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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】移乗補助具及び移乗方法
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/14 20060101AFI20231018BHJP
   A61G 7/053 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
A61G5/14 711
A61G7/053
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022068058
(22)【出願日】2022-04-18
【審査請求日】2023-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】322003581
【氏名又は名称】有限会社クラモトF&F
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-036016(JP,A)
【文献】特開平09-038141(JP,A)
【文献】特開平11-206813(JP,A)
【文献】特表平04-507212(JP,A)
【文献】米国特許第04815785(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/00-7/16
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移乗者が第1の位置から第2の位置に移乗する際に使用される移乗補助具であって、
前記第1の位置と前記第2の位置との間に掛け渡される案内体と、
前記案内体に沿って移動可能で、前記移乗者が着座可能な着座体とを備え
前記案内体は、所定距離を介して互いに平行な少なくとも2本の円弧状の案内レールを有し、
前記着座体は、前記案内体から分離可能であるとともに、前記両案内レールに跨るように載置された状態で当該両案内レールに沿って円弧状に移動可能である
ことを特徴とする移乗補助具。
【請求項2】
移乗者が第1の位置から第2の位置に移乗する際に使用される移乗補助具であって、
前記第1の位置と前記第2の位置との間に掛け渡される案内体と、
前記案内体に沿って移動可能で、前記移乗者が着座可能な着座体とを備え、
前記案内体は、所定距離を介して互いに平行な少なくとも2本の円弧状の案内レールを有し、
前記着座体は、前記案内体から分離可能であるとともに、前記両案内レールに跨るように載置された状態で当該両案内レールに沿って円弧状に移動可能であって、所定距離を介して互いに平行な少なくとも2本の円弧状のレール挿入空間を有し、
前記案内レールは、前記レール挿入空間に挿脱可能に挿入される
ことを特徴とする移乗補助具。
【請求項3】
移乗者が第1の位置から第2の位置に移乗する際に使用される移乗補助具であって、
前記第1の位置と前記第2の位置との間に掛け渡される案内体と、
前記案内体に沿って移動可能で、前記移乗者が着座可能な着座体とを備え、
前記案内体は、
所定距離を介して互いに平行な少なくとも2本の円弧状の折り畳み可能な案内レールと、
前記両案内レールの中間部同士を連結する少なくとも2つの連結手段とを有し、
前記着座体は、前記案内体から分離可能であるとともに、前記両案内レールに跨るように載置された状態で当該両案内レールに沿って円弧状に移動可能であり、
前記両連結手段は、前記両案内レールを折り畳むと互いに近接対向した状態となり、この状態の両連結手段を前記案内体の持ち運びの際の把手として使用することが可能である
ことを特徴とする移乗補助具。
【請求項4】
前記案内レールは、当該案内レールにおける他の部分よりも幅寸法が狭い幅狭部を先端部に有し、
前記幅狭部は、その先端側が薄板状に形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の移乗補助具。
【請求項5】
前記案内レールは、
前記着座体の被案内部を案内する互いに離間対向する対をなす平行な案内板部と、
前記両案内板部の上端部同士を連結する円弧状の上板部とを有し、
前記着座体は、
前記移乗者が着座可能な本体部材と、
前記本体部材の下面側に回転可能に設けられ、前記上板部上を回転しながら円弧状に走行移動する移動用の回転部材とを有する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の移乗補助具。
【請求項6】
前記案内レールの前記上板部は、
水平状に位置する長手状の水平案内面と、
前記水平案内面の長手方向端部に連設され、先端側に向かって下り傾斜状に位置する傾斜案内面とを有する
ことを特徴とする請求項5記載の移乗補助具。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか一記載の移乗補助具を用いて、移乗者を第1の位置から第2の位置に移乗させる移乗方法であって、
案内体を前記第1の位置と前記第2の位置との間に掛け渡すとともに、着座体を前記案内体に対して移動可能な状態にセットする工程と、
前記移乗者が着座した状態の前記着座体を前記第1の位置側から前記第2の位置側に向けて前記案内体に沿って移動させる工程と
を備えることを特徴とする移乗方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負担軽減を図ることができる移乗補助具及び移乗方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自力歩行が困難な高齢者や病人等の被介護者(移乗者)が第1の位置から第2の位置に移乗する際に使用される移乗補助具としては、例えば下記の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この従来の移乗補助具は、湾曲板状に形成されたボードのみからなり、当該ボードを第1の位置(例えばベッド上の位置)と第2の位置(例えば車椅子の座部上の位置)との間に掛け渡して水平を確認の上で使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】意匠登録第1408350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の移乗補助具では、例えば移乗者である被介護者が体格の大きな人である場合等には、介護者がその被介護者をボード上に沿って横滑りさせるのに大変な労力が必要となる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、負担軽減を図ることができる移乗補助具及び移乗方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る移乗補助具は、移乗者が第1の位置から第2の位置に移乗する際に使用される移乗補助具であって、前記第1の位置と前記第2の位置との間に掛け渡される案内体と、前記案内体に沿って移動可能で、前記移乗者が着座可能な着座体とを備えるものである。
【0008】
また、本発明に係る移乗方法は、移乗者を第1の位置から第2の位置に移乗させる移乗方法であって、案内体を前記第1の位置と前記第2の位置との間に掛け渡すとともに、着座体を前記案内体に対して移動可能な状態にセットする工程と、前記移乗者が着座した状態の前記着座体を前記第1の位置側から前記第2の位置側に向けて前記案内体に沿って移動させる工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、負担軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)及び(b)は本発明の第1の実施の形態に係る移乗補助具の斜視図である。
図2】(a)及び(b)は同上移乗補助具の案内体と着座体とを分離した状態を示す分解斜視図である。
図3】同上移乗補助具の上面図である。
図4】同上移乗補助具の下面図である。
図5図4における部分拡大図である。
図6】同上移乗補助具の部分端面図である。
図7】(a)及び(b)は同上着座体の移動途中の状態を示す図である。
図8】同上案内体を折り畳んだ状態を示す図である。
図9】同上案内体を車椅子の収納部に収納した状態を示す図である。
図10】同上移乗補助具の使用例1(ベッド及び車椅子間)を示す説明図である。
図11図10に続く説明図である。
図12図11に続く説明図である。
図13】同上移乗補助具の使用例2(車椅子及び自動車間)を示す説明図である。
図14図13に続く説明図である。
図15】本発明の第2の実施の形態に係る移乗補助具の平面図である。
図16】本発明の第3の実施の形態に係る移乗補助具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施の形態について図1なしい図14を参照して説明する。
【0012】
図1ないし図4等において、1は移乗補助具で、この移乗補助具1は、移乗者、すなわち例えば自力歩行が困難な高齢者等の被介護者A(移乗者の移乗を補助する補助者である介護者Bによって介護される者)が第1の位置(例えばベッド上の位置等)から第2の位置(例えば車椅子の座部上の位置等)に移乗する際に使用される介護用の移乗機器である(図10参照)。
【0013】
移乗補助具1は、互いに近接状に位置する第1の位置(第1の物体)と第2の位置(第2の物体)との間に掛け渡される長手状の案内体2と、この案内体2に沿って移動可能でかつ被介護者Aが着座可能な板状の着座体3とを備えている。つまり、移乗補助具1は、互いに分離可能な2つの部材、すなわち案内体2及び着座体3のみで構成されている。
【0014】
そして、着座体3は、当該着座体3上に被介護者Aが着座した状態(移乗者の臀部が着座体の上面で支持された状態)で、例えば案内体2によって案内方向(図1中の矢印方向)に案内されながら、第1の位置及び第2の位置間で円弧状に移動可能、すなわち例えばスライド可能なものである。
【0015】
案内体2は、例えば折り畳み可能なもので、展開した長手状の使用状態(展開状態)と、長手方向中央部で下面が内側になるように二つ折りに折り畳んだ不使用状態(折畳状態)とに選択的に変更可能となっている。
【0016】
つまり、案内体2は、移乗補助具1の使用時には第1の位置及び第2の位置間に架設可能な長手状の使用状態に設定され、移乗補助具1の不使用時にはコンパクトな不使用状態に設定される。なお、使用状態の案内体2は、第1の位置及び第2の位置間の距離よりも長く、これら第1の位置と第2の位置との間に掛け渡すことが可能な所定の長さ寸法を有する。
【0017】
ここで、具体的には、案内体2は、例えば一方側半部である第1案内部分6と、この第1案内部分6の端部に回動可能に設けられた他方側半部である第2案内部分7とを有している。なお、第2案内部分7は、第1案内部分6に対して所定角度、すなわち例えば180度回動可能となっている(図8参照)。
【0018】
そして、案内体2は、使用状態では第1案内部分6と第2案内部分7とが互いに横(左右)に並んで同一面上に位置するが、不使用状態では第1案内部分6と第2案内部分7とが互いに重なって位置する。
【0019】
それゆえ、不使用状態の案内体2は、使用状態と比べて長さ寸法が半分となり、その結果、例えば車椅子72の背面の収納部75内に収納して容易に運ぶことが可能である(図9参照)。
【0020】
より具体的には、案内体2は、円弧状に形成された長手状をなす複数、すなわち例えば所定距離を介して互いに平行な2本の折り畳み可能な案内レール11と、これら両案内レール11の中間部同士を連結する2つの板状の連結手段である連結板12とを有している。
【0021】
そして、着座体3は、平行な2本の両案内レール11に跨るように載置されたセット状態で、当該両案内レール11に沿って円弧状にスライド移動可能である。
【0022】
なお、両連結板12は、案内体2の不使用状態(不使用時に案内レールを折り畳んだ状態)では互いに近接対向した状態となるため、当該連結板12を移乗補助具1の持ち運びの際の把手(取っ手)として使用することが可能である。また、両案内レール11は、当該案内レール11における他の部分よりも幅寸法が狭い幅狭部13を先端部に有している。この幅狭部13は、その先端側が薄板状に形成されている。
【0023】
両案内レール11の各々は、円弧状に形成された長手状の2本のレール部材16と、これら両レール部材16の基端部同士を180度回動可能に連結する連結部材であるヒンジ17と、各レール部材11の先端部の下面(先端側下面)に設けられた板状の底板部材(第1位置又は第2位置への載置部材)18とを有している。
【0024】
なお、案内体2の使用状態(使用時に案内レールを展開した状態)において、当該案内体2の一方側(図1(a)では左側)に位置する少なくともレール部材16、底板部材18及び連結板12で第1案内部分6が構成され、かつ、当該案内体2の他方側(図1(a)では右側)に位置する少なくともレール部材16、底板部材18及び連結板12で第2案内部分7が構成されている。これら左右対称の第1案内部分6及び第2案内部分7は、2つのヒンジ17を介して互いに回動可能に連結されている。
【0025】
レール部材16は、図5ないし図8等にも示すように、所定距離を介して互いに離間対向する対をなす平行な案内板部21を有し、これら両案内板部21の上端部同士が円弧状の上板部(回転部材走行部)22によって連結されている。また、両案内板部21の基端部同士が端板部23によって連結され、両案内板部21の中間部同士が補強板部24によって連結されている。
【0026】
上板部22は、幅寸法が全長にわたって一定の幅広部分26と、この幅広部分26の先端部に連設され、幅寸法が先端側に向かって徐々に減少する幅減少部分27と、この幅減少部分27の先端部に連設され、幅寸法(この幅寸法は幅広部分の幅寸法よりも小さい)が一定の幅狭部分28とを有している。
【0027】
そして、上板部22の幅狭部分28の上面には、使用時に先端側に向かって下り傾斜状に位置する傾斜案内面29が形成されている。また、上板部22の上面のうち傾斜案内面29が形成されていない部分には、使用時に水平状に位置する長手状でかつ円弧状の水平案内面30が形成されている。傾斜案内面29は、長手状の水平案内面30の長手方向端部である先端部に連設されている。
【0028】
なお、第1案内部分6のレール部材16における水平案内面30の基端部と第2案内部分7のレール部材16における水平案内面30の基端部とは、使用時には段差なく互いに繋がった連続状態となる。
【0029】
底板部材18は、例えばねじ等の取付具31によってレール部材16の先端部の下面に固定的に取り付けられている。この底板部材18は、使用時に第1位置又は第2位置に載置される載置部(例えばベットや車椅子等への載置部)である底板部32を有し、この底板部32はレール部材16の先端部形状に対応した形状に形成されている。
【0030】
つまり、底板部材18の底板部32は、上記したレール部材16の上板部22と同様、幅寸法が全長にわたって一定の幅広部分36と、この幅広部分36の先端部に連設され、幅寸法が先端側に向かって徐々に減少する幅減少部分37と、この幅減少部分37の先端部に連設され、幅寸法(この幅寸法は幅広部分の幅寸法よりも小さい)が一定の幅狭部分38とを有している。
【0031】
そして、底板部32の幅狭部分38の下面には、使用時に先端側に向かって上り傾斜状に位置する傾斜面39が形成されている。また、底板部32の下面のうち傾斜面39が形成されていない部分には、使用時に水平状に位置する水平面40が形成されており、傾斜面39は水平面40の先端部に連設されている。
【0032】
また一方、図3に示すように、2本の案内レール11のうち内側に位置する案内レール11(11a)は、中心点Oを中心とする第1曲率半径R1を有する円弧状に形成されている。2本の案内レール11のうち外側に位置する案内レール11(11b)は、内側の案内レール11(11a)と同じ中心点Oを中心とする第2曲率半径R2を有する円弧状に形成されている。
【0033】
ここで、当該図3に図示した構成における各寸法等の一例を挙げると、内側の案内レール11aの第1曲率半径R1は「550mm」、外側の案内レール11bの第2曲率半径R2は「700mm」、外側の案内レール11bの円弧の長さ寸法は「1300mm」、両案内レール11a,11bの円弧角度αは「90度」、着座体3の直径Dは「300mm」、案内体2の長手方向寸法Lは「1130mm」、案内体2の短手方向寸法Wは「390mm」、着座体3が案内体2上にセットされた状態での高さ寸法は「60mm」(例えば46mm等でもよい)である。
【0034】
また、重さに関しては、案内体2が例えば「2.2kg」、着座体3が例えば「1.3kg」である。なお、図3からみて明らかなように、平面視で、円形状の着座体3の移動方向に対して直交する方向の両端側は、案内体2よりも外側に突出して位置する。
【0035】
着座体(スライド体)3は、図5図6等からみて明らかなように、例えば被介護者Aが着座可能な円形状の本体部材41と、この本体部材41の下面側に取付軸43を介して回転可能に取り付けられ、案内体2の案内レール11に接触した状態で当該案内レール11上を回転しながら円弧状に走行移動する移動用の回転部材42とを有している。
【0036】
着座体本体である本体部材41は、円板状に形成された座板部51を有し、この座板部51の周端部には周壁部52が下方に向かって突設され、この周壁部52の複数箇所、すなわち例えば4箇所に開口部53がそれぞれ外側方に向かって開口形成されている。そして、座板部51の上面には、移乗補助具1の使用時に水平状に位置して被介護者Aの臀部を支持する平面状の座面55が形成されている。
【0037】
また、座板部51の下面には、案内体2の案内板部21に沿ってスライド可能で所定距離を介して互いに離間対向する対をなす平行なスライド板部56と複数の補強板部57とが下方に向かって突設されている。スライド板部56は、案内体2に対する着座体3のスライド移動(摺動)の際に案内部である案内板部21によって案内される被案内部である。なお、対をなす両スライド板部56の間の空間が円弧状のレール挿入空間58であり、このレール挿入空間58に案内レール11が挿脱可能に挿入される。
【0038】
さらに、両スライド板部56間には、当該スライド板部56の長手方向に間隔をおいて並ぶ四角短筒状の複数(3個が2列で合計6つ)の軸保持部61が座板部51の下面に下方に向かって突設されている。各軸保持部61の凹部分62に取付軸43の軸方向端部が嵌合固定されている。その取付軸43は、軸保持部61に螺着された抜止部材であるねじ63によって凹部分62から抜け出ないようになっている(図5参照)。
【0039】
そして、円筒状に形成された複数(例えば3つで一組)の回転部材42が互いに独立して回転できるように各取付軸43にそれぞれ軸支されている。各回転部材42の上部は、軸保持部61の収納凹部分64に収納されている。なお、この図示した例では、回転部材42は、軸方向長さ寸法が短い円筒状のコロであるが、例えば球状のボール等でもよく、また回転部材42を設けない構成等でもよい。
【0040】
また、開口部53の近傍に位置する軸保持部61には、案内レール11を開口部53から両スライド板部56間のレール挿入空間58に挿入する際に当該案内レール11の先端部の幅狭部13を回転部材42側に案内する案内部66が連設されている。
【0041】
案内部66は、対応する開口部53側に向かって上り傾斜状に位置する案内面67を有し、この案内面67の案内始端部が開口部53に位置している。また、案内部67には、傾斜状の案内面67から座板部51の下面まで窪んだ窪み部分68が形成されている。
【0042】
また一方、着座体3の本体部材41及び回転部材42は、例えば合成樹脂製であるが、取付軸43及びねじ63は、例えば金属製である。案内体2のレール部材16、ヒンジ17及び連結板12は、例えば金属製(軽量なアルミニウム等)であるが、底板部材18は例えば合成樹脂製であり、この底板部材18の底板部(載置部)32の下面は滑り易くなっている。
【0043】
なお、例えば弾性変形可能なゴム板等の滑止手段を底板部32の下面に取り付けて滑り難くしてもよい。また、案内体2や着座体3の材質は、上記した例が好ましいが、これには限定されず、例えば炭素繊維や布素材等の他の材料を用いてもよい。
【0044】
次に、移乗補助具1の作用等を説明する。
【0045】
まず、図10ないし図12を参照して移乗補助具1の使用例1について説明する。
【0046】
この使用例1は、被介護者(移乗者)Aが介護者(移乗補助者)Bに補助されつつベッド71上の位置(第1の位置)から車椅子72の座部73上の位置(第2の位置)に移乗する際、換言すると、介護者Bが被介護者Aをベッド71から車椅子72に移乗させる際に、移乗補助具1が使用される場合の例である。
【0047】
図10に示すように、介護者Bは、まず、展開した使用状態の案内体2を、当該案内体2が水平姿勢になるようにベッド71と車椅子72の座部73との間に水平状に掛け渡す。なおこのとき、案内体2は車椅子72の肘掛け部74と干渉しないので、肘掛け部(アームレスト)74を取り外したり跳ね上げたりする必要はない。
【0048】
そして、ベッド71及び車椅子72間に掛け渡された水平姿勢の案内体2の案内レール11のうち、ベッド71上の位置に載置された先端部上に着座体3を載置して当該案内レール11に対してスライド可能な状態にセットした後、その着座体3上に被介護者Aの臀部を載せる。なお、例えば被介護者Aの臀部とベッド71との間に着座体3を入れ込んだ後に、その着座体3のレール挿入空間58に案内レール11を開口部53から挿入してもよい。
【0049】
次いで、図11及び図12に示すように、介護者Bは、着座体3に着座した状態の被介護者Aを抱きかかえるようにしてベッド71から車椅子72へ、着座体3と一緒に円弧状に移動させる。
【0050】
この際、着座体3は、当該着座体3上に被介護者Aが着座した状態のまま、案内体2の案内レール11に沿って第1の位置側から第2の位置側に向かって円弧状に水平移動する。
【0051】
具体的には、着座体3のスライド板部56が案内レール11の案内板部21に沿ってスライド移動するとともに、着座体3の回転部材42が案内レール11の上板部22上を回転しながら走行移動する。それゆえ、介護者Bは、比較的軽い力で、被介護者Aをベッド71から車椅子72の座部73上まで容易に移動させることが可能である。
【0052】
そして、介護者Bは、このように被介護者Aを車椅子72の座部73上まで水平移動させた後、案内体2を車椅子72の座部73と着座体3との間から引き抜いて折り畳んで不使用状態にする。この不使用状態にした案内体2は、図9の如く車椅子72の背面の収納部75内に収納する。
【0053】
こうして、ベッド71から車椅子72への被介護者Aの移乗(乗り移り)が完了する。なお、座った姿勢の被介護者Aの臀部と車椅子72の座部73との間に着座体3を残したままでもよいが、例えば着座体3もその間から引き抜いて不使用状態の案内体2と一緒に収納部75内に収納してもよい。また、例えば案内体2や着座体3をキャリーバック等の収納具(図示せず)内に収納して車椅子とは別に運ぶことも可能である。
【0054】
続いて、図13及び図14を参照して移乗補助具1の使用例2について説明する。
【0055】
この使用例2は、例えば上記使用例1の後に、それに引き続き、被介護者Aが介護者Bに補助されながら車椅子72の座部73上の位置(第1の位置)から自動車81の後部座席82の座部83上の位置(第2の位置)に移乗する際、換言すると、介護者Bが被介護者Aを車椅子72から自動車81に移乗させる際に、移乗補助具1が使用される場合の例である。
【0056】
図13に示すように、介護者Bは、まず、展開した使用状態の案内体2の案内レール11の先端部を側方開口状の開口部53から被介護者Aが着座した着座体3の両スライド板部56間のレール挿入空間58に挿入することにより、着座体3を案内体2に対してスライド可能な状態にセットすると同時に、案内体2を車椅子72の座部73と自動車81の後部座席82の座部83との間に水平状に掛け渡す。
【0057】
次いで、図14に示すように、介護者Bは、着座体3に着座した状態の被介護者Aを抱きかかえるようにして車椅子72から自動車81へ、着座体3と一緒に円弧状に移動させる。
【0058】
この際、着座体3は、当該着座体3上に被介護者Aが着座した状態のまま、案内体2の案内レール11に沿って第1の位置側から第2の位置側に向かって円弧状に水平移動する。
【0059】
具体的には、上記使用例1と同様、スライド板部56が案内板部21に沿ってスライド移動するとともに回転部材42が上板部22上を回転しながら走行移動する。これにより、介護者Bは、比較的軽い力で被介護者Aを車椅子72の座部73から自動車81の後部座席82の座部83上まで容易に移動させることが可能である。なお、例えば自動車81の座部83と車椅子72の座部73との高さ位置が異なり、自動車81の座部83が車椅子72の座部73よりも少し高い位置に位置する場合であっても、介護者Bは被介護者Aを着座体3とともにやや斜め上方に向けて容易に移動させることが可能である。
【0060】
そして、介護者Bは、このように被介護者Aを自動車81の後部座席82の座部83上まで水平移動(傾斜移動でもよい)させた後、案内体2をその座部83と着座体3との間から引き抜いて折り畳んで収納部75に収納する。
【0061】
こうして、車椅子72から自動車81への被介護者Aの移乗が完了する。なお図示しないが、被介護者Aが自動車81から車椅子72に戻る場合や車椅子72からベッド71に戻る場合等においても同様で、介護者Bは、案内体2を両者間に掛け渡すとともに着座体3をその案内体2に対して移動可能な状態にセットした後、被介護者Aが着座した状態の着座体3を案内体2に沿って移動させるが、このとき軽い力で被介護者Aを容易に移動(移乗)させることが可能である。
【0062】
そして、このような移乗補助具1によれば、案内体2と、この案内体2に沿って移動可能でかつ被介護者Aが着座可能な着座体3とを備えるため、例えば被介護者Aが体格の大きな人や体重の重い人等であっても、介護者Bは、大変な労力を要することなくその被介護者Aを着座体3上に着座させた状態のまま、一人で容易に移乗させることができ、よって、介護者(移乗補助者)Bの負担軽減を図ることができる。
【0063】
また、長手状の使用状態の案内体2は、折り畳み、分解及び収縮のうち少なくともいずれか一つ、すなわち例えば折り畳み可能であって、展開した使用状態と折り畳んだ不使用状態とに変更可能であるから、不使用時に案内体2を折り畳んでコンパクトにすることで案内体2の収納や持ち運び等が容易となり、よって、介護者Bの負担軽減をより適切に図ることができる。
【0064】
さらに、案内体2が互いに平行な2本の案内レール11を有しかつ着座体3がそれら2本の案内レール11に沿って移動可能な構成であるから、軽量化及びシンプル化を図りつつ、介護者Bの負担軽減を効果的に図ることができる。
【0065】
また、案内レール11が円弧状でかつ着座体3がその円弧状の案内レール11に沿って円弧状に移動可能な構成であるから、例えば車椅子71の肘掛け部74及び被介護者Aの脚部との干渉を回避しつつ、案内レール11を被介護者Aの大腿部の下方側から開口部53を介してレール挿入空間58に容易に挿入できる。
【0066】
さらに、案内レール11は、水平案内面30及び傾斜案内面29を上面側に有するとともに、当該案内レール11の他の部分よりも幅寸法が狭い幅狭部13を先端側に有するため、介護者Bの負担軽減をより一層効果的に図ることができる。
【0067】
また、案内体2と着座体3とは互いに分離可能であるため、両者が分離不可能な構成に比べて、取り扱いが容易となり、介護者Bの負担軽減を図れる。
【0068】
なお、上記実施の形態では、着座体3が円形状である構成について説明したが、例えば図15に示すように、着座体3が略矩形状である構成でもよい。
【0069】
この構成では、着座体3の幅寸法L1は、上記直径Dよりも小さく、案内体2の幅寸法L2以下(L1≦L2)であるから、平面視で着座体3の幅方向両端部が案内体2の案内レール11上に位置する。よって、例えば案内体2に対する着座体3の移動時において、着座体3が車椅子の肘掛け部等に干渉するのを適切に防止できる。なお、この着座体3は、2本の案内レール11間にスライド可能に挿入される挿入部90を下面側に有している。また、着座体3の形状は、例えば楕円等でもよい。
【0070】
また、着座体3は、例えば図16に示す回転式のものでもよい。すなわち例えば、この図16に示す着座体3は、案内体2に沿って移動可能な移動部であるスライド部91と、このスライド部91に対して回転可能(旋回可能)な着座部92とを有している。
【0071】
スライド部91は、2本の案内レール11間にスライド可能に挿入される挿入部93を下面側に有し、かつ、着座部92の回転中心である上下方向の中心軸部94を上面側に有している。
【0072】
また、着座部92は、例えば合成樹脂製のスライド部91に中心軸部94を中心として回転可能に設けられた合成樹脂製のベース部材96と、このベース部材96の上面に固着された弾性変形可能な円形状のクッション部材97とで構成されている。なお、クッション部材97の直径は案内体2の幅寸法よりも大きいが、このクッション部材97は柔軟なクッション材料からなるものであるから、車椅子の肘掛け部等に接触したとしても着座部92を移乗対象の所望位置まで移動させることが可能である。
【0073】
そして、このような回転式の着座体3では、第1の位置及び第2の位置間での移乗の際に、被介護者Aがクッション部材97上に着座した状態の着座部92は、スライド部91とともに案内体2に沿って円弧状に移動しながら当該スライド部91に対して中心軸部94を中心に所定量回転する。よって、介護者Bの負担軽減をより適切に図ることができる。なお、例えば図示しないが、エアークッション等を用いて着座部の高さを調整可能な構成としてもよい。
【0074】
また、着座体3は、案内体2に対して適正な状態でセットされると、案内体2に沿って移動可能となるものであるが、例えば着座体が適正な状態からずれた不適正な状態でセットされた場合に着座体の案内体に対する移動を規制する規制手段を設けてもよい。
【0075】
さらに、案内体2は、不使用時に二つ折りにより第1案内部分6と第2案内部分7とが互いに近接対向して重なる構成であるが、例えば折り畳んだ不使用状態で第1案内部分と第2案内部分との間に所定の隙間(例えば指を挟まない程度の隙間)が存在するようにしてもよい。
【0076】
また一方、上記実施の形態では、第1の位置(一の物体)と第2の位置(他の物体)との間での移乗例として、ベットと車椅子との間や、車椅子と自動車との間での移乗について説明したが、例えば車椅子(シャワーチェアでもよい)と浴槽との間、車椅子とトレイの便座との間、ベッド或いは車椅子とリハビリ機器との間、車椅子とオフィスチェアとの間、ベッド同士の間等における移乗者の移乗にも使用可能であり、また、それら両位置間において移乗者が一人で移乗を行う際にも使用可能である。なお、案内体を水平状に掛け渡すことが好ましいので、第1の位置と第2の位置との間に高低差がある場合でも移乗補助具を使用できるように、例えば上下方向に伸縮可能な高さ調整手段を案内体や着座体等に設けてもよい。
【0077】
また、案内体は、折り畳み及び展開可能な構成(三段折り等でもよい)には限らず、例えば分解及び組立可能な構成(複数の案内部材を組み立てて1つの案内体を形成する構成)や、長手方向である円弧状の案内方向に沿って伸縮可能な構成等でもよい。
【0078】
さらに、案内体は、円弧状に形成されたものには限定されず、例えば案内方向に沿った直線状に形成したものでもよい。
【0079】
また、着座体は、案内体との接触面から受ける力に基づいて従動回転しながら移動する移動用の回転部材(コロやボール等)を有した構成には限定されず、例えばモータ等の駆動源からの動力に基づいて駆動回転しながら移動する回転部材を有した構成等でもよい。
【0080】
なお、本発明のいくつかの実施形態及びその変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 移乗補助具
2 案内体
3 着座体
6 第1案内部分
7 第2案内部分
11 案内レール
29 傾斜案内面
30 水平案内面
42 回転部材
A 移乗者である被介護者
【要約】
【課題】介護者の負担軽減を図ることができる移乗補助具を提供する。
【解決手段】移乗補助具1は、第1の位置と第2の位置との間に掛け渡す案内体2と、この案内体2に沿って移動可能でかつ被介護者が着座可能な着座体3とを備える。案内体2は、展開した使用状態と、折り畳んだ不使用状態とに変更可能である。案内体2は、互いに離間対向する対をなす折り畳み可能な円弧状の案内レール11を有する。着座体3は、両案内レール11に沿って円弧状に移動可能である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
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図16