(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】リアクトル、コンバータ、及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20231018BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
H01F37/00 J
H01F37/00 M
H01F37/00 G
H02M3/155 Z
(21)【出願番号】P 2019229734
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 健人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩平
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-029594(JP,A)
【文献】特開2017-055096(JP,A)
【文献】特開2007-067283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される部分を有する磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとの相互の位置を規定する樹脂部材と、
前記コイル、前記磁性コア、及び前記樹脂部材を含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記磁性コアは、
前記巻回部の内側に配置されるミドルコア部と、
前記巻回部の外側で前記ミドルコア部と並列される二つのサイドコア部と、
前記巻回部の両端部で前記ミドルコア部と前記サイドコア部とをつなぐ二つのエンドコア部とを備え、
前記ケースは、
前記組合体が載置される底板部と、
前記組合体の周囲を囲む矩形枠状の側壁部と、
前記底板部に向かい合う開口部とを備え、
前記側壁部は、一対の長辺部及び一対の短辺部を備え、
前記組合体は、前記巻回部の外周面のうち前記サイドコア部の各々に面しない露出面が前記長辺部側に向くように配置され、
前記樹脂部材は、
一方の前記短辺部に向かって突出する張出し部
と、
前記巻回部の各端部に設けられる一対の枠状部材とを備え、
前記各枠状部材は、
前記ミドルコア部と前記サイドコア部との間に配置される一対の第一枠片と、
前記巻回部における前記露出面に沿うように前記一対の第一枠片をつなぐ第二枠片とを備え、
前記張出し部は、一方の前記枠状部材における前記第二枠片に設けられており、
前記ケースを平面視したとき、一方の前記短辺部を含む前記側壁部の内面と前記張出し部とで構成される隙間を備える、
リアクトル。
【請求項2】
一つの巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される部分を有する磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとの相互の位置を規定する樹脂部材と、
前記コイル、前記磁性コア、及び前記樹脂部材を含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記磁性コアは、
前記巻回部の内側に配置されるミドルコア部と、
前記巻回部の外側で前記ミドルコア部と並列される二つのサイドコア部と、
前記巻回部の両端部で前記ミドルコア部と前記サイドコア部とをつなぐ二つのエンドコア部とを備え、
前記ケースは、
前記組合体が載置される底板部と、
前記組合体の周囲を囲む矩形枠状の側壁部と、
前記底板部に向かい合う開口部とを備え、
前記側壁部は、一対の長辺部及び一対の短辺部を備え、
前記組合体は、前記巻回部の外周面のうち前記サイドコア部の各々に面しない露出面が前記長辺部側に向くように配置され、
前記樹脂部材は、一方の前記短辺部に向かって突出する張出し部を備え、
前記張出し部は、
前記底板部側に位置する第一面と、
前記開口部側に位置する第二面と、
前記第一面と前記第二面とを貫通する孔とを備え、
前記封止樹脂部は、
前記孔の内部に充填される第一樹脂部と、
前記第一樹脂部と連続して、前記第一面及び前記第二面に接して設けられる第二樹脂部とを備え、
前記ケースを平面視したとき、一方の前記短辺部を含む前記側壁部の内面と前記張出し部とで構成される隙間を備える、
リアクトル。
【請求項3】
前記樹脂部材は、前記磁性コアの少なくとも一部を覆うモールド樹脂部を備え、
前記張出し部は、前記モールド樹脂部に設けられている請求項
2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記組合体は、前記巻回部の軸方向が前記底板部に平行となるように前記ケースに収納されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記張出し部は、前記開口部側に配置される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記張出し部における突出方向の先端は、前記短辺部の内面に接する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記張出し部は、
前記底板部側に位置する第一面と、
前記開口部側に位置する第二面と、
前記第一面と前記第二面とを貫通する孔とを備え、
前記封止樹脂部は、
前記孔の内部に充填される第一樹脂部と、
前記第一樹脂部と連続して、前記第一面及び前記第二面に接して設けられる第二樹脂部とを備える請求項
1に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記短辺部は、前記張出し部を支持する取付け座を有し、
前記張出し部と前記取付け座とが締結されている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項9】
前記ケースを平面視したとき、前記隙間の直径が4mm以上である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項10】
請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載のリアクトルを備える、
コンバータ。
【請求項11】
請求項
10に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトル、コンバータ、及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コイルと、磁性コアと、コイルと磁性コアとの組合体を収納するケースと、ケース内に充填されて組合体の外周を覆う封止樹脂とを備えるリアクトルを開示する。コイルは、巻線を巻回してなる二つのコイル素子を備える。以下、コイル素子を巻回部と呼ぶ。磁性コアは、各巻回部に覆われる一対の内側コア部と、一対の内側コア部を挟むように巻回部の外側に配置される一対の外側コア部とを備える。特許文献1は、封止樹脂をケースの底部側から開口側に向かって充填するための樹脂導入路をケースの側壁部に設けることを開示する。
【0003】
特許文献2は、組合体の形態として、一つの巻回部を有するコイルと、二つのE字状のコア片を有する磁性コアとを備える組合体を開示する。コア片は、コイルの端面に配置される板状の連結部と、連結部の中央部分から突出する内コア突部と、連結部の両縁近傍の部分からそれぞれ突出する外周部とを備え、外観がE字状となっている。内コア突部は、巻回部内に配置される。外周部は、コイルの外周面の一部を覆うように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-131567号公報
【文献】特開2016-201509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一つの巻回部を有するコイルと二つのE字状のコア片とを備える組合体をケースに収納し、ケース内に封止樹脂を充填してリアクトルを得ることが考えられている。ケース内に封止樹脂を充填するにあたり、特許文献1に開示されるように、ケースの側壁部に樹脂導入路を設ける場合、樹脂導入路を形成するための特別な加工が必要になる。また、樹脂導入路を形成する必要上、ケースの側壁部の厚みを大きくする必要がある。
【0006】
また、リアクトルの小型化が望まれている。ここでのリアクトルの小型化とは、リアクトルの設置面積が小さく、かつ組合体とケースとの間隔が小さいことを言う。従って、一つの巻回部を有するコイルを備える組合体の形態において、リアクトルの小型化を図りながら、ケース内に封止樹脂を良好に充填できる構造が望まれる。
【0007】
本開示は、小型で、生産性に優れるリアクトルを提供することを目的の一つとする。また、本開示は、上記リアクトルを備えるコンバータを提供することを別の目的の一つとする。更に、本開示は、上記コンバータを備える電力変換装置を提供することを他の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のリアクトルは、
一つの巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される部分を有する磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとの相互の位置を規定する樹脂部材と、
前記コイル、前記磁性コア、及び前記樹脂部材を含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記磁性コアは、
前記巻回部の内側に配置されるミドルコア部と、
前記巻回部の外側で前記ミドルコア部と並列される二つのサイドコア部と、
前記巻回部の両端部で前記ミドルコア部と前記サイドコア部とをつなぐ二つのエンドコア部とを備え、
前記ケースは、
前記組合体が載置される底板部と、
前記組合体の周囲を囲む矩形枠状の側壁部と、
前記底板部に向かい合う開口部とを備え、
前記側壁部は、一対の長辺部及び一対の短辺部を備え、
前記組合体は、前記巻回部の外周面のうち前記サイドコア部の各々に面しない露出面が前記長辺部側に向くように配置され、
前記樹脂部材は、一方の前記短辺部に向かって突出する張出し部を備え、
前記ケースを平面視したとき、一方の前記短辺部を含む前記側壁部の内面と前記張出し部とで構成される隙間を備える。
【0009】
本開示のコンバータは、本開示のリアクトルを備える。
【0010】
本開示の電力変換装置は、本開示のコンバータを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示のリアクトルは、小型で、生産性に優れる。本開示のコンバータ及び本開示の電力変換装置は、小型で、生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るリアクトルの概略平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るリアクトルを側面から見た概略部分断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係るリアクトルに備える組合体の一部の概略分解斜視図である。
【
図4】
図4は、封止樹脂部を形成する工程を示す図であり、上面から見た概略平面図である。
【
図5】
図5は、封止樹脂部を形成する工程を示す図であり、側面から見た概略部分断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態2に係るリアクトルを側面から見た概略部分断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態3に係るリアクトルの概略平面図である。
【
図8】
図8は、実施形態3に係るリアクトルを側面から見た概略部分断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態4に係るリアクトルを側面から見た概略部分断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態5に係るリアクトルの概略平面図である。
【
図11】
図11は、実施形態5に係るリアクトルを側面から見た概略部分断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態6に係るリアクトルの概略平面図である。
【
図13】
図13は、実施形態6に係るリアクトルを側面から見た概略部分断面図である。
【
図14】
図14は、実施形態7に係るリアクトルの概略平面図である。
【
図15】
図15は、ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す概略構成図である。
【
図16】
図16は、コンバータを備える電力変換装置の一例を示す概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0014】
(1)本開示の実施形態に係るリアクトルは、
一つの巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される部分を有する磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとの相互の位置を規定する樹脂部材と、
前記コイル、前記磁性コア、及び前記樹脂部材を含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記磁性コアは、
前記巻回部の内側に配置されるミドルコア部と、
前記巻回部の外側で前記ミドルコア部と並列される二つのサイドコア部と、
前記巻回部の両端部で前記ミドルコア部と前記サイドコア部とをつなぐ二つのエンドコア部とを備え、
前記ケースは、
前記組合体が載置される底板部と、
前記組合体の周囲を囲む矩形枠状の側壁部と、
前記底板部に向かい合う開口部とを備え、
前記側壁部は、一対の長辺部及び一対の短辺部を備え、
前記組合体は、前記巻回部の外周面のうち前記サイドコア部の各々に面しない露出面が前記長辺部側に向くように配置され、
前記樹脂部材は、一方の前記短辺部に向かって突出する張出し部を備え、
前記ケースを平面視したとき、一方の前記短辺部を含む前記側壁部の内面と前記張出し部とで構成される隙間を備える。
【0015】
本開示のリアクトルは、コイルにおける巻回部の外周面のうちサイドコア部の各々に面しない露出面がケースにおける側壁部の長辺部側に向くように、組合体がケースに収納されている。以下、この配置形態を直立型と呼ぶ。直立型には、更に横型と縦型とがある。横型は、巻回部における上記露出面が側壁部の長辺部側に向き、かつ巻回部の軸方向がケースの底板部に平行となるように、組合体がケースに収納されている。縦型は、巻回部における上記露出面が側壁部の長辺部側に向き、かつ巻回部の軸方向がケースの底板部に直交するように、組合体がケースに収納されている。一方、特許文献2に記載されたリアクトルは、巻回部における上記露出面がケースの底板部及び開口部側に向くように、組合体がケースに収納されている。つまり、特許文献2に記載されたリアクトルは、サイドコア部の各々がケースの側壁部に面するように、組合体がケースに収納されている。以下、特許文献2に記載されたリアクトルにおける組合体の配置形態を平置き型と呼ぶ。
【0016】
本開示のリアクトルは、巻回部における上記露出面が側壁部に向くため、コイルの熱をケースに放出し易い。よって、組合体の配置形態が直立型である場合、平置き型である場合に比較して、放熱性に優れる。放熱性を向上するにあたり、巻回部における上記露出面の面積が、巻回部におけるサイドコア部の各々に向き合う面の面積よりも大きいことが挙げられる。巻回部における上記露出面の面積がサイドコア部の各々に向き合う面の面積よりも大きいとき、組合体の配置形態が直立型である場合、平置き型である場合に比較して、ケースの底板部に対する組合体の設置面積を小さくできる。このような本開示のリアクトルは、放熱性に優れる上に、薄型であり、小型である。
【0017】
本開示のリアクトルは、組合体の構成部材である樹脂部材に、側壁部における一方の短辺部に向かって突出する張出し部を備える。そして、本開示のリアクトルは、ケースを平面視したとき、張出し部が向かう一方の短辺部を含む側壁部の内面と張出し部とで構成される隙間を備える。本開示のリアクトルは、上記隙間を備えることで、封止樹脂部を形成する際、ケース内に組合体を収納した状態で、上記隙間から封止樹脂部となる樹脂をケース内に充填できる。例えば、ケース内への樹脂の充填は、上記隙間に樹脂を注入するノズルを挿入し、ノズルを通してケースの底板部側から樹脂を注入することができる。隙間の大きさは張出し部の大きさに応じて調整でき、大径のノズルを挿入できる隙間も容易に形成することができる。ノズルの径が大きければ、封止樹脂部となる樹脂の充填作業を効率的に行うことができる。よって、本開示のリアクトルは生産性に優れる。
【0018】
本開示のリアクトルは、封止樹脂部を形成する際、上記隙間にノズルを挿入して樹脂を注入することができる。そのため、本開示のリアクトルは、ケースの側壁部に樹脂導入路を設ける必要がなく、ケースに対して特別な加工が必要ない。よって、本開示のリアクトルは、ケースの製造性に優れ、ひいては生産性に優れる。また、ケースの側壁部に樹脂導入路を設ける必要がなく、側壁部の厚みを大きくする必要がない。本開示のリアクトルは、一方の短辺部側に設けられる上記隙間にノズルを挿入して樹脂を注入することができる。そのため、本開示のリアクトルは、他方の短辺部及び長辺部に張出し部がある場合に比較して、一方の短辺部を除く側壁部と組合体との間隔を小さくできる。よって、本開示のリアクトルは小型化が可能となる。
【0019】
その他、本開示のリアクトルは、以下の効果が期待できる。上記隙間にノズルを挿入して樹脂を注入した場合、一方の短辺部側から樹脂が注入され、他方の短辺部側に向かって樹脂が流れることになる。具体的には、ノズルから注入された樹脂は、一方の短辺部側から組合体と長辺部との間に回り込み、他方の短辺部側で合流する。そのため、樹脂を注入した箇所から遠い箇所に樹脂の合流点が生じることになる。この場合、一方の短辺部側から他方の短辺部側に向かって樹脂が流れている間に、樹脂に混入した気泡が浮き上がり、樹脂内の気泡が除去され易い。よって、一方の短辺部側から樹脂を注入することで、封止樹脂部における気泡の残留を低減することができる。また、一方の短辺部側から樹脂を注入すると、樹脂の合流点が他方の短辺部側の一箇所になる。樹脂の合流点は、気泡の巻き込みが発生し易いため、少ない方が好ましい。一方の短辺部側から樹脂を注入することで、樹脂の合流点が一箇所となるため、気泡の残留が低減され易い。
【0020】
(2)上記リアクトルの一形態として、
前記樹脂部材は、前記磁性コアの少なくとも一部を覆うモールド樹脂部を備え、
前記張出し部は、前記モールド樹脂部に設けられていることが挙げられる。
【0021】
上記形態は、モールド樹脂部によって磁性コアを一体に保持でき、ひいては組合体を一体に保持できる。組合体は、コイルと磁性コアとを組み付けて組物を作製し、この組物に対してモールド樹脂部を形成することで得られる。張出し部がモールド樹脂部に設けられる場合、組物にモールド樹脂部を形成する際に、モールド樹脂部となる樹脂で張出し部を一緒に形成することができる。よって、上記形態は生産性に優れる。
【0022】
(3)上記リアクトルの一形態として、
前記樹脂部材は、前記巻回部の各端部に設けられる一対の枠状部材を備え、
前記各枠状部材は、
前記ミドルコア部と前記サイドコア部との間に配置される一対の第一枠片と、
前記巻回部における前記露出面に沿うように前記一対の第一枠片をつなぐ第二枠片とを備え、
前記張出し部は、一方の前記枠状部材における前記第二枠片に設けられていることが挙げられる。
【0023】
上記形態は、枠状部材によって巻回部と磁性コアとの位置決め状態を保持できる。組合体は、コイルと磁性コアと枠状部材とを組み付けることで得られる。張出し部が枠状部材に設けられる場合、コイルと磁性コアと枠状部材とを組み付けるだけで、張出し部を組合体の所定位置に構成することができる。第二枠片は、ミドルコア部とサイドコア部との間に配置されず、磁性コアの外側に位置する。そのため、張出し部が第二枠片に設けられる場合、張出し部を一方の短辺部側に突出させ易く、張出し部の形状を簡素化し易い。
【0024】
(4)上記リアクトルの一形態として、
前記組合体は、前記巻回部の軸方向が前記底板部に平行となるように前記ケースに収納されていることが挙げられる。
【0025】
上記形態は、組合体の配置形態が横型である形態である。組合体の配置形態が横型である場合、巻回部の両端部は、ケースの各短辺部側において、ケースの開口部側に引き出され易い。また、組合体の配置形態が横型である場合、縦型である場合に比較して、低背化し易い。一般的に、巻回部の外周面のうちサイドコア部の各々に面しない露出面は、巻回部の軸方向に沿った長さが、巻回部の軸方向と直交する方向の長さよりも長いからである。
【0026】
(5)上記リアクトルの一形態として、
前記張出し部は、前記開口部側に配置されることが挙げられる。
【0027】
上記形態は、ケース内で組合体を安定して支持し易い。また、上記形態は、封止樹脂部となる樹脂をケース内に充填するとき、ケース内で組合体を所定位置に保持し易い。
【0028】
(6)上記リアクトルの一形態として、
前記張出し部における突出方向の先端は、前記短辺部の内面に接することが挙げられる。
【0029】
上記形態は、組合体の構成部材である樹脂部材に張出し部を備えることで、ケースに対して組合体を位置決めできる。特に、張出し部が短辺部の内面に接することで、封止樹脂部となる樹脂をケース内に充填するとき、樹脂の流れで組合体の位置がずれることを抑制できる。よって、張出し部が短辺部の内面に接することで、上記形態は生産性により優れる。
【0030】
(7)上記リアクトルの一形態として、
前記張出し部は、
前記底板部側に位置する第一面と、
前記開口部側に位置する第二面と、
前記第一面と前記第二面とを貫通する孔とを備え、
前記封止樹脂部は、
前記孔の内部に充填される第一樹脂部と、
前記第一樹脂部と連続して、前記第一面及び前記第二面に接して設けられる第二樹脂部とを備えることが挙げられる。
【0031】
上記形態は、張出し部に孔を備え、その孔に封止樹脂部の一部が充填されることで、張出し部と封止樹脂部とを強固に接合でき、ひいては組合体と封止樹脂部とを強固に接合できる。孔に充填される第一樹脂部と、第一面及び第二面に接して設けられる第二樹脂部とが、張出し部に対して引っ掛かるためである。他に、上記形態は、張出し部に孔を備えることで、封止樹脂部を形成する際、一方の短辺部側における樹脂の充填状態を孔から確認することができる。また、上記形態は、張出し部に孔を備えることで、封止樹脂部を形成する際、一方の短辺部側に充填される樹脂に混入した気泡を孔から脱気することができる。つまり、張出し部に備わる孔は、封止樹脂部を形成する際、樹脂の充填状態を確認する確認孔の役割と、樹脂に混入した気泡を脱気する脱気孔の役割とを発揮する。そして、張出し部に備わる孔は、封止樹脂部の形成後には、組合体と封止樹脂部とを接合する引っ掛け構造の役割を発揮する。
【0032】
(8)上記リアクトルの一形態として、
前記短辺部は、前記張出し部を支持する取付け座を有し、
前記張出し部と前記取付け座とが締結されていることが挙げられる。
【0033】
上記形態は、張出し部が取付け座に締結されていることで、ケースに対して組合体を強固に固定できる。上記形態は、例えば衝撃や振動等によって、ケースから組合体が脱落することを回避できる。
【0034】
(9)本開示の実施形態に係るコンバータは、
上記(1)から(8)のいずれか1つに記載のリアクトルを備える。
【0035】
本開示のコンバータは、本開示のリアクトルを備えるため、小型で、生産性に優れる。
【0036】
(10)本開示の実施形態に係る電力変換装置は、
上記(9)に記載のコンバータを備える。
【0037】
本開示の電力変換装置は、本開示のコンバータを備えるため、小型で、生産性に優れる。
【0038】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係るリアクトルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。図面における各部の寸法比も実際と異なる場合がある。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0039】
<実施形態1>
≪概要≫
図1から
図5を参照して、実施形態1に係るリアクトル1Aを説明する。リアクトル1Aは、
図2に示すように、コイル2と、磁性コア3と、枠状部材4a、4bと、モールド樹脂部5と、ケース8と、封止樹脂部9とを備える。コイル2は、一つの巻回部20を有する。磁性コア3は、巻回部20の内側及び外側に配置される部分を有する。枠状部材4a、4b及びモールド樹脂部5は、コイル2と磁性コア3との相互の位置を規定する樹脂部材である。枠状部材4a、4bは、巻回部20の各端部に設けられる。モールド樹脂部5は、磁性コア3の少なくとも一部を覆う。ケース8は、コイル2、磁性コア3、枠状部材4a、4b、及びモールド樹脂部5を含む組合体10を収納する。封止樹脂部9は、ケース8内に充填される。実施形態1のリアクトル1Aは、組合体10の配置形態が後述する横型である点が特徴の一つである。また、実施形態1のリアクトル1Aは、モールド樹脂部5に張出し部6を備える点が特徴の一つである。張出し部6は、
図1に示すように、ケース8を構成する側壁部82の一方の短辺部821側に向かって突出し、ケース8を平面視したとき、一方の短辺部821を含む側壁部82の内面との間に所定の隙間7を構成する。
【0040】
図1は、封止樹脂部9を省略して示している。
図2は、
図1に示す(II)-(II)線で切断した部分断面図である。
図2では、リアクトル1Aの内部構造を分かり易くするため、ケース8内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース8及び封止樹脂部9は側面と平行な平面で切断した断面を示す。以下の説明では、ケース8の底板部81側を下とし、底板部81に向かい合う開口部83側を上とする。この上下方向を高さ方向とする。高さ方向は、ケース8の深さ方向である。また、高さ方向に直交し、ケース8における側壁部82の長辺部823、824に沿った方向を長さ方向とする。高さ方向に直交し、ケース8における側壁部82の短辺部821、822に沿った方向を幅方向とする。上下方向は、
図2の紙面上下方向である。長さ方向は、
図1及び
図2の紙面左右方向である。幅方向は、
図1の紙面上下方向である。
【0041】
以下、リアクトル1Aの構成について詳しく説明する。
【0042】
〔コイル〕
コイル2は、
図2及び
図3に示すように、一つの巻回部20を備える。巻回部20は、1本の巻線を螺旋状に巻回して構成される。巻線の両端部は、巻回部20の軸方向の各端部から引き出される。巻回部20から引き出される巻線の両端部は、ケース8の開口部83側から外部に引き出される。引き出された両端部には、図示しない端子金具が取り付けられる。端子金具には、図示しない電源等の外部装置が接続される。なお、
図1等は、巻回部20のみを示し、巻線の端部等は省略している。
【0043】
巻線は、導体線と、絶縁被覆とを有する被覆線が挙げられる。導体線の構成材料は、銅等が挙げられる。絶縁被覆の構成材料は、ポリアミドイミド等の樹脂が挙げられる。被覆線としては、断面形状が長方形状の被覆平角線や、断面形状が円形状の被覆丸線等が挙げられる。
【0044】
この例の巻回部20は、被覆平角線がエッジワイズ巻きされた矩形筒状のエッジワイズコイルである。よって、巻回部20を軸方向から見た端面形状が矩形状である。つまり、巻回部20は、4つの平面と4つの角部とを備える。巻回部20の角部は、丸められている。巻回部20の角部以外の面は、実質的に平面で構成されている。そのため、巻回部20とケース8における側壁部82の内面とは、
図1及び
図2に示すように、平面同士で向き合った状態とできる。従って、巻回部20と側壁部82の内面とが向き合う面積が大きく確保され易い。また、巻回部20と側壁部82の内面とが平面同士で向き合った状態であると、巻回部20と側壁部82との間隔を狭くし易い。
【0045】
〔磁性コア〕
磁性コア3は、
図2及び
図3に示すように、一つのミドルコア部31と、二つのサイドコア部32、33と、二つのエンドコア部34、35とを備える。ミドルコア部31は、巻回部20の内側に配置される。サイドコア部32、33及びエンドコア部34、35は、巻回部20の外側に配置される。サイドコア部32、33は、巻回部20の外側でミドルコア部31と並列される。エンドコア部34、35は、巻回部の両端部でミドルコア部31とサイドコア部32、33とをつなぐ。つまり、二つのエンドコア部34、35は、一つのミドルコア部31と二つのサイドコア部32、33を両端から挟むように配置される。磁性コア3は、ミドルコア部31とサイドコア部32、33とエンドコア部34、35とが接続されることによって、コイル2を励磁した際に磁束が流れ、閉磁路が形成される。
【0046】
ミドルコア部31の形状は、巻回部20の内周形状に概ね対応した形状である。巻回部20の内周面とミドルコア部31の外周面との間には隙間が存在する。この隙間には、後述するモールド樹脂部5を構成する樹脂が充填される。この例では、ミドルコア部31の形状が四角柱状、より具体的には矩形柱状であり、ミドルコア部31を軸方向から見た端面形状が矩形状である。ミドルコア部31の角部は、巻回部20の角部に沿うように丸められている。
【0047】
サイドコア部32、33の形状は、巻回部20の外側で巻回部20の軸方向に延びる形状であれば、特に限定されない。この例では、サイドコア部32、33は、巻回部20の軸方向に延びる直方体状である。サイドコア部32、33は、巻回部20の外周面を構成する四面のうち、巻回部20の軸を挟んで向かい合う位置にある二面に面するように配置される。つまり、サイドコア部32、33は、巻回部20の外周面を構成する四面のうち、巻回部20の軸を挟んで向かい合う位置にある二面を外側から挟むように配置される。
図2では、サイドコア部32、33は、巻回部20の上面及び下面の各面に面するように配置される。巻回部20におけるサイドコア部32、33に向き合わない面は、磁性コア3から露出される。以下、巻回部20におけるサイドコア部32、33に向き合わない面、つまり巻回部20における磁性コア3から露出される面を、露出面と呼ぶことがある。
【0048】
エンドコア部34,35の形状は、一つのミドルコア部31及び二つのサイドコア部32、33の各端部同士をつなぐ形状であれば、特に限定されない。この例では、エンドコア部34、35は、一つのミドルコア部31及び二つのサイドコア部32、33の並び方向に長い直方体状である。
【0049】
ミドルコア部31及びサイドコア部32、33において、各コア部31、32、33の並列方向及び各コア部31、32、33の長手方向の双方と直交する方向に向く面は、面一である。
図2では、ミドルコア部31、サイドコア部32、33、及びエンドコア部34、35における紙面手前側の面及び奥側の面が面一である。よって、巻回部20における露出面は、サイドコア部32、33及びエンドコア部34、35における上記露出面と同一方向を向く面より突出している。コイル2と磁性コア3と枠状部材4a,4bとの組物に後述するモールド樹脂部5が設けられた状態において、磁性コア3は、モールド樹脂部5に埋設されるが、巻回部20における上記露出面は、モールド樹脂部5から露出される。
【0050】
本例の磁性コア3は、
図3に示すように、2つのE字状のコア片3a、3bを備える。各コア片3a、3bは、同一形状、同一の大きさである。コア片3aは、エンドコア部34と、三つの短いコア片とを備える。三つの短いコア片は、エンドコア部34の長手方向に間隔を有して設けられている。よって、コア片3aの外観がE字状となっている。三つの短いコア片はそれぞれ、ミドルコア部31の半分、サイドコア部32の半分、サイドコア部33の半分である。ミドルコア部31を構成するコア片は、エンドコア部34の長手方向の中央部分から立設し、サイドコア部32、33を構成するコア片は、エンドコア部34の長手方向の両縁近傍から立設する。コア片3bは、エンドコア部35と、ミドルコア部31及びサイドコア部32、33の残り半分からなる三つの短いコア片とを備える。
【0051】
〈構成材料〉
磁性コア3は、軟磁性材料を含む成形体で構成されている。軟磁性材料としては、鉄や鉄合金等の金属、フェライト等の非金属が挙げられる。鉄合金は、例えば、Fe-Si合金、Fe-Ni合金等が挙げられる。軟磁性材料を含む成形体としては、圧粉成形体や複合材料の成形体等が挙げられる。
【0052】
圧粉成形体は、軟磁性材料からなる粉末、即ち軟磁性粉末を圧縮成形することで得られる。圧粉成形体は、複合材料に比較して、コア片に占める軟磁性粉末の割合が高い。圧粉成形体中の軟磁性粉末の含有量は、圧粉成形体を100体積%とすると、例えば80体積%超、更に85体積%以上であることが挙げられる。
【0053】
複合材料の成形体では、軟磁性粉末が樹脂中に分散している。複合材料の成形体は、未固化の樹脂中に軟磁性粉末を混合して分散させた原料を金型に充填し、樹脂を固化させることで得られる。複合材料は、樹脂中の軟磁性粉末の含有量を調整することによって、磁気特性、例えば比透磁率や飽和磁束密度を制御し易い。複合材料の成形体中の軟磁性粉末の含有量は、複合材料を100体積%とすると、例えば、30体積%以上80体積%以下であることが挙げられる。
【0054】
軟磁性粉末は、軟磁性粒子の集合体である。軟磁性粒子は、その表面に絶縁被覆を有する被覆粒子であってもよい。絶縁被覆の構成材料は、リン酸塩等が挙げられる。複合材料の樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂(例、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン9T等)、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。複合材料は、樹脂に加えて、フィラーを含有してもよい。フィラーを含有することで、複合材料の放熱性を向上させることができる。フィラーは、例えば、セラミックスやカーボンナノチューブ等の非磁性材料からなる粉末を利用できる。セラミックスは、例えば、金属又は非金属の酸化物、窒化物、炭化物等が挙げられる。酸化物の一例として、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム等が挙げられる。窒化物の一例として、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等が挙げられる。炭化物の一例として、炭化珪素等が挙げられる。
【0055】
〔枠状部材〕
この例のリアクトル1Aは、二つの枠状部材4a、4bを備える。枠状部材4a、4bは、
図2及び
図3に示すように、巻回部20の各端部に配置される。枠状部材4a、4bは、コイル2と磁性コア3との相互の位置を規定して、位置決め状態を保持する。また、枠状部材4a、4bは、コイル2と磁性コア3との間の電気的絶縁を確保する。
【0056】
両枠状部材4a、4bの基本的な構成は同じである。枠状部材4a、4bは、一対の第一枠片41と一対の第二枠片42とを備える。第一枠片41は、ミドルコア部31とサイドコア部32、33との間に配置される。また、第一枠片41は、巻回部20の端面とエンドコア部34、35との間に配置される。つまり、第一枠片41は、ミドルコア部31、サイドコア部32、33、及びエンドコア部34、35とで構成される空間に配置される。第二枠片42は、巻回部20における露出面に沿うように一対の第一枠片41をつなぐ。第二枠片42の外面は、巻回部20における露出面と実質的に面一である。よって、コイル2と磁性コア3と枠状部材4a,4bとの組物に後述するモールド樹脂部5が設けられた状態において、第二枠片42における上記露出面と同一方向を向く面は、モールド樹脂部5から露出される。枠状部材4a、4bの外周面は、実質的に平面で構成されている。枠状部材4a、4bの外周面のうち、一対の第二枠片42の外面が、ケース8の側壁部82における長辺部823、824(
図1)に向き合う。
【0057】
一対の第一枠片41と一対の第二枠片42とで貫通孔40が構成される。貫通孔40には、ミドルコア部31が挿通される。貫通孔40の形状は、ミドルコア部31の外周形状に概ね対応した形状である。貫通孔40の内周面には、ミドルコア部31が挿入された状態で、ミドルコア部31の外周面と貫通孔40の内周面との間に部分的に隙間を構成する切欠きが設けられている。切欠きによって構成された隙間には、後述するモールド樹脂部5を構成する樹脂が充填される。
【0058】
本例の枠状部材4a、4bは、エンドコア部34、35側に凹部43を備える。具体的には、第一枠片41におけるエンドコア部34、35側の面が、第二枠片42におけるエンドコア部34、35側の面よりも巻回部20側に窪んでいる。凹部43には、エンドコア部34、35における巻回部20側の縁部が嵌め込まれる。この凹部43によって、枠状部材4a、4bにエンドコア部34、35が保持される。第二枠片42には、凹部43にエンドコア部34、35が嵌め込まれた状態で、エンドコア部34、35との間に隙間を構成する切欠き47(
図3)が設けられている。切欠き47によって構成された隙間には、後述するモールド樹脂部5を構成する樹脂が充填される。
【0059】
また、本例の枠状部材4a、4bは、巻回部20側の面に、内側突片45と外側突片46とを備える。内側突片45は、貫通孔40の四隅から巻回部20側に突出している。本例では、貫通孔40の四隅のうち特定の隣り合う二隅から突出する突片はつながっている。つまり、本例の内側突片45は、三つの突片で構成される。内側突片45は、ミドルコア部31の外周面に沿って形成されている。この内側突片45によって、枠状部材4a、4bにミドルコア部31が保持されると共に、巻回部20とミドルコア部31との間隔が保持される。外側突片46は、第一枠片41の外縁から巻回部20側に突出する板状片で構成される。外側突片46は、巻回部20とサイドコア部32、33との間に介在される。外側突片46は、巻回部20の軸方向の中央部分まで延びる。この外側突片46によって、巻回部20とサイドコア部32、33との間の絶縁が確保される。
【0060】
〈構成材料〉
枠状部材4a、4bの構成材料は、電気絶縁材料が挙げられる。電気絶縁材料としては、代表的には樹脂が挙げられる。具体的な樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、PPS樹脂、PA樹脂、LCP、PI樹脂、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。枠状部材4a、4bの構成材料は、上記樹脂に加えて、フィラーを含有してもよい。フィラーを含有することで、枠状部材4a、4bの放熱性を向上させることができる。フィラーは、上述した複合材料に用いるフィラーと同様のものを利用できる。この例では、枠状部材4a、4bの構成材料はPPS樹脂である。
【0061】
〔モールド樹脂部〕
この例のリアクトル1Aは、モールド樹脂部5を備える。モールド樹脂部5は、
図2に示すように、サイドコア部32、33及びエンドコア部34、35の少なくとも一部を覆う。また、モールド樹脂部5は、枠状部材4a、4bの第二枠片42に設けられた切欠き47を介して、巻回部20の内周面とミドルコア部31の外周面との間に介在される。モールド樹脂部5により、2つのE字状のコア片3a、3bが一体に保持され、コイル2と磁性コア3と枠状部材4a、4bとが一体化されている。そのため、組合体10は一体物として取り扱うことができる。なお、巻回部20の外周面のうち二つのサイドコア部32、33に面しない露出面は、モールド樹脂部5によって覆われておらず、モールド樹脂部5から露出している。
図2では、巻回部20における露出面の全領域がモールド樹脂部5から露出しているが、実際は、巻回部20の角部近傍はモールド樹脂部5に覆われる。
【0062】
〈構成材料〉
モールド樹脂部5を構成する樹脂は、上述した枠状部材4a、4bを構成する樹脂と同様のものを利用できる。モールド樹脂部5の構成材料は、上記樹脂に加えて、上述したフィラーを含有してもよい。この例では、モールド樹脂部5がPPS樹脂で構成されている。
【0063】
〔張出し部〕
モールド樹脂部5は、
図1及び
図2に示すように、一方の短辺部821に向かって突出する張出し部6を備える。張出し部6は、モールド樹脂部5に一体に成形された一体物である。この例の張出し部6は、貫通孔等を備えない中実体で構成される。張出し部6は、
図1に示すように、一方の短辺部821を含む側壁部82の内面との間に所定の隙間7を構成する。
【0064】
張出し部6の位置及び数は、特に限定されない。張出し部6におけるケース8の深さ方向に沿った位置は、ケース8の開口部83側であることが好ましい。ケース8の開口部83側に張出し部6が位置することで、上記隙間7を構成し易い。例えば、ケース8の側壁部82の内面は、後述するように、底板部81側から開口部83側に向かって広がるように傾斜していることがある。側壁部82の内面が傾斜していると、開口部83側の方が組合体10との間隔が大きくなるので、開口部83側に張出し部6が位置することで、上記隙間7を安定して構成し易い。また、張出し部6におけるケース8の幅方向に沿った位置は、短辺部821の幅方向の中央であることが好ましい。短辺部821の幅方向の中央に1つ設けられていることで、張出し部6を形成し易い。また、短辺部821の幅方向の中央に1つ設けられていることで、上記隙間7を安定して構成し易い。張出し部6の位置は、短辺部821の中央からずれていてもよい。張出し部6の数は少なくとも1つあればよく、複数あってもよい。
【0065】
張出し部6の形状は、特に限定されない、この例では、
図1に示すように、張出し部6の形状が平面視で三角形状である。張出し部6の形状は、平面視で三角形状に限らず、矩形状、多角形状、半円形状、半楕円形状等、その他の形状であってもよい。張出し部6の大きさは、所定の大きさの隙間7が形成されるように設定されている。例えば、張出し部6の突出長さは5mm以上15mm以下、更に6mm以上12mm以下が挙げられる。張出し部6の突出長さが大き過ぎると、長辺部823、824の長さが長くなり、ケース8が大型化する。また、張出し部6の最大幅は、モールド樹脂部5の幅よりも小さい。張出し部6の幅は、少なくとも一方の長辺部823、824と張出し部6の外周面との最小の間隔が5mm以上、更に6mm以上となるように設定されていることが挙げられる。
【0066】
張出し部6の厚みは、容易に変形や折損したりしない程度の厚みを有する。ここでの厚みは、高さ方向の寸法、即ち
図2の紙面上下方向の寸法である。本例の張出し部6の厚みは、サイドコア部32における開口部83側の面を覆うモールド樹脂部5の厚みと同等程度である。張出し部6は、
エンドコア部34におけるケース8の開口部83側から底板部81側の全長にわたって設けられていてもよい。つまり、張出し部6の厚みが、ケース8の深さに相当する厚みであってもよい。張出し部6の厚みを大きくすれば、封止樹脂部9となる高価な樹脂の使用量が減少するため、その分、製造コストを削減できる。
【0067】
張出し部6は、ケース8に対して組合体10の長さ方向の位置を規制する役割を有する。張出し部6は、その突出方向の先端が短辺部821の内面に接することが挙げられる。張出し部6が短辺部821の内面に接することで、ケース8に対して組合体10を良好に位置決めできる。特に、封止樹脂部9を形成する際、樹脂の流れで組合体10の位置がずれることを抑制できる。
【0068】
〔ケース〕
ケース8は、
図1及び
図2に示すように組合体10を収納することで、組合体10の機械的保護及び外部環境からの保護を図ることができる。外部環境からの保護は、防食性の向上等を目的とする。本例のケース8は、金属で構成されている。金属は樹脂よりも熱伝導率が高い。そのため、金属製のケース8は、組合体10の熱をケース8を介して外部に放出し易い。よって、金属製のケース8は、組合体10の放熱性の向上に寄与する。
【0069】
ケース8は、底板部81と、側壁部82と、開口部83とを備える。底板部81は、組合体10が載置される平板部材である。側壁部82は、組合体10の周囲を囲む矩形枠状体である。ケース8は、底板部81と側壁部82とで組合体10の収納空間が形成され、底板部81に向かい合う側に開口部83が形成された有底筒状の容器である。この例では、底板部81と側壁部82とが一体に形成されている。側壁部82は、組合体10の高さと同等以上の高さを有する。
【0070】
この例の底板部81は四角板状である。底板部81において、組合体10が載置される内底面は実質的に平面で構成されている。側壁部82は、一対の短辺部821、822及び一対の長辺部823、824を備える。本例の短辺部821、822及び長辺部823、824の内面は、実質的に平面で構成されている。短辺部821、822と長辺部823、824とで構成される各角部は、湾曲面で構成されている。
【0071】
本例の側壁部82における矩形枠状とは、ケース8を平面視したとき、側壁部82の内周面が実質的に矩形状に構成されることを意味する。ここでの矩形状は、幾何学的に厳密な意味での矩形でなくてもよく、角部がR面取り又はC面取りされた形状等も含めて、実質的に矩形とみなされる範囲を含む。例えば、本例の側壁部82のように、角部が比較的大きな曲率半径を有する曲面で形成された形状を含む。
【0072】
側壁部82の内面は、底板部81側から開口部83側に向かって広がるように傾斜していてもよい。より具体的には、側壁部82の短辺部821、822の内面同士、及び長辺部823、824の内面同士の少なくとも一方は、底板部81側から開口部83側に向かって互いの間隔が大きくなるように傾斜していてもよい。つまり、短辺部821、822及び長辺部823、824の各内面の少なくとも一つが、底板部81の内底面の垂直方向に対してケース8の外方側に傾斜するように形成されていてもよい。なお、上記垂直方向は、ケース8の高さ方向に相当する。
【0073】
短辺部821、822及び長辺部823、824の各内面が底板部81側から開口部83側に向かって互いの間隔が大きくなるように傾斜している場合、リアクトル1Aの製造過程において、ケース8に組合体10を収納する作業が行い易い。また、金属製のケース8をダイキャストで製造する場合、短辺部821、822及び長辺部823、824の各内面の少なくとも一つが傾斜していることで、ケース8を型から抜き出す作業が行い易い。この例では、
図2に示すように、側壁部82の内面が底板部81側から開口部83側に向かって広がるように、短辺部821、822及び長辺部823、824の全ての内面が傾斜している。
【0074】
短辺部821、822及び長辺部823、824の各内面と、底板部81の内底面の垂線とがなす傾斜角度は、適宜選択できる。上記傾斜角度は、例えば0.5°以上5°以下、更に1°以上2°以下が挙げられる。傾斜角度が大き過ぎると、開口部83側において、組合体10の外周面と側壁部82の内周面との間隔が大きくなる。上記間隔が大き過ぎると、開口部83側の組合体10の熱が効率的にケース8に放出され難い。そのため、傾斜角度が大き過ぎることは、放熱性の観点からも好ましくない。よって、傾斜角度の上限は5°以下、更に2°以下とする。
【0075】
ケース8の長さは、例えば80mm以上120mm以下、更に90mm以上115mm以下が挙げられる。ケース8の幅は、例えば30mm以上80mm以下、更に35mm以上70mm以下が挙げられる。ケース8の高さは、例えば70mm以上140mm以下、更に80mm以上130mm以下が挙げられる。ケース8の長さは、
図1及び
図2の紙面左右方向の長さである。ケース8の幅は、
図1の紙面上下方向の長さである。ケース8の高さは、
図2の紙面上下方向の長さである。ケース8の容積は、例えば120cm
3以上1200cm
3以下、更に200cm
3以上900cm
3以下が挙げられる。本例のケース8は、長さが幅より大きく、かつ、幅よりも高さが大きい。よって、ケース8の長さ×幅によって求められる面積が、ケース8の長さ×高さによって求められる面積よりも小さい。
【0076】
〈構成材料〉
ケース8は非磁性の金属で構成されている。非磁性金属としては、例えばアルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金、銅やその合金、銀やその合金、オーステナイト系ステンレス鋼等が挙げられる。これらの金属の熱伝導率は比較的高い。そのため、ケース8を放熱経路に利用でき、ケース8を介して、組合体10の熱が外部に効率よく放出される。よって、組合体10の放熱性が向上する。ケース8を構成する材料としては、金属以外にも樹脂等を用いることができる。
【0077】
金属製のケース8は、例えばダイキャストによって製造できる。本例のケース8はアルミニウム製のダイキャスト品により構成されている。
【0078】
〔組合体の配置形態〕
ケース8に対する組合体10の配置形態は横型である。この場合、組合体10は、
図2に示すように、巻回部20におけるサイドコア部32、33の各々に面しない露出面がケース8の側壁部82の長辺部823、824側に向き、かつ巻回部20の軸方向がケース8の底板部81に平行となるようにケース8に収納される。つまり、組合体10は、ミドルコア部31及びサイドコア部32、33の並列方向がケース8の深さ方向となるようにケース8に収納される。本例の場合、モールド樹脂部5が一方の短辺部821側に張出し部6を備えるため、ケース8に対して組合体10が他方の短辺部822側に片寄って配置される。組合体10の配置形態が横型である場合、巻回部20の上記露出面がケース8の長辺部823、824に向くため、コイル2の熱をケース8に放出し易い。よって、組合体10の配置形態が横型である場合、上述した平置き型である場合に比較して、放熱性に優れる。また、組合体10の配置形態が横型である場合、実施形態2で説明する縦型である場合に比較して、巻回部20の巻線の両端部をケース8の開口部83側に引き出し易い。
【0079】
また、本例のように、巻回部20の外周面が実質的に平面で構成される場合、巻回部20と側壁部82とが向き合う面積を大きくできる。よって、リアクトル1Aは、ケース8を放熱経路として効率よく利用できる。そのため、リアクトル1Aは、コイル2の熱をケース8に放出し易く、組合体10の放熱性に優れる。
【0080】
一方の短辺部821を除く側壁部82の内面と、組合体10の外面との間隔は、例えば0.5mm以上1.5mm以下、更に0.5mm以上1mm以下が挙げられる。上記間隔は、組合体10における側壁部82に最も近接する部分と、側壁部82の短辺部822及び長辺部823、824との間隔である。後述するように側壁部82の短辺部822及び長辺部823、824の各々の内面が傾斜している場合、上記間隔は最小値を採用するとよい。この間隔が0.5mm以上であることで、組合体10と側壁部82との間に封止樹脂部9となる樹脂が回り込み易い。一方、上記間隔が1.5mm以下、更に1mm以下であることで、ケース8が小型になり易い。また、上記間隔が1.5mm以下、更に1mm以下であることで、巻回部20の外面と側壁部82の内面との間隔が小さくなるため、組合体10の放熱性を向上させることができる。
【0081】
〔隙間〕
隙間7は、
図1に示すように、リアクトル1Aを平面視したとき、一方の短辺部821を含む側壁部82の内面と張出し部6との間に構成されている。この例では、一方の短辺部821と長辺部823、824と張出し部6とで隙間7が構成されている。つまり、隙間7は、一方の短辺部821側において、張出し部6の両側に構成されている。
【0082】
隙間7には、封止樹脂部9を形成する際、
図4及び
図5に示すように、封止樹脂部9となる樹脂を注入するノズル100が挿入される。隙間7の大きさは、リアクトル1Aを平面視したとき、ノズル100が挿入できる大きさであれば、特に限定されない。隙間7の大きさは、張出し部6の大きさに応じて調整できる。そのため、ノズル100の径が大きくても、ノズル100を挿入できる隙間7を容易に設けることができる。例えば、隙間7は、平面視で直径4mm以上、更に5mm以上の大きさを有することが挙げられる。隙間7は、ケース8の開口部83側から底板部81側にわたって連通するように形成されている。
【0083】
〔封止樹脂部〕
封止樹脂部9は、ケース8内に充填されて、組合体10の少なくとも一部を封止する。封止樹脂部9によって、組合体10の機械的保護及び外部環境からの保護を図ることができる。外部環境からの保護は、防食性の向上等を目的とする。
【0084】
この例では、封止樹脂部9がケース8の開口端まで充填されていて、組合体10の全体が封止樹脂部9に埋設されている。組合体10の一部のみが封止樹脂部9に封止されていてもよい。例えば、組合体10のうち、巻回部20の全体が封止樹脂部9に埋設され、巻回部20よりも開口部83側に位置する部材、本例ではモールド樹脂部5の一部が封止樹脂部9から露出されることが挙げられる。封止樹脂部9は、巻回部20とケース8の側壁部82との間に介在される。これにより、コイル2の熱を封止樹脂部9を介してケース8に伝えることができ、組合体10の放熱性が向上される。
【0085】
〈構成材料〉
封止樹脂部9の樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、PPS樹脂等が挙げられる。この例の封止樹脂部9は、シリコーン樹脂、より具体的には、シリコーンゲルによって構成されている。封止樹脂部9の熱伝導率は高いほど好ましい。この理由は、コイル2の熱をケース8に伝達させ易いからである。そのため、封止樹脂部9を構成する材料は、上記樹脂に加えて、例えば上述したようなフィラーを含有してもよい。封止樹脂部9の熱伝導率を高めるために、上記材料の成分が調整されていてもよい。封止樹脂部9の熱伝導率は、例えば1W/m・K以上、更に1.5W/m・K以上が好ましい。
【0086】
その他、組合体10と底板部81との間に、図示しない接着層が設けられていてもよい。接着層は、組合体10をケース8に強固に固定できる。接着層は、電気絶縁樹脂で構成することが挙げられる。接着層を構成する電気絶縁樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、PPS樹脂、LCP等が挙げられる。接着層を構成する材料は、上記樹脂に加えて、上述したフィラーを含有してもよい。接着層は、市販の接着シートを利用したり、市販の接着剤を塗布して形成してもよい。
【0087】
≪製造方法≫
図4及び
図5を主に参照して、上述したリアクトル1Aの製造方法の一例を説明する。リアクトル1Aは、以下の第1から第3の工程を備える製造方法により製造できる。
第1の工程は、組合体10とケース8とを用意する。
第2の工程は、組合体10をケース8に収納する。
第3の工程は、ケース8内に封止樹脂部9を形成する。
【0088】
図4は、封止樹脂部9を形成する工程において、ノズル100の配置位置を示している。
図5は、
図4に示す(V)-(V)線で切断した部分断面図である。
図5は、
図2と同じように、ケース8内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース8は側面と平行な平面で切断した断面を示す。
【0089】
〔第1の工程〕
第1の工程では、組合体10とケース8とを用意する。組合体10は、
図3に示すように、コイル2と、磁性コア3と、枠状部材4a、4bとを組み付けて組物を作製し、この組物に対してモールド樹脂部5(
図2)を形成することで得られる。モールド樹脂部5を形成することで、上記組物が一体化される。具体的には、枠状部材4a、4bによってコイル2及び磁性コア3が所定位置に保持された状態において、サイドコア部32、33及びエンドコア部34、35の表面を覆うようにモールド樹脂部5を形成する。このとき、モールド樹脂部5を構成する樹脂の一部は、上述したように、枠状部材4a、4bに設けられた切欠き47を通って、巻回部20とミドルコア部31との間に充填される。そのため、モールド樹脂部5は、サイドコア部32、33及びエンドコア部34、35の表面を覆うと共に、巻回部20とミドルコア部31との間に介在するように形成される。
【0090】
用意するケース8は、例えば非磁性の金属で構成されている。この例のケース8は、アルミニウム製のダイキャスト品である。
【0091】
〔第2の工程〕
第2の工程では、ケース8の開口部83から組合体10をケース8に収納する。組合体10の配置形態が横型となるように、組合体10をケース8に収納する。具体的には、
図5に示すように、巻回部20におけるサイドコア部32、33の各々に面しない露出面がケース8の側壁部82の長辺部823、824側に向き、かつ巻回部20の軸方向がケース8の底板部81に平行となるように、組合体10をケース8に収納する。
【0092】
(第3の工程)
第3の工程では、ケース8内に樹脂を充填して、
図2に示す封止樹脂部9を形成する。具体的には、
図4及び
図5に示すように、ケース8内に組合体10を収納した状態で封止樹脂部9となる樹脂を充填する。この例では、樹脂を注入するノズル100を使用する。この例では、封止樹脂部9となる樹脂がシリコーン樹脂、より具体的にはシリコーンゲルである。
【0093】
樹脂の充填は、
図4に示すように、側壁部82の短辺部821の内面と長辺部823の内面と張出し部6とで構成される隙間7にノズル100を挿入して行う。そして、
図5に示すように、ノズル100を通して底板部81側から流動状態の樹脂を注入する。例えば、熱硬化性樹脂を混合撹拌して注入することが挙げられる。ここでは、
図4に示すように、長辺部823側の一方の隙間7にノズル100を挿入する場合を例示する。ノズル100の直径は、例えば3.5mm以上5mm以下である。ノズル100の先端は底板部81の近傍にまで到達させることが好ましい。ノズル100の先端が底板部81の近傍に達していなくてもよい。
【0094】
樹脂をケース8の開口部83側から流し込むと、樹脂に気泡が混入し易く、封止樹脂部9に気泡が残留し易い。特に、底板部81側の封止樹脂部9に気泡が残留し易い。隙間7にノズル100を挿入して底板部81側から開口部83側へ樹脂を注入すると、樹脂に気泡が混入し難く、封止樹脂部9に気泡が残留し難い。特に、底板部81側の封止樹脂部9に気泡が残留することを回避することができる。そのため、ケース8内に封止樹脂部9を良好に充填することができる。
【0095】
本例の場合、モールド樹脂部5に設けられた張出し部6が側壁部82の短辺部821に接することで、ケース8に対して組合体10が位置決めされた状態を維持することができる。そのため、封止樹脂部9となる樹脂を充填するとき、組合体10の位置がずれることを効果的に抑制できる。
【0096】
図5に示すように、一方の短辺部821側に設けられた隙間7にノズル100を挿入して樹脂を注入した場合、短辺部821側から他方の短辺部822側に向かって樹脂が流れることになる。
図4中の白抜き矢印で示すように、ノズル100から注入された樹脂は、一方の短辺部821側から組合体10と長辺部823、824との間に回り込み、他方の短辺部822側で合流する。そのため、樹脂を注入した箇所から遠い箇所に樹脂の合流点が生じることになる。この場合、一方の短辺部821側から他方の短辺部822側に向かって樹脂が流れている間に、樹脂に混入した気泡が浮き上がり、樹脂内の気泡が除去され易い。よって、一方の短辺部821側から樹脂を注入することで、封止樹脂部9に気泡が残留することを低減できる。また、一方の短辺部821側から樹脂を注入すると、樹脂の合流点が他方の短辺部822側の一箇所になる。樹脂の合流点は、気泡の巻き込みが発生し易いため、少ない方が好ましい。一方の短辺部821側から樹脂を注入することで、樹脂の合流点が一箇所となるため、気泡の残留が低減され易い。
【0097】
図4に示す例では、長辺部823側の一方の隙間7にノズル100を挿入して樹脂を注入する場合を例示したが、これに限定されるものではない、長辺部824側の隙間7にもノズルを挿入して、2つのノズルから樹脂を注入してもよい。
【0098】
樹脂の充填は、組合体10を収納したケース8を真空槽に入れ、真空状態で樹脂を注入することが好ましい。真空状態で樹脂を注入することで、封止樹脂部9に気泡が発生することを抑制できる。
【0099】
ケース8内に樹脂を充填した後、樹脂を固化させることで、
図2に示す封止樹脂部9が形成される。樹脂の固化は、使用する樹脂に応じて適宜な条件で行えばよい。
【0100】
≪効果≫
実施形態1のリアクトル1Aは以下の効果を奏する。
リアクトル1Aは、モールド樹脂部5に張出し部6を備え、一方の短辺部821と長辺部823、824と張出し部6とで構成される隙間7を備える。そのため、封止樹脂部9を形成する際、隙間7にノズル100を挿入して、封止樹脂部9となる樹脂の充填を行うことができる。隙間7の大きさは張出し部6の大きさに応じて調整できる。そのため、ノズル100の径が大きくても、ノズル100の径に応じた隙間7を容易に形成することができる。ノズル100の径が大きければ、樹脂の充填作業を効率的に行うことができる。よって、リアクトル1Aは生産性に優れる。
【0101】
封止樹脂部9を形成する際、上記隙間7にノズル100を挿入して樹脂を注入することができる。そのため、ケース8の側壁部82に樹脂導入路を設ける必要がなく、ケース8に対して特別な加工が必要ない。よって、リアクトル1Aは、ケース8の製造コストを低減することができる。
【0102】
張出し部6は、モールド樹脂部5に一体に成形されている。組合体10は、コイル2と磁性コア3と枠状部材4a、4bとを組み付けて組物を作製し、この組物に対してモールド樹脂部5を形成することで得られる。張出し部6がモールド樹脂部5に設けられる場合、組物にモールド樹脂部5を形成する際に、モールド樹脂部5となる樹脂で張出し部6を一緒に形成することができる。よって、張出し部6がモールド樹脂部5で構成されるリアクトル1Aは生産性に優れる。
【0103】
張出し部6及び隙間7は、一方の短辺部821側にのみ設けられている。そのため、一方の短辺部821を除く側壁部82と組合体10との間隔を小さくできる。よって、リアクトル1Aは小型化が可能となる。
【0104】
<実施形態2>
図6を参照して、実施形態2に係るリアクトル1Bを説明する。リアクトル1Bの基本的な構成は、実施形態1のリアクトル1Aと同様である。実施形態2のリアクトル1Bは、組合体10の配置形態が縦型である点が実施形態1のリアクトル1Aと相違する。以下の説明では、上述した実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0105】
図6では、
図2と同じように、ケース8内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース8及び封止樹脂部9は側面と平行な平面で切断した断面を示す。
【0106】
〔組合体の配置形態〕
ケース8に対する組合体10の配置形態は縦型である。この場合、組合体10は、
図6に示すように、巻回部20におけるサイドコア部32、33の各々に面しない露出面がケース8の側壁部82の長辺部823、824(
図1)側に向き、かつ巻回部20の軸方向がケース8の深さ方向となるようにケース8に収納される。組合体10の配置形態が縦型である場合、ミドルコア部31及びサイドコア部32、33の長手方向がケース8の底板部81に直交するように、磁性コア3がケース8内に配置される。よって、組合体10の配置形態が縦型である場合、一方のエンドコア部34及び一方の枠状部材4aがケース8の開口部83側に位置し、他方のエンドコア部35及び他方の枠状部材4bがケース8の底板部81側に位置する。組合体10の配置形態が縦型である場合、実施形態1で説明した横型である場合と同様に、巻回部20におけるサイドコア部32、33の各々に面しない露出面がケース8の側壁部82に向くため、コイル2の熱をケース8に放出し易い。よって、組合体10の配置形態が縦型である場合、上述した平置き型である場合に比較して、放熱性に優れる。一般的に、巻回部20の軸方向に直交する方向の長さは、巻回部20の軸方向の長さよりも短い。よって、組合体10の配置形態が縦型である場合、実施形態1で説明した横型である場合に比較して、組合体10の設置面積を小さくでき、リアクトル1Bの小型化を実現し易い。
【0107】
組合体10の配置形態が縦型である場合、張出し部6は、
図6に示すように、巻回部20の軸方向と交差する方向に延びている。組合体10の配置形態が縦型であるリアクトル1Bも、実施形態1のリアクトル1Aと同様に、一方の短辺部821と長辺部823、824と張出し部6とで隙間7(
図1)が構成される。そのため、封止樹脂部9を形成する際、隙間7にノズル100(
図4)を挿入して、封止樹脂部9となる樹脂の充填を行うことができる。
【0108】
<実施形態3>
図7及び
図8を参照して、実施形態3に係るリアクトル1Cを説明する。リアクトル1Cの基本的な構成は、実施形態1のリアクトル1Aと同様である。実施形態3のリアクトル1Cは、一方の枠状部材4aに張出し部6を備える点が実施形態1のリアクトル1Aと相違する。リアクトル1Cは、モールド樹脂部5に張出し部6を備えない。以下の説明では、上述した実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0109】
図7は、
図1と同様に、封止樹脂部9を省略して示している。
図8は、
図7に示す(VIII)-(VIII)線で切断した部分断面図である。
図8では、
図2と同じように、ケース8内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース8及び封止樹脂部9は側面と平行な平面で切断した断面を示す。
【0110】
〔張出し部〕
一方の枠状部材4aにおける第二枠片42は、一方の短辺部821に向かって突出する張出し部6を備える。張出し部6は、枠状部材4aに一体に成形された一体物である。張出し部6は、第二枠片42におけるエンドコア部34側の面に設けられている。枠状部材4aは、一対の第二枠片42を備える(
図3)。張出し部6は、少なくとも一方の第二枠片42に設けられていればよい。本例の張出し部6は、各第二枠片42に設けられている。よって、リアクトル1Cは、
図7に示すように、二つの張出し部6を備える。二つの張出し部6を備える場合、
図7に示すように、リアクトル1Cを平面視したとき、一方の短辺部821と二つの張出し部6とで隙間7が構成されている。張出し部6は、一方の第二枠片42にのみ設けられていてもよい。この場合、隙間7は、リアクトル1Cを平面視したとき、一方の短辺部821と張出し部6と一方の長辺部823(824)とで構成される。
【0111】
枠状部材4aに張出し部6を備えるリアクトル1Cも、実施形態1のリアクトル1Aと同様に、一方の短辺部821と張出し部6とで隙間7(
図7)が構成される。そのため、封止樹脂部9を形成する際、隙間7にノズル100(
図4)を挿入して、封止樹脂部9となる樹脂の充填を行うことができる。
【0112】
<実施形態4>
図9を参照して、実施形態4に係るリアクトル1Dを説明する。リアクトル1Dの基本的な構成は、実施形態2のリアクトル1Bと同様である。リアクトル1Dは、組合体10の配置形態が縦型である。実施形態4のリアクトル1Dは、一方の枠状部材4aに張出し部6を備える点が実施形態2のリアクトル1Bと相違する。リアクトル1Dは、モールド樹脂部5に張出し部6を備えない。以下の説明は、上述した実施形態2との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0113】
図9では、
図6と同じように、ケース8内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース8及び封止樹脂部9は側面と平行な平面で切断した断面を示す。
【0114】
〔張出し部〕
一方の枠状部材4aにおける第二枠片42は、一方の短辺部821に向かって突出する張出し部6を備える。張出し部6は、枠状部材4aに一体に成形された一体物である。張出し部6は、第二枠片42におけるサイドコア部32側の面に設けられている。枠状部材4aは、一対の第二枠片42を備える(
図3)。張出し部6は、少なくとも一方の第二枠片42に設けられていればよい。本例の張出し部6は、各第二枠片42に設けられている。よって、リアクトル1Cは、二つの張出し部6を備える。二つの張出し部6を備える場合、実施形態3のリアクトル1Cと同様に、リアクトル1Dを平面視したとき、一方の短辺部821と二つの張出し部6とで隙間7が構成される(
図7を参照)。張出し部6は、一方の第二枠片42にのみ設けられていてもよい。この場合、隙間7は、リアクトル1Dを平面視したとき、一方の短辺部821と張出し部6と一方の長辺部823(824)とで構成される。
【0115】
枠状部材4aに張出し部6を備えるリアクトル1Dも、実施形態2のリアクトル1Bと同様に、一方の短辺部821と張出し部6とで隙間7(
図7)が構成される。そのため、封止樹脂部9を形成する際、隙間7にノズル100(
図4)を挿入して、封止樹脂部9となる樹脂の充填を行うことができる。
【0116】
<実施形態5>
図10及び
図11を参照して、実施形態5に係るリアクトル1Eを説明する。リアクトル1Eの基本的な構成は、実施形態1のリアクトル1Aと同様である。実施形態5のリアクトル1Eは、張出し部6に貫通孔63を備え、この貫通孔63内に封止樹脂部9の一部が充填される点が実施形態1のリアクトル1Aと相違する。以下の説明は、上述した実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0117】
図11は、
図10に示す(XI)-(XI)線で切断した部分断面図において、張出し部6の近傍を示す。また、
図11では、
図2と同じように、ケース8内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース8及び封止樹脂部9は側面と平行な平面で切断した断面を示す。
【0118】
〔張出し部〕
張出し部6は、
図11に示すように、ケース8の底板部81(
図2)側に位置する第一面61と、ケース8の開口部83側に位置する第二面62とを備える。そして、張出し部6は、
図10及び
図11に示すように、第一面61と第二面62とを貫通する貫通孔63を備える。この例では、貫通孔63は、張出し部6において、幅方向の中央に1つ設けられている(
図10)。貫通孔63は、張出し部6に複数設けられていてもよい。
【0119】
この例の貫通孔63は、一様な径の円孔で構成されている。貫通孔63は、第一面61側から第二面62側に向かって漸次的に径が小さくなるテーパ状に構成されていてもよい。貫通孔63には、封止樹脂部9の一部が充填される。よって、貫通孔63がテーパ状に構成されていることで、小さい側の径で一様に構成された円孔に比較すると、張出し部6と封止樹脂部9との接触面積が大きく確保され易い。また、貫通孔63がテーパ状に構成されていることで、テーパ面から第一面61に続く領域で封止樹脂部9が引っ掛かり易い。貫通孔63の断面形状は、円形に限定されず、多角形等であってもよい。
【0120】
〔封止樹脂部〕
封止樹脂部9は、張出し部6に設けられる貫通孔63に充填される第一樹脂部91と、第一面61及び第二面62に接して設けられる第二樹脂部92とを備える。第一樹脂部91と第二樹脂部92とは、連続して設けられる一体物である。
【0121】
実施形態5のリアクトル1Eは、張出し部6に貫通孔63を備え、その貫通孔63に封止樹脂部9の一部が充填されることで、張出し部6と封止樹脂部9とを強固に接合でき、ひいては組合体10と封止樹脂部9とを強固に接合できる。貫通孔63に充填される第一樹脂部91と、第一面61及び第二面62に接して設けられる第二樹脂部92とが、張出し部6に対して引っ掛かるためである。
【0122】
他に、実施形態5のリアクトル1Eは、張出し部6に貫通孔63を備えることで、封止樹脂部9を形成する際、一方の短辺部821側における樹脂の充填状態を貫通孔63から確認することができる。また、実施形態5のリアクトル1Eは、張出し部6に貫通孔63を備えることで、封止樹脂部9を形成する際、一方の短辺部821側に充填される樹脂に混入した気泡を貫通孔63から脱気することができる。
【0123】
<実施形態6>
図12及び
図13を参照して、実施形態6に係るリアクトル1Fを説明する。実施形態6のリアクトル1Fは、短辺部821に張出し部6を支持する取付け座84を備え、張出し部6と取付け座84とが締結されている点が実施形態1のリアクトル1Aと相違する。以下の説明は、上述した実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0124】
図13は、
図12に示す(XIII)-(XIII)線で切断した部分断面図である。
図13では、
図2と同じように、ケース8内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース8及び封止樹脂部9は側面と平行な平面で切断した断面を示す。
【0125】
〔取付け座〕
取付け座84は、
図13に示すように、短辺部821からケース8内に突出して、張出し部6の底板部81側の面を支持する。取付け座84は、
図12に示すように、リアクトル1Fを平面視したとき、張出し部6と重なるように設けられている。この例では、取付け座84が底板部81から短辺部821の内面に沿って延びる。取付け座84は、ケース8の開口部83側の上面にネジ穴85を備える。
【0126】
〔張出し部〕
張出し部6は、
図12及び
図13に示すように、ケース8の底板部81側に位置する第一面と、ケース8の開口部83側に位置する第二面とを貫通する貫通孔64を備える。この例の貫通孔64は、張出し部6に金属製のカラー65が埋め込まれることで構成されている。カラー65の張出し部6への埋め込みは、例えばインサート成形で行うことができる。貫通孔64は、リアクトル1Fを平面視したとき、取付け座84のネジ穴85と重なる位置に設けられている。
【0127】
張出し部6は、取付け座84のネジ穴85に重なる貫通孔64に加え、更に別の図示しない貫通孔を備えていてもよい。別の貫通孔内には、封止樹脂部9の一部が充填される。封止樹脂部9の一部が充填される別の貫通孔は、実施形態5で説明した貫通孔63の機能を有する。
【0128】
この例では、
図13に示すように、張出し部6と取付け座84とがボルト86によって締結されている。
図12は、ボルト86を図示していない。ボルト86は、ケース8の開口部83側から張出し部6の貫通孔64を貫通し、取付け座84のネジ穴85にねじ込まれている。ボルト86の頭部は、ケース8の開口部83よりも内側に位置する。そのため、ボルト86の頭部は、ケース8の開口部83から突出しない。本例では、ボルト86の頭部は、封止樹脂部9に埋設されており、封止樹脂部9からも露出していない。
【0129】
実施形態6のリアクトル1Fは、張出し部6が取付け座84に締結されていることで、ケース8に対して組合体10を強固に固定できる。そのため、リアクトル1Fは、例えば衝撃や振動等によって、ケース8から組合体10が脱落することを回避できる。また、この例では、取付け座84が底板部81から短辺部821の内面に沿って開口部83側に延びるように形成されている。リアクトル1Fは、取付け座84がケース8内に存在する分、実施形態1のリアクトル1Aに比較して、ケース8の容積が小さくなる。そのため、リアクトル1Fは、リアクトル1Aに比較して、封止樹脂部9となる樹脂の使用量が減少する。よって、リアクトル1Fは、封止樹脂部9となる高価な樹脂の使用量が減少する分、製造コストを削減できる。
【0130】
<実施形態7>
図14を参照して、実施形態7に係るリアクトル1Gを説明する。リアクトル1Gの基本的な構成は、実施形態1のリアクトル1Aと同様である。実施形態7のリアクトル1Gは、モールド樹脂部5の外周面に突起部68、69を備える点が実施形態1のリアクトル1Aと相違する。以下の説明は、上述した実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0131】
〔突起部〕
突起部68、69は、
図14に示すように、モールド樹脂部5の外周面からケース8の内周面に向かって設けられる。第一の突起部68は、ケース8の長辺部823、824に対向する面に設けられる。第二の突起部69は、ケース8の他方の短辺部822に対向する面に設けられる。つまり、第二の突起部69は、組合体10における張出し部6と反対側の面に設けられる。
【0132】
突起部68、69の数、位置、形状は、特に限定されるものではなく、適宜選択できる。例えば、突起部68の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。この例では、第一の突起部68は、
図14に示すように、モールド樹脂部5における両長辺部823、824に向き合う各面において、長さ方向に間隔をあけて2つずつ設けられている。また、第二の突起部69は、モールド樹脂部5における他方の短辺部822に向き合う面において、幅方向の中央に1つ設けられている。突起部68、69におけるケース8の深さ方向に沿った位置は、ケース8の開口部83側であることが好ましい。突起部68、69が開口部83側に位置すると、ケース8内で組合体10を安定して支持し易い。突起部68、69の形状は半球体状である。突起部68、69における突出量は、モールド樹脂部5の外周面と、側壁部82の長辺部823、824及び短辺部822との間隔に応じて、適宜設定できる。突起部68、69における突出量は、例えば0.5mm以上1.5mm以下が挙げられる。
【0133】
実施形態7のリアクトル1Gは、モールド樹脂部5の外周面に突起部68、69を備えることで、組合体10の外周面と側壁部82の内周面との間隔を適切に維持し易い。突起部68、69は、側壁部82の内周面に接していてもよい。突起部68が長辺部823、824の各々の内面に接することで、ケース8に対して組合体10の幅方向を位置決めし易い。また、突起部69が短辺部822の内面に接することで、ケース8に対して組合体10の長さ方向を位置決めし易い。特に、側壁部82の内周面が底板部81側から開口部83側に向かって広がるように傾斜する場合、突起部68、69が長辺部823、824の内面及び短辺部822の内面にそれぞれ接することで、ケース8内で組合体10が過度に傾くことを抑制できる。
【0134】
<実施形態8>
実施形態1から実施形態7に係る各リアクトルは、以下の通電条件を満たす用途に利用できる。通電条件としては、例えば、最大直流電流が100A以上1000A以下程度であり、平均電圧が100V以上1000V以下程度であり、使用周波数が5kHz以上100kHz以下程度であることが挙げられる。実施形態1から実施形態7に係る各リアクトルは、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車等の車両等に載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用できる。
【0135】
ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両1200は、
図15に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジン1300を備える。
図15では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態とすることができる。
【0136】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V~300V程度のメインバッテリ1210の入力電圧を400V~700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される入力電圧をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。入力電圧は、直流電圧である。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0137】
コンバータ1110は、
図16に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトル1115とを備え、ON/OFFの繰り返しにより入力電圧の変換を行う。入力電圧の変換とは、ここでは昇降圧を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ等のパワーデバイスが利用される。リアクトル1115は、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。リアクトル1115として、実施形態1から実施形態7のいずれかのリアクトルを備える。小型で生産性に優れるリアクトルを備えることで、電力変換装置1100やコンバータ1110も、小型化及び生産性の向上が期待できる。
【0138】
車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、実施形態1から実施形態7のいずれかのリアクトルと同様の構成を備え、適宜、大きさや形状等を変更したリアクトルを利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、実施形態1から実施形態7のいずれかのリアクトルを利用することもできる。
【符号の説明】
【0139】
1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G リアクトル
10 組合体
2 コイル、20 巻回部
3 磁性コア、3a、3b コア片
31 ミドルコア部、32、33 サイドコア部、34、35 エンドコア部
4a、4b 枠状部材
40 貫通孔、41 第一枠片、42 第二枠片
43 凹部、45 内側突片、46 外側突片、47 切欠き
5 モールド樹脂部
6 張出し部
61 第一面、62 第二面、63、64 貫通孔、65 カラー
68、69 突起部
7 隙間
8 ケース
81 底板部
82 側壁部、821、822 短辺部、823、824 長辺部
83 開口部
84 取付け座、85 ネジ穴、86 ボルト
9 封止樹脂部
91 第一樹脂部、92 第二樹脂部
100 ノズル
1100 電力変換装置、1110 コンバータ、1111 スイッチング素子
1112 駆動回路、1115 リアクトル、1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ、1160 補機電源用コンバータ
1200 車両、1210 メインバッテリ、1220 モータ
1230 サブバッテリ、1240 補機類、1250 車輪、1300 エンジン