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▶ ジーエイチエル スペシャルティ フラワーズ, エルエルシーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】機能的に強化された穀粉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20231018BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020524724
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 US2018042715
(87)【国際公開番号】W WO2019018543
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】62/533,911
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520020122
【氏名又は名称】ジーエイチエル スペシャルティ フラワーズ, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GHL SPECIALTY FLOURS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(72)【発明者】
【氏名】リップスコム ジョン エム
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス オマール アイ
(72)【発明者】
【氏名】ベルジェ チャド シー
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-055048(JP,A)
【文献】特開2001-286265(JP,A)
【文献】特開昭62-143677(JP,A)
【文献】特開平01-071474(JP,A)
【文献】特開昭55-099166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0247669(US,A1)
【文献】特開平09-191831(JP,A)
【文献】特公昭33-006813(JP,B1)
【文献】特開2003-334011(JP,A)
【文献】米国特許第04478857(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00- 7/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルスクリュー押出機を用いて13789.51キロパスカルを超える押出圧力で10%~15%の含水量を有する穀物前駆体を押し出し、4~10%の最終含水量を有する機能的に強化された穀粉を生み出すことにより製造される機能的に強化された穀粉の製造方法であって、
押出工程は、シングルスクリュー押出機を用いて行われ、シングルスクリュー押出機による押出物の変化する圧力から発生する熱を超える熱の入力無しで行われ、
押出後の水分低減工程無しで最終含水量が達成され、
機能的に強化された穀粉は、冷水溶解性を有し、かつ吸水性を有し、かつ吸油性を有する、機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項2】
前記穀物前駆体は、全粒穀物、製粉された穀物前駆体、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項3】
前記穀物前駆体は、単一の穀物または2つ以上の穀物の混合物を含む、請求項1に記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項4】
前記穀物前駆体は、全粒穀物、製粉された穀物、またはそれらの混合物からなる、請求項1に記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項5】
前記穀物前駆体は、単一の穀物または2つ以上の穀物の混合物からなる、請求項1に記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項6】
機能的に強化された穀粉は、食品の成分を構成し、食品中の微生物活性および真菌活性のいずれかを阻害する、請求項1に記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項7】
押出圧力は、20684.27キロパスカルより大きい、請求項1に記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項8】
押出圧力は、34473.79キロパスカルより大きい、請求項1に記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項9】
押出圧力は、13789.51キロパスカルから137895.15キロパスカルである、請求項1に記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項10】
押出圧力は、34473.79キロパスカルから103421.36キロパスカルである、請求項1に記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項11】
追加の穀物粒、マメ科植物、果物、野菜、ホエー、タンパク質、ビタミン、ミネラル、または栄養素を穀物前駆体ととも押し出すことをさらに備えた、請求項1に記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項12】
前記機能的に強化された穀粉は、押出後工程において所定の粒度分布に低減される、請求項1に記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項13】
食品に冷水溶解性を提供する際に使用するための、請求項1~12のいずれかに記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項14】
食品の水分吸収性を増加させる際に使用するための、請求項1~12のいずれかに記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項15】
食品の油吸収性を増加させる際に使用するための、請求項1~12のいずれかに記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項16】
食品に風味安定性を提供する際に使用するための、請求項1~12のいずれかに記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項17】
食品の栄養素およびタンパク質の利用可能性/消化性を増加させる際に使用するための、請求項1~12のいずれかに記載の機能的に強化された穀粉の製造方法。
【請求項18】
食品の製造方法であって、請求項1~12のうちいずれかに記載の機能的に強化された穀粉の製造方法に従って製造された機能的に強化された穀粉を食品に組み込み、
前記食品の冷水溶解性、
前記食品の水分吸収性、
前記食品の油吸収性、
前記食品の風味安定性、
当該食品の栄養素の入手可能性、
前記食品中の微生物活性、
前記食品中の菌活性、
前記食品中の栄養素およびタンパク質消化性
からなる群から選択される食品の1つ以上の品質を変更する工程を含む方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
【0002】
本願は、2017年7月18日に出願された米国仮特許出願第62/533,911号優先権を主張し、その各々の全体は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0003】
連邦政府からの資金提供を受けた研究開発の下でなされた発明の権利に関する声明
【0004】
適用されない。
【0005】
発明の分野
【0006】
本発明は、食品科学の分野に関する。より具体的には、本発明は、改良された穀粉、ならびにその製造および使用方法に関する。
【背景技術】
【0007】
発明の背景
【0008】
穀粉(flour)は、何千年もの間、食品製造プロセスの構成要素であり、穀粉は、未加工の穀物を単純に粉砕および製粉して粉末にすることを通じて作られており、その後様々な食品を作製するのに役立てることができる。特に、小麦とトウモロコシには、穀粉の一般的な供給源として世界中で長い利用の歴史がある。
【0009】
しかし、保存庫および風味の安定化に関して穀粉には常に課題があった。穀粉は、消費者に多くの利点をもたらす一方で、望ましくない害虫や、バクテリアや菌などの微生物などにとっての優れた食料源でもあり、追加の予防策を講じなければ、貯蔵された穀粉は人間の消費にとって直ちに台無しになる可能性がある。最新の腐敗予防策には、熱処理、漂白剤、および防腐添加剤などがあり、これらはすべて、貯蔵寿命を延ばすだけでなく、風味の変化をももたらす。
【0010】
穀粉は、典型的には12~14%の水分の範囲で販売されている。水分が14%を超えると、微生物やへの懸念の可能性が急速に高まる。したがって、製品の寿命を延ばすために、含水量の低い穀粉を製造および包装することが非常に望ましい。穀粉中の水分を減少させる歴史的および現代的なプロセスは、穀粉自体の性質に意図しない結果をもたらす。たとえば、穀粉を加熱して含水量を減らし、および/または潜在的な微生物の存在を殺す処理は、穀粉の一部を食物繊維の状態に変換することが多く、この処理は生物学的に利用可能ではなく、穀粉の風味を変える。
【0011】
さらに、現代の食品およびデンプン押出技術は、押出中のデンプンの糊化点を下げるためにツインスクリュー用途に焦点を合わせてきており、ツインスクリュー用途は、押出中に熱を加えて比較的ウェットな処理および比較的低い圧力を利用するものである。このパラメーターの組み合わせでは、水を蒸発させるために、押出後に追加の加熱および乾燥技術が必要である。通常利用されるツインスクリューはまた、非常に長く、材料の処理時間が比較的長くなる。現在の技術のさらなる欠点は、ツインスクリュー押出しの高い水分および高温の環境が、押出物に含まれる様々な成分および栄養素を不要に早期に劣化させることである。この劣化は、とりわけ、穀粉の風味を変化させ、後の食品製造用途のための機能を変化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、強化された機能性を持つ改良された穀粉は、食品科学において非常に望ましいことが理解できる。そのような材料および前記材料の製造方法に対する食品産業のニーズは明らかに満たされていない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
【0014】
本発明は、穀粉の製粉前に、全粒穀物または製粉された穀物を低水分、高圧、および低熱力学で押し出すことにより、現在の穀粉よりも様々な利点を持つ機能穀物が得られるという発明者の発見に基づいており、様々な利点には、冷水デンプン溶解性の改善、望ましくない繊維含有量の減少、含水量の低減、風味を変える化学物質の減少、安定化された比較的均一な栄養素と風味のプロファイル、および付加的な風味を使用する必要性を最小限に抑える全体的な自然な風味プロファイルの強化のうち1つ以上が含まれる。
【0015】
第1の局面では、本発明は、約1000psiを超える押出圧力で約10%~約15%の含水量を有する穀物前駆体を押し出し、約4%~約10%の最終含水量を有する機能的に強化された穀粉を生み出すことにより製造される機能的に強化された穀粉であって、押出工程は、押出物の変化する圧力から発生する熱を超える熱の入力無しで行われ、押出後の水分低減工程無しで最終含水量が達成される、機能強化穀粉を提供する。
【0016】
特定の実施形態では、穀物前駆体は全粒である。あるいは、穀物前駆体は製粉されたもの、または全粒と製粉された穀物との混合物である。
【0017】
特定の実施形態では、穀物前駆体は単一の穀物のみよりなっている。あるいは、穀物前駆体は、2つ以上の穀物の混合物である。
【0018】
穀物前駆体は、全粒穀物のみ、製粉された穀物、またはそれらの混合物からなることができ、あるいは、穀物前駆体は、追加の穀物粒、マメ科植物、果物、野菜、ホエー、タンパク質分離物などのタンパク質、ビタミンまたはミネラル、および栄養素を含む追加の成分を含む。
【0019】
高い押出圧力は本発明の特徴であり、本発明により提供される穀粉は、特定の穀粉の実施形態に応じて、約2000psi~約20,000psi、約5000psi~約15,000psi、または約7500psiから約12,500psiで提供される。様々な実施形態では、約2000psiより大きい、約3000psiより大きい、約4000psiより大きい、約5000psiより大きい、または約10,000psiより大きい押出圧力が利用される。
【0020】
機能的に強化された穀粉の特定の実施形態は、押出後工程において所定の粒度分布に低減される。
【0021】
本発明の好ましい穀粉の実施形態は、シングルスクリュー押出機を使用して押し出される。シングルスクリュー押出機は、本発明にとって重要な低水分、高圧、および低熱力学を達成するのに適した製造環境を提供する。さらに別の態様では、本発明は、次の特色のうちの1つ以上を食品に提供する際に使用するための機能的に強化された穀粉を提供し、この特色とは、食品中の冷水溶解度、食品の吸水率の増加、食品の油吸収性の増加、食品に風味安定性の提供、食品中の栄養素の利用可能性の増加、食品中の微生物活性の低下、および食品中の真菌の活動の減少である。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、機能的に強化された穀粉の製造方法であって、約10%~約15%の含水量を有する穀物前駆体を約1000psiを超える押出圧力で押し出して、約4%~約10%の最終含水量を有する機能的に強化された穀粉を生み出すことを含み、押出工程は、押出物の変化する圧力から発生する熱を超える熱の入力無しで行われ、押出後の水分削減工程無しで最終水分量が達成される、方法を包含する。
【0023】
特定の方法では、穀物前駆体は全粒穀物である。あるいは、穀物前駆体は製粉されたもの、または全粒と製粉された穀物との混合物である。
【0024】
本発明の特定の方法では、穀物前駆体は単一の粒子のみでできている。あるいは、穀物前駆体は、2つ以上の穀物の混合物である。
【0025】
穀物前駆体は、全粒穀物のみ、製粉された穀物、またはそれらの混合物からなることができ、あるいは、穀物前駆体は、追加の穀物粒、マメ科植物、果物、野菜、ホエー、タンパク質分離物などのタンパク質、ビタミンまたはミネラル、および栄養素を含む追加の成分を含む。
【0026】
高い押出圧力は本発明に従う方法の特徴であり、従って穀粉は、特定の穀粉の実施形態に応じて、約2000psi~約20,000psiの範囲、約5000psi~約15,000psiの範囲、または約7500psi~約12,500psiの範囲で提供される。様々な実施形態は、約2000psiより大きい、約3000psiより大きい、約4000psiより大きい、約5000psiより大きい、または約10,000psiより大きい押出圧力を利用する。
【0027】
本発明の特定の方法は、押出後工程において穀粉を所定の粒度分布に減少させる工程を含む。
【0028】
本発明による好ましい方法は、押出工程においてシングルスクリュー押出機を利用する。
【0029】
本発明のさらなる態様は、食品の製造方法に向けられており、この方法は、前記食品の冷水溶解性、前記食品の水分吸収性、前記食品の油吸収性、前記食品の風味安定性、前記食品の栄養素の入手可能性、前記食品中の微生物活性、および前記食品中の真菌活性からなる群から選択される食品の1つ以上の品質を変更するために、本明細書に記載および請求される機能的に強化された穀粉を食品に組み込む工程を含む。
【0030】
本発明はさらに、本明細書に記載および請求される機能的に強化された穀粉と、少なくとも1つの非穀粉食品成分とを含む食品を包含する。
【0031】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、明細書、特許請求の範囲および図面を検討した後に明らかになるであろう。詳細な説明および実施例は、本発明の理解を高めるが、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0032】
本発明の1つ以上の好ましい例示的な実施形態が添付の図面に示されており、同じ参照番号は全体を通して同じ部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態によるモロコシベースの押出穀粉、および続いてモロコシベースの非押出の対照穀粉の試料を摂食後、0~90分の間の時間での第1の試験参加者の血糖値(mg/dl)を示すグラフである。
図2】本発明の一実施形態によるモロコシベースの押出穀粉、および続いてモロコシベースの非押出の対照穀粉の試料を摂食後、0~90分の間の時間での第2の試験参加者の血糖値(mg/dl)を示すグラフである。
図3】本発明の一実施形態によるモロコシベースの押出穀粉、および続いてモロコシベースの非押出の対照穀粉の試料を摂食後、0~90分の間の時間での第3の試験参加者の血糖値(mg/dl)を示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態によるモロコシベースの押出穀粉、および続いてモロコシベースの非押出の対照穀粉の試料を摂食後、0~90分の間の時間での第4の試験参加者の血糖値(mg/dl)を示すグラフである。
図5】本発明の一実施形態によるモロコシベースの押出穀粉、および続いてモロコシベースの非押出の対照穀粉の試料を摂食後、0~180分の間の時間での第1および第2の試験参加者の血漿中の利用可能なL-プロリン濃度(mg/dl)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
I.一般に
【0035】
本発明の材料および方法を説明する前に、本発明は、説明する特定の方法論、プロトコル、材料、および試薬に限定されず、これらは変化する可能性があることが理解される。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0036】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照を含むことに留意しなければならない。同様に、用語「a」(または「an」)、「1つ以上」、および「少なくとも1つ」は、本明細書で互換的に使用することができる。 また、「備える」、「含む」、および「持つ」という用語は、同じ意味で使用できることに注意されたい。
【0037】
別に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料をここで説明する。本明細書で具体的に言及されているすべての刊行物および特許は、本発明に関連して使用される可能性のある刊行物で報告されている成分、試薬、化学物質、デバイス、製造、統計分析および方法論の説明および開示を含むあらゆる目的のために参照により組み込まれている。本明細書で引用されるすべての参考文献は、当業者のレベルを示すものと解釈されるべきである。 本明細書のいかなるものも、本発明が先行発明のおかげでそのような開示に先行する権利を与えられないという承認として解釈されるべきではない。
【0038】
II.発明
【0039】
本発明は、全粒穀物または製粉された穀物を低水分、高圧、および低熱力学で押し出すことによって、現在の穀粉に比べて様々な利点を有する機能穀粉を提供できるという発明者の発見に基づいており、この様々な利点には、冷水デンプン溶解性の改善、望ましくない繊維含有量の減少、含水量の低減、風味を変える化学物質の減少、安定化した栄養素、比較的均一な風味添加物、風味の向上、消化性の改善、細菌および真菌の活性の低下のうち1つ以上が含まれる。
【0040】
本明細書ではいずれの操作モードも採用せず、本発明は、高い押出圧力、特にシングル押出機で達成されるものの下で、水およびデンプンの位相特性を利用する。本発明の方法の下で観察される変換された圧力降下は、穀物前駆体に含まれる水の一部を蒸発させるのに十分なエネルギーを提供し、製粉の押出工程中に追加の加熱要素の必要性を排除する。圧力変換では最小限の熱が放出されるが、その熱はプロセス中の寿命が短く、含水量を減らすことにより、押出機のダイで蒸発した水によって膨張した穀物前駆体に含まれるデンプンをほぼ瞬時に固化させることができる。穀物前駆体としてのこの高圧押出技術は、穀粉製造方法論への改善されたアプローチを提供する。通常使用されるツインスクリュー押出機に対して、シングルスクリュー押出機で本明細書に記載の本発明の方法を実施することにより、糊化が起こる時間の長さが制限され、押し出される材料への悪影響が最小限に抑えられる。実際、食品製造に使用される典型的な押出装置は、本発明により利用される高圧、低温または低水分活性で動作していない。本明細書に記載されている製造条件は、現在の食品製造装置の通常の期待または適用範囲外である。
【0041】
本発明の方法は、単一の穀物を前駆体穀物として利用してもよいが、本発明の特定の実施形態は、様々な他の食品要素と典型的には脱水状態にある穀物との押出前の混合を含む方法によって提供される機能穀粉を包含し、機能するように後で設計された製品を機能強化するカスタマイズ可能でユニークに設計された穀粉を生産する。追加の食品要素には、他の穀物、豆類、果物、野菜、ホエー、タンパク質分離物などのタンパク質、ビタミンまたはミネラル、および栄養素が含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
完成した製粉された穀粉の前駆体として高圧、低温、低水分の押出を利用することの結果として得られる利点は、膨張した冷水に可溶な構造により、食物を作る化学物質だけでなく、消費時の消費者の消化液および酵素に対しても栄養素の利用性が増加することである。さらに穀粉は、追加の乾燥プロセスまたは水分除去を使用しない低水分活性のため、望ましくない防腐剤や熱を加えることなく保存期間が長いという特徴がある。
【0043】
全体として、本発明による機能的に強化された穀粉は、その穀粉を組み込んだ食品に対し、含水量の低減、製品の安定性および貯蔵寿命の向上、冷水吸収性および溶解性の改善、繊維の生成による栄養損失の減少、微生物および真菌の増殖の懸念の軽減、安定した穀粉の形で、様々な他の形の特殊食品成分とのほぼ均一な混合物、ユニークな特殊穀粉の作成、風味制御と安定性の強化、複数の成分の均一なブレンドの分散の強化、および人間および動物の消費のための消化率の強化という利点のうち1つ以上を付与する。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、機能強化穀粉は、デンプン含有材料、好ましくはデンプン含有混合物の押出により最初に形成されてもよく、本発明に従う機能強化穀粉の製造方法を使用して、ペレット重量で約10%~約15%の含水量の押し出された穀物前駆体が製造される。
【0045】
以下でより詳細に議論されるように、本発明に従って作られた穀粉は、約10%~15%という機能強化穀粉前駆体中の含水量を示し、押出物の圧力変化から発生する熱を超える熱入力の追加無しに、約1000psiを超える押出圧力で押出成形を受ける。穀物前駆体の押出後の機能強化穀粉の最終含水量は、押出後水導入または押出後水低減製造ステップの追加なしで達成される。
【0046】
デンプン含有材料は、好ましくは、たとえばトウモロコシおよび小麦モロコシのうち1つ以上のような、1つ以上の穀物から構成されるデンプン含有混合物であり、全粒の形態、製粉、脱皮、または脱穀された形態、除菌された形態、および/または、粉砕または挽かれたもの、またはそれらの混合物であり得る。本発明の別の実施形態において、機能強化穀粉は、たとえばトウモロコシ、小麦および/またはモロコシ、および追加の穀物のうち1つ以上のような、1つ以上の穀物と、マメ科植物すなわちサツマイモ、沖縄サツマイモ、ヤマノイモまたはパープルヤムと、フルーツと、野菜と、ホエーと、タンパク質と、ビタミンと、ミネラルと、および/または栄養素とからなる、デンプン含有混合物である。
【0047】
デンプン含有材料またはデンプン含有混合物は、好ましくは、シングルスクリュー押出機、好ましくは50馬力または100馬力のシングルスクリュー押出機から押し出され、12秒以下、好ましくは4~11秒、より好ましくは5~10秒の滞留時間または調理時間で押し出され、1平方インチあたり少なくとも1000ポンドの押出機圧力および/または押出機ダイ圧力で押し出され、約125℃以上の押出機温度で押し出される。押出機のメインスクリューは、2つのナイフの刃で約35rpmで回転するオーガで、3000rpmの速度で回転することが好ましい。押出機の能力は、およそ1時間当たり約270ポンドから1時間当たり280ポンドの間であり、バッチサイズは約50ポンドである。1つの好ましい方法および混合物では、押出機は、好ましくは、1平方インチ当たり約2,000ポンドを超える押出機ダイ圧力、1平方インチ当たり約3,000ポンドを超える押出機ダイ圧力、1平方インチ当たり約4,000ポンドを超える押出機ダイ圧力、1平方インチ当たり約5,000ポンドを超える押出機ダイ圧力、および/または1平方インチ当たり約10,000ポンドを超える押出機ダイ圧力を有する。1つの好ましい方法および混合物では、押出機は、好ましくは、1平方インチ当たり約2,000ポンドを超え1平方インチ当たり約20,000ポンドまでの押出機ダイ圧力を有する。別の好ましい方法および混合物では、押出機は、好ましくは、1平方インチ当たり約5,000ポンドを超え1平方インチ当たり約150,000ポンドまでの押出機ダイ圧力を有する。1つの好ましい方法および混合物では、押出機は、好ましくは、1平方インチ当たり約7,500ポンドを超え1平方インチ当たり約12,500ポンドまでの押出機ダイ圧力を有する。
【0048】
本発明による機能強化穀粉製品の製造方法の一実施形態によれば、押出に続いて、得られた押出物が製粉されてもよい。本発明の製造方法はそのように限定されないが、一実施形態では、得られる機能強化穀粉製品の形成中に押出物の粉砕(crushing)よりも寸断(shredding)を強調するために、押出物はローラーミルで製粉される。ローラーミラーの使用はまた、熱および/または運動エネルギーなどの外部エネルギーの押出物への追加を制限する可能性があり、これは押出物中のデンプン分子を変性する望ましくない効果をもたらす可能性がある。本発明の一実施形態において、押出物は、食品の製造において、得られる機能強化穀粉の使用によく適したサイズに製粉され、その食品中において機能強化穀粉は一成分である。製粉後、得られる機能強化穀粉は、60メッシュから100メッシュの間、より好ましくは約80メッシュの平均粒子サイズを有してもよい。しかしながら、機能強化穀粉の粒子サイズはそのように限定されず、本発明の範囲内で、また特に、そのような代替の穀粉の粒子サイズの恩恵を受ける食品での使用のために、代替の粒子サイズが十分に考慮されることを理解すべきである。
【0049】
1つの好ましい混合物調合では、デンプンを含む混合物は、少なくとも80%の全粒の、脱皮された、または脱穀されたモロコシで構成されており、20%ものサツマイモで構成することができ、混合物は混合物重量で15%以下、好ましくは12%以下の含水量を有する。1つの好ましいモロコシベースの混合物調合では、デンプン含有混合物は、全粒の、脱皮された、または脱穀されたモロコシ、好ましくは白色モロコシで実質的に完全に構成されており、混合物は混合物重量で15%以下、好ましくは14%以下、より好ましくは12%以下の含水量を有する。押出機の運転中、押出機に追加の水または水分を追加しないことが好ましい。そのような好ましいモロコシベースの混合物調合の1つでは、デンプン含有混合物は、全粒の、脱皮された、または脱穀されたモロコシ、好ましくは白色モロコシで実質的に完全に構成されており、混合物は混合物重量で15%以下、好ましくは13%以下より好ましくは11%以下の含水量を有し、押出機の操作前または操作中に、混合物に水は加えられない。
【0050】
穀粉が食品の形成の際の一成分として利用される場合、機能強化穀粉が形成される押し出しは、好ましくは流動体の吸収を提供する。流動体の吸収は、好ましくは、しかしこれに限定されないが、対照となる非押出成形穀粉と比較した場合に、吸水量の増加、吸油量の増加、および/または冷水吸収量の増加を含む。機能強化穀粉を含む食品の製造方法がさらに提供され、食品の1つ以上の品質を変更する。変更される品質は、非押出で形成された機能強化穀粉で形成された対照の食品と比較して、吸水量の増加、吸油量の増加、冷水吸収量の増加、食品の風味安定性の改善、食品中の栄養の利用可能性の改善、食品中の微生物活性の阻害、食品中の真菌活性の阻害、および/または、食品中の栄養素および/またはタンパク質消化性の改善である。機能強化穀粉を含む食品の製造方法の一実施形態では、少なくとも1つの非穀粉食品成分が、本発明のように押し出し成形された機能強化穀粉と組み合わされ、得られる食品は、栄養素およびタンパク質の消化性が強化されることで特徴付けられる。
【0051】
押出で形成された機能強化穀粉は、好ましくは、穀粉が食品の形成における一成分として利用される場合に冷水溶解性を提供する。穀粉は、押出成形中にバインダーが形成される元となる混合物中のデンプンのタイプの糊化温度より低い温度で水溶性であるという冷水可溶性のバインダーを含んでもよい。好ましい方法および実施形態において、機能強化粉中に形成される水溶性のバインダーであって、押出中に混合物中のデンプンから形成される水溶性バインダーは、好ましくは、摂氏60度または華氏140度未満の温度で水溶性である冷水溶解性のバインダーである。1つの好ましい方法および実施形態では、機能強化穀粉中に形成される水溶性のバインダーであって、押出中に混合物中のデンプンから形成される水溶性バインダーは、モロコシデンプンの糊化温度未満の温度で水溶性である冷水溶解性のバインダーであることが好ましく、摂氏60度または華氏140度未満の温度で水溶性であることが好ましい。
【0052】
本発明は、共有された米国出願第13/842534号、米国出願第13/868073号、米国出願第13/868084号、米国出願第14/426483号、米国出願第14/605045号、米国出願第14/656086号、米国出願第14/656692号、米国出願第14/668975号、および米国出願第15/445977号に開示または別の方法で記載されたものに従って、押出方法および/または装置を採用することができ、デンプン含有混合物調合を使用することができ、および/または結果として得られる押出物を処理することができ、これらの米国出願は、それぞれ米国特許出願公開第20140069344号、第20140069345号、第20140069346号、第20150238931号、第20150145164号、第20150181832号、第20150181834号、および第20150196005号としてそれぞれ公開されており、これらは参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0053】
加えて、本発明の方法は、押出前または押出後処理装置、機械および/またはミルのうちの1つ以上を含む本発明の実施および/または実行に関するものを含む本発明に従って、米国出願第13/842534号、米国出願第13/868073号、米国出願第13/868084号、米国出願第14/426483号、米国出願第14/605045号、米国出願第14/656086号、米国出願第14/656692号、米国出願第14/668975号、および米国出願第15/445977号のうち1つ以上に開示されている押出方法、システム、生産ライン、機器および/または押出機に組み込むことおよび/または使用することが可能であると考えられ、これらの米国出願は、それぞれ米国特許出願公開第20140069344号、第20140069345号、第20140069346号、第20150238931号、第20150145164号、第20150181832号、第20150181834号、第20150196005号、および第20170188540号としてそれぞれ公開されている。
【0054】
III.実施例
【0055】
このセクションでは、発明者は、本発明に関連し、本発明を支持する様々な材料、方法、および結果を説明する。
【0056】
実施例1:押出穀粉の製造
【0057】
実施例1に従って、発明者らは、9インチL.D.浅いリードスタイルのネジおよび固定子と、シングルフロープレートL.D.と、ダイ154穴、0.05インチ穴径とで構成されたAdvantage50シングルスクリュー押出機による押出プロセス後、本発明による穀粉を得るために、以下に記載した重量パーセントの粉砕したモロコシおよびサツマイモを穀物前駆体として使用することで、4つの製造試験を実施した。各試験の押出機の操作パラメーターは、以下の表1のそれぞれの列に記載されており、押出機のメインスクリュー速度、オーガスピード、ナイフの刃の数、およびバッチサイズが4つの試験全てにおいて一定にされている一方、押出機のダイ圧およびキャパシティが示されているように変化している。
【0058】
【数1】
【0059】
実施例2:高圧で押し出された穀粉に対する血糖値の応答
【0060】
ここで、実施例3に目を向けると、ボディマス指数が18.5~35である21~50歳の一般的に健康な男性のグループから4人の試験参加者が選択された。一晩の断食の後、各参加者はカリフォルニア大学デービス校キャンパスのレイグル人間栄養研究所に到着した。カテーテルを腕の静脈に配置し、血液を採取してベースラインを確立した(時間=0)。試験参加者に、各試験参加者の代謝体サイズに標準化された0.5カップの高圧押出モロコシベースの粉を与え、この高圧押出モロコシベースの粉は、表1で識別され、実施例1で上述されたように、本発明の一実施形態に従って製造されたものである。血糖値は、試験参加者ごとにmg/dlで記録され、摂食後0分から90分の間で15分ごとに記録され、その結果は表2の「押出穀粉」の列の下に示されている。1週間後、同じプロトコルで、同じ4人の試験参加者に、「押出穀粉」と同じ成分を含むが従来の非押出方法に従って製造された0.5カップの対照粉も与えた。血糖値は、試験参加者ごとにmg/dlで記録され、摂食後0分から90分の間で15分ごとに記録され、その結果は表2の「対照穀粉」の列の下に示されている。
【0061】
【数2】
【0062】
ここで、図1~4を参照して、押出穀粉および対照穀粉のそれぞれから生じた各試験参加者の血糖値の結果を比較する。図1のグラフ10に示されるように、線12で識別される押出穀粉は、90分以上のすべての記録間隔で、線14で識別される対照穀粉と比較して高い血糖値をもたらし、摂食後約15分で最大の相対的な増加をもたらした。図2のグラフ16では、線18で識別される押出穀粉は、15~90分のすべての記録間隔で、線20で識別される対照穀粉と比較して試験参加者2の高い血糖値をもたらし、摂食後30~45分で最大の相対的な増加をもたらした。図3のグラフ22に示されるように、線24で識別される押出穀粉は、0~45分の間のすべての記録間隔で、線26で識別される対照穀粉と比較して試験参加者3の高い血糖値をもたらし、摂食後15~30分で最大の相対的な増加をもたらした。最後に、図4のグラフ28に示されるように、線30で識別される押出穀粉は、15~60分の間のすべての記録間隔で、線32で識別される対照穀粉と比較して試験参加者4の高い血糖値をもたらし、摂食後30~45分で最大の相対的な増加をもたらした。要するに、表2および図1~4は、本発明の一実施形態による押出穀粉の摂食により、非押出である対照穀粉と比較して、摂食後約0~60分の間、各試験参加者に対して比較的高い初期の血糖測定値を一般的にもたらすことを示している。これは、相対的な血糖値レベル中の最初のスパイクが、平均して、摂食後約60~90分の間、非押出である対照穀粉で示されるものとほぼ等しい血糖値のレベルに戻ることを示している。つまり、表2および図1~4に示されている結果は、対照穀粉と比較して、本発明の一実施形態による押出穀粉を接触した場合に、試験参加者の血液へより迅速にグルコースが取り込まれることを示している。発明者らは、高圧押出プロセスから生じるモロコシ材料の膨張したおよび/または破壊された構造が、グルコースおよび他の大きな分子の両方の血液中への取り込みを増加させるのかもしれないと考えている。高圧押出処理は、そのような分子を急速な酵素相互作用のためにますます利用可能にするだろう。その結果、押出穀粉でのグルコース摂取の実験での顕著な急速な増加は、タンパク質消化性を含む高分子などの押出穀粉の追加成分のより迅速な摂取と相関する。
【0063】
さらに、表2に示すように、グルコースの血中取り込みの顕著な増加は、運動などの身体活動の長期化によりグリコーゲンレベルが低下した個人のグリコーゲンレベルを迅速に補充するのに有益に適用されてもよい。すなわち、表1に特定され、実施例1で上述された本発明の一実施形態に従って製造された、高圧押出されたモロコシベースの穀粉は、運動後の個人の血糖値を上昇させ、結果としてグリコーゲン濃度を上昇させるための栄養補助食品として利用されてもよい。さらに、そのような高圧押出されたモロコシベースの穀粉は、タンパク質を含む追加の高分子の迅速な取り込みなどの追加の利点も提供し得る。
【0064】
表2に記録された血糖測定値に加えて、4人の試験参加者のそれぞれについて、摂食後0分から90分の間で15分ごとに血液サンプルが収集され、包括的な代謝試験パネルの対象とした。この試験には、Na(mEq/L)、K(mEq/L)、Cl(mEq/L)、CO2(mEq/L)、バン(mg/dL)、クレアチニン(mg/dL)、GFR、Ca(mg/dL)、タンパク質(g/dL)、アルブミン(g/dL)、アルカリフォスファターゼ(U/L)、ast(U/L)、総ビリルビン(mg/dL)、およびatl(U/L)の測定値が含まれる。結果は、以下に示すように各試験参加者について個別の表に示されており、「押出穀粉」と「対照穀粉」とを比較しており、従来の方法で製造された対照穀粉と比較して、本発明の一実施形態に従って製造された高圧押出モロコシベースの穀粉を摂食した試験参加者の血液サンプル中の栄養濃度の顕著な増加を示している。
【0065】
【数3】
【0066】
【数4】
【0067】
【数5】
【0068】
【数6】
【0069】
【数7】
【0070】
【数8】
【0071】
【数9】
【0072】
実施例3:高圧押出穀粉からのタンパク質利用率の向上
【0073】
上記の表3~6に示すように、包括的な代謝スクリーニングには、特に、摂食後0分から90分の間で15分ごとに収集された各トレイル参加者の血液中の総タンパク質(g/dL)の測定が含まれていた。この総タンパク質という一般的な測定値に加えて、2人の試験参加者の血液サンプルに対しては、上記の実施例2で概説した試料試験プロトコルを行った後、さらに試験を行った。つまり、実施例3では、ボディマス指数が18.5~35である21~50歳の一般的に健康な男性のグループから2人の試験参加者が選択された。一晩の断食の後、各参加者はカリフォルニア大学デービス校キャンパスのレイグル人間栄養研究所に到着した。カテーテルを腕の静脈に配置し、血液を採取してベースラインを確立した(時間=0)。試験参加者に、各試験参加者の代謝体サイズに標準化された0.5カップの高圧押出モロコシベースの粉を与え、この高圧押出モロコシベースの粉は、表1で識別され、実施例1で上述されたように、本発明の一実施形態に従って製造されたものである。血液サンプルは、摂食後0分~180分の間で30分ごとに試験参加者から収集され、試験参加者の血漿中の次のアミノ酸の利用可能濃度nMol/mLの試験が収集され、記録された。アミノ酸は、タウリン、L-アスパラギン酸、L-トレオニン、L-セリン、L-アスパラギン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、グリシン、L-アラニン、L-シトルリン、L-a-アミノ酪酸、L-バリン、L-システイン、L-メチオニン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-オルニチン、L-リジン、1-メチル-L-ヒスチジン、L-ヒスチジン、トリプトファン、3-メチル-L-ヒスチジン、L-アルギニン、およびプロリンである。結果は、表7の「押出穀粉」の列の下に示されている。1週間後、同じ試験参加者に、同じ手順で、「押出穀粉」と同じ成分を含むが、従来の非押出し法に従って製造された0.5カップの対照穀粉を与えた。摂食後0分から180分の間で試験参加者から血液サンプルを30分ごとに収集し、血漿中のアミノ酸濃度、すなわちnMol/mlでの利用可能性の試験を収集し記録し、表7の「対照穀粉」の列の下にその結果を示した。
【0074】
【数10】
【0075】
【数11】
【0076】
【数12】
【0077】
【数13】
【0078】
【数14】
【0079】
【数15】
【0080】
【数16】
【0081】
【数17】
【0082】
表7のデータに見られるように、モロコシ中の最大のアミノ酸成分であるL-グルタミン酸によって、試験期間中に血漿可用性が顕著に増加し、それにより消化と腸吸収が両方の試験参加者で起こっていることを確認した。これらのアミノ酸血漿可用性試験に共通する特徴は、対照穀粉と比較して、本発明の一実施形態の押出小麦粉を供給した後は、0~30分の間にわたる平均可用性率が大きいことを示している。0~30分の間にわたる可用性の平均値の増加または正の勾配は、血中へのアミノ酸の吸収が進行していることを示している。
【0083】
また、表7に示すように、押出穀粉の場合のアミノ酸の血漿可用性の減少は、対照穀粉よりも大きい。減少または負の勾配は、これらのアミノ酸の細胞取り込みに影響を与えるシグナル伝達メカニズムを示していると考えられる。つまり、押出穀粉の摂取に起因して生じる容易に利用可能な血液中のアミノ酸は、細胞に急速に吸収され、それにより対応するアミノ酸の血漿利用性がより急速に減少する。
【0084】
この発生はさらに図5に示されている。図5の代表的なチャート34は、2人の試験参加者に押出穀粉と対照穀粉との両方を与えた後のL-プロリンの血漿利用可能性を示している。図5のチャート34に示されるように、線36および38で識別される押出穀粉は、0~30分の時間にわたってより急な負の勾配を示しており、対照穀粉と比較した場合に、時間0での当初の比較的高い測定値にも関わらず、それぞれの試験参加者の血漿中のL-プロリンの可用性が減少していることを示している。対照的に、線40、42で識別される対照穀粉は、0から30分の比較的緩やかな負の勾配を示しており、それぞれの試験参加者の血漿中のL-プロリンの可用性が低下していることを示しているが、押出穀粉と比較すると速度が遅くなっている。つまり、押出穀粉の摂取から生じる容易に利用可能な血漿中のL-プロリンは、細胞によってより急速に吸収され、それにより、対応するアミノ酸の血漿利用率のより急速な低下をもたらすのであろう。
【0085】
本発明の他の実施形態および使用は、本明細書および本明細書に開示された本発明の実施からの考察から当業者には明らかであろう。すべての刊行物の引用、および米国/外国の特許および特許出願を含む、何らかの理由でここに引用されたすべての参考文献は、参照により本明細書に明確かつ完全に組み込まれる。本発明は、本明細書に例示および記載される特定の材料、方法、配合、操作/アッセイ条件などに限定されず、添付の特許請求の範囲内にあるそれらの修正された形態を包含することが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5