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特許7368753シーラント材組成物およびそれを用いたタイヤ
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  • 特許-シーラント材組成物およびそれを用いたタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】シーラント材組成物およびそれを用いたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20231018BHJP
   C08K 3/011 20180101ALI20231018BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C09K3/10 A
C09K3/10 C
C09K3/10 Z
C08K3/011
C08L21/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021150111
(22)【出願日】2021-09-15
(65)【公開番号】P2023042783
(43)【公開日】2023-03-28
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 悠一郎
(72)【発明者】
【氏名】齋木 丈章
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/125275(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/246506(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0202829(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0101659(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/10-3/12
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内表面にシーラント層を備えた空気入りタイヤの前記シーラント層を構成するシーラント材組成物であって、
(A)ゴム成分、
(B)可塑剤、および
(C)硫黄および加硫促進剤を含む架橋成分
を含み、
直径8mmのパラレルプレート上に厚み1.2mmの前記シーラント材組成物からなる試料を設置し、前記パラレルプレートの回転方向に3000Paのせん断応力を60分間かけた際の前記試料の変形量が1000%以下であり
30℃での複素粘度が、1000~20000Pa・sであり、
前記(B)可塑剤の配合量が、前記(A)ゴム成分100質量部に対し、20~100質量部であり、
前記(C)架橋成分の配合量が、前記(A)ゴム成分100質量部に対し、前記硫黄および前記加硫促進剤の配合量の合計として、1.0~3.0質量部であり、
前記加硫促進剤が、スルフェンアミド系加硫促進剤およびチアゾール系加硫促進剤から選択された1種以上である、
ことを特徴とするシーラント材組成物。
【請求項2】
前記変形量が700%以下であることを特徴とする請求項1に記載のシーラント材組成物。
【請求項3】
前記加硫促進剤の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対し0.5質量部以上であることを特徴とする請求項に記載のシーラント材組成物。
【請求項4】
前記(A)ゴム成分が、天然ゴム、合成イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ブタジエンゴムまたはこれらのブレンドであることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のシーラント材組成物。
【請求項5】
前記(B)可塑剤がオイルまたは液状ゴムであり、前記オイルまたは液状ゴムの配合量が、前記ゴム成分100質量部に対し20~100質量部であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のシーラント材組成物。
【請求項6】
粘着付与剤をさらに含み、前記粘着付与剤が炭化水素樹脂であり、前記炭化水素樹脂の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対し10~100質量部であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のシーラント材組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載のシーラント材組成物を使用したタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラント材組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいて、トレッド部におけるインナーライナー層のタイヤ径方向内側にシーラント層を設けた空気入りタイヤが知られている。このような空気入りタイヤでは、釘等の異物がトレッド部に突き刺さった際に、その貫通孔にシーラントが流入することにより、空気圧の減少を抑制し、走行を維持することが可能になる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、主要エラストマーとしての、30モル%よりも多い共役ジエンから得られる繰り返し単位含有量を有する不飽和ジエンエラストマー、30phrと90phrの間の質量含有量の炭化水素樹脂、Tg(ガラス転移温度)が-20℃よりも低く、5phr~60phr未満の質量含有量を有する液体可塑剤;および、0~30phr未満の充填剤、を少なくとも含むことを特徴とする、インフレータブル物品におけるパンク防止層として用いるためのセルフシーリングエラストマー組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5525522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、釘等の異物がトレッド部に突き刺さった際に形成された貫通孔に対するシール性に改善の余地があった。一方で、シール性を向上するには、タイヤ走行時に柔らかいシーラント材組成物が流れないようにする必要があるが、上記従来技術ではシーラント材組成物がタイヤトレッドの幅方向の中心に向かって流れてしまう問題があり、その解決が求められている。
本発明は、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ゴム成分、可塑剤および架橋成分を配合し、特定条件下でせん断応力をかけたときの変形量(歪)が特定値以下であるシーラント材組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0007】
すなわち本発明は、タイヤ内表面にシーラント層を備えた空気入りタイヤの前記シーラント層を構成するシーラント材組成物であって、
(A)ゴム成分、
(B)可塑剤、および
(C)架橋成分
を含み、
直径8mmのパラレルプレート上に厚み1.2mmの前記シーラント材組成物からなる試料を設置し、前記パラレルプレートの回転方向に3000Paのせん断応力を60分間かけた際の前記試料の変形量が1000%以下である
ことを特徴とするシーラント材組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシーラント材組成物は、(A)ゴム成分、(B)可塑剤、および(C)架橋成分を配合するとともに、直径8mmのパラレルプレート上に厚み1.2mmのシーラント材組成物からなる試料を設置し、前記パラレルプレートの回転方向に3000Paのせん断応力を60分間かけた際の前記試料の変形量が1000%以下であることを特徴としている。この構成によれば、タイヤ走行時のシーラント材組成物の変形量(歪)が適切に調整され、タイヤ走行時にシーラント材組成物がタイヤトレッドの幅方向の中心に向かって流れてしまう問題を解決でき、これにより、釘等の異物がトレッド部に突き刺さった際に形成された貫通孔に対するシール性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】変形量の測定を説明するための図である。
図2】従来技術と本発明のシーラント材組成物におけるせん断応力と変形量との関係異を示す模式的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(A)ゴム成分
本発明で使用される(A)ゴム成分は、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)等のジエン系ゴムや、ブチルゴム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、本発明の効果向上の観点から、(A)ゴム成分はNR、IR、SBR、BRまたはこれらのブレンドであることが好ましい。
【0011】
(B)可塑剤
本発明で使用される可塑剤としては、例えば、カルボン酸エステル可塑剤、リン酸エステル可塑剤、スルホン酸エステル可塑剤、オイル、液状ゴム等が挙げられる。
カルボン酸エステル可塑剤としては、公知のフタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テトラヒドロフタル酸エステル、アジピン酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、トリメリット酸エステル、リノール酸エステル、オレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、リシノール酸エステル等がある。
リン酸エステル可塑剤としては、公知のトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、ジフェニルモノ-o-キセニルホスフェート等がある。
スルホン酸エステル可塑剤としては、公知のベンゼンスルホンブチルアミド、トルエン
スルホンアミド、N-エチル-トルエンスルホンアミド、N-シクロヘキシル-p-トルエンスルホンアミド等がある。
オイルとしては、公知のパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等の鉱物油系オイルが挙げられる。
液状ゴムとしては、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエンおよび液状ポリスチレンブタジエン等が挙げられ、その重量平均分子量は1000~100000が好ましく、1500~75000がさらに好ましい。なお、本発明で言う平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析されるポリスチレン換算の数または重量平均分子量を意味する。なお本発明で使用される液状ゴムは、23℃で液体である。したがって、この温度では固体である前記のゴム成分とは区別される。
上記の中でも、本発明の効果向上の観点から、可塑剤としてはオイルまたは液状ゴムが好ましい。
【0012】
(C)架橋成分
本発明で使用される架橋成分としては、例えばシール性を向上させる成分として硫黄、加硫促進剤等が挙げられる。
本発明で使用される加硫促進剤としては、例えば、公知のスルフェンアミド系、チアゾール系、グアジニン系、チオウレア系、ジチオカルバミン酸塩系、キサントゲン酸塩系、チウラム系の加硫促進剤等が挙げられ、中でも下記で説明する変形量(歪)を本発明で規定する範囲に調整しやすいという観点から、スルフェンアミド系加硫促進剤およびチアゾール系加硫促進剤から選択された1種以上が好ましい。
【0013】
本発明のシーラント材組成物は、好適な形態として、粘着付与剤を配合することができる。粘着付与剤としては、例えば炭化水素樹脂が挙げられる。炭化水素樹脂としては、原油を蒸留、分解、改質などの処理をして得られた成分を重合して製造される芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂等の石油系樹脂が挙げられる。石油系樹脂としては、例えばC5系石油樹脂(イソプレン、1,3-ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルブテン、ペンテンなどの留分を重合した脂肪族系石油樹脂)、C9系石油樹脂(α-メチルスチレン、o-ビニルトルエン、m-ビニルトルエン、p-ビニルトルエンなどの留分を重合した芳香族系石油樹脂)、C5C9共重合石油樹脂などが例示される。
【0014】
また、粘着付与剤のガラス転移温度(Tg)は、0℃よりも高いことが好ましい。このようにTgを規定することにより、流れ性が向上する。本発明で言うガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度を指すものとする。
さらに好ましい前記Tgは、30℃以上90℃以下である。
また、粘着付与剤の数平均分子量は、400~2000であることが好ましい。この範囲の数平均分子量を有することにより、粘着力が向上する。
【0015】
(シーラント材組成物の配合割合)
本発明のシーラント材組成物において、(B)可塑剤の配合量は、(A)ゴム成分100質量部に対し、例えば20~100質量部であり、好ましくは30~90質量部である。
また、本発明のシーラント材組成物において、(C)架橋成分の配合量は、(A)ゴム成分100質量部に対し、硫黄および加硫促進剤の配合量の合計として、例えば1.0質量部以上であり、好ましくは1.0~3.0質量部であり、さらに好ましくは1.5~2.5質量部である。
なお加硫促進剤の配合量は、(A)ゴム成分100質量部に対し、例えば0.5質量部以上であり、好ましくは0.5~2.5質量部であり、さらに好ましくは0.5~1.5質量部である。
また、本発明のシーラント材組成物において、粘着付与剤の配合量は、(A)ゴム成分100質量部に対し、例えば10~100質量部であり、好ましくは20~80質量部である。
【0016】
(その他成分)
本発明におけるシーラント材組成物には、前記した成分以外の、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛;老化防止剤;カーボンブラック等の各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とすることができ、これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
本発明におけるシーラント材組成物は、加硫剤として硫黄を配合する場合、動的架橋することも可能である。
【0017】
本発明におけるシーラント材組成物は、30℃での複素粘度が、1000~20000Pa・sであることが好ましい。30℃での複素粘度が、1000Pa・s以上であることにより、シーラント材組成物が過度に流動せず、優れた流れ性を示し、シール性の劣化を防止できる。また、20000Pa・s以下であることにより、シール性が良好となるという効果を奏する。30℃での複素粘度は、3000~15000Pa・sが好ましく、5000~10000Pa・sがさらに好ましい。
なお複素粘度は、ASTM D4440に記載の方法により測定できる。
【0018】
本発明におけるシーラント材組成物は、直径8mmのパラレルプレート上に厚み1.2mmの前記シーラント材組成物からなる試料を設置し、前記パラレルプレートの回転方向に3000Paのせん断応力を60分間かけた際の前記試料の変形量が1000%以下であることを特徴とする。
前記試料の変形量は、次の条件で測定される。
測定装置:TAインスツルメンツ社製動的粘弾性測定器ARES-G2
治具:直径8mmパラレルプレート
試料厚み:1.2mm
せん断応力:3000Pa
時間:60分
【0019】
以下、図1を参照しながら前記試料の変形量の測定について説明する。
前記測定装置は、主要部分として回転可能な治具1および治具1に対向する治具2を有する。治具1および2は、パラレルプレート12および14をそれぞれ備えてなる。まず、直径8mmのパラレルプレート12上に厚み1.2mmの前記シーラント材組成物からなる試料Sを設置し、パラレルプレート12ともう一つのパラレルプレート14との間で試料Sを固定する。試料Sの厚みは1.2mmとする。パラレルプレート12のみを回転させ、その回転方向に3000Paのせん断応力を60分間かけ、60分後の試料Sの変形量(歪)を測定する。測定室内の温度は80℃とする。
【0020】
本発明において、前記試料の変形量を達成するには、硫黄および前記加硫促進剤の配合量の合計並びに加硫促進剤の配合量を上述の好ましい範囲に調整するとともに、可塑剤の配合量を上述の好ましい範囲に調整すること等の手段がある。
【0021】
図2は、従来技術と本発明のシーラント材組成物におけるせん断応力と変形量との関係異を示す模式的なグラフである。図2に示すように従来技術のシーラント材組成物(試料3)は、上記せん断応力を加えていくと、時間の経過とともに変形量も増加し、60分後には変形量1000%を超えてしまう。この従来技術のシーラント材組成物では、上述したようにタイヤ走行によってシーラント材組成物がタイヤトレッドの幅方向の中心に向かって流れてしまい、所望のシール性を発揮することができない。一方、本発明のシーラント材組成物(試料1、2)は、上記せん断応力を60分間加えても、変形量は1000%に到達しない。このような本発明のシーラント材組成物は、タイヤ走行時のシーラント材組成物の流れを抑制でき、釘等の異物がトレッド部に突き刺さった際に形成された貫通孔に対するシール性も向上する。
本発明者らは上記実験を繰り返した結果、シーラント材組成物の流れ性と、前記試料の変形量との間に相関関係が存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
本発明において、前記変形量は、100~1000%が好ましく、100~700%がさらに好ましい。
【0023】
本発明のシーラント材組成物は、空気入りタイヤにおいて、トレッド部におけるインナーライナー層のタイヤ径方向内側にシーラント層として設けることができる。該シーラント層は、シート状に成型された本発明のシーラント材組成物からなるシーラント材をタイヤ内表面の全周に亘って貼付することで形成することができる。これとは別に、シーラント層は、本発明のシーラント材組成物からなり紐状または帯状に成型されたシーラント材をタイヤ内表面に螺旋状に貼付することでも形成できる。シーラント材は加硫物であることができる。該シーラント層は、釘等の異物がトレッド部に突き刺さった際に、その貫通孔にシーラント層を構成するシーラント材が流入することにより、空気圧の減少を抑制し、走行を維持することを可能にするものである。シーラント層は、例えば0.5mm~5.0mmの厚さを有する。
【実施例
【0024】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。なお、下記例中、「部」とあるのは「質量部」を意味する。
【0025】
実施例1~15および比較例1~3
表1に示す配合(質量部)において、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで40分間混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で180℃、10分間プレス加硫して厚さ3mmのシーラント材を得た。
上記で得られたシーラント材の変形量を、上記記載の方法で測定した。
また、上記で得られたシーラント材の30℃での複素粘度を、上記記載の方法で測定した。
【0026】
タイヤサイズ215/55R17であり、トレッド部と一対のサイドウォール部と一対のビード部とを備え、トレッド部におけるインナーライナー層のタイヤ径方向内側にシーラントからなるシーラント層を有する空気入りタイヤにおいて、シーラント層として上記シーラント材を貼り付け、各種試験タイヤを製作した。得られた試験タイヤについて、下記物性を測定した。
【0027】
シーラント材の流動性:
試験タイヤをリムサイズ16×6.5Jのホイールに組み付けてドラム試験機に装着し、空気圧を160kPaとし、荷重を8.5kNとし、走行速度を80km/hとする高撓み試験を80時間実施した後、シーラントの流動状態を調べた。評価結果は3mmのシーラントの厚みがシーラント端からの各位置で試験後に1.5mm以下となっていたときを流れたとし、シーラントの端から1cmの位置で流れが認められなかった場合を「○」で示し、シーラントの端から1cmの位置で流れが認められ、かつ2cmの位置で流れが認められなかった場合を「△」で示し、シーラントの端から2cmの位置で流れが認められた場合を「×」で示した。
結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
*1:NR(SIR20)
*2:BR(日本ゼオン株式会社製Nipol 1220)
*3:SBR(日本ゼオン株式会社製Nipol 1502)
*4:粘着付与剤1(エクソンモービル社製Escorez 2101、C5/C9石油樹脂)
*5:粘着付与剤2(ENEOS株式会社製T-REZ RC115、C5石油樹脂)
*6:可塑剤1(CRAY VALLEY社製Ricon 154、液状ブタジエンゴム)
*7:可塑剤2(出光興産株式会社社製ダイアナプロセスオイルNP250(ナフテン系プロセスオイル))
*8:可塑剤3(出光興産株式会社社製ダイアナプロセスオイルPW-380(パラフィンオイル))
*9:カーボンブラック(カーボンブラックN660)
*10:硫黄(鶴見化学工業株式会社製金華印油入微粉硫黄)
*11:グアニジン系加硫促進剤DPG(大内新興化学工業株式会社製ノクセラーD)
*12:チウラム系加硫促進剤TBzTD(三新化学工業株式会社製サンセラーTBZTD)
*13:チアゾール系加硫促進剤DM(三新化学工業株式会社製サンセラーDM-PO)
*14:スルフェンアミド系加硫促進剤CZ(大内新興化学工業株式会社製ノクセラーCZ-G)
【0030】
表1の結果から、各実施例のシーラント材組成物は、(A)ゴム成分、(B)可塑剤、および(C)架橋成分を含み、直径8mmのパラレルプレート上に厚み1.2mmの前記シーラント材組成物からなる試料を設置し、前記パラレルプレートの回転方向に3000Paのせん断応力を60分間かけた際の前記試料の変形量が1000%以下であるので、流れ性が向上した。
これに対し、比較例1~3は上記変形量がいずれも1000%を超えているので、流れ性が悪化した。
【符号の説明】
【0031】
1、2 治具
12、14 パラレルプレート
図1
図2