(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ポリアセタール樹脂組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 59/00 20060101AFI20231018BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20231018BHJP
C08K 5/30 20060101ALI20231018BHJP
C08K 5/31 20060101ALI20231018BHJP
C08K 5/24 20060101ALI20231018BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C08L59/00
C08K5/17
C08K5/30
C08K5/31
C08K5/24
C08K3/34
(21)【出願番号】P 2019023305
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】523168917
【氏名又は名称】グローバルポリアセタール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】平野 智之
(72)【発明者】
【氏名】山元 裕太
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193659(JP,A)
【文献】特開2011-052126(JP,A)
【文献】特開2009-155418(JP,A)
【文献】特開2005-187782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂100質量部に対し、非金属系意匠顔料0.3~1.5質量部と、ホルムアルデヒド捕捉剤とを含み、
前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、前記ポリアセタール樹脂1gに対してホルムアルデヒドと反応可能な反応基が5.0μmol以上となる割合で含ま
れ、
前記非金属系意匠顔料が、マイカ系意匠顔料および/またはホウ珪酸ガラス系意匠顔料を含み、数平均粒径が1~500μmである、
ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、前記ポリアセタール樹脂100質量部に対し、紫外線吸収剤0.1~0.7質量部、および、ヒンダードアミン系光安定剤0.05~0.5質量部の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ホルムアルデヒド捕捉剤が、ヒドラジド化合物、ヒドラジン化合物のヒドラゾン体、グアナミン化合物、および、尿素化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、前記ポリアセタール樹脂100質量部に対し、ポリアミド樹脂0.01~3質量部を含み、前記ポリアミド樹脂が、下記(A)または(B)を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物;
(A)ポリアミド樹脂の融点および/または軟化点が180℃以下である
(B)ポリアミド樹脂のアミン価が2mgKOH/g以上である。
【請求項5】
前記ホルムアルデヒド捕捉剤を、前記ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.05~0.5質量部含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成されたメタリック調の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール樹脂組成物および成形品に関する。特に、メタリック感を有するポリアセタール樹脂組成物および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的強度および剛性が高く、耐油性および耐有機溶剤性に優れ、広い温度範囲でバランスがとれた樹脂であり、かつ、その加工性が容易である。したがって、ポリアセタール樹脂は、代表的エンジニアリングプラスチックスとして、OA機器、デジタル家電、自動車部品およびその他工業部品などに多く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、メルトフローレートが1.0~5.0g/10分のポリアセタール樹脂100質量部、ヒドラジド化合物0.01~5質量部、数平均分子量が5,000以上25,000以下のポリエチレングリコール0.01~1質量部、および着色顔料0.01~5質量部を含有するポリアセタール樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、(A)ポリアセタール100質量部に対し、(B)平均粒径が3~200μm、平均厚みが0.1~40μmである扁平状アルミニウム粒子0.1~10質量部、(C)ヒンダードアミン系光安定剤0.01~5質量部、(D)紫外線吸収剤0.1~5質量部および(E)ホルムアルデヒド反応性窒素を有する安定剤0.01~5質量部を含有してなることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-074724号公報
【文献】特開2012-092185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリアセタール樹脂は、その製造時や加工成形時等にかかる熱履歴によって僅かな熱分解反応が生じ、きわめて微量ながらもホルムアルデヒドが発生するという問題がある。特に、ポリアセタール樹脂が自動車の内部で用いられる内装部品のように閉鎖された空間で用いられる場合、ホルムアルデヒドの発生は深刻な問題となりうる。
また、ポリアセタール樹脂から形成される成形品は、用途に応じてメタリック調を求められることがある。メタリック調を付与するためには、例えば、特許文献2に記載のように、メタリック顔料を添加することが考えられる。しかしながら、特許文献2に記載のメタリック顔料である、アルミニウム系意匠顔料では、空気中における酸化によって錆が発生することがある。従って、用途によっては、他のメタリック調を示すポリアセタール樹脂組成物が求められる。また、一般的に顔料を配合すると、ホルムアルデヒドが発生しやすくなる傾向にある。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、ホルムアルデヒドの発生が抑制され、かつ、メタリック調のポリアセタール樹脂組成物および前記樹脂組成物から形成される成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、メタリック調を付与する顔料として、非金属系意匠顔料を用いることにより、上記課題を解決することを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリアセタール樹脂100質量部に対し、非金属系意匠顔料0.3~1.5質量部と、ホルムアルデヒド捕捉剤とを含み、前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、前記ポリアセタール樹脂1gに対してホルムアルデヒドと反応可能な反応基が3.0μmol以上となる割合で含まれる、ポリアセタール樹脂組成物。
<2>さらに、前記ポリアセタール樹脂100質量部に対し、紫外線吸収剤0.1~0.7質量部、および、ヒンダードアミン系光安定剤0.05~0.5質量部の少なくとも一方を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記ホルムアルデヒド捕捉剤が、ヒドラジド化合物、ヒドラジン化合物のヒドラゾン体、グアナミン化合物、および、尿素化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>さらに、前記ポリアセタール樹脂100質量部に対し、ポリアミド樹脂0.01~3質量部を含み、前記ポリアミド樹脂が、下記(A)または(B)を満たす、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物;
(A)ポリアミド樹脂の融点および/または軟化点が180℃以下である
(B)ポリアミド樹脂のアミン価が2mgKOH/g以上である。
<5>前記ホルムアルデヒド捕捉剤を、前記ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.05~0.5質量部含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記非金属系意匠顔料が、マイカ系意匠顔料、ホウ珪酸ガラス系意匠顔料およびシリカフレーク系意匠顔料の少なくとも1種を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記非金属系意匠顔料が、マイカ系意匠顔料を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>前記非金属系意匠顔料が、ホウ珪酸ガラス系意匠顔料を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9><1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<10><1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成されたメタリック調の成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ホルムアルデヒドの発生が抑制され、かつ、メタリック調のポリアセタール樹脂組成物および前記樹脂組成物から形成される成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明のポリアセタール樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある)は、ポリアセタール樹脂100質量部に対し、非金属系意匠顔料0.3~1.5質量部と、ホルムアルデヒド捕捉剤とを含み、前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、前記ポリアセタール樹脂1gに対してホルムアルデヒドと反応可能な反応基が3.0μmol以上となる割合で含まれることを特徴とする。
非金属系意匠顔料を用い、かつ、ホルムアルデヒド捕捉剤をポリアセタール樹脂1gに対してホルムアルデヒドと反応可能な反応基が3.0μmol以上となる割合で配合することにより、ホルムアルデヒドの発生が抑制され、かつ、メタリック調のポリアセタール樹脂組成物の提供に成功した。この理由は定かではないが、非金属系意匠顔料を用いた場合、ポリアセタール樹脂中でアルデヒドが比較的発生しにくい点にあると推測される。
さらに、耐光性を高めることにも成功した。
【0010】
<ポリアセタール樹脂>
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂を含む。
ポリアセタール樹脂は特に限定されるものではなく、2価のオキシメチレン基のみを構成単位として含むホモポリマーであっても、2価のオキシメチレン基と、炭素数が2~6の2価のオキシアルキレン基とを構成単位として含むコポリマーであってもよい。
【0011】
炭素数が2~6のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、および、オキシブチレン基などが挙げられる。
【0012】
ポリアセタール樹脂においては、オキシメチレン基および炭素数2~6のオキシアルキレン基の総モル数に占める炭素数2~6のオキシアルキレン基の割合は特に限定されるものではなく、0.5~10モル%であればよい。
【0013】
上記ポリアセタール樹脂を製造するためには通常、主原料としてトリオキサンが用いられる。また、ポリアセタール樹脂中に炭素数2~6のオキシアルキレン基を導入するには、環状ホルマールや環状エーテルを用いることができる。環状ホルマールの具体例としては、1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキセパン、1,3-ジオキソカン、1,3,5-トリオキセパン、1,3,6-トリオキソカンなどが挙げられ、環状エーテルの具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドなどが挙げられる。ポリアセタール樹脂中にオキシエチレン基を導入するには、主原料として、1,3-ジオキソランを用いればよく、オキシプロピレン基を導入するには、主原料として、1,3-ジオキサンを用いればよく、オキシブチレン基を導入するには、主原料として、1,3-ジオキセパンを用いればよい。なお、ポリアセタール樹脂においては、ヘミホルマール末端基量、ホルミル末端基量、熱や酸、塩基に対して不安定な末端基量が少ない方がよい。ここで、ヘミホルマール末端基とは、-OCH2OHで表されるものであり、ホルミル末端基とは-CHOで表されるものである。
【0014】
ポリアセタール樹脂のメルトインデックス(ASTM-D1238規格:190℃、2.16kg)は1.0g/10分~100g/10分であることが好ましい。
【0015】
ポリアセタール樹脂としては、上記の他、特開2015-074724号公報の段落0018~0043に記載のポリアセタール樹脂を用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0016】
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂を70質量%以上含むことが好ましく、75質量%以上含むことがより好ましく、78質量%以上含むことがさらに好ましい。上限は、99.8質量%以下であることが好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0017】
<非金属系意匠顔料>
本発明の樹脂組成物は、非金属系意匠顔料を含む。
非金属系意匠顔料とは、基材となる部分が金属単体および金属合金以外のものから構成されている意匠顔料をいう。基材のみから構成される場合は、基材自身が金属単体および金属合金以外のものから構成されている意匠顔料をいう。
非金属系意匠顔料は、マイカ系意匠顔料、ホウ珪酸ガラス系意匠顔料、シリカフレーク系意匠顔料が例示され、マイカ系意匠顔料および/またはホウ珪酸ガラス系意匠顔料を含むことが好ましい。
非金属系意匠顔料を用いることにより、メタリック調の優れた外観が得られると共に、より効果的にホルムアルデヒドを捕足することが可能になる。
【0018】
マイカ系意匠顔料とは、マイカの表面を金属酸化物および/または半金属酸化物で被覆した材料をいう。表面を被覆する金属酸化物および/または半金属酸化物の種類や被覆の程度によって、屈折率を調整し、所望のメタリック調を発揮させる。半金属としては、B、Si、Ge、As、Sb、Te、Poが例示される。金属酸化物または半金属酸化物を構成する金属または半金属としては、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、BiおよびPoが例示され、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Rb、CsおよびBaの少なくとも1種を含むことが好ましく、Ti、Fe、Zr、Ir、Nb、Ta、Zn、Ab、Sn、Biが好ましい。
【0019】
非金属系意匠顔料の密度は、3.0~4.0g/cm3であることが好ましく、3.2~3.4g/cm3であることがより好ましい。非金属系意匠顔料の数平均粒径は、1~1000μmが好ましく、1~500μmがより好ましく、10~200μmが更に好ましい。数平均粒径は、ISO13320-1(レーザー回折法)従って測定される。
【0020】
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂100質量部に対し、非金属系意匠顔料0.3~1.5質量部含む。0.3質量部以上とすることにより、メタリック調を効果的に発揮させることができ、1.5質量部以下とすることにより、ホルムアルデヒドの発生を効果的に抑制することができる。非金属系意匠顔料の含有量は、0.3質量部以上、0.5質量部以上、0.8質量部以上であってもよく、また、1.2質量部以下であってもよい。
本発明の樹脂組成物は、非金属系意匠顔料を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、また、金属系意匠顔料を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、本発明の樹脂組成物における、金属系意匠顔料の含有量が、非金属系意匠顔料の含有量の10質量%以下であることをいい、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
一方、本発明の樹脂組成物は、非金属系意匠顔料と金属系意匠顔料(例えば、アルミニウム系意匠顔料)を併用することも好ましい。このような構成とすることにより、非金属系意匠顔料と非金属系意匠顔料の有用な特性を併せ持つ樹脂組成物とすることができる。
【0021】
<ホルムアルデヒド捕捉剤>
本発明の樹脂組成物は、ホルムアルデヒド捕捉剤を含む。
ホルムアルデヒド捕捉剤は、ヒドラジド化合物、ヒドラジン化合物のヒドラゾン体、グアナミン化合物、および、尿素化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ヒドラジド化合物およびヒドラジン化合物のヒドラゾン体の少なくとも1種を含むことが好ましく、ヒドラジド化合物およびヒドラジン化合物のヒドラゾン体の両方を含むことがより好ましい。
ヒドラジド化合物と、ヒドラジン化合物のヒドラゾン体の質量比率は、0.1~1:1であることが好ましく、0.1~0.5:1であることがより好ましい。このような比率で配合することにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
【0022】
<<ヒドラジド化合物>>
ヒドラジド化合物としては、2つ以上のヒドラジド基を有するヒドラジド化合物が好ましい。
ジヒドラジド化合物としては、脂肪族ジヒドラジド化合物および芳香族ジヒドラジド化合物が例示される。
【0023】
脂肪族ジヒドラジド化合物としては、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド(1,12-ドデカンジカルボヒドラジド)、1,18-オクタデカンジカルボヒドラジド、ステアリン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジドなどが挙げられる。
【0024】
芳香族ジヒドラジド化合物としては、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、1,5-ナフタレンジカルボヒドラジド、1,8-ナフタレンジカルボヒドラジド、2,6-ナフタレンジカルボヒドラジド、4,4'-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、1,5-ジフェニルカルボノヒドラジドが挙げられる。
【0025】
本発明で用いるヒドラジド化合物は、下記式(1)で表されることが好ましい。
式(1)
【化1】
上記式中、R
11は、炭素数2~18の脂肪族炭化水素基、炭素数6~10の脂環式炭化水素基または炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表す;R
12~R
15は、それぞれ独立に、水素原子、または、炭素数1~6のアルキル基を表す;R
12とR
13、および、R
14とR
15は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0026】
式(1)において、R11は炭素数2~18の脂肪族炭化水素基、炭素数6~10の脂環式炭化水素基または炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表し、炭素数2~18の脂肪族炭化水素基が好ましい。炭素数2~18の脂肪族炭化水素基の炭素数は、4以上が好ましく、6以上が好ましく、8以上がより好ましい。また、炭素数2~18の脂肪族炭化水素基の炭素数は、16以下が好ましく、14以下がより好ましく、12以下がさらに好ましい。
上記脂肪族炭化水素基は、飽和でも、不飽和でもよく、直鎖状でも、分岐状でもよい。脂肪族炭化水素基の具体例としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基およびノナデシレン基などのアルキレン基などが挙げられる。
【0027】
上記脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよい。
脂環式炭化水素基としては、炭素数6~10のシクロアルキレン基などが挙げられる。シクロアルキレン基としては、例えばシクロへキシレン基などが挙げられる。
【0028】
芳香族炭化水素基としては、フェニレン基およびナフチレン基などのアリーレン基が挙げられる。
芳香族炭化水素基の炭素原子の少なくとも一部に置換基が結合していてもよい。この置換基としては、ハロゲン基、ニトロ基、炭素数1~20のアルキル基などが挙げられる。
【0029】
式(1)において、R12~R15は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基およびエチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0030】
<<ヒドラジン化合物のヒドラゾン体>>
ヒドラジン化合物のヒドラゾン体としては、下記式(2)で表される化合物および下記式(3)で表される化合物から選ばれる群より選択される少なくとも1種のヒドラジン化合物のヒドラゾン体が好ましい。
式(2)
【化2】
(式(2)中、R
1は炭素数4~20の脂肪族炭化水素基、炭素数6~10の脂環式炭化水素基または炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表す。R
2~R
5はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素数1もしくは2のアルキル基を表し、R
2およびR
3のうち少なくとも一方は炭素数1または2のアルキル基を表し、R
4およびR
5のうち少なくとも一方は炭素数1または2のアルキル基を表す。)
【0031】
式(2)において、R1は炭素数4~20の脂肪族炭化水素基、炭素数6~10の脂環式炭化水素基または炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表す。
上記脂肪族炭化水素基は、飽和でも、不飽和でもよく、直鎖状でも、分岐状でもよい。
脂肪族炭化水素基の具体例としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基およびイコシレン基などのアルキレン基などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基は炭素数6~12の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。この場合、ヒドラジン化合物のヒドラゾン体とホルムアルデヒドとの反応性がより高くなり、ホルムアルデヒドの発生がより効果的に抑制される。また、成形加工時の金型の汚染をより十分に抑制できる。
上記脂環式炭化水素基は、飽和でも、不飽和でもよい。
脂環式炭化水素基としては、炭素数6~10のシクロアルキレン基などが挙げられる。シクロアルキレン基としては、シクロへキシレン基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニレン基およびナフチレン基などのアリーレン基が挙げられる。
芳香族炭化水素基の炭素原子の少なくとも一部に置換基が結合していてもよい。この置換基としては、ハロゲン基、ニトロ基、炭素数1~20のアルキル基などが挙げられる。
式(2)において、R2~R5はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素数1もしくは2のアルキル基を表し、R2およびR3のうち少なくとも一方は炭素数1または2のアルキル基を表し、R4およびR5のうち少なくとも一方は炭素数1または2のアルキル基を表す。
ここで、式(2)において、R2およびR4がエチル基である場合には、R3およびR5が水素原子であり、R2およびR4がメチル基である場合には、R3およびR5が水素原子またはメチル基であることが好ましい。
この場合、ヒドラジン化合物のヒドラゾン体とホルムアルデヒドとの反応性がより高くなり、ホルムアルデヒドの発生がより効果的に抑制される。
【0032】
上記式(2)で表される化合物の具体例としては、1,12-ビス[2-(1-メチルエチリデン)ヒドラジノ]]-1,12-ドデカンジオン、1,12-ビス(2-エチリデンヒドラジノ)-1,12-ドデカンジオン、1,12-ビス(2-プロピリデンヒドラジノ)-1,12-ドデカンジオン、1,12-ビス[2-(1-メチルプロピリデン)ヒドラジノ]-1,12-ドデカンジオン、1,12-ビス[2-(1-エチルプロピリデン)ヒドラジノ]-1,12-ドデカンジオン、1,10-ビス[2-(1-メチルエチリデン)ヒドラジノ]]-1,10-デカンジオン、1,10-ビス(2-プロピリデンヒドラジノ)-1,10-デカンジオン、1,10-ビス(2-プロピリデンヒドラジノ)-1,10-デカンジオン、1,10-ビス[2-(1-メチルプロピリデン)ヒドラジノ]-1,10-デカンジオン、1,10-ビス[2-(1-エチルプロピリデン)ヒドラジノ]-1,10-デカンジオン、1,6-ビス[2-(1-メチルエチリデン)ヒドラジノ]-1,6-ヘキサンジオン、1,6-ビス(2-エチリデンヒドラジノ)-1,6-ヘキサンジオン、1,6-ビス(2-プロピリデンヒドラジノ)-1,6-ヘキサンジオン、1,6-ビス[2-(1-メチルプロピリデン)ヒドラジノ]-1,6-ヘキサンジオン、1,6-ビス[2-(1-エチルプロピリデン)ヒドラジノ]-1,6-ヘキサンジオンなどが挙げられる。
【0033】
式(3)
【化3】
(式(3)中、R
8は炭素数4~20の脂肪族炭化水素基、炭素数6~10の脂環式炭化水素基または炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表す。R
6およびR
7はそれぞれ独立に、炭素数3~12の脂環式炭化水素基を表す。)
【0034】
式(3)において、R8は、R1と同様であり、好ましい範囲も同様である。
R6およびR7はそれぞれ独立に、炭素数3~12の脂環式炭化水素基を表す。
炭素数3~12の脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシレン基などが挙げられる。
上記式(3)で表される化合物の具体例としては、1,12-ビス(2-シクロヘキシリデンヒドラジノ)-1,12-ドデカンジオン、1,10-ビス(2-シクロヘキシリデンヒドラジノ)-1,10-デカンジオン、1,6-ビス(2-シクロヘキシリデンヒドラジノ)-1,6-ヘキサンジオンなどが挙げられる。
【0035】
<<グアナミン化合物>>
グアナミン化合物としては、ベンゾグアナミン、N-メチロール化ベンゾグアナミンが例示される。
【0036】
<<尿素化合物>>
尿素化合物としては、エチレン尿素、ジメチルエチレン尿素、プロピレン尿素、およびテトラブチル尿素が例示される。
【0037】
ホルムアルデヒド捕捉剤は、本発明の樹脂組成物中に、ポリアセタール樹脂1gに対してホルムアルデヒドと反応可能な反応基が3.0μmol以上となる割合で含まれる。前記含有量は、4.0μmol以上が好ましく、5.0μmol以上がより好ましく、8.0μmol以上がさらに好ましく、10.0μmol以上が一層好ましく、12.0μmol以上がより一層好ましく、15μmol以上がさらに一層好ましい。また、前記含有量の上限は、100μmol以下が好ましく、70μmol以下がより好ましく、50μmol以下がさらに好ましく、40μmol以下が一層好ましく、30μmol以下がより一層好ましく、25μmol以下がさらに一層好ましい。上記下限値以上とすることにより、ホルムアルデヒドの発生を効果的に抑制し、上記上限値以下とすることにより、金型汚れを効果的に抑制できる。
本発明の樹脂組成物は、ホルムアルデヒド捕捉剤を、前記ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上含むことが好ましく、0.15質量部含むことがより好ましい。また、ホルムアルデヒド捕捉剤は、また、前記ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.5質量部以下含むことが好ましく、0.3質量部以下含むことがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ホルムアルデヒド捕捉剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となる。
【0038】
<紫外線吸収剤>
本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤を含むことにより、耐候性を向上させることが可能になる。
紫外線吸収剤としては、好ましくは、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、芳香族ベンゾエート化合物、シアノアクリレート化合物、および、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤の中から選ばれる。
【0039】
紫外線吸収剤の具体例としては、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-イソアミル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2'-ヒドロキシ-3',5'-ビス-(α,α-ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-4'-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オキシベンジルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、p-t-ブチルフェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3'-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3'-ジフェニルアクリレート、N-(2-エトキシ-5-t-ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N-(2-エチルフェニル)-N'-(2-エトキシフェニル)シュウ酸ジアミドなどが挙げられる。
上記の他、国際公開2017/018210号の段落0116~0117に記載の紫外線吸収剤を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0040】
好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール化合物であり、特に好ましくは、20℃における蒸気圧が1×10-8Pa以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。具体的には、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]が挙げられる。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂100質量部に対し、紫外線吸収剤を0.1質量部以上含むことが好ましく、0.2質量部以上含むことがより好ましい。また、本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂100質量部に対し、紫外線吸収剤を0.7質量部以下含むことが好ましく、0.5質量部以下含むことがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0042】
<安定剤>
本発明の樹脂組成物は、安定剤を含んでいてもよい。安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤および所定のポリアミド樹脂が挙げられる。
【0043】
<<ヒンダードアミン系光安定剤>>
本発明の樹脂組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含むことが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤を含むことにより、耐候性を向上させることができる。
ヒンダードアミン系光安定剤は、式(4)で表されるものが好ましく用いられる。
式(4)
【化4】
(式(4)中、Rは窒素原子との結合部が炭素原子である有機基を表し、Xは、酸素原子もしくは窒素原子を介してピペリジル基の4位と結合する有機基、または水素原子を表す。)
【0044】
Rは、炭素数1~10の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、t-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0045】
好ましいヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、1-[2-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルおよびトリデシル-1,2,3,4ブタンテトラカルボキシレート(ブタンテトラカルボキシレートの4つのエステル部の一部が1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル基で他がトリデシル基である化合物の混合物)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β,β-テトラメチル-3,9(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウデンカン)-ジエタノールとの縮合物、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの縮合物、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、N,N´,N´´,N´´´-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートが挙げられる。
上記の他、国際公開2017/018210号の段落0113に記載のヒンダードアミン系光安定剤を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂100質量部に対し、ヒンダードアミン系光安定剤を0.05質量部以上含むことが好ましく、0.1質量部以上含むことがより好ましい。また、本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂100質量部に対し、ヒンダードアミン系光安定剤を0.5質量部以下含むことが好ましく、0.3質量部以下含むことがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、耐候性がより向上する傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、金型汚れを効果的に抑制できる。
本発明の樹脂組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0047】
<<ポリアミド樹脂(安定剤)>>
本発明の樹脂組成物は、安定剤としてのポリアミド樹脂を含むことが好ましい。本発明で用いる安定剤としてのポリアミド樹脂は、下記(A)または(B)を満たすポリアミド樹脂であることが好ましい。
(A)ポリアミド樹脂の融点および/または軟化点が180℃以下である
(B)ポリアミド樹脂のアミン価が2mgKOH/g以上である。
【0048】
ポリアミド樹脂は、融点および/または軟化点が180℃以下のポリアミド樹脂であることが好ましい。融点および/または軟化点を低くすることにより、ポリアセタール樹脂と混練する温度において、溶融状態とすることができ、ポリアミド樹脂の分散性がより向上する。このようなポリアミド樹脂としては、脂肪族ポリアミド樹脂、脂環族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂のいずれも使用することができる。
【0049】
ポリアミド樹脂は1種の構成単位から構成されるものであっても、2種以上の構成単位から構成されるものであってもよい。ポリアミド樹脂の原料としては、ω-アミノ酸、好ましくは炭素数6~12の直鎖ω-アミノ酸およびそのラクタム;アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘプタデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのジカルボン酸やそのジメチルエステル;ヘキサメチレンジアミンなどのジアミン類が挙げられる。複数種の構成単位から成る共重合ポリアミドの場合には、共重合比率、共重合形態(ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、架橋ポリマー)などは任意に選択することができる。ポリアミド樹脂としては、ポリアミド12、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66/610共重合体、ポリアミド6/66/610/12共重合体またはこれらの2種以上の混合物が好ましい。この場合、ホルムアルデヒドの発生をより効果的に抑制できる。
【0050】
ポリアミド樹脂の融点および/または軟化点は、好ましくは175℃以下であり、より好ましくは170℃以下である。下限値としては、例えば、100℃以上である。
【0051】
本発明においては、アミン価が2mgKOH/g以上のポリアミド樹脂も好ましい。このような末端にアミノ基を多く持つポリアミド樹脂は、ホルムアルデヒドが酸化されて生成するギ酸による酸性を中和し、ポリアセタール樹脂の分解を効果的に抑制することができる。アミン価は、好ましくは2.5mgKOH/g以上である。アミン価は通常、100mgKOH/g以下、好ましくは80mgKOH/g以下であり、より好ましくは60mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは40mgKOH/g以下であり、一層好ましくは20mgKOH/g以下であり、より一層好ましくは10mgKOH/g以下であり、さらに一層好ましくは5mgKOH/g以下である。ポリアセタール樹脂に着色剤を配合すると、ポリアセタール樹脂が分解しやすくなり、ホルムアルデヒドが発生しやすくなる。このホルムアルデヒドは酸化されるとギ酸となり、このギ酸による酸性は、ポリアセタール樹脂の分解をさらに促進させることになる。本発明においては、末端にアミノ基を多く持つポリアミド樹脂を配合することにより、ホルムアルデヒドが酸化されて生成するギ酸による酸性を中和し、ポリアセタール樹脂の分解を抑制することができる。
【0052】
ポリアミド樹脂のアミン価の調整は、ジカルボン酸とジアミンの仕込み比率を調整して重合したり、重合して得られたポリアミド樹脂とアミンなどの末端調整剤とを加熱して反応させることにより行うことができる。末端調整剤として用いられるアミンとしては、炭素数6~22のものが好ましく、例えば、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミンなどの脂肪族第一級アミンが挙げられる。
【0053】
また、上記ポリアミド樹脂として、ジカルボン酸としてダイマー酸を用いることも好ましい。すなわち、ポリアミド樹脂としてはダイマー酸とジアミンとを反応させて得られるダイマー酸ポリアミド樹脂も好ましい。この場合、ホルムアルデヒドの発生をより効果的に抑制できる。ダイマー酸は、オレイン酸やリノール酸、エルカ酸などの不飽和脂肪酸を2量化したものであり、その代表的なものの一つは炭素数36の二塩基酸および/または水素添加物を主体とし、他に少量の炭素数18の一塩基酸(モノマー)や炭素数54の三塩基酸(トリマー)を含有しているものである。ダイマー酸とジアミンとを反応させて得られるダイマー酸ポリアミド樹脂は、軟化点が180℃以下であり、好適に用いることができる。
【0054】
ポリアミド樹脂の重量平均分子量は任意であるが、例えば、500~100,000、好ましくは1,000~50,000である。なお、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定された、ポリスチレン換算の値を言う。
【0055】
本発明におけるポリアミド樹脂は、融点および/または軟化点が180℃以下であって、アミン価が2mgKOH/g以上のダイマー酸ポリアミド樹脂であることが好ましい。この場合、ホルムアルデヒドの発生をより効果的に抑制できる。
【0056】
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂100質量部に対し、ポリアミド樹脂を0.01質量部以上含むことが好ましく、0.05質量部以上含むことがより好ましく、0.1質量部以上含むことがさらに好ましい。また、ポリアミド樹脂を3質量部以下含むことが好ましく、2.0質量部以下含むことがより好ましく、1.0質量部以下含むことがさらに好ましい。上記下限値以上とすることにより、ホルムアルデヒドの発生を効果的に抑制できる。また、上記上限値以下とすることにより、成形品の機械的強度を高くすることができる。
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0057】
<他の成分>
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内で、従来公知の任意の添加剤や充填剤を含んでいてもよい。本発明に用いる添加剤や充填剤としては、例えば、ポリアセタール樹脂以外の熱可塑性樹脂、帯電防止剤、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスフレーク、チタン酸カリウムウイスカー、一般顔料等が挙げられる。これらの詳細は、特開2017-025257号公報の段落0113~0124の記載を参酌することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0058】
<<一般顔料>>
一般顔料としては、例えば、「顔料便覧(日本顔料技術協会編)」に記載されている一般的な無機顔料や有機顔料を用いることができる(意匠顔料に該当するものを除く)。
無機顔料としてはチタンホワイト、チタンイエローなどのチタンを含む(複合)金属酸化物、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンブラック、群青、硫化亜鉛、三酸化アンチモンなどが挙げられる。有機顔料としてはフタロシアニン系、アンスラキノン系、キナクリドン系、アゾ系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ペリノン系、ペリレン系などの顔料が挙げられる。
本発明では無機顔料が好ましく、カーボンブラックがより好ましい。
一般顔料としては、上記の他、特開2015-074724号公報の段落0051に記載の着色顔料を用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂100質量部に対し、一般顔料を0.01~5質量部含むことが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、一般顔料を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0059】
<ポリアセタール樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、上述した必須成分および必要に応じ上述した任意の成分を含有させてなる。そしてその製造方法は任意であり、従来公知の任意の、樹脂組成物の製造方法を使用し、これらの原料を混合・混練すればよい。
【0060】
混練機は、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機等が例示される。混合・混練の各種条件や装置についても、特に制限はなく、従来公知の任意の条件から適宜選択して決定すればよい。混練はポリアセタール樹脂が溶融する温度以上、具体的にはポリアセタール樹脂の融解温度以上(一般的には180℃以上)で行うことが好ましい。
【0061】
<成形品>
本発明の成形品は、本発明のポリアセタール樹脂組成物から形成される。本発明の成形品はメタリック調であることが好ましい。
また、本発明のポリアセタール樹脂組成物をペレタイズして得られたペレットは、各種の成形法で成形して成形品とされる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂組成物を直接、成形して成形品にすることもできる。
成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、歯車状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状、キャップ状のもの等が挙げられる。本発明の成形品は、完成品であってもよいし、部品であってもよく、それぞれの溶着品でもよい。
【0062】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
【0063】
<用途>
本発明のポリアセタール樹脂組成物およびポリアセタール樹脂組成物から形成される成形品は、フッ素イオンを含む液に対する耐性能を求められる用途に好ましく用いられる。
具体的には、上述の通り、車両関連部品、特に、シートベルトガイド等の自動車用内装部品や、スィッチ、シフトレバー関係部品、ギヤチェンジフック等の自動車用部品に特に好適である。
【実施例】
【0064】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0065】
原料
(P)ポリアセタール樹脂(POM)
トリオキサンと1,3-ジオキソランとを、POM中の1,3-ジオキソランの含有率が3.8質量%(4.6モル%)となるように共重合して得られたアセタールコポリマーであって、メルトインデックス(ASTM-D1238規格:190℃、2.16kg)が10.5g/10分であるアセタールコポリマー
【0066】
(A)ホルムアルデヒド捕捉剤
添加剤A-1:1,12-ビス[2-(1-メチルエチリデン)ヒドラジノ]]-1,12-ドデカンジオン、日本ファインケム社製
添加剤A-2:アジピン酸ジヒドラジド、日本ファインケム社製
添加剤A-3:ドデカン二酸ジヒドラジド、日本ファインケム社製
添加剤A-4:ベンゾグアナミン、日本化学社製
添加剤A-5:エチレン尿素、関東化学社製
【0067】
(B)非金属系意匠顔料
添加剤B-1:Pyrisma T50-10、MERCK社製、マイカを酸化チタンで被覆したもの(数平均粒径:5~35μm)
添加剤B-2:Iriodin111、MERCK社製、マイカを酸化チタンで被覆したもの(数平均粒径:1~15μm)
添加剤B-3:Pyrisma T40-24、MERCK社製、マイカを酸化チタンで被覆したもの(数平均粒径:5~35μm)
添加剤B-4:Iriodin504、MERCK社製、マイカを酸化鉄で被覆したもの(数平均粒径:10~60μm)
添加剤B-5:Iriodin153、MERCK社製、マイカを酸化チタンで被覆したもの(数平均粒径:20~200μm)
添加剤B-6:Miraval5401、MERCK社製、ホウ珪酸ガラスを基材としたもの(数平均粒径:20~200μm)
【0068】
(C)紫外線吸収剤
添加剤C:Tinuvin234、BASF社製、ベンゾトリアゾール化合物
【0069】
(D)ヒンダードアミン系光安定剤
添加剤D:Tinuvin622、BASF社製
【0070】
(E)ポリアミド樹脂(安定剤)
添加剤E:ダイマー酸ポリアミド樹脂、T&K TOKA社製、トーマイドTXM-272、軟化点125℃、アミン価3.0mgKOH/g
(F)一般顔料
添加剤F:カーボンブラックPigment Black 7、エボニックデグサジャパン株式会社製、商品名:プリンテックス
【0071】
実施例1~18、比較例1~7
表1~3に示す各成分を表1~3に示す割合(質量部)で、川田製作所社製スーパーミキサーを用いて均一に混合した。得られた混合物をスクリュー径40mmのベント付き単軸押出機(田辺プラスチックス機械社製「VS-40」)を用いて、シリンダー温度190℃、スクリュー回転数60rpm、吐出量18kg/時間で溶融せん断混合し、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。
なお、表1~3において、ホルムアルデヒド捕捉基量とは、ポリアセタール樹脂1gに対してホルムアルデヒドと反応可能な反応基の量(μmol/g)をいう。
【0072】
上記で得られたペレットを、温度80℃の熱風循環式乾燥機にて4時間熱処理を行った。
次に、日精樹脂工業社製射出成形機PS-40を用い、シリンダー温度215℃、金型温度80℃にて、実施例1~18、比較例1~7で得られたポリアセタール樹脂組成物のペレットを射出成形し、100mm×40mm×2mmの平板試験片を作製した。
【0073】
<ホルムアルデヒド発生量>
上記平板試験片を作製した日の翌日に、当該平板試験片をドイツ自動車工業組合規格VDA275(自動車室内部品-改訂フラスコ法によるホルムアルデヒド放出量の定量)に記載された方法に準拠して、下記の方法によりホルムアルデヒド発生量(μg/g-POM、ポリアセタール樹脂1gあたりのホルムアルデヒド発生量(μg)をいう)を測定した。
(i)まずポリエチレン容器中に蒸留水50mLを入れ、上記平板試験片を空中に吊るした状態で蓋を閉め、密閉状態で60℃にて3時間加熱した。
(ii)続いて室温で60分間放置した後、平板試験片を取り出した。
(iii)ポリエチレン容器内の蒸留水中に吸収されたホルムアルデヒド量を、UVスペクトロメーターにより、アセチルアセトン比色法で測定し、このホルムアルデヒド量を平板試験片中のPOMの質量で除した値をホルムアルデヒド発生量とした。
【0074】
<外観>
上記で得られた平板試験片を、目視で確認し、以下の3段階で判定を行った。
3:色目は金属に近く、輝度も十分ある 。
2:色目は金属に近いが、輝度が無い。
1:メタリック感無し。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
上記結果から明らかなとおり、本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ホルムアルデヒド発生量が抑制され、かつ、メタリック調に優れた成形品が得られた(実施例1~18)。これに対し、非金属系意匠顔料を含まないか、含んでいてもその量が少ない場合、外観が劣っていた(比較例1、2)。また、非金属系意匠顔料の量が多い場合、ホルムアルデヒドの発生量が多くなってしまった(比較例3、4)。また、ホルムアルデヒド捕捉剤の量が少ないか、含まない場合、ホルムアルデヒドの発生量が多くなってしまった(比較例5~7)。