IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人名古屋大学の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】感染症向け医療用モビリティ
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20231018BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
G01C21/26 C
G08G1/0969
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020098880
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021192021
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100140899
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 如洋
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武史
(72)【発明者】
【氏名】矢野 正信
(72)【発明者】
【氏名】平田 仁
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/061647(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/107529(WO,A1)
【文献】特開2004-237084(JP,A)
【文献】国際公開第2020/036207(WO,A1)
【文献】特開2017-004165(JP,A)
【文献】特開平08-304397(JP,A)
【文献】特開2011-089921(JP,A)
【文献】特開2008-000417(JP,A)
【文献】特開2019-114102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に対して実施される病原体に対する感染症検査の検査結果を取得する検査情報取得手段と、
移動情報を取得する移動情報取得手段と、
位置情報を出力する出力手段と、
を有する管理サーバであって、
前記検査情報取得手段は、前記病原体の保菌状態を検査する第1の感染症検査による第1の検査結果と、前記病原体に対して抗体があるかどうかを検査する第2の感染症検査による第2の検査結果と、を取得し、
前記出力手段は、前記第1の検査結果又は前記第2の検査結果の少なくともいずれかが、感染症に対して陽性を示している場合に、前記被検者の移動情報に基づいて、感染源の可能性が高い位置情報を出力し、
前記第1の検査結果が前記感染症に対して陽性を示し、前記第2の検査結果が前記感染症に対して陰性を示している第1の被検者の、前記病原体に対する抗体ができるまでの期間以内の移動情報と、前記第1の検査結果及び前記第2の検査結果のいずれもが前記感染症に対して陽性を示している第2の被検者の、前記病原体に対する抗体ができるまでの期間より以前の移動情報と、に基づいて前記感染源の可能性が高い位置情報を出力する
管理サーバ。
【請求項2】
前記第1の検査結果又は前記第2の検査結果のうちのどちらが、もしくは両方が、前記感染症に対して陽性を示しているかに基づいて、出力する感染源の可能性が高い位置情報を変更する請求項1に記載の管理サーバ。
【請求項3】
前記第1の検査結果又は前記第2の検査結果のうちのどちらが、もしくは両方が、前記感染症に対して陽性を示しているかに基づいて、感染した可能性が高い時期に関する情報を出力する請求項1又は2に記載の管理サーバ。
【請求項4】
前記感染源の可能性が高い位置情報が示す位置までの経路情報を出力する請求項1~のいずれか1項に記載の管理サーバ。
【請求項5】
前記第1の感染症検査は、PCR検査、抗原検査、エアロゾル検査のいずれかであり、前記第2の感染症検査は抗体検査である請求項1~のいずれか1項に記載の管理サーバ。
【請求項6】
被検者に対して実施される病原体に対する感染症検査の検査結果を取得する検査情報取得手段と、
前記被検者の個人情報を取得する被検者情報取得手段と、
位置情報を出力する出力手段と、
を有し、
前記検査情報取得手段が、前記病原体の保菌状態を検査する第1の感染症検査による第1の検査結果と、前記病原体に対して抗体があるかどうかを検査する第2の感染症検査による第2の検査結果と、を取得し、
前記出力手段が、前記第1の検査結果又は前記第2の検査結果の少なくともいずれかが、感染症に対して陽性を示している場合に、前記個人情報に対応付けられた前記被検者の移動情報に基づいて算出された、感染源の可能性が高い位置情報を出力し、
前記第1の検査結果が前記感染症に対して陽性を示し前記第2の検査結果が前記感染症に対して陰性を示している第1の被検者の、前記病原体に対する抗体ができるまでの期間以内の移動情報と、前記第1の検査結果及び前記第2の検査結果のいずれもが前記感染症に対して陽性を示している第2の被検者の、前記病原体に対する抗体ができるまでの期間より以前の移動情報と、に基づいて算出された前記感染源の可能性が高い位置情報を出力する
検査車両。
【請求項7】
前記第1の検査結果又は前記第2の検査結果のうちのどちらが、もしくは両方が、前記感染症に対して陽性を示しているかに基づいて、出力する感染源の可能性が高い位置情報が変更される請求項に記載の検査車両。
【請求項8】
前記第1の検査結果又は前記第2の検査結果のうちのどちらが、もしくは両方が、前記感染症に対して陽性を示しているかに基づいて算出された、感染した可能性が高い時期に関する情報を出力する請求項又はに記載の検査車両。
【請求項9】
前記感染源の可能性が高い位置情報が示す位置までの経路情報を出力する請求項のいずれか1項に記載の検査車両。
【請求項10】
前記第1の感染症検査は、PCR検査、抗原検査、エアロゾル検査のいずれかであり、前記第2の感染症検査は抗体検査である請求項のいずれか1項に記載の検査車両。
【請求項11】
検査車両配車システムであって、
病原体の保菌状態を検査する第1の感染症検査による第1の検査結果と、前記病原体に対して抗体があるかどうかを検査する第2の感染症検査による第2の検査結果と、を取得する検査情報取得手段と、
被検者の個人情報を取得する被検者情報取得手段と、
前記第1の検査結果又は前記第2の検査結果の少なくともいずれかが、感染症に対して陽性を示している場合に、前記個人情報に対応付けられた前記被検者の移動情報に基づいて算出された、感染源の可能性が高い位置情報を出力する出力手段と、
前記第1の感染症検査と前記第2の感染症検査とを行う能力を有する検査車両を、前記出力手段により出力された前記感染源の可能性の高い位置情報が示す位置へ配車する配車手段と、
を有する検査車両配車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症向け医療用モビリティに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2011-89921号公報(特許文献1)がある。この公報には、「移動体で移動中であっても感染に関する地点または地域などを速やかにユーザに知らせることができる移動体用ナビゲーション装置を提供する。外部からの通信データを受信する通信部23と、地図データを取得する地図情報取得部21と、通信部で受信された通信データから表示、案内、探索または検索動作の要否を判断する情報判断部24と、情報判断部から表示動作が必要である旨が通知された場合に、地図情報取得部からの地図データに基づいて感染に関わる地点または地域を表す地図またはメッセージを生成する感染情報表示部25と、地図情報取得部で取得された地図データに基づいて作成した地図上に感染情報表示部からの地図またはメッセージを重畳して表示させる地図表示部26を備えている」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-89921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、移動体用ナビゲーション装置上に感染情報を表示する仕組みが記載されている。しかしながら、感染地域および感染予測地域の情報は予めサーバに蓄積されており、どのようにして感染源の可能性が高い位置情報を算出し出力するのかについては開示が無い。
そこで、本発明は、複数の感染症検査情報に基づいて感染源の可能性が高い位置情報を算出し出力する仕組みを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、被検者に対して実施される病原体に対する感染症検査の検査結果を取得する検査情報取得手段と、移動情報を取得する移動情報取得手段と、位置情報を出力する出力手段と、を有する管理サーバであって、前記検査情報取得手段は、前記病原体の保菌状態を検査する第1の感染症検査による第1の検査結果と、前記病原体に対して抗体があるかどうかを検査する第2の感染症検査による第2の検査結果と、を取得し、前記出力手段は、前記第1の検査結果又は前記第2の検査結果の少なくともいずれかが、感染症に対して陽性を示している場合に、前記被検者の移動情報に基づいて、感染源の可能性が高い位置情報を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、本発明は、複数の感染症検査情報に基づいて感染源の可能性が高い位置情報を算出し出力する仕組みを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】全体の感染情報管理システム1の構成図の例である。
図2】管理サーバ10のハードウェア構成の例である。
図3】検査車両端末20のハードウェア構成の例である。
図4】検査機関端末30のハードウェア構成の例である。
図5】検査車両2の構成の例である。
図6】被検者情報600の例である。
図7】検査管理情報700の例である。
図8】感染源管理情報800の例である。
図9】地図情報900の例である。
図10】経路情報1000の例である。
図11】感染症検査の概要を示す図の例である。
図12】抗体検査結果の発症後推移を示す図の例である。
図13】被検者情報取得処理フロー1300の例である。
図14】検査管理情報取得処理フロー1400の例である。
図15】被検者情報取得管理処理フロー1500の例である。
図16】検査管理情報取得管理処理フロー1600の例である。
図17】感染源推定処理フロー1700の例である。
図18】複数の感染症検査により感染時期を推定する方法を説明する図の例である。
図19】感染源位置算出処理フロー1900の例である。
図20】経路探索処理フロー2000の例である。
図21】1人の被検者に対する感染源の可能性が高い位置の表示画面2100の例である。
図22】複数の被検者に対する感染源の可能性が高い位置の表示画面2200の例である。
図23】複数の被検者に対する感染源の可能性が高い位置の別の表示画面2300の例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
図1は、全体の感染情報管理システム1の構成図の例である。
感染情報管理システム1は、複数の検査車両端末20、複数の検査機関端末30を備え、それぞれがネットワークを介して管理サーバ10及び携帯電話会社サーバ40に接続されている。なお、ネットワークは有線、無線を問わず、それぞれの端末はネットワークを介して情報を送受信することができる。
検査車両端末20は、検査車両2に搭載された端末、若しくは検査車両2に乗車した医療従事者や運転手等の人員が使用する端末である。
検査機関端末30は、感染症検査を行う検査機関が使用する端末である。
携帯電話会社サーバ40は、被検者の使用するスマートフォン等の携帯電話の通信回線事業者が使用するサーバであり、管理サーバ10は、携帯電話会社サーバ40から携帯電話の位置情報を取得することができる。
【0009】
感染情報管理システム1のそれぞれの端末や管理サーバ10は、例えば、スマートフォン、タブレット、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)などの携帯端末(モバイル端末)でもよいし、メガネ型や腕時計型、着衣型などのウェアラブル端末でもよい。また、据置型または携帯型のコンピュータや、クラウドやネットワーク上に配置されるサーバでもよい。また、機能としてはVR(仮想現実:Virtual Reality)端末、AR(拡張現実:Augmented Reality)端末、MR(複合現実:Mixed Reality)端末でもよい。あるいは、これらの複数の端末の組合せであってもよい。例えば、1台のスマートフォンと1台のウェアラブル端末との組合せが論理的に一つの端末として機能し得る。またこれら以外の情報処理端末であってもよい。
【0010】
感染情報管理システム1のそれぞれの端末や管理サーバ10は、それぞれオペレーティングシステムやアプリケーション、プログラムなどを実行するプロセッサと、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置と、ICカードやハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、ネットワークカードや無線通信モジュール、モバイル通信モジュール等の通信制御部と、タッチパネルやキーボード、マウス、音声入力、カメラ部の撮像による動き検知による入力などの入力装置と、モニタやディスプレイ等の出力装置とを備える。なお、出力装置は、外部のモニタやディスプレイ、プリンタ、機器などに、出力するための情報を送信する装置や端子であってもよい。
【0011】
主記憶装置には、各種プログラムやアプリケーションなど(モジュール)が記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサが実行することで全体システムの各機能要素が実現される。なお、これらの各モジュールは集積化する等によりハードウェアで実装してもよい。また、各モジュールはそれぞれ独立したプログラムやアプリケーションでもよいが、1つの統合プログラムやアプリケーションの中の一部のサブプログラムや関数などの形で実装されていてもよい。
【0012】
本明細書では、各モジュールが、処理を行う主体(主語)として記載をしているが、実際には各種プログラムやアプリケーションなど(モジュール)を処理するプロセッサが処理を実行する。
補助記憶装置には、各種データベース(DB)が記憶されている。「データベース」とは、プロセッサまたは外部のコンピュータからの任意のデータ操作(例えば、抽出、追加、削除、上書きなど)に対応できるようにデータ集合を記憶する機能要素(記憶部)である。データベースの実装方法は限定されず、例えばデータベース管理システムでもよいし、表計算ソフトウェアでもよいし、XML、JSONなどのテキストファイルでもよい。
【0013】
図2は、管理サーバ10のハードウェア構成の例である。
管理サーバ10は、例えばクラウド上に配置されたサーバで構成される。
主記憶装置101には、被検者情報管理モジュール111、検査情報管理モジュール112、感染源算出モジュール113、経路探索モジュール114等のプログラムやアプリケーションが記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ103が実行することで管理サーバ10の各機能要素が実現される。
【0014】
被検者情報管理モジュール111は、感染症検査を受けた被検者の情報を収集し、管理する。
検査情報管理モジュール112は、感染症検査の検査結果等を含む感染源管理情報800を収集し、管理する。
感染源算出モジュール113は、感染症検査の検査結果等を含む感染源管理情報800や被検者情報600に基づいて、推定感染時期や感染源の可能性が高い位置の算出を行う。
経路探索モジュール114は、感染源の可能性が高い位置までの経路情報を探索し、検査車両2のナビ表示モジュール213と連携してナビゲーション機能を提供する。
【0015】
補助記憶装置102は、被検者の情報を記憶する被検者情報600、検査結果等の情報を記憶する検査管理情報700、算出した感染源に関する情報を記憶する感染源管理情報800、地図情報900、探索された経路情報を記憶する経路情報1000等を記憶する。
【0016】
図3は、検査車両端末20のハードウェア構成の例である。
検査車両端末20は、例えばスマートフォン、タブレット、ノートPC、デスクトップPC等の端末で構成される。
主記憶装置201には、被検者情報取得モジュール211、検査情報取得モジュール212、ナビ表示モジュール213等のプログラムやアプリケーションが記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ203が実行することで検査車両端末20の各機能要素が実現される。
【0017】
被検者情報取得モジュール211は、被検者から検体を採取した際に、併せて被検者から被検者を特定する被検者情報600を取得する。
検査情報取得モジュール212は、被検者から採取した検体や検査に関する情報を取得し、検査管理情報700として記憶する。
ナビ表示モジュール213は、管理サーバ10の経路探索モジュール114と連携し、感染源の可能性が高い位置までのナビゲーション機能を提供する。
補助記憶装置202は、管理サーバ10の情報に対応する被検者情報600、検査管理情報700、感染源管理情報800、地図情報900、経路情報1000等を記憶する。
【0018】
図4は、検査機関端末30のハードウェア構成の例である。
検査機関端末30は、例えばスマートフォン、タブレット、ノートPC、デスクトップPC等の端末で構成される。
主記憶装置301には、被検者情報管理モジュール311、検査実施モジュール312が等のプログラムやアプリケーションが記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ303が実行することで検査機関端末30の各機能要素が実現される。
【0019】
被検者情報管理モジュール311は、検査を実施する被検者に関する情報を記憶する。
検査実施モジュール312は、被検者から採取した検体に対して、検査装置を駆動して検査を実施することで検査結果を取得する。
補助記憶装置302は、被検者の情報を記憶する被検者情報600及び検査結果等の情報を記憶する検査管理情報700等を記憶する。
【0020】
図5は、検査車両2の構成の例である。
検査車両2は、車両内に簡易ベッド540を搭載した休憩室兼緊急移送室541及び検体を採取するための採取室551を備えた車両である。
運転室550と休憩室兼緊急移送室541と採取室551はそれぞれ仕切り550a、550bで区分けされており、それぞれ空気圧を変更することが可能である。
患者を緊急移送する場合には、休憩室兼緊急移送室541は陰圧状態に設定され、陽圧状態に設定された運転室550や採取室551に患者の感染症ウイルスが流れ出ないようにしている。
【0021】
採取室551には臨床検査技師510が配置され、検査車両2の検体採取隔壁534の検体採取用手袋531を介して、外に並んでいる被検者520から検体を採取する。
採取された検体は、検体保管冷蔵庫533に保管され、検査機関に輸送される。ディスプレイ532には受付に関する情報が表示される。
採取室551ではウイルス(例えば新型コロナウイルス)に対する抗原検査、抗体検査、エアロゾル検査等の複数の感染症検査を実施することができる。また採取した検体を検査機関に輸送し、検査機関においてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査を実施することもできる。
検査車両2には、検査車両端末20が設置されており、被検者情報600や検査管理情報700を収集する。また、検査車両2のナビゲーション機能と連携し、感染源の可能性が高い位置へのナビゲーションを行う。
【0022】
図6図10は、管理サーバ10や検査車両端末20に記憶されてる各種情報である。
図6は、被検者情報600の例である。
被検者情報600は、感染症検査を行った被検者に関する情報を記憶する。例えば、被検者ID611、メールアドレス、パスワード、氏名、電話番号、性別、住所、生年月日、個人特定情報612、携帯電話会社情報613、携帯電話会社認証情報614、位置情報615等が記憶される。
被検者ID611は、被検者を一意に特定する識別情報であり、他の情報から参照されるキーになる情報である。
個人特定情報612は、被検者の個人情報を特定する情報であり、マイナンバーや被保険者番号等である。
【0023】
携帯電話会社情報613は、携帯電話会社(通信回線事業者)又は携帯電話会社サーバ40を特定する情報である。
携帯電話会社認証情報614は、携帯電話会社サーバ40との間で認証を行う場合に使用される認証情報である。
位置情報615は、被検者のスマートフォン等の携帯電話のGPS情報や、携帯電話会社サーバ40から取得した携帯電話の位置座標情報である。位置座標情報には時間情報が対応付けられており、時系列に位置座標情報を並べることで、携帯電話の移動情報を得ることができる。
また、被検者の位置情報は、スマートフォン等の携帯電話に記憶されている位置座標情報に限らず、それ以外の方法でもよい。例えば、被検者の感染症検査時の問診等で取得してもよい。
【0024】
本実施例では、被検者に対して複数の感染症検査を実施し、これらの結果が感染症に対して陽性を示していた場合に、被検者の過去の移動情報に基づいて、感染源の可能性が高い位置情報を特定する。被検者の過去の移動情報は、スマートフォン等の携帯電話に記憶されている位置座標情報から取得される、又は、携帯電話会社認証情報614により認証が行われた携帯電話会社サーバ40から取得される。
【0025】
なお、本実施例では、被検者の携帯電話の位置情報を被検者の位置情報と呼び、また、被検者の携帯電話の移動情報を被検者の移動情報と呼ぶ。
また、被検者の大まかな位置情報を特定できればよいため、携帯電話に限られず、モバイルデバイスや、ウェアラブル機器、被検者が乗車するGPS機能が搭載された自動車、等から位置情報を取得し、これを被検者の位置情報として使用してもよい。
【0026】
図7は、検査管理情報700の例である。
検査管理情報700は、被検者から採取した検体に対する検査内容を管理する情報である。例えば、検査ID711、検査種別712、被検者ID713、被検者名714、検体ID715、検査結果716、検査日時717等が記憶される。
検査ID711は、実施された検査を一意に特定する識別情報である。
検査種別712は、検査の種別を示す。例えば新型コロナウイルスに対するPCR検査、抗原検査、エアロゾル検査、抗体検査等が記憶される。
被検者ID713は、検査を実施した被検者に関する情報であり、被検者情報600の被検者ID611の値が記憶される。
被検者名714は、検査を実施された被検者の名前である。
【0027】
検体ID715は、検体を特定する情報である。例えば検体を格納する検体格納容器に貼付されたバーコードラベルを読み取ることにより値が取得され、記憶される。
検査結果716は、実施した感染症検査の検査結果を記憶する。本実施例では、PCR検査、抗原検査、エアロゾル検査、等の感染症ウイルスを保菌しているかどうかを確認する検査をまとめて保菌状態検査と呼び、保菌していることを示す陽性、保菌していないことを示す陰性が検査結果716に記憶される。抗体検査においては、感染症ウイルスに対して抗体を有していることを示す陽性、抗体ができていないことを示す陰性が記憶される。
検査日時717は、検査を実施した日時である。
【0028】
図8は、感染源管理情報800の例である。
感染源管理情報800は、複数の感染症検査の検査結果に基づいて算出された感染源に関連する情報が記憶される。例えば、感染源管理ID811、感染源管理名812、感染源位置813、推定感染時期814、感染関連被検者ID815、感染関連被検者移動情報816等が記憶される。
感染源管理ID811は、感染源を一意に特定する識別情報である。
感染源管理名812は、感染源につけられた任意の名称である。
【0029】
感染源位置813は、複数の感染症検査の検査結果に基づいて算出された感染源の可能性が高い位置情報が記憶される。
推定感染時期814は、複数の感染症検査の検査結果に基づいて算出された感染源となった可能性が高い時期に関する情報が記憶される。
感染関連被検者ID815は、感染源に関連する被検者の情報が記憶され、被検者情報600の被検者ID611の値が記憶される。
感染関連被検者移動情報816は、感染に関連する被検者の移動情報が記憶される。
【0030】
図9は、地図情報900の例である。
地図情報900は、表示部などの出力装置105に表示する地図の情報である。例えば、地図を一意に特定する識別情報である地図ID911や実際の地図データである地図情報912が記憶される。
【0031】
図10は、経路情報1000の例である。
経路情報1000は、感染源までの経路探索を実行した場合の経路の情報が記憶される。例えば、経路ID1011、経路名1012、経路情報1013、関連感染源管理ID1014等が記憶される。
経路ID1011は、探索された経路を一意に特定する識別情報である。
経路名1012は、経路につけられた任意の名称を記憶する。
経路情報1013は、経路を示す座標情報の組等の経路データである。
関連感染源管理ID1014は、目的地である感染源を特定する情報であり、感染源管理情報800の感染源管理ID811の値が参照される。
【0032】
被検者情報600、検査管理情報700、感染源管理情報800、地図情報900、経路情報1000は、管理サーバ10、検査車両端末20、検査機関端末30で共有される。全く同じ情報が共有される構成としてもよいし、それぞれの情報の中の一部のデータのみが共有される構成であってもよい。送受信される対応するデータに基づいて、それぞれの情報を新たに作成してもよいし、既存の情報をアップデートする構成にしてもよいし、同期する構成としてもよい。全く同じデータ構造とする必要はなく、対応する情報が記憶されていればよい。
【0033】
図11は、感染症検査の概要を示す図の例である。
本実施例では、新型コロナウイルスに対する感染症検査を例に説明するが、図11は4種類の感染症検査の違いを説明する図の例である。
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査は、唾液や、たんや鼻の奥の粘膜から採取した検体に対して、ウイルスの遺伝子を検査するものである。ウイルスの増幅を行うために検査結果が出るまで4~6時間程度の時間が必要である。感染後検査結果として陽性が現れるまでの期間は約2日程度と短く、感染初期の無症状の状態でも陽性反応が現れて保菌状態を検出することができる。
【0034】
抗原検査は、唾液や鼻の奥の粘膜から採取した検体に対して、ウイルスの抗原が存在するかを検査するものである。抗原有無を試薬により短期で検査でき、15~30分程度の時間で検査結果が得られる。但し、PCR検査に比べると検査精度は高くない。感染後検査結果として陽性が現れるまでの期間は約2日程度と短く、感染初期の無症状の状態でも陽性反応が現れて保菌状態を検出することができる。
【0035】
エアロゾル検査は、呼気を検査機器に吹き込むことにより、呼気中に排菌されているウイルスを検査するものである。非常に短期間で検査でき、10~15分程度の時間で検査結果が得られる。感染後検査結果として陽性が現れるまでの期間は約2日程度と短く、感染初期の無症状の状態でも陽性反応が現れて保菌状態を検出することができる。
PCR検査、抗原検査、エアロゾル検査は、いずれも被検者の病原体の保菌状態を検出することができるため、本実施例ではこれらの保菌状態を検出する検査を、まとめて保菌状態検査と呼ぶ。
【0036】
抗体検査は、被検者から採取した血液から、ウイルスに対する抗体の有無を検査するものである。抗体有無を試薬により非常に短期間で検査でき、10~15分程度の時間で検査結果が得られる。感染後抗体ができるまでに時間を要するために、検査結果として陽性(抗体がある状態)が発見できるようになるまでの期間は約1週間程度かかる。これよりも前の期間では、感染していたとしても抗体ができきっておらず、陽性反応が現れにくい。
体内のIgM抗体と、IgG抗体の比率を見ることにより、検査実施時のどれくらい前に感染していたかの感染時期の推定が可能である。
【0037】
図12は、抗体検査結果の発症後推移を示す図の例である。
ウイルスが侵入して間もなくIgM抗体が増加し、その後1週間を過ぎたあたりから減少する。一方IgG抗体が徐々に増加する。
従って、このIgM抗体とIgG抗体の比率を見ることにより、検査実施時のどれくらい前に病原体のウイルスに感染していたかの感染時期の推定が可能である。
【0038】
図13は、検査車両2で実行される被検者情報取得処理フロー1300の例である。
被検者情報取得処理フロー1300は、検査を実施する際に被検者情報取得モジュール211が被検者の個人情報を取得する処理フローである。
被検者情報取得モジュール211は、検査に際して被検者の個人情報を取得する(ステップ1310)。
被検者情報取得モジュール211は、被検者の携帯電話会社情報、携帯電話会社認証情報、GPS位置情報等の携帯電話情報を取得する(ステップ1320)。
被検者情報取得モジュール211は、取得した情報を被検者IDと対応付けて、被検者情報600に記憶する(ステップ1330)。
取得された携帯電話情報は、携帯電話会社情報613、携帯電話会社認証情報614、位置情報615等として被検者情報600に記憶される。
【0039】
図14は、検査車両2で実行される検査管理情報取得処理フロー1400の例である。
検体回収容器に貼付されたバーコードをバーコードリーダー等の入力装置204で読み取ることにより、検査情報取得モジュール212は、検体回収容器の検体ID715と検査ID711及び被検者ID611とを対応付ける(ステップ1410)。
検査技師やロボットマニュピレータは、被検者から検体を採取し、検体回収容器に格納する(ステップ1420)。
検査技師は、試薬により又は検査装置を使用して、検体に対する感染症検査を実施する(ステップ1430)。
【0040】
検査情報取得モジュール212は、検査結果を取得し、検査IDと対応付けて記憶する(ステップ1430)。検査結果としては、例えば、PCR検査、抗原検査、エアロゾル検査等の保菌状態検査では、保菌しているかどうかの陽性又は陰性の情報、抗体検査では抗体を有しているかどうかの陽性又は陰性の情報、等が記憶される。
検査が検査機関により実施される場合には、検査機関端末30の検査実施モジュール312が、検査装置を駆動して検査結果を取得する。取得された検査結果は、検査機関端末30の検査管理情報700として記憶、管理され、検査車両2や管理サーバ10と共有される。
【0041】
図15は、管理サーバ10で実行される被検者情報取得管理処理フロー1500の例である。
管理サーバ10の被検者情報管理モジュール111は、検査車両2から被検者情報600を取得する(ステップ1510)。
被検者情報管理モジュール111は、携帯電話会社情報613で特定される携帯電話会社サーバ40と連携し、被検者の携帯電話の移動情報を取得する(ステップ1520)。
具体的には、被検者情報管理モジュール111は、被検者情報600に記憶されている被検者の個人情報と携帯電話会社認証情報614とを利用して、携帯電話会社サーバ40にアクセスし被検者の携帯電話の移動情報を取得する。
被検者情報管理モジュール111は、取得した移動情報を含め、被検者情報600を管理サーバ10の補助記憶装置102に記憶する(ステップ1530)。
【0042】
図16は、管理サーバ10で実行される検査管理情報取得管理処理フロー1600の例である。
検査情報管理モジュール112は、検査車両2の検査車両端末20や検査機関端末30から検査管理情報700を取得する(ステップ1610)。
検査情報管理モジュール112は、取得した検査管理情報700を記憶する(ステップ1620)。
【0043】
図17は、管理サーバ10で実行される感染源推定処理フロー1700の例である。
管理サーバ10の感染源算出モジュール113は、複数の感染症検査の検査結果に基づいて、陽性反応が出た被検者が感染した推定感染時期を推定し、その推定感染時期に関連した感染源の可能性が高い位置を算出する。
感染源算出モジュール113は、複数の検査管理情報700を取得する(ステップ1710)。
感染源算出モジュール113は、検査管理情報700に基づいて、推定感染時刻を算出する(ステップ1720)。
【0044】
感染源算出モジュール113は、検査管理情報700に基づいて、感染源の可能性が高い位置を算出する(ステップ1730)。
感染源算出モジュール113は、算出された感染源の可能性が高い位置情報を、管理サーバ10のディスプレイ等の出力装置105に出力する、または、検査車両2に出力し、検査車両2のナビ表示モジュール213がディスプレイ等の出力装置205に出力する(ステップ1740)。
【0045】
図18は、複数の感染症検査により感染時期を推定する方法を説明する図の例である。
図11で説明したように、PCR検査、抗原検査、エアロゾル検査等の保菌状態検査は、被検者が感染症の病原体に感染した約2日後には陽性又は陰性の判定が可能となる。一方、抗体検査は感染後に病原体に対する抗体ができるまでの期間は、感染していたとしても陽性反応が現れず、陽性又は陰性の判定が難しい。新型コロナウイルスの例では抗体ができるまでの期間は約7日間である。
以下説明する保菌状態検査と抗体検査の2種類の感染症検査を用いた感染時期の推定は、感染している場合には感染後2日目以降の被検者を想定している。
【0046】
保菌状態検査の検査結果及び抗体検査の検査結果の両方が陰性の場合には、被検者はウイルスに感染していない。
保菌状態検査の検査結果が陽性であるが、抗体検査の検査結果が陰性である場合には、被検者はウイルスに感染しており、抗体ができる過去7日間以内に感染したと推定できる。
保菌状態検査の検査結果が陽性であり、かつ抗体検査の検査結果も陽性である場合には、保菌状態であると共に、すでに抗体ができ始めている状態であり、抗体ができる7日以降であって平均的な完治の期間である3週間以内に感染したと推定できる。
保菌状態検査の検査結果が陰性であるが、抗体検査の検査結果が陽性である場合には、平均的な完治の期間である3週間以上前に感染したと推定できる。
さらに、抗体検査による検査結果から、体内のIgM抗体とIgG抗体の比率を算出することにより、検査実施時のどれくらい前に感染していたかの感染時期の推定を併せて行うことも可能である。
【0047】
情報処理としてより具体的に記載すると、感染源算出モジュール113は、補助記憶装置102から保菌状態検査の検査結果が記憶されている検査管理情報700と、抗体検査の検査結果が記憶されている検査管理情報700を読み出し、これらの情報の検査結果716の値から、検査結果が感染症に対して陽性を示しているか陰性を示しているかを判定する。感染源算出モジュール113は、これらの2つの感染症検査の検査結果の陽性又は陰性の組み合わせに基づいて、図18のマトリックスの関係から感染時期を推定する。
さらに、これと併せて、抗体検査による検査結果を取得し、IgM抗体とIgG抗体の比率を算出することにより、感染時期の推定を併せて実行することも可能である。
【0048】
図19は、管理サーバ10で実行される感染源位置算出処理フロー1900の例である。図17の感染源推定処理フロー1700の感染源の可能性が高い位置を算出するステップ1730の処理の詳細である。
感染源算出モジュール113は、記憶装置に記憶されている被検者情報600から、陽性反応の出た被検者の位置情報615を取得する(ステップ1910)。
陽性反応の出た被検者の位置情報615は、被検者の携帯電話のGPS位置情報や、携帯電話会社サーバ40から提供された位置情報をあらかじめ記憶しているが、このステップ1910のタイミングで取得を行ってもよい。
【0049】
感染源算出モジュール113は、図17の推定感染時期算出ステップ1720により算出された推定感染時期における、陽性反応が出た被検者の位置情報を抽出する(ステップ1920)。
特定のエリア内(例えば表示する画面エリア)で陽性反応の出た被検者が1人の場合には(ステップ1930がNo)、感染源算出モジュール113は、抽出された位置情報を、感染源の可能性が高い位置情報として算出する(ステップ1950)。
一方、特定のエリア内で陽性反応の出た被検者が複数人いる場合には(ステップ1930がYes)、感染源算出モジュール113は、複数の被検者の位置情報が重なる位置を抽出し(ステップ1940)、抽出した位置を、感染源の可能性が高い位置情報として算出する(ステップ1950)。
【0050】
なお、感染源算出モジュール113は、抽出した位置情報の中から、さらに、
・位置情報変化が少なく滞在時間が長い建物や場所
・敷地面積や建物面積などが狭い建物
・レストラン、パチンコ店、カラオケボックス等、人が密集する可能性が高い予め定められた特定の種類の建物
・イベント情報から取得された人が集まるイベント会場
等の建物や場所の位置情報を抽出し、感染源の可能性が高い位置情報として算出してもよい。
【0051】
なお、感染源推定処理フロー1700、推定感染時期算出処理(図17のステップ1930)、感染源位置算出処理フロー1900は、管理サーバ10の感染源算出モジュール113が実施する構成だが、これに限られず、検査車両2の検査車両端末20の図示しない感染源算出モジュールが実施する構成でもよい。またその一部を管理サーバ10で実施し、その他を検査車両端末20で実施して、互いに連携する構成であってもよい。
以上の通り、二種類の感染症検査の結果のうちのどちらが感染症に対して陽性を示しているか、もしくは両方が陽性を示しているか、に基づいて推定感染時期が変更され、これに応じて、出力される感染源の可能性が高い位置情報も変更される。
【0052】
図20は、経路探索処理フロー2000の例である。
管理サーバ10の経路探索モジュール114は、算出された感染源の可能性が高い位置情報を取得する(ステップ2010)。
経路探索モジュール114は、検査車両2の位置情報を取得する(ステップ2020)。なお、検査車両2が複数台ある場合には、それぞれの位置情報を取得する。
経路探索モジュール114は、感染源の可能性が高い位置情報までの、各検査車両2の移動経路を探索する(ステップ2030)。
経路探索モジュール114は、探索された移動経路情報を経路情報1000として記憶し、各検査車両2に送信する(ステップ2040)、又は、管理サーバ10のディスプレイ等の出力装置105に出力する。
【0053】
なお、検査車両2が複数台ある場合には、最も感染源の可能性が高い位置情報までの距離が近い車両や最も到達時間が短い検査車両2に対してのみ経路情報を送信する構成でもよい。
または、各検査車両2に対して、各検査車両自身の経路情報だけでなく、他の検査車両の経路情報も併せて送信する構成でもよい。
経路情報を受信した検査車両2の検査車両端末20は、経路情報1000を補助記憶装置202に記憶する。また、ナビ表示モジュール213が、受信した経路情報1000に基づいてナビゲーション機能を提供する。
【0054】
なお、経路探索処理フロー2000は、管理サーバ10の経路探索モジュール114が実行することとしたが、検査車両端末20のナビ表示モジュール213が実行する構成でもよい。
この場合は、検査車両端末20が、感染源の可能性が高い位置情報を管理サーバ10から受信し、検査車両端末20の位置情報に基づいて、ナビ表示モジュール213が感染源の可能性が高い位置情報までの移動経路を算出する。
【0055】
図21は、1人の被検者に対する感染源の可能性が高い位置の表示画面2100の例である。
図21図23は、管理サーバ10の経路探索モジュール114が、ディスプレイ等の出力装置105に出力する画面である。又は、管理サーバ10から受信した感染源管理情報800や経路情報1000に基づいて、検査車両端末20のナビ表示モジュール213が、ディスプレイ等の出力装置205に出力する画面である。
【0056】
指標表示2110は、地図の方位や縮尺を表す。
地図上には、感染症検査の結果に陽性反応が現れた特定の被検者の移動があった日の移動情報が表示されている。
この被検者は、保菌状態検査が陽性であったが抗体検査が陰性であった被検者であり、感染源推定処理1700の結果、推定感染時期として7日以内であることが算出されている。従って、表示画面2100には、被検者の過去7日以内の移動情報のみが感染源の可能性が高い位置情報として表示されている。
【0057】
表示画面2100では、更に特に感染症に感染するリスクの高い、外出した日のみを抽出して表示されており、6日前の移動情報2121、4日前の移動情報2122、3日前の移動情報2123がプロットされている。外出した日は、例えば所定の距離や起点からの所定の半径距離以上移動した位置情報のみを抽出することで得られる。
日付表示は、その日にちに移動した軌跡を示す。日付表示の下のかっこ書きで囲われた日数は、検査実施日から何日前の移動情報であるかを示す。
例えば移動情報2121は、検査実施から6日前である5月14日の被検者が移動した位置情報の軌跡を示す。
【0058】
感染源ポイント2131、2132、2133は、感染源の可能性が高い位置情報である移動情報2121、2122、2123のうち、特に感染源となった可能性が高い建物などを特定して、視覚的に分かり易く区別して表示している。
例えば、移動情報2121、2122、2123を時系列でたどった場合に、滞在時間が長い(位置情報の時間変化が少ない)場所又はその場所に位置する建物を抽出することで得られる。
その他の例では、感染源の可能性が高い位置情報上で、敷地面積や建物面積などが狭い建物や、レストラン、パチンコ店、カラオケボックス等、人が密集する可能性が高い予め定められた特定の種類の建物、イベント情報から取得された人が集まるイベント会場などが抽出され、感染源ポイントとしてマークされてもよい。
【0059】
表示画面2100には、自身の検査車両2150及び感染情報管理システム1に繋がった他の検査車両2151が表示されており、感染源ポイントまでのナビゲーション機能2140が提供され、特定の感染源ポイント2141が選択された場合には、その位置までのナビゲーションを開始する。
【0060】
図22は、複数の被検者に対する感染源の可能性が高い位置の表示画面2200の例である。
感染源算出モジュール113は、陽性反応の出た複数の被検者の移動情報に基づいて、感染源の可能性が高い位置情報を算出し、表示する。
移動情報2211、2212、2213は、保菌状態検査及び抗体検査のいずれもが陽性であり、感染源推定処理1700の結果、推定感染時期が1~3週間前と算出された複数の被検者の移動情報が表示されている。この表示例では、複数の被検者の移動情報が重なった検査実施から12日前の5月8日の移動情報が抽出され表示されている。
【0061】
移動情報2221、2222、2223は、保菌状態検査が陽性であったが抗体検査が陰性であった被検者であり、感染源推定処理1700の結果、推定感染時期が7日以内と算出された複数の被検者の移動情報が表示されている。この表示例では、複数の被検者の移動情報が重なった検査実施から4日前の5月16日の移動情報が抽出され表示されている。
【0062】
感染源ポイント2231、2232は、複数の移動情報のうち、複数の位置情報が重なった特に感染源の可能性が高い場所を示している。
感染源ポイント2231は、検査実施4日前の5月16日に複数の陽性の被検者が訪問した場所であり、感染源ポイント2232は、検査実施12日前の5月8日に複数の陽性の被検者訪問した場所であって、それぞれクラスター感染源(集団感染源)となっていた可能性が高い。
【0063】
さらに、図21で説明したものと同様に、特定の建物やイベントを感染源ポイントとして抽出する構成でもよい。
表示画面2200には、自身の検査車両2250及び感染情報管理システム1に繋がった他の検査車両2251が表示されており、感染源ポイントまでのナビゲーション機能2240が提供され、特定の感染源ポイント2241が選択された場合には、その位置までのナビゲーションが開始される。
【0064】
図23は、複数の被検者に対する感染源の可能性が高い位置の別の表示画面2300の例である。この表示画面2300では、複数の日数に渡って実施された感染症検査について特定の日付(この例では5月16日)の移動軌跡を表示したものである。
感染源算出モジュール113は、陽性反応の出た複数の被検者の移動情報に基づいて、感染源の可能性が高い位置情報を算出し、表示する。
移動情報2321、2322、2323は、保菌状態検査が陽性であったが抗体検査が陰性であった被検者であり、感染源推定処理1700の結果、推定感染時期が7日以内と算出された複数の被検者の移動情報が表示されている。この表示例では、5月16日が検査実施から4日前である移動情報2321と2322及び、5月16日が検査実施から6日前である移動情報2323が表示されている。
【0065】
移動情報2324は、保菌状態検査及び抗体検査のいずれもが陽性であり、感染源推定処理1700の結果、推定感染時期が1~3週間前と算出された被検者の移動情報が表示されている。この表示例では、5月16日が検査実施から12日前である移動情報2324が表示されている。
移動情報2321、2322、2323、2324は感染症検査を実施した日付が異なるが、いずれも複数の感染症検査の検査結果に基づいて推定感染時期を特定し、その日付が同じもの(この例では5月16日)の位置情報を抽出することで感染源の可能性が高い位置情報を算出している。
【0066】
感染源ポイント2331は、複数の移動情報のうち、複数の位置情報が重なった特に感染源の可能性が高い場所を示している。感染源ポイント2331は、感染症検査を実施した日付が異なるが、いずれも5月16日に複数の陽性の被検者が訪問した場所であり、集団感染源となっていた可能性が高い。
さらに、図21で説明したものと同様に、特定の建物やイベントを感染源ポイントとして抽出する構成でもよい。
表示画面2300には、自身の検査車両2350及び感染情報管理システム1に繋がった他の検査車両2351が表示されており、感染源ポイントまでのナビゲーション機能2340が提供され、特定の感染源ポイント2341が選択された場合には、その位置までのナビゲーションが開始される。
【0067】
以上様々なバリエーションを説明したが、複数の感染症検査の検査結果に基づいて算出される感染源の可能性が高い位置情報は、少なくとも以下のものが適宜選択可能である。
・1名の被検者の推定感染時期の移動経路
・1名の被検者の推定感染時期の移動経路のうち、滞在時間が長い(位置情報の時間変化が少ない)場所又はその場所に位置する建物、敷地面積や建物面積などが狭い建物、レストラン、パチンコ店、カラオケボックス等、人が密集する可能性が高い予め定められた特定の種類の建物、イベント情報から取得された人が集まるイベント会場
・複数の被検者の推定感染時期の移動経路
・複数の被検者の推定感染時期の移動経路のうち、移動経路が重なった場所や建物
・複数の被検者の推定感染時期の移動経路のうち、移動経路が重なった場所や建物であって、さらに滞在時間が長い(位置情報の時間変化が少ない)場所又はその場所に位置する建物、敷地面積や建物面積などが狭い建物、レストラン、パチンコ店、カラオケボックス等、人が密集する可能性が高い予め定められた特定の種類の建物、イベント情報から取得された人が集まるイベント会場
【0068】
以上説明した本実施例では、感染症検査の結果が陽性となった被検者の移動情報のうち、複数の感染症検査の検査結果の組み合わせに基づいて推定感染時期を特定して、その時期の移動情報を絞り込むことにより、感染源の可能性が高い位置情報を特定する。
このように複数の検査結果を組み合わせて使用することで、感染源の可能性が高い位置情報を絞り込んで算出する仕組みを提供することができる。
そして、この感染源の可能性が高い位置ではこのような場所ではウイルスの集団感染が起きている可能性が高いものとして、至急検査車両2を配車し、周辺住民や建物の訪問者、従業員に対する感染症検査を実施する。
複数の感染症検査の検査結果に基づいて、感染源の可能性が高い位置情報と感染時期を算出することで、実際に集団感染が発生した可能性がある場所での検査車両による重点的な感染症検査が可能となり、集団感染の拡大を抑止することができる。
【0069】
なお、感染源の可能性が高い位置情報を表示する代わりに、陽性反応の出た被検者が多く排菌した可能性が高い位置情報を出力する構成としてもよい。新型コロナウイルスでは、一般的に感染後4日目あたりのウイルスの排菌量が多く、上述した推定感染時期の4日後の位置情報を取得することで、被検者が多く排菌した可能性が高い位置情報を算出し、表示することができる。
被検者が多く排菌した可能性が高い位置に検査車両2を配送することで、その位置での重点的な感染症検査を実施することができる。
【0070】
本実施例で説明した検査車両2は、単独で又は他の検査機関と連携して複数の感染症検査を行う能力を有しており、これらの複数の検査結果を管理サーバ10に送信する仕組み及び、管理サーバ10により分析され算出された感染源の可能性が高い位置情報を受信して、その位置に急行する仕組みを備えており、感染症の拡大を抑止する医療用モビリティを提供する。
また、本実施例においては、検査車両2を感染源の可能性が高い位置情報に配車する構成であるが、これに限られず、管理サーバ10で算出した感染源の可能性が高い位置情報を用いて救急車両やタクシー、バスなどを配車し、医療施設に感染源付近にいる住民を移動することにより感染症の治療や拡大の抑止を行う構成にすることもできる。更にこれらの地上走行する車両に限られず、移動体であればよく、ヘリコプターやドローンを配送することもできる。なお、上記ナビゲーション、配車、配送等は検査車両2が自動運転車両の場合、検査車両2を管理サーバ10により算出された感染源の高い位置情報まで到達させることも含む。
【0071】
なお、本実施例の感染情報管理システム1は、呼び方を変えれば、検査車両2を配車する検査車両配車システムである考えることもできる。検査車両配車システムは、検査情報管理モジュール112が、病原体の保菌状態を検査する第1の感染症検査による第1の検査結果と、病原体に対して抗体があるかどうかを検査する第2の感染症検査による第2の検査結果と、を取得し、
被検者情報管理モジュール111が、被検者の個人情報を取得し、
感染源算出モジュール113が、第1の検査結果又は第2の検査結果の少なくともいずれかが、感染症に対して陽性を示している場合に、個人情報に対応付けられた前記被検者の移動情報に基づいて算出された感染源の可能性が高い位置情報を出力し、
経路探索モジュール114が、前記第1の感染症検査と前記第2の感染症検査とを行う能力を有する検査車両を、感染源の可能性の高い位置情報が示す位置へ配車する。
【0072】
なお、本実施例では、新型コロナウイルスに対する感染症検査を想定して説明を行ったが、当然、新型コロナウイルスに限られず、あらゆる感染症や病原体に対して実施することができる。これらの病原体の体内での保有状態を確認する検査と、病原体に対する抗体を検出する検査があり、抗体が検知できるようになるまでの期間と、病原体の保有を確認することができるようになるまでの期間との間に差異があるものであれば、同様の構成で医療用モビリティを提供することができる。
また、抗体を検出する検査だけでなく、複数の検査において病原体や病気の症状を検出できるようになるまでの期間に差異があるものであれば、その差異を利用して感染時期を特定することが可能であり、本実施例の医療用モビリティを提供することができる。
【0073】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0074】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0075】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
なお、上述の実施例は少なくとも特許請求の範囲に記載の構成を開示している。
【符号の説明】
【0076】
1…感染情報管理システム、2…検査車両、10…管理サーバ、20…検査車両端末、30…検査機関端末、40…携帯電話会社サーバ、111…被検者情報管理モジュール、1112…検査情報管理モジュール、113…感染源算出モジュール、114…経路探索モジュール、211…被検者情報取得モジュール、212…検査情報取得モジュール、213…ナビ表示モジュール、311…被検者情報管理モジュール、312…検査実施モジュール、600…被検者情報、700…検査管理情報、800…感染源管理情報、900…地図情報、1000…経路情報

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23