/2(角度 2°)。
【0056】
[促進試験]
組成物につき、前記の「粘度およびチクソ比測定」により粘度およびチクソ比を測定した。その結果を「初期」とした。その後、当該組成物を熱風乾燥炉で60℃雰囲気下にて14日間放置して、熱風乾燥炉から取り出した。室温に戻ったら、前記の「粘度およびチクソ比測定」により再度、粘度およびチクソ比を測定した。その結果を「促進試験後」とした。「変化率(%)」=(「促進試験後」-「初期」)/「初期」×100により粘度とチクソ比の「変化率(%)」とした。粘度の変化率は-20%~50%が好ましく、さらに好ましくは-20%~30%である。初期のチクソ比および促進試験後のチクソ比が共に4.0以上であることが好ましく、チクソ比の変化率は-30%~30%であることが好ましい。これにより、組成物を形状や寸法にバラツキが発生せずに塗布することができる。
【0057】
[圧縮永久歪み測定]
厚さ1mmのアルミニウム板の上に組成物をビート状に幅1mm×高さ(厚さ)1mmの塗布を行った。ベルトコンベアー型の紫外線照射機により積算光量60kJ/mを照射して硬化してビートを形成した。この時点で「ビートの厚さ(mm)」を測定した。その後、ポリテトラフルオロエチレン加工されたブロックで高さ方向で圧縮率45%に押しつぶして固定した(この時点のビートの高さである「圧縮時のクリアランス(mm)」は「0.55mm」であった)。その後、圧縮することなく、60℃雰囲気下で72時間放置後、室温に戻った後に、ビートの高さ(「圧縮後のビートの厚さ(mm)」)の測定を行った。下記数式2を「圧縮永久歪み(%)」とした。本発明においてシール性を維持するためにも、圧縮永久歪みは30%以下が好ましく、さらに好ましくは15%以下である。また、上記圧縮率は、下記数式3により求めた。
【0058】
【数1】
【0059】
[透湿度測定(感湿センサー法)]
感湿センサー法により測定を行った。縦100mm×横100mm×高さ0.25mmの枠に組成物を泡が混入しないように流し込んだ。その後、ベルトコンベアー型の紫外線照射機により積算光量60kJ/mを照射してシート状の硬化物を作製した。Lyssy製のL80-5000を水蒸気透過度測定機を用いて、40℃×90%RH雰囲気下で測定を行った。その結果を「透湿度(g/m・24h)」とした。詳細な試験方法はJIS K 7129:2008に準拠した。本発明では20g/m・24h以下が適している。
【0060】
【表2】
【0061】
(B)成分または(B’)成分および(C)成分の極性により、(A)成分との相溶性が良くない状態であると外観(硬化前)が透明でなくなると考えられる。しかしながら、外観の状態にかかわらず、実施例および比較例において厚膜硬化性は7mm以上あり硬化性は良好であることが分かる。粘度およびチクソ比において、初期と促進試験後の変化率を確認しているが、実施例1~6において変化が低く、チクソ比は初期および促進試験後においても4.0を超えており、チクソ性が維持されていることがわかる。一方、比較例1、3~6では、初期のチクソ比が4.0を超えていても促進試験後にはチクソ比が4.0を下回るか、変化率が-30%~30%に収まっていない。比較例2では、(B)成分を含んでいるものの、そもそも初期においてチクソ比が低い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の光硬化性組成物を用いたシール剤は、その優れた粘度およびチクソ比の安定性により作業性が良好であって、シール剤を効率的に形成することができる。また、シール剤の透湿性が低く、復元性が良好であることから、ハードディスクドライブの筐体をシールするカバーシールをはじめ、その他の電気・電子部品のシール剤として有用である。