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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】エルボ管及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 43/00 20060101AFI20231018BHJP
   B22F 10/20 20210101ALI20231018BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20231018BHJP
   B22F 10/34 20210101ALI20231018BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20231018BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231018BHJP
【FI】
F16L43/00
B22F10/20
B22F1/00 Q
B22F10/34
B33Y80/00
B33Y10/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022178551
(22)【出願日】2022-11-08
【審査請求日】2022-11-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年11月8日 JIMTOF2022 第31回 日本国際工作機械見本市(於:東京ビッグサイト 西1ホールブース番号:W1048)に発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000238016
【氏名又は名称】冨士ダイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080012
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 橘馬
(74)【代理人】
【識別番号】100168206
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 健二
(72)【発明者】
【氏名】真弓 茂和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 優太
(72)【発明者】
【氏名】河野 佐季
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-056324(JP,A)
【文献】特開昭60-178121(JP,A)
【文献】特開昭59-207324(JP,A)
【文献】特開平08-158564(JP,A)
【文献】実開昭55-112180(JP,U)
【文献】特開2021-038754(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0337221(US,A1)
【文献】米国特許第05718461(US,A)
【文献】特表2018-511764(JP,A)
【文献】米国特許第01960557(US,A)
【文献】特表2015-534006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/20
B22F 1/00
B22F 10/34
B33Y 80/00
B33Y 10/00
F16L 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端側に入口開口及び出口開口を有するコーナー管部からなるエルボ管であって、
前記コーナー管部の少なくとも外側部分に、前記入口開口が設けられている入口部及び前記出口開口が設けられている出口部の厚さよりも大きい厚さを有する肉厚部が設けられており、
前記肉厚部の厚さは、前記入口部及び前記出口部から長手方向に徐々に大きくなっており、
前記入口開口及び前記出口開口の形状はそれぞれ略多角形状であり、
前記肉厚部の内壁の横断面形状は少なくとも外側部分が曲線状であり、
前記入口部及び前記出口部から前記肉厚部に向けて、前記コーナー管部の内壁の横断面形状がそれぞれ緩やかに変形しており、
積層造形法により一体的に作製された焼結体からなり、
前記焼結体が、超硬合金、サーメット又はセラミックスであることを特徴とするエルボ管。
【請求項2】
前記肉厚部の内壁の横断面形状は円形状又は略円形状であることを特徴とする請求項1に記載のエルボ管。
【請求項3】
両端側に入口開口及び出口開口を有するコーナー管部からなるエルボ管であって、
前記コーナー管部の少なくとも外側部分に、前記入口開口が設けられている入口部及び前記出口開口が設けられている出口部の厚さよりも大きい厚さを有する肉厚部が設けられており、
前記肉厚部の厚さは、前記入口部及び前記出口部から長手方向に徐々に大きくなっており、
前記入口開口及び前記出口開口の形状はそれぞれ円形状であり、
前記肉厚部の内壁の横断面形状は略円形状であり、
前記入口部及び前記出口部から前記肉厚部に向けて、前記コーナー管部の内壁の横断面形状が、前記入口部と前記肉厚部の内側横断面積の差及び前記出口部と前記肉厚部の内側横断面積の差がないように、それぞれ緩やかに変形しており、
積層造形法により一体的に作製された焼結体からなり、
前記焼結体が、超硬合金、サーメット又はセラミックスであることを特徴とするエルボ管。
【請求項4】
前記入口部と前記肉厚部の内側横断面積の差及び前記出口部と前記肉厚部の内側横断面積の差がないことを特徴とする請求項1又は2に記載のエルボ管。
【請求項5】
前記入口部と連通する入口側管部と、前記出口部と連通する出口側管部の少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のエルボ管。
【請求項6】
前記入口側管部及び前記出口側管部はそれぞれ均等の厚さを有することを特徴とする請求項5に記載のエルボ管。
【請求項7】
前記コーナー管部の少なくとも外側部分及び内側部分に、前記入口部及び前記出口部の厚さよりも大きい厚さを有する肉厚部がそれぞれ設けられており、前記外側部分の肉厚部の厚さは前記内側部分の肉厚部の厚さと同じ又はそれより大きいことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のエルボ管。
【請求項8】
請求項1~7に記載のエルボ管を製造する方法であって、
積層造形法により一体的に作製することを特徴とするエルボ管の製造方法。
【請求項9】
前記積層造形法がバインダジェット方式であることを特徴とする請求項に記載のエルボ管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エルボ管及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状材料や粒状材料を含む液体のような流動材料を配管を通して圧送する際、流動材料の流れの方向を変えるのに、一般的に、向きの異なる配管同士を連結するための曲率半径を有する継手(エルボ管)が用いられる。曲率半径(カーブ)を有するエルボ管を用いることにより、配管を通過する流動材料をエルボ管内で滑らかに流れの方向を変えることができるが、それでも流動材料がエルボ管の内壁に衝突することにより、特にエルボ管の外側部分の内壁が摩耗し、穴が空いてしまう等のトラブルが発生する。そのため、エルボ管の内壁の耐摩耗性向上の要求が高まっている。
【0003】
特開2012-115855号公報(特許文献1)は、断面における円周方向の一部が次第に厚くなった偏肉厚パイプを準備する過程と、この偏肉厚パイプを、厚肉側を外側、薄肉側を内側として曲げ加工する過程とを含み、偏肉厚パイプは円周方向の一部が次第に厚くなっている曲がり形状パイプの製造方法を開示している。しかし、一般的な鋼製品であれば曲げ加工によってエルボ管を製造できるが、超硬合金等の硬質材料においては曲げ加工による製造が不可能であり、内径部の加工においては外側から各種工具によって加工するため、特に小径、偏肉、湾曲を有する内径形状によっては加工できる形状の制限があった。さらに分割して部材を作製したのち接合焼結するなどにより、種々の内部形状の部材を作製することができるが、その場合、接合も含めて焼結を複数回行う必要があること、適切な形状・方法にしないと接合面に欠陥を含んで品質を低下させることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-115855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、硬質材料でありながら配管内部の形状の設計自由度が高く、局所的な摩耗を抑えて製品寿命を向上させたエルボ管及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらを解決するため種々検討した結果、本発明者は、積層造形法により、少なくとも外側部分に肉厚部を設けたコーナー管部を備えたエルボ管を一体的に作製することにより、硬質材料でありながら配管内部の形状の設計自由度が高く、局所的な摩耗を抑えて製品寿命を向上させたエルボ管が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0007】
即ち、本発明の一実施態様によるエルボ管は、両端側に入口開口及び出口開口を有するコーナー管部からなるエルボ管であって、前記コーナー管部の少なくとも外側部分に、前記入口開口が設けられている入口部及び前記出口開口が設けられている出口部の厚さよりも大きい厚さを有する肉厚部が設けられており、前記肉厚部の厚さは、前記入口部及び前記出口部から長手方向に徐々に大きくなっており、前記入口開口及び前記出口開口の形状はそれぞれ略多角形状であり、前記肉厚部の内壁の横断面形状は少なくとも外側部分が曲線状であり、前記入口部及び前記出口部から前記肉厚部に向けて、前記コーナー管部の内壁の横断面形状がそれぞれ緩やかに変形しており、積層造形法により一体的に作製された焼結体からなり、前記焼結体が、超硬合金、サーメット又はセラミックスであることを特徴とする。
【0008】
前記入口部と連通する入口側管部と、前記出口部と連通する出口側管部の少なくとも1つをさらに備えるのが好ましく、前記入口側管部及び前記出口側管部はそれぞれ均等の厚さを有するのが好ましい。
【0009】
前記コーナー管部の少なくとも外側部分及び内側部分に、前記入口部及び前記出口部の厚さよりも大きい厚さを有する肉厚部がそれぞれ設けられており、前記外側部分の肉厚部の厚さは前記内側部分の肉厚部の厚さと同じ又はそれより大きいのが好ましい。
【0010】
本発明の他の実施態様によるエルボ管は、両端側に入口開口及び出口開口を有するコーナー管部からなるエルボ管であって、前記コーナー管部の少なくとも外側部分に、前記入口開口が設けられている入口部及び前記出口開口が設けられている出口部の厚さよりも大きい厚さを有する肉厚部が設けられており、前記肉厚部の厚さは、前記入口部及び前記出口部から長手方向に徐々に大きくなっており、前記入口開口及び前記出口開口の形状はそれぞれ円形状であり、前記肉厚部の内壁の横断面形状は略円形状であり、前記入口部及び前記出口部から前記肉厚部に向けて、前記コーナー管部の内壁の横断面形状が、前記入口部と前記肉厚部の内側横断面積の差及び前記出口部と前記肉厚部の内側横断面積の差がないように、それぞれ緩やかに変形しており、積層造形法により一体的に作製された焼結体からなり、前記焼結体が、超硬合金、サーメット又はセラミックスであることを特徴とする
【0013】
本発明の別の実施態様によるエルボ管の製造方法は、上記のエルボ管を製造する方法であって、積層造形法により一体的に作製することを特徴とする。
【0015】
前記積層造形法がバインダジェット方式であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硬質材料でありながら配管内部の形状の設計自由度が高く、局所的な摩耗を抑えて製品寿命を向上させたエルボ管及びその製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一の実施態様によるエルボ管を示す縦断面図である。
図2】本発明の第一の実施態様によるエルボ管を示す斜視図である。
図3】本発明の第一の実施態様によるエルボ管を示す横断面図である。
図4】本発明の第二の実施態様によるエルボ管を示す縦断面図である。
図5】本発明の第二の実施態様によるエルボ管を示す横断面図であり、図5(a) は図4のA-A断面図であり、図5(b) は図4のB-B断面図であり、図5(c) は図4のC-C断面図である。
図6】本発明の第二の実施態様によるエルボ管を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1] エルボ管
本発明の第一の実施態様によるエルボ管を図1又は2に示す。図1又は2に示すエルボ管1は、両端側に入口開口22及び出口開口23を有する入口側管部2と、両端側に入口開口32及び出口開口33を有する出口側管部3と、両端側に入口開口45aを有する入口部45及び出口開口46aを有する出口部46を有するコーナー管部4とを有し、コーナー管部4の入口開口45aと入口側管部2の出口開口23とが連通し、コーナー管部4の出口開口46aと出口側管部3の入口開口32とが連通している。
【0019】
本実施態様では、入口側管部2の筒部21及び出口側管部3の筒部31の内壁の横断面形状はそれぞれ長手方向に同一で円形状であり、入口側管部2の筒部21の厚さt21及び出口側管部3の筒部31の厚さt31は長手方向及び周方向にわたってそれぞれ均等である。入口側管部2及び出口側管部3の内壁の円形状横断面の直径はそれぞれ10~180 mmであるのが好ましい。入口側管部2の筒部21の厚さt21及び出口側管部3の筒部31の厚さt31はそれぞれ3~15 mmであるのが好ましい。
【0020】
入口側管部2の入口開口22側の部分及び出口側管部3の出口開口33側の部分にはそれぞれ他の管と連結するための連結部(図示せず)が設けられていても良い。連結部の形状は特に限定されないが、内壁側に形成された雌ねじ部でも良く、外壁側に形成された雄ねじ部でも良い。入口側管部2と出口側管部3の長手方向の長さは特に限定されないが、入口側管部2及び/又は出口側管部3が連結部のみからなっても良い。
【0021】
本実施態様では、入口側管部2と出口側管部3はそれぞれ互いに直角の方向を向いている。コーナー管部4は長手方向に曲線状に向きを変えて入口側管部2及び出口側管部3に一体的に結合している。従って、コーナー管部4の入口開口45a及び出口開口46aは、入口側管部2の出口開口23及び出口側管部3の入口開口32とそれぞれ同じ円形状であり、コーナー管部4の入口部45及び出口部46の厚さは、入口側管部2の筒部21の厚さ及び出口側管部3の筒部31の厚さとそれぞれ同じである。
【0022】
本実施態様では、コーナー管部4は外側部分41に、入口側管部2の筒部21の厚さt21及び出口側管部3の筒部31の厚さt31よりも大きい厚さt41を有する肉厚部43が設けられている。それにより、流動材料が特に衝突しやすいコーナー管部4の外側部分41の内壁4bの耐摩耗性を向上させることができる。肉厚部43の厚さは、図1に示すように、入口部45及び出口部46から徐々に大きくなっており、肉厚部43の長手方向中心部が最も厚く、かつ図3(a) に示すように、周方向に徐々に大きくなっており、最も厚い部分の厚さを厚さt41とする。周方向の肉厚部43の最も厚い部分以外の部分も、入口側管部2の筒部21の厚さt21及び出口側管部3の筒部31の厚さt31と同じ大きさの又はそれよりも大きい厚さを有するのが好ましい。肉厚部43の厚さt41は3.6~75 mmであるのが好ましい。またコーナー管部4の肉厚部43の最も厚い部分は長手方向中心部に限らず、摩耗しやすい箇所を任意に最も厚くすることができる。
【0023】
本実施態様では、コーナー管部4は外壁4aの横断面形状は、入口側管部2及び出口側管部3の外壁の横断面形状と同じであるのが好ましく、円形状であるのが好ましい。その場合、肉厚部43が設けられたコーナー管部4の内壁4bの横断面形状は、外側部分41が肉厚部43の厚さt41に応じて潰れた略円形状となる。ここで、「略円形状」とは、周方向の一部が潰れているか膨らんでいて、真円からは外れているが、周方向全体が曲線で構成されている形状を言う。
【0024】
肉厚部43の厚さt41は、適宜設定可能であるが、入口側管部2の筒部21の厚さt21及び出口側管部3の筒部31の厚さt31の1.2~5倍であるのが好ましい。1.2倍以上であれば、十分な製品寿命が得られ、5倍を超えると重量やコストの面から望ましくない。
【0025】
エルボ管1の入口側管部2、出口側管部3及びコーナー管部4は積層造形法により一体的に作製された焼結体からなる。積層造形法により一体的に作製することにより、曲げ加工が困難な硬質材料であっても配管内部の形状の設計自由度が高いエルボ管を製造することができる。硬質材料としては、コーナー管部4内を通過する流動材料によりコーナー管部4の内壁4bが摩耗することによって生じるコンタミネーションの影響を低減するため、混入を避けたい元素により、超硬合金、チタン系サーメット等のサーメット、窒化珪素、アルミナ等のセラミックスを選択することができる。使用環境に応じて、装置の軽量化、耐食性等が必要な場合や腐食環境であればサーメットやセラミックスを用いることができる。また粉末冶金で製造しうる、エルボ管に接続される直線部配管の材料よりも高硬度を有する合金や鋼でも良い。
【0026】
肉厚部43が設けられたコーナー管部4の内壁4bの横断面形状は、図3(a) に示す実施例に限らず、図3(b) に示すように円形状でも良い。その場合、コーナー管部4の外壁4aの横断面形状は、外側部分41が肉厚部43の厚さt41に応じて膨らんだ略円形状となる。このように、コーナー管部4に肉厚部43を設けつつ、コーナー管部4の内壁4bの横断面形状を入口側管部2及び出口側管部3の内壁の横断面形状と同じにすることにより、配管を通過する流動材料がコーナー管部4でつまるのを防止でき、コーナー管部4の内壁4bの摩耗を低減できる。
【0027】
肉厚部43が設けられたコーナー管部4の内壁4bの横断面形状が入口側管部2及び出口側管部3の内壁の横断面形状と異なる場合であっても、入口側管部2とコーナー管部4の内側横断面積の差及び出口側管部3とコーナー管部4の内側横断面積の差が、入口側管部2の内側横断面積及び出口側管部3の内側横断面積のそれぞれ50%以内であるのが好ましい。このように、コーナー管部4の内側横断面積と入口側管部2及び出口側管部3の内側横断面積との差が小さければ、配管を通過する流動材料がコーナー管部4でつまるのを防止でき、コーナー管部4の内壁4bの摩耗を低減できる。これらの差はそれぞれ30%以内であるのがより好ましく、20%以内であるのがさらに好ましく、10%以内であるのがさらに好ましく、差がないのが最も好ましい。
【0028】
図3(c) に示すように、コーナー管部4の内側部分42にも、入口側管部2の筒部21の厚さt21及び出口側管部3の筒部31の厚さt31よりも大きい厚さt42を有する肉厚部44が設けられていても良い。それにより、コーナー管部4の内壁4bの摩耗をさらに低減でき、製品寿命をさらに向上できる。コーナー管部4の外側部分41の肉厚部43の厚さt41は内側部分42の肉厚部44の厚さt42と同じ又はそれよりも大きいのが好ましく、大きいのがより好ましい。
【0029】
本発明の第二の実施態様によるエルボ管を図4及び5に示す。第一の実施態様と共通する箇所については説明を省略する。図4及び5に示すエルボ管10は、両端側に入口開口22及び出口開口23を有する入口側管部2と、両端側に入口開口32及び出口開口33を有する出口側管部3と、両端側に入口開口45aを有する入口部45及び出口開口46aを有する出口部46を有するコーナー管部4とを有し、コーナー管部4の入口開口45aと入口側管部2の出口開口23とが連通し、コーナー管部4の出口開口46aと出口側管部3の入口開口32とが連通している。入口側管部2の筒部21及び出口側管部3の筒部31の内壁の横断面形状は長手方向に同一であり、図5(a) 及び5(b) に示すようにそれぞれ略矩形状である。ここで、「略矩形状」とは四隅が曲線状に面取りされた矩形状を言う。入口側管部2の筒部21の厚さt21及び出口側管部3の筒部31の厚さt31は長手方向及び周方向にわたってそれぞれ均等である。従って、コーナー管部4の入口開口45a及び出口開口46aは、入口側管部2の出口開口23及び出口側管部3の入口開口32とそれぞれ同じ略矩形状であり、コーナー管部4の入口部45及び出口部46の厚さは、入口側管部2の筒部21の厚さ及び出口側管部3の筒部31の厚さとそれぞれ同じである。
【0030】
肉厚部43が設けられたコーナー管部4の内壁4bの横断面形状は、図5(c) に示すように略円形状である。コーナー管部4の入口部45及び出口部46から肉厚部44に向かって長手方向に内壁の横断面形状はそれぞれ緩やかに変形している。このように、略矩形状の内壁を有する配管において、肉厚部43が設けられたコーナー管部4の内壁の横断面形状を略円形状にすることにより、配管を通過する流動材料がコーナー管部4でつまるのを防止でき、コーナー管部4の内壁4bの摩耗を低減できる。
【0031】
入口側管部2及び出口側管部3の内壁の横断面形状は略矩形状に限らず、略多角形状の種々の形状を採用できる。ここで、「略多角形状」とは、内角が鈍角の多角形状でも良く、内角が鈍角と鋭角を組み合わせた星形状や歯車状でも良く、角が曲線状に面取りされていても良い。また各辺が直線ではなく、直線に近い曲率半径の大きい曲線であっても良い。いわゆるクッション形状が挙げられる。
【0032】
本実施態様では、コーナー管部4の外壁4aの横断面形状は、図5(c) に示すように円形状である。従って、肉厚部43が設けられたコーナー管部4の内壁4bの横断面形状は、外側部分41が肉厚部43の厚さt41に応じて潰れた略円形状となる。コーナー管部4の内壁4bの横断面形状は、図5(c) に示す実施例に限らず、図6(a) に示すように円形状でも良い。その場合、コーナー管部4の外壁4aの横断面形状は、外側部分41が肉厚部43の厚さt41に応じて膨らんだ略円形状となる。
【0033】
本実施態様では、肉厚部43が設けられたコーナー管部4の内壁4bの横断面形状を略円形状としているが、本発明はこれに限らず、少なくとも外側部分41が曲線状であれば良い。例えば、図6(b) に示すように、コーナー管部4の入口部45及び出口部46の内壁の横断面形状から、外側部分41のみを曲線状に変形しても良い。また図6(c) に示すように、コーナー管部4の入口部45及び出口部46の内壁の横断面形状から、外側部分41及び内側部分42を曲線状に変形しても良い。それにより、変形部分を減らしつつ、効率的にコーナー管部4の内壁4bの摩耗を低減できる。
【0034】
第一の実施態様と同様に、入口側管部2とコーナー管部4の内側横断面積の差及び出口側管部3とコーナー管部4の内側横断面積の差が、入口側管部2の内側横断面積及び出口側管部3の内側横断面積のそれぞれ50%以内であるのが好ましい。このように、コーナー管部4の内側横断面積と入口側管部2及び出口側管部3の内側横断面積との差が小さければ、配管を通過する流動材料がコーナー管部4でつまるのを防止でき、コーナー管部4の内壁4bの摩耗を低減できる。これらの差はそれぞれ30%以内であるのがより好ましく、20%以内であるのがさらに好ましく、10%以内であるのがさらに好ましく、差がないのが最も好ましい。
【0035】
本発明のエルボ管は、第一及び第二の実施態様に限定されず、本発明の思想を逸脱しない範囲で、種々の構成を採用できる。第一及び第二の実施態様では、エルボ管1の入口側管部2、出口側管部3及びコーナー管部4を積層造形法により一体的に作製しているが、本発明はこれに限らず、コーナー管部を備えていれば良く、コーナー管部からなるエルボ管でも良い。またコーナー管部と入口側管部を積層造形法により一体的に作製してなるエルボ管でも良く、コーナー管部と出口側管部を積層造形法により一体的に作製してなるエルボ管でも良い。
【0036】
第一及び第二の実施態様では、入口側管部2と出口側管部3はそれぞれ互いに直角の方向を向いているが、本発明はこれに限らず、入口側管部と出口側管部の向いている方向は適宜変更可能である。
【0037】
[2] エルボ管の製造方法
本発明の一実施態様によるエルボ管の製造方法は、エルボ管を積層造形法により一体的に作製する。積層造形法により一体的に作製することにより、硬質材料でありながら配管内部の形状の設計自由度が高く、局所的な摩耗を抑えて製品寿命を向上させたエルボ管を製造することができる。
【0038】
積層造形法は、一般的に超硬合金、サーメット、セラミックス等の硬質材料や配管材料よりも高硬度を有する合金や鋼等に対して適用可能なものであれば良く、光造形方式、バインダジェット方式、レーザーや電子ビームを用いた方式や溶接ビードを積層させる方式等を種々選択できる。積層造形法の一例は、任意の材料をアトマイズ法等によって球状粉末とし、または合金等を粉砕等により不定形粉末とし、造形ステージに均一な薄層として敷詰める工程と、求める形状の積層方向について薄く切った断面形状に、選択的にレーザーや電子ビーム等を照射する、或いはバインダジェットのようなバインダーを噴射する等の方法によって、求める形状の造形体を得る工程と、この造形体を脱脂処理、真空中又は非酸化性雰囲気中で焼結、及びHIP処理を行う工程から構成されている。
【0039】
本発明のエルボ管を積層造形法により作製することにより、複雑形状の造形体を寸法精度良く作製でき、これを焼結することにより、最終形状に近い焼結体を得られることから、複雑形状の最終製品の製造コストを著しく下げることができる。特に、少量多品種の製品に効果がある。
【符号の説明】
【0040】
1、10・・・エルボ管
2・・・入口側管部
21・・・筒部
22・・・入口開口
23・・・出口開口
3・・・出口側管部
31・・・筒部
32・・・入口開口
33・・・出口開口
4・・・コーナー管部
41・・・外側部分
42・・・内側部分
43・・・肉厚部
44・・・肉厚部
45・・・入口部
45a・・・入口開口
46・・・出口部
46a・・・出口開口
【要約】
【課題】 硬質材料でありながら配管内部の形状の設計自由度が高く、局所的な摩耗を抑えて製品寿命を向上させたエルボ管及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 両端側に入口開口及び出口開口を有するコーナー管部を備えるエルボ管であって、積層造形法により一体的に作製された焼結体からなり、コーナー管部の少なくとも外側部分に、入口開口が設けられている入口部及び出口開口が設けられている出口部の厚さよりも大きい厚さを有する肉厚部が設けられているエルボ管。
【選択図】 図1
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図2
図3
図4
図5
図6