(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】車椅子用動力装置
(51)【国際特許分類】
A61G 5/04 20130101AFI20231018BHJP
A61G 5/02 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
A61G5/04 711
A61G5/02 707
A61G5/02 701
(21)【出願番号】P 2020043829
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】394021638
【氏名又は名称】トリックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(72)【発明者】
【氏名】五家 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】小椋 啓造
(72)【発明者】
【氏名】大角 良輔
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 源之
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3116721(JP,U)
【文献】登録実用新案第3061317(JP,U)
【文献】特開2011-030964(JP,A)
【文献】登録実用新案第3092374(JP,U)
【文献】特開2013-048735(JP,A)
【文献】米国特許第08684113(US,B1)
【文献】登録実用新案第3161833(JP,U)
【文献】特開2008-254007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/04
A61G 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動式の車椅子に装着されることによって前記車椅子の走行を補助する車椅子用動力装置であって、
前記車椅子のうち左右どちらか一方の車体フレームの外側に設けられるベースフレームと、
前記ベースフレーム
の外側に設けられる連結部、及び前記連結部に着脱可能に連結される被連結部を備える連結機構と、
前記被連結部に設けられるハンドル機構と、
前記ハンドル機構に設けられる駆動輪と、
前記ハンドル機構に設けられ前記駆動輪を駆動するモーターと、
を備えることを特徴とする車椅子用動力装置。
【請求項2】
前記連結機構が上側連結部材、下側連結部材、及び締結部材を備え、
前記上側連結部材が、前記連結部又は前記被連結部の一方に設けられた水平軸と、他方に設けられ前記水平軸に当接されて前記連結部側の重さを支持する当接部であり、
前記下側連結部材が、前記連結部又は前記被連結部の一方に設けられたプランジャーと、他方に設けられた前記プランジャーに対応する嵌合体であり、
前記締結部材が、前記水平軸と前記当接部とが当接され、かつ前記プランジャーと前記嵌合体とが嵌め合わされた状態で前記連結部と前記被連結部とを締結するものであることを特徴とする請求項1に記載の車椅子用動力装置。
【請求項3】
前記車椅子の前輪を上昇させることができる前輪上昇機構を備え、
前記前輪上昇機構が、前記車椅子の前輪取付パイプに嵌挿されるとともにその下部に前輪が装着される上下軸と、前記前輪取付パイプの上に設けられ前記上下軸を上下させるトグル機構とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の車椅子用動力装置。
【請求項4】
前記ベースフレームの外側にバッテリーを収納するバッテリー収納部を備え、
前記バッテリー収納部が前記車椅子の前輪の取付軸より前に配置されていることを特徴とする請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の車椅子用動力装置。
【請求項5】
前記バッテリーの着脱時に前記バッテリーを吊下げるための吊下げ具を備え、
前記吊下げ具が前記バッテリーとともに前記バッテリー収納部に収納されていることを特徴とする請求項
4に記載の車椅子用動力装置。
【請求項6】
前記ハンドル機構が、ハンドルステム、及び前記ハンドルステムに設けられ上方向に伸ばされるハンドル軸を備え、
前記ハンドル軸が、前記ハンドルステムより前記車椅子の内側にオフセットされていることを特徴とする請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の車椅子用動力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動式の車椅子に装着されることによって、前記車椅子の走行を補助する車椅子用動力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通常時は手動式車椅子として使用し、必要が生じた際に他人の力を借りることなく使用者が車いすに乗ったまま独力で駆動部を取り付けて、電動式車椅子として使うことを目的として、例えば特開2004-201807号公報、特開2011-030964号公報、特開2013-048735号公報に、組立て可能な電動車椅子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-201807号公報
【文献】特開2011-030964号公報
【文献】特開2013-048735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献に記載されている電動車椅子では、その駆動機構を手動式車椅子に連結する連結用フレームが、使用者の両足の周りを囲うように配置されているか使用者の両足の間に配置されている。このため、車椅子を乗り降りしようとすると連結用フレームを跨ぐか、連結用フレームを駆動機構ごと外す作業をする必要があった。ところが、車椅子を用いる使用者は下半身が不自由な人や体力に劣る高齢者が多く、上記の作業を車椅子の乗り降りの度にすることが負担となっていた。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、車椅子の左右どちらか一方の車体フレームに装置の構成要素を配置することで車椅子の前方に空間を設け、使用者が楽に乗り降りすることができる車椅子用動力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車椅子用動力装置は、
手動式の車椅子に装着されることによって前記車椅子の走行を補助する車椅子用動力装置であって、
前記車椅子のうち左右どちらか一方の車体フレームの外側に設けられるベースフレームと、
前記ベースフレームに設けられる連結部、及び前記連結部に着脱可能に連結される被連結部を備える連結機構と、
前記被連結部に設けられるハンドル機構と、
前記ハンドル機構に設けられる駆動輪と、
前記ハンドル機構に設けられ前記駆動輪を駆動するモーターと、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の車椅子用動力装置によれば、ベースフレームが車椅子の車体フレームのうち左右一方の外側に設けられている。このため、ハンドル機構や駆動輪も車椅子の側方に設けられ、車椅子の前面が空く。これにより、車椅子の利用者が車椅子に乗降する際に、車椅子用動力装置の構成要素が邪魔になることがない。また、ベースフレームを介してハンドル機構を装着するため、既存の車椅子に後付けすることが可能となる。さらに、連結機構によって、車椅子に対してハンドル機構等が着脱可能に構成されるため、不要時には取外して通常の車椅子としての使用も可能となる。
【0008】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
前記連結機構が上側連結部材、下側連結部材、及び締結部材を備え、
前記上側連結部材が、前記連結部又は前記被連結部の一方に設けられた水平軸と、他方に設けられ前記水平軸に当接されて前記連結部側の重さを支持する当接部であり、
前記下側連結部材が、前記連結部又は前記被連結部の一方に設けられたプランジャーと、他方に設けられた前記プランジャーに対応する嵌合体であり、
前記締結部材が、前記水平軸と前記当接部とが当接され、かつ前記プランジャーと前記嵌合体とが嵌め合わされた状態で前記連結部と前記被連結部とを締結するものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、上側連結部材の水平軸と当接部とを当接させた状態で、下側連結部材のプランジャーと嵌合体とを所定の位置に合わせることで、連結部と被連結部とを連結させることができる。このため、高齢者等でも比較的簡単にハンドル機構等の着脱をすることができる。また、締結部材で連結部と被連結部とを締結するため、上側連結部材と下側連結部材の遊びを抑えることができ、使用によるがたつきを防止することができる。
【0010】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
前記車椅子の前輪を上昇させることができる前輪上昇機構を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、前輪上昇機構を備えるため、ハンドル機構等を連結させた後で、車椅子の前輪を上昇させて駆動輪に荷重をかけることができる。すなわち、ハンドル機構等の着脱時には車椅子の前輪が接地して車椅子の重量を支えている。このため、ハンドル機構等の着脱時に駆動輪に車椅子の重量が作用せず、着脱を容易にすることができる。
【0012】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
前記前輪上昇機構が、前記車椅子の前輪取付パイプに嵌挿されるとともにその下部に前輪が装着される上下軸と、前記前輪取付パイプの上に設けられ前記上下軸を上下させるトグル機構とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、上下軸が車椅子の前輪取付パイプに上下方向に移動可能に嵌挿され、当該上下軸の下部に前輪が装着されるため、車椅子の車体フレームをそのまま使用することができる。また、トグル機構によって上下軸及び前輪を上下させるため、軽い力で上下させることができる。
【0014】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
バッテリーを収納するバッテリー収納部を備え、
前記バッテリー収納部が前記車椅子の前輪の取付軸より前に配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、比較的重量のあるバッテリーを前輪の取付軸より前に搭載しているため、駆動輪に荷重がかかりやすくなり、登り坂等での駆動輪の空転を防止することができる。なお、前輪の取付軸とは、いわゆるキャスタータイプの前輪が車椅子には使用されることが多いが、そのキャスターを取付けるための略垂直方向の軸を意図する。
【0016】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
前記バッテリーの着脱時に前記バッテリーを吊下げるための吊下げ具を備え、
前記吊下げ具が前記バッテリーとともに前記バッテリー収納部に収納されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、吊下げ具によってバッテリーをバッテリー収納部から取り出すことができ、バッテリー交換が容易となる。
【0018】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例は、
前記ハンドル機構が、ハンドルステム、及び前記ハンドルステムに設けられ上方向に伸ばされるハンドル軸を備え、
前記ハンドル軸が、前記ハンドルステムより前記車椅子の内側にオフセットされていることを特徴とする。
【0019】
本発明の車椅子用動力装置の好ましい例によれば、駆動輪等を車体フレームの外側に配置して、車椅子の乗降に支障のない位置に配置しつつ、ハンドルを手が届きやすい範囲に配置させることができる。
【発明の効果】
【0020】
上述したように、本発明の車椅子用動力装置によれば、車椅子の左右どちらか一方の車体フレームに装置の構成要素を配置することで車椅子の前方に空間を設け、装置の着脱をすることなく使用者が楽に乗り降りすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車椅子用動力装置と前記車椅子用動力装置を装着した車椅子の左側面図である。
【
図2】車椅子用動力装置と前記車椅子用動力装置を装着した車椅子の右側面図である。
【
図3】車椅子用動力装置と前記車椅子用動力装置を装着した車椅子の平面図である。
【
図4】車椅子用動力装置と前記車椅子用動力装置を装着した車椅子の正面図である。
【
図5】連結機構の連結部と被連結部とを切り離した状態を説明する図である。
【
図6】連結機構そのものをベースフレームから取り外した状態を説明する図である。
【
図7】連結機構の着脱を説明するための平面図、側面図、底面図である。
【
図8】連結機構の着脱を説明するための平面図、側面図、底面図である。
【
図9】連結機構の着脱を説明するための平面図、側面図、底面図である。
【
図10】
図9に示す連結機構の正面図と背面図である。
【
図11】締結部材が異なる連結機構の着脱を説明するための平面図、側面図、底面図である。
【
図12】締結部材が異なる連結機構の着脱を説明するための平面図、側面図、底面図である。
【
図15】バッテリー及び吊下げ具を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の車椅子用動力装置1の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態の車椅子用動力装置1は、既存の車椅子100に後付け可能に構成される。
【0023】
図1から
図5に示すように、本実施形態の車椅子用動力装置1は、ベースフレーム10と、連結機構20と、ハンドル機構50と、駆動輪60と、モーター62と、前輪上昇機構70と、バッテリー収納部80とを備える。
【0024】
ベースフレーム10は、車椅子100を構成する車体フレーム101のうち左右どちらか一方の外側に設けられるもので、本実施形態では板状のプレート部材を採用している。このベースフレーム10は、車体フレーム101の一部を抱え込むような金具11とボルトによって、車体フレーム101に取り付けられる。また、ベースフレーム10には、複数のボルト用穴12が設けられており、様々な車椅子100の車体フレーム101に対応できるように構成される。
【0025】
また、ベースフレーム10の外側、すなわち車体フレーム101と反対側には、連結機構20を取り付けるためのフレームホルダー13が設けられる。このフレームホルダー13は、本実施形態では支柱クランプといわれる、支柱を略C字状部材の穴に挟み込んで、ボルト等で締めて支柱を固定する部材を用いている。このフレームホルダー13によって、連結機構20をさらに車椅子100の車体フレーム101の左右方向の外側に配置させることができ、駆動輪60と車椅子100のステップ104との干渉を防止することができる。なお、本実施形態の車椅子用動力装置1は、
図5に示すように、連結機構20の連結部21と被連結部24によって、ベースフレーム10側とハンドル機構50側とを切り離して着脱自在にすることもできるし、
図6に示すように、フレームホルダー13と連結機構20とを切り離すこともできる。
【0026】
連結機構20は、
図7から
図10に示すように、ベースフレーム10のフレームホルダー13に取り付けられる連結部21、及び連結部21に着脱可能に連結される被連結部24を備える。なお、
図7は連結部21と被連結部24とを外した状態、
図8は連結部21に被連結部24を取付けようとしている状態、
図9は連結部21と被連結部24とを連結させた状態を説明する図である。また、
図7から
図9のそれぞれの(A)は連結機構20の平面図、(B)は側面図、(C)は底面図である。また、
図10(A)は
図9における連結機構20の正面図、
図10(B)は背面図である。
【0027】
連結部21は、フレームホルダー13の穴に差し込まれる断面円形の第1フレーム22、及び第1フレーム22の前方に設けられる平面視略コ字状の第1ヘッドジョイント23を備える。被連結部24は、第1ヘッドジョイント23に対応する平面視略コ字状の第2ヘッドジョイント25、第2ヘッドジョイント25の前方に設けられる第2フレーム26、及び第2フレーム26の前方に設けられるとともにハンドル機構50が取り付けられるヘッドパイプ27とを備える。
【0028】
また、連結機構20は、連結部21と被連結部24とを着脱させるための上側連結部材30、下側連結部材33、及び締結部材38を備える。上側連結部材30は、水平軸31と当接部32とを備える。水平軸31は、連結部21の第1ヘッドジョイント23又は被連結部24第2ヘッドジョイント25の一方の略コ字状の内側に、水平方向かつ車椅子100の左右方向に渡される棒状部材である。当接部32は、連結部21の第1ヘッドジョイント23又は被連結部24第2ヘッドジョイント25の他方の略コ字状の内側に設けられ、水平軸31に当接されて連結部21側の重さを支持するものである。本実施形態ではこの当接部32に、側面視で略J字状に曲げられた板材を採用している。
【0029】
下側連結部材33は、プランジャー34と嵌合体36とを備える。プランジャー34は、連結部21の第1ヘッドジョイント23又は被連結部24第2ヘッドジョイント25の一方の略コ字状の左右方向側面の外側から内側に向かって、そのピン35が出し入れ可能に設けられる。嵌合体36は、連結部21の第1ヘッドジョイント23又は被連結部24第2ヘッドジョイント25の他方の略コ字状の左右方向側面に設けられた、プランジャー34のピン35が嵌められる穴36である。本実施形態では、プランジャー34として、手でツマミを操作してピン35の出し入れが可能な、インデックスプランジャー34を採用している。
【0030】
締結部材38は、水平軸31と当接部32とが当接され、かつプランジャー34と嵌合体36とが嵌め合わされた状態で連結部21と被連結部24とを締結するものである。本実施形態の締結部材38は、第1ヘッドジョイント23の側面から第2ヘッドジョイント25と対向する面に設けられた切欠き39と、第2ヘッドジョイント25の側面近傍に設けられたヒンジ40と、ヒンジ40に設けられた締結軸41と、締結軸41の先端に設けられたカムレバー42とで構成される。
【0031】
また、締結部材38の他の形態として、
図11及び
図12に示すように、第1ヘッドジョイント23又は第2ヘッドジョイント25に設けた、パッチン錠43と呼ばれるものを設けてもよい。なお、
図11は連結部21と被連結部24とを外した状態、
図12は連結部21と被連結部24とを連結させた状態を説明する図である。また、
図11及び
図12のそれぞれの(A)は連結機構20の平面図、(B)は側面図、(C)は底面図である。
【0032】
また、締結部材38としては、第1ヘッドジョイント23と第2ヘッドジョイント25とが近接又は当接された状態で、両者を互いに固定するものであればよく、上記の例以外に、ねじ、バネ、トグル機構等を用いることができる。
【0033】
図1から
図5に戻り、ハンドル機構50は、ハンドルステム51、ハンドル軸52、及びフォーク57を備える。ハンドルステム51は、被連結部24に設けられたヘッドパイプ27に回動自在に嵌挿されるパイプ状部材である。そして、ハンドルステム51の上端にはハンドル軸52が設けられ、下端にはフォーク57が設けられる。ハンドル軸52は、ハンドルホルダー53、オフセット部55、ハンドルバー54、及びグリップ56を備える。ハンドルホルダー53は、ハンドルステム51の上端から、車椅子100の後方向に延伸される部材である。ハンドルバー54は、ハンドルホルダー53の後端から、一旦車椅子100の内側方向に延伸されるオフセット部55を介して、上方向に設けられるパイプ状の部材である。グリップ56は、ハンドルバー54の上端に設けられる。上記のオフセット部55によって、ハンドルバー54がハンドルステム51より車椅子100の内側に配置される。
【0034】
駆動輪60は、フォーク57に車軸を介して取付けられるものである。この駆動輪60は、ベルト63を介して減速機構61に接続され、さらに減速機構61から別のベルト64で、モーター62に接続される。これらの減速機構61とモーター62とは、ハンドルステム51の下端に設けられたブラケット65によって支持される。
【0035】
前輪上昇機構70は、
図13及び
図14に示すように、車椅子100の前輪103を上昇及び下降させることができるものである。なお、
図13は前輪103を下降させたときの状態、
図14は上昇させたときの状態を示す。本実施形態の前輪上昇機構70は、車椅子100の左右の前輪103のうち、駆動輪60側に設けられ、アウターパイプ71、インナーパイプ72、上下軸73、及びトグル機構74を備える。アウターパイプ71は、車椅子100の車体フレーム101に設けられた前輪取付パイプ102を延長するものである。このアウターパイプ71によって、前輪取付パイプ102が上方向に延長され、トグル機構74を手の届きやすい高さに配置することができる。インナーパイプ72は、前輪取付パイプ102とアウターパイプ71の中に嵌挿されるものであり、上下軸73との摺動面を構成する。上下軸73は、インナーパイプ72に上下方向に移動可能に嵌挿されるものである。上下軸73の下端には、車椅子100の前輪103が取付けられ、この上下軸が前輪103の取付軸73となる。また、上下軸73の上端には、トグル機構74であるトグルクランプ74が設けられ、このトグルクランプ74によって上下軸73と前輪103を、約20mm上下させることができる。
【0036】
バッテリー収納部80は、その内部にバッテリー81を収納するために、ベースフレーム10の外側に設けられる箱形のものである。このバッテリー収納部80は、車椅子100の前輪取付パイプ102及び前輪103の取付軸73より前方に設けられることが好ましい。また、
図15に示すように、本実施形態の車椅子用動力装置1では、バッテリー81を2つ重ねて用いるとともに、これらのバッテリー81を、バッテリー81を吊り下げるための吊下げ具82に入れている。この吊下げ具82は、公知の布製のベルトを用いて構成され、適宜面ファスナーやバックル等でベルト同士を接合又は連結させることができる。そして、バッテリー81は、吊下げ具82の取っ手を持って持ち上げられ、バッテリー収納部80に出し入れされる。
【0037】
次に、上述した本実施形態の車椅子用動力装置1の構成要素を踏まえて、車椅子用動力装置1の使用方法を説明する。先ずは、
図1、
図5、及び
図7から
図9を参照して、連結機構20の着脱方法について説明する。
図1は連結部21と被連結部24とを連結させた状態であり、
図5は連結部21と被連結部24とを切り離した状態である。この
図5の状態から
図1の状態にする方法を、
図7から
図9を参照して説明する。なお、
図7から
図9に示す連結機構20は、図の左が車椅子100の前側であり右が後ろ側である。
【0038】
先ず、
図7(A)~(C)に示すような、駆動輪60を前方に出してハンドル機構50を含む被連結部24を後傾させた状態にする。次に、
図8(A)~(C)に示すような、被連結部24の当接部32を連結部21の水平軸31の下側に当接させた状態にする。ここで、他の実施形態で、当接部32が連結部21にあり、水平軸31が被連結部24に設けられている構成では、被連結部24の水平軸31を連結部21の当接部32の下側に当接させるようにすればよい。なお、この場合は、当接部32は下側に向かって開いているように本実施形態とは上下が逆向きに取付けられる。
【0039】
次に、
図9(A)~(C)に示すような、駆動輪60を後方に押込んで、被連結部24の後傾を回復させる。すると、プランジャー34のピン35と嵌合体36とが嵌め合わされ、被連結部24と連結部21とが連結される。さらに、ヒンジ40を軸に締結軸41を回動させて連結部21の切欠き39に入れて、カムレバー42を操作すれば、締結部材38によって被連結部24と連結部21が強固に固定される。これで、
図1に示すような状態となる。なお、
図11(A)~(C)及び
図12(A)~(C)については、締結部材38がパッチン錠43に変更されたのみで、他の構成は同じであるため、その説明を省略する。
【0040】
次に、前輪上昇機構70のトグル機構74を操作して、前輪103を上昇させる。この前輪103を上昇させることで、駆動輪60に荷重がかかり、駆動輪60の空転を防止することができる。被連結部24を連結部21から取外すときは、上記の逆の手順を踏めば良い。
【0041】
以上、説明したように、本実施形態の車椅子用動力装置1によれば、既存の車椅子100に車椅子用動力装置1を後付け可能であるため、今ある車椅子100をそのまま使用することができる。また、ベースフレーム10が車椅子100の車体フレーム101の外側に設けられており、車椅子用動力装置1の構成要素の殆どが車体フレーム101の外側に配置される。このため、車椅子100の正面を空けることができ、車椅子100の乗降を楽に行なうことができる。また、駆動輪60と車椅子100のステップ104との干渉を避けることもできる。一方、オフセット部55によって、ハンドルバー54がハンドルステム51より車椅子100の内側に配置されるため、車椅子100の正面を空けながら、車椅子100の乗員の手がグリップ56に届きやすくなり、ハンドル操作が容易となる。
【0042】
また、連結機構20で被連結部24とハンドル機構50等を着脱することができる。これにより、介助者が居るときは、通常の車椅子100としての使用も可能である。また、ここでもベースフレーム10が車体フレーム101の外側に設けられており、車椅子100の折畳みが可能となる。
【0043】
また、連結機構20には、上側連結部材30と下側連結部材33に加えて、締結部材38を備えている。これにより、上側連結部材30と下側連結部材33に適度な遊びを持たせて、連結部21と被連結部24との着脱を容易としながら、これらをがたつきがなく強固に固定することができる。これは、上側連結部材30と下側連結部材33は、ある程度の遊びを持たせないと、特に高齢者等にとっては連結部21と被連結部24の着脱が困難となる。しかし、これらの部材に遊びがあると、使用中にがたつきが発生したり、がたつきによって部品の摩耗や消耗が促進されるという問題がある。これを、締結部材38によって、連結部21と被連結部24とを締結させることで、上記の問題を解決しているのである。
【0044】
また、前輪上昇機構70を備えるため、連結部21と被連結部24との着脱時には車椅子100の前輪103を下げて、連結部21と被連結部24に車椅子100の重量がかかるのを防止することができる。一方、連結部21と被連結部24とを連結させたときには、車椅子100の前輪103を浮かせて駆動輪60に荷重をかけることができる。さらに、バッテリー収納部80をベースフレーム10に設け、前輪の取付軸73又は前輪取付パイプ102より前に配置することで、バッテリー81の重さが駆動輪60にかかり、駆動輪60の空転を防止することができる。
【0045】
なお、上述の車椅子用動力装置は、本発明の例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0046】
1・・車椅子用動力装置、
10・・ベースフレーム、11・・金具、12・・ボルト用穴、13・・フレームホルダー、
20・・連結機構、21・・連結部、22・・第1フレーム、23・・第1ヘッドジョイント、24・・被連結部、25・・第2ヘッドジョイント、26・・第2フレーム、27・・ヘッドパイプ、
30・・上側連結部材、31・・水平軸、32・・当接部、33・・下側連結部材、34・・プランジャー、35・・ピン、36・・嵌合体(穴)、38・・締結部材、39・・切欠き、40・・ヒンジ、41・・締結軸、42・・カムレバー、43,44・・パッチン錠、
50・・ハンドル機構、51・・ハンドルステム、52・・ハンドル軸、53・・ハンドルホルダー、54・・ハンドルバー、55・・オフセット部、56・・グリップ、57・・フォーク、
60・・駆動輪、61・・減速機構、62・・モータ、63,64・・ベルト、65・・ブラケット、
70・・前輪上昇機構、71・・アウターパイプ、72・・インナーパイプ、73・・上下軸(取付軸)、74・・トグル機構、
80・・バッテリー収納部、81・・バッテリー、82・・吊下げ具、
100・・車椅子、101・・車体フレーム、102・・前輪取付パイプ、103・・前輪、104・・ステップ、