(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】鍼灸整骨治療支援装置及び鍼灸整骨治療支援システム並びに鍼灸整骨治療支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20231018BHJP
G16H 20/30 20180101ALI20231018BHJP
【FI】
G16H10/60
G16H20/30
(21)【出願番号】P 2021215067
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2022-03-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522002191
【氏名又は名称】YOJYOnet株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和憲
【合議体】
【審判長】山澤 宏
【審判官】中野 裕二
【審判官】富澤 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-056711(JP,A)
【文献】特開2019-025244(JP,A)
【文献】特開2006-061256(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0163872(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍼灸整骨治療の対象となる複数の症状と、各症状に対する疾患とが対応付けて記憶されている疾患情報記憶部と、
鍼灸整骨治療の対象となる複数の疾患と、各疾患に対する東洋医学的検査の項目を含む検査情報及び西洋医学的検査の項目を含む検査情報とが対応付けて記憶されている検査情報記憶部と、
患者の症状
と、該患者の体質、生活習慣、病歴を含む情報である背景情報とを含む患者情報を取得する患者情報取得部と、
前記患者情報取得部が取得した前記患者情報に含まれる症状に対応する複数の疾患を前記疾患情報記憶部から取得し、候補疾患として表示画面に表示する候補疾患提示部と、
前記候補疾患提示部によって前記表示画面に表示された複数の候補疾患の中から1又は複数の候補疾患を予測疾患として選択させるための予測疾患選択部と、
前記
予測疾患選択部により選択された1又は複数の予測疾患に対応する検査情報を前記検査情報記憶部から取得し、該検査情報に含まれる東洋医学的検査の項目、又は/及び西洋医学的検査の項目を出力する検査情報出力部と、
前記検査情報出力部が出力した東洋医学的検査の項目、又は/及び西洋医学的検査の項目に従い前記患者に実施された検査の結果の入力を受け付ける検査結果入力部と、
前記検査結果入力部に入力された検査の結果を取得する検査結果取得部と、
前記検査結果取得部が取得した検査の結果
と、前記患者の前記背景情報とに基づき、前記1又は複数の予測疾患
のそれぞれに該予測疾患が前記患者の疾患である可能性の高さを表す指標である信頼度を付与して前記表示画面に表示する信頼度付与部と
を備え、
前記東洋医学的検査の項目、又は/及び前記西洋医学的検査の項目に従い前記患者に実施される検査が、前記予測疾患に対応する複数の症状について、前記患者に該当する症状であるか否かを調べるための検査であり、
前記信頼度付与部が、
前記検査の結果に基づき前記患者に該当する症状の数を求め、該数が多い予測疾患ほど、高い信頼度を付与することを特徴とする鍼灸整骨治療支援装置。
【請求項2】
前記予測疾患選択部によって複数の予測疾患が選択されたとき、
前記信頼度付与部が、前記信頼度として各予測疾患に順位を付与することを特徴とする請求項1に記載の鍼灸整骨治療支援装置。
【請求項3】
複数の患者の識別情報と、各患者の背景情報とが対応付けて記憶されている患者情報記憶部を備え、
前記患者情報取得部が、前記患者情報記憶部から患者背景情報を取得するものである、請求項1又は2に記載の鍼灸整骨治療支援装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の鍼灸整骨治療支援装置において、
前記信頼度付与部により前記信頼度が付与された予測疾患を出力する予測疾患出力部をさらに備えることを特徴とする鍼灸整骨治療支援装置。
【請求項5】
鍼灸整骨治療の対象となる複数の症状と、各症状に対する施術箇所とが対応付けて記憶されている施術箇所情報記憶部と、
鍼灸整骨治療の複数の施術箇所と、各施術箇所に対する東洋医学的検査の項目を含む検査情報及び西洋医学的検査の項目を含む検査情報とが対応付けて検査情報が記憶されている検査情報記憶部と、
患者の症状
と、該患者の体質、生活習慣、病歴を含む情報である背景情報とを含む患者情報を取得する患者情報取得部と、
前記患者情報取得部が取得した前記患者情報に含まれる症状に対応する施術箇所を前記施術箇所情報記憶部から取得し、候補施術箇所として表示画面に表示する候補施術箇所提示部と、
前記候補施術箇所提示部によって前記表示画面に表示された複数の候補施術箇所の中から1又は複数の施術箇所を予測施術箇所として選択させるための予測施術箇所選択部と、
前記
予測施術箇所選択部により選択された1又は複数の予測施術箇所に対応する検査情報を前記検査情報記憶部から取得し、該検査情報に含まれる東洋医学的検査の項目、又は/及び西洋医学的検査の項目を出力する検査情報出力部と、
前記検査情報出力部が出力した東洋医学的検査の項目、又は/及び西洋医学的検査の項目に従い前記患者に実施された検査の結果の入力を受け付ける検査結果入力部と、
前記検査結果入力部に入力された検査の結果を取得する検査結果取得部と、
前記検査結果取得部が取得した検査の結果
と、前記患者の前記背景情報とに基づき、前記1又は複数の予測施術箇所
のそれぞれに該予測施術箇所が、前記患者の疾患に対応する施術箇所である可能性の高さを表す指標である信頼度を付与する信頼度付与部と
を備え、
前記東洋医学的検査の項目、又は/及び前記西洋医学的検査の項目に従い前記患者に実施される検査が、前記予測施術箇所に対応する複数の症状について、前記患者に該当する症状であるか否かを調べるための検査であり、
前記信頼度付与部が、
前記検査の結果に基づき前記患者に該当する症状の数を求め、該数が多い予測施術箇所ほど、高い信頼度を付与することを特徴とする鍼灸整骨治療支援装置。
【請求項6】
請求項1に記載の鍼灸整骨治療院支援装置において、さらに、
鍼灸整骨治療の対象となる複数の疾患と、各疾患に対する複数の施術箇所とが対応付けて記憶されている施術箇所情報記憶部と、
前記信頼度が付与された予測疾患の中から前記患者の疾患を取得する患者疾患情報取得部と、
前記患者疾患情報取得部が取得した前記患者の疾患に対応する複数の施術箇所を前記施術箇所情報記憶部から取得する施術箇所情報取得部と
、
を備えることを特徴とする鍼灸整骨治療支援装置。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の鍼灸整骨治療支援装置と、該鍼灸整骨治療支援装置とインターネットを介して接続された、鍼灸整骨治療を受ける患者が使用する患者端末とを有する鍼灸整骨治療支援システムであって、
前記鍼灸整骨治療支援装置が、
前記患者端末からの要求に応じて、患者情報入力画面のデータを前記患者端末に送信して、該患者端末の表示画面に該患者情報入力画面を表示させる患者情報入力画面提供部を備え、
前記患者情報取得部が、前記患者情報入力画面上で入力された患者情報を前記患者端末から取得する、鍼灸整骨治療支援システム。
【請求項8】
鍼灸整骨治療支援プログラムであって、コンピュータを、
患者の症状
と、該患者の体質、生活習慣、病歴を含む情報である背景情報とを含む患者情報を取得する患者情報取得部と、
前記患者情報取得部が取得した前記患者情報に含まれる症状に対応する複数の疾患を、鍼灸整骨治療の対象となる複数の症状と、各症状に対する疾患とが対応付けて記憶されている疾患情報記憶部から取得し、候補疾患として表示画面に表示する候補疾患提示部と、
前記候補疾患提示部によって前記表示画面に表示された複数の候補疾患の中から1又は複数の候補疾患を予測疾患として選択させるための予測疾患選択部と、
前記
予測疾患選択部により選択された1又は複数の予測疾患に対応する検査情報を、複数の疾患と、各疾患に対する東洋医学的検査の項目を含む検査情報及び西洋医学的検査の項目を含む検査情報とが対応付けて記憶されている検査情報記憶部から取得し、該検査情報に含まれる東洋医学的検査の項目、又は/及び西洋医学的検査の項目を出力する検査情報出力部と、
前記検査情報出力部が出力した東洋医学的検査の項目、又は/及び西洋医学的検査の項目に従い前記患者に実施された検査の結果の入力を受け付ける検査結果入力部と、
前記検査結果入力部に入力された検査の結果を取得する検査結果取得部と、
前記検査結果取得部が取得した検査の結果
と、前記患者の前記背景情報とに基づき、前記1又は複数の予測疾患
のそれぞれに該予測疾患が前記患者の疾患である可能性の高さを表す指標である信頼度を付与して前記表示画面に表示する信頼度付与部と
して動作させ、
前記東洋医学的検査の項目、又は/及び前記西洋医学的検査の項目に従い前記患者に実施される検査が、前記予測疾患に対応する複数の症状について、前記患者に該当する症状であるか否かを調べるための検査であり、
前記信頼度付与部が、
前記検査の結果に基づき前記患者に該当する症状の数を求め、該数が多い予測疾患ほど、高い信頼度を付与することを特徴とする鍼灸整骨治療支援プログラム。
【請求項9】
鍼灸整骨治療の支援プログラムであって、コンピュータを、
患者の症状
と、該患者の体質、生活習慣、病歴を含む情報である背景情報とを含む患者情報を取得する患者情報取得部と、
前記患者情報取得部が取得した前記患者情報に含まれる症状に対応する施術箇所を鍼灸整骨治療の対象となる複数の症状と、各症状に対する施術箇所とが対応付けて記憶されている施術箇所情報記憶部から取得し、候補施術箇所として表示画面に表示する候補施術箇所提示部と、
前記候補施術箇所提示部によって前記表示画面に表示された複数の候補施術箇所の中から1又は複数の施術箇所を予測施術箇所として選択させるための予測施術箇所選択部と、
前記
予測施術箇所選択部により選択された1又は複数の予測施術箇所に対応する検査情報を、鍼灸整骨治療の複数の施術箇所と、各施術箇所に対する東洋医学的検査の項目を含む検査情報及び西洋医学的検査の項目を含む検査情報とが対応付けて検査情報が記憶されている検査情報記憶部から取得し、該検査情報に含まれる東洋医学的検査の項目、又は/及び西洋医学的検査の項目を出力する検査情報出力部と、
前記検査情報出力部が出力した東洋医学的検査の項目、又は/及び西洋医学的検査の項目に従い前記患者に実施された検査の結果の入力を受け付ける検査結果入力部と、
前記検査結果入力部に入力された検査の結果を取得する検査結果取得部と、
前記検査結果取得部が取得した検査の結果
と、前記患者の前記背景情報とに基づき、前記1又は複数の予測施術箇所
のそれぞれに該予測施術箇所が、前記患者の疾患に対応する施術箇所である可能性の高さを表す指標である信頼度を付与する信頼度付与部と
して動作させ、
前記東洋医学的検査の項目、又は/及び前記西洋医学的検査の項目に従い前記患者に実施される検査が、前記予測施術箇所に対応する複数の症状について、前記患者に該当する症状であるか否かを調べるための検査であり、
前記信頼度付与部が、
前記検査の結果に基づき前記患者に該当する症状の数を求め、該数が多い予測施術箇所ほど、高い信頼度を付与することを特徴とする鍼灸整骨治療支援プログラム。
【請求項10】
請求項8に記載の鍼灸整骨治療の支援プログラム
において、さらにコンピュータを、
前記信頼度が付与された予測疾患の中から前記患者の疾患を取得する患者疾患情報取得部と、
前記患者疾患情報取得部が取得した前記患者の疾患に対応する複数の施術箇所を、鍼灸整骨治療の対象となる複数の疾患と、各疾患に対する複数の施術箇所とが対応付けて記憶されている施術箇所情報記憶部から取得する施術箇所情報取得部と
、
して動作させることを特徴とする鍼灸整骨治療支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍼灸整骨治療を支援する鍼灸整骨治療支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鍼灸治療院や整骨治療院(以下、総称して「鍼灸整骨治療院」ともいう)では、医師や鍼灸師、柔道整復師(以下、「治療者」という)は、主に東洋医学の考え方に基づき患者を診断する。具体的には、治療者は患者から症状や体質、生活習慣、現病歴、既往歴等の背景情報を聞きとり、患者を観察し、患者に触れる等して症状の要因を特定する。そして、特定した症状の要因から疾患名を決定し、その疾患に応じた治療方針(施術箇所、施術方法)を決定する。
【0003】
症状の要因は複雑であり、症状の要因を正しく特定するためには患者から症状や背景情報を正確に聞きだし、患者の状態を把握する必要がある。また、同じ疾患であっても患者によって症状が異なる場合があることから、症状の要因が特定されてもそこから一つの疾患名を導き出すことは難しい。さらに、鍼灸整骨の治療における施術箇所は多数存在し、各施術箇所で行われ得る施術の方法も複数あるため、疾患名が決定されても、その疾患に対応する治療方針を決定することは難しく、さらに、実際に患者に施術してみなければ、決定した治療方針が患者に適合しているかどうか分からない。そのため、鍼灸整骨治療の治療者には、専門的な知識はもちろん豊富な経験が求められる。
【0004】
そこで、従前より鍼灸治療や整骨治療を支援する装置が提案されている。例えば特許文献1には、鍼灸治療の対象となる症状と、当該症状に対する施術箇所及び当該施術箇所において行われる手技を示す施術情報とが対応付けられた施術テンプレートを多数備え、患者の症状が入力されるとその症状に対応する複数の施術テンプレートを候補として治療者に提示する鍼灸治療支援装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の鍼灸治療支援装置では、候補となる施術テンプレートの中から患者に適合すると思われる施術テンプレートを治療者が選択すると、その施術テンプレートに含まれる施術情報に基づき患者の電子カルテが生成される。このため、治療者は電子カルテに従って患者に治療を行うことができる。
このように、特許文献1に記載の鍼灸治療支援装置では、治療者は、患者の症状に応じて絞り込まれた施術テンプレートの中から患者に適用する施術テンプレートを選択することができる。しかし、鍼灸治療の経験の浅い治療者にとって、自身の判断だけで施術テンプレートを決定することは実際上難しいという問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、鍼灸治療の経験の浅い治療者であっても、患者に適合する治療方針を決定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る鍼灸整骨治療支援装置の一態様は、
鍼灸整骨治療の対象となる複数の症状と、各症状に対する疾患とが対応付けて記憶されている疾患情報記憶部と、
鍼灸整骨治療の対象となる複数の疾患と、各疾患に対する東洋医学的検査及び西洋医学的検査とを対応付けた検査情報が記憶されている検査情報記憶部と、
患者の症状を含む患者情報を取得する患者情報取得部と、
前記患者情報取得部が取得した前記患者情報に含まれる症状に対応する複数の疾患を前記疾患情報記憶部から取得し、候補疾患として表示画面に表示する候補疾患提示部と、
前記候補疾患提示部によって前記表示画面に表示された複数の候補疾患の中から1又は複数の候補疾患名を予測疾患名として選択させるための予測疾患選択部と、
前記1又は複数の予測疾患に対応する検査情報を前記検査情報記憶部から取得し、該検査情報に含まれる東洋医学的検査又は/及び西洋医学的検査を出力する検査情報出力部と、
前記検査情報出力部が出力した東洋医学的検査又は/及び西洋医学的検査に従い前記患者に実施された検査の結果を取得する検査結果取得部と、
前記検査結果取得部に入力された検査の結果に基づき、前記1又は複数の予測疾患に信頼度を付与して前記表示画面に表示する信頼度付与部と
を備えることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る鍼灸整骨治療支援装置の別の態様は、
鍼灸整骨治療の対象となる複数の症状と、各症状に対する施術箇所とが対応付けて記憶されている施術箇所情報記憶部と、
鍼灸整骨治療の複数の施術箇所と、各施術箇所に対する東洋医学的検査及び西洋医学的検査の検査情報とが対応付けて検査情報が記憶されている検査情報記憶部と、
患者の症状を含む患者情報を取得する患者情報取得部と、
前記患者情報取得部が取得した前記患者情報に含まれる症状に対応する施術箇所を前記施術箇所情報記憶部から取得し、候補施術箇所として表示画面に表示する候補施術箇所提示部と、
前記候補施術箇所提示部によって前記表示画面に表示された複数の候補施術箇所の中から1又は複数の施術箇所を予測施術箇所として選択させるための予測施術箇所選択部と、
前記1又は複数の予測施術箇所に対応する検査情報を前記検査情報記憶部から取得し、該検査情報に含まれる東洋医学的検査又は/及び西洋医学的検査を出力する検査情報出力部と、
前記検査情報出力部が出力した東洋医学的検査又は/及び西洋医学的検査に従い前記患者に実施された検査の結果を取得する検査結果取得部と、
前記検査結果取得部が取得した検査の結果に基づき、前記1又は複数の予測施術箇所に信頼度を付与する信頼度付与部と
を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成の鍼灸整骨治療支援装置において、東洋医学的検査とは、患者の顔色や顔以外の皮膚の色、舌の状態等を視覚的に観察する検査(望診)、脈や腹を押さえて患者の状態を検査する脈診、腹診(切診)、患者の話し方や応答等の検査(聞診、問診)等をいう。東洋医学的検査は、主に鍼灸整骨治療を行う医師、鍼灸師、柔道整復師(治療者)が実施する。また、西洋医学的検査とは、理学的検査、触診、問診等を指す。問診には、科学的検査に先立ち治療者が患者に対して行う問診が含まれていてもよい。科学的検査とは、血液検査やX線(レントゲン)検査、CT(Computed Tomography)検査等、検査を実施するために特定の試薬や検査装置が用いられる検査をいう。理学的検査、触診は治療者が行うが、問診は、治療者以外の補助者が行ってもよい。
【0011】
上記構成の鍼灸整骨治療支援装置では、患者の症状を患者情報取得部が取得すると、その症状に対応する複数の疾患又は複数の施術箇所が、候補疾患又は候補施術箇所として表示画面に表示される。そして、治療者が、予測疾患選択部又は予測施術箇所選択部を通して、該表示画面に表示された候補疾患又は候補施術箇所の中から、患者に適合すると思われる候補疾患又は候補施術箇所を予測疾患又は予測施術箇所として選択すると、予測疾患又は予測施術箇所に対応する東洋医学的検査又は/及び西洋医学的検査が出力される。治療者は、出力された東洋医学的検査又は/及び西洋医学的検査を治療者に対して行い、その結果を検査結果取得部に取得させる。すると、検査結果取得部が取得した検査結果に基づき、信頼度付与部は、上述した予測疾患又は予測施術箇所に確からしさを表す信頼度を付与して表示画面に表示するため、治療者は信頼度を参考にして、患者の疾患、施術箇所を決定することができる。疾患や施術箇所が決まれば、それに応じて施術内容を決めることができる。
【0012】
また、上記課題を解決するために成された本発明に係る鍼灸整骨治療支援装置のさらに別の態様は、
鍼灸整骨治療の対象となる複数の疾患と、各疾患に対する複数の施術箇所とが対応付けて記憶されている施術箇所情報記憶部と、
鍼灸整骨治療の複数の疾患と、各疾患に対する東洋医学的検査及び西洋医学的検査の検査情報とが対応付けて記憶されている検査情報記憶部と、
患者の疾患を取得する患者疾患情報取得部と、
前記患者疾患情報取得部が取得した前記患者の疾患に対応する複数の施術箇所を前記施術箇所情報記憶部から取得する施術箇所情報取得部と、
前記患者疾患情報取得部が取得した前記患者の疾患に対応する検査情報を前記検査情報記憶部から取得し、該検査情報に含まれる東洋医学的検査又は/及び西洋医学的検査を出力する検査情報出力部と、
前記検査情報出力部が出力した東洋医学的検査又は/及び西洋医学的検査に従い前記患者に実施された検査の結果を取得する検査結果取得部と、
前記検査結果取得部が取得した検査の結果に基づき、前記施術箇所情報取得部が取得した複数の施術箇所の中から前記患者の施術箇所を決定する施術箇所決定部と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鍼灸整骨治療の治療者が患者から聞き取ったり患者を観察したりすることにより入手した情報と、該患者に対して行った東洋医学的検査及び西洋医学的検査の結果とに基づき、患者の疾患又は施術箇所を決定することができるため、鍼灸治療の経験の浅い治療者であっても、患者に適合する治療方針を決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鍼灸整骨治療支援システムの概略的な構成図。
【
図2】一実施形態の鍼灸整骨治療支援システムを構成する治療院端末の概略的な構成図。
【
図3】患者端末の表示部に表示される予診票画面(a)、患者情報確認画面(b)の一例を示す図。
【
図4】治療院端末の表示装置に表示される予約患者一覧画面の一例を示す図。
【
図5】治療院端末に表示される対象患者の患者情報画面の一例を示す図。
【
図6】治療院端末に表示される候補疾患リスト画面の一例を示す図。
【
図7】治療院側端末に表示される東洋医学的検査画面の一例を示す図。
【
図8】治療院側端末に表示される信頼度表示画面の一例を示す図。
【
図9】治療院側端末に表示される治療方針決定画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0016】
[1.鍼灸整
骨治療支援システムの構成]
図1は、この実施形態に係る鍼灸整
骨治療支援システム(以下、単に「支援システム」という)1の概略的な構成図である。支援システム1は、インターネット10を介して互いに接続された、治療院端末20a、20bと、患者端末30a、30b・・・30nと、サーバ40とを含んでいる。サーバ40の実態は、通信事業者が設置した汎用サーバ(いわゆるクラウドサーバ)であり、CPU、メモリ、及びハードディスクや半導体メモリ等の大容量記憶装置(いずれも図示せず)を備えている。大容量記憶装置には、支援システムで使用される様々な情報が記憶されている。
【0017】
治療院端末20a、20bは鍼灸治療院、整
骨治療院、鍼灸整
骨治療院等の治療院に設置されている端末であり、CPU及びメモリ等を備えたパーソナルコンピュータ又はワークステーション等のコンピュータをハードウェア資源としている。
図1には、2個の治療院端末20a、20bが示されているが、治療院端末の数は1個でもよく、3個以上であってもよい。治療院端末が複数ある場合、各治療院端末は通常、別の治療院に設置される。複数の治療院端末20a、20bを特に区別する必要がないときは、これらの治療院端末をまとめて「治療院端末20」と呼ぶ。
【0018】
患者端末30、30b・・・30nは、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等であり、前記治療院で診察や治療を受ける患者の各々によって使用される。患者端末は通常、複数個存在するが、1個でもよい。患者端末30a、30b・・・30nを特に区別する必要がないときは、これらの患者端末をまとめて「患者端末30」と呼ぶ。
【0019】
図2に示すように、治療院端末20は、治療支援部210、記憶装置220、入力操作部230及び表示装置240を備える。治療支援部210は、患者情報取得部211、予診票画面提供部212、候補疾患・施術箇所提示部213、予測疾患・施術箇所選択部214、検査情報出力部215、検査結果取得部216、信頼度付与部217、予測結果表示部218、施術内容取得部219を備えている。患者情報取得部211、予診票画面提供部212、候補疾患・施術箇所提示部213、予測疾患・施術箇所選択部214、検査情報出力部215、検査結果取得部216、信頼度付与部217、予測結果表示部218は、治療院端末20に内蔵された又は外付けされたHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置に予め記憶された専用のソフトウェアを、前記CPUで実行することによって具現化される機能ブロックである。また、記憶装置220は、前記補助記憶装置によって実現され、患者情報記憶部221、疾患情報記憶部222、施術箇所情報記憶部223、検査情報記憶部224、施術内容記憶部225を備えている。
【0020】
入力操作部230はキーボード及びマウス等のポインティングデバイスから成り、表示装置240は液晶ディスプレイ装置等から成る。入力操作部230及び表示装置240は、いずれも治療支援部210に接続されている。
【0021】
患者情報記憶部221には、患者毎に、その患者の識別情報と、最新の来院時の患者の症状(その症状がみられる部位を含む)と、現病歴、体質、生活習慣、既往歴を含む情報である背景情報とが対応付けて記憶されている。患者の識別情報には、例えば患者の氏名、性別、生年月日、治療院ごとに患者に付された識別番号等が含まれている。患者の識別情報、背景情報は、その患者が初めて治療院を来院したときに患者自身又は治療者が入力操作部230を介して入力するか、患者端末30を介して患者が入力したものを治療院端末20が取得して患者情報記憶部221に記憶させたものとすることができる。識別情報及び背景情報は適宜のタイミングで更新される。また、患者の症状は、患者が来院する都度、治療者が入力操作部230を介して入力するか、患者端末30を介して患者が入力したものを治療院端末20が取得して患者情報記憶部221に記憶させたものとすることができる。患者情報記憶部221に記憶されている情報を総称して「患者情報」と呼ぶ。
【0022】
疾患情報記憶部222には、鍼灸整骨治療の対象となる複数の症状と、各症状に対する疾患とが対応付けて記憶されている。また、施術箇所情報記憶部223には、鍼灸整骨治療の対象となる複数の症状と、各症状に対する施術箇所とが対応付けて記憶されている。本実施形態では、疾患情報記憶部222には約500の疾患が、それぞれ症状に対応付けて記憶されており、施術箇所情報記憶部223には、約500の施術箇所(経路・経穴及び、筋肉・神経・血管)が、それぞれ症状と対応付けて記憶されている。
【0023】
検査情報記憶部224には、鍼灸整骨治療の対象となる複数の疾患と、複数の施術箇所と、疾患と施術箇所の各組み合わせに対する東洋医学的検査及び西洋医学的検査の検査情報とが対応付けて記憶されている。疾患と施術箇所の各組合せに対する検査情報には、通常は東洋医学的検査及び西洋医学的検査の両方が含まれているが、疾患又は施術箇所によっては東洋医学的検査のみ、西洋医学的検査のみが含まれていることもある。
施術内容記憶部225には、複数の施術箇所と、各施術箇所で行われる施術内容とが対応付けて記憶されている。施術内容には、例えば施術箇所で行われる鍼灸治療・整骨治療の種類(手技)及び治療に用いられる器具、薬剤等が含まれる。
【0024】
疾患情報記憶部222、施術箇所情報記憶部223、検査情報記憶部224、施術内容記憶部225に記憶されている情報は、上述した専用のソフトウェアを治療院端末20のCPUで実行することにより該治療院端末20のメモリに記憶されたものでもよく、サーバ40にアクセスした治療院端末20が、該サーバ40が備える大容量記憶装置からダウンロードしたものをメモリに記憶されたものでもよい。
【0025】
患者情報取得部211は、入力操作部230を介して所定の患者の識別番号が入力されるとその識別番号に対応する患者情報を患者情報記憶部221から読み出す。
【0026】
予診票画面提供部212は、患者端末30からの要求に応じて、又は入力操作部230を介して入力された送信指示に応じて、予診票画面のデータをインターネット10を介して患者端末30に送信する。予診票画面のデータを受信した患者端末30は、その表示部に予診票画面が表示される。予診票画面上に表示されるユーザインターフェースを介して入力された予診票情報は、インターネット10を介して治療院端末20に送信され、患者情報記憶部221に記憶される。
【0027】
候補疾患・施術箇所提示部213は、患者情報取得部211が取得した患者情報に含まれる症状に対応する複数の疾患又は複数の施術箇所を疾患情報記憶部222又は施術箇所情報記憶部223から取得し、候補疾患又は候補施術箇所として表示装置240に表示する。
【0028】
予測疾患・施術箇所選択部214は、候補疾患・施術箇所提示部213によって前記表示装置240に表示された複数の候補疾患、あるいは複数の候補施術箇所から選択された1又は複数の候補疾患、あるいは1又は複数の候補施術箇所を、それぞれ予測疾患又は予測施術箇所として受け付ける。予測疾患又は予測施術箇所の選択は、例えば表示装置240の表示画面上に表示されるユーザインターフェースを介して行われ得る。
【0029】
検査情報出力部215は、予測疾患・施術箇所選択部214が受け付けた予測疾患、又は予測施術箇所に対応する検査情報を検査情報記憶部224から取得し、該検査情報に含まれる東洋医学的検査又は/及び西洋医学的検査に関する情報を表示装置240に表示する。また、施術内容取得部219は、前記予測疾患・施術箇所選択部214が予測施術箇所を受け付けたときに該予測施術箇所に対応する施術内容を施術内容記憶部225から取得する。
【0030】
治療者は、表示装置240に表示された東洋医学的検査に関する情報又は/及び西洋医学的検査に関する情報に従い、患者に対して東洋医学的検査又は/及び西洋医学的検査を行う。各検査に関する情報については後述する。
【0031】
検査結果取得部216は、患者に対して行われた東洋医学的検査又は/及び西洋医学的検査の結果入力画面を表示装置240に表示するとともに、該検査結果入力画面上に表示されるユーザインターフェースを介して入力された検査結果を受け付ける。
【0032】
信頼度付与部217は、検査結果取得部216が受け付けた検査結果と、患者の症状及び背景情報に基づき、予測疾患又は予測施術箇所の確からしさの指標である信頼度を付与する。そして、予測結果表示部218は、信頼度が所定の値以上の予測疾患又は予測施術箇所を表示装置240に表示する。また、詳しくは後述するように、前記予測結果表示部218は、予測施術箇所とともに該予測施術箇所に対応する施術内容を表示装置240に表示する。したがって、本実施形態では、予測結果表示部218は、予測疾患出力部及び施術箇所出力部に相当する。
【0033】
[2.治療支援システムにおいて実行される処理]
次に、
図3~
図8を参照して、治療支援システム1において実行される処理について説明する。
[2.1 診察日時の予約から予診票情報の記憶]
図3の(a)及び(b)は、患者端末30の表示部に表示される予診票画面の一例を示している。予診票画面は、患者の診察日時の予約を受け付けた鍼灸整骨治療院に設置されている治療院端末20が、その患者の患者端末30に向けて予診票データを送信することによって該患者端末30の表示画面に表示される。
【0034】
診察日時の予約は、患者が治療院に電話をかけて行ってもよく、治療院がインターネット上に開設している専用のWebサイトにアクセスした患者端末30を操作して行ってもよい。前者の場合は、その治療院の治療者が入力操作部230を使って治療院端末20の表示装置240に表示される図示しない予約受付画面に患者の名前、診察日時を入力する。これにより、治療院端末20によって患者の診察日時の予約が受け付けられる。後者の場合は、患者端末30を操作し、上記の専用のWebサイト上に患者の名前、診察日時を入力する。これにより、インターネット10を介して患者の名前及び診察日時に関する情報が治療院端末20に送信されて診察日時の予約が受け付けられる。
【0035】
診察日時の予約を受け付けた治療院端末20の表示装置240には、例えば
図4に示すような予約患者一覧画面が表示される。予約患者一覧画面には、予約を受け付けた患者毎に、診察日時と、患者情報(来院回数、患者の氏名、年齢、性別、施術数、前回施術箇所、前回疾患名)、予診票の有無、患者メモが記述されたリストが表示される。患者が、それまでに診察を受けたことがある場合は、患者情報は、患者情報記憶部から221から取得されて該リストに記述される。一方、初めて診察時間の予約を受け付けた患者の場合は、診察日時、来院回数、氏名以外の患者情報は空欄となる。
【0036】
予約患者一覧画面には、予約受付ボタン510、予約受付取消ボタン511、診察開始ボタン512、患者情報参照ボタン513、予診票送信ボタン514、その他図示しないテキストボックス、プルダウン等のユーザインターフェースが表示されている。治療者が入力操作部230を操作して予約受付ボタン510を選択することにより、診察日時が受け付けられる。診察日時が受け付けられると予約受付ボタン510は予約受付取消ボタン511に切り替わる。また、予診票送信ボタン514が選択されると、予診票画面提供部212は予診票画面データを患者端末30に向けて送信する。なお、これ以降で説明する種々の画面上に表示されるユーザインターフェースの種類はいずれも例示であり、これらに限定されない。
【0037】
図3(a)は、予診票画面データが送られてきた患者端末30の表示部に表示される予診票画面を示している。なお、予診票画面データには、患者の名前、生年月日、性別などの識別情報を入力させるための患者識別情報入力画面データが含まれており、患者端末30の表示部には、まず患者識別情報入力画面(図示せず)が表示され、その画面上で患者情報の入力が完了すると、患者端末30の表示部の画面が予診票画面に切り替わる。
【0038】
患者は、予診票画面に表示されている質問に従って、来院目的(体調管理、治療)、主な症状や、該症状がみられる箇所、副次的な症状や該症状がみられる箇所等を順次入力する。
図3(a)の例では、主な症状の選択肢として「痛み」、「しびれ・違和感」、「めまい」、「疲労」、「不眠」、「便秘」が挙げられている。これらの選択肢の中に該当するものがなければ、患者端末30を操作して「+上記以外の症状を表示する」と記載されている箇所を選択することにより、上記以外の選択肢を予診票画面に表示させることができる。上記以外の選択肢として、「尿漏れ」、「排尿時痛」、「血尿」、「咳」、「息苦しさ」、「のどの違和感」、「歩きにくい」、「ふるえ」、「音を聞く際に何らかの障害がある」、「聞こえにくい」、「皮膚にできものがある」、「かゆみ」、「生理がこない」、「異常出血」、「乳房の症状」、「膣の症状」、「胸焼け・お腹が張った感じ」、「下痢」、「不安」、「熱」、「物忘れ・覚えが悪い」、「飲み込みづらい」、「動悸」、「力が入らない」、「汗を良くかく」、「唾液や痰に血液が混じる」、「むくみ」、「毛が良く抜ける」、「吐き気、むかつき」、「抑うつ」、「便秘」、「動きにくい」、「違和感」、「その他」が挙げられる。
図3(a)の画面は、「痛み」が選択された例を示している。
【0039】
また、
図3(a)の予診票画面には、症状がみられる箇所の選択肢として「全身」、「頭(眼)・耳を含む)」、「顔面」、「顎・口」、「首」、「肩」、「胸・背中」、「おなか」が挙げられている。これらの選択肢の中に該当するものがなければ、患者端末30を操作することにより、上記以外の選択肢(例えば「腰」、「臀部・股関節」、「手」、「太もも」、「膝」、「足」、「肘」、「下肢」、「その他」)を予診票画面に表示させることができるため、患者は、これらの選択肢の中から該当する箇所を選択する。
【0040】
図3(a)の予診票画面に表示されている質問に対する回答の入力が終了すると、患者端末30の表示部の画面が次の予診票画面(図示せず)に切り替わる。予診票画面に表示される質問は、患者の症状、背景情報を収集するために行われるものであり、体調管理を主な目的とする東洋医学的な問診項目、治療を主な目的とする西洋医学的な問診項目が含まれる。西洋医学的問診項目には、疾患を、症状と、病気レベル(末梢、脊髄、脳)と、組織(皮膚、神経、筋肉、骨、関節、椎間板、内臓、精神)の3方向から疾患を予測するために必要な情報を収集するための質問が含まれる。なお東洋医学的問診項目と西洋医学的問診項目は明確に区別されているわけではなく、一部の問診項目は東洋医学的問診項目と西洋医学的問診項目の両方に相当する。
【0041】
全ての予診票画面に表示される質問に対する回答の入力が終了すると、最後に、
図3(b)に示す患者情報確認画面が患者端末30の表示部に表示される。患者はこの画面上で患者識別情報入力画面で入力した自身の名前、生年月日、性別などの患者識別情報、予診票画面で入力した情報(予診票情報)を確認し、変更があれば修正する。
【0042】
患者端末30の操作により予診票画面上に表示される送信ボタン(図示せず)が選択されると、患者識別情報、予診票情報がインターネット10を介して治療院端末20に送信される。患者識別情報及び予診票情報を受け付けた治療院端末20は、患者識別情報及び予診票情報に含まれる症状に関する情報、背景情報を患者情報記憶部221に記憶させる。なお、以前、治療院端末20に患者識別情報及び予診票情報を送ったことのある患者端末30は、次に予診票画面データが送られてくるときは、前回の患者識別情報及び予診票情報に含まれている背景情報が予診票画面データと共に送られるようにするとよい。これにより、患者識別情報入力画面及び予診票画面において、患者識別情報及び背景情報を繰り返し入力する手間を省くことができる。
【0043】
[2.2 疾患・施術箇所の予測]
患者識別情報及び予診票情報を受け付けた治療院端末20では、患者の症状等から該患者の疾患又は/及び施術箇所を予測する処理を実行することができる。この処理は、治療者が入力操作部230を操作して予約患者一覧画面の対象患者の欄に表示されている診察開始ボタン512を選択することにより開始される。以下では「池田匠」を対象患者として行われる疾患・施術箇所の予測処理を例に挙げて説明する。
【0044】
予測処理が開始されると、候補疾患・施術箇所提示部213は、対象患者である「池田匠」の患者情報を患者情報取得部211から取得して、
図5に示す患者情報画面を表示装置240に表示させる。この画面には、「池田匠」のこれまでの来院時に作成されたカルテ(過去カルテ)と、今回新たに作成されるカルテ(新カルテ)が表示されている。新カルテには、最新の患者識別情報及び予診票情報に含まれていた情報に基づき、来院目的、症状、現病歴等の情報が記入されている。治療者は、入力操作部230を操作して、治療者自身の識別情報(名前、識別番号等)を新カルテに記入する。また、治療者は、患者識別情報及び予診票情報に含まれていない情報(例えば治療者が患者を観察して気づいた情報、患者から聞き取った情報等)を新カルテに追加することもできる。
【0045】
治療者が、入力操作部230を操作して対象患者情報一覧画面上に表示された「次に進む」ボタン610を選択すると、候補疾患・施術箇所提示部213は、患者情報に含まれる症状に対応する疾患又は施術箇所を疾患情報記憶部222又は施術箇所情報記憶部223から取得し、該疾患又は施術箇所を候補疾患又は候補施術箇所として列挙した画面(候補疾患リスト画面、候補施術箇所リスト画面)を表示装置240に表示させる。
【0046】
ここで、患者の来院目的が治療である場合、候補疾患・施術箇所提示部213は、症状と、上述した病気レベル(末梢、脊髄、脳)及び組織(皮膚、神経、筋肉、骨、関節、椎間板、内臓、精神)の3方向から疾患を予測する。具体的には、候補疾患・施術箇所提示部213は、病気レベル及び組織の2方向と、症状に対する疾患を記憶しており、3方向の重なりの強い疾患を候補疾患とする。
【0047】
また、患者の来院目的が体調管理である場合は、候補疾患・施術箇所提示部213は、気血津液弁証法により「気」、「血」、「津液(血液以外の水分)」の病変の有無を予測した上で、臓腑弁証により、「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の病変の有無を予測し、気血津液弁証と臓腑弁証から総合的に病態を判断した上で、病変のある箇所を候補施術箇所として表示装置240に表示させることができる。
【0048】
図6は、患者の来院目的が治療であり、且つ、症状が「痛み」である場合に表示装置240に表示される候補疾患リスト画面の一例を示している。この例では、候補疾患として「CRPS(複合性局所疼痛症候群)」、「線維筋痛症」、「脳梗塞」、「脳出血」、「癌性疾患」、「関節リウマチ」が示され、これらのうち「CRPS」、「線維筋痛症」、「脳梗塞」、「脳出血」は病気レベルが脳性の候補疾患として示されている。
【0049】
なお、候補疾患リスト画面には、解説ボタン710が表示されており、候補疾患リストに表示された疾患がどのようなものかわからないときは、該ボタン710を選択することにより疾患の概要が表示されるようになっている。
【0050】
治療者は、候補疾患リスト画面上に表示された候補疾患の中から患者に適合すると予測される疾患を選び、入力操作部230を操作してチェックボックスにチェックマークを入れる。全ての予測疾患の選択が終わると、治療者は入力操作部230を操作して候補疾患リスト画面右上に表示された「次に進む」ボタン711を選択する。
【0051】
すると、予測疾患・施術箇所選択部214が、候補疾患リスト画面上でチェックマークが入れられた予測疾患を受け付ける。続いて、検査情報出力部215が該予測疾患に対応する検査情報を検査情報記憶部224から取得して、該検査情報に含まれる東洋医学的検査又は/及び西洋医学的検査に関する情報を表示装置240に表示させる。なお、ここまでの処理は、患者が来院してから行っても良いが、患者が来院する前に治療者が単独で行うことができる。
【0052】
図7は、予測疾患と、該予測疾患に対応する西洋医学的検査の内容が表示された西洋医学的検査画面の一例である。この検査画面に表示された西洋医学的検査項目に従って、治療者は患者に対して問診を行う。この検査画面には、検査項目として予測疾患に対応する詳細な症状を患者に尋ねるための情報が表示されている。治療者はこの検査画面を見て、患者に対して詳細な症状の有無を尋ね、その回答を入力する。この例では、疾患「線維筋痛症」に関する詳細な症状として「不定愁訴」、「全身の圧痛」、「原因不明の広範囲な痛み」と、これら詳細な症状が「ある」、「ない」、「不明」な場合に対応するユーザインターフェースとして「〇」、「×」、「△」それぞれのボタンが表示されている。治療者は患者の回答に応じたボタンを選択することにより、検査の結果が入力される。このように、本実施形態では検査画面は検査結果入力画面を兼用する。
【0053】
西洋医学的検査画面に表示された全ての検査項目について検査結果が入力され、該検査画面上に表示された「次に進む」ボタン810が選択されると、検査結果取得部216は、その検査結果を取得する。そして、信頼度付与部217は、検査結果取得部216が取得した検査結果と、患者の背景情報とに基づき、予測疾患に信頼度を付与する。
図8は、信頼度として予測疾患に確からしさの順位がつけられた画面(信頼度表示画面)を示している。
この画面では、「線維筋痛症」に患者の疾患である可能性が高いことを示す順位「1」が付与され、「関節リウマチ」、「CRPS」にそれぞれ順位「2」、「3」が付与されている。なお、順位が付与されていない予測疾患は信頼度が低い、つまり患者の疾患である可能性が低いことを表している。
【0054】
信頼度表示画面上に表示された予測疾患の中から一つの予測疾患が選択され、「次に進む」ボタン910が選択されると、治療院端末20の表示装置240には、
図9に示す治療方針設定画面が表示される。治療者がこの治療方針設定画面上で治療方針を決定すると、施術内容取得部219は選択された予測疾患に対応する施術内容(施術箇所)を施術情報記憶部225から取得する。そして、予測結果表示部218は、治療方針に応じたアルゴリズムに従って施術内容を決定し、提示する。治療方針としては、
図9の治療方針設定画面に示されている「西洋医学的アプローチ」、「東洋医学的アプローチ」、「西洋・東洋医学的アプローチ」、「疼痛緩和」、「筋緊張緩和」、「血流改善」、「精神安定」、「予防的治療」、「その他」以外に、「鎮痛」、「自律神経調節」等が挙げられる。
【0055】
治療方針として「西洋医学的アプローチ」が選択された場合は、その治療方針に応じたアルゴリズムに従い、上記で選んだ予測疾患から施術箇所の候補(経穴、筋肉、神経等)が決定され、それらが表示装置240に示される。施術箇所の候補が経穴の場合、その名称が表示されるほか、人体図に経穴の位置がプロットされたイメージ図が表示されるようにしてもよい。また、施術箇所の候補が筋肉の場合は、その名称が表示されるほか、痛みを伴う筋肉の動作(屈曲、伸展、側屈、回旋等)を尋ねるための質問情報を表示し、その質問の回答を入力すると、筋肉の名称が表示されるようにしてもよい。また、筋肉の名称と、その筋肉上にある経穴の名称が1又は複数表示し、1つの経穴が選択されると、人体図にその経穴の位置がプロットされたイメージ図が表示されるようにしてもよい。さらに、施術箇所が神経の場合も同様に、神経の名称が表示されるほか、神経とその神経と関係する経穴の名称がともに表示されるようにしてもよく、神経に対応する経穴が人体図にプロットされたイメージ図が表示されるようにしてもよい。
【0056】
治療方針として「東洋医学的アプローチ」が選択された場合は、東洋医学的検査画面(図示せず)に移り、東洋医学的な検査から、東洋医学的なアルゴリズムに従い、上記で選んだ予測疾患に対応する治療部位を導く。
東洋医学的検査画面に表示される内容の例として、「イライラする」、「目の症状がある」、「口が苦い」等、45種類ほどの詳細な症状の有無を患者に尋ねるための問診項目と、それに対する回答を入力するためのユーザインターフェースが挙げられる。また、詳細な症状の有無に関する問診に対する回答に応じて、主観的身体検査項目(例えば「柔軟性(上肢・下肢)」、「片足時間」、「肺活量」、「タンデム肢位(バランス立ち)」等)が表示装置240に表示されるため、治療者はこれらの身体検査を患者に対して実施し、その結果を入力する。さらに、主観的身体検査を実施した後の患者の客観的身体検査項目として、ツボの反応、舌の色、筋肉の圧痛、頭皮の状態などを検査し、その結果も入力する。これら3種類の検査の結果は、後述する施術内容の決定に利用される。
【0057】
東洋医学的なアプローチの場合は、上述した問診項目、主観的検査項目、客観的身体検査項目の検査により、気血津液弁と五臓の状態がわかるため、それぞれの重みづけで評価し、東洋医学的な証が9タイプの中から選ばれる。9タイプの証とは、「気」の病態に関係する3つの病証(バランスタイプ:気虚・血虚、上半身タイプ:肝の病状、下半身タイプ:腎の病状)と、「血」の病態に関係する3つの病証(リズムタイプ:気滞・血、栄養タイプ:脾の病証、思考タイプ:心の病証)、「津液」の病態に関係する3つの病証(筋力:陽虚、筋量:陰虚、肺活量:肺の病証)を指している。
【0058】
そして、選ばれた証から施術箇所の候補(経絡・経穴等)が決定され、それらが表示装置240に示される。施術箇所の候補が経穴の場合、その名称が表示されるほか、人体図に経穴の位置がプロットされたイメージ図が表示されるようにしてもよい。
【0059】
なお、上記実施形態では、候補疾患・施術箇所提示部213は、患者情報に含まれる症状に対応する疾患を予測する例について説明したが、施術箇所を予測してもよい。この場合は、施術内容取得部219は、予測施術箇所に対応する施術内容として該予測施術箇所で行われる治療の種類、治療に用いる器具、薬剤を施術情報記憶部225から取得する。
【0060】
また、上記実施形態では、来院目的が治療の場合に、予測疾患・施術箇所選択部214が予測疾患を受け付けると、検査情報出力部215が該予測疾患に対応する検査情報を検査情報記憶部224から取得して、該検査情報に含まれる西洋医学的検査の項目を表示装置240に表示することとした。そして、その後、治療方針設定画面において東洋医学的アプローチが治療方針として選択された場合に、東洋医学的検査の項目が表示装置240に表示されることとしたが、来院目的が治療の場合は、西洋医学的検査及び東洋医学的検査の両方の検査項目が順に表示装置240に表示されるようにしてもよい。また、疾患の種類によって西洋医学的検査及び東洋医学的検査のいずれか一方が検査情報に含まれる場合もある。この場合は、西洋医学的検査及び東洋医学的検査のいずれか一方の検査項目のみが表示装置240に表示されるようにしてもよい。
【0061】
治療方針によっては、施術箇所を正確に特定するための追加の検査項目が提示されるようにしてもよい。従って、治療者は、治療院端末20が提示する施術内容や検査項目に従って患者に施術したり、検査を実施したりすることができる。
【0062】
以上の疾患予測処理で確定された疾患の名称や治療方針、疾患を確定するまでに行われた検査項目及びその回答等の情報は、全て患者のカルテに記述される。従って、治療者がその患者の次の診察時に予測疾患の中から候補疾患を選択したり、疾患を確定したりするときに、カルテに記述された情報を参考にすることができる。
【0063】
上記実施形態では、患者のカルテに治療者の識別情報が含まれるため、或る治療者が担当する患者のカルテを容易に抽出することができる。また、複数の治療院端末20をインターネットやその他の無線通信手段で接続し、各治療院端末20に保存されているカルテが相互に利用可能に構成されていることが好ましい。このような構成によれば、或る治療院に設置されている治療院端末20を使って、別の治療院端末に設置されている治療院端末20に保存されているカルテに記述されている情報を閲覧することができる。また、このように構成することにより、或る一人の患者のカルテを複数の治療院端末20の間で共有できるため、その患者が複数の治療院のいずれを来院しても、治療者は、患者の治療履歴を参照して治療方針を決定することができる。同じく、或る一人の治療者が担当した患者のカルテを複数の治療院端末20の間で共有できるため、治療者が複数の治療院に所属している場合や、治療者の所属する治療院が変わった場合でも、治療者は自身がそれまでに行った施術内容を参照することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…治療支援システム
10…インターネット
20、20a、20b…治療院端末
210…治療支援部
211…患者情報取得部
212…予診票画面提供部
213…候補疾患・施術箇所提示部
214…予測疾患・施術箇所選択部
215…検査情報出力部
216…検査結果取得部
217…信頼度付与部
218…予測結果表示部
219…施術内容取得部
220…記憶装置
221…患者情報記憶部
222…疾患情報記憶部
223…施術箇所情報記憶部
224…検査情報記憶部
225…施術内容記憶部
230…入力操作部
240…表示装置
30、30a、30b、30n…患者端末
40…サーバ
510…予約受付ボタン
511…予約取消ボタン
512…診察開始ボタン
513…患者情報参照ボタン
514…予診票送信ボタン