(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】衝撃試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/30 20060101AFI20231018BHJP
G01M 7/08 20060101ALI20231018BHJP
F16C 29/04 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
G01N3/30 Z
G01M7/08 Z
F16C29/04
(21)【出願番号】P 2019237689
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391046414
【氏名又は名称】国際計測器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【氏名又は名称】松岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】宮下 博至
(72)【発明者】
【氏名】村内 一宏
(72)【発明者】
【氏名】羽石 清明
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/132043(WO,A1)
【文献】特開2005-227011(JP,A)
【文献】特開平10-104145(JP,A)
【文献】特開2012-83133(JP,A)
【文献】特開平7-215246(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159199(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/145012(WO,A1)
【文献】中国実用新案第206095836(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0020281(KR,A)
【文献】特開2006-184133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00-3/62
F16C 29/04
G01M 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試品を載せて走行可能な台車と、
前記供試品の転倒を防止する転倒防止手段と、
を備え、
前記転倒防止手段が、前記台車から独立した第1手段を含み、
前記第1手段が、前記台車の走行方向に移動可能に設けられた、
衝撃試験装置。
【請求項2】
前記第1手段が、
前記供試品が傾いたときに該供試品と支持して該供試品の転倒を妨げる支持体と、
前記支持体の前記走行方向への移動を案内する案内手段と、を備えた、
請求項1に記載の衝撃試験装置。
【請求項3】
前記第1手段が設置されるベースを備え、
前記第1手段が、前記支持体を前記ベースに対して解除可能に固定する固定手段を備えた、
請求項2に記載の衝撃試験装置。
【請求項4】
前記第1手段が、前記案内手段及び前記固定手段を兼ねる固定・案内手段を備え、該固定・案内手段が、
前記ベースに対して固定された、前記走行方向に延びるT溝と、
前記T溝に嵌め込まれたT溝ナットと、
前記支持体に形成された貫通穴に通されて、前記T溝ナットに嵌められることにより、前記支持体を前記T溝に固定するボルトと、を備えた、
請求項3に記載の衝撃試験装置。
【請求項5】
前記第1手段が、前記支持体を前記走行方向へ駆動する支持体駆動手段を備えた、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の衝撃試験装置。
【請求項6】
前記支持体駆動手段が、
前記支持体を駆動するための動力を発生する駆動モジュールと、
前記駆動モジュールが発生した動力を前記支持体に伝達するベルト機構と、
を備えた、
請求項5に記載の衝撃試験装置。
【請求項7】
前記台車を駆動する台車駆動部と、
前記支持体駆動手段及び前記台車駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、試験条件に応じて予め決められた位置へ前記支持体を移動する、
請求項5又は請求項6に記載の衝撃試験装置。
【請求項8】
前記台車と衝突して前記供試品に与えるべき衝撃を発生する衝撃発生装置を備え、
前記衝撃試験装置が、
前記供試品を載せた前記台車を前記衝撃発生装置に衝突させることで前記供試品に衝撃を与える衝突型試験と、
前記台車駆動部の駆動により発生した衝撃を前記台車に伝達させることで前記供試品に衝撃を与える非衝突型試験と、をそれぞれ実行可能であり、
制御部が、
前記衝突型試験において、前記台車を所定の速度で前記衝撃発生装置に衝突させるように前記台車駆動部を制御し、
前記非衝突型試験において、予め設定された衝撃波形に基づいて前記台車が駆動されるように前記台車駆動部を制御する、
請求項7に記載の衝撃試験装置。
【請求項9】
前記台車駆動部が、
前記台車に解除可能に連結されるキャリッジと、
前記台車及び前記キャリッジを走行可能に支持する台車軌道部と、を備え、
前記衝突型試験において、前記キャリッジが前記台車に連結され、
前記非衝突型試験において、前記キャリッジと前記台車との連結が解除される、
請求項8に記載の衝撃試験装置。
【請求項10】
前記衝撃発生装置が、
可動ブロックと、
前記可動ブロックの前記台車と向かい合う面に取り付けられたプラスチックプログラマーと、
前記可動ブロックを前記走行方向に移動可能に支持するブロック軌道部と、
前記可動ブロックの振動を吸収するショックアブソーバーと、を備え、
前記ブロック軌道部が、ガイドウエイ形循環式リニア軸受を備え、
前記ガイドウエイ形循環式リニア軸受が、
レールと、
前記可動ブロックに取り付けられ、転動体を介して前記レール上を走行可能なランナーと、を備え、
前記台車が、前記可動ブロックと向かい合う面に取り付けられたプラスチックプログラマーを備えた、
請求項8又は請求項9に記載の衝撃試験装置。
【請求項11】
前記転倒防止手段が、前記台車に設置された第2手段を含み、
前記第2手段が、
前記台車に立てられた複数の支柱と、
前記複数の支柱に張り渡される線状部材と、を備えた、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の衝撃試験装置。
【請求項12】
供試品を載せて走行可能な台車と、
前記供試品の転倒を防止する転倒防止手段と、
を備え、
前記転倒防止手段が、前記台車に設置された第2手段を含み、
前記第2手段が、
前記台車に立てられた複数の支柱と、
前記複数の支柱に張り渡される線状部材と、を備えた、
衝撃試験装置。
【請求項13】
前記線状部材が、紐状の紐状部材及び網状の網状部材のいずれかを含む、
請求項12に記載の衝撃試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品の強度や包装設計の妥当性を評価するために衝撃試験装置が使用される。特許文献1に記載の衝撃試験装置は、試験中に供試品が転倒するのを防ぐために、供試品を支持する支持プレート36(
図5)を備えている。支持プレートは、供試品が載置される走行部(衝撃台)に、走行方向に対して垂直に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の衝撃試験装置では、支持プレートが衝撃台に設けられているため、支持プレートの分だけ衝撃台の重量が重くなっている。また、面積の大きな支持プレートが衝撃台の走行方向に対して垂直に配置されているため、衝撃台を高速で走行させたときに、支持プレートには大きな風圧が加わる。支持プレートの設置に伴う衝撃台の重量や走行時に受ける風圧の増加(言い換えれば、空気抵抗の増加)は、衝撃台の駆動に必要な動力を増大させ、消費電力の増大を招いていた。また、衝撃台の駆動に必要な動力の増大により、衝撃台を駆動するために、より大容量の(すなわち大型の)モーターが必要となる場合があり、イニシャルコストの増大や試験装置の大型化という問題も生じ得る。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、供試品の転倒を防止する手段の導入に伴う衝撃台の駆動に必要な動力の増大を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、供試品を載せて走行可能な台車と、供試品の転倒を防止する転倒防止手段と、を備え、転倒防止手段が、台車から独立した第1手段を含み、第1手段が、台車の走行方向に移動可能に設けられた、衝撃試験装置が提供される。
【0007】
上記の衝撃試験装置において、第1手段が、供試品が傾いたときに供試品と支持して供試品の転倒を妨げる支持体と、支持体の走行方向への移動を案内する案内手段と、を備えた構成としてもよい。
【0008】
上記の衝撃試験装置において、第1手段が設置されるベースを備え、第1手段が、支持体をベースに対して解除可能に固定する固定手段を備えた構成としてもよい。
【0009】
上記の衝撃試験装置において、第1手段が、案内手段及び固定手段を兼ねる固定・案内手段を備え、固定・案内手段が、ベースに対して固定された、走行方向に延びるT溝と、T溝に嵌め込まれたT溝ナットと、支持体に形成された貫通穴に通されて、T溝ナットに嵌められることにより、支持体をT溝に固定するボルトと、を備えた構成としてもよい。
【0010】
上記の衝撃試験装置において、第1手段が、支持体を走行方向へ駆動する支持体駆動手段を備えた構成としてもよい。
【0011】
上記の衝撃試験装置において、支持体駆動手段が、支持体を駆動するための動力を発生する駆動モジュールと、駆動モジュールが発生した動力を支持体に伝達するベルト機構と、を備えた構成としてもよい。
【0012】
上記の衝撃試験装置において、台車を駆動する台車駆動部と、支持体駆動手段及び台車駆動部を制御する制御部と、を備え、制御部が、試験条件に応じて予め決められた位置へ支持体を移動する構成としてもよい。
【0013】
上記の衝撃試験装置において、台車と衝突して供試品に与えるべき衝撃を発生する衝撃発生装置を備え、衝撃試験装置が、供試品を載せた台車を衝撃発生装置に衝突させることで供試品に衝撃を与える衝突型試験と、台車駆動部の駆動により発生した衝撃を台車に伝達させることで供試品に衝撃を与える非衝突型試験と、をそれぞれ実行可能であり、制御部が、衝突型試験において、台車を所定の速度で衝撃発生装置に衝突させるように台車駆動部を制御し、非衝突型試験において、予め設定された衝撃波形に基づいて台車が駆動されるように台車駆動部を制御する構成としてもよい。
【0014】
上記の衝撃試験装置において、台車駆動部が、台車に解除可能に連結されるキャリッジと、台車及びキャリッジを走行可能に支持する台車軌道部と、を備え、衝突型試験において、キャリッジが台車に連結され、非衝突型試験において、キャリッジと台車との連結が解除される構成としてもよい。
【0015】
上記の衝撃試験装置において、衝撃発生装置が、可動ブロックと、可動ブロックの台車と向かい合う面に取り付けられたプラスチックプログラマーと、可動ブロックを走行方向に移動可能に支持するブロック軌道部と、可動ブロックの振動を吸収するショックアブソーバーと、を備え、ブロック軌道部が、ガイドウエイ形循環式リニア軸受を備え、ガイドウエイ形循環式リニア軸受が、レールと、可動ブロックに取り付けられ、転動体を介してレール上を走行可能なランナーと、を備え、台車が、可動ブロックと向かい合う面に取り付けられたプラスチックプログラマーを備えた構成としてもよい。
【0016】
上記の衝撃試験装置において、転倒防止手段が、台車に設置された第2手段を含み、第2手段が、台車に立てられた複数の支柱と、複数の支柱に張り渡される線状部材と、を備えた構成としてもよい。
【0017】
本発明の別の一側面によれば、供試品を載せて走行可能な台車と、供試品の転倒を防止する転倒防止手段と、を備え、転倒防止手段が、台車に設置された第2手段を含み、第2手段が、台車に立てられた複数の支柱と、複数の支柱に張り渡される線状部材と、を備えた、衝撃試験装置が提供される。
【0018】
上記の衝撃試験装置において、線状部材が、紐状の紐状部材及び網状の網状部材のいずれかを含む構成としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態によれば、衝撃台の駆動に必要な動力の増大が軽減可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る衝撃試験装置の平面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る衝撃試験装置の側面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る衝撃試験装置の正面図である。
【
図4】第1実施形態の衝撃発生部付近を拡大した平面図である。
【
図5】第1実施形態の衝撃発生部付近を拡大した側面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る衝撃試験装置の制御システムの概略構成を示したブロック図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る衝撃試験装置の平面図である。
【
図8】台車駆動部の変形例の概略構成を示した図である。
【
図9】駆動モジュールの変形例の概略構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の又は対応する構成要素には、同一の又は対応する符号を付して、重複する説明を省略する。また、各図において、符号が共通する事項が複数表示される場合は、必ずしもそれらの複数の表示の全てに符号を付さず、それらの複数の表示の一部について符号の付与を適宜省略する。また、各図において、説明の便宜上、構成の一部を省略し又は断面で示している。
【0022】
(第1実施形態)
以下の説明において、
図1における左から右へ向かう方向をX軸方向、下から上へ向かう方向をY軸方向、紙面に垂直に裏側から表側へ向かう方向をZ軸方向と定義する。X軸方向及びY軸方向は互いに直交する水平方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。また、X軸正方向を前方、X軸負方向を後方、Y軸正方向を左方、Y軸負方向を右方と呼ぶ。
【0023】
以下に説明する本発明の第1実施形態に係る衝撃試験装置1は、供試品Wを載せた衝撃台を衝撃波形発生装置に衝突させることで供試品Wに衝撃を与える従来型の試験方法(以下「衝突型試験」という。)と、衝撃波形に基づくモーターの駆動により発生した衝撃を衝撃台に伝達させることで供試品Wに衝撃を与える新型の試験方法(以下「非衝突型試験」という。)の2種類の試験方法を実行可能に構成されている。
【0024】
衝撃試験装置1は、供試品Wが載置される台車20(衝撃台)と、台車20を駆動する台車駆動部30と、台車20及び後述する台車駆動部30のキャリッジ32をX軸方向に走行可能に支持する軌道部10(台車軌道部)と、衝突型試験において台車20と衝突して供試品Wに与えるべき衝撃を発生する衝撃発生装置40(衝撃波形発生装置)と、供試品Wの転倒を防止する転倒防止手段(第1サポート50及び第2サポート60)を備えている。
【0025】
軌道部10は、ベース2上に設置されたX軸方向に延びる路盤11と、路盤11上に設けられたガイドウエイ形循環式リニア軸受(以下「リニアガイド」という。)12を備えている。本実施形態の軌道部10は、左右に(すなわちY軸方向に)等間隔で並べられた複数組(例えば3組)の路盤11及びリニアガイド12を備えている。なお、複数の路盤11が一体に連結されていてもよい。
【0026】
各リニアガイド12は、路盤11の上面に敷設された(すなわち、ベース2に対して固定された)レール121と、複数の転動体を介してレール121上を走行可能な複数(例えば7つ)のランナー122(
図3)を備えている。転動体は、ランナー122内及びレール121とランナー122との間に形成された循環路内に保持されている。各リニアガイド12の複数のランナー122の一部(例えば5つ)は、例えばX軸方向に等間隔に並べられ、台車20の下面に取り付けられている。また、各リニアガイド12の残り(例えば2つ)のランナー122は、例えばX軸方向に等間隔に並べられ、後述する台車駆動部30のキャリッジ32の下面に取り付けられている。リニアガイド12によって、台車20及びキャリッジ32のX軸方向の移動が案内される。なお、キャリッジ32、台車20及び衝撃発生装置40は、この順でX軸方向に並んで配置されている。
【0027】
台車駆動部30は、軌道部10上を走行可能なキャリッジ32と、キャリッジ32を駆動するキャリッジ駆動手段を備えている。キャリッジ駆動手段は、キャリッジ32を駆動するための動力を発生する駆動モジュール34と、駆動モジュール34が発生した動力をキャリッジ32に伝達するベルト機構35を備えている。
【0028】
本実施形態の台車駆動部30は、ベース2の四隅付近にそれぞれ配置された4つの駆動モジュール34(34FL、34BL、34FR、34BR)と、左右二組のベルト機構35(35L、35R)を備えている。左側のベルト機構35Lは左側の一対の駆動モジュール34FL及び34BLによって駆動され、右側のベルト機構35Rは右側の一対の駆動モジュール34FR及び34BRによって駆動される。
【0029】
図3に示されるように、駆動モジュール34は、フレーム341、サーボモーター342、ベルト機構343、シャフト344及び複数の軸受345を備えている。サーボモーター342は、Y軸方向に軸342bを向けてフレーム341の上部に取り付けられている。シャフト344は、サーボモーター342の軸342bと平行に下方に配置され、フレーム341に取り付けられた複数の軸受345によって回転可能に支持されている。
【0030】
ベルト機構343は、サーボモーター342の軸342bと結合した駆動プーリー343aと、シャフト344と結合した従動プーリー343cと、駆動プーリー343aと従動プーリー343cとに巻掛けられた歯付ベルト343bを備えている。駆動プーリー343a及び従動プーリー343cは、それぞれ歯付ベルト343bに適合した歯を有する歯付プーリーである。本実施形態では、従動プーリー343cが駆動プーリー343aよりも歯数が多い(すなわち、ピッチ円直径が大きい)ため、ベルト機構343は減速機として機能し、サーボモーター342から出力されたトルクを増幅してシャフト344に伝える。
【0031】
ベルト機構35は、一対の駆動プーリー351と、一対の駆動プーリー351に巻掛けられた歯付ベルト352と、歯付ベルト352をキャリッジ32に固定するベルトクランプ353(巻掛け媒介節固定具)を備えている。駆動プーリー351は、各駆動モジュール34のシャフト344と結合している。
【0032】
歯付ベルト352及び歯付ベルト343bは、鋼線の心線を有している。なお、歯付ベルト352や歯付ベルト343bには、例えば炭素繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維などの所謂スーパー繊維から形成された心線を有するものを使用してもよい。カーボン心線などの軽量かつ高強度の心線を使用することにより、比較的に出力の低いサーボモーター342を使用してもキャリッジ32と台車20を大きな加速度で駆動することが可能になるため、衝撃試験装置1の小型化が可能になる。また、同じ出力のサーボモーター342を使用した場合、所謂スーパー繊維から形成された心線を有する軽量の歯付ベルト352や歯付ベルト343bを使用することにより、より大きな加速度の衝撃を供試品Wに与えることが可能になる。
【0033】
左側のベルト機構35Lの一対の駆動プーリー351は、左側の一対の駆動モジュール34FL及び34BLのシャフト344とそれぞれ結合し、右側のベルト機構35Rの一対の駆動プーリー351は、右側の一対の駆動モジュール34FR及び34BRのシャフト344にそれぞれ結合している。
【0034】
キャリッジ32は、不図示の結合手段(例えばボルトや電磁石等)により、台車20の後端部に解除可能に連結される。具体的には、キャリッジ32は、非衝突型試験を行う際に台車20と一体に結合し、衝突型試験を行う際は台車20から切り離される。
【0035】
台車20は、テーブル21と、テーブル21の前面に取り付けられたプラスチックプログラマー(以下「パッド」という。)22を備えている。本実施形態の台車20は、Y軸方向に等間隔で並べられた4つのパッド22を備えている。
【0036】
図4に示されるように、衝撃発生装置40は、可動ブロック41と、可動ブロック41をX軸方向に移動可能に支持する軌道部42(ブロック軌道部)と、可動ブロック41の背面(台車20と向かい合う面)に取り付けられたパッド43と、可動ブロック41の左右両側に配置された2対のショックアブソーバー44、45を備えている。ショックアブソーバー44、45は、例えば油圧緩衝器である。
【0037】
軌道部42は、ベース2上に設置されたX軸方向に延びる路盤421と、路盤421上に設けられたリニアガイド422を備えている。本実施形態の軌道部42は、左右に等間隔で並べられた複数組(例えば3組)の路盤421及びリニアガイド422を備えている。なお、複数の路盤421を一体に連結してもよい。
【0038】
各リニアガイド422は、路盤421の上面に敷設されたレール422aと、レール422a上を走行可能な複数(例えば4つ)のランナー422bを備えている。複数のランナー422bは、例えばX軸方向に等間隔に並べられ、可動ブロック41の下面に取り付けられている。リニアガイド422によって、可動ブロック41のX軸方向の移動が案内される。
【0039】
図1及び
図3に示されるように、台車20の可動範囲の中央部には、左右両側に一対のリニアエンコーダー744が設けられている。リニアエンコーダー744の本体は、路盤11に取り付けられている。台車20の左右両側面には、リニアエンコーダー744のスケール744bが取り付けられている。リニアエンコーダー744により、台車20の位置及び速度が検出される。
【0040】
衝撃発生装置40は、台車20のパッド22と同数のパッド43を備えている。パッド43は、パッド22と対を成し、対応するパッド22と向かい合う位置に取り付けられている。
【0041】
図4に示されるように、可動ブロック41の左右両側面からは、X軸と垂直な二つの平面(操作面411a、411b)を有する一対の押板411が突出している。ショックアブソーバー44は、ピストンロッド442を押板411に向けて、押板411の正面に隣接して配置されている。ショックアブソーバー45は、ピストンロッド452を押板411に向けて、押板411の背面に隣接して配置されている。ショックアブソーバー44のシリンダー441とショックアブソーバー45のシリンダー451は、ベース2に対して固定されている。また、ピストンロッド442の先端は、押板411の正面に形成された操作面411aに突き当てられていて、ピストンロッド452の先端は、押板411の背面に形成された操作面411bに突き当てられている。
【0042】
可動ブロック41のX軸正方向の運動が主にショックアブソーバー44によって減衰され、X軸負方向の運動が主にショックアブソーバー45によって減衰される。逆向きに配置された一対のショックアブソーバー44、45を使用することにより、可動ブロック41の衝撃(振動)をより効率的に減衰させることが可能になる。
【0043】
なお、本実施形態では、ショックアブソーバー44、45として油圧緩衝器が使用されるが、油圧緩衝器に替えて空圧緩衝器を使用してもよい。また、油圧緩衝器と空圧緩衝器(又は、空気ばねやコイルスプリング等の弾性要素)を直列又は並列に結合して使用してもよい。例えば、自動車のマクファーソンストラット式サスペンションのように、ショックアブソーバーとコイルばねとを同軸に配置して(すなわち、コイルばねの中空部にショックアブソーバーを通して)、これらを並列に結合する構成としてもよい。
【0044】
衝突型試験においては、慣性走行(惰性走行)する台車20を衝撃発生装置40に衝突させることによって、台車20及び供試品Wに衝撃が与えられる。このとき、台車20のテーブル21と衝撃発生装置40の可動ブロック41とが、パッド22、43を介して衝突する。また、衝突によって発生する可動ブロック41の振動(衝撃)は、ショックアブソーバー44、45によって吸収されて減衰する。そのため、ショックアブソーバー44、45(第1の緩衝手段)及びパッド22、43(第2の緩衝手段)の特性によって、衝撃発生装置40が供試品Wに与える衝撃波形が変化する。求められる波形の衝撃を供試品Wに与えられるように、ショックアブソーバー44、45(第1の緩衝手段)及びパッド22、43(第2の緩衝手段)の特性が調整される。
【0045】
本実施形態の転倒防止手段は、ベース2上に台車20から独立して設置された第1サポート50(第1手段)と、台車20上に設置された第2サポート60(第2手段)を含んでいる。
【0046】
第1サポート50は、略門形の支持体51と、支持体51を支持する一対の軌道部52(支持体軌道部)を備えている。支持体51は、供試品Wがバランスを崩して傾いたときに、供試品Wと接触することにより、供試品Wの転倒を妨げる。
【0047】
非衝突型試験においては、試験条件によって供試品Wが転倒する位置(すなわち、供試品Wに大きな衝撃が加わるX軸方向における位置)が変わる。そのため、本実施形態の第1サポート50は、支持体51のX軸方向における位置を変更できるように構成されている。
【0048】
図3に示されるように、支持体51は、左右に延びたビーム513(連結部)と、ビーム513の左右両端部から下垂した一対の脚部512と、各脚部512の下端部から前方に延びた一対の足部511と、脚部512と足部511とを連結する二対のリブ514を有している。なお、本実施形態のビーム513と一対の脚部512は、1枚の平板から切り出されて、一体に形成されている。
図3において二点鎖線で囲まれた拡大図で示されるように、足部511には、鉛直に貫通した複数の貫通穴511aが形成されている。複数の貫通穴511aは、例えばX軸方向に等間隔で一列に形成されている。
【0049】
支持体51の下部には、ビーム513と一対の脚部512により囲まれた矩形の切欠き部51nが形成されている。切欠き部51nの幅(Y軸寸法)と高さ(Z軸寸法)は台車20よりも大きく、台車20が切欠き部51nを通過できるようになっている。すなわち、供試品Wが台車20に載置されていない状態において、台車20と支持体51の前後関係(X軸方向における配置の順序)を変えることが可能になっている。
【0050】
図1に示されるように、一対の軌道部52は、ベース2の左右両端部に設置されている。
図3において拡大図で示されるように、軌道部52は、ガイドレール521、T溝ナット522及びボルト523を備えている。ガイドレール521は、上面に長さ方向に延びるT溝が形成された細長い部材(所謂T溝レール)である。ガイドレール521のT溝には、複数のT溝ナット522が嵌め込まれている。
【0051】
支持体51の貫通穴511aに通されたボルト523がT溝ナット522に嵌められることにより、支持体51が軌道部52に解除可能に固定される。すなわち、軌道部52は、支持体51をベース2に対して固定する固定手段としての機能を有する。
【0052】
また、ボルト523を緩めると、支持体51の軌道部52への固定が解除され、支持体51はX軸方向に移動可能となる。このとき、ボルト523がT溝ナット522から外されていないため、支持体51の足部511は、ボルト523を介してT溝ナット522に連結されたままとなる。T溝ナット522はT溝に嵌め込まれているため、T溝ナット522(及びT溝ナット522に連結された支持体51)は、T溝の延長方向であるX軸方向のみに移動可能となる。言い換えれば、支持体51の軌道部52への固定が解除されているとき、軌道部52は、支持体51のX軸方向への移動を案内する案内手段として機能する。
【0053】
なお、本実施形態では、軌道部52が、支持体51をベース2に対して固定する固定手段と、支持体51のX軸方向(台車20の走行方向)への移動を案内する案内手段とを兼ねる固定・案内手段として構成されているが、固定手段と案内手段を個別に設ける構成としてもよい。
【0054】
第2サポート60は、台車20のテーブル21上の四隅付近に設置された4本のポストスタンド62と、各ポストスタンド62によりそれぞれ着脱可能に保持される4本のポスト64(支柱)と、4本のポスト64に支持されたネット66(線状部材)を備えている。ポストスタンド62は鉛直に延びる筒状の部材であり、ポスト64の下部がポストスタンド62の中空部に挿入される。
【0055】
ネット66は、開口面を下に向けた箱形(直方体状)に形成されていて、4組のポスト64及びポストスタンド62に被せられ、図示されない固定部材によってポスト64、ポストスタンド62又はテーブル21に固定される。ネット66は、例えば合成ゴム等のエラストマーから形成され、伸縮性を有している。ポスト64は、例えば供試品Wよりも高さが低くなるように設置されている。その結果、供試品Wは、上部がネット66と接触し、ネット66によって弾性的に緩やかに保持されるため、転倒が防止される。
【0056】
ポスト64やネット66等の比較的に細い部材(又は細い部材を網状に連結した部材)から第2サポート60を構成し、これらの細い部材を間隔を空けて(例えば、各部材の太さよりも大きな間隔で)配置することにより、第2サポート60を軽量化することができ、また、台車20の走行時に第2サポート60が受ける空気抵抗を軽減することができる。これにより、台車20の駆動に必要な動力が軽減し、サーボモーター342の容量を減らすことが可能になり、衝撃試験装置1の消費電力の削減や小型化が可能になる。
【0057】
供試品Wの高さが低い場合は、ポスト64は使用せず、ネット66をポストスタンド62やテーブル21に固定してもよい。
【0058】
また、ネット66等の網状部材に替えて、ゴム紐やロープ等の紐状部材を線状部材として使用してもよい。
【0059】
また、弾性を有しない線状部材を使用し、線状部材をポスト64や台車20に弾性的に固定する固定部材を使用する構成としてもよい。
【0060】
図6は、衝撃試験装置1の制御システム1aの概略構成を示したブロック図である。制御システム1aは、装置全体の動作を制御する制御部72、各種計測を行う計測部74及び外部との入出力を行うインターフェース部76を備えている。
【0061】
制御部72には、各駆動モジュール34のサーボモーター342がサーボアンプ342aを介して接続されている。サーボモーター342には、ロータリーエンコーダーREが内蔵されている。ロータリーエンコーダーREが検出したサーボモーター342の軸342bの位相情報は、サーボアンプ342aを介して、制御部72に入力される。
【0062】
制御部72と各サーボアンプ342aとは、光ファイバによって通信可能に接続され、制御部72と各サーボアンプ342aとの間で高速のフィードバック制御が可能になっている。これにより、複数のサーボモーター342をより高精度(時間軸において高分解能かつ高確度)に同期制御することが可能になっている。
【0063】
インターフェース部76は、例えば、ユーザーとの間で入出力を行うためのユーザーインターフェース、LAN(Local Area Network)等の各種ネットワークと接続するためのネットワークインターフェース、外部機器と接続するためのUSB(Universal Serial Bus)やGPIB(General Purpose Interface Bus)等の各種通信インターフェースの一つ以上を備えている。また、ユーザーインターフェースは、例えば、各種操作スイッチ、表示器、LCD(liquid crystal display)等の各種ディスプレイ装置、マウスやタッチパッド等の各種ポインティングデバイス、タッチスクリーン、ビデオカメラ、プリンタ、スキャナ、ブザー、スピーカ、マイクロフォン、メモリーカードリーダライタ等の各種入出力装置の一つ以上を含む。
【0064】
計測部74は、台車20に取り付けられる加速度センサー742及びリニアエンコーダー744を備え、加速度センサー742及びリニアエンコーダー744からの信号を増幅及びデジタル変換して計測データを生成し、制御部72へ送信する。また、計測部74には、供試品Wに取り付けられる加速度センサー742を増設し、試験中に供試品Wに加わる衝撃を計測することもできる。
【0065】
制御部72は、インターフェース部76を介して入力された衝撃波形(例えば、加速度波形)等の制御条件や計測部74から入力された計測データに基づいて、各駆動モジュール34のサーボモーター342の駆動を同期制御する。なお、本実施形態では、2つのサーボモーター342が同位相で駆動される(厳密には、左側の駆動モジュール34FL、34BLのサーボモーター342と右側の駆動モジュール34FR、34BRのサーボモーター342が逆位相〔逆回転〕で駆動される)。
【0066】
上述したように、本実施形態の衝撃試験装置1を使用して、衝突型試験と非衝突型試験の2種類の試験を行うことができる。次に、各試験の内容及び手順について説明する。
【0067】
[衝突型試験]
衝突型試験は、台車20と台車駆動部30のキャリッジ32との連結が解除された状態で行われる。また、衝突型試験では、台車20が衝撃発生装置40に衝突したときに、供試品Wに前方に転倒する力が作用する。そのため、第1サポート50を使用する場合は、第1サポート50の支持体51(より具体的には、ビーム513)は、例えば、
図1に示されるように、衝撃発生装置40の後端部(すなわち、パッド43)の付近に設置される。なお、供試品Wの大きさ、形状、重量分布等に応じて、第1サポート50の支持体51の位置は適宜調整される。
【0068】
衝突型試験では、まず、駆動モジュール34の駆動により、例えば走行可能範囲(X軸方向における可動範囲)の後端付近に設定された開始位置Sへキャリッジ32が移動される。次いで、台車20がキャリッジ32と接触する位置まで例えば手動で移動され、供試品Wが台車20のテーブル21上に載せられる。第2サポート60を使用する場合は、第2サポート60により供試品Wがテーブル21に保持される。
【0069】
台車20への供試品Wの積載が完了し、例えばタッチスクリーン(インターフェース部76)等へのユーザー操作により試験開始の指令が出されると、台車20に装着された加速度センサー742による連続的な衝撃の計測が開始される。加速度センサー742の検出結果は、制御部72に接続されたストレージに蓄積保存されると共に、グラフ化されてディスプレイ装置(インターフェース部76)に衝撃波形(加速度波形)として表示される。
【0070】
次に、駆動モジュール34の駆動により、キャリッジ32が前方へ徐々に加速される。このとき、台車20は、キャリッジ32に押されながら、キャリッジ32と同じ速度で走行する。キャリッジ32が予め設定された衝突速度に到達すると、キャリッジ32は減速される。キャリッジ32が減速すると、台車20は、キャリッジ32から離れて、衝突速度で慣性走行し、やがて衝撃発生装置40に衝突する。
【0071】
衝突型試験では、台車20と衝撃発生装置40との衝突によって発生する衝撃が、台車20に載置された供試品Wに加えられる。また、衝突により、供試品Wに前方へ倒す力が作用するため、供試品Wが前方に傾くが、供試品Wは台車20の前端付近に配置された第1サポート50の支持体51に接触するため、供試品Wの転倒が回避される。
【0072】
衝突後、所定の時間が経過すると、加速度センサー742による計測が停止され、台車20から供試品Wが取り出されて、1回の衝突型試験が終了する。
【0073】
[非衝突型試験]
非衝突型試験では、不図示の結合手段により、キャリッジ32と台車20が一体に連結された状態で行われる。
【0074】
非衝突型試験では、試験条件(衝撃波形等)によって供試品Wの転倒の発生が予測される位置(転倒予測位置)が変わる。第1サポート50を使用する場合は、第1サポート50の支持体51は、転倒予測位置の近傍に設置される。
【0075】
次いで、駆動モジュール34の駆動により、キャリッジ32と連結した台車20が開始位置へ移動される。なお、非衝突型試験の開始位置は、衝突型試験の開始位置Sとは異なり、例えば台車20の走行可能範囲の中央付近に設定される。開始位置において、供試品Wが台車20のテーブル21上に載せられる。第2サポート60を使用する場合は、第2サポート60により供試品Wがテーブル21に保持される。
【0076】
台車20への供試品Wの積載が完了し、インターフェース部76へのユーザー操作により試験開始の指令が出されると、台車20に装着された加速度センサー742による連続的な衝撃の計測が開始される。
【0077】
次に、予め設定された衝撃波形(例えば、加速度波形)の波形データに基づいて各駆動モジュール34のサーボモーター342の駆動が制御される。各駆動モジュール34が発生した衝撃は、ベルト機構35によってキャリッジ32及び台車20に伝達され、台車20に載置された供試品Wに加えられる。
【0078】
供試品Wに加えられた衝撃により、供試品Wに例えば前方へ倒す力が作用するため、供試品Wが前方に傾くが、供試品Wは台車20の前端付近に配置された第1サポート50の支持体51に接触するため、供試品Wの転倒が回避される。
【0079】
供試品Wへの衝撃印加後、所定の時間が経過すると、加速度センサー742による計測が停止され、台車20から供試品Wが取り出されて、1回の非衝突型試験が終了する。
【0080】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る衝撃試験装置2000は、第1サポートを自動で移動可能にしたものである。以下、第2実施形態については、主に第1実施形態と相違する点について説明し、第1実施形態と共通する構成についての重複する説明を省略する。
【0081】
図7は、本発明の第2実施形態に係る衝撃試験装置2000の平面図である。衝撃試験装置2000の第1サポート2500は、支持体2510と、支持体2510をX軸方向へ移動可能に支持する軌道部2520と、支持体2510を駆動する支持体駆動手段を備えている。支持体駆動手段は、支持体2510を駆動するための動力を発生する4つの駆動モジュール2540(2540FL、2540FR、2540BL、2540BR)と、駆動モジュール2540が発生した動力を支持体2510に伝達する左右二組のベルト機構2550(2550R、2550L)を備えている。駆動モジュール2540が発生した動力により、支持体2510がX軸方向に駆動される。
【0082】
4つの駆動モジュール2540は、ベース2の四隅付近にそれぞれ配置されている。左側のベルト機構2550Lは左側の一対の駆動モジュール2540FL及び2540BLによって駆動され、右側のベルト機構2550Rは右側の一対の駆動モジュール2540FR及び2540BRによって駆動される。なお、駆動モジュール2540の構成は、第1実施形態の駆動モジュール34の構成と同一であるため、説明を省略する。
【0083】
軌道部2520は、ベース2上に設置されたX軸方向に延びる一対の路盤2521と、各路盤2521上にそれぞれ設けられた一対のリニアガイド2522を備えている。各リニアガイド2522は、路盤2521の上面に敷設されたレール2522aと、レール2522a上を走行可能な複数(例えば2つ)のランナー2522bを備えている。ランナー2522bは、支持体2510の足部2511の下面に取り付けられている。リニアガイド12によって、支持体2510のX軸方向の移動が案内される。
【0084】
ベルト機構2550は、一対の駆動プーリー2551と、一対の駆動プーリー2551に巻掛けられた歯付ベルト2552と、歯付ベルト2552を支持体2510に固定するベルトクランプ2553(巻掛け媒介節固定具)を備えている。駆動プーリー2551は、各駆動モジュール2540のシャフト2544と結合している。支持体2510には、各脚部2512から左右外側に突出した、水平に配置された平板状のクランプ取付部2515が設けられている。ベルトクランプ2553は、クランプ取付部2515に取り付けられている。駆動モジュール2540が伝達した動力により、支持体2510は前後(X軸方向)に駆動される。
【0085】
図6に示されるように、制御部72には、各駆動モジュール2540のサーボモーター2542がサーボアンプ2542aを介して接続されている。サーボモーター2542には、ロータリーエンコーダーREが内蔵されている。ロータリーエンコーダーREが検出したサーボモーター2542の軸2542bの位相情報は、サーボアンプ2542aを介して、制御部72に入力される。
【0086】
以下、本発明の第2実施形態に係る衝撃試験装置2000の第1サポート2500の支持体2510の駆動制御に関する二つの実施例について説明する。
【0087】
(実施例1)
実施例1は、第1実施形態において手動で行われる第1サポート50の支持体51の移動及び固定を自動化したものである。具体的には、衝撃試験を開始する前に(例えば、供試品Wを台車20に載置する前に)、制御部72が支持体駆動手段の4つの駆動モジュール2540(サーボモーター2542)を同期制御して、試験条件によって決まる所定位置(支持体設置位置)へ支持体2510を移動させる。
【0088】
支持体設置位置は、衝突型試験においては、例えば試験中に台車20が走行する範囲の最前端に配置された台車20の前方に隣接する位置(すなわち、衝撃発生装置40の後端部の付近)に決定される。また、非衝突型試験においては、例えば試験中に台車20が走行する範囲の最前端に配置された台車20の前方に隣接する位置又は最後端に配置された台車20の後方に隣接する位置に支持体設置位置が決定される。例えば衝撃波形の最大加速度(又は加速度の積分値)の符号が正の場合(すなわち、前向きの衝撃が加わる場合)に台車20の走行範囲の前方に支持体設置位置が決定され、符号が負の場合(すなわち、後ろ向きの衝撃が加わる場合)に台車20の走行範囲の後方に支持体設置位置が決定される。
【0089】
なお、実施例1においては、試験中は、支持体2510は駆動されずに支持体設置位置に保持される。言い換えれば、支持体駆動手段は、試験中に、支持体2510をベース2に対して解除可能に固定する固定手段として機能する。
【0090】
(実施例2)
実施例2は、試験中に支持体51を静止させずに、台車20と支持体2510とを、略等距離に保った状態で駆動するものである。具体的には、制御部72が、キャリッジ駆動手段の4つの駆動モジュール34(サーボモーター342)と、支持体駆動手段の4つの駆動モジュール2540(サーボモーター2542)とを、衝撃波形に基づいて同期制御する。
【0091】
なお、支持体駆動手段の4つの駆動モジュール2540(サーボモーター2542)については、平滑化処理(例えば単純移動平均)が施された衝撃波形に基づいて駆動を制御してもよい。平滑化処理が施された衝撃波形に基づいて駆動を制御することにより、支持体51に加わる加速度が緩和され、また、サーボモーター2542の消費電力が軽減される。
【0092】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、その技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。例えば本明細書中に例示的に明示された実施形態等の構成及び/又は本明細書中の記載から当業者に自明な構成を適宜組み合わせたものも本願の実施形態に含まれる。
【0093】
上記の各実施形態は、台車20とキャリッジ32とを分離することにより、衝突型試験と非衝突型試験の両方を実行することができるようになっているが、台車20とキャリッジ32とを一体に構成して、非衝突型試験専用の装置としてもよい。
【0094】
上記の各実施形態では、歯付ベルト352が一対の駆動プーリー351に巻掛けられているが、歯付ベルト352が巻掛けられるプーリーの一方を従動プーリーとしてもよい。この場合、駆動モジュール34FL(34FR)と34BL(34BR)のいずれか一方が不要になる。この構成は、支持体駆動手段のベルト機構2550にも適用することができる。
【0095】
上記の各実施形態では、キャリッジ32が2本の歯付ベルト352により駆動されるが、1本又は3本以上の複数の歯付ベルト352によりキャリッジ32を駆動する構成としてもよい。この構成は、支持体駆動手段にも適用することができる。
【0096】
図8は、4本の歯付ベルト352によりキャリッジ32を駆動する構成の一例の概略を示した平面図である。
図8に示されるように、各歯付ベルト352の長さ(歯数)を同一としてもよい。歯付ベルト352の長さを揃えることにより、複数の歯付ベルト352の伝達特性が均一化し、より安定したキャリッジ32の駆動が可能になる。この構成は、支持体駆動手段のベルト機構2550にも適用することができる。また、隣接する駆動モジュール34を前後に並べる(すなわち、前後に位置をずらず)ことにより、衝撃試験装置をコンパクトにすることが可能になる。
【0097】
各駆動プーリー351のピッチ円直径(歯数)を同一としてもよい。また、各駆動モジュール34に内蔵されたベルト機構343の減速比を同一としてもよい。これにより、各サーボモーター342の駆動量(軸342bの回転角)と歯付ベルト352の移動量との比率が等しくなるため、各サーボモーター342を同じ駆動量で駆動することが可能になる。これらの構成は、支持体駆動手段にも適用することができる。
【0098】
図9は、駆動モジュール34の変形例の概略構成を示した図である。
図9に示されるように、駆動モジュール34が複数(例えば2つ)のサーボモーター342を備えていてもよい。
図9の変形例では、シャフト344の両端に、一対のサーボモーター342の軸342bが、それぞれカップリング346により接続されている。これにより、一つの駆動プーリー351を一対のサーボモーター342により駆動することが可能になる。また、1本のシャフト344に複数の駆動プーリー351(ベルト機構35)が結合した構成を採用してもよい。この構成により、シャフト344と結合するサーボモーター342と駆動プーリー351の割合を変えることが可能になるため、サーボモーター342の性能と歯付ベルト352の性能を有効に利用することが可能になる。
【0099】
上記の実施形態では、ゴム弾性を有する線状部材が使用されるが、例えば、ポリアミド系樹脂や鉄鋼等の高弾性材料から形成された線状部材を使用してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 衝撃試験装置
10 軌道部
20 台車
30 台車駆動部
40 衝撃発生装置(衝撃波形発生装置)
50 第1サポート(転倒防止手段/第1手段)
60 第2サポート(転倒防止手段/第2手段)
2500 第1サポート