(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】管状部材の補強構造および管状部材の補強方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/162 20060101AFI20231018BHJP
F16L 55/18 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
F16L55/162
F16L55/18 B
(21)【出願番号】P 2019142710
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸司
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-299979(JP,A)
【文献】特開2003-130252(JP,A)
【文献】特開平10-246385(JP,A)
【文献】特表平10-503134(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0775954(KR,B1)
【文献】特開2001-336208(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0009018(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/162
F16L 55/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状部材の劣化部分で前記管状部材の内周面に取り付けられる補強部材を含む管状部材の補強構造であって、
前記補強部材は、前記管状部材の周方向の一部に設置され、前記管状部材の延長方
向を含む断面において波形に形成され
、
前記管状部材は、前記延長方向を含む断面において波形に形成され、
前記管状部材の波形に重ね合わせて前記補強部材の波形が配置されることを特徴とする管状部材の補強構造。
【請求項2】
管状部材の劣化部分で前記管状部材の内周面に取り付けられる補強部材を含む管状部材の補強構造であって、
前記補強部材は、前記管状部材の周方向の一部に設置され、前記管状部材の延長方
向を含む断面において前記管状部材の径方向外側に突出するリブを含
み、
前記管状部材は、前記延長方向を含む断面において波形に形成され、
前記管状部材の波形の谷にあたる部分で前記管状部材と前記補強部材との間に形成される空間に前記リブが突出することを特徴とする管状部材の補強構造。
【請求項3】
前記補強部材は高耐食性材料で形成される、請求項1または請求項2に記載の管状部材の補強構造。
【請求項4】
前記管状部材の内周面と前記補強部材との間の隙間に硬化性充填材が充填される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の管状部材の補強構造。
【請求項5】
前記補強部材は、前記劣化部分の周囲の非劣化部分で前記管状部材の内周面に接合される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の管状部材の補強構造。
【請求項6】
前記管状部材の周方向における前記補強部材の少なくとも一方の端部と、前記補強部材が取り付けられていない前記管状部材の非劣化部分の内周面とにそれぞれ当接させられる突張部材をさらに含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の管状部材の補強構造。
【請求項7】
前記突張部材は、前記管状部材の周方向における前記補強部材の端部に当接させられる第1端部と前記非劣化部分の内周面に当接させられる第2端部との間の距離を調節することが可能な伸縮機構を含む、請求項6に記載の管状部材の補強構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の管状部材の補強構造を用いて延長方向が略水平方向である前記管状部材を補強する管状部材の補強方法であって、
前記補強部材を前記管状部材の内部に搬入する工程と、
前記補強部材を前記劣化部分を含む前記管状部材の内周面に載置する工程と、
前記補強部材を前記管状部材に固定する工程と
を含む、管状部材の補強方法。
【請求項9】
前記補強部材を前記管状部材に固定した後、前記管状部材の内周面と前記補強部材との間の隙間に硬化性充填材を充填する工程をさらに含む、請求項8に記載の管状部材の補強方法。
【請求項10】
前記管状部材の周方向における前記補強部材の端部から前記硬化性充填材があふれ出ることによって前記硬化性充填材の充填の完了を判定する工程をさらに含む、請求項9に記載の管状部材の補強方法。
【請求項11】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の管状部材の補強構造を用いて前記管状部材を補強する管状部材の補強方法であって、
前記補強部材を前記管状部材の内部に搬入する工程と、
前記補強部材を前記劣化部分を含む前記管状部材の内周面に仮留めする工程と、
前記補強部材を前記管状部材に固定する工程と
を含む、管状部材の補強方法。
【請求項12】
前記補強部材を固定する工程は、前記管状部材の周方向における前記補強部材の少なくとも一方の端部と、前記補強部材が取り付けられていない前記管状部材の非劣化部分の内周面とにそれぞれ当接させられる突張部材を配置する工程を含む、請求項11に記載の管状部材の補強方法。
【請求項13】
前記補強部材を仮留めする工程は、前記管状部材の周方向における前記補強部材の少なくとも一方の端部と、前記補強部材が取り付けられていない前記管状部材の非劣化部分の内周面とにそれぞれ当接させられる突張部材を配置する工程を含み、
前記補強方法は、前記補強部材を前記管状部材に固定する工程の後に前記突張部材を撤去する工程をさらに含む、請求項11に記載の管状部材の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状部材の補強構造および管状部材の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管路は、例えば道路や鉄道線路の下部排水などを目的として設置される。近年、多くの管路で経年によって腐食を伴う劣化が進行し、補修および補強が実施されている。このような管路の補修および補強のための技術として、例えば特許文献1には、既設管路内に嵌合用凹部を備えた補強部材を用いて中空骨組み状補強体を組み立て、その内側で複数の嵌合用凹部のそれぞれに嵌合部材を装着し、その嵌合部材に対して複数の内面部材を嵌合することにより、既設管路の筒長方向に沿って筒状に組み立てた後、内面部材と既設管路の内面との間の空隙に硬化性充填材を注入する技術が記載されている。また、特許文献2には、管路下部の劣化した部分のみを補修する方法として、管路の最底部に設置されるインバートパネルにおいて、長尺用パネル本体の裏面に長手方向に連続して延びるリブを一体成形する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-085004号公報
【文献】特開2001-336208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術の場合、劣化が生じている部位に関わらず既設管路の全周にわたって内側に補強体を配置するため、例えば排水不良によって管路下部のみが腐食しているような場合には不経済であった。また、既設管路と補強体との間の空隙に硬化性充填材を注入する際に、充填状況を確認することが容易ではなかった。また、特許文献2に記載された技術の場合、補修するのは管路下部の劣化した部分のみであるが、長尺用パネル本体の裏面に一体成形されるリブは裏込充填材に対するアンカー効果を高めるためのものであるため管路の劣化による断面方向の剛性および強度の低下を補う効果はない。
【0005】
そこで、本発明は、管状部材の劣化部分に限定した補修が可能であり、かつ管状部材の劣化による剛性および強度の低下を補うことが可能な管状部材の補強構造および管状部材の補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある観点によれば、管状部材の劣化部分で管状部材の内周面に取り付けられる補強部材を含む管状部材の補強構造であって、補強部材は、管状部材の周方向の一部に設置され、管状部材の延長方向および径方向を含む断面において波形に形成されることを特徴とする管状部材の補強構造が提供される。
【0007】
本発明の別の観点によれば、管状部材の劣化部分で管状部材の内周面に取り付けられる補強部材を含む管状部材の補強構造であって、補強部材は、管状部材の周方向の一部に設置され、管状部材の延長方向および径方向を含む断面において管状部材の径方向外側に突出するリブを含むことを特徴とする管状部材の補強構造が提供される。
【0008】
上記の管状部材の補強構造において、補強部材は高耐食性材料で形成されてもよい。また、管状部材の内周面と補強部材との間の隙間に硬化性充填材が充填されてもよい。補強部材は、劣化部分の周囲の非劣化部分で管状部材の内周面に接合されてもよい。管状部材の補強構造は、管状部材の周方向における補強部材の少なくとも一方の端部と、補強部材が取り付けられていない管状部材の非劣化部分の内周面とにそれぞれ当接させられる突張部材をさらに含んでもよい。突張部材は、管状部材の周方向における補強部材の端部に当接させられる第1端部と非劣化部分の内周面に当接させられる第2端部との間の距離を調節することが可能な伸縮機構を含んでもよい。
【0009】
本発明のさらに別の観点によれば、上記の管状部材の補強構造を用いて延長方向が略水平方向である管状部材を補強する管状部材の補強方法であって、補強部材を管状部材の内部に搬入する工程と、補強部材を劣化部分を含む管状部材の内周面に載置する工程と、補強部材を管状部材に固定する工程とを含む、管状部材の補強方法が提供される。補強方法は、補強部材を管状部材に固定した後、管状部材の内周面と補強部材との間の隙間に硬化性充填材を充填する工程をさらに含んでもよい。この場合において、補強方法は、管状部材の周方向における補強部材の端部から硬化性充填材があふれ出ることによって硬化性充填材の充填の完了を判定する工程をさらに含んでもよい。
【0010】
本発明のさらに別の観点によれば、上記の管状部材の補強構造を用いて管状部材を補強する管状部材の補強方法であって、補強部材を管状部材の内部に搬入する工程と、補強部材を劣化部分を含む管状部材の内周面に仮留めする工程と、補強部材を管状部材に固定する工程とを含む、管状部材の補強方法が提供される。補強部材を固定する工程は、管状部材の周方向における補強部材の少なくとも一方の端部と、補強部材が取り付けられていない管状部材の非劣化部分の内周面とにそれぞれ当接させられる突張部材を配置する工程を含んでもよい。あるいは、補強部材を仮留めする工程が、管状部材の周方向における補強部材の少なくとも一方の端部と、補強部材が取り付けられていない管状部材の非劣化部分の内周面とにそれぞれ当接させられる突張部材を配置する工程を含み、補強方法は、補強部材を管状部材に固定する工程の後に突張部材を撤去する工程をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によれば、管状部材の劣化部分に限定した補修が可能であり、かつ管状部材の延長方向および径方向を含む断面において波形やリブが形成されるため、管状部材の劣化による剛性および強度の低下を補うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る補強構造が適用される管状部材の例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る補強構造が適用される管状部材の例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る補強構造の横断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る補強構造の縦断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の変形例に係る補強構造の縦断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る補強構造の縦断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態の変形例に係る補強構造の縦断面図である。
【
図8】本発明の実施形態における補強部材の固定方法の別の例について説明するための図である。
【
図9】本発明の実施形態における補強部材の固定方法の別の例について説明するための図である。
【
図10】本発明の実施形態における補強部材の固定方法の別の例について説明するための図である。
【
図11】本発明の実施形態における補強部材の搬入方法の例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
(管状部材の補強構造)
図1および
図2は、本発明の実施形態に係る補強構造が適用される管状部材の例を示す図である。それぞれの図に示されるように、補強構造は、管状部材1の劣化部分1Dで管状部材1の内周面に取り付けられる補強部材2を含む。管状部材1は、例えば
図1に示された例のように延長方向が略水平方向になるように配置されてもよいし(管路など)、
図2に示された例のように延長方向が略鉛直方向になるように配置されてもよい(立坑、集水井、骨材ビンなど)。なお、以下の説明において、横断面(管状部材1の延長方向に対して垂直な断面)は
図1および
図2に示すA-A線に沿った断面であり、縦断面(管状部材1の延長方向および径方向を含む断面)は
図1および
図2に示すB-B線に沿った断面である。
【0015】
図3は、本発明の実施形態に係る補強構造の横断面図である。図示されているように、補強部材2は劣化部分1Dを含む管状部材1の周方向の一部に設置される。補強部材2は、例えば鋼材または樹脂で形成されるが、加工性やコスト面からは鋼材が好適である。鋼材を用いる場合、例えばステンレス鋼板、溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板、厚膜めっき鋼板、または厚膜塗装鋼板のような高耐食性材料で補強部材2を形成することによって、補修後の補強部材2の経年劣化を抑制し、長期にわたって管状部材1の機能を維持することができる。
【0016】
また、
図3に示された例において、補強部材2は劣化部分1Dの周囲の非劣化部分で、ワンサイドボルト3を用いて管状部材1の内周面1Sに接合されている。ワンサイドボルト3の他、例えばドリルねじのような他の締結部品や溶接、接着剤などを用いて補強部材2を管状部材1の内周面1Sに接合してもよい。非劣化部分で補強部材2を管状部材1の内周面1Sに接合することによって、例えば土圧などの外力に対して管状部材1と補強部材2とが一体的に挙動し、補強部材2を用いて管状部材1の劣化による剛性および強度の低下を効果的に補うことができる。以下、補強部材2の縦断面の構成の2つの例について、第1の実施形態(補強部材2A)および第2の実施形態(補強部材2B)として説明する。
【0017】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る補強構造の縦断面図である。図示された例において、補強部材2Aは、縦断面においてコルゲート状、すなわち波形に形成される。補強部材2Aの波形は管状部材1の周方向に沿って延びる凹凸部を構成するため、補強部材2Aを接合することによって管状部材1の剛性および強度が向上する。劣化部分1Dでは、腐食による板厚の減少などによって管状部材1の剛性および強度が低下しているが、劣化部分1Dに補強部材2Aを取り付けることによって管状部材1の剛性および強度の低下を補うことができる。図示された例では、管状部材1が直管状であるため、補強部材2Aの波形の谷にあたる部分でワンサイドボルト3などを用いて補強部材2Aを内周面1Sに接合する。
【0018】
上記の例において、図示されているように、補強部材2Aと管状部材1の内周面1Sとの間の隙間には例えばコンクリートやモルタルなどの硬化性充填材4が充填されてもよい。硬化性充填材4を充填することによって、管状部材1の劣化部分1Dを補強部材2Aと硬化性充填材4の両方で効果的に補剛および補強することができる。また、劣化部分1Dが硬化性充填材4で覆われることによって、管状部材1の内側から劣化部分1Dに水や空気が流入しなくなるため、劣化部分1Dにおける腐食の進行を抑制することができる。また、補強部材2Aと内周面1Sとの間の隙間に硬化性充填材4を充填する場合、補強部材2Aがワンサイドボルト3などを用いて管状部材1の内周面1Sに接合されていることによって、硬化性充填材4の充填時の補強部材2Aの浮き上がりや回転を防止することができる。
【0019】
図5は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る補強構造の縦断面図である。図示された例では、
図4の例と同様の補強部材2Aが、縦断面においてコルゲート状、すなわち波形に形成された管状部材1Cの劣化部分1Dで管状部材1Cの内周面1Sに取り付けられる。
図4の例と同様に、補強部材2Aは、劣化部分1Dにおける管状部材1Cの剛性および強度の低下を補う。また、管状部材1Cおよび補強部材2Aの波形のピッチや深さを整合させることによって、管状部材1Cの波形に重ね合わせて補強部材2Aを配置することができる。この場合、管状部材1Cの延長方向については、波形同士の嵌合によって管状部材1Cに対する補強部材2Aの位置を固定できるため、施工が容易になる。
【0020】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る補強構造の縦断面図である。図示された例において、補強部材2Bは、縦断面において管状部材1の径方向外側に突出するリブ21を含む。補強部材2Bのリブ21は管状部材1の周方向に沿って延びる凸部を構成するため、補強部材2Bを接合することによって管状部材1の剛性および強度が向上し、例えば
図4に示された例と同様に補強部材2Bを取り付けることによって劣化による管状部材1の剛性および強度の低下を補うことができる。図示された例では、管状部材1が直管状であるため、リブ21が突出する空間を形成するために補強部材2Bには立ち上がり部22が形成され、劣化部分1Dに対向する部分において補強部材2Bは管状部材1の内周面1Sから離隔している。この部分において、補強部材2Bと管状部材1の内周面1Sとの間の隙間には、
図4の例と同様に硬化性充填材4が充填されてもよい。
【0021】
図7は、本発明の第2の実施形態の変形例に係る補強構造の縦断面図である。図示された例では、
図6の例と同様にリブ21を含む補強部材2Cが、縦断面においてコルゲート状、すなわち波形に形成された管状部材1Cの劣化部分1Dで管状部材1Cの内周面1Sに取り付けられる。
図6の例と同様に、補強部材2Cは、劣化部分1Dにおける管状部材1Cの剛性および強度の低下を補う。また、管状部材1Cの波形のピッチにリブ21の配置間隔を、管状部材1Cの波形の深さにリブ21の高さを、それぞれ整合させることによって、補強部材2Cに
図6の例のような立ち上がり部を形成しなくても、管状部材1Cの波形の山にあたる部分でワンサイドボルト3などを用いて補強部材2Cを内周面1Sに接合し、管状部材1Cの波形の谷にあたる部分で内周面1Sと補強部材2Cとの間に形成される空間にリブ21を突出させることができる。
【0022】
図8から
図10は、本発明の実施形態における補強部材の固定方法の別の例について説明するための図である。
図8および
図9の管状部材1の横断面図に示された例において、補強部材2(上記の第1の実施形態における補強部材2A、または第2の実施形態における補強部材2B,2C)は、補強部材2の端部2Eと、補強部材2が取り付けられていない管状部材1の非劣化部分の内周面1Sとにそれぞれ当接させられる突張部材5A,5Bを用いて固定される。
【0023】
図8に示された例では、Λ形に配置される1対の突張部材5Aを用いて補強部材2が固定される。それぞれの突張部材5Aは、管状部材1の周方向における補強部材2の端部2Eに当接させられる第1端部51と、補強部材2に対向する位置で管状部材1の非劣化部分の内周面1Sに当接させられる第2端部52とを有する。一方、
図9に示された例では、アーチ形に配置される1対の突張部材5Bおよび中間部材5Cを用いて補強部材2が固定される。それぞれの突張部材5Bは、補強部材2の端部2Eに当接させられる第1端部51と、管状部材1の非劣化部分の内周面1Sに当接させられる第2端部52とを有する。互いに離れた位置で内周面1Sに当接させられる突張部材5Bのそれぞれの第2端部52に当接し、補強部材2に対向する位置で管状部材1の内周面に沿って配置される中間部材5Cを配置することによって、補強部材2を安定的に固定することができる。
【0024】
上記で
図8および
図9を参照して説明したような突張部材5A,5Bを用いて補強部材2を固定する場合、例えばワンサイドボルトのような締結部品を用いて管状部材1に貫通孔を形成しなくてもよいため、管状部材1の外側からの水や空気の流入や、貫通孔を起点とする破壊や腐食の進行が発生しない。また、補強部材2と、突張部材5A,5B、および中間部材5Cによって管状部材1の内側に当接する補強体が構成されるため、劣化部分1Dに限らず管状部材1の断面全体を補剛および補強することができる。例えば管状部材が
図5や
図7の例のように縦断面においてコルゲート状、すなわち波形に形成される場合、波形の谷にあたる部分に突張部材5A,5Bおよび中間部材5Cを配置することによって、これらの部材の位置を安定させることができる。
【0025】
図10は、突張部材の伸縮機構の例を示す図である。上述のように、突張部材5A,5Bは補強部材2の端部2Eに当接させられる第1端部51と、管状部材1の非劣化部分の内周面1Sに当接させられる第2端部52とを有するが、例えば管状部材1の断面の真円度における公差や、土圧による管状部材1の断面の変形、突張部材5A,5B自体の製作誤差などのために、第1端部51と第2端部52との間の距離が固定されていた場合、それぞれの端部を補強部材2または内周面1Sに適切に当接させられない場合がありうる。そこで、例えば、
図10に示すようなねじ部(雄ねじ)およびロングナット(雌ねじ)からなる伸縮機構53を用いて第1端部51と第2端部52との間の距離を調節することによって、突張部材5A,5Bの第1端部51および第2端部52が確実に補強部材2または内周面1Sに当接するようにしてもよい。
【0026】
(管状部材の補強方法)
次に、上記で説明したような補強部材を用いた管状部材の補強方法について説明する。例えば、
図1に示された例のように延長方向が略水平方向になるように配置された管状部材1に補強部材2を取り付ける場合、例えば、補強部材2を管状部材1の内部に搬入する工程と、補強部材2を劣化部分1Dを含む管状部材1の内周面に載置する工程と、補強部材2を管状部材1に固定する工程とが実施される。
【0027】
このとき、例えば
図11に示す例のように、波形に形成された管状部材1Cの内側にレール6を敷設し、補強部材2Cに車輪7を取り付けることによって、容易に補強部材2Cを管状部材1Cの内部に搬入することができる。例えば、車輪7を管状部材1Cの波形のピッチに合わせた間隔で取り付けた場合、搬入後は車輪7が管状部材1Cの波形の谷にあたる部分で内周面と補強部材2Cとの間に形成される空間に収容されるため、車輪7を必ずしも取り外さなくてもよい。
【0028】
上記の例において、さらに、管状部材1の内周面と補強部材2との間の隙間に硬化性充填材4を充填する工程を実施してもよい。このとき、上記で
図4、
図6および
図7に示したように、管状部材1,1Cと補強部材2A,2B,2Cとの間の隙間は管状部材1,1Cの延長方向の両端で閉じられている一方で、管状部材1,1Cの周方向の両端では開放されているため、管状部材1,1Cの周方向における補強部材2A,2B,2Cの端部から硬化性充填材4があふれ出ることによって、硬化性充填材4の充填の完了を判定することができる。なお、硬化性充填材4を充填する工程は、充填時の補強部材2の浮き上がりや回転を防止するために、補強部材2を管状部材1に固定する工程の後で実施することが好ましい。
【0029】
あるいは、補強部材2を管状部材1の内部に搬入する工程の後に、例えば
図8および
図9に示した例のような突張部材5A,5Bを配置することによって補強部材2を劣化部分1Dを含む管状部材1の内周面に固定してもよい。あるいは、突張部材5A,5Bを配置することによって補強部材2を仮留めし、その後に例えば硬化後に接着性を発揮する硬化性充填材4を充填して補強部材2を管状部材1に固定してもよい。突張部材5A,5Bを用いて補強部材2が仮留めされていることによって、硬化性充填材4の充填時における補強部材2の浮き上がりや回転を防止することができる。この場合、突張部材5A,5Bは、硬化性充填材4が硬化した後に撤去されてもよいし、例えば上述したような管状部材1の補強の効果を得るために残されてもよい。
【0030】
一方、
図2に示された例のように延長方向が略垂直方向になるように配置された管状部材1に補強部材2を取り付ける場合、例えば、補強部材2を管状部材1の内部に搬入する工程と、補強部材2を劣化部分1Dを含む管状部材1の内周面に仮留めする工程と、補強部材2を管状部材1に固定する工程とが実施される。この場合、補強部材2は、例えば管状部材1の内部に組み立てられた足場を用いて仮留めされて、その後に
図8および
図9に示した例のような突張部材5A,5Bを用いて固定されてもよい。あるいは、補強部材2は、
図8および
図9に示した例のような突張部材5A,5Bを用いて仮留めされて、その後にワンサイドボルト3のような締結部品や溶接、接着剤、または硬化後に接着性を発揮する硬化性充填材4を用いて固定されてもよい。後者の場合、突張部材5A,5Bは、補強部材2が固定された後に撤去されてもよい。
【0031】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0032】
1…管状部材、1C…管状部材、1D…劣化部分、1S…内周面、2…補強部材、2A…補強部材、2B…補強部材、2C…補強部材、2E…端部、3…ワンサイドボルト、4…硬化性充填材、5A…突張部材、5B…突張部材、5C…中間部材、6…レール、7…車輪、21…リブ、22…立ち上がり部、51…第1端部、52…第2端部、53…伸縮機構。