(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ナースコールシステム
(51)【国際特許分類】
A61G 12/00 20060101AFI20231018BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20231018BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20231018BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
A61G12/00 E
A61B5/00 102C
G08B25/04 J
G08B21/02
(21)【出願番号】P 2020009729
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】山下 和征
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3178369(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
A61B 5/00
G08B 25/04
G08B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設利用者が携帯する無線発信機と、
所定の監視位置に設置され、上記無線発信機から発信される情報を受信した場合に
、上記施設利用者を特定可能な第1識別情報を含むエリア検知呼出の呼出信号を出力することによってエリア検知呼出を行う無線受信機と、
上記施設利用者のベッドまたはその近傍に設置され、上記施設利用者のベッドからの移動を検出した場合に
、上記施設利用者を特定可能な第2識別情報を含むセンサ検知呼出の呼出信号を出力することによってセンサ検知呼出を行うセンサ装置と、
一の施設利用者について上記エリア検知呼出を受けた場合に、それよりも前に、当該一の施設利用者について上記センサ検知呼出を受けていたか否かを判定し、上記一の施設利用者について上記エリア検知呼出を受けたときよりも前に上記センサ検知呼出を受けていたと判定された場合に、上記施設利用者が上記監視位置に移動したことを知らせるための報知を行う
管理装置とを備え、
上記管理装置は、
上記エリア検知呼出の呼出信号を受信した場合に、当該受信した呼出信号に含まれる上記第1識別情報があらかじめ登録されている識別情報と一致するか否かを判定する一致判定部と、
上記エリア検知呼出の呼出信号を受信した時点よりも前に、上記第1識別情報に対応する上記第2識別情報を含むセンサ検知呼出の呼出信号を受信していたか否かを判定するセンサ受信判定部と、
上記第1識別情報があらかじめ登録されている識別情報と一致すると上記一致判定部により判定され、かつ、上記エリア検知呼出の呼出信号を受信した時点よりも前に、上記第1識別情報に対応する上記第2識別情報を含むセンサ検知呼出の呼出信号を受信していたと上記センサ受信判定部により判定された場合に、上記施設利用者が上記監視位置に移動したことを知らせるための報知を行う報知部とを備えた
ことを特徴とするナースコールシステム。
【請求項2】
上記管理装置は、上記センサ検知呼出を受けた場合に、上記施設利用者のベッドからの移動を知らせるための報知を更に行うことを特徴とする請求項
1に記載のナースコールシステム。
【請求項3】
施設利用者が携帯する無線発信機と、
所定の監視位置に設置され、上記無線発信機から発信される情報を受信した場合にエリア検知呼出を行う無線受信機と、
上記施設利用者のベッドまたはその近傍に設置され、上記施設利用者のベッドからの移動を検出した場合にセンサ検知呼出を行うセンサ装置と、
上記エリア検知呼出に応じて呼び出しの報知を行う管理装置とを備え、
上記管理装置は、一の施設利用者について上記エリア検知呼出を受けた場合に、それよりも前に、当該一の施設利用者について上記センサ検知呼出を受けていたか否かを判定し、上記一の施設利用者について上記エリア検知呼出を受けたときよりも前に上記センサ検知呼出を受けていたと判定された場合に、上記施設利用者が上記監視位置に移動したことを知らせるための報知を行い、
上記管理装置は、上記センサ検知呼出を受けた場合に、上記施設利用者のベッドからの移動を知らせるための報知を更に行う
ことを特徴とす
るナースコールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナースコールシステムに関し、特に、施設利用者の監視位置への移動を検知することによって医療従事者の呼び出しを行うように成されたナースコールシステムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、病院や介護施設などにおいては、ナースコールシステムが用いられている。ナースコールシステムは、病院の患者が看護師のサポートを必要とする際、または介護施設の被介護者が介護師のサポートを必要とする際に、患者や被介護者(以下、患者と記載する)が呼出ボタンを押下することによって看護師や介護師(以下、医療従事者と記載する)を呼び出すことができるように成されたシステムである。
【0003】
多くのナースコールシステムは、ベッド近傍やトイレ、浴室などに設置され呼出ボタンを有するナースコール子機と、ナースステーションに設置されるナースコール親機とを備えて構成されている。この種のナースコールシステムでは、患者がナースコール子機の呼出ボタンを押下して呼び出しを行うと、ナースコール親機にて呼び出しの報知が行われる。
【0004】
ナースコール子機には、上述した呼出ボタンを備えたものだけではなく、荷重を検出するマットセンサによって構成されるものも存在する。このマットセンサをベッド近傍の床に設置し、患者が乗ったことを検出することにより、患者の離床やベッドからの転倒/転落の警報を行うナースコールシステムも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、病院内を徘徊する施設利用者が出入口やエレベータホール等の監視エリアに近づいたときに、看護師に警報を通知するように構成されたシステムも知られている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2に記載の徘徊者離院防止システムでは、徘徊者に保持され徘徊者のタグIDを発信するRFIDタグと、RFIDタグが発信するタグIDを特定の区域で受信する無線受信機と、無線受信機が受信したタグIDと予め登録されているタグIDとを比較し、これらのタグIDが一致した場合に異常と判断して看護師に通知する通知装置とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-97034号公報
【文献】特開2005-215961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2のように施設利用者の徘徊を検知するシステムにおいて、RFIDタグが発信するタグIDを受信する無線受信機の設置されている場所が、RFIDタグを保持している施設利用者の部屋から比較的近い位置にある場合がある。このような場合、部屋の出入口のドアが開いているなどの特定の環境下では、施設利用者が部屋内にいたとしても、その施設利用者のRFIDタグから発信されるタグIDが無線受信機にて受信されて、徘徊の報知が行われてしまうことがあるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、施設利用者が部屋内にいるにもかかわらず徘徊の報知が行われてしまうといった誤報を抑止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明では、施設利用者が携帯する無線発信機と、所定の監視位置に設置され、無線発信機から発信される情報を受信した場合にエリア検知呼出を行う無線受信機と、施設利用者のベッドまたはその近傍に設置され、施設利用者のベッドからの移動を検出した場合にセンサ検知呼出を行うセンサ装置と、エリア検知呼出に応じて呼び出しの報知を行う管理装置とを備え、管理装置が一の施設利用者についてエリア検知呼出を受けた場合に、それよりも前に、当該一の施設利用者についてセンサ検知呼出を受けていたときに、施設利用者が監視位置に移動したことを知らせるための報知を行うようにしている。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した本発明によれば、一の施設利用者についてエリア検知呼出が行われた時点よりも前にセンサ検知呼出が行われていた場合にのみエリア検知呼出の報知が行われる。センサ検知呼出が行われていない場合は、施設利用者のベッドからの移動が検出されていない、つまり施設利用者が監視位置に移動していることはないということである。そして、この場合に報知は行われないので、施設利用者が部屋内にいるにもかかわらず、監視位置に移動したとの報知が行われてしまうといった誤報を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態によるナースコールシステムの全体構成例を示す図である。
【
図2】ナースコール親機、マットセンサおよび無線受信機の配置例を示す図である。
【
図3】本実施形態のナースコール親機が有する機能構成例を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態のセンサ検知呼出受付部がセンサ検知呼出を受け付けた場合に行われる処理の例を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態のエリア検知呼出受付部がエリア検知呼出を受け付けた場合に行われる処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態によるナースコールシステムの全体構成例を示す図である。なお、ここでは病院に設置されるナースコールシステムを例にとって説明するが、本実施形態のナースコールシステムは、病院に設置されるものに限定されない。例えば、介護施設等に設置される場合にも適用可能である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のナースコールシステムは、ナースコール親機1(特許請求の範囲における管理装置に相当)、制御機2、廊下灯3、壁埋込形子機4、マットセンサ5(特許請求の範囲におけるセンサ装置に相当)、無線発信機6および無線受信機7を備えて構成されている。
【0014】
ナースコール親機1は、例えばナースステーションに設置され、無線受信機7からの呼び出しに対応して所定の報知動作を行う。
図2を用いて後述するように、無線受信機7は所定の監視位置に設置され、無線発信機6を所持した患者(施設利用者)が監視位置に近づくと、そのことが無線受信機7により検出されて呼び出し(以下、これをエリア検知呼出という)が行われる。
【0015】
ナースコール親機1は、無線受信機7からのエリア検知呼出を受けると、スピーカから報知音を出力するとともに、ディスプレイに対して呼び出しに係る患者の氏名、エリア検知呼出が行われた無線受信機7の位置などを表示させることによって、患者が監視位置に近づいたことを報知する。この報知動作の実行中に、看護師がナースコール親機1でオフフック等の応答操作を行うと、報知動作は停止する。
【0016】
制御機2は、ナースコール親機1と廊下灯3との間にナースコール幹線を介して接続されるとともに、無線受信機7とコンピュータネットワークを介して接続される。制御機2は、マットセンサ5からの呼び出し(以下、これをセンサ検知呼出という)をナースコール親機1に中継するとともに、無線受信機7からのエリア検知呼出をナースコール親機1に中継する。
【0017】
廊下灯3は、各病室の出入口付近外部に設置される。この廊下灯3は、マットセンサ5から壁埋込形子機4を介して送信されたセンサ検知呼出の呼出信号を制御機2に送信する。廊下灯3は、表示装置を備え、病室内の患者名が表示されるとともに、マットセンサ5からセンサ検知呼出が行われると、呼び出しが行われたことが表示されるようになっている。呼び出しが行われたことの表示は、LEDの点灯または点滅により行うようにしてよい。
【0018】
壁埋込形子機4は、病室内の各ベッド近傍の壁に埋め込み設置される。この壁埋込形子機4は、マットセンサ5を接続するための接続端子を備えている。壁埋込形子機4は、マットセンサ5から送信されたセンサ検知呼出の呼出信号を廊下灯3に送信する。なお、壁埋込形子機4には、患者が看護師を呼び出すための呼出ボタンを備えたナースコール子機を接続することも可能である。
【0019】
マットセンサ5は、病室内の各ベッド近傍の床に敷いて使用する。このマットセンサ5は重量センサを備えており、マット上に患者が乗ったことを重量センサで検知したときに、センサ検知呼出の呼出信号を出力する。すなわち、患者がベッドから降りてマットセンサ5に乗ると、マットセンサ5は、患者のベッドからの移動を検出し、当該患者を特定可能な第2識別情報(例えば、センサID)を含むセンサ検知呼出の呼出信号を出力することにより、壁埋込形子機4、廊下灯3および制御機2を介して、センサIDをナースコール親機1に通知する。ナースコール親機1は、センサIDと患者との関連付け情報を記憶しており、センサIDから対応する患者を特定することが可能である。
【0020】
なお、マットセンサ5を病室内の各ベッドのマットレスの上に敷いて使用するようにしてもよい。この場合、マットセンサ5は、マット上に乗っている患者がマットから降りたことを重量センサで検知したときに、センサIDを含むセンサ検知呼出の呼出信号を出力する。
【0021】
無線発信機6は、徘徊の検出対象とされる患者が携帯する。無線発信機6としては、例えばRFID(Radio Frequency Identifier)タグ等が用いられる。無線発信機6は、当該無線発信機6を保持している患者を特定可能な第1識別情報(例えば、患者ID)を記憶しており、この患者IDを所定の周期で繰り返し送信する。ナースコール親機1は、子機IDと患者との関連付け情報を記憶しており、子機IDから対応する患者を特定することが可能である。なお、無線発信機6は、患者IDの代わりにタグIDを記憶するようにしてもよい。この場合、ナースコール親機1はタグIDと患者との関連付け情報を記憶する。
【0022】
無線受信機7は、患者の移動が許容されている許容エリアと許容されていない外部エリア(徘徊とみなすエリア)との境界地点に当たる監視位置(例えば、エレベータホール、階段、玄関等)に設置されている。無線受信機7は、自身の無線通信エリア内に進入した無線発信機6から発信される患者IDを受信した場合に、自身の識別情報(受信機ID)と、受信した患者IDとを含むエリア検知呼出の呼出信号を制御機2に送信することにより、当該制御機2を介して、患者IDおよび受信機IDをナースコール親機1に通知する。
【0023】
図2は、ナースコール親機1、マットセンサ5および無線受信機7の配置例を示す図である。この
図2は、ある病院内の一部のレイアウトを模式的に示したものである。
図2に示すように、病院内には、患者の移動が許容されている許容エリア201と、患者の移動が許容されていない外部エリア202とが設定されている。外部エリア202は、患者の移動を徘徊とみなすエリアである。
図2の例において、外部エリア202は、建物の玄関外のエリアである。
【0024】
ナースコール親機1は、許容エリア201の中にあるナースステーションに設置される。マットセンサ5は、許容エリア201の中にある各病室の各ベッド近傍の床に設置される。無線受信機7は、許容エリア201と外部エリア202との境界付近の外部エリア202側の監視位置に設置される。無線発信機6は患者が常に携帯する。患者が
図2に示す位置にいる場合は、無線発信機6から発信される情報が無線受信機7にて受信されず、エリア検知呼出は行われない。
【0025】
これに対し、無線発信機6を携帯している患者が無線受信機7に近づくと、無線発信機6から発信される情報が無線受信機7にて受信され、エリア検知呼出が行われる。
図2に示す配置例の場合、無線受信機7は病室RM1の近くに設置されている。そのため、病室RM1にて入院している患者が病室RM1の中にいるときでも、その患者が携帯している無線発信機6から発信される情報が無線受信機7にて受信されて、エリア検知呼出が行われてしまうことがある。本実施形態では、このような場合のエリア検知呼出に対応してナースコール親機1にて誤った報知動作を行わないようにしている。
【0026】
図3は、そのためにナースコール親機1が有する機能構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、本実施形態のナースコール親機1は、機能構成として、エリア検知呼出受付部11、センサ検知呼出受付部12、一致判定部13、離床設定部14、センサ受信判定部15および報知部16を備えている。また、ナースコール親機1は、記憶媒体として、管理情報記憶部10を備えている。
【0027】
上記各機能ブロック11~16は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11~16は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現される。なお、当該プログラムは、ハードディスクや半導体メモリ等の他の記録媒体に記憶されていてもよい。
【0028】
管理情報記憶部10は、患者に関する情報(以下、患者情報という)と、無線受信機7に関する情報(以下、無線受信機情報という)とを管理情報として記憶している。患者情報は、例えば、徘徊の監視対象とする患者の氏名、年齢、性別、病室の部屋番号、患者が使用しているベッドを識別するベッド番号、患者を識別するための患者ID、患者が使用するマットセンサ5を識別するためのセンサID、患者が使用する無線発信機6を識別するためのタグIDなどの各種情報を含む。また、無線受信機情報は、受信機ID、無線受信機7が設置されている場所を示す監視位置情報などを含む。
【0029】
エリア検知呼出受付部11は、無線発信機6から無線受信機7および制御機2を介して送られてくるエリア検知呼出の呼出信号(第1識別情報である患者IDと、無線受信機7の受信機IDとを含む)を受信することにより、エリア検知呼出を受け付ける。センサ検知呼出受付部12は、マットセンサ5から壁埋込形子機4、廊下灯3および制御機2を介して送られてくるセンサ検知呼出の呼出信号(第2識別情報であるセンサIDを含む)を受信することにより、センサ検知呼出を受け付ける。
【0030】
一致判定部13は、エリア検知呼出受付部11がエリア検知呼出の呼出信号を受信した場合に、当該受信した呼出信号に含まれる患者IDが、管理情報記憶部10にあらかじめ登録されている患者IDと一致するか否かを判定する。エリア検知呼出の呼出信号に含まれる患者IDが、管理情報記憶部10にあらかじめ登録されている患者IDと一致するということは、エリア検知呼出の対象とされた患者が、徘徊の監視対象として登録されている患者であることを意味する。
【0031】
離床設定部14は、センサ検知呼出受付部12がセンサ検知呼出の呼出信号を受信した場合に、患者がベッドから離れて移動していることを示す離床情報を、呼出信号に含まれるセンサIDと対応付けて設定する。なお、センサIDに代えて、センサIDに対応する患者IDを管理情報記憶部10から取得して用いるようにしてよい。
【0032】
離床設定部14は、例えばナースコール親機1において所定の操作が行われたときに、離床情報の設定を解除する。例えば、後述するように報知部16による報知が行われた場合に、それに対する応答操作を看護師が行ったときに、報知部16が報知動作を停止するとともに、離床設定部14が離床情報の設定を解除する。あるいは、報知に対する応答操作が行われたときには離床情報の設定を解除せず、その後、ナースコール親機1または壁埋込形子機4において所定の復旧操作が行われたときに離床情報の設定を解除するようにしてもよい。例えば、徘徊している患者を看護師が発見して、適切な処置を行った後に復旧操作を行ったときに、離床情報の設定を解除するようにすることが可能である。
【0033】
センサ受信判定部15は、エリア検知呼出の呼出信号に含まれる患者IDが管理情報記憶部10にあらかじめ登録されている患者IDと一致すると一致判定部13により判定された場合に、エリア検知呼出受付部11がエリア検知呼出の呼出信号を受信した時点よりも前に、当該呼出信号に含まれる患者IDに対応するセンサIDを含むセンサ検知呼出の呼出信号をセンサ検知呼出受付部12が受信していたか否かを判定する。
【0034】
ここで、患者ID(第1識別情報)に対応するセンサID(第2識別情報)とは、管理情報記憶部10において互いに関連付けて記憶されているものであり、同じ患者に関連した患者IDおよびセンサIDであることを意味する。すなわち、センサ受信判定部15は、ある患者に関するエリア検知呼出をエリア検知呼出受付部11が受け付けたときに、その受付時点よりも前に、同じ患者に関するセンサ検知呼出をセンサ検知呼出受付部12が受け付けていたか否かを判定する。
【0035】
具体的には、センサ受信判定部15は、エリア検知呼出の呼出信号に含まれる患者IDに対応するセンサIDに対応付けて離床情報が離床設定部14により設定されているか否かを判定する。ある患者に関するエリア検知呼出をエリア検知呼出受付部11が受け付けた時点で、その患者に関して離床設定部14により離床情報が既に設定されている場合は、エリア検知呼出の受付時点よりも前に、同じ患者に関するセンサ検知呼出をセンサ検知呼出受付部12が受け付けていたと判定することができる。
【0036】
報知部16は、エリア検知呼出の呼出信号に含まれる患者IDが管理情報記憶部10にあらかじめ登録されている患者IDと一致すると一致判定部13により判定され、かつ、エリア検知呼出の呼出信号を受信する前に、患者IDに対応するセンサIDを含むセンサ検知呼出の呼出信号を受信していたとセンサ受信判定部15により判定された場合に、患者が監視位置に移動したことを知らせるための報知を行う。報知動作の内容は上述した通りである。
【0037】
例えば、病室RM1内の患者がベッドにいる場合は、マットセンサ5によるセンサ検知呼出が行われないため、仮にその患者が携帯する無線発信機6から送信された患者IDが無線受信機7で受信されてエリア検知呼出が行われても、センサ受信判定部15による判定条件を満たさないため、報知部16による報知動作は行われない。
【0038】
これに対し、病室RM1内の患者がベッドから降り、病室RM1から外に出て徘徊を始めた場合は、患者がベッドから降りた時点でマットセンサ5によるセンサ検知呼出が行われ、離床設定部14により離床情報が設定される。その後、そその患者が携帯する無線発信機6から送信された患者IDが無線受信機7で受信されると、エリア検知呼出が行われる。この場合、一致判定部13およびセンサ受信判定部15の両方の判定条件を満たさすため、報知部16による報知動作が行われる。
【0039】
図4および
図5は、上記のように構成したナースコール親機1の動作例を示すフローチャートである。
図4は、センサ検知呼出受付部12がセンサ検知呼出を受け付けた場合に行われる処理の例を示す。
図5は、エリア検知呼出受付部11がエリア検知呼出を受け付けた場合に行われる処理の例を示す。
【0040】
図4において、センサ検知呼出受付部12は、センサ検知呼出の呼出信号を受信したか否かを判定する(ステップS1)。センサ検知呼出受付部12がセンサ検知呼出の呼出信号を受信していない場合は、ステップS1の判定を継続する。そして、センサ検知呼出受付部12がセンサ検知呼出の呼出信号を受信した場合、離床設定部14は、患者がベッドから離れて移動していることを示す離床情報を、呼出信号に含まれるセンサIDと対応付けて設定する(ステップS2)。
【0041】
その後、離床設定部14は、報知部16による報知動作に対する応答操作または所定の復旧操作が行われたか否かを判定する(ステップS3)。応答操作または復旧操作が行われていない場合は、ステップS3の判定を継続する。そして、応答操作または復旧操作が行われたと判定された場合、離床設定部14は、離床情報の設定を解除する。これにより、
図4に示すフローチャートの処理を終了する。
【0042】
図5において、エリア検知呼出受付部11は、エリア検知呼出の呼出信号を受信したか否かを判定する(ステップS11)。エリア検知呼出受付部11がエリア検知呼出の呼出信号を受信していない場合は、ステップS11の判定を継続する。そして、エリア検知呼出受付部11がエリア検知呼出の呼出信号を受信した場合、一致判定部13は、受信した呼出信号に含まれる患者IDが、管理情報記憶部10にあらかじめ登録されている患者IDと一致するか否かを判定する(ステップS12)。
【0043】
患者IDが一致していないと判定された場合、処理はステップS11に戻る。一方、患者IDが一致すると判定された場合、センサ受信判定部15は、その患者IDに対応するセンサIDに対応付けて離床情報が離床設定部14により設定されているか否かを判定する(ステップS13)。すなわち、当該患者IDで示される患者についてエリア検知呼出が行われるよりも前にセンサ検知呼出が行われていたか否かを判定する。
【0044】
同じ患者についてエリア検知呼出が行われるよりも前にセンサ検知呼出が行われていなかった場合、処理はステップS11に戻る。一方、同じ患者についてエリア検知呼出が行われるよりも前にセンサ検知呼出が行われていた場合、報知部16は、エリア検知呼出の報知を行う(ステップS14)。
【0045】
その後、報知部16は、応答操作が行われたか否かを判定する(ステップS15)。応答操作が行われていない場合は、ステップS15の判定を継続する。そして、応答操作が行われた場合、報知部16はエリア検知呼出の報知動作を停止する(ステップS16)。これにより、
図5に示すフローチャートの処理を終了する。
【0046】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、無線発信機6および無線受信機7を備えてエリア検知呼出を行う構成に加えて、マットセンサ5を備えてセンサ検知呼出を行う構成を備え、ナースコール親機1が一の患者についてエリア検知呼出を受けた場合に、それよりも前に、当該一の患者についてセンサ検知呼出を受けていたときにのみ、エリア検知呼出の報知を行うようにしている。
【0047】
このように構成した本実施形態によれば、患者のベッドからの移動がマットセンサ5により検出されずセンサ検知呼出が行われていない場合、つまり患者が監視位置に移動している状況ではない場合には、エリア検知呼出の報知を行わないようにすることができる。これにより、患者が部屋内にいるにもかかわらず、監視位置に移動したとの報知が行われてしまうといった誤報を抑止することができる。
【0048】
なお、上記実施形態では、エリア検知呼出の呼出信号に含まれる患者IDが、管理情報記憶部10にあらかじめ登録されている患者IDと一致するか否かを判定することにより、エリア検知呼出の対象とされた患者が徘徊の監視対象として登録されている患者であるか否かを判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、入院している患者を全て徘徊の監視対象とする場合や、徘徊の監視対象とする患者にのみ無線発信機6を所持させる場合には、一致判定部13による一致判定は省略してもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、徘徊の監視対象とする患者については全て一致判定部13およびセンサ受信判定部15の判定を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、次のようにしてもよい。すなわち、徘徊の監視対象とする患者のうち、エリア検知呼出の誤報が発生する可能性のある病室RM1にて入院している患者の患者IDと、それ以外の患者の患者IDとを識別できる態様で管理情報記憶部10に登録しておく。あるいは、病室RM1にて入院している患者の患者IDのみを管理情報記憶部10に登録しておく。そして、エリア検知呼出の呼出信号を受信したときに、それに含まれる患者IDに基づいて、病室RM1の患者か否かを判定し、病室RM1の患者についてはセンサ受信判定部15の判定を行い、それ以外の患者についてはセンサ受信判定部15の判定を省略する。
【0050】
また、上記実施形態では、センサ装置の一例としてマットセンサ5を用いる構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。施設利用者のベッドからの移動を検出可能なセンサ装置であれば、何れも適用することが可能である。例えば、施設利用者がベッドから降りる位置に赤外線を照射する発光素子と、当該発光素子から照射された赤外線を受光する受光素子とを備えた赤外線センサを用いて、受光素子における赤外線の受光/遮断状況から施設利用者のベッドからの移動を検出するようにしてもよい。また、ベッド近傍を撮影するカメラを設置して、撮影画像を解析することによって施設利用者のベッドからの移動を検出するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、管理装置がナースコール親機1である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、一致判定部13、センサ受信判定部15の構成については制御機2が備える構成としてもよい。この場合、制御機2およびナースコール親機1が管理装置に相当する。
【0052】
また、上記実施形態では、エリア検知呼出の報知のみを行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ナースコール親機1は、センサ検知呼出受付部12がセンサ検知呼出の呼出信号を受信した場合に、施設利用者のベッドからの移動を知らせるための報知を更に行うようにしてもよい。この場合、センサ検知呼出の報知に対して医療従事者が応答操作を行った時点で報知動作を停止するが、その時点で離床情報の設定は解除せず、上記実施形態で説明したように、エリア検知呼出に対して医療従事者が応答操作を行った時点または所定の復旧操作を行った時点で離床情報の設定を解除する。
【0053】
また、上述したようにセンサ検知呼出受付部12がセンサ検知呼出の呼出信号を受信した場合に、ナースコール親機1が施設利用者のベッドからの移動を知らせるための報知を更に行うようにしたときに、報知の対象を異ならせるようにしてもよい。例えば、患者のベッドからの移動を知らせるための報知は医療従事者のみとし、エリア検知呼出の報知は医療従事者だけではなく警備担当者などを含むようにしてもよい。これにより、患者を捜索する人数が増えるので、患者が院外へ徘徊する可能性を低くすることができる。
【0054】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ナースコール親機(管理装置)
2 制御機
5 マットセンサ(センサ装置)
6 無線発信機
7 無線受信機
11 エリア検知呼出受付部
12 センサ検知呼出受付部
13 一致判定部
14 離床設定部
15 センサ受信判定部
16 報知部