(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】多軸ロボット用の固定装置
(51)【国際特許分類】
B27C 5/06 20060101AFI20231018BHJP
B25J 9/06 20060101ALI20231018BHJP
B27C 9/04 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
B27C5/06
B25J9/06 A
B27C9/04
(21)【出願番号】P 2022036184
(22)【出願日】2022-03-09
(62)【分割の表示】P 2018076404の分割
【原出願日】2018-04-11
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平沢 岳人
(72)【発明者】
【氏名】綱川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】山戸 敦策
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168065(JP,A)
【文献】特開平03-121801(JP,A)
【文献】特開平04-372320(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02363260(EP,A1)
【文献】米国特許第04669184(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102015218814(DE,A1)
【文献】特公昭60-024514(JP,B2)
【文献】特開2015-102918(JP,A)
【文献】特許第5982075(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27C 5/06
B25J 9/06
B27C 9/00-9/04
B23Q 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸ロボットによる加工時に加工対象物である木材を固定する多軸ロボット用の固定装置であって、
鉛直方向に沿って長手方向を有する第1フレーム、鉛直方向に沿って長手方向を有する長尺部材、および、上面視において前記第1フレームと前記長尺部材との間に位置し、前記加工対象物を載せることが可能な架設部材、を含む支持部材と、
前記長尺部材を前記第1フレーム側に押すことにより、前記第1フレームと前記長尺部材との間に挿入された前記加工対象物を前記第1フレームに押し付け可能な少なくとも一つの押付装置と、を含む固定ユニットを備え
、
前記少なくとも一つの押付装置は、複数の押付装置からなり、
前記複数の押付装置の各々は、前記長尺部材の長手方向に間隔を開けて配置される
多軸ロボット用の固定装置。
【請求項2】
多軸ロボットによる加工時に加工対象物である木材を固定する多軸ロボット用の固定装置であって、
鉛直方向に沿って長手方向を有する第1フレーム、鉛直方向に沿って長手方向を有する長尺部材、および、上面視において前記第1フレームと前記長尺部材との間に位置し、前記加工対象物を載せることが可能な架設部材、を含む支持部材と、
前記長尺部材を前記第1フレーム側に押すことにより、前記第1フレームと前記長尺部材との間に挿入された前記加工対象物を前記第1フレームに押し付け可能な少なくとも一つの押付装置と、を含む固定ユニットを備え、
前記長尺部材は、鉛直方向に沿って複数配置される
多軸ロボット用の固定装置。
【請求項3】
前記長尺部材は、鉛直方向に沿って複数配置される
請求項1に記載の多軸ロボット用の固定装置。
【請求項4】
前記押付装置は、空圧又は油圧によりシリンダロッドが前進運動可能なシリンダを含む請求項1乃至3の何れか1項に記載の多軸ロボット用の固定装置。
【請求項5】
前記長尺部材は、前記シリンダロッドの先端に螺合により固定された請求項4に記載の多軸ロボット用の固定装置。
【請求項6】
鉛直方向に沿って長手方向を有するとともに水平方向において前記第1フレームとは離れた位置にある第2フレームを有し、前記長尺部材は、上面視において前記第1フレームと前記第2フレームとの間で移動可能に構成された請求項1乃至5の何れか1項に記載の多軸ロボット用の固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多軸ロボットによる加工時に加工対象物を固定する多軸ロボット用の固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場などに設置された工作機械により現場施工前に木材に加工を施すプレカット工法が広く行われている。従来のプレカット工法を行うための木材加工システムには、特許文献1に記載されているような、木材加工ラインの上流側から工程順に配置された切断機、中間加工機および木口加工機などを含む複数の各工程専用の加工機と、これらの加工機に木材を搬入および搬出するために、加工機の上流側や下流側に配置されて、加工機同士を直列に接続する複数のラインコンベアと、を備えるものがある。該木材加工システムは、木材加工ラインの上流側に配置された加工機から順々に必要な加工を施すことで、木材を所望の形状に加工する。
【0003】
特許文献1に記載の木材加工システムは、各加工機が可能な加工の種類が少なく、且つ、各加工機は自由度が低いので、木材を複雑な形状に加工することや多品種少量生産に対応することは困難な虞がある。また、特許文献1に記載の木材加工システムは、複数の加工機と複数のラインコンベアとを備える必要があるので、システムの大型化、複雑化および高価格化を招く虞がある。
【0004】
近年、上述した問題点に鑑みて、特許文献2に記載されているような、アームの先端に装着される加工工具を取換え可能な多関節ロボットと、該多関節ロボットの加工領域を通るガイドレールに沿って移動可能な複数台のサドルと、を備える木材加工システムが案出されている。特許文献2に記載された複数台のサドルの各々は、上面を加工対象物の載置面とするチルトテーブルであって、上記載置面を所定角度だけ傾動可能になるようにベース体に支持されるチルトテーブルと、上記載置面に沿って接近および離間が可能なバイスと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-102918号公報
【文献】特許第5982075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載された複数台のサドルの各々は、ガイドレールに沿って移動可能であり、且つ、上記チルトテーブルと上記バイスとを備えるので構造が複雑である。また、上記ガイドレールや上記複数台のサドルを備える木材加工システムは、システム全体の専有スペースが大きくなる。このような木材加工システムは、導入コストの高額化を招く虞がある。また、バイスによりチルトテーブルに取付けられる加工対象物の形状が制限される虞がある。例えば所定以上の幅寸法を有する平板や湾曲材は、チルトテーブルに取付けることが困難である。
【0007】
上述した事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、構造が簡単であり、装置の専有スペースを小さくできるとともに、様々な形状の加工対象物を固定可能な固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態にかかる多軸ロボット用の固定装置は、
多軸ロボットによる加工時に加工対象物である木材を固定する多軸ロボット用の固定装置であって、
鉛直方向に沿って長手方向を有する第1フレーム、鉛直方向に沿って長手方向を有する長尺部材、上面視において前記第1フレームと前記長尺部材との間に位置し、前記加工対象物を載せることが可能な架設部材、を含む支持部材と、
前記長尺部材を前記第1フレーム側に押すことにより、前記第1フレームと前記長尺部材との間に挿入された前記加工対象物を前記第1フレームに押し付け可能な少なくとも一つの押付装置と、を含む固定ユニットを備える。
【0009】
上記(1)の構成によれば、固定ユニットは、加工対象物を第1フレームと長尺部材との間に挿入して架設部材に載せた後に、長尺部材を第1フレーム側に押して加工対象物を第1フレームに押し付けることで、加工対象物を固定可能である。また、第1フレームおよび長尺部材は、鉛直方向に沿って長手方向を有しているので、固定装置は、平板などの板状部材、柱や梁などの長尺部材、および湾曲材のような、様々な形状の加工対象物を第1フレームと長尺部材との間に挿入可能であり、且つ固定可能である。また、上記固定装置は、例えば平板などの板状部材や湾曲材を縦置きの状態で固定可能であるため、第1フレームと長尺部材との間の間隔が大きくなるのを防止することができ、装置の専有スペースを小さくできる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の多軸ロボット用の固定装置であって、
前記少なくとも一つの押付装置は、複数の押付装置からなり、
前記複数の押付装置の各々は、前記長尺部材の長手方向に間隔を開けて配置される。
【0011】
上記(2)の構成によれば、複数の押付装置の各々は、長尺部材の長手方向に間隔を開けて配置されるので、複数の押付装置を含む固定ユニットは、長尺部材の長手方向における複数位置において、押付装置により加工対象物を第1フレームに押し付けることができる。このため、加工対象物が様々な形状を有していても複数の押付装置により固定可能である。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の多軸ロボット用の固定装置であって、
前記長尺部材は、鉛直方向に沿って複数配置される。
【0013】
上記(3)の構成によれば、鉛直方向に沿って配置された複数の長尺部材の各々を第1フレーム側に押すことで、鉛直方向における複数位置において加工対象物を第1フレームに押し付けることができる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)~(3)の何れかに記載の多軸ロボット用の固定装置であって、
前記押付装置は、空圧又は油圧によりシリンダロッドが前進運動可能なシリンダを含んでいる。
【0015】
上記(4)の構成によれば、押付装置は、空圧又は油圧によりシリンダロッドが前進運動可能なシリンダを含んでいるので、固定装置の構造を簡単にできるとともに、シリンダのシリンダロッドにより加工対象物を第1フレームに押し付けて固定することができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の多軸ロボット用の固定装置であって、
前記長尺部材は、前記シリンダロッドの先端に螺合により固定された。
【0017】
上記(5)の構成によれば、固定装置の構造を簡単にできるとともに、シリンダロッドの先端に固定された長尺部材により加工対象物を第1フレームに押し付けて固定することができる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)~(5)の何れかに記載の多軸ロボット用の固定装置であって、
鉛直方向に沿って長手方向を有するとともに水平方向において前記第1フレームとは離れた位置にある第2フレームを有し、前記長尺部材は、上面視において前記第1フレームと前記第2フレームとの間で移動可能に構成された。
【0019】
上記(6)の構成によれば、長尺部材は、上面視において第1フレームと第2フレームとの間で移動可能に構成されているので、第1フレームと長尺部材との間の間隔が大きくなるのを防止することができ、固定装置の専有スペースを小さくできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、構造が簡単であり、装置の専有スペースを小さくできるとともに、様々な形状の加工対象物を固定可能な固定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態にかかる多軸ロボットによる加工システムを説明するための概略構成図である。
【
図2】一実施形態にかかる固定装置の固定ユニットを説明するための図であって、固定ユニットの概略側面図である。
【
図3】固定ユニットを説明するための図であって、
図2に示すA方向から視た図である。
【
図4】加工対象物を説明するための図であって、
図4(a)は板状部材、
図4(b)は長尺部材、
図4(c)は湾曲材である。
【
図5】一実施形態における多軸ロボット(多関節ロボット)の概略斜視図である。
【
図6】多軸ロボット(多関節ロボット)に装着される加工ユニットを説明するための図であって、
図6(a)は円板刃を含む加工ユニット、
図6(b)は角ノミを含む加工ユニット、
図6(c)はルータを含む加工ユニット、
図6(d)は振動ノミを含む加工ユニットを示す図である。
【
図7】他の一実施形態にかかる多軸ロボット用の固定装置を説明するための図であって、固定ユニットの概略側面図である。
【
図8】他の一実施形態にかかる多軸ロボット用の固定装置を説明するための図であって、回転台を含む固定ユニットの概略側面図である。
【
図9】一実施形態にかかる加工対象物の固定方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」および「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0023】
図1は、一実施形態にかかる多軸ロボットによる加工システムを説明するための概略構成図である。
図2は、一実施形態にかかる固定装置の固定ユニットを説明するための図であって、固定ユニットの概略側面図である。
図3は、固定ユニットを説明するための図であって、
図2に示すA方向から視た図である。なお、
図1における固定装置2は、上面から視た状態が示されるとともに、加工対象物4(板状部材4B)を挿入して固定した状態が示されている。
【0024】
幾つかの実施形態にかかる加工システム1は、
図1に示されるように、固定装置2と、少なくとも一つの多軸ロボット3と、を備えている。加工システム1は、多軸ロボット3により加工対象物4である木材4Aに対して、切断や切削などの加工をするためのシステムである。また、固定装置2は、多軸ロボット3による加工時に加工対象物4を固定するための多軸ロボット用の装置である。なお、幾つかの実施形態では、多軸ロボット3は、5軸以上の回転軸(制御軸)を有するロボットである。好ましくは、多軸ロボット3は、5軸以上の制御軸数を有している。さらに好ましくは、多軸ロボット3は、6軸以上の制御軸数を有している。
【0025】
固定装置2は、
図1~3に示されるように、複数組の固定ユニット20を備えている。1組の固定ユニット20は、
図1~3に示されるように、第1フレーム22、第2フレーム23および架設部材24を含む支持部材21と、第2フレーム23に取付けられる少なくとも一つの押付装置25と、を含んでいる。
【0026】
第1フレーム22は、
図1~3に示されるように、例えば鉄鋼材料などの金属材料により構成されており、鉛直方向に沿って、長手方向を有している。第2フレーム23は、
図1~3に示されるように、例えば鉄鋼材料などの金属材料により構成されており、鉛直方向に沿って、長手方向を有している。そして、第2フレーム23は、
図2に示されるように、水平方向において第1フレーム22とは離れた位置にある。以下、第1フレーム22と第2フレーム23とが互いに離隔する方向をX方向とし、X方向と直交する水平方向をY方向とし、鉛直方向をZ方向とする。
【0027】
架設部材24は、
図1に示されるように、上面視において第1フレーム22と第2フレーム23との間に位置し、加工対象物4を載せることが可能に構成されている。架設部材24は、X方向に沿って延在する接続フレーム24Aを含んでいる。
【0028】
図1~3に示される実施形態では、接続フレーム24Aは、例えば鉄鋼材料などの金属材料により構成されており、第1フレーム22の下端部や第2フレーム23の下端部よりも下方に位置している。そして、接続フレーム24Aは、Y方向に沿って延在するとともに第1フレーム22の下端部を下側から支持する第1支持台26Aと、Y方向に沿って延在するとともに第2フレーム23の下端部を下側から支持する第2支持台26Bと、の間に架け渡されて、ボルト締結や溶接などにより第1支持台26Aや第2支持台26Bに固定されている。換言すると、接続フレーム24Aは、第1支持台26Aと第2支持台26Bとに接続されている。接続フレーム24Aの上面241に加工対象物4を載せることが可能である。
【0029】
支持台26は、上述した第1支持台26Aと上述した第2支持台26Bとを含んでいる。支持台26は、Y方向に沿って延在するとともに複数組の固定ユニット20をボルト締結や溶接などにより固定可能に構成されている。
図3に示されるように、支持台26の下端部にはキャスター261や高さ調整可能な支持脚262が取付けられている。支持台26は、床面6に立設する支持脚262により下側から支持されている。また、
図3に示されるように、接続フレーム24Aの下端部にも高さ調整可能な支持脚242が取付けられている。接続フレーム24Aは、床面6に立設する支持脚242により下側から支持されている。このため、接続フレーム24Aの上面241上に載置された加工対象物4と、床面6との間に間隔が形成されている。よって、多軸ロボット3は、加工対象物4の接続フレーム24Aに載置する部分を除いた下側部分の加工が可能である。
【0030】
図4は、加工対象物を説明するための図であって、
図4(a)は板状部材、
図4(b)は長尺部材、
図4(c)は湾曲材である。
図4(a)~(c)に示されるように、加工対象物4(木材4A)は、平板などの板状部材4B、柱や梁などに用いられる角材などの長手方向を有する長尺部材4Cおよび湾曲材4Dを含んでいる。なお、加工対象物4(木材4A)は、
図4に例示される形状に限定されずに、丸材などの他の形状を含むものである。また、加工対象物4(木材4A)は、木材を人工的に再構成した材料である木質材料を含んでいる。より詳細には、加工対象物4(木材4A)は、単板、単板積層材、集成材、無垢材、合板、若しくはこれらを重ねた複合材、又は木材同士を結合した結合木材を含んでいる。
【0031】
加工対象物4を加工することで成形される加工品は、例えば木造住宅を構成する柱や梁であってもよく、また、鴨居などの造作材や、家具、木工工芸品などであってもよい。よって、加工対象物4に対する加工には、切断加工や、組み手や仕口、孔、溝などを形成する加工や、装飾を目的とするような加工が含まれる。
【0032】
加工対象物4は、例えば不図示のクレーンなどの搬送装置により、鉛直方向における上方、又はY方向に沿って側方から第1フレーム22と第2フレーム23との間に挿入される。そして、加工対象物4は、接続フレーム24Aの上面241上に載置される。
【0033】
押付装置25は、加工対象物4を第1フレーム22に押し付け可能に構成されている。第1フレーム22と第2フレーム23との間に挿入された加工対象物4は、押付装置25により第1フレーム22に押し付けられることで、押付装置25と第1フレーム22の第2フレーム23に面する面221とに挟持されて固定される。
【0034】
図1~3に示される実施形態では、複数組の固定ユニット20の各々は、Y方向において互いに間隔を開けて配置されている。
【0035】
図5は、一実施形態における多軸ロボット(多関節ロボット)の概略斜視図である。
図6は、多軸ロボット(多関節ロボット)に装着される加工ユニットを説明するための図であって、
図6(a)は円板刃を含む加工ユニット、
図6(b)は角ノミを含む加工ユニット、
図6(c)はルータを含む加工ユニット、
図6(d)は振動ノミを含む加工ユニットを示す図である。多軸ロボット3は、多軸ロボット3に装着された加工工具5により固定装置2に固定された加工対象物4の加工を行う。
【0036】
多軸ロボット3は、多関節ロボットを含む。すなわち、
図5に示される実施形態では、多軸ロボット3は、リスト36と、リスト36を支持するとともにリスト36を移動させるためのアーム30であって、6軸以上の回転軸(回転軸301~306)および5つの関節部(関節部31~35)を有するアーム30と、アーム30を支持するとともに設置面(床面6、後述する多軸ロボット搬送装置7の上面73)の上に載せられるロボットベース37と、を含む多関節ロボットである。リスト36は、
図6(a)~(d)に示されるような、加工工具5を含む加工ユニット50を着脱可能に構成されている。
【0037】
多軸ロボット3は、不図示の6つ以上のサーボモータを含む駆動装置をさらに含み、該駆動装置により該サーボモータを駆動させることで、6軸以上の回転軸に沿ってリスト36を加工対象物4に対して相対的に移動させることができる。加工ユニット50(加工ユニット50A~50D)は、
図6(a)~(d)に示されるように、加工工具5と、加工工具5を駆動させるためのモータを含む駆動装置51と、加工工具5および駆動装置51を支持するとともにリスト36に装着可能に構成されているホルダ52(ホルダ52A~52D)と、を含んでいる。
【0038】
加工工具5は、
図6(a)~(d)に示されるように、円板刃53、角ノミ54、ルータ57および振動ノミ58などを含んでいる。円板刃53およびルータ57は、駆動装置51により回転駆動することで、加工対象物4を加工する。また、角ノミ54は、駆動装置51により回動駆動するドリル55と、ドリル55の外周を覆う角筒状に形成されるとともに先端の四角部が尖っている角ノミ刃56と、を含んでいる。なお、角ノミ54は、ドリル55を含まずに角ノミ刃56のみを含んでいてもよい。また、振動ノミ58は、駆動装置51により振動することで、加工対象物4を加工する。なお、加工工具5は、例示した円板刃53など以外の加工工具、例えばドリルなど木材加工に使用される加工工具を含んでいる。
【0039】
このような多軸ロボット3は、リスト36を6軸以上の回転軸に沿って回転させることにより、リスト36に装着された加工工具5を含む加工ユニット50を、固定装置2に固定された加工対象物4に対して相対移動させることができ、加工対象物4の任意の点に、任意の角度で加工工具5を当てることができる。また、多軸ロボット3は、加工工具5を交換することで、多種の加工が可能であり、且つ、加工対象物4を複雑な形状に加工することができるので、多品種少量生産に対応可能である。
【0040】
上述したように、幾つかの実施形態にかかる固定装置2は、
図1~3に示されるように、上述した第1フレーム22、第2フレーム23および架設部材24(接続フレーム24A)を含む支持部材21と、上述した少なくとも一つの押付装置25と、を含む固定ユニット20を複数組備えている。
【0041】
上記の構成によれば、固定ユニット20は、加工対象物4を第1フレーム22と第2フレーム23との間に挿入して架設部材24に載せた後に、第2フレーム23に取付けられる押付装置25により第1フレーム22に押し付けることで、加工対象物4を固定可能である。また、第1フレーム22および第2フレーム23は、鉛直方向に沿って長手方向を有しているので、固定装置2は、平板などの板状部材4B、柱や梁などの長尺部材4C、および湾曲材4Dのような、様々な形状の加工対象物4を第1フレーム22と第2フレーム23との間に挿入可能であり、且つ固定可能である。また、上記固定ユニット20を複数組備える固定装置2は、構造が簡単である。また、上記固定装置2は、例えば平板などの板状部材4Bや湾曲材4Dを縦置きの状態で固定可能であるため、第1フレーム22と第2フレーム23との間の間隔が大きくなるのを防止することができ、固定装置2の専有スペースを小さくできる。
【0042】
また、固定装置2は、例えば平板などの板状部材4Bや湾曲材4Dを縦置きの状態で固定可能であるため、多軸ロボット3により加工対象物4の広範囲に加工を施すことが可能である。多軸ロボット3による加工中に加工対象物4を反転させたり傾動させたりすると、加工対象物4の加工精度の低下を招く虞がある。上述した固定装置2を備える加工システム1は、多軸ロボット3による加工中に加工対象物4を反転させたり傾動させたりしなくても加工が可能であるので、多軸ロボット3により加工対象物4を精度良く加工可能である。
【0043】
幾つかの実施形態では、
図1~3に示されるように、固定装置2は、固定ユニット20を3組備えている。この場合には、仮に固定ユニット20を2組備える場合に比べて、固定装置2に固定される加工対象物4のたわみを抑制することができる。また、仮に固定ユニット20を4組備える場合に比べて、構造の複雑化を防止することができる。
他の幾つかの実施形態では、固定装置2は、2組の固定ユニット20、又は4組以上の固定ユニット20を備えている。
【0044】
幾つかの実施形態では、
図2、3に示されるように、少なくとも一つの押付装置25は、複数の押付装置25を含んでいる。複数の押付装置25の各々は、
図2、3に示されるように、第2フレーム23の長手方向に間隔を開けて配置されている。この場合には、複数の押付装置25は、第2フレーム23の長手方向に間隔を開けて配置されるので、複数の押付装置25を含む固定ユニット20は、第2フレーム23の長手方向における複数位置において、押付装置25により加工対象物4を第1フレーム22に押し付けることができる。このため、加工対象物4が様々な形状を有していても複数の押付装置25により固定可能である。
【0045】
幾つかの実施形態では、
図1、2に示されるように、上述した押付装置25は、空圧又は油圧によりシリンダロッド252が前進運動可能なシリンダ25Aを含んでいる。
図1、2に示される実施形態では、シリンダ25Aは、シリンダ本体部251と、シリンダ本体部251の内部に少なくとも一部が収納可能なシリンダロッド252と、を含んでいる。シリンダ25Aは、空圧又は油圧により、シリンダロッド252の、シリンダ本体部251から突出する部分の長さ寸法を変更することで、シリンダロッド252がシリンダ本体部251から突出する前進運動と、シリンダロッド252がシリンダ本体部251に入り込む後進運動と、を行うことが可能に構成されている。また、
図1、2に示される実施形態では、シリンダ本体部251は、長手方向がX方向に沿って延在するように配置されて、第2フレーム23の第1フレーム22に面する面と反対側の面233にボルト締結などにより固定されている。
【0046】
上記の構成によれば、押付装置25は、空圧又は油圧によりシリンダロッド252が前進運動可能なシリンダ25Aを含むので、固定装置2の構造を簡単にできるとともに、シリンダ25Aのシリンダロッド252により加工対象物4を第1フレーム22に押し付けて固定することができる。
【0047】
幾つかの実施形態では、
図3に示されるように、第2フレーム23は、鉛直方向に沿って延在する第3フレーム231と、鉛直方向に沿って延在するとともにY方向に沿って第3フレーム231から離れた位置に設けられる第4フレーム232と、を含んでいる。そして、シリンダ25Aは、シリンダ本体部251が第3フレーム231や第4フレーム232にボルト締結などにより固定されるとともに、シリンダロッド252が第3フレーム231と第4フレーム232との間に位置している。この場合には、シリンダロッド252が第3フレーム231と第4フレーム232との間に位置しているので、シリンダロッド252と多軸ロボット3との干渉を抑制することができる。
【0048】
幾つかの実施形態では、
図1、3に示されるように、上述した固定装置2は、Y方向に沿って延在するとともに複数組の固定ユニット20を固定可能な上述した支持台26を備えている。この場合には、支持台26により複数組の固定ユニット20が固定されるので、複数組の固定ユニット20の転倒を防止可能である。
【0049】
幾つかの実施形態では、
図1に示されるように、上述した支持台26は、上述した第1支持台26Aと、上述した第2支持台26Bと、を含んでいる。上述した架設部材24は、第1支持台26Aと第2支持台26Bに接続される上述した接続フレーム24Aを含んでいる。この場合には、架設部材24は、第1支持台26Aと第2支持台26Bに接続される接続フレーム24Aを含んでいるので、第1フレーム22を支持する第1支持台26Aや第2フレーム23を支持する第2支持台26Bに強固に支持されるため、第1フレーム22と第2フレーム23との間に挿入された加工対象物4の脱落を防止可能である。
【0050】
なお、上述した幾つかの実施形態では、接続フレーム24Aは、第1支持台26Aと第2支持台26Bとの間に架け渡されていたが、他の幾つかの実施形態では、接続フレーム24Aは、第1フレーム22の下端部と第2フレーム23の下端部との間に架け渡されて、第1フレーム22や第2フレーム23にボルト締結や溶接などにより固定される。換言すると、接続フレーム24Aは、第1フレーム22の下端部と第2フレーム23の下端部とに接続されている。
【0051】
図7は、他の一実施形態にかかる多軸ロボット用の固定装置を説明するための図であって、固定ユニットの概略側面図である。幾つかの実施形態では、上述した固定装置2は、
図7に示されるように、鉛直方向に沿って長手方向を有する長尺部材27であって、複数のシリンダロッド252の先端に固定される長尺部材27をさらに含んでいる。
図7に示される実施形態では、長尺部材27は、平板状に形成されており、鉛直方向に並んだ2つのシリンダロッド252の各々の先端に固定されている。他の幾つかの実施形態では、長尺部材27は、鉛直方向に並んだ3以上の複数のシリンダロッド252の各々の先端に固定されている。また、
図7に示される実施形態では、長尺部材27は螺合によりシリンダロッド252の先端に固定されている。より詳細には、長尺部材27に形成された雌ネジ孔271に、シリンダロッド252の先端に形成された雄ネジ部253が螺合することで、長尺部材27はシリンダロッド252の先端に固定されている。
【0052】
上記の構成によれば、押付装置25は、空圧又は油圧によりシリンダロッド252が前進運動可能なシリンダ25Aを含んでいるので、固定装置2の構造を簡単にできるとともに、シリンダ25Aのシリンダロッド252により加工対象物4を第1フレーム22に押し付けて固定することができる。この際、固定装置2は、複数のシリンダロッド252の先端に固定される長尺部材27を含んでいるので、複数のシリンダ25Aにより付勢された長尺部材27により、加工対象物4を第1フレーム22に押し付けて固定することができる。また、長尺部材27は、鉛直方向に沿って長手方向を有しているので、様々な形状を有する加工対象物4を長尺部材27により固定可能である。
【0053】
図8は、他の一実施形態にかかる多軸ロボット用の固定装置を説明するための図であって、回転台を含む固定ユニットの概略側面図である。幾つかの実施形態では、
図8に示されるように、上述した固定ユニット20は、第1フレーム22又は第2フレーム23の少なくとも一方に取付けられる回転台28を含んでいる。回転台28は、
図8に示されるように、第1フレーム22と第2フレーム23とが離隔する方向と直交する水平方向(Y方向)に沿って延在する軸線ALを中心として回動可能に構成されている。また、回転台28は、加工対象物4を載せることが可能に構成されている。
【0054】
図8に示される実施形態では、回転台28は、長手方向の一端に設けられた回動部10を介して、第1フレーム22に回動可能に支持されている。回動部10は、第1フレーム22に取付けられたシリンダ9のシリンダロッド91にリンク機構部11を介して接続されており、シリンダロッド91の前後運動に連動して回動部10の軸線ALを中心として回転するようになっている。回転台28は、
図8に示されるように、回動部10の軸線ALを中心として回転することで、長手方向がZ方向に沿った第1状態と、長手方向がX方向に沿った第2状態となることが可能である。第2状態の際に回転台28は、不図示であるが上面視において第1フレーム22と第2フレーム23との間に位置するとともに、長手方向の他端が係止部材12に下側から係止される。そして、第2状態の際に回転台28は、回転台28の上に加工対象物4を載置可能である。係止部材12は、
図3に示されるように、第3フレーム231と第4フレーム232との間に架け渡されて、第3フレーム231と第4フレーム232にボルト締結や溶接などにより固定されている。
【0055】
上記の構成によれば、加工対象物4を接続フレーム24Aではなく回転台28に載置することもでき、載置される際の加工対象物4の鉛直方向における高さ位置の変更が可能である。回転台28は、様々な形状を有する加工対象物4の各々について、加工に適した高さ位置にすることができる。
【0056】
上述したように、幾つかの実施形態では、
図1に示されるように、加工システム1は、上述した固定装置2と、X方向において固定装置2から離れた位置に配置される上述した少なくとも一つの多軸ロボット3(多関節ロボット)と、を備えている。この場合には、固定装置2により様々な形状を有する加工対象物4を固定することができ、固定装置2に固定された加工対象物4を多軸ロボット3により加工することができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、
図1に示されるように、少なくとも一つの多軸ロボット3(多関節ロボット)は、固定装置2に対してX方向における一方側に配置される少なくとも一つの多軸ロボット3A(多関節ロボット)と、X方向において固定装置2を挟んで多軸ロボット3Aと反対側に配置される少なくとも一つの多軸ロボット3B(多関節ロボット)と、を含んでいる。この場合には、固定装置2に固定された加工対象物4を、X方向における両側から多軸ロボット3Aおよび多軸ロボット3Bにより同時に加工可能である。
【0058】
幾つかの実施形態では、
図1に示されるように、上述した加工システム1は、少なくとも1つの多軸ロボット3(多関節ロボット)を、Y方向に沿って搬送可能な多軸ロボット搬送装置7をさらに備えている。多軸ロボット搬送装置7は、
図1に示されるように、Y方向に沿って延在するとともに固定装置2に並んで配置されるロボット搬送レール71と、ロボット搬送レール71の上に配置されてロボット搬送レール71の長手方向に沿って往復動可能なロボット搬送台72と、を含んでいる。また、ロボット搬送レール71は床面6上に設置されている。ロボット搬送台72は、上面73に多軸ロボット3を固定可能に構成されている。多軸ロボット搬送装置7は、不図示のリニアサーボモータを含む駆動装置をさらに含み、該駆動装置により該リニアサーボモータを駆動させることで、ロボット搬送レール71の長手方向に沿ってロボット搬送台72を往復動させることができる。
【0059】
上記の構成によれば、多軸ロボット搬送装置7は、多軸ロボット3をY方向に沿って搬送することができるので、多軸ロボット3による加工対象物4を加工可能な範囲を広くすることができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、
図1に示されるように、多軸ロボット3は、上述した多軸ロボット3を構成する構成要素(サーボモータなど)を制御するためのコントローラ38をさらに備えている。コントローラ38の一般的な構成および制御についての説明は割愛する。
【0061】
幾つかの実施形態では、
図1に示されるように、上述した加工システム1は、加工ユニット50を着脱するためのツールマガジン39をさらに備えている。ツールマガジン39は、多軸ロボット3の可動範囲内に配置されている。この場合には、加工システム1は、加工ユニット50を着脱するためのツールマガジン39を備えるので、多軸ロボット3は、加工ユニット50の交換を容易に行うことができ、種々の加工ユニット50により加工対象物4の加工が可能である。
【0062】
図9は、一実施形態にかかる加工対象物の固定方法のフロー図である。ここで、加工対象物の固定方法は、多軸ロボットによる加工時に加工対象物である木材を固定するための方法である。幾つかの実施形態にかかる加工対象物の固定方法100は、
図9に示されるように、第1フレーム22と第2フレーム23との間に加工対象物4(木材4A)を挿入するステップS101と、架設部材24に加工対象物4を載せるステップS102と、第2フレーム23に取付けられる押付装置25により、第1フレーム22と第2フレーム23との間に挿入された加工対象物4を第1フレーム22に押し付けるステップS103と、を備えている。
【0063】
上記の方法によれば、加工対象物4(木材4A)を第1フレーム22と第2フレーム23との間に挿入して架設部材24に載せた後に、第2フレーム23に取付けられる押付装置25により第1フレーム22に押し付けることで、加工対象物4を固定可能である。また、第1フレーム22および第2フレーム23は、鉛直方向(Z方向)に沿って長手方向を有しているので、平板などの板状部材4B、柱や梁などの長尺部材4C、および湾曲材4Dのような、様々な形状の加工対象物4を第1フレーム22と第2フレーム23との間に挿入可能であり、且つ固定可能である。また、上記の方法によれば、例えば平板などの板状部材4Bや湾曲材4Dを縦置きの状態で固定可能であるため、第1フレーム22と第2フレーム23との間の間隔が大きくなるのを防止することができ、第1フレーム22や第2フレーム23の専有スペースを小さくできる。
【0064】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0065】
1 加工システム
2 固定装置
3,3A,3B 多軸ロボット
4 加工対象物
4A 木材
4B 板状部材
4C 長尺部材
4D 湾曲材
5 加工工具
6 床面
7 多軸ロボット搬送装置
9 シリンダ
10 回動部
11 リンク機構部
12 係止部材
20 固定ユニット
21 支持部材
22 第1フレーム
23 第2フレーム
24 架設部材
24A 接続フレーム
25 押付装置
25A シリンダ
26 支持台
27 長尺部材
28 回転台
30 アーム
31~35 関節部
36 リスト
37 ロボットベース
38 コントローラ
39 ツールマガジン
50,50A~50D 加工ユニット
51 駆動装置
52,52A~52D ホルダ
53 円板刃
54 角ノミ
55 ドリル
56 角ノミ刃
57 ルータ
58 振動ノミ
71 ロボット搬送レール
72 ロボット搬送台
73 上面
100 加工対象物の固定方法
301~306 回転軸