(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】テトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む化粧組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20231018BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20231018BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20231018BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
A61K8/86
A61Q1/00
A61Q5/00
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018558187
(86)(22)【出願日】2017-05-04
(86)【国際出願番号】 EP2017060678
(87)【国際公開番号】W WO2017191268
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-03-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】102016000046996
(32)【優先日】2016-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】592081988
【氏名又は名称】ノバモント・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】NOVAMONT SOCIETA PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】カプッツィ,ルイジ
(72)【発明者】
【氏名】ディジオイア,フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】ブラマティ,ヴァネッサ
(72)【発明者】
【氏名】カルロマーニョ,フェデリカ
(72)【発明者】
【氏名】コミネッティ,アレッサンドラ
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-165218(JP,A)
【文献】特開昭55-2648(JP,A)
【文献】特開昭59-190907(JP,A)
【文献】特開2001-342109(JP,A)
【文献】国際公開第94/07460(WO,A1)
【文献】特開2004-137214(JP,A)
【文献】特開平10-251126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
CAPLUS/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET STN
MINTEL GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧組成物の総重量に対して0.1重量%~99重量%のテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含
み、さらに1つ以上のサンスクリーンを0.05重量%~35重量%までの量で含む、化粧組成物。
【請求項2】
さらにジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、トリペラルゴン酸グリセロール、テトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールから選択されるエステルを1つ以上含む、請求項1に記載の化粧組成物。
【請求項3】
親油性の形態又は水性の形態によって特徴付けられる、請求項1~2のいずれか1つに記載の化粧組成物。
【請求項4】
親油性の形態及び化粧組成物の総重量に対して20重量%までのテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含むことによって特徴付けられる、請求項3に記載の化粧組成物。
【請求項5】
化粧組成物の総重量に対して50重量%までのテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む水性の形態によって特徴付けられる、請求項3に記載の化粧組成物。
【請求項6】
15重量%までのテトラペラルゴン酸ジグリセロール、及び界面活性剤を含む請求項5に記載の水性の形態の化粧組成物。
【請求項7】
さらにエステル、エーテル、アミド、アルコール、及び天然及び/又は合成起源の炭化水素、シリコーン油、又はそれらの混合物から選択される油を含む、請求項1~6のいずれか1つに記載の化粧組成物。
【請求項8】
さらにバター及び/又はろうを含む、請求項1~7のいずれか1つに記載の化粧組成物。
【請求項9】
さらに1つ以上のオリゴマーを含む、請求項1~8のいずれか1つに記載の化粧組成物。
【請求項10】
1つ以上の染料及び/又は抗酸化物質及び/又はビタミン、保存剤、pH改変剤、湿潤剤、コンディショナー、キレート化剤、レオロジー改変剤、テキスチャライザ(texturizers)、膜形成剤、シリコーン、香料、エッセンシャルオイルならびに活性成分から選択される1つ以上の添加物を含む、請求項1~
9のいずれか1つに記載の化粧組成物。
【請求項11】
前記染料及び/又は添加物のそれぞれが化粧組成物の総重量に対して0重量%より多く、35重量%以下の量で存在する、請求項1
0に記載の化粧組成物。
【請求項12】
皮膚および皮膚付属部の太陽からの保護の用途の為の、請求項1に記載の化粧組成物。
【請求項13】
保護、メイクアップ、及び皮膚および皮膚付属部の浄化の為の請求項1~1
2のいずれか1つに記載の化粧組成物の使用。
【請求項14】
化粧および/または皮膚活性成分から選択される1つ以上の添加物を含む、請求項1~12のいずれか1つに記載の化粧組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧組成物中のテトラペラルゴン酸ジグリセロールの使用及びそれを含む化粧組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品産業では、環境に与える影響が低く、同時に優れた機能及び感覚特性を有する、天然及び再生可能な起源からの新しい成分を同定することがますます注目されている。
【0003】
化粧組成物は、肌及び毛髪の保護、メイクアップ、及び衛生用品に用いられ、その物質により最適な洗浄力、水和及び柔軟性に貢献し、製品の潤滑性および塗りやすさ、太陽光フィルタ、着色剤、活性成分及び添加剤の分散性に貢献し、及び/又は様々な成分同士の接着を促し、例えばアイシャドウ及び圧縮粉末のような化粧組成物において結合剤として作用する親油性の成分を一般的に含む。
【0004】
ジグリセロールのようなポリグリセロールのいくつかのエステルは植物起源で、非イオン性界面活性剤として働くため、例えば乳化剤としてヒトの保護のための製品に使われる。
【発明の概要】
【0005】
再生可能な資源からも得ることができるペラルゴン酸を有するジグリセロールのテトラエステルは、特別な潤滑能力を有し、肌に柔らかでなめらかな外観を与え、主に乳化の特性のために使われるテトラオレイン酸ジグリセロールのような他のジグリセロールのテトラエステルとは異なることが今回特に観察された。テトラペラルゴン酸ジグリセロールは肌の水和を維持する能力もまたあり、結果として肌から水分が失われるのを遅らせるバリアを形成する能力がある。それは粉末の結合能力もまた有し、太陽光フィルタ、顔料、活性成分及びその他の添加剤を分散させるのに適した能力も有する。
【0006】
したがって、テトラペラルゴン酸ジグリセロールは、化粧用として生理的に許容な組成物の親油性成分の材料として用いるため、すなわち人体 (表皮、唇、及び皮膚付属部) の外表面に、排他的又は主にそれらを洗浄するか、それらに香りを付けるか、それらの外観を改変するか、それらを保護するか、それらを良好な状態に維持するか又は体臭を修正するために施与することを意図する製品の調製のための使用に適する。
配合中のエステルの量を適切に調整することによって、広い範囲の用途のために適切な優れた特性を有する無水組成物及び水性組成物を得ることが可能になる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、化粧組成物の製造のためのテトラペラルゴン酸ジグリセロールの使用及びそれを含む化粧組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の有利な様態によると、テトラペラルゴン酸ジグリセロールエステルは例えば変性されているか又はされていない植物油、脂肪酸及びそれらの誘導体の酸化的開裂のプロセスにより得られる、再生可能な供給源からのペラルゴン酸から調製される。
ペラルゴン酸の再生可能な供給源の好ましい例は、ヒマワリ、アブラナ、又はアザミ(例えばカルドン(Cynara cardunculus)及びマリアアザミ(Silybum marianum)からの植物油である。
ペラルゴン酸の特に好ましい供給源は、高いオレイン又はエルカ酸含量を持つ植物油に代表される。
【0009】
前記ペラルゴン酸は、好ましくは、無機及び有機の過酸化物、過酸、硝酸、過マンガン酸塩、過ヨウ素酸塩、O2、O3又はそれらの気体混合物を酸化剤として用いる酸化的開裂プロセスにより得られる。
過酸化水素のような過酸化物及びO2又はO2を含む混合物を酸化剤として用いる酸化的開裂プロセスが好ましい。具体例は、出願WO94/10122、WO07/039481、WO2008/138892、WO2011/080296、WO2011/080297又はWO2013/079849に記載される酸化的開裂プロセスである。
【0010】
上記エステルは、好ましくは95%より高く、より好ましくは98%より高い高純度のペラルゴン酸と、グリセロール含量が好ましくは10%未満で、及び高ポリグリセロールが15%未満を有する、好ましくは90%より高い純度のジグリセロールから始めるエステル化反応を通して調製されることが好ましい。エステル化による調製は、有利には、触媒の非存在下で行われる。
前記エステル化は、ジグリセロールのモル数に対してモル過剰量、好ましくは30%より多く70%未満のペラルゴン酸の存在下で、典型的には180から240℃、好ましくは200~210℃の温度にて行われることが有利である。エステル化反応中に形成される水は、反応環境から、例えば圧力を徐々に低下させることにより除去することが有利である。反応の最後に、過剰の酸は、好ましくは蒸発により除去される。このようにして得られるエステルは、有利には、いずれの着色、臭気及び残存酸度を除去する目的で、当業者に知られるプロセスに従って、例えば活性炭及び脱色土(decolouring earths)を用いて精製処理を受けることができる。活性炭との組み合わせを含む、用いることができる脱色土の例は、Grade F-118FF、Grade F76(BASFにより販売)、Minclear N100、Minclear E100及びPansil 2(Tolsaにより販売)である。
【0011】
金属、例えばスズにより触媒される通常のエステル化手順により得られるエステルと比較すると、上記の手順に従って操作することにより得られるエステルは、それらの感覚刺激に反応する特性(例えば色、臭い)及びそれらの安定性、及び最終化粧製品の毒物学的特性に影響し得る金属残渣を含まない。したがって、これらは、無機物含量がより低く格別な利点を有し、化粧環境での使用のために単純な前処理を求める。
【0012】
本発明の目的は、ジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、トリペラルゴン酸グリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールから選択されるペラルゴン酸の1つ以上のエステルとテトラペラルゴン酸ジグリセロールの混合物及び前記混合物を含む化粧組成物にもまた関する。
前記組成物は、例えば、前記ペラルゴン酸エステルを前もって混合した後に、他の材料に別々(1つずつ)又は同時に加えることにより、調製できる。
本発明による化粧組成物は、組成物の全重量に対して0.1重量%から99重量%までのテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含むことができる。それらは、親油性化粧組成物(i)又は水性化粧組成物(ii)の形態であってよく、それぞれの場合、特徴的な最適量のテトラペラルゴン酸ジグリセロールを持つことができる。
【0013】
親油性化粧組成物(i)
テトラペラルゴン酸ジグリセロールは油、バター、コンシーラー、口紅、サンクリームの調製を意図した化粧組成物の油性成分の材料として特に適し、その機能及び感覚的特性の特有の組み合わせの結果として、それは驚くべきことに、油性成分の唯一の材料を構成しうる。
それはアイシャドウ、頬紅、パウダー及びファンデーションクリームのような圧縮粉末の形態の組成物中の結合剤としてもまた適する。
本発明の好ましい様態はそれゆえ、テトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む「親油性」化粧組成物、すなわち、主にテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む油や脂肪のような親油性成分からなる化粧組成物に関する。
本発明による親油性の組成物は、本発明によるテトラペラルゴン酸ジグリセロールを同様に含むか又は有利にはそれからなる油性成分を含む。前記親油性組成物は、化粧組成物の重量に対して99重量%まで、好ましくは95重量%までの前記エステルを含むことが有利であり、任意に、上記ペラルゴン酸のエステルの二元、三元又は四元の混合物の形態であっても良い。
【0014】
上記のエステル又はエステルの混合物に加えて、前記油性成分は、好ましくは天然及び/もしくは合成起源のエステル、アミド、エーテル、アルコール及び炭化水素、シリコーン油又はその混合物から選択される、植物、動物、鉱物及び/又は合成起源のその他の油も含んでよい。
天然の起源のエステルの可能性のある例は、飽和又は不飽和脂肪酸のトリグリセリド、例えばC8及びC10酸のトリグリセリド、又はそれらの混合物、例えば植物油に存在するものである。適切な植物油は、例えばオリーブ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、大豆油、ひまし油、アプリコット油、アボカド油、アーモンド油、マカダミア油、ホホバ油又はカリテ油(karite oil)である。
【0015】
合成起源のエステルは、例えば、直鎖及び分岐鎖カルボン酸とモノアルコールとのエステル、例えばイソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシル又はイソステアリン酸イソステアリル、マレイン酸ジイソステアリル、安息香酸(C12~15)アルキル;C7~C10鎖脂肪酸と脂肪アルコールとのエステル;ヒドロキシル化エステル、例えば乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル;ポリオールのエステル、例えばジオクタン酸プロピレングリコール、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール又はジイソノナン酸ジエチレングリコール及びテトライソステアリン酸ペンタエリスリチルである。
【0016】
エーテルの一例は、ジカプリリルエーテルである。アミドの一例は、ジブチルラウロイルグルタミドである。
油のその他の例は、脂肪アルコール、例えばオクチルドデカノール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコールを含む。
【0017】
天然起源の炭化水素油は、例えばテルペン炭化水素、例えばスクアレン及びスクアランであり、鉱物又は合成起源の炭化水素油は、例えば流動パラフィン及びその誘導体、例えばイソパラフィン(例えばイソドデカン、イソヘキサデカン、水素添加ポリデセン)及びシクロパラフィンである。
【0018】
シリコーン油は、ケイ素に基づく合成化合物である。これらは、揮発性又は不揮発性、直鎖状又は環状であってよい。シリコーン油の例は、ポリシロキサン及び例えばアルキル、アルコキシル又はフェニル基を含むそれらの誘導体であり、典型的に用いられるシリコーン油は、ポリジメチルシロキサン(ジメチコン)、アモジメチコン、シクロメチコン、例えばシクロペンタシロキサン及びシクロヘキサシロキサン、アミノビスプロピルジメチコン、アミノプロピルジメチコン、ヒドロキシステアリン酸アモジメチコン、ベヘノキシ-ジメチコン、C30~45アルキルジメチコン、C24~28アルキルジメチコン、C30~45アルキルメチコン、セテアリルメチコン、セチルジメチコン、ジメトキシシリルエチレンジアミノプロピルジメチコン、ヘキシルメチコン、ヒドロキシプロピルジメチコン、ステアラミドプロピルジメチコン、ステアロキシジメチコン、ステアリルメチコン、ステアリルジメチコン及びビニルジメチコンを含む。
【0019】
有利には、本発明による化粧組成物は、植物油のけん化不能画分に由来する1種以上の成分を含む(例えばカロテノイド、キサントフィル、トコフェロール、フィトステロール、脂肪族アルコール及びテルペンアルコール)。ビタミン及び親油性の性質の活性成分も、油性成分に溶解して存在してもよい。
【0020】
本発明による親油性組成物は、有利には、組成物の全重量に対して典型的に0.1重量%及び35重量%の間の量の1種以上のろうも含むことができる。当業者は、化粧組成物の所望の効果に基づいて、用いられるろうの量及び種類を容易に調整できる。
用語「ろう」は、室温(25℃)及び大気圧にて固形である親油性成分を意味する。前記成分は、それを含む化粧組成物に粘度、可塑性及び強度を与えるので、固形、例えば棒形状のものの調製のために適切である。
本発明による化粧組成物に用いるために適切なろうは、化粧組成物に典型的に用いられる全てのろうであり、天然及び/又は合成の起源のものであってよい。天然ろうの例は、蜜ろう又は白ろう、カルナウバろう、カンデリラろう、和ろう、ライスワックス、水素添加油、例えばホホバ油又はヒマワリもしくはココナツ油に由来するろう、長鎖脂肪酸と長鎖モノアルコールとのエステル又はそれらのグリセリド、例えばパルミチン酸セチル、ステアリン酸セチル、パルミチン酸トリグリセリド及びステアリン酸トリグリセリドである。
鉱物又は合成ろうの例は、亜炭ろう、微結晶ろう、パラフィン、地ろう、セレシン、合成蜜ろう、ラノリン及びポリプロピレングリコールとのそのエーテル、ポリエチレンワックス、25℃を超える融点を有する脂肪酸のエステル、ポリアミド及びセチルエステルである。シリコーンワックス、例えばアルキルもしくはアルコキシ-ジメチコン又は高分子量を有するポリ(ジ)メチルシロキサンを用いてもよい。
【0021】
有利には、本発明による化粧組成物は、植物油のけん化不能画分に由来する1種以上の成分を含む(例えばカロテノイド、キサントフィル、トコフェロール、フィトステロール、脂肪族アルコール及びテルペンアルコール)。ビタミン及び親油性の性質の活性成分も、油性成分に溶解して存在してもよい。
【0022】
特に好ましい実施形態によると、本発明は、化粧組成物の重量に対して:
a)50重量%から99重量%まで、好ましくは55重量%から95重量%まで、より好ましくは40重量%から80重量%までの、テトラペラルゴン酸ジグリセロール、任意にジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、トリペラルゴン酸グリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールから選択される少なくとも1種のエステルを有する混合物を含む油性成分と;
b)1重量%から35重量%まで、好ましくは5重量%から30重量%まで、より好ましくは7重量%から20重量%までの1種以上のろうと;
c)0重量%から30重量%まで、好ましくは0.1重量%から20重量%まで、より好ましくは0.1重量%から15重量%までの1種以上の着色剤と;
d)0重量%から3重量%まで、好ましくは0.05重量%から2重量%までのビタミン及び/又は抗酸化剤と;
e)0重量%から2重量%まで、好ましくは0.01%から1%までの1種以上の保存剤と
を含む親油性の形態の化粧組成物に関する。
前記組成物は、口紅、口唇用バター及びバーム、コンシーラー、ファンデーションクリームならびに型抜き(cast)及び棒状アイシャドウの調製のために特に適切である。本発明のこの側面によってペラルゴン酸とジグリセロールとのテトラエステルを含む組成物は、異なるテトラエステル、例えばテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトール又はテトラオレイン酸ジグリセロールを含む組成物と比較してより高い柔軟性と流動性を示した。
【0023】
本発明による組成物は、有利には、化粧組成物の重量に対して0.05重量%と35重量%の間、好ましくは0.1%と30%の間の量の1種以上のサンフィルタも含んでよい。
サンフィルタは、UVA/UVB放射線から皮膚及び/又は毛髪を防御する機能を有する。これらは、例えば、反射特性を有するフィルタ又は物理的スクリーン、例えばナノ材料の形態で又はより大きいサイズの粒子の酸化亜鉛及び二酸化チタン、シリカ、カオリン、酸化鉄及び/又は酸化マグネシウム、ならびに化学的フィルタ、典型的には紫外線のエネルギーを吸収及び変換できる有機分子、例えばシンナメート、ベンゾイミダゾール、ベンゾフェノン、ベンジリデンカンフォレート(benzylidene camphorate)、PABA及びその誘導体、サリチレート、アントラニレート、ジベンゾイルメタン、オクトクリレン、トリアジン、例えばオクチルトリアゾン、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン及びジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、天然抗酸化剤、例えばビタミンC及びビタミンE又は合成ビタミン、例えばチノガード(Tinogard)TT、あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0024】
物理的及び化学的フィルタは、天然起源(例えばガンマオリザノール)又は合成のものであってよく、単独で又はより有利には組み合わせて用いてよい。
本発明による組成物に用いるために適切なサンフィルタの具体例は、メトキシ桂皮酸オクチル、2-エチル-ヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート、ブチル-メトキシ-ジベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、サリチル酸エチルヘキシル、酸化亜鉛、二酸化チタン又はそれらの組み合わせである。
【0025】
特に好ましい実施形態によると、本発明は、化粧組成物の重量に対して:
a)50重量%から99重量%まで、好ましくは50重量%から90重量%までの、テトラペラルゴン酸ジグリセロール、任意にジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、トリペラルゴン酸グリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトール及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種のエステルの混合物を含む油性成分と、
b)0.05重量%から35重量%まで、好ましくは0.1重量%から30重量%までの1種以上のサンフィルタと、
c)0重量%から30重量%まで、好ましくは5重量%から30重量%まで、より好ましくは7重量%から20重量%までの1種以上のろうと、
d)0重量%から30重量%まで、好ましくは0.1重量%から3重量%までの1種以上の着色剤と、
e)0重量%から2重量%まで、好ましくは0.01重量%から1重量%までの1種以上の保存剤と、
を含む、親油性化粧組成物に関する。
前記組成物は、サンプロテクション製品、例えばサンプロテクションスティック、油及びバターの調製のために特に適切である。
【0026】
本発明による組成物は、有利には、1種以上のポリオレフィン、アクリル誘導体、ポリアミド及び/又は例えばポリブチレンもしくはポリイソブチレンから選択されるポリエステルオリゴマーも含んでよい。
化粧組成物の全重量に対して15重量%から85重量%までの上記のオリゴマーと、5重量%から65重量%まで、好ましくは10重量%と35重量%の間の油性成分とを含む親油性組成物が好ましい。前記組成物は、懸濁された粉末、着色剤及び抗酸化剤も含むことが有利である。この種の化粧組成物は、口唇用グロスのような化粧料の調製のために特に適切である。
【0027】
「オリゴマー」は、室温(25℃)及び大気圧にて液体で、化粧組成物に明るさとタック(tack)を与えるための、1000g/モル未満の分子量を有するオリゴマー及びポリマーを意味する。
適切なオリゴマーは、ポリブチレン、ポリイソブチレン及び水素化ポリイソブチレン、ポリデセン及び水素化ポリデセン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステルを含む群から選択される。好ましいオリゴマーは、ポリブチレン、ポリイソブチレン及び/又はポリアミドから選択される。
【0028】
特に好ましい実施形態によると、本発明は、化粧組成物の重量に対して:
a)15重量%から85重量%まで、好ましくは20重量%から80重量%までの1種以上のオリゴマーと、
b)5重量%から65重量%まで、好ましくは10重量%から35重量%までの、テトラペラルゴン酸ジグリセロール、任意にジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、トリペラルゴン酸グリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールならびにそれらの混合物から選択される少なくとも1種のエステルの混合物を含む油性成分と、
c)0重量%から15重量%まで、好ましくは2重量%から5重量%までの1種以上の懸濁力を有する流動性改善剤(レオロジー改変剤)と、
d)0重量%から20重量%まで、好ましくは0.1重量%から15重量%までの1種以上の着色剤と、
e)0重量%から5重量%まで、好ましくは0.1重量%から3重量%までの1種以上のろうと、
f)0重量%から3重量%まで、好ましくは0.05重量%から2重量%までのビタミン及び/又は抗酸化剤と、
g)0重量%から2重量%まで、好ましくは0.01重量%から1重量%までの1種以上の保存剤と
を含む親油性化粧組成物に関する。
前記組成物は、口唇用グロスの調製のために特に適切である。
【0029】
「レオロジー改変剤」とは、ゲル化剤、増粘剤、分散剤、懸濁された粉末及びレオロジー作用の結果として化粧組成物の安定性及び用途に影響するその他の基質を意味する。
それらは天然又は合成の、無機物又は有機物であり得る。有機物のなかで好ましいものは、アルギネート、カラゲーニン、寒天、ペクチン、デンプン、セルロース、及びこれらの化学的に改変された誘導体のような天然のポリマー;
疎水的に改変される、又はされないアクリルポリマー、疎水的に改変されたウレタン、アルケン/スチレン共重合体、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレングリコール誘導体、エトキシル化された脂肪アルコール、脂肪酸及びそれらの塩のような合成ポリマーである。無機のレオロジー改変剤の例は、粘土、シリカ、及びそれらの改変された誘導体、マグネシウム及び/又はアルミニウムケイ酸塩である。
本発明の親油性の組成物の使用に特に適するレオロジー改変剤のクラスは、懸濁された粉末を含む。
これまでに記載された本発明の実施形態によるテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む親油性化粧組成物は良好な流動性の特徴と明度を持つ。それゆえ、それらの明るさ及び繊細な感触の結果として、それらは、例えばテトラペラルゴン酸ジグリセロールによって与えられたつや及び輝きの効果の結果として、体や髪の保護の為の製品、又はメイクアップ製品の調製のために適する。
【0030】
ペラルゴン酸の他のエステルとの混合物でテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む本発明による化粧組成物は、それらの組成によって異なる特徴を持つ。
例えば、ジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール及び/又はトリペラルゴン酸グリセロールとテトラペラルゴン酸ジグリセロールの二元混合物は、薄い柔らかな膜を形成し、それらを含む親油性化粧組成物に輝き及び明るい仕上げを与える。
テトラペラルゴン酸ジグリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールの二元混合物は、十分な厚みのある膜を形成し、親油性化粧組成物に光沢及び輝きの効果を与える。
テトラペラルゴン酸ペンタエリスリトール、トリペラルゴン酸グリセロール及びジペラルゴン酸ネオペンチルグリコールから選択される少なくとも2つのエステルとテトラペラルゴン酸ジグリセロールの三元混合物は薄い膜を形成し、輝き及び明るい効果ならびに最適な流動性の特徴を、それらを含む親油性化粧組成物に与える。
テトラペラルゴン酸ペンタエリスリトール、トリペラルゴン酸グリセロール及びジペラルゴン酸ネオペンチルグリコールとテトラペラルゴン酸ジグリセロールの四元混合物はそれらを含む親油性化粧組成物に輝き及び明るい効果ならびに最適な流動性の特徴を与えるのに加えて、厚い膜を形成する。
UVA/UVBサンフィルタを分散するためのこれらの良好な能力のおかげで本発明による組成物はサンプロテクション製品用途のために特に適する;テトラペラルゴン酸ジグリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールの混合物を含む組成物は特にその目的のために適する。
【0031】
本発明の別の様態では、本発明は、粉末ベースの親油性組成物、すなわちタルク、マイカ、カオリン、シリカ、デンプン、シリカ被覆マイカ及びタルク、チタニア、チタニア被覆マイカ及びタルク、デンプン、アパタイト、パーライト、ポリマー、例えばナイロン及びポリエチレン、コポリマーマイクロスフェア、シリコーン樹脂マイクロビーズ又はそれらの混合物から選択される1種以上の粉末成分を主に含むものに関する。これらは、有利には、35重量%より多く、好ましくは40重量%より多く、より好ましくは50重量%より多くの粉末成分を含む。前記粉末ベースの組成物は、同様にテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含むか又は有利にはからなる結合成分を含む。この態様による組成物は、有利には、テキスチャライジング剤(texturising agent)、着色剤及び場合により香料及び保存剤系も含む。
これらの組成物は、例えばアイシャドウ、頬紅、フェースパウダー、アース(earth)、流動及び圧縮粉末のような製品に用いることができる。前記粉末ベースの組成物は、有利には、化粧組成物の重量に対して0.1重量%から20重量%、より好ましくは0.1重量%から15重量%の前記結合成分を含む。特に前記結合成分は好ましくは圧縮粉末の形態の組成物の1重量%から10重量%、及び流動粉末の形態の組成物に1重量%から5重量%を含む。
テトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む粉末ベースの組成物の調製は、好ましくは最終ユーザに受け入れられるようにするためのある程度の成分同士の接着及び塗り広げやすさを達成するために、他の結合剤の添加を必要とする。
結合成分に関して、テトラペラルゴン酸ジグリセロールは好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下の量で存在する。
驚くことに、前記エステルが、ジペラルゴン酸ネオプロピルグリコール、トリペラルゴン酸グリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールから選ばれたエステルの組み合わせで用いられるとき、この組み合わせは、有利には、例えば80%までの結合成分の大部分を含む。テトラペラルゴン酸ジグリセロールとトリペラルゴン酸グリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールの組み合わせが好ましい。
【0032】
本発明の粉末ベースの化粧組成物は、良好な圧縮しやすさ及び塗り広げやすさを有する。これら特異な感覚及び機能的特徴により、粉末ベースの化粧組成物中の結合剤として典型的に必要とされる植物油の量と比較した際、本発明のペラルゴン酸の少量のエステルは、実際は、有利には、タルクとの結合に必要とされ、テトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールも存在する際、より大きな被覆力を有する。
前記粉末ベースの組成物は、本発明の混合物に加えて、任意に、油状又はろう状の種類のその他の材料を結合剤の中に含んでもよい。
例えば、無水の組成物の油性成分の典型的な材料としてはこれまでに列挙した油および化粧組成物中に典型的に用いられる全てのろうは、結合作用を有する。
【0033】
本発明によるエステルの混合物と一緒に粉末ベースの組成物に有利に加えることができる結合剤の例は、炭化水素、例えばポリデセン、エステル、例えばステアリルステアリン酸オクチルドデシル、トリグリセリド、例えばカプリン酸/カプリル酸のトリグリセリド、流動シリコーン及びラノリン誘導体である。
脂肪酸の塩、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウム及びそれらの混合物も、前記粉末ベースの組成物において、本発明によるエステルの混合物と組み合わせて用いることが有利である。
【0034】
好ましい実施形態によると、本発明は、化粧組成物の重量に対して:
(a)35重量%から99重量%までの粉末と、
(b)1重量%から20重量%まで、好ましくは3重量%から15重量%までの、任意に、ジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、トリペラルゴン酸グリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールから選択された少なくとも1つのエステルと結合したテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む結合成分と、
(c)0重量%から30重量%までの1種以上のテキスチャライジング剤と、
(d)0重量%から15重量%まで、好ましくは2重量%から10重量%までの1種以上の着色剤と、
(e)0重量%から15重量%まで、好ましくは1重量%から15重量%まで、より好ましくは5重量%から15重量%までの脂肪酸の塩と、
(f)0重量%から2重量%まで、好ましくは0.01重量%から1重量%までの1種以上の保存剤と
を含む無水形態の粉末ベースの化粧組成物に関する。
【0035】
ペラルゴン酸の前述のエステルの1つとテトラペラルゴン酸ジグリセロールの二元混合物を含む結合組成物(b)が好ましい。
上記組成物において有利に用いられるテキスチャライジング剤の例は、デンプン、疎水性基で改変されたデンプン、ポリマー、例えばポリアミド、ポリウレタン及びポリアクリレート、特にポリメタクリル酸メチルである。
本発明による親油性の形態の化粧組成物は、好ましくは、20%を超えない量の水を含む。好ましくは水の含量は、化粧組成物の重量に対して10%未満であり、より好ましくは8%未満であり、さらにより好ましくは5%未満である。
【0036】
水性化粧組成物(ii)
テトラペラルゴン酸ジグリセロールは、例えば油ベース又は水ベースのエマルジョンの形態、マイクロエマルジョン又は水脂質分散体の形態、又は2相の形態の水性化粧組成物の材料としても特に適切である。
本発明の水性化粧組成物は、好ましくは、20重量%を超え、好ましくは35重量%を超え、さらにより好ましくは50重量%を超える、水を含む親水性又は水性成分を含む。
水性成分と一緒に、これらは、同様にテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含むか又は有利にはからなる親油性成分も含む。前記親油性組成物の好ましい形態は、ジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、トリペラルゴン酸グリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールから選ばれた1つ以上のエステルもまた含む。
前記水性形態の化粧組成物は、有利には、テトラペラルゴン酸ジグリセロールが90%までを構成する前記親油性成分の重量に対して、0.1重量%から50重量%まで、より好ましくは0.1重量%から35重量%までを構成する。
上記記載のペラルゴン酸のエステルに加えて、前記親油性成分は、室温(25℃)及び大気圧にて液体の形態のその他の成分、例えば天然及び/又は合成起源のエステル、アミド、エーテル、アルコール及び炭化水素、シリコーン油又はそれらの混合物から好ましくは選択される植物、動物、鉱物及び/又は合成起源の油を含んでよい。典型的な例は、親油性組成物の油状成分の典型的な材料として上で列挙した油である。
【0037】
本発明の好ましい態様によると、水性化粧品組成物は油ベースのエマルジョン(油中水型、A/O)又は水ベースのエマルジョン(水中油型、O/A)又は多重の形態のエマルジョン(例えばA/O/A又はO/A/O)であり得る。
エマルジョンの場合、親油性成分は、本発明による混合物に加えて、室温(25℃)及び大気圧にて固体又は糊のような形態のその他の成分、例えばバター及び/又はろうを含んでよい。バターの例は、カリテバター、カカオバター、クプアス(cupuacu)バターである。適切なろうは、化粧組成物に通常用いられる全てのろうである。
【0038】
本発明による油ベースのエマルジョンの形態の化粧組成物は、有利には、化粧組成物の重量に対して50重量%まで、好ましくは35重量%まで、より好ましくは25重量%までのテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む。これに加えて、前記油ベースのエマルジョンの親油性組成物は、有利には、少なくとも上記列挙の油、例えばシリコーン油の少なくとも1つを含む。
本発明による油ベースのエマルジョンの好ましい例は、親油性成分が、1つ以上のシリコーン油及びテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含むシリコーンベースのエマルジョン(A/Si)である。
【0039】
本発明による親油性ベースのエマルジョンにおいて、テトラペラルゴン酸ジグリセロールは、有利には、80重量%までの親油性組成物を含む。ジペラルゴン酸ネオペンチルグリコールとの二元混合物の形態である場合、前記混合物は有利には、前記親油性成分を70%まで含むのに対してトリペラルゴン酸グリセロール又はテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールとの二元混合物は有利には、60重量%まで構成する。化粧組成物がテトラペラルゴン酸ジグリセロール、ジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール及びトリペラルゴン酸グリセロールの三元混合物ならびにテトラペラルゴン酸ジグリセロール、ジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、トリペラルゴン酸グリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールの四元混合物を含む、本発明の好ましい形態によれば、前記混合物は親油性成分の唯一の成分として使用され得る。
【0040】
好ましい実施形態によると、本発明は、化粧組成物の重量に対して:
(a)35重量%から80重量%までの水相と、
(b)10重量%から50重量%まで、好ましくは10重量%から35重量%までの、任意に、ジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、トリペラルゴン酸グリセロール、テトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールから選択された少なくとも1つのエステルとの混合物でのテトラペラルゴン酸ジグリセロールと、
(c)0.3重量%から15重量%までの、好ましくは3と6の間のHLBを有する1種以上の乳化剤と
を含む、油ベースのエマルジョンの形態の水性化粧組成物に関する。
典型的には、前記水相は、60重量%から80重量%までを構成し、前記親油性成分は、化粧組成物の25~35重量%を構成する。
前記水相は、キレート化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸及びそのナトリウム塩(例えば二ナトリウム、三ナトリウム及び四ナトリウム塩)、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム及びその他の安定化剤、保存剤、活性成分ならびに水和剤を含んでよい。
本実施形態による油ベースのエマルジョンの形態の組成物は、例えば、クリーム、サンクリーム、セラム、ファンデーションクリーム、コンシーラー及びマスカラの調製のために適切である。
【0041】
本発明による水ベースのエマルジョンの形態の化粧組成物は、有利には、40重量%まで、好ましくは20重量%まで、より好ましくは15重量%までの、テトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む親油性成分を含む。
本発明による水ベースのエマルジョンにおいて、テトラペラルゴン酸ジグリセロールは、有利には、親油性組成物の90%までを含む。ジペラルゴン酸ネオペンチルグリコールとの混合物でテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む水性化粧組成物において、前記混合物は、有利には、親油性成分の80重量%までを含み得る。
【0042】
トリペラルゴン酸グリセロール又はテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールとテトラペラルゴン酸ジグリセロールの二元混合物は、有利には、親油性成分の70重量%又は60重量%までをそれぞれ含み得る。
水ベースのエマルジョンの形態中の前記化粧組成物の重量に対して50重量%まで、好ましくは10重量%まで、より好ましくは5重量%までを構成しうるジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール及びトリペラルゴン酸グリセロールとテトラペラルゴン酸ジグリセロールの三元混合物もまた有利に用いられ、好ましくは、その他のオイル、バターあるいはろうと共に用いられる。
【0043】
好ましい実施形態によると、本発明は、化粧組成物の重量に対して:
(a)60重量%から90重量%までの水相と、
(b)0.5重量%から40重量%まで、好ましくは1%から20%までの、任意に、ジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、トリペラルゴン酸グリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールから選択された少なくとも1つのエステルと混合したテトラペラルゴン酸ジグリセロールと、
(c)5重量%から15重量%までの、好ましくは6と12の間のHLBを有する1種以上の乳化剤と
を含む、水ベースのエマルジョンの形態の水性化粧組成物に関する。
本実施形態による水ベースのエマルジョンの形態の組成物は、例えば、クリーム、乳液、セラム、バター、サンプロテクション製品、毛髪製品、例えばバーム、マスク、リーブオン製品(leave-on)ならびにメイクアップ製品、例えばファンデーションクリーム、マスカラ、コンシーラー及び口唇のメイクアップのための製品の調製のために適切である。
【0044】
本発明による組成物に用いられる典型的な乳化剤は、長鎖又は中鎖アルキル鎖(通常、C12より長い)を有し、アニオン、カチオン、両性又は非イオン性であってよい。
前記乳化剤は、例えば、脂肪酸のモノグリセリド、場合によってエトキシル化されていてもよいソルビタンエステル(例えばモノエステル、ジエステル、トリエステル及びそれらの混合物)、ショ糖エステル、脂肪酸とのタンパク質縮合物、ポリグリセロール及び/又は脂肪酸とのそれらのエステル、脂肪アルコールとグルコース及び/又はポリグルコースとのエーテル、レシチン及び/又は水素化レシチン、エトキシル化脂肪アルコール、エトキシル化脂肪酸(例えばステアリン酸PEG-100)、せっけん、例えばステアリン酸トリエタノールアミン、エトキシル化及び非エトキシル化リン酸エステル(例えばセチルリン酸カリウム)を含む群から選択されてもよい。
【0045】
油ベースのエマルジョンに適切な乳化剤は、典型的には、不飽和、分岐又は置換アルキル鎖、例えばオレイン酸の、イソステアリル、リシノレール酸の及びヒドロキシステアリル鎖を有する。
水ベースのエマルジョンに適切な乳化剤は、典型的には、飽和の直鎖、例えばステアリル、パルミトレイン酸の鎖を有する。
【0046】
別の様態によると、本発明による水ベースのエマルジョンの形態の化粧組成物は、有利には、15重量%まで、好ましくは10重量%まで、より好ましくは5重量%までのテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む。
【0047】
特に好ましい態様によると、本発明は、化粧組成物の全重量に対して:
(a)60重量%から90重量%までの水性成分と、
(b)0.5重量%から15重量%まで、好ましくは1%から10%までの、任意に、ジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、トリペラルゴン酸グリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールから選択された少なくとも1つのエステルと混合したテトラペラルゴン酸ジグリセロールと、
(c)8重量%から40重量%までの1種以上の界面活性剤と
を含む水性化粧組成物に関する。
【0048】
これらの組成の間で、好ましいものは、テトラペラルゴン酸ジグリセロール、又はジペラルゴン酸ネオペンチルグリコールとの混合物を親油性成分の重量に対して12%まで、好ましくは0.1%~10%まで構成するものである。親油性成分が上記のエステルまたはエステルの混合物に加えて植物油も含む組成物も好ましい。
このような水性化粧組成物において、前記界面活性剤は、表面張力を低減し、洗浄性を助長する機能を有する。界面活性剤は、泡発生機能を有するか又は有さなくてよく、非イオン、アニオン、両性又はカチオン性であってよい。
本発明による組成物に典型的に用いられる界面活性剤は、典型的には、短鎖又は中鎖アルキル鎖(通常、C14より短い)、例えばカプリン酸、カプリル酸及びラウリン酸の鎖を有する。
【0049】
界面活性剤は、例えば、好ましくはNa、Mg、Znもしくはアンモニア(NH4)のアルキル硫酸塩及び/又はアルキルエーテル硫酸塩、モノエタノールアミン(MEA)、トリエタノールアミン(TEA)あるいはモノイソプロピルアミン(MIPA);アルキルエーテルカルボキシレート;脂肪酸とのタンパク質縮合物;アシルグルタメート;アシルサルコシネート;アシルイソチオネート;アシルメチルタウレート;アルキルスルホスクシネート;せっけん;アルキルベタイン及びアルキルアミドプロピルベタイン;アルキル及びアルキルアミドヒドロキシスルタイン(sultaine);アルキルアンフォアセテート及びアルキルアンフォジアセテート;アルキルアンフォプロピオネート及びアルキルアンフォジプロピオネート;アルキル及びアルキルアミドプロピルアミノキシド;ポリソルベート(例えばポリソルベート20);モノサッカロースエステル;アルキルグルコシド;第4級アンモニウム塩を含む群から選択してよい。
【0050】
当業者は、組成物が意図する化粧料製品の種類に基づいて要求される界面活性剤の量を容易に決定できる。例えば、均質な洗浄剤の調製を意図する化粧組成物は、典型的に8重量%から10重量%まで、シャンプーは10重量%から15重量%まで、シャワーフォームは13重量%から18重量%まで、バスフォームは18重量%から22重量%までを含む界面活性剤の量を含む。
【0051】
本発明のこの態様による単相水溶液の形態の組成物は、有利には、マイクロエマルジョンの形態をとってよい。該組成物は、例えば、バスフォーム、シャワージェル、洗浄剤、シャンプー、液体せっけん、それゆえ「リンス-オフ」製品ならびに「リーブオン」製品の調製に適切である。
本発明の別の好ましい実施形態によると、前記水性化粧組成物は、2相の形態であり、それゆえ、それは2つの別々の層の状態で親油性相から分かれた水相を有する。これらの組成物を用いて調製される化粧料製品は、典型的には、使用前の混合を必要とし、結果として一時的なエマルジョンを形成する。
【0052】
好ましくは、前記組成物は、化粧組成物の全重量に対して:
(a)50重量%から70重量%までの水相と、
(b)30%から50%までの、任意に、ジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、トリペラルゴン酸グリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールから選択された少なくとも1つのエステルと混合したテトラペラルゴン酸ジグリセロールと、
を含む。
【0053】
2相の形態の前記組成物は、親油性相の重量に対して、好ましくは50重量%まで、より好ましくは0.1重量%と30重量%の間、さらにより好ましくは0.1重量%と10重量%の間のテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む。
テトラペラルゴン酸ジグリセロール又はジペラルゴン酸ネオペンチルグリコールとの混合物を親油性相の重量に対して有利に30重量%までの量で含む親油性相が好ましい。
【0054】
上記ペラルゴン酸のエステルに加えて、親油性相は、好ましくは、鉱物及び/又はシリコーン油、例えばイソドデカン、シクロペンタシロキサン、プロピレンオキシドとステアリルアルコールとの反応生成物(例えばポリプロピレングリコール-15-ステアリルエーテル)、植物油、例えばアーモンド、オリーブ及びホホバ油を含む。
本発明のこの態様による2相の形態の水性組成物は、例えばメイクアップ除去剤の調製のために適切である。
【0055】
無水組成物又は水性組成物のいずれの形態である、本発明による化粧組成物は、無水組成物の場合、1種以上の上記のサンフィルタを含んでよい。前記サンフィルタは、好ましくは、化粧組成物の重量に対して0.05重量%と35重量%の間、好ましくは0.1重量%と25重量%の間の量で用いられる。
存在するペラルゴン酸エステルの特性のおかげで、本発明による混合物は、サンフィルタの最適な分散及び/又は溶解を確実にし、エマルジョンで用いる場合にその安定性を増加させることができ、その防御係数を増加させる助けとなり得るという格別な利点を有する。よって、これらは、太陽光からの防御、体及び毛髪の保護を意図する化粧組成物、ならびに保護及び老化防止作用を有するメイクアップ製品において用いるために適切である。
【0056】
流動及び粘度特性が特に著しく、格別の軟化性を有するテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトール及び/又はトリペラルゴン酸グリセロールとの混合物でテトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む組成物は、この目的のために特に適切である。テトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールを含む混合物は、より好ましい。
本発明による化粧組成物は、好ましくは0.1重量%と35重量%の間、より好ましくは0.1重量%と30重量%の間、さらにより好ましくは0.1重量%と20重量%の間の量で1種以上の着色剤又は色素も含んでよい。
【0057】
前記着色剤は、水に可溶性又は不溶性、脂質に可溶性又は不溶性、鉱物又は有機、天然又は合成であってよく、化粧組成物に色を付すか又は不透明にする機能を有する。適切な着色剤の例は、顔料、ラッカー又はパールであり、これらは、そのまま、あるいは例えば撥水性又は親水性の特性を改変するために表面処理の後に用いてよい。顔料は、無機の性質の金属の誘導体、例えば鉄、セリウム、クロム、チタン、亜鉛又はジルコニウムの酸化物、シリケート(例えばマイカ)、スルホシリケート(例えばウルトラマリン)及びそれらの組み合わせ、ならびに有機の性質の分子、例えば植物抽出物を含む。「パール」との用語は、光の反射及び屈折現象を起こすことが可能な特別の顔料を意味し、これは、真珠光沢又は非真珠光沢であってよく、有機(例えばグアニン、CI75170)又は無機(例えばオキシ塩化ビスマス、CI77163、又はセリサイト、CI77019)であってよい。
【0058】
驚くべきことに、テトラペラルゴン酸ジグリセロールは、広く用いられるいくつかの油性溶媒/分散剤と比較した際及びペラルゴン酸のテトラエステルと構造的に似たテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールと比較した際でも、より高い顔料の可溶化及び分散率を示した。前述のペラルゴン酸エステルとテトラペラルゴン酸ジグリセロールの混合物は、顔料の分散をさらに助ける特別な利点を有する。結果として、それらは色合いを強めるのに寄与し得る。
【0059】
本発明による化粧組成物は、化粧組成物に典型的に用いられるものから選択される1種以上の添加剤、例えば、抗酸化剤及び/又はビタミン、保存剤、pH調節剤、湿潤剤(例えばグリセリン、ソルビトール、グリコール、ポリエチレングリコール)、コンディショナー、キレート化剤、レオロジー改変剤、テキスチャライジング剤、膜形成剤、シリコーン、香料、エッセンシャルオイルならびに活性成分、特に化粧及び/又は皮膚活性成分も含んでよい。各添加剤は、化粧組成物の全重量に対して0重量%から35重量%まで、好ましくは0重量%から20重量%まで、より好ましくは0重量%から10重量%までの量で存在してよい。
【0060】
本発明による用語「保存剤」は、化粧組成物中の微生物の成長を阻害する主な機能を有する天然又は合成の物質を意味する。許可されている保存剤のリストは、EC規則1223/2009補遺Vを参照できる。使用許可されている最大パーセンテージ、任意の制限及び使用方法は、この文献で見出すことができる。最も広く用いられている保存剤は、例えば、安息香酸、プロピオン酸、サリチル酸、ソルビン酸及びそれらの塩、p-ヒドロキシ安息香酸、その塩及びエステル、デヒドロ酢酸、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、イミダゾリジニル尿素を含む。前記保存剤と組み合わせて又はその代わりに、本発明による化粧組成物は、微生物の成長の阻害に貢献できるその他の物質、例えばはちみつ、エッセンシャルオイル、例えばローズマリー、Melaleuca alternifolia及びタイムの抽出物、ならびに錯形成剤、例えばEDTAも含んでよい。
【0061】
本発明による化粧組成物は化粧品産業の当業者に知られるプロセスにより調製されうる。
例えば、本発明による親油性化粧組成物を調製する好ましい方法は、任意の添加剤の微細分散をもたらす特定の装置、例えば3本ロールリファイナーを用いて、化粧組成物を、有利には、任意の固体成分がその融点に至った後に混合することを含む。
本発明による粉末ベースの親油性組成物を調製する好ましい方法は、好ましくはグラインディングの間に生み出される熱を消失させるのを確かにする冷却システムが備わった適したミルで粉末(顔料及びテキスチャライジング剤を含む)をグラインディングする1つ以上のサイクルを含む;混合の長さ、及びグラインディングサイクルは、粉末の性質に基づいて当業者によって容易に特定しうる。1度粉末に求められる大きさ及び均一さの度合いが達成されれば、好ましくは、成分が混合された後、結合成分が粉末に徐々に加えられ、固体、又は半固体の形態の成分、例えばろう又は水素化された誘導体が存在する場合、脂質可溶性の保存剤を含むそれらは、融点又はそれ以上の温度(典型的には融点より5~10℃上に)まで上げられる。次いで、そのように得られた混合物は結合成分の混和を促進するためにさらなる混合サイクルを受け、真珠光沢のある顔料がこの段階で加えられる。その後、所望の組成物の量が、好ましくは、グラインディング、ふるいかけ、型中での加圧から選択された1つ以上の操作を受ける。
【0062】
代わりに、本発明による水性化粧組成物の調製の1つの方法は、例えば、成分の所望量を、好ましくは、成分の安定性と融点に依存する適切な温度で作動するように熱制御システムが備わった適した能力のミキサー及び/又はターボ乳化機によって混合することに付す。
本発明による化粧組成物は固体、ペースト状、又は液体の形態をとり得る。
テトラペラルゴン酸ジグリセロール、及びジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、トリペラルゴン酸グリセロール及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールから選択される1つ以上のエステルとのその混合物は、それゆえ、保護、メイクアップ、太陽光からの防御ならびに皮膚及び皮膚付属部の浄化のための有色又は無色の化粧組成物に用いることができる。
それらは、クリーム、乳液、サンクリーム、セラム、バター、フォームバス、シャワージェル、洗浄剤、シャンプー、リーブオン製品、バルサム、毛髪マスク及びリーブオン製品、ファンデーションクリーム、マスカラ、口紅、アイシャドウ、頬紅ならびに圧縮粉末の調製のために有利に用いることができる。
【実施例】
【0063】
実施例
以下の実施例で用いられるエステルは、オレイン酸含量が高いヒマワリ油の酸化的開裂から得られるペラルゴン酸を用いることによって調製された。特に、ペラルゴン酸は特許出願WO2011080296に記載される方法に従い、実施例1に記載されるような、1以上の酸官能基を含むトリグリセリドからのモノカルボン酸の分離、及び軽いモノカルボン酸を含む画分を除去する続く精留の段階の後の段階c)の最後に得られた。用いたペラルゴン酸の純度は、99%であった。用いたテトラペラルゴン酸ジグリセロールは、1.7重量%のグリセロール含量、5.4重量%のトリグリセロール、及び0.3重量%の高級ポリグリセロールを有する92.6%の純度であった。
【0064】
テトラペラルゴン酸ジグリセロールの調製
エステルの合成のためのエステル化反応は、触媒の非存在下で、用いるジグリセロールに対して30モル%に等しいペラルゴン酸のモル過剰量で行った。エステル化の水の除去を促進するために、反応の経過中に、酸/ポリオール混合物の温度を200~210℃まで上げ、この温度に一旦達すると、100 mbarまで徐々に減圧して、試薬の変換を促した。反応が完了すると、理論量に相当する量の反応の水が回収された後に、温度を180~200℃付近に保ち、5から10 mbarの減圧を適用して過剰の酸を蒸発により回収した。
【0065】
次いで、生成物を、活性炭及び脱色土を用いる漂白処理、ならびに各エステルに対して1重量%と2重量%の間からなる水酸化カルシウム及び水(1:1の重量比)の量の添加による中和に供し、30分間、60℃で撹拌加熱した。減圧下で80~100℃に加熱することにより完全に脱水した後に、ろ過土(Celite512;エステルに対して1重量%)を撹拌しながら加え、同じ土の床で、減圧下で濾過して、清澄な生成物を得た。
規格ASTM D664による酸度の測定は、0.1 mg KOH/g未満の残存酸度を示した。
【0066】
本発明による化粧組成物の実施例を、以下の表に示し、化粧成分として一般的に用いられる既知のエステルを含む組成物と比較した。材料(INCI命名法による)及び組成物の全重量に対する各材料の重量によるパーセンテージ組成のリストを、次の表で示す。
【0067】
例1(比較)~2:保湿クリーム
材料:
【0068】
【0069】
調製:
群Aの材料は重量が量られ、ターボ乳化機中でゆっくりと攪拌しながら混合し、70±2℃の温度へ加熱した。
材料Bは別に重量を量り、混合物Aに加え、完全に溶けるまで一定の速度で攪拌した。
群Cの材料は脂肪溶解装置中で重量を量り、一定速度で攪拌しながら70±2℃へ加熱した。
両方の混合物が70±2℃に達した際、混合物Cは、ゆっくりと攪拌した混合物A+Bを含むターボ乳化機中へ吸い上げられた。混合物Cがターボ乳化機へ移された後、減圧下での攪拌が、乳化が完了するまで続けられた。
次いで、乳化液は冷却され、再び攪拌しながら、温度を40±2℃にした。
群Dの材料(別に調製)はこの温度でそれらを減圧下で吸い上げて加えられ、均一の混合物が得られるまで攪拌を保った。
次いで、材料E及びFが加えられ、各々の添加後およそ10分間攪拌を維持し、均一な混合が確認された。一度仕様が達成されると製品は周囲の温度へ冷却され(攪拌しながら)、適当に備え付けられた容器へと放出された。
得られた組成物はpH5.5~6.5を有し、4℃、40℃、25℃の明条件での一ヶ月の安定性の試験を通過した。
親油性成分がテトラペラルゴン酸ジグリセロール(総組成物の重量に対して7%)を含む本発明による水性化粧組成物(例2)は、親油性成分の同じ量がステアリン酸エチルヘキシルを含む比較組成物(例1)と同じ特性を示した。
【0070】
例3(比較)~4:髪のための調整クリーム
材料:
【0071】
【0072】
調製:
群Aの材料は重量が量られ、ターボ乳化機中で、一定速度で攪拌しながら混合し、70±2℃へ加熱した;材料Bは重量が量られ、混合物Aへ加えられ、混合物が均一であると確認されるのに十分な時間攪拌を続けた。群Cの材料は脂肪溶解装置中で重量を量り、一定速度で攪拌しながら70±2℃へ加熱した。両方の混合物が70±2℃に達した際、混合物Cは、ゆっくりと攪拌した混合物A+Bを含むターボ乳化機中へ吸い上げられた。混合物Cがターボ乳化機へ移した時、減圧下での攪拌が、乳化が完了するまで続けられた。
次いで、再び、減圧下及び一定速度で攪拌し、システムを40±2℃へと冷却した。一度製品の仕様がチェックされると、周囲の温度まで冷やされ(減圧下及び一定速度で攪拌)、適当に備え付けられた容器へと放出された。
得られる両方の組成物は、白色のエマルジョンの形態で、pHが4.5及び5の間を有し、同じ能力を示した。それらは安定性の試験も通過し、それらの感覚器の反応及びpHの特性は明条件で4℃、40℃又は25℃で一ヶ月後変化しないままであった。
【0073】
例5(比較)~6:口紅
材料:
【0074】
【0075】
調製:
群Aの材料はミキサー内に置かれ、90℃の温度まで加熱した。それらがその温度に達した際、攪拌しながら群Bの材料が加えられ、およそ80℃の温度を維持して加熱し続けながら混合物が完全に均一化するまで混合した。このように得られた混合物を、次いで、成形型に入れ、冷却した。
その親油成分がテトラペラルゴン酸ジグリセロール(組成物全体に対して10.5重量%)を含む本発明による親油性化粧組成物(例6)は、たとえこれらの化学構造が異なっても親油性成分の同じ量がリンゴ酸イソステアリルを含む比較組成物(例5)と同じ特性を示した。
【0076】
例7~8(比較)及び9:含水クリーム
材料:
【0077】
【0078】
比較例7のステアリン酸エチルヘキシルは、比較例8において等量(7.00%)のテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトール及び例9において等量(7.00%)のテトラペラルゴン酸ジグリセロールにより置き換えられた。
3つの水ベースのエマルジョンは例1と同じ手順によって調製され、官能試験を受けた。20人の女性個人のパネルはそれぞれの組成物を手の甲に広げることを求められ、以下の表に列挙する特性について1(低い)から3(高い)の評価を得た。
テトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む組成物は、スクアレン酸エチルヘキシル及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールの両方と比較した際により高い柔軟性、なめらかさ、及び吸収評価を示した。テトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールを含む組成物は、最も高い被膜形成効果を示した。
【0079】
【0080】
例10-顔料分散
黒色酸化鉄粒子(CI77499, YipinからYPC335200として商業的に入手可能)はテトラペラルゴン酸ジグリセロール中で分散され、エステル油中で化粧成分として一般的に使われた。それぞれの粉末粒子の試料は1つのエステル油の滴加によって湿らされ、次いで、スパチュラを用いて、湿潤点及び流動点に達するまで激しくに混和された。
湿潤点は柔らかい凝集性の塊を製造するための最小量の分散溶液として定義された;
水平に保持されたスパチュラの垂直な羽根から均一な塊の流れ、又は落下を産み出す為の分散溶液のさらなる最小添加が流動点を決める。
湿潤点(Wp) 及び流動点(Fp)に達するのに必要な分散溶液(例えばエステル油)の量が記録され、下記の表に報告され、顔料100g当たりの重量で表された。
【0081】
【0082】
驚くことに、テトラペラルゴン酸ジグリセロールは、FpがWpに有意に近いことが明らかとなり、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリド及びテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトールのそれらに比べてよりよい分散特性を示した。この最小値の違いは、最終組成物(およそ30%少ない溶媒が要求される)の有意なコスト節減を可能にするかなりの利点をもたらす。
【0083】
例11及び12~13(比較):口紅
3つの親油性化粧組成物は、次の組成リストに従って、例5(比較)~6に記載されたように口紅の形態で調製された:
【0084】
【0085】
例11中のテトラペラルゴン酸ジグリセロールは、比較例12において同じ量(21.72%)の中のテトラペラルゴン酸ペンタエリスリトール及び比較例13において同じ量(21.72%)のテトラオレイン酸ジグリセロールにより置き換えられた。
得られた3つの組成物を、官能評価に供した。20名の個人(女性)のパネルを求めて、口紅を試験し、以下の表に列挙する特性に対して1から5までの評点を得た。
評価尺度:
5:優良
4:良
3:並
2:可
1:不可
【0086】
【0087】
テトラペラルゴン酸ジグリセロールを含む例12の組成物は優良な流動性と柔軟性を示したのに対し、充満度、接着性、及び均一性は比較例13及び14の組成物のそれらと同等であった。