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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】環境情報分析方法
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/02 20060101AFI20231018BHJP
   B64D 47/00 20060101ALI20231018BHJP
   B64U 20/80 20230101ALI20231018BHJP
   B64U 50/19 20230101ALI20231018BHJP
   H02P 5/46 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B64C39/02
B64D47/00
B64U20/80
B64U50/19
H02P5/46 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019547527
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2019027843
(87)【国際公開番号】W WO2021009826
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】517331376
【氏名又は名称】株式会社エアロネクスト
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/065096(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107860940(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0018822(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1844727(KR,B1)
【文献】特開平04-262997(JP,A)
【文献】特表2017-501475(JP,A)
【文献】特開2012-083318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 1/00 - 99/00
B64D 1/00 - 47/08
B64U 10/00 - 101/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラを有するモータを複数備える飛行体から前記モータのそれぞれに関する負荷情報を取得する情報取得ステップと、
前記各モータの相対的な負荷情報に基づいて、前記飛行体の周囲における風速及び風向の少なくともいずれかを含む環境情報を生成する環境情報生成ステップと、
を情報処理装置により実行する環境情報分析方法であって、
前記負荷情報は、各モータの回転数に関する情報に基づいて得られ、
前記環境情報生成ステップは、前記回転数に関する情報に対して高速フーリエ変換を行い、当該高速フーリエ変換により得られた周波数スペクトラムに基づき、前記環境情報を生成する、環境情報分析方法
【請求項2】
プロペラを有するモータを複数備える飛行体から前記モータのそれぞれに関する負荷情報を取得する情報取得ステップと、
前記各モータの相対的な負荷情報に基づいて、前記飛行体の周囲における風速及び風向の少なくともいずれかを含む環境情報を生成する環境情報生成ステップと、
を情報処理装置に実行させるプログラムであって、
前記負荷情報は、各モータの回転数に関する情報に基づいて得られ、
前記環境情報生成ステップは、前記回転数に関する情報に対して高速フーリエ変換を行い、当該高速フーリエ変換により得られた周波数スペクトラムに基づき、前記環境情報を生成する、プログラム
【請求項3】
プロペラを有するモータを複数備える飛行体から前記モータのそれぞれに関する負荷情報を取得する情報取得部と、
前記各モータの相対的な負荷情報に基づいて、前記飛行体の周囲における風速及び風向の少なくともいずれかを含む環境情報を生成する環境情報生成部と、
を備え
前記負荷情報は、各モータの回転数に関する情報に基づいて得られ、
前記環境情報生成部は、前記回転数に関する情報に対して高速フーリエ変換を行い、当該高速フーリエ変換により得られた周波数スペクトラムに基づき、前記環境情報を生成する、情報処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体の周囲における環境情報を生成可能な環境情報分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローン(Drone)や無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などの飛行体(以下、「飛行体」と総称する)を利用して荷物Lの配達を行う試みがなされている。特許文献1には、飛行体による配達システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許公開公報2015-0120094 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、飛行体の飛行に対しては、安定した飛行のために飛行体の周囲における情報を得る必要がある。ところが、現状、天気予報のようなマクロな情報では、地上空域の詳細な状態はわからない。
【0005】
一方、地上にセンサ等を設置するのはコストや設置スペース確保の観点から現実的でない。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構成で、飛行体の周囲の環境情報を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、センサ部を備えた飛行体からセンサ情報を取得するセンサ情報取得ステップと、
前記センサ情報に基づいて前記飛行体の周囲の状態に関する状態情報を分析する状態分析ステップと、
前記分析結果に基づいて、前記飛行体の周囲における環境情報を生成する環境情報生成ステップと、
を備える環境情報分析方法が得られる。
【0008】
本発明によれば、制御部を備える飛行体を利用して当該飛行体の環境情報を分析する環境情報分析方法であって、
前記制御部は、前記飛行体に対して第1の状態から第2の状態に遷移する作用が働いた場合に、前記第2の状態から前記第1の状態に復帰させるように当該飛行体を復帰制御する機能を有しており、
前記復帰制御に関する復帰情報を取得するステップと、
前記復帰情報に基づいて前記飛行体の周囲の環境情報を分析するステップとを含む、
環境情報分析方法が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成で、飛行体の周囲の環境情報を取得することのできる環境情報分析方法を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る環境情報分析システムのシステム構成図。
図2】飛行体の構成を示す斜視図。
図3】飛行体の姿勢変化を示す側面図。
図4】飛行体の構成を示す平面図。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る環境情報分析システムのシステム構成図。
図6】飛行体の状態が遷移する様子の一例を示す平面図。
図7】飛行体の姿勢制御機能を利用した風速計の観念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による環境情報分析方法は、以下のような構成を備える。
[項目1]
センサ部を備えた飛行体からセンサ情報を取得するセンサ情報取得ステップと、
前記センサ情報に基づいて前記飛行体の周囲の状態に関する状態情報を分析する状態分析ステップと、
前記分析結果に基づいて、前記飛行体の周囲における環境情報を生成する環境情報生成ステップと、
を備える環境情報分析方法。
[項目2]
項目1に記載の環境情報分析方法であって、
前記飛行体は、複数のプロペラと、 前記複数のプロペラを回転させるモータとを有し、
前記センサ情報には、少なくとも前記モータの回転数が含まれる、
環境情報分析方法。
[項目3]
項目2に記載の環境情報分析方法であって、
前記飛行体は、独立した複数個のモータを有し、
前記センサ情報には、各モータの回転数が含まれる、
環境情報分析方法。
[項目4]
項目1乃至項目3の何れか一項に記載の環境情報分析方法であって、
前記飛行体は、複数のプロペラと、前記複数のプロペラを回転させるモータと、前記モータの負荷を検出するモータ負荷検出部を有し、
前記状態情報には、前記モータの負荷が含まれる、
環境情報分析方法。
[項目5]
項目1乃至項目4の何れか一項に記載の環境情報分析方法であって、
前記飛行体は、機体の傾きを検出する傾き情報検出部を有し、
前記状態情報には、前記機体の傾きが含まれる、
環境情報分析方法。
[項目6]
項目1乃至項目5の何れか一項に記載の環境情報分析方法であって、
前記飛行体は、前記飛行体の飛行高度を検出する飛行高度検出部を有し、
前記状態情報には、前記飛行体の飛行高度が含まれる、
環境情報分析方法。
[項目7]
項目1乃至項目6の何れか一項に記載の環境情報分析方法であって、
前記環境情報には、少なくとも風速及び風向が含まれる、
環境情報分析方法。
[項目8]
項目1乃至項目7の何れか一項に記載の環境情報分析方法であって、
センサ情報取得ステップでは、複数の飛行体からのセンサ情報が取得される、
環境情報分析方法。
[項目9]
制御部を備える飛行体を利用して当該飛行体の環境情報を分析する環境情報分析方法であって、
前記制御部は、前記飛行体に対して第1の状態から第2の状態に遷移する作用が働いた場合に、前記第2の状態から前記第1の状態に復帰させるように当該飛行体を復帰制御する機能を有しており、
前記復帰制御に関する復帰情報を取得するステップと、
前記復帰情報に基づいて前記飛行体の周囲の環境情報を分析するステップとを含む、
環境情報分析方法。
【0012】
<実施の形態の詳細>
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態による環境情報分析方法について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
なお、以下の説明において、以下の定義に従って用語を使い分けることがある。
前後方向:+Y方向及び-Y方向
上下方向(または鉛直方向):+Z方向及び-Z方向
左右方向(または水平方向):+X方向及び-X方向
進行方向(前方):-Y方向
後退方向(後方):+YX方向
上昇方向(上方):+Z方向
下降方向(下方):-Z方向
【0014】
図1は、本実施形態における環境情報分析システム100のシステム構成を示す図である。図2は、飛行体10の構成を示す斜視図である。以下では、環境情報分析システム100を物流に適用する場合について説明する。環境情報分析システム100は、図1に示すように、荷物Lを搭載可能な自立飛行型の飛行体10及びサーバ30がネットワークや無線LAN(移動体通信網を含む)を介して通信接続可能に接続されている。
【0015】
<飛行体の構成>
図1及び図2を参照して、上述した飛行体10は、一般に以下のような構成を有している。飛行体10は、フライトコントローラ11、プロペラ12A~12D、モータ13A~13D、アーム14A~14Dなどで構成される。
【0016】
フライトコントローラ11は、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央演算処理装置(CPU))などを有することができ、またフライトコントローラ11が実行可能であるロジック・コード・およびプログラム命令を記憶するためのメモリを有しても良い。
【0017】
メモリは、例えば、SDカードなどの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラやセンサ類から取得したデータは、メモリに直接に伝達されかつ記憶されてもよい。例えば、カメラ等で撮影した静止画・動画データが内蔵の記憶装置又は外部の記憶装置に記録される。
【0018】
フライトコントローラ11にあるセンサ類は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ等)、GPSセンサ、地磁気センサ、近接センサ(例えば、LIDAR)、高度センサ、またはビジョンセンサ(例えば、カメラ)を含み得る。
【0019】
モータ13A~13D・ESC(Electronic Speed Controller)・プロペラ12A~12Dなどの推力発生装置および推力制御装置は、フライトコントローラ11および送受信機からの信号を受けて所望の飛行を実現する。推力発生装置は、電気モータの他にガソリンエンジンなどを用いてもよい。
【0020】
本発明のプロペラ12A~12Dは、羽根は細長い形状を有している。任意の羽根(回転子)の数(例えば、1、2、3、4、またはそれ以上の羽根)でよい。また、羽根の形状は、平らな形状、曲がった形状、よじれた形状、テーパ形状、またはそれらの組み合わせ等の任意の形状が可能である。
【0021】
モータ13A~13Dは、プロペラ12A~12Dの回転を生じさせるものである。羽根は、モータ13A~13Dによって駆動可能であり、時計方向に及び/または反時計方向に、モータ13A~13Dの回転軸(例えば、長軸)の周りに回転する。
【0022】
飛行体10は、対応するモータ13A~13D及びプロペラ12A~12Dを支持するアーム14A~14Dを有している。アーム14A~14Dには、飛行体10の飛行状態、飛行方向等を示すためにLED等の発色体を設けることとしてもよい。本実施の形態によるアーム14A~14Dは、カーボン、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム等またはこれらの合金又は組合わせ等から適宜選択される素材で形成することが可能である。
【0023】
飛行体10は、必要に応じて搭載部を備えていてもよい。搭載部は、搭載対象物(カメラ、荷物保持部、作業ツール等)を搭載・保持するための機構である。搭載部は、搭載対象物位置及び向きを維持することができるように、常に所定の方向(例えば、水平方向(鉛直下向き))に、その状態を保持する構成としてもよい。
【0024】
飛行体10は、バッテリーなどのエネルギー源を備える。電気エネルギーに限らず、ガソリン等の化学エネルギーおよびエネルギー変換モジュールを備えても良い。また、例えば、無線送電のような非接触給電による蓄電モジュールを備えてもよい。
【0025】
飛行体10は、空中撮影や電波中継など、飛行を実現することに直接には関与しない目的にて備えられたセンサおよび動作機構を有することがある。例えば、カメラセンサ、温度センサ、ジンバル機構、物件の投下機構などがあげられ、飛行体10の任務によってはこれらには限らない。
【0026】
<サーバの構成>
図1を参照して、上述したサーバ30は、一般に以下のような構成を有している。
【0027】
サーバ30は、センサ情報取得部31、状態分析部32、環境情報生成部33を有する。
【0028】
センサ情報取得部31は、例えば、飛行体10のセンサ類が計測した信号や、モータ13A~13Dの回転数を示す信号を、センサ情報として取得する処理部である。
【0029】
状態分析部32は、センサ情報取得部31が取得したセンサ情報に基づいて、飛行体10の周囲の状態に関する状態情報を分析する。状態情報は、例えば、モータ13A~13Dの回転数に基づいて得られるモータ13A~13Dの負荷であってもよいし、飛行体10のセンサ類が計測した機体の傾きであってもよいし、飛行体10の飛行高度であってもよい。
【0030】
環境情報生成部33は、状態分析部32による状態情報の分析結果に基づいて、飛行体10の周囲における環境情報を生成する。環境情報には、気流の風速・風向が含まれ得る。状態情報と環境情報の関係は、実験等から得られるテーブル情報としてサーバ30に予め格納されている。
【0031】
サーバ30は、荷物Lの配送先の場所に関する場所情報に基づいて、飛行体10に配送先への移動を指示する。配送指示には、場所情報及び配送日時情報が含まれ得る。飛行体10は、配送指示に含まれる各情報をメモリに記録し、場所情報に向けて飛行を開始する。配送対象の荷物Lは、予め配送業者等により飛行体10の搭載部に載せておけばよい。
【0032】
なお、飛行体10が指定された場所に飛行する方法自体は、公知の自動操縦方法で行われるようにすればよい。例えば、飛行体10は、GPSセンサから得られた緯度経度情報を現在地とし、場所情報が示す緯度経度情報を配送先に設定して、予め定められた空域(地上に近い比較的低い高度の上空)を自動飛行してもよい。そして、飛行体10は、現在地から配送先に向けた方向が進行方向となるように、プロペラ12A~12Dの制御を行ってもよい。進行方向は、例えば、センサ類の地磁気センサから得られた方角を利用して決定される。
【0033】
また、サーバ30から飛行体10に対して、配送先への飛行ルートに関する飛行ルート情報が指示されるようにしてもよい。飛行ルート情報は、配送先に到達するまでの飛行ルートを示す情報であり、例えば、飛行ルートを示すように配送先までの緯度経度情報を順番に繋いだ情報であってよい。サーバ30は、所定の経路検索アルゴリズムに基づいて飛行ルート情報を生成すればよい。なお、飛行ルート情報は、配送指示に含まれていてもよい。飛行体10は、サーバ30から受信した飛行ルート情報に基づいて、配送先への自動操縦制御を実行することになる。
【0034】
飛行ルート情報に基づいて、飛行体10を上昇させる操作が行われると、この操作に応じた制御装置の制御によって、プロペラ12A~12Dの回転数も増加する。これにより、プロペラ12A~12Dは飛行体10の上昇に必要な揚力を徐々に生じさせる。揚力が飛行体10にかかる重力を超えると、飛行体10は空中に浮き始め、矢印A方向に浮上する(図3(A)参照)。
【0035】
そして、飛行体10が所望の高度に到着すると、飛行体10が空中停止(ホバリング)するように、プロペラ12A~12Dの回転数が調整される(図3(B)参照)。つまり、このときの回転数は、各プロペラ12A~12Dの回転による揚力と飛行体10にかかる重力とが釣り合う程度の回転数である。
【0036】
次に、自動操縦制御によって飛行体10を水平方向に移動させる場合には、進行方向に向かって後方にあるプロペラ12B、12Cの回転数を、進行方向に向かって前方にあるプロペラ12A、12Dの回転数よりも多くする制御が行われる。これにより、後方にあるプロペラ12B、12Cによる揚力が前方にあるプロペラ12A 、12Dによる揚力に比べて大きくなり、プロペラ12B、12Cの位置がプロペラ12A、12Dの位置よりも高くなる(図3(C)参照)。このような姿勢になると直ちに、各プロペラ12A~12Dの回転数は、所望の速度で水平方向に移動するような回転数に調整される。
【0037】
飛行体10は、風の影響でバランスが崩れたり墜落したりしないように飛行制御されていればよい。例えば、飛行体10が風に耐え得るように、飛行ルート情報が定義されていてもよい。飛行体10が風に耐え得るとは、例えば、風上側を向くような姿勢を取ること、風上側に向けて飛行体10が移動すること、又は、風上側のプロペラの回転数を風下側のプロペラの回転数よりも少なくすることなどである。
【0038】
例えば、飛行体10の進行方向Bに対して左から右に風が吹いている場合(図4参照)、飛行体10が風に流されることなく所定の位置に留まるように、プロペラ12A~12Dの回転数が調整される。このとき、風上側のプロペラ12B、12Cの回転数が風下側のプロペラ12A、12Dの回転数よりも少なくなるように調整される。環境情報生成部33は、サーバ30に予め格納されているテーブル情報を参照して、モータ13A~13Dの負荷を風向・風速に換算することで、飛行体10の周囲の風向・風速を計測する。
【0039】
このような手法により、環境情報生成部33において風向・風速の計測が行われることによって、飛行体1に風速計を配備する必要がない。つまり、既存の飛行体10を利用して風向・風速の計測を行うことができる。従って、簡易な構成で、飛行体10の周囲の環境情報を取得することができる。
【0040】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態による環境情報分析方法について、図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施の形態に係る環境情報分析方法が適用される飛行体10と、本実施形態に係る環境情報分析方法が適用される飛行体10とは同様のものであるので、説明を省略することがある。
【0041】
環境情報分析システム200は、図5に示すように、飛行体10及びサーバ30がネットワークや無線LAN(移動体通信網を含む)を介して通信接続可能に接続されている。
【0042】
<飛行体の構成>
飛行体10の制御部は、飛行体10に対して第1の状態から第2の状態に遷移する作用が働いた場合に、第2の状態から第1の状態に復帰させるように飛行体10を復帰制御する機能を有している。第1の状態を示す情報や、第2の情報を示す情報は、飛行体10の空間的配置についての情報、例えば、経度、緯度、高度などのロケーションまたは位置情報や、ロール、ピッチおよび/またはヨーなど向きまたは姿勢情報を含み得る。
【0043】
<サーバの構成>
サーバ30は、復帰情報取得部34と、環境情報分析部35とを有する。復帰情報取得部34は、飛行体10の上述した復帰制御に関する復帰情報を飛行体10から取得する。ここでの復帰情報は、例えば、モータ13A~13Dの回転数に基づいて得られるモータ13A~13Dの負荷であってもよいし、飛行体10のセンサ類が計測した機体の傾き・飛行高度であってもよい。環境情報分析部35は、復帰情報取得部34が取得した復帰情報に基づいて、飛行体10の周囲の環境情報を分析する。環境情報には、気流の風速・風向が含まれ得る。復帰情報と環境情報の関係は、実験等から得られるテーブル情報としてサーバ30に予め格納されている。
【0044】
図6は、飛行体10の状態が遷移する様子の一例を示す平面図である。飛行体10は、図6に示すように、無風状態にある第1時点tにおいて、実線で示す第1の状態aにある。そして、風が吹き始めた第2時点t+1において、飛行体10は、図6に示すように、破線で示す第2の状態bにある。すなわち、第1時点から第2時点に至るまでの間に、飛行体10は、風に耐え得るように、風上側を向くような姿勢を保つべく風上側に向けて移動する。このとき、風上側のプロペラ12A、12Bの回転数が風下側のプロペラ12C、12Dの回転数よりも少なくなるように調整される。
【0045】
そして、環境情報分析部35は、サーバ30に予め格納されているテーブル情報を参照して、モータ13A~13Dの負荷を風向・風速に換算することで、飛行体10の周囲の風向・風速を計測する。
【0046】
このような手法により、環境情報分析部35において風向・風速の計測が行われることによって、飛行体1に風速計を配備する必要がない。従って、簡易な構成で、飛行体10の周囲の環境情報を取得することができる。
【0047】
以上、飛行体10の姿勢制御機能を利用した風速計は、図7に示されるように、以下の機能としてまとめることができる。即ち、飛行中(進行中又はホバリング中)における飛行体10からは、上述した様々なセンサデバイスによって、飛行体10に加わる負荷(風等)の情報を付加情報として取得することができる。当該付加情報は、風速や気圧などの飛行体10に加わる生の情報(ロウデータ)であってもいいし、分析可能に処理を行うための何らかの前処理が行われるていてもよい。当該付加情報は、制御部に入力される。制御部は、当該付加情報に基づいて、飛行体10が安全に飛行可能となるように、制御情報を生成する(姿勢制御を行うためのあらゆる情報等)制御情報は、飛行体10の飛行を可能にするための各部位(モータ等)の制御に用いられる。
かかる構成を前提とすると、本実施の形態による風速計は、付加情報を利用して環境情報(風速情報等)を生成(推定)する場合と、制御部によって生成され制御情報を利用して環境情報を生成(推定)する場合と、これらを両方利用する場合との3タイプに分けることが可能である。上述した実施の形態は、いずれも、この3パターンを利用した場合について採用することが可能である。
【0048】
本発明は、次のような把握の仕方をすることもできる。即ち、本発明は、制御部を備える飛行体を利用して当該飛行体の周囲における環境情報を分析する環境情報分析方法である。制御部は、飛行体に対して第1の状態(初期状態)から第2の状態(風などの外力を受けた場合に当該外力に従って変位する位置/変位したであろう位置)に遷移する作用が働いた場合に、第2の状態から前記第1の状態に復帰させるように当該飛行体を復帰制御する機能を有している。管理サーバは、飛行体を経由して復帰制御に関する復帰情報を取得し、当該復帰情報に基づいて飛行体の周囲の環境情報を分析する。
【0049】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【0050】
[変形例] 上記の実施形態を次のように変形してもよい。
環境情報生成部33又は環境情報分析部35は、駆動モータ13A~13Dの回転数を示す信号に対して高速フーリエ変換(FFT)を行い、信号の周波数スペクトラムから、飛行体10の周囲の風向・風速の情報を生成してもよい。これにより、時々刻々と変化する飛行体10の周囲の環境について、各環境において適切な周波数スペクトラムを得ることができ、飛行体10の周囲の環境を正確に分析することができる。
【0051】
また、複数の飛行体10を用いることにより、相互のデータを比較してもよい。さらに、複数の飛行体10を用いることにより、同じ飛行ルートを同じ高度で複数回の情報収集飛行が可能となり、時々刻々と変化する状況について、より高い精度の情報収集が可能となる。
【符号の説明】
【0052】
10 飛行体
12A~12D プロペラ
13A~13D モータ
30 サーバ
31 センサ情報取得部
32 状態分析部
33 環境情報生成部
34 復帰情報取得部
35 環境情報分析部
100、200 環境情報分析システム

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7