(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】変成器及びボビン
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20231018BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20231018BHJP
H01F 5/02 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
H01F30/10 E
H01F27/32 150
H01F5/02 G
(21)【出願番号】P 2019093139
(22)【出願日】2019-05-16
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
(72)【発明者】
【氏名】井手上 篤
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163052(JP,A)
【文献】特開2010-199464(JP,A)
【文献】特開平03-283505(JP,A)
【文献】特開2017-163051(JP,A)
【文献】特開2017-045750(JP,A)
【文献】特開2018-082080(JP,A)
【文献】特開2014-236128(JP,A)
【文献】特開2002-141229(JP,A)
【文献】実開昭62-149825(JP,U)
【文献】実開昭61-112617(JP,U)
【文献】登録実用新案第3120511(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 27/32
H01F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状をなし、外周に沿って形成された第一溝を有する第一枠体と、
該第一枠体の内側に配置され、環状をなし、外周に沿って形成された第二溝を有する第二枠体と、
前記第二溝の内側に周方向に沿って形成された環状のスペーサと
を備え、
前記第一溝及び第二溝それぞれにコイルが巻かれており、
前記スペーサによって、前記第二溝に巻かれたコイルは、放電を防止するために6~11mmの間隔を空けて分割されて
おり、
前記スペーサは、前記第二枠体の軸方向に沿って並んだ複数の壁を有し、
前記複数の壁の間に空間が設けられている
変成器。
【請求項2】
前記スペーサは
、前記複数の壁の間に配置されたリブを有する
請求項1に記載の変成器。
【請求項3】
前記リブはコイルの巻線に対して交差する方向に突出する
請求項
2に記載の変成器。
【請求項4】
環状をなし、外周に沿って形成されたコイルを巻くための第一溝を有する第一枠体と、
該第一枠体の内側に配置され、環状をなし、外周に沿って形成されたコイルを巻くため
の第二溝を有する第二枠体と、
前記第二溝の内側に周方向に沿って形成され、放電を防止するために巻かれたコイルを
6~11mmの間隔を空けて分割するための環状のスペーサと
を備え
、
前記スペーサは、前記第二枠体の軸方向に沿って並んだ複数の壁を有し、
前記複数の壁の間に空間が設けられている
ボビン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、複数のコイルを巻く変成器及びボビンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変圧又は変流を目的として、変成器が用いられている。変成器は、例えば樹脂製のボビンを有する。ボビンは、例えば、矩形環状の外枠及び内枠を備える。外枠及び内枠それぞれの外周面には、周方向に沿った環状の溝が形成されている。各溝にコイルが巻かれている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂製のボビンを用いて高圧コイルを作成する場合、電界強度を緩和するために、内枠の溝に周方向に沿う環状の壁を形成し、コイルを分割することが考えられる。しかし、壁の内部にボイド(気泡)が形成され、放電が発生するおそれがある。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、電界強度を緩和し、放電を抑制することができる変成器及びボビンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る変成器は、環状をなし、外周に沿って形成された第一溝を有する第一枠体と、該第一枠体の内側に配置され、環状をなし、外周に沿って形成された第二溝を有する第二枠体と、前記第二溝の内側に周方向に沿って形成された環状のスペーサとを備え、前記第一溝及び第二溝それぞれにコイルが巻かれており、前記スペーサによって、前記第二溝に巻かれたコイルは、放電を防止するために所定間隔を空けて分割されている。
【0007】
本開示においては、スペーサによって、第二溝に巻かれたコイルを分割し、分割されたコイル間に所定間隔を設ける。
【0008】
本開示に係る変成器は、前記スペーサは、前記第二枠体の軸方向に沿って並んだ複数の壁を有し、前記複数の壁の間に空間が設けられている。
【0009】
本開示においては、複数の壁と、壁の間の隙間とによって、分割されたコイル間に所定間隔を設け、放電を防止する。また第一の壁と第二溝の一側面との間に先にコイルを巻いた後、第二の壁と第二溝の他側面との間にコイルを巻く。第一の壁と第二の壁は隣り合っている。先に巻いたコイルによって第一の壁は変形する。しかし、第二の壁は変形しない。第二の壁と第二溝の他側面との間にコイルを巻くための空間は確保される。
【0010】
本開示に係る変成器は、前記スペーサは、壁と、該壁から突出したリブとを有する。
【0011】
本開示においては、壁からリブが突出しており、分割されたコイル間に所定間隔を設け、放電を防止する。またリブを設けることによって、壁の強度が向上し、壁の一面側にコイルを巻いても、壁は変形せず、壁の他面側にコイルを巻くための空間は確保される。
【0012】
本開示に係る変成器は、前記リブはコイルの巻線に対して交差する方向に突出する。
【0013】
本開示においては、リブによって、コイルと壁との間に所定間隔が設けられ、放電を抑制することができる。
【0014】
本開示に係るボビンは、環状をなし、外周に沿って形成されたコイルを巻くための第一溝を有する第一枠体と、該第一枠体の内側に配置され、環状をなし、外周に沿って形成されたコイルを巻くための第二溝を有する第二枠体と、前記第二溝の内側に周方向に沿って形成され、放電を防止するために巻かれたコイルを分割する環状のスペーサとを備える。
【0015】
本開示においては、スペーサによって、第二溝に巻かれたコイルを分割し、分割されたコイル間に所定間隔を設ける。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る変成器及びボビンにあっては、スペーサによって、第二溝に巻かれたコイルを分割し、分割されたコイル間に所定間隔を設ける。そのため、分割されたコイル間にて放電が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1に係る変成器を示す斜視図である。
【
図2】第一枠体、第二枠体及びコイルを示す分解斜視図である。
【
図4】構成を一部変更した変成器の略示断面図である。
【
図5】実施の形態2に係る変成器の略示断面図である。
【
図7】実施の形態3に係る変成器の略示断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
以下本発明を、実施の形態1に係る変成器を示す図面に基づいて説明する。
図1は、変成器1を示す斜視図、
図2は、第一枠体2、第二枠体3及びコイル41、42、43を示す分解斜視図である。
【0019】
変成器1は矩形環状のボビン10を備える。該ボビン10は樹脂部材によって構成されている。ボビン10は矩形環状の第一枠体2と、矩形環状の第二枠体3とを備える。第一枠体2の外周面には環状の第一溝21が形成されている。第一溝21は第一枠体2の周方向に沿って、外周面全体に形成されている。第一溝21にはコイル41が巻かれている。第一溝21には、軸方向に対向する二つの切欠22が設けられている。コイル41の巻線411の両端部は、いずれかの切欠22から外部に引き出される。第一枠体2の二つの長辺部それぞれの外側にカバー6が設けられている。
【0020】
第二枠体3は第一枠体2よりも径が小さく、第一枠体2の内側に配置される。第二枠体3の外周面には環状の第二溝31が形成されている。第二溝31は第二枠体3の周方向に沿って、外周面全体に形成されている。第二溝31の軸方向中央部分には、径方向に突出した板状のスペーサ7が形成されている。スペーサ7は、第二枠体3の周方向に沿って延びた環状をなし、第二溝31の全周に亘って形成されている。第二溝31には二つのコイル42、43が巻かれており、二つのコイル42、43はスペーサ7の両側に配置されている。換言すれば、スペーサ7によってコイル42、43は軸方向に分割されている。
【0021】
第二溝31には四つの切欠32が設けられている。軸方向に対向する二つの切欠32が第二枠体3の一方の短辺部に形成され、軸方向に対向する二つの切欠32が第二枠体3の他方の短辺部に形成されている。コイル42、43の巻線421、431の端部は、切欠32から外部に引き出される。
【0022】
変成器1は二つの巻鉄心5を備える。二つの巻鉄心5は、ボビン10の二つの長辺部にそれぞれ巻き付けられており、カバー6の外側及び第二枠体3の内側に巻き付けられている。巻鉄心5は、例えばコイル42に交流電圧を印加することによって生じた磁束を、コイル41に効率よく伝える。コイル41に磁束が伝わることによって、コイル41に交流電圧が生じる。
【0023】
図3は、変成器1の略示断面図である。
図3に示すように、スペーサ7は、径方向に突出した第一壁7a及び第二壁7bを備える。第一壁7a及び第二壁7bは第二溝31の周方向に延びる環状をなし、空間を空けて軸方向に対向する。第一壁7a及び第二壁7bそれぞれの厚さ(軸方向の厚さ)は、例えば2~4mmである。第一壁7a及び第二壁7bの間の空間の寸法(軸方向の寸法)は、例えば2~3mmである。第一壁7a又は第二壁7bの厚さが2mm未満の場合、強度が不足するおそれがあり、第一壁7a又は第二壁7bの厚さが4mm超過の場合、第一壁7a又は第二壁7bの内部にボイド(気泡)が発生しやすくなる。即ち、スペーサ7によって、第二溝31に巻かれたコイル42、43は分割され、分割されたコイル42、43の間には6~11mm程度の所定間隔が設けられている。なお変成器1は絶縁油内に配置され、第一壁7a及び第二壁7bの間の空間は、絶縁油によって満たされる。
【0024】
所定間隔を設けることによって、分割されたコイル42、43間にて放電が発生することを防止することができる。また第一壁7aと第二溝31の一側面との間に先にコイル42を巻いた後、第二壁7bと第二溝31の他側面との間にコイル43を巻く。第一壁7aと第二壁7bは隣り合っている。先に巻いたコイル42によって第一壁7aは変形する。しかし、第一壁7a及び第二壁7bの間に空間が設けられており、第二壁7bは変形しない。第二壁7bと第二溝31の他側面との間にコイル43を巻くための空間は確保され、コイル43は円滑にボビン10に巻かれる。なお、先に第二壁7bと第二溝31の他側面との間にコイル43を巻いた場合も同様である。
【0025】
図4は、構成を一部変更した変成器1の略示断面図である。第一壁7a及び第二壁7bの間の空間に一又は複数のリブ7cが設けられている。リブ7cは第一壁7a及び第二壁7bを連結する。リブ7cを設けることによって、スペーサ7の強度は向上し、第一壁7aと第二溝31の一側面との間に先にコイル42を巻いた場合でも、スペーサ7の変形を抑制することができる。なおスペーサ7は三つ以上の壁を有し、隣り合う二つの壁の間に空間を設けてもよい。リブ7cの厚さも第一壁7a、第二壁7bと同様に、強度及びボイドを考慮して、例えば2~4mmに設定される。
【0026】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る変成器1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態2に係る構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図5は、変成器1の略示断面図、
図6は、第二枠体3の略示部分拡大平面図である。
【0027】
スペーサ7は第二溝31から径方向に突出し、周方向に延びた環状をなす壁7dを備える。壁7dから軸方向両側に複数のリブ7eが突出している。リブ7eは径方向に延びた柱状をなす。壁7d及びリブ7eによって、所定間隔を設け、分割されたコイル42、43間にて放電が発生することを防止することができる。またリブ7eによって、壁7dの強度が向上し、壁7dの一面側にコイル42を巻いても、壁7dは変形せず、壁7dの他面側にコイル43を巻くための空間は確保される。
【0028】
コイル42、43の巻線421、431は周方向に沿って巻かれており、一方リブ7eは軸方向に突出している。即ち、リブ7eはコイル42、43の巻線421、431に対して交差する方向に突出する。そのため、隣り合う二つのリブ7eの間に巻線421は入り込まず、コイルと壁との間に所定間隔が設けられ、放電を抑制することができる。なおリブ7eは柱状に限定されず、径方向に突出した格子状であってもよい。壁7dとリブ7eの厚さも第一壁7a、第二壁7bと同様に、強度及びボイドを考慮して、例えば2~4mmに設定される。
【0029】
(実施の形態3)
以下本発明を実施の形態3に係る変成器1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態3に係る構成の内、実施の形態1又は2と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図7は、変成器1の略示断面図である。変成器1は、第一枠体120、第二枠体130、及び第三枠体140を有する。第一枠体120、第二枠体130、及び第三枠体140は、それぞれ、外周面に第一溝121、第二溝131及び第三溝141を備える。
【0030】
第一溝121及び第三溝141には、それぞれ、コイル41及びコイル44が巻かれている。第二溝131には、スペーサ7が形成されており、スペーサ7の両側にコイル42及びコイル43が巻かれている。スペーサ7によって、二つのコイル42、43の間に所定間隔が設けられ、放電を防止することができる。なおボビン10は四つ以上の枠体を有していてもよい。
【0031】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0032】
1 変成器 2 第一枠体 21 第一溝 3 第二枠体 31 第二溝
7 スペーサ 7a 第一壁 7b 第二壁 7c リブ 7d 壁 7e リブ
41~44 コイル