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特許7368805架構データ生成装置、架構データ生成方法及び架構データ生成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】架構データ生成装置、架構データ生成方法及び架構データ生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20231018BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20231018BHJP
   G06F 30/27 20200101ALI20231018BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/20
G06F30/27
E04B1/24 A ESW
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019237271
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105874
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514314325
【氏名又は名称】株式会社ディックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】関根 章義
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 淳司
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 孝行
(72)【発明者】
【氏名】交田 康幸
(72)【発明者】
【氏名】仙場 雄太
(72)【発明者】
【氏名】田村 尚土
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-153994(JP,A)
【文献】特開2013-050899(JP,A)
【文献】特開2019-117603(JP,A)
【文献】特開2015-035176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
E04B 1/18 - 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の平面形状、高さ及び階数を取得する初期条件取得部と、
取得した前記平面形状及び前記階数の範囲内で、柱及び大梁を含む主架構のスパン割りを変更し、複数の架構形状を生成する架構形状生成部と、
生成された架構形状の各々について、耐震性の目安となる評価値、施工性の目安となる評価値、材料コストの目安となる評価値、及び建物のバランスの目安となる評価値のうち少なくとも3つを算出すると共に、算出された評価値を目的関数としてパレート解集合を求め、記憶装置に記憶させるシミュレーション部と、
を備える架構データ生成装置。
【請求項2】
前記シミュレーション部は、生成された架構形状の各々について、前記耐震性の目安となる評価値、前記施工性の目安となる評価値、前記材料コストの目安となる評価値、及び前記建物のバランスの目安となる評価値を算出する
請求項1に記載の架構データ生成装置。
【請求項3】
前記シミュレーション部は、前記架構形状の各々について、用途に対応付けて予め記憶装置に記憶される標準的な荷重を用いて前記主架構の断面に生じる応力度を算出すると共に、所定の許容応力度を超えない架構形状を用いて前記パレート解集合を求める
請求項1又は2に記載の架構データ生成装置。
【請求項4】
前記耐震性の目安となる評価値は、所定の地震荷重に対する最大層間変形角であり、
前記施工性の目安となる評価値は、主架構のピース数であり、
前記材料コストの目安となる評価値は、鉄骨重量であり、
前記建物のバランスの目安となる評価値は、剛性率、偏心率、又は荷重に対する応力の均等性を表す評価値である
請求項1から3のいずれか一項に記載の架構データ生成装置。
【請求項5】
前記シミュレーション部は、前記最大層間変形角が所定の基準を超えない架構形状を用いて前記パレート解集合を求める
請求項4に記載の架構データ生成装置。
【請求項6】
前記初期条件取得部は、前記建築物の前記用途をさらに取得し、
前記シミュレーション部は、取得した前記用途に対応付けて予め前記記憶装置に記憶される標準的な荷重を読み出し、読み出した荷重を用いて前記地震荷重に対する前記最大層間変形角を算出する
請求項3を引用する、請求項4又は5に記載の架構データ生成装置。
【請求項7】
建築物の平面形状、高さ及び階数を取得するステップと、
取得した前記平面形状及び前記階数の範囲内で、柱及び大梁を含む主架構のスパン割りを変更し、複数の架構形状を生成するステップと、
生成された架構形状の各々について、耐震性の目安となる評価値、施工性の目安となる評価値、材料コストの目安となる評価値、及び建物のバランスの目安となる評価値のうち少なくとも3つを算出すると共に、算出された評価値を目的関数としてパレート解集合を求め、記憶装置に記憶させるステップと、
をコンピュータが実行する架構データ生成方法。
【請求項8】
建築物の平面形状、高さ及び階数を取得するステップと、
取得した前記平面形状及び前記階数の範囲内で、柱及び大梁を含む主架構のスパン割りを変更し、複数の架構形状を生成するステップと、
生成された架構形状の各々について、耐震性の目安となる評価値、施工性の目安となる評価値、材料コストの目安となる評価値、及び建物のバランスの目安となる評価値のうち少なくとも3つを算出すると共に、算出された評価値を目的関数としてパレート解集合を求め、記憶装置に記憶させるステップと、
をコンピュータに実行させる架構データ生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、架構データ生成装置、架構データ生成方法及び架構データ生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、設計者が操作して入力を行う入力操作手段と、各種画面を表示する表示手段と、入力操作手段による入力信号を受けて信号処理して表示手段に出力する演算処理装置を備えたコンピュータシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。本コンピュータシステムは、建物の階数に応じた柱、梁、床の基本構成要素の大きさ・構造を構造計算して予めその標準を決め記録したデータベースを有し、演算処理装置は、設計者の入力操作手段の操作によりXスパン数、Yスパン数、階数、各スパン長、各階高などの建物の規模、構造の種類および建物の用途などの基本構造データを設定する基本構造データ設定手段と、基本構造データ設定手段により設定された建物の階数および用途に基づきデータベースから検索して基本構成要素の大きさ・構造の標準を設定する基本構成要素データ設定手段と、設計者の入力操作手段の操作により基本構造データおよび基本構成要素データを変更した変更データを設定する変更データ設定手段と、設定された基本構造データと基本構成要素データおよび設定された変更データに基づいて建物の形状,柱,梁を配置して構造モデルを構成する構造モデル構成手段と、構造モデル構成手段が構成した構造モデルの階ごとのおよびスパンごとの構造モデル図等を表示手段に表示させる画像処理手段と、を備えている。
【0003】
また、多目的遺伝的アルゴリズムを用いて、鋼材コストと最大層間変形角を目的関数としたパレート解集合を求め、構造計画を支援する手法についても提案されている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-343006号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】田村尚土、「多目的最適化法を用いた鋼構造物の構造計画における設計支援とその実用化に関する研究」名古屋大学博士論文、2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、設定された建物の階数および用途に基づき、ルールベースで基本構成要素の大きさ・構造の標準を設定するという技術が提案されていた。また、教師あり学習のような機械学習を行う場合、十分に設計データの蓄積がなければ、適切に学習させることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、機械学習において教師データとして用いる設計データの作成を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る架構データ生成装置は、建築物の平面形状、高さ及び階数を取得する初期条件取得部と、取得した平面形状及び階数の範囲内で、柱及び大梁を含む主架構のスパン割りを変更し、複数の架構形状を生成する架構形状生成部と、生成された架構形状の各々
について、耐震性の目安となる評価値、施工性の目安となる評価値、材料コストの目安となる評価値、及び建物のバランスの目安となる評価値のうち少なくとも3つを算出すると共に、算出された評価値を目的関数としてパレート解集合を求め、記憶装置に記憶させるシミュレーション部とを備える。
【0009】
このようにすれば、主架構のスパン割が異なる複数の架構形状に対して、充分な数の評価値に基づくパレート解集合を得ることができる。また、例えばパレート解集合を設計者が評価し、これを教師データとすることで機械学習に利用できる。また、建築物のボリュームに対して採用し得る主架構のスパン割を複数生成することができるため、十分なパターン及び量の教師データを生成できる。
【0010】
また、シミュレーション部は、生成された架構形状の各々について、耐震性の目安となる評価値、施工性の目安となる評価値、材料コストの目安となる評価値、及び建物のバランスの目安となる評価値を算出するようにしてもよい。4つの評価値を目的関数とすることで、設計者であるユーザは架構形状の良し悪しをより評価し易くなると共に、機械学習の精度をさらに向上させることができるようになる。
【0011】
また、シミュレーション部は、架構形状の各々について、用途に対応付けて予め記憶装置に記憶される標準的な荷重を用いて主架構の断面に生じる応力度を算出すると共に、所定の許容応力度を超えない架構形状を用いてパレート解集合を求めるようにしてもよい。このようにすれば、自動的に生成する架構形状のうち、建築物に要求される制約条件を満たすものを採用することができる。
【0012】
また、耐震性の目安となる評価値は、所定の地震荷重に対する最大層間変形角であり、施工性の目安となる評価値は、主架構のピース数であり、材料コストの目安となる評価値は、鉄骨重量であり、建物のバランスの目安となる評価値は、剛性率、偏心率、又は荷重に対する応力の均等性を表す評価値であってもよい。具体的には、このような評価値を目的関数にすることができる。
【0013】
また、シミュレーション部は、最大層間変形角が所定の基準を超えない架構形状を用いてパレート解集合を求めるようにしてもよい。このようにしても、自動的に生成する架構形状のうち、建築物に要求される制約条件を満たすものを採用することができる。
【0014】
また、初期条件取得部は、建築物の用途をさらに取得し、シミュレーション部は、取得した用途に対応付けて予め記憶装置に記憶される標準的な荷重を読み出し、読み出した荷重を用いて地震荷重に対する最大層間変形角を算出するようにしてもよい。このようにすれば、簡易な入力処理により、適切なパラメータを設定してシミュレーションができるようになる。
【0015】
なお、課題を解決するための手段に記載の内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。また、課題を解決するための手段の内容は、コンピュータ等の装置若しくは複数の装置を含むシステム、コンピュータが実行する方法、又はコンピュータに実行させるプログラムとして提供することができる。該プログラムはネットワーク上で実行されるようにすることも可能である。また、当該プログラムを保持する記録媒体を提供するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、機械学習において教師データとして用いる設計データの作成を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係る架構データ生成装置の一例を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態に係る架構データ生成処理の一例を示す処理フロー図である。
図3図3は、ユーザに初期条件を入力させるための画面の一例を示す図である。
図4図4は、用途に対応付けて予め定められる積載荷重の一例を示す図である。
図5図5は、生成される架構形状の一例を示す図である。
図6図6は、シミュレーションの処理の一例を示す処理フロー図である。
図7図7は、出力される評価値の一例を示す図である。
図8図8は、パレート解集合の一例を三次元上に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0019】
<装置構成>
図1は、本発明に係る架構データ生成装置の一例を示すブロック図である。架構データ生成装置1は、一般的なコンピュータであり、与えられた初期条件を満たす範囲内で建築物の架構形状について複数のバリエーションを生成する。また、架構データ生成装置1は、架構形状に応じて鉄骨数量(材料コストの目安となる評価値)や部材のピース数(施工性の目安となる評価値)、層間変形角(耐震性能の目安となる評価値)、剛性率、偏心率、荷重に対する応力の均等性(建物のバランスの目安となる評価値)といった複数の評価値に対するパレート解を求める。このようにして求められる情報を、経験を積んだ設計者であるユーザに提示して評価させることにより、好ましい架構形状を機械学習させるための教師データとして利用することができる。すなわち、架構データ生成装置1によれば、教師データとして利用できる設計データを十分に蓄積することができるようになる。なお、上述の評価値のうち少なくとも3つを用いることで、経験則上、充分な数の観点に基づいて検討することができ、設計者であるユーザは架構形状の良し悪しを評価し易くなると共に、機械学習の精度を向上させることができるようになる。
【0020】
本発明に係る架構データ生成装置1は一般的なコンピュータであり、通信I/F(Interface)11と、記憶装置12と、入出力I/F(Interface)13と、プロセッサ14と、バス15とを備える。
【0021】
通信I/F11は、例えば有線のネットワークカード又は無線の通信モジュール等であり、図示していないネットワークを介し他のコンピュータとの間で情報を送受信する。
【0022】
記憶装置12は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の主記憶装置及びHDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置(二次記憶装置)である。主記憶装置は、プロセッサが読み出したプログラムやデータをキャッシュしたり、プロセッサの作業領域を確保したりする。補助記憶装置は、プロセッサが実行するプログラムやBIM(Building Information Modeling)等の規格に従って表される設計データを記憶する。
【0023】
入出力I/F13は、例えばキーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置や、プリンタ等の出力装置と接続される。入出力I/F13を介して、ユーザの操作を受け付けたり、ユーザへ情報を出力したりする。
【0024】
プロセッサ14は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置であり、プ
ログラムを実行することにより本実施の形態に係る各処理を行う。具体的には、プロセッサ14は、初期条件登録部141、架構形状生成部142、シミュレーション部143と
して機能する。
【0025】
初期条件登録部141は、入出力I/F13を介してユーザの操作を受け付け、建築物の外形、階数、用途といった初期条件を取得する。外形は、例えば直方体形状の建築物の幅、奥行き及び高さによって特定される。なお、建築物の外形は、直方体以外の複雑な形状により特定されるものであってもよい。階数は、建築物の階数を表す。なお、建築物の高さと階数から各階の階高を算出してもよいし、ユーザに入力させることにより、各階について階高をさらに取得するようにしてもよい。また、用途は、建築物の用途であり、本実施形態では荷重条件として用いる。なお、用途は階ごとに対応付けて取得するようにしてもよい。用途に対応付けて単位面積当たりの荷重を予め記憶させておき、荷重を構造計算において用いる。
【0026】
架構形状生成部142は、取得された初期条件の範囲内において、スパン割、小梁配置、ブレース配置、柱や梁の断面といったパラメータを自動的に変更し、複数の架構形状を生成する。なお、本実施形態ではS造の建築物を設計するものとして説明するが、RC造の建築物に適用して柱や梁の断面に加えて鉄筋の数や配置も変更するようにしてもよい。
【0027】
シミュレーション部143は、生成された架構形状について構造計算を行い、最大層間変形角、鉄骨重量、ピース数、剛性率、偏心率、均等性等の少なくともいずれかを目的関数として多目的最適化問題を解いて、生成された架構形状ごとに近似パレート最適解を得る。このようにして得られる複数のデータは、機械学習において教師データとして利用することができる。
【0028】
以上のような構成要素が、バス15を介して接続されている。なお、架構データ生成装置1は、例えば通信I/F11や入出力I/F13のような一部の構成要素を備えていなくてもよい。また、架構データ生成装置1は、いわゆるクラウド上に設けられ、インターネット等の図示していないネットワークを介して他のコンピュータに対し本実施形態に係る処理の結果を出力するものであってもよい。
【0029】
<架構データ生成処理>
図2は、本実施形態に係る架構データ生成処理の一例を示す処理フロー図である。架構データ生成装置1の初期条件登録部141は、入出力I/F13を介してユーザから初期条件の入力を受ける(図2:S1)。本ステップでは、初期条件登録部141は、建築物の外形を規定する情報、用途(荷重)を取得する。建築物の外形を規定する情報は、幅、奥行き、高さ、階数を含む。用途は、事務所、集合住宅、ホテル、物流・倉庫等の種別を含む。なお、記憶装置12には用途の種別と対応付けて積載荷重を予め記憶させておき、構造計算に用いることができる。また、建築物の外形を規定する情報は、陸屋根、片流れ屋根、切妻屋根等の屋根形状や、屋根の高さ、勾配、柱の中抜けの有無を含むものであってもよい。
【0030】
図3は、ユーザに初期条件を入力させるための画面の一例を示す図である。図3の例では、直方体形状の建築物の幅、奥行き及び高さの大きさと、階数の入力欄と、建築物の用途の入力欄とを含む。なお、階層ごとに屋根、基準階、パラペット、壁、耐火被覆等の固定荷重をさらに入力できるようにしてもよい。
【0031】
図4は、用途に対応付けて予め定められる積載荷重の一例を示す図である。図4に示すテーブルは、用途、積載荷重の各属性を含む。また、事務所、集合住宅、ホテル、物流・倉庫等といった建築物の用途に応じて、標準的な積載荷重が定められており、構造計算に用いることができる。積載荷重は、スラブ・小梁用、架構用(柱・大梁の長期用)、地震用(柱・大梁の地震用)等に分けて設定されていても良い。
【0032】
また、架構形状生成部142は、所定のパラメータを決定し、架構形状を生成する(図2:S2)。本ステップでは、所定のパラメータとして、スパン割り、小梁割り、柱及び梁の断面、ブレースの配置等を例えば予め定められた形状及び数量の範囲内でランダムに決定する。スパン割りは、例えば等分割でランダムにスパン数が変更される。小梁割りは、一方向タイプ(長辺)、一方向タイプ(短辺)又は魚骨タイプといった形状で、大梁間に配置される。柱及び梁の断面は、柱や梁の材料として用いる鋼材リストを予め記憶装置12に記憶させておき、ランダムに選択されるものとする。また、上述のスパンに基づいて所定方向に連続する柱や梁がグループ化され、同一グループの柱や梁には、断面が同一の鋼材を割り当てるようにしてもよい。
【0033】
図5は、生成される架構形状の一例を示す図である。図5の例では、X方向に4スパン、Y方向に2スパンに分割され、鉄骨で柱及び大梁が形成されている。S2(図2)においては、図5に示した例に限らず、スパン数はランダムに設定され得る。なお、例えば許容されるスパン長の範囲でランダムに設定するようにしてもよい。また、例えば共用部など一部のスパンを固定し、執務空間など他の部分のスパンのみをランダムに決定するようにしてもよい。また、図5に示すような架構形状は、いわゆるBIM(Building Information Modeling)モデルで生成するようにしてもよい。
【0034】
そして、シミュレーション部143は、生成された架構形状に対して所定のシミュレーションを行い、鉄骨重量(材料コスト)や部材のピース数(施工性)、層間変形角(耐震性)、剛性率、偏心率、均等性といった複数の評価値を算出する(図2:S3)。本ステップの処理は、図6を用いて説明する。
【0035】
図6は、シミュレーションの処理の一例を示す処理フロー図である。シミュレーション部143は、生成された架構形状に基づいて応力解析を行う(図6:S11)。本ステップでは、柱及び大梁にかかる応力度を算出する。すなわち、シミュレーション部143は、柱や大梁といった部材にかかる垂直応力度、せん断応力度、曲げ応力度を算出する。応力度の計算は、既存の手法を用いることができる。
【0036】
また、シミュレーション部143は、応力度が所定の制約条件を満たしているか判断する(図6:S12)。本ステップでは、例えば応力度が許容応力度以下(検定比1.0以下)であるか判断する。応力度が制約条件を満たしていないと判断された場合(S12:NO)、接続子「A」を介してS2(図2)の処理に戻る。なお、応力度が制約条件を満たしていないと判断された場合もS13へ遷移し、ペナルティとして後述する評価値を下げるような操作を行ってもよい。
【0037】
応力度が制約条件を満たしていると判断された場合(S12:YES)、シミュレーション部143は、S2(図2)において生成された架構形状に基づいて、所定の地震荷重に対する最大層間変形角を求める(図6:S13)。まず、1つの階の層間変形角rは、地震時における当該階の水平変位を階高で除した値であり、次の式(1)で求められる。
r=δ/h ・・・(1)
なお、δは層間変位、hは階高である。最大層間変形角は、各階の層間変形角のうち、最も大きな値として求められる。
【0038】
そして、シミュレーション部143は、最大層間変形角が所定の制約条件を満たしているか判断する(図6:S14)。本ステップでは、最大層間変形角が所定の基準以下であるか判断する。所定の基準は、法定された基準(例えば1/200)としてもよい。最大層間変形角が制約条件を満たしていないと判断された場合(S14:NO)、接続子「A」を介してS2(図2)の処理に戻る。なお、最大層間変形角が制約条件を満たしていな
いと判断された場合もS15へ遷移し、ペナルティとして後述する評価値を下げるような操作を行ってもよい。
【0039】
一方、最大層間変形角が制約条件を満たしていると判断された場合(S14:YES)、シミュレーション部143は、鉄骨重量及びピース数等を算出する(図6:S15)。鉄骨重量は、建築物に使用される部材の数量(重量)である。ピース数は、建築物に使用される部材の数とする。本ステップでは、生成された架構形状に基づいて、部材の数量及び部材数をそれぞれ積算し、鉄骨重量及びピース数を求める。また、剛性率を各階のX方向及びY方向について算出し、X方向及びY方向の各々について複数の階における最小値を求めるようにしてもよい。また、重心と剛心の差の大きさを示す偏心率についても、各階のX方向及びY方向について算出し、X方向及びY方向の各々について複数の階における最大値を求めるようにしてもよい。また、大梁にかかる荷重の分布を表す均等性の値を求めるようにしても良い。均等性の値として、X方向及びY方向の各々について、大梁にかかる応力の標準偏差を階ごとに平均し、X方向及びY方向の各々について複数の階における平均値を求めるようにしてもよい。応力は、例えば大梁の両端部にかかる長期荷重のうち大きい方を用いる。また、大梁にかかる応力は、符号ごとに求めるようにしてもよい。すなわち、短大梁、標準大梁、長大梁など、スパンの同じ大梁には同一の符号を付しておく。そして、各大梁にかかる応力を求め、これらの標準偏差を方向ごと、階ごと、同一の符号が付された大梁ごとに求める。そして、階ごとに標準偏差の平均を求め、複数の平均の建物全体の平均値をX方向及びY方向について求め、均等性の値とする。
【0040】
そして、シミュレーション部143は、算出された評価値を架構形状と対応付けて出力する(図6:S16)。本ステップでは、評価値として層間変形角、鉄骨重量、ピース数、剛性率、偏心率、均等性が、S2(図2)において生成された架構形状と対応付けて記憶装置12に記憶される。
【0041】
図7は、出力される評価値の一例を示す図である。S16(図6)においては、図7に示すような属性を有するテーブルに、評価値等の情報が記憶される。図7に示すテーブルは、積載荷重、X(幅)方向の短スパン数、X方向の短スパン、Y(奥行)方向の短スパン数、Y方向の短スパン、X方向の標準スパン数、X方向の標準スパン、Y方向の標準スパン数、Y方向の標準スパン、X方向の長スパン数、X方向の長スパン、Y方向の長スパン数、Y方向の長スパン、階高、小梁割り、鉄骨重量、層間変形角、ピース数、剛性率(X方向の最小値)、剛性率(Y方向の最小値)、偏心率(X方向の最大値)、偏心率(Y方向の最大値)、均等性(X方向の最大値)、均等性(Y方向の最大値)といった属性を含む。積載荷重のフィールドには、用途に応じた積載荷重が登録される。短スパン、標準スパン、長スパンに関するフィールドには、各大きさに分類されるスパンごとに数が登録される。階高のフィールドには、建築物の高さを階数で除した値、又はユーザによって入力された階高が登録される。鉄骨重量のフィールドには、S15(図6)において算出された鉄骨重量の値が登録される。層間変形角のフィールドには、S13(図6)において算出された最大層間変形角の値が登録される。ピース数のフィールドには、S15(図6)において算出されたピース数の値が登録される。図7に示すテーブルに登録されるレコードの各々は、例えば図5に示したような架構形状とさらに対応付けられるようにしてもよい。剛性率のフィールドには、S15(図6)において算出された、X方向、Y方向の剛性率の最小値が登録される。偏心率のフィールドには、S15(図6)において算出された、X方向、Y方向の偏心率の最大値が登録される。均等性のフィールドには、S15(図6)において算出された、X方向、Y方向の平均値が登録される。
【0042】
S16(図6)の後、処理は図2に戻り、架構形状生成部142は、架構形状の生成を終了するか判断する(図2:S4)。本ステップでは、S2及びS3の処理を繰り返し、例えば予め定められた所定数の架構形状を生成した場合に、架構形状生成部142は処理
を終了すると判断する。処理を終了しないと判断された場合(S4:NO)、S2に戻って処理を繰り返す。
【0043】
一方、処理を終了すると判断された場合(S4:YES)、シミュレーション部143は、パレート解集合を出力する(図2:S5)。本ステップでは、シミュレーション部143は、S2(図2)において生成された複数の架構形状及びS3(図2)において算出された評価値を用いて、層間変形角、鉄骨重量及びピース数を目的関数とする多目的最適化問題を解くこともできる。例えば、多目的最適化問題は、以下の式(1)で与えられる。
【数1】

なお、Cは鉄骨重量、Rはk階の層間変形角、Pはピース数、γは制約条件jに対するペナルティ関数である。さらに、上記の目的関数のいずれかに代えて、又は上記の3つの目的関数に加えて、剛性率(X方向の最小値)、剛性率(Y方向の最小値)、偏心率(X方向の最大値)、偏心率(Y方向の最大値)、均等性(X方向の平均値)、均等性(Y方向の平均値)のいずれかを目的関数としてもよい。パレート解集合の生成法は、例えばSPEA2のような多目的遺伝的アルゴリズム等、既存の手法を用いることができる。すなわち、シミュレーション部143は、例えばS16(図6)において図7のテーブルに登録された複数のレコードについて、支配しているレコードの数を求める。そして、支配されているレコードの適合度が、当該レコードを支配しているレコードを支配しているレコードの数を合計した値となるように、適合度を求める。したがって、レコードが非劣解の場合、適合度はゼロになる。このような処理を用いてアーカイブ個体群から探索個体群を選択し、探索を行う。また、シミュレーション部143は、得られたパレート解集合を、所定の出力テーブルに出力する。出力テーブルは、図7に示したテーブルと同様の属性を含むものであってもよい。
【0044】
図8は、パレート解集合の一例を三次元上に示す図である。図8の例では、層間変形角(Drift Angle)、鉄骨重量(Weight)、ピース数(Piece)の各軸を含み、パレート解の各々がプロットされている。S5(図2)においては、このようなグラフを出力し、可視化するようにしてもよい。
【0045】
以上で、本実施形態に係る架構データ生成処理を終了する。
【0046】
<効果>
以上のように、架構データ生成処理によれば、近似されたパレート最適解も得られる。ただし、パレート最適解の中にも、経験のある設計者にとって好ましい架構形状やそうでない架構形状が存在する。複数得られるパレート最適解に対して、例えば設計者が優劣を付け、これを教師データとすれば機械学習に利用することもできる。また、本実施形態によれば、建築物のボリュームに対して採用し得る様々なスパン割を網羅するように複数の
架構形状を生成することができる。したがって、十分なパターン及び量の教師データを生成できる。
【0047】
<その他>
なお、実施形態は例示であり、本発明は上述した構成には限定されない。また、本発明の対象は、上述した処理を実行するコンピュータプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を含む。当該プログラムが記録された記録媒体は、プログラムをコンピュータに実行させることにより、上述の処理が可能となる。
【0048】
なお、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータから取り外し可能なものとしては、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、磁気テープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としては、HDDやSSD(Solid State Drive)、ROM等がある。
【符号の説明】
【0049】
1 :架構データ生成装置
11 :通信I/F
12 :記憶装置
13 :入出力I/F
14 :プロセッサ
141 :初期条件登録部
142 :架構経常生成部
143 :シミュレーション部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8